説明

流量計、流量計の継ぎ手、流量制御装置、及び流量計の製造方法

【課題】製造が容易な流量計を提供する。
【解決手段】流路11が設けられた流路保持体10と、流路11に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる複数の整流部材5a,5b,5cと、流路11の複数の整流部材5a,5b,5cを透過した流体の流量を検出する流れセンサ8と、を備える、流量計を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測技術に係り、流量計、流量計の継ぎ手、流量制御装置、及び流量計の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計は、流路に設置された流れセンサにより、流路を流れる流体の流量を計測する装置である。流量を正確に測定するためには、流れセンサの上流において、流体の偏流や乱れを整流することが重要となる。例えば、特許文献1には、流路に段差を設け、円筒ねじを用いて整流器を段差に押しつけて固定する方法が提案されている。また、特許文献2には、両面に突起部及び窪み部の対を形成したリンク状のスペーサと、整流体である金網とを交互に積層して構成される整流器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−93159号公報
【特許文献2】特開2005−24080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の流量計は、整流器の配置に複雑な機構を要している。そのため、流量計の製造が複雑となり、コストが上昇する場合がある。そこで、本発明は、製造が容易な流量計、流量計の継ぎ手、流量制御装置、及び流量計の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、流路が設けられた流路保持体と、流路に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材と、流路の整流部材を透過した流体の流量を検出する流れセンサと、を備える流量計であることを要旨とする。
【0006】
本発明の他の態様は、パイプと、パイプに挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材と、を備える流量計の継ぎ手であることを要旨とする。
【0007】
本発明のさらに他の態様は、流路が設けられた流路保持体と、流路に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材と、流路の整流部材を透過した流体の流量を検出する流れセンサと、流路を流れる流体の流量を制御する制御弁と、検出された流量に基づき、制御弁を駆動し、流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、を備える流量制御装置であることを要旨とする。
【0008】
本発明のまたさらに他の態様は、流路が設けられた流路保持体を用意するステップと、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材を、流路に挿入するステップと、流路の整流部材を透過した流体の流量を検出する流れセンサを配置するステップと、を含む流量計の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造が容易な流量計、流量計の継ぎ手、流量制御装置、及び流量計の製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る流量計の第1の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体の上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体の図2のIII−III方向から見た断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体の図2のIV−IV方向から見た断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る整流部材の第1の斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る整流部材の第2の斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体と整流部材の第1の断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体と整流部材の第2の断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体と整流部材の第3の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る流路保持体と整流部材の第4の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る流れセンサの図11のXII−XII方向から見た断面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る継ぎ手の断面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る継ぎ手と流量計の断面図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る流量制御装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る流量計は、図1に示すように、流路11が設けられた流路保持体10と、流路11に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる複数の整流部材5a,5b,5cと、流路11の整流部材5a,5b,5cを透過した流体の流量を検出する流れセンサ8と、を備える。
【0013】
上面図である図2、III−III方向から見た断面図である図3、及びIV−IV方向から見た断面図である図4に示すように、六面体の流路保持体10の対向する二面に、注入口13及び排出口14が設けられている。注入口13及び排出口14のそれぞれには、ガスや液体等の流体を通す配管が挿入される。流路保持体10の内部に設けられた流路11は、注入口13から排出口14に貫通する。
【0014】
