説明

流量制御装置

【課題】分岐配管に取り付けられた流量制御弁の開閉に伴う他の分岐配管における冷温水の急峻な流量変動を抑制する。
【解決手段】冷温水発生器11から送り出された冷温水が循環する主配管12と、冷温水を主配管12から取り込む往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1および戻す復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2を介して主配管12に接続されたファンコイル10a,10b,10c,10dと、復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2を流れる冷温水の流量を制御する流量制御弁15a,15b,15c,15dと、復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2に設けられ、流量制御弁15a,15b,15c,15dを迂回してその上流側と下流側とを連通するバイパス配管18a,18b,18c,18dとを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流量制御装置関し、特に熱負荷対象装置に供給される流体の流量を制御する流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビル建築における空調設備には、ファンコイル、エアーハンドリングユニットなどが使用されており、そのなかでもファンコイルが多数用いられている。
【0003】
このファンコイルは、効率的に性能が発揮できる温度範囲を有しており、当該温度範囲に維持するために、冷温水(流体)により調温することが必要とされる。
【0004】
ここで、冷温水は、流体供給源である冷温水発生器に接続された主配管から分岐した配管(分岐配管)を通して負荷対象であるファンコイル(熱負荷対象装置)の冷温水コイルに供給されている。そして、冷温水発生器は、一定温度且つ一定圧力(定温定流量)で冷温水を送り出している。
【0005】
前述のようにファンコイルが多数用いられ、ファンコイルの運用態様がまちまちであるために発熱量に差がある場合には、全てのファンコイルに一様に冷温水を供給したならば、一部のファンコイルが過冷却および過加熱となって熱エネルギーの無駄が生じることになる。
【0006】
このような無駄を防止するためには、分岐配管にバルブを取り付け、ファンコイルに供給される冷温水の流量を個別に調整することが考えられる。
【0007】
なお、冷温水などの流体を熱負荷対象装置に供給するための流量制御装置としては、例えば下記特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特許第3530824号公報
【特許文献2】特開2003−106731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ある分岐配管(第1の分岐配管)のバルブの開度が調整されることにより流体の流量変動があると、それが直ちに隣の分岐配管(第2の分岐配管)に影響を及ぼして急峻に流量が増加し、今度は第2の分岐配管に接続されたファンコイルが過冷却または過加熱になってしまう。これを防止するために第2の分岐配管のバルブの開度が調整されると、さらにその隣の第3の分岐配管の流量が増加するので、今度は第3の分岐配管のバルブの開度が調整される。
【0009】
このように、ある分岐配管で流量変動があると、隣接する分岐配管の流量が連鎖的に増加するので、これを防止するために各分岐配管に取り付けられたバルブが連鎖的且つ頻繁に作動することになる。
【0010】
ファンコイルから送り出される冷温水の温度を測定する温度センサを分岐配管の外周壁に取り付けることにより実質的に温度センサの感度を鈍くしてバルブの動作速度を緩くすることも考えられるが、バルブが開閉すること自体は避けられないので、隣接する系における急峻な流量増加という弊害をなくすことはできない。
【0011】
そこで、本発明は、分岐配管に取り付けられたバルブの開閉に伴う他の分岐配管における流体の急峻な流量変動を抑制することのできる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の流体制御装置は、一方端が流体供給源の出力側に、他方端が当該流体供給源の入力側にそれぞれ接続され、前記流体供給源から送り出された流体が流れる主配管と、流体を前記主配管から取り込む往路管および流体を主配管に戻す復路管からなる分岐配管を介して前記主配管に接続された複数の熱負荷対象装置と、前記往路管または前記復路管に取り付けられ、当該管を流れる流体の流量を制御する流量制御弁と、前記流量制御弁の取り付けられた前記往路管または前記復路管に設けられ、前記流量制御弁を迂回して当該流量制御弁の上流側と下流側とを連通するバイパス配管と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明の流体制御装置は、一方端が流体供給源の出力側に、他方端が当該流体供給源の入力側にそれぞれ接