説明

流量計測装置

【課題】本発明は流量パルスを生成する過程で基準電圧を正確に設定することを課題とする。
【解決手段】流量計測装置10は、被測流体の流量に応じて回転するロータ20に設けられたマグネット22の通過を検出するセンサ50A,50Bと、センサ50A,50Bから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路60A,60Bと、増幅回路60A,60Bで増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路70A,70Bと、流量パルスをカウントして流量を演算する制御回路80と、を有する。制御回路80は、増幅回路60A,60Bの電位がLレベルでないときは、電子ボリューム90にH信号を出力し、増幅回路60A,60Bの電位がHレベルでないときは、電子ボリューム90にL信号を出力することにより、増幅回路60A,60Bの基準電位を変更してセンサ信号の最大値と最小値との中央値が増幅回路60A,60Bの基準電位になるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流量計測装置に係り、特にセンサ信号に対する基準電位のずれを自動的に修正するように構成された流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タービン式流量計のように流量に応じて回転するロータ(回転体)の回転数をセンサにより検出して流量を計測する流量計測装置では、ロータに埋め込まれたマグネットの通過を磁気抵抗素子などからなるセンサにより検出し、検出されたセンサ信号より通過したマグネット数をカウントし、この計数値に所定の係数を乗じて流量積算値を演算している。
【0003】
また、ロータに設けられたマグネットの通過回数を検出するセンサに用いられる磁気抵抗素子から出力されたセンサ信号の波形は、微小振幅である。そのため、基準電位に対して振幅を増幅してマイコンからなる演算回路が認識できるように正弦波を矩形波に波形整形している。このようにセンサ信号を増幅して矩形波に波形整形する過程では、センサ信号の最大値、または最小値がスレショルド値(閾値)に達しないと、矩形波が生成されないおそれがあった。
このような問題を解消する流量計測装置としては、例えば、センサ信号がスレショルド値に達するようにロータの回転数に応じてスレショルド値を切り替えるように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−220522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された流量計測装置においては、ロータの回転数に応じてスレショルド値を切り替えたとしても各流量計によってマグネットの位置や磁力及びセンサ取付位置とマグネット通過位置との相対的なずれ量などの条件が異なるため、個々の流量計によっては増幅回路の基準電位がセンサ信号の中心値(最大値と最小値との中央値)とならない場合がある。その場合、センサ信号を増幅して矩形波に波形整形する過程において、スレショルド値の切り替えだけでは、対応することができず、センサ信号の最大値、または最小値がスレショルド値(閾値)に達せず、矩形波が生成されないという問題が生じる。
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した流量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0006】
本発明は、被測流体の流量に応じて回転する回転体と、該回転体に設けられたマグネットと、該マグネットの通過を検出するセンサと、該センサから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路と、前記流量パルスをカウントして流量を演算する演算回路と、を有する流量計測装置において、前記増幅回路の基準電位を変更して前記センサ信号の最大値と最小値との中央値が増幅回路の基準電位になるように調整する基準電位調整手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、被測流体の流量に応じて回転する回転体と、該回転体に設けられたマグネットと、該マグネットの通過を検出するセンサと、該センサでから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路と、前記流量パルスをカウントして流量を演算する演算回路と、を有する流量計測装置において、前記回転体がない状態で前記増幅回路の基準電位を変化させ、前記センサの出力がゼロになったときの前記増幅回路の電位を基準電位として設定する基準電位設定手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、被測流体の流量に応じて回転する回転体と、該回転体に設けられたマグネットと、該マグネットの通過を検出するセンサと、該センサから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路と、該増幅回路で増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路と、前記流量パルスをカウントして流量を演算する演算回路と、を有する流量計測装置において、前記基準電位を変化させ、前記基準電位が前記センサ信号の最小値と交差する時間T1、最大値と交差する時間T2を求め、前記時間T1と前記時間T2との差(T2−T1)に1/2を乗じたときの電圧を前記増幅回路の基準電位として設定する基準電位設定手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、増幅回路の基準電位を変更してセンサ信号の最大値と最小値との中央値が増幅回路の基準電位になるように調整するため、例え各流量計によってマグネットの位置や磁力及びセンサ取付位置とマグネット通過位置との相対的なずれ量などの条件が異なっている場合でもセンサ信号を波形整形する過程でデューティ50比%の矩形波を得ることができ、正確な流量計測が可能になる。