流路11の一部に、流路11の内径を狭めるオリフィス12が設けられている。オリフィス12によって、流路11の上流側と下流側の間で、流体の流速に応じた差圧が発生する。なお、差圧発生構造としては、オリフィス以外に、ベンチュリー等を用いてもよい。以下、流路11のオリフィス12より注入口13側を上流と呼び、流路11のオリフィス12より排出口14側を下流と呼ぶ。また、流路11には、注入口13とオリフィス12との間に、上流から下流に向かって流路11の内径を狭める段15が設けられている。
【0015】
流路保持体10の流路11と平行な面には、凹部16が設けられている。凹部16から流路11の上流に孔6aが貫通し、凹部16から流路11の下流に孔6bが貫通している。流路保持体10の材料には、金属等が使用可能である。
【0016】
図5に示すように、整流部材5aは、メッシュからなる底面50と、底面50の外周に接するメッシュからなる筒状の側面51とを備える。図6に示すように、筒状の側面51の一方の開口52は塞がれていない。整流部材5a,5b,5cのそれぞれは、例えばV字型の切り込みを設けられた円形の金属メッシュを用意し、V字型の切り込みの頂点に内接する円に沿って金属メッシュの外縁を折り曲げることにより製造される。
【0017】
図7に示すように、まず1個目の整流部材5aが流路保持体10の流路11の上流側に挿入される。段15より上流側の流路11の内周と、筒状の整流部材5aの外周とは、略同一の形状をしている。整流部材5aは、段15に接触するまで、流路11の内部に挿入される。次に、図8に示すように、スポット溶接機の電極141を流路保持体10の外壁に押し当て、電極142を筒状の整流部材5aの内壁に押し当てる。これにより、整流部材5aの外壁と、流路11の内壁とが、密着する。その後、電極141と電極142との間に電流を流すことによって、密着している整流部材5aの外壁と流路11の内壁とを抵抗熱で溶かして接合させる。
【0018】
さらに、図9に示すように、2個目の整流部材5bが流路保持体10の流路11の上流側に挿入される。挿入された整流部材5bのメッシュ状の底面は、整流部材5aの開口を覆う。整流部材5bも、スポット溶接機によって、流路11の内壁に接合させられる。またさらに、図10に示すように、3個目の整流部材5cが流路保持体10の流路11の上流側に挿入され、流路11の内壁に接合させられる。
【0019】
図10に示す凹部16を覆うように、図1に示す計測部筐体30が流路保持体10上に着脱自在に配置される。計測部筐体30で覆われた凹部16が、孔6a,6bを接続する分流路25になる。流路11の上流から流れてきた流体は、オリフィス12によって一部が孔6aを経て分流路25に流入する。
【0020】
流体の流速又は流量を検出する流れセンサ8は、計測部筐体30に配置されている。計測部筐体30が流路保持体10に配置された場合、流れセンサ8は、分流路25中に位置する。流れセンサ8は、斜視図である図11、及びXII−XII方向から見た断面図である図12に示すように、キャビティ66が設けられた基板60、基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65、絶縁膜65に設けられたヒータ61、ヒータ61より上流側に設けられた上流側測温抵抗素子62、ヒータ61より下流側に設けられた下流側測温抵抗素子63、及び上流側測温抵抗素子62より上流側に設けられた周囲温度センサ64を備える。
【0021】
絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。周囲温度センサ64は、図1に示す分流路25に流入してきた流体の温度を測定する。図11及び図12に示すヒータ61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65の中心に配置されており、分流路25に流れる流体を、周囲温度センサ64が計測した温度よりも一定温度、例えば10℃高くなるよう、加熱する。上流側測温抵抗素子62はヒータ61より上流側の温度を検出するために用いられ、下流側測温抵抗素子63はヒータ61より下流側の温度を検出するために用いられる。
【0022】
ここで、図1に示す分流路25中の流体が静止している場合、図11及び図12に示すヒータ61で加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に拡散する。したがって、上流側測温抵抗素子62及び下流側測温抵抗素子63の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子62及び下流側測温抵抗素子63の電気抵抗は等しくなる。これに対し、図1に示す分流路25中の流体が上流から下流に流れている場合、図11及び図12に示すヒータ61で加えられた熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側測温抵抗素子62の温度よりも、下流側測温抵抗素子63の温度が高くなる。そのため、上流側測温抵抗素子62の電気抵抗と、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗に差が生じる。下流側測温抵抗素子63の電気抵抗と上流側測温抵抗素子62の電気抵抗の差は、図1に示す分流路25中の流体の速度と相関関係がある。そのため、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗と上流側測温抵抗素子62の電気抵抗の差から、分流路25を流れる流体の流量が求められる。
【0023】
図11及び図12に示す基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。またヒータ61、上流側測温抵抗素子62、下流側測温抵抗素子63、及び周囲温度センサ64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0024】
図1に示す計測部筐体30内には、中央演算処理装置(CPU)300が配置されている。CPU300は、流れセンサ8に電気的に接続されている。CPU300は、図11及び図12に示す上流側測温抵抗素子62の電気抵抗と、下流側測温抵抗素子63の電気抵抗との差に基づいて、流路11を流れる流体の流量を算出する。図1に示す計測部筐体30の上部には、CPU300が算出した流量を表示する表示装置を配置してもよい。
【0025】
以上説明した第1の実施の形態に係る流量計は、整流部材5a,5b,5cを容易に配置可能であるため、低いコストで製造することが可能となる。従来においては、流路を流れる流体を整流するために、板状のメッシュ板と、リング状のスペーサとを、交互に配置している。しかし、メッシュ板とスペーサとを交互に挿入するのは手間がかかる。また、それぞれ交互に挿入された複数のメッシュ板とスペーサとを流路内に固定するのも困難な場合がある。
【0026】