続され、前記流体供給源から送り出された流体が流れる主配管と、流体を前記主配管から取り込む往路管および流体を主配管に戻す復路管からなる分岐配管を介して前記主配管に接続された複数の熱負荷対象装置と、前記往路管または前記復路管に設けられたバイパス配管と、前記バイパス配管の上流側分岐部に取り付けられた三方弁と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記バイパス配管には、当該バイパス配管を流れる流体の流量を調整するバイパス制御弁が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、前記バイパス制御弁は、二次側に一定の流量の流体を供給する定流量弁であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明の構成に加えて、前記復路管に取り付けられ、当該復路管を流れる流体の温度を測定する温度センサと、前記温度センサの測定結果に応じて前記流量制御弁または前記三方弁の開度を制御する制御部と、をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0018】
すなわち、本発明によれば、バルブ(流量制御弁・三方弁)を操作することにより流体の流量が絞られてもバイパス配管内に所定量の流体が流れるので、分岐配管における冷温水の流量変動幅が小さくなる。これにより、他の分岐配管に対する流量変動の影響が緩和されて流体の急峻な流量変動を抑制することが可能になる。
【0019】
また、分岐配管に取り付けられたバルブの開閉に伴う他の分岐配管における流体の急峻な流量変動が抑制されることから、バルブの頻繁な作動が防止されて、装置全体の省エネルギー化を図ることが可能になる。
【0020】
さらに、バイパス配管により所定量の流体の流れが確保されるので、流量制御装置に接続された熱負荷対象装置の加熱等、異常な温度変動を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は本発明の一実施の形態である流体制御装置を示す概念図、図2は図1の流体制御装置の要部を拡大して示す図、図3は図1の流体制御装置における分岐配管での流量変動を比較例とともに示すグラフ、図4は図1の流体制御装置における分岐配管での流量変動とそれに伴う他の分岐配管での流量変動を示すグラフ、図5は比較例である流体制御装置における分岐配管での流量変動とそれに伴う他の分岐配管での流量変動を示すグラフ、図6は図1の流体制御装置の系全体における流量変動を比較例とともに示すグラフ、図7は本発明の変形例としての流体制御装置の要部を拡大して示す図である。
【0023】
本実施の形態の流体制御装置は、例えばビル建築における空調設備において用いられるファンコイル(熱負荷対象装置)10a,10b,10c,10dに供給される流体の流量を制御して、ファンコイル10a,10b,10c,10dを所定温度範囲に維持して効率的に性能が発揮できるようにするために用いられる。
【0024】
図1および図2において、このような流体制御装置は、ファンコイル10a,10b,10c,10dを冷却するための媒体である冷温水(流体)を生成する冷温水発生器(流体供給源)11を有しており、この冷温水発生器11には主配管12が接続されている。すなわち、冷温水発生器11における冷温水が送り出される側、つまり出力側11aには主配管12の一方端が、送り出された冷温水が戻って来る側、つまり入力側11bには主配管12の他方端が、それぞれ接続されている。
【0025】
また、冷温水発生器11から送り出された冷温水を図1の矢印で示す方向に流して再び冷温水発生器11に戻すために、主配管12上にはポンプ22が取り付けられている。
【0026】
主配管12には複数の分岐配管13a,13b,13c,13dが接続されている。これらの分岐配管13a,13b,13c,13dは、冷温水を主配管12から取り込む往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1と、取り込んだ冷温水を主配管12に戻す復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2とからなり、前述したファンコイル10a,10b,10c,10dは一対の往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1と復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2とを介して主配管12に接続されている。
【0027】
そして、主配管12から往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1により冷温水を取り込んでファンコイル10a,10b,10c,10dは所定の温度範囲に維持された状態で運転される。また、ファンコイル10a,10b,10c,10dを冷却することにより温度が高くなった冷温水は、復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2から主配管12へと戻される。