【0010】
また、本発明によれば、回転体を外した状態で増幅回路の基準電位を変化させ、センサの出力がゼロになったときの増幅回路の電位を基準電位として設定するため、例え各流量計によって検出条件が異なっている場合でもセンサ信号を波形整形する過程でデューティ比50%の矩形波を得ることができ、正確な流量計測が可能になる。
【0011】
また、本発明によれば、基準電位を変化させ、基準電位がセンサ信号の最小値と交差する時間T1、最大値と交差する時間T2を求め、時間T1と時間T2との差(T2−T1)に1/2を乗じたときの電圧を増幅回路の基準電位として設定するため、例え各流量計によって検出条件が異なっている場合でもセンサ信号を波形整形する過程でデューティ比50%の矩形波を得ることができ、正確な流量計測が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明による流量計測装置の一実施例を示すブロック図である。図1に示されるように、流量計測装置10は、被測流体の流量に応じて回転するロータ(回転体)20を有する流量計30と、ロータ20の回転を検出して流量を演算する計数部40とよりなる。ロータ20は、回転検出のための一対のマグネット(被検出部)22が2極の場合180度間隔で(4極の場合90度間隔で)等間隔に埋め込まれている。
【0014】
計数部40は、マグネット22の通過を検出する磁気抵抗素子(MR素子)よりなるセンサ50A,50Bと、センサ50A,50Bから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路60A,60Bと、増幅回路60A,60Bで増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路70A,70Bと、波形整形回路70A,70Bから入力された流量パルスをカウントして流量を演算するマイコンよりなる制御回路80と、増幅回路60A,60Bの基準電位を設定する電子ボリューム90とを有する。
【0015】
本実施例では、上記センサ50A、増幅回路60A、波形整形回路70AからなるA相検出系統と、上記センサ50B、増幅回路60B、波形整形回路70BからなるB相検出系統とが並列に設けられている。そのため、制御回路80では、ロータ20の回転に伴ってA相とB相のセンサ信号(図2に示す)が位相差をもって入力されることになり、A相とB相の立上がり、立下りの位相差によってロータ20の回転方向が正転方向(順方向)か逆転方向(逆方向)かを判別することが可能になる。
【0016】
電子ボリューム90は、制御回路80から入力されたHigh(以下「H」と表す)信号、 Low(以下「L」と表す)信号に応じて抵抗値を自動的に可変して出力電圧を調整し、増幅回路60A,60Bの基準電位を任意の電位に設定することができる。尚、増幅回路60A,60Bは、電子ボリューム90により設定された基準電位を中心としてセンサ信号を増幅する演算増幅器(「オペアンプ」または「OPアンプ」とも呼ばれる)を有する。
【0017】
また、基準電位の調整は、流量計30に流体を流した計測状態において、流量に応じたロータ20の回転をセンサ50A,50Bで検出すると、実行される。センサ50A,50Bは、マグネット22の通過回数に応じた周波数の正弦波からなるセンサ信号を出力する。そして、後述するように、制御回路80の基準電位調整処理によりセンサ信号の最大値と最小値との中央値が基準電位となるように電子ボリューム90の抵抗値が自動的に調整される。
【0018】
例えば、増幅回路60A,60Bの基準電位がセンサ信号の波形の中心より大きい場合は、制御回路80より電子ボリューム90にL信号が出力され、その結果、電子ボリューム90の出力電圧が小さくなり、増幅回路60A,60Bの基準電位を下げることができる。また、増幅回路60A,60Bの基準電位がセンサ信号の波形の中心より小さい場合は、制御回路80より電子ボリューム90にH信号が出力され、その結果、電子ボリューム90の出力電圧が大きくなり、増幅回路60A,60Bの基準電位を上げることができる。さらに、電子ボリューム90は、電源をオフにしたときも調整された基準電位を記憶する記憶部を有するため、電源を再投入した後も再調整する必要はない。
【0019】
さらに、制御回路80には、液晶モニタなどからなる表示器100と、流量演算値を出力する出力回路110とが接続されている。制御回路80は、電子ボリューム90により基準電位を調整した場合の矩形波、パルス幅、デューティー比、位相差比率などを表示器100に表示することで基準電位の調整後の状態を確認できるようにしている。
【0020】
ここで、センサ信号の波形整形について説明する。図2は波形整形された矩形波(流量パルス)を示す波形図である。図2に示す状態(1)において、ロータ20の回転に伴ってB相のセンサ信号がLレベルからHレベルの立ち上がり後、A相のセンサ信号を確認したとき、A相のセンサ信号がLレベルであれば、ロータ20の回転方向が正転であると判断して流量パルスの積算値を加算する。
【0021】
次の状態(2)において、B相がHレベルからLレベルに立下り後にA相の状態を確認したとき、A相がHレベルであればロータ20の回転方向が正転であると判断して流量パルスの積算値を加算する。
【0022】
次の状態(3)において、状態(2)とは逆に、B相の立ち上がりの直後にA相の状態がHレベルのときは、ロータ20が逆方向に回転しているものと判断することができるので、流量パルスの積算値を減算する。