さらに、スペーサを用いると、スペーサと流路の内壁との間にデッドスペースが生じ、流路内のガスの置換が困難になる場合もある。またさらに、メッシュ板を押さえるスペーサは一定の肉厚を有するため、流路の内径が狭まり、圧力損失が高くなる場合がある。これに対し、予め筒状に成形されたメッシュからなる整流部材5a,5b,5cは、流路への挿入が容易である。さらに、筒状に予め成形されているため、スペーサを必要としない。そのため、圧力損失を低下させることが可能となる。また、金属材料を用いることにより、整流部材5a,5b,5cを流路11の内壁へ、スポット溶接により容易に固定することが可能となる。
【0027】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る流量計の継ぎ手は、図13に示すように、パイプ211と、パイプ211に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる複数の整流部材205a,205b,205cと、を備える。パイプ211の材料には、金属等が使用可能である。整流部材205a,205b,205cは、第1の実施の形態と同様の方法で、パイプ211の内部に挿入され、固定されている。図14に示すように、継ぎ手は、流量計の流路保持体10の注入口13に挿入される。第2の実施の形態に係る流量計の継ぎ手を用いれば、流量計の内部に整流部材を配置する必要がない。そのため、流量計の製造及びメンテナンスが容易となる。また、整流部材205a,205b,205cが目詰まりをおこした場合は、継ぎ手のみを交換し、流量計を交換する必要がない。よって、流量計のメンテナンスコストを低減させることも可能となる。
【0028】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る流量制御装置は、図15に示すように、流量計250、流量計250の排出口14に接続された流路99、及び流路99に接続され、流体の流量を制御する制御弁41を備える。制御弁41は、例えばソレノイド弁である。制御弁41は、流路43及び流路44と、流路43及び流路44を連通する弁室45が設けられた弁座42、弁室45に収納され、流路44を開閉する弁体46、弁体46に連結された磁性体のプランジャ47、及び通電されてプランジャ47を上下させるソレノイドコイル48を備える。
【0029】
第3の実施の形態において、流量計250のCPU300は、算出した流量に基づき、制御弁41を駆動し、流路11及び流路99を流れる流体の流量を調節するコントローラとしての機能をさらに有する。CPU300は、流量が設定値よりも多い場合は、ソレノイドコイル48に通電して、流量を減少させる。また流量が設定値よりも少ない場合は、ソレノイドコイル48に通電して、流量を増加させる。第3の実施の形態に係る流量制御装置は、第1の実施の形態で説明した流量計を採用しているため、高い精度で検出された流量に基づき、流量を制御することが可能となる。
【0030】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図1においては、3個の整流部材5a,5b,5cを配置した例を示したが、整流部材の数は1個でもよいし、4個以上でもよい。また、第1の実施の形態において、スポット溶接機を用いて図1に示す整流部材5aの外壁と流路11の内壁とを溶接する例を説明した。これに対し、整流部材5aの外壁と流路11の内壁とをロウ付け又は接着等してもよいことはもちろんである。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0031】
5a,5b,5c 整流部材
6a,6b 孔
8 センサ
10 流路保持体
11 流路
12 オリフィス
13 注入口
14 排出口
15 段
16 凹部
25 分流路
30 計測部筐体
41 制御弁
42 弁座
43,44 流路
44 流路
45 弁室
46 弁体
47 プランジャ
48 ソレノイドコイル
50 底面
51 側面
52 開口
60 基板
61 ヒータ
62 上流側測温抵抗素子
63 下流側測温抵抗素子
64 周囲温度センサ
65 絶縁膜
66 キャビティ
99 流路
141,142 電極
150 金属メッシュ
250 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が設けられた流路保持体と、
前記流路に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材と、
前記流路の前記整流部材を透過した流体の流量を検出する流れセンサと、
を備える流量計。
【請求項2】
前記流路の内壁と、前記整流部材の外壁とが、固着している、請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記少なくとも一つの整流部材が複数の整流部材である、請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記流れセンサが、前記流路から分岐した分流路に設けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流量計。
【請求項5】
パイプと、
前記パイプに挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材と、
を備える流量計の継ぎ手。
【請求項6】
流路が設けられた流路保持体と、
前記流路に挿入された、底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材と、
前記流路の前記整流部材を透過した流体の流量を検出する流れセンサと、
前記流路を流れる流体の流量を制御する制御弁と、
前記検出された流量に基づき、前記制御弁を駆動し、前記流路を流れる流体の流量を調節するコントローラと、
を備える流量制御装置。
【請求項7】
流路が設けられた流路保持体を用意するステップと、
底面を有する筒状のメッシュからなる少なくとも一つの整流部材を、前記流路に挿入するステップと、
前記流路の前記整流部材を透過した流体の流量を検出する流れセンサを配置するステップと、
を含む流量計の製造方法。
【請求項8】
前記流路保持体の外壁と、前記整流部材の内壁との間に電流を流し、前記流路の内壁と、前記整流部材の外壁とを溶接するステップを更に含む、請求項7に記載の流量計の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの整流部材が複数の整流部材である、請求項7に記載の流量計の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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