【0028】
復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2から主配管12へと戻された冷温水(つまり、温度が適正範囲を超えた冷温水)が往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1からファンコイル10a,10b,10c,10dへと取り込まれることがないように、復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2は往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1の下流側に接続されている。
【0029】
なお、本実施の形態において、ファンコイル10a,10b,10c,10dは、例えば部屋の大きさや使用形態によって異なっており、これに伴ってそれぞれのスペックは相違している。
【0030】
復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2には、ファンコイル10a,10b,10c,10dで使用されて復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2に送り出された冷温水の水温を測定する温度センサ14a,14b,14c,14d、および復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2を流れる冷温水の流量を制御するバルブである流量制御弁15a,15b,15c,15dが設けられている。また、流量制御弁15a,15b,15c,15dには、この流量制御弁15a,15b,15c,15dの弁体を動作させる電動式あるいは空圧式のアクチュエータ16a,16b,16c,16dが取り付けられている。
【0031】
そして、各分岐配管13a,13b,13c,13dに対応して、前述した温度センサ14a,14b,14c,14dの測定結果に応じてアクチュエータ16a,16b,16c,16dを駆動し、これにより流量制御弁15a,15b,15c,15dの開度を制御する制御部17a,17b,17c,17dが設けられている。
【0032】
この制御部17a,17b,17c,17dでは、温度センサ14a,14b,14c,14dにより測定された復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2を流れる冷温水の水温が所定レベルよりも高いときには、ファンコイン10a,10b,10c,10dの冷却が不足していると判断してより多くの冷温水が往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1から取り込まれるように、アクチュエータ16a,16b,16c,16dを駆動して流量制御弁15a,15b,15c,15dの弁体を開く方向に動作させる。また、温度センサ14a,14b,14c,14dにより測定された復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2を流れる冷温水の水温が所定レベルよりも低いときには、ファンコイル10a,10b,10c,10dが過冷却になっていると判断してより少ない冷温水が往路管13a−1,13b−1,13c−1,13d−1から取り込まれるように、アクチュエータ16a,16b,16c,16dを駆動して流量制御弁15a,15b,15c,15dの弁体を閉じる方向に動作させる。
【0033】
図示するように、流量制御弁15a,15b,15c,15dの取り付けられた復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2には、この流量制御弁15a,15b,15c,15dを迂回してその上流側と下流側とを連通するバイパス配管18a,18b,18c,18dが分岐継手20を介して接続されている。そして、バイパス配管18a,18b,18c,18dには、例えばニードル弁など手動調整式のバイパス制御弁19a,19b,19c,19dが設けられている。したがって、作業者がバイパス制御弁19a,19b,19c,19dを操作することにより、バイパス配管18a,18b,18c,18dを流れる流体の流量が調整可能になっている。
【0034】
次に、このような構成を有する流体制御装置のセッティング手順について説明する。
【0035】
最初にバイパス配管18a,18b,18c,18dに取り付けられたバイパス制御弁19a,19b,19c,19dを全開にするとともに、復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2に取り付けられた流量制御弁15a,15b,15c,15dを全閉にし、ポンプ22を作動させて冷温水発生器11で生成された冷温水を主配管12から分岐配管13a,13b,13c,13d、バイパス配管18a,18b,18c,18dへと流す。
【0036】
そして、バイパス配管18a,18b,18c,18dを経由した流路のみに冷温水を流しながらそれぞれのバイパス制御弁19a,19b,19c,19dを調整して各ファンコイル10a,10b,10c,10dの負荷に対応した所定量(例えば最小流量)の冷温水が確保できるように調整する。
【0037】
このようなセッティングが終了したならば流体制御装置の運転を開始し、制御部17a,17b,17c,17dにより流量制御弁15a,15b,15c,15dの開度を制御して分岐配管13a,13b,13c,13dを流れる冷温水の流量をコントロールする。
【0038】
なお、バイパス配管18a,18b,18c,18dの内径を、各ファンコイル10a,10b,10c,10dの負荷に対応した最小流量の冷温水が流れることのできる大きさに設定すれば、バイパス制御弁19a,19b,19c,19dは不要になるとも考えられる。しかしながら、ポンプ22に近い分岐配管(ここでは分岐配管13a)と遠い分岐配管(ここでは分岐配管13d)とでは元圧(分岐配管内の流体圧力=一次圧)が異なり、ポンプ22に近い分岐配管の元圧の方が高くなるので、ファンコイルの負荷のみで一義的に決定することはできない。そこで、バイパス制御弁19a,19b,19c,19dを設けることにより、ポンプ22に近い分岐配管13aのバイパス制御弁19aをポンプ22に遠い分岐配管13dのバイパス制御弁19dよりも絞るようにして流量のバランス調整ができるようにしたものである。但し、元圧の差が実質的に無視できるような場合であれば、本実施の形態のようなバイパス制御弁19a,19b,19c,19dを設けなくてもよい。
【0039】
ここで、制御部17a,17b,17c,17dによりアクチュエータ16a,16b,16c,16dを介して流量制御弁15a,15b,15c,15dの開度を制御することにより最小限の流量を確保することも可能ではあるが、本実施の形態では、次の2つの理由により、バイパス配管18a,18b,18c,18dとバイパス制御弁19a,19b,19c,19dとで最小限の流量を確保するようにしている。
【0040】
すなわち、第1の理由は、流量制御弁15a,15b,15c,15dの最小分解能が粗い場合には、流量の微調整ができないからである。また、最小分解能を上げると、これに対応した制御部17a,17b,17c,17dのプログラム変更が必要になってくるのはもとより、流量制御弁15a,15b,15c,15d自体の流量制御能力を上げなければならず、これには部品の加工および組み立てを一層高精度に行わなければならなくなり、コスト高になってしまうからである。
【0041】
第2の理由は、分岐配管13a,13b,13c,13dを流れる冷温水の流量が多く、そのために流量制御弁15a,15b,15c,15dの口径が大きくなった場合には、微調整自体が困難になるからである。
【0042】
次に、本実施の形態の流体制御装置における冷温水の流れについて説明する。
【0043】
前述のように、制御部17a,17b,17c,17dにより流量制御弁15a,15b,15c,15dの開度を制御して分岐配管13a,13b,13c,13dを流れる冷温水の流量をコントロールしながらファンコイル10a,10b,10c,10dを使用している状態において、例えばファンコイル10aから復路管13a−2に送り出された冷温水の水温が規定温度よりも低いことが温度センサ14aの測定結果から判明したとする。
【0044】
この場合には、ファンコイル10aが過冷却状態となっているので、制御部17aからアクチュエータ16aに指令が出され、流量制御弁15aの弁体は復路管13a−2を流れる冷温水の流量を絞る方向に変位する。これにより、主配管12から分岐配管13aへと流入する冷温水の流量が減少してファンコイル10aの過冷却が防止される。
【0045】
このときの、分岐配管13aにおける冷温水の流量変動を図3に示す。図3のグラフにおいて、実線で示すものが以上説明した場合における分岐配管13aにおける冷温水の流量変動である。なお、図3においては、流量制御弁15aが全閉になった場合を示している。
【0046】
図示するように、流量制御弁15aが全閉になった場合にはバイパス配管18aを経由した流路のみにバイパス制御弁19aの開度に応じた冷温水が流れるので、ファンコイル10aの負荷に対応した最小流量の冷温水が確保されている。一方、バイパス配管18aを設けない場合(比較例)には、図3の破線で示すように、流量制御弁15aが全閉になった場合には分岐配管13aには冷温水が全く流れなくなるので、ファンコイル10aの温度が異常上昇するおそれが発生する。
【0047】
さて、本実施の形態の流体制御装置において、分岐配管13aの復路管13a−2に取り付けられた流量制御弁15aの開度が調整されることによる冷温水の流量が減少すると、一時的に流量制御弁15aの上流側の水圧が上昇する。すると、この水圧の上昇によってバイパス配管18aに流入する冷温水の単位時間当り流量が増加するので、分岐配管13a全体としての冷温水の流量変動幅は流量制御弁15aの開度調整幅よりも小さくなる。
【0048】
したがって、破線で示す分岐配管13aでの流量変動があっても、それに伴う隣接した分岐配管13bでの流量変動は図4において示す変動幅tにとどまる。
【0049】
これに対して、本実施の形態のようにバイパス配管が設けられていない場合には、ある分岐配管(第1の分岐配管)における水圧上昇が直接的に隣接した分岐配管(第2の分岐配管)における流体の流量変動として作用するので、図5に示すように、破線で示す第1の分岐配管での流量変動があると、第2の分岐配管では急峻に流量が増加する(変動幅T)。すると、第2の分岐配管における流量増加を抑制するために第2の分岐配管に設けられた流量制御弁の開度が調整されることとなり、これに伴う第2の分岐配管での流量変動の影響をさらにその隣の第3の分岐配管が連鎖的に受けて第3の分岐配管の流量制御弁の開度が調整されることになる。つまり、ある分岐配管で流量変動があると、隣接する分岐配管の流量が連鎖的に増加し、これを防止するために各分岐配管に取り付けられた流量制御弁が連鎖的且つ頻繁に作動することになる。
【0050】
しかしながら、前述のように、本実施の形態では、例えば流量制御弁15aを操作することにより分岐配管13aにおける流体の流量が絞られると、一時的にバイパス配管18a内に流れ込む流体の単位時間当り流量が増加してバイパス配管18aに所定量の冷温水が流れ、分岐配管13aにおける冷温水の流量変動幅が小さくなるので、他の分岐配管13b,13c,13dに対する流量変動の影響が緩和されてこれらの分岐配管13b,13c,13dにおける冷温水の急峻な流量変動を抑制することが可能になる。なお、図6において、本実施の形態の流体制御装置における系全体での流量変動(実線)を比較例(破線)とともに示す。
【0051】
また、このように分岐配管13aに取り付けられた流量制御弁15aの開閉に伴う他の分岐配管13b,13c,13dにおける流体の急峻な流量変動が抑制されることから、流量制御弁15a,15b,15c,15dの頻繁な作動が防止されるので、装置全体の省エネルギー化を図ることが可能になる。
【0052】
さらに、前述のように、バイパス配管18a,18b,18c,18dにより所定量の冷温水の流れが確保されるので、流量制御装置に接続されたファンコイル10a,10b,10c,10dの加熱等、異常な温度変動を防止することが可能になる。
【0053】
さて、以上の実施の形態の流体制御装置においては、復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2に流量制御弁15a,15b,15c,15dを取り付けた場合が示されているが、図7に示すように、バイパス配管18a,18b,18c,18dにおける上流側の分岐部に、冷温水の流量を制御するバルブとして三方弁21を取り付けるようにしてもバイパス配管18a,18b,18c,18dに所定量の冷温水が流れるので、同様の作用効果が得られる。
【0054】
このような流体制御装置においては、通常の運転時には、三方弁21の弁体を、冷温水が復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2のみを流れ、バイパス配管18a,18b,18c,18dには流れない位置(図7において、弁体の方向を引き出して示した右側の図)、あるいは冷温水が復路管13a−2,13b−2,13c−2,13d−2およびバイパス配管18a,18b,18c,18dの双方を流れる位置にセットする。
【0055】
そして、あるファンコイル(例えばファンコイル10a)が過冷却状態となったならば、アクチュエータ16aを介して三方弁21の弁体を回動させ、これを冷温水がバイパス配管18aのみを流れ、復路管13a−2には流れない位置(図7において、弁体の方向を引き出して示した左側の図)、あるいは冷温水が復路管13a−2およびバイパス配管18aの双方を流れるが復路管13a−2にはより少量の冷温水しか流れない位置にセットする。
【0056】
このように、バルブとして三方弁21を用い、これを分岐部に取り付けることにより、当該部分の分岐継手(図2における上流側の分岐継手20参照)が不要になり、コストダウンを図ることが可能になる。
【0057】
また、バイパス制御弁19a,19b,19c,19dには、一次側の圧力変動とは無関係に二次側に一定の流量の流体を供給することのできる定流量弁を用いることができる。
【0058】
定流量弁を用いれば、例えばニードル弁などを用いた場合のようにバイパス配管18a,18b,18c,18dを流れる冷温水の流量を調整する必要がないので、流体制御装置のセッティングにおける工数削減になる。
【0059】
なお、前述のように、ポンプ22に近い分岐配管13aのバイパス制御弁19aをポンプ22に遠い分岐配管13dのバイパス制御弁19dよりも絞るようにして流量のバランス調整をする必要があることから、定流量弁には、当該定流量弁に装着されているカートリッジを交換するだけで目的とする流量に設定可能なタイプのものを用いるのがよい。
【0060】
以上の説明において、主配管12には4つの分岐配管13a,13b,13c,13dが接続され、合計4台のファンコイル10a,10b,10c,10dが表されているが、分岐配管やファンコイルの数は必要なだけ設定することができる。
【0061】
また、以上の説明において、流量制御弁や三方弁、バイパス配管は復路管に取り付けられているが、往路管に取り付けられていてもよい。
【0062】
なお、流量制御弁や三方弁、バイパス配管は、図2または図7に示すように、継手20を用いてユニット化されているので、このユニット前後に接続した継手A,Bを介して、既存の復路管または往路管に容易に装着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上の説明においては、本発明の流体制御装置を空調用ファインコイルに適用しているが、本発明の流体制御装置はファンコイルの温調用に限定されるものではなく、例えば半導体製造の真空プロセスなどで使用される熱負荷対象装置であるドライポンプの冷却、自動車製造装置の溶接ロボット、空調機、熱源(チラー、ボイラーなど)、給湯器など様々な熱負荷対象装置の調温用(冷却用および加熱用)として適用することができる。
【0064】
したがって、主配管、分岐配管およびバイパス配管を流れるものは冷温水のみならず広く流体であればよく、不活性ガスなどの気体などを流すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態である流体制御装置を示す概念図である。
【図2】図1の流体制御装置の要部を拡大して示す図である。
【図3】図1の流体制御装置における分岐配管での流量変動を比較例とともに示すグラフである。
【図4】図1の流体制御装置における分岐配管での流量変動とそれに伴う他の分岐配管での流量変動を示すグラフである。
【図5】比較例である流体制御装置における分岐配管での流量変動とそれに伴う他の分岐配管での流量変動を示すグラフである。
【図6】図1の流体制御装置の系全体における流量変動を比較例とともに示すグラフである。
【図7】本発明の変形例としての流体制御装置の要部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10a,10b,10c,10d ファンコイル(熱負荷対象装置)
11 冷温水発生器(流体供給源)
11a 出力側
11b 入力側
12 主配管
13a,13b,13c,13d 分岐配管
13a−1,13b−1,13c−1,13d−1 往路管
13a−2,13b−2,13c−2,13d−2 復路管
14a,14b,14c,14d 温度センサ
15a,15b,15c,15d 流量制御弁(バルブ)
16a,16b,16c,16d アクチュエータ
17a,17b,17c,17d 制御部
18a,18b,18c,18d バイパス配管
19a,19b,19c,19d バイパス制御弁
20 分岐継手
21 三方弁(バルブ)
22 ポンプ
A,B 継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端が流体供給源の出力側に、他方端が当該流体供給源の入力側にそれぞれ接続され、前記流体供給源から送り出された流体が流れる主配管と、
流体を前記主配管から取り込む往路管および流体を主配管に戻す復路管からなる分岐配管を介して前記主配管に接続された複数の熱負荷対象装置と、
前記往路管または前記復路管に取り付けられ、当該管を流れる流体の流量を制御する流量制御弁と、
前記流量制御弁の取り付けられた前記往路管または前記復路管に設けられ、前記流量制御弁を迂回して当該流量制御弁の上流側と下流側とを連通するバイパス配管と、
を有することを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
一方端が流体供給源の出力側に、他方端が当該流体供給源の入力側にそれぞれ接続され、前記流体供給源から送り出された流体が流れる主配管と、
流体を前記主配管から取り込む往路管および流体を主配管に戻す復路管からなる分岐配管を介して前記主配管に接続された複数の熱負荷対象装置と、
前記往路管または前記復路管に設けられたバイパス配管と、
前記バイパス配管の上流側分岐部に取り付けられた三方弁と、
を有することを特徴とする流体制御装置。
【請求項3】
前記バイパス配管には、当該バイパス配管を流れる流体の流量を調整するバイパス制御弁が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記バイパス制御弁は、二次側に一定の流量の流体を供給する定流量弁であることを特徴とする請求項3記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記復路管に取り付けられ、当該復路管を流れる流体の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサの測定結果に応じて前記流量制御弁または前記三方弁の開度を制御する制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の流体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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