【0023】
次の状態(4)において、B相立下り直後のA相の状態がLレベルのときも、ロータ20が逆方向に回転しているものと判断することができるので、流量パルスの積算値を減算する。従って、基準電位の調整が合っている場合は、ロータ20が正転方向に回転しているときのセンサ信号は(1)(2)の状態となり、ロータ20が逆方向に回転しているときのセンサ信号は(3)(4)の状態となる。
【0024】
次の状態(5)において、基準電位の調整が合っていないときは、B相のパルス幅が小さく(狭く)なっているため、立ち上がり直後にA相がHレベルとなる。そのため、ロータ20が正転でも逆転と判断して流量パルスの積算値を減算する。そして、その後の状態(6)において、B相の立下り直後にHレベルである場合にはロータ20が正転であると判断する。しかしながら、ロータ20の回転方向が正転であっても状態(5)で減算しているため、加算できないことになる。
【0025】
従って、増幅回路60A,60Bの基準電位の設定がセンサ信号の出力レベルに応じて適切に調整されていない場合は、パルス幅が変動するため、制御回路80でのパルスカウント処理に誤差が生じるおそれがある。特に、ロータ20の回転数が高くなる高流量計測時ほどA相とB相との流量パルスのパルス幅が狭くなる傾向にあるため、A相とB相との時間軸上のずれによる計測誤差が発生する可能性が高まる。
【0026】
ここで、基準電位の設定値によって生じる波形整形処理について図3乃至図6を参照して説明する。
【0027】
図3に示されるように、センサ50A,50Bにより得られたセンサ信号aに対して基準電位がL側にずれた場合は、増幅回路60A,60Bによって増幅された信号bが基準電位の下側に位置する。そのため、波形整形回路70A,70Bにおいては、信号bがH側スレショルド電位と交差しないことになり、H側での波形整形ができない。よって、波形整形回路70A,70Bから出力された信号cは、L側の電位に固定された状態で推移してしまい、検出可能な矩形波(流量パルス)を生成することができない。
【0028】
図4に示されるように、センサ50A,50Bにより得られたセンサ信号aに対して基準電位がH側にずれた場合は、L側スレショルド電位より下側を推移する時間が長く、H側スレショルド電位より上側を推移する時間が短い。そのため、波形整形回路70A,70Bから出力された信号cは、H側パルス幅B1よりL側パルス幅B2の方が長くなる(B1<B2)。
【0029】
図5に示されるように、センサ50A,50Bにより得られたセンサ信号aに対して基準電位がL側にずれた場合は、L側スレショルド電位より下側を推移する時間が短く、H側スレショルド電位より上側を推移する時間が長い。そのため、波形整形回路70A,70Bから出力された信号cは、H側パルス幅B1よりL側パルス幅B2の方が短くなる(B1>B2)。
【0030】
従って、図4、図5のようにH側パルス幅B1とL側パルス幅B2とが異なる場合は、前述した図2の状態(5)(6)となるため、ロータ20が正転しているにも拘わらず、流量パルスを積算値に加算することができなくなる。このような場合には、基準電位を調整してH側パルス幅B1とL側パルス幅B2とが等しくなるように設定する必要がある。
【0031】
図6に示されるように、センサ50A,50Bにより得られたセンサ信号aに対して基準電位が信号aの最大値と最小値との中央値に調整された場合は、L側スレショルド電位より下側を推移する時間と、H側スレショルド電位より上側を推移する時間とが等しくなる。そのため、波形整形回路70A,70Bから出力された信号cは、H側パルス幅B1とL側パルス幅B2とが同一(B1=B2)になり、デューティ比が50%となる。
【0032】
ここで、制御回路80が実行する基準電位調整処理について図7のフローチャートを参照して説明する。尚、図7に示す基準電位の調整処理は、例えば、電源スイッチがオンに操作されたときに実行するようにしても良いし、あるいは所定の時間毎(例えば、24時間毎)に実行するようにしても良いし、あるいは調整スイッチ(図示せず)がオンに操作されたときに実行するようにしても良い。
【0033】
図7のS11において、流量パルスの1周期分が入力されると、予め設定された調整時間が経過したか否かをチェックする(S12)。
【0034】
S12で調整時間が経過していないときは、S13に進み、波形整形回路70A,70Bから出力された信号cのH側パルス幅B1がL側パルス幅B2より5%以上長いか否かをチェックする。そして、S13でH側パルス幅B1がL側パルス幅B2より5%以上長い場合(図5参照)は、S14に進み、電子ボリューム90にL信号を出力する(基準電位調整手段)。これにより、電子ボリューム90は、抵抗値を1段階下げて増幅回路60A,60Bに供給される基準電位の指示信号を高くする。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を1段階上昇させる。
【0035】
続いて、上記S14で調整された基準電位に応じた流量パルスのH側パルス幅B1及びL側パルス幅B2の時間長を表示器100に表示する(S15)。これにより、流量パルスの波形整形状態が適切に行われているか否かを確認することができる。
また、上記S13において、H側パルス幅B1がL側パルス幅B2より5%以上長くない場合(図5参照)は、S15に進み、L側パルス幅B2がH側パルス幅B1より5%以上長いか否かをチェックする。
【0036】
S16において、L側パルス幅B2がH側パルス幅B1より5%以上長い場合(図4参照)は、S17に進み、電子ボリューム90にH信号を出力する(基準電位調整手段)。これにより、電子ボリューム90は、抵抗値を1段階上げて増幅回路60A,60Bに供給される基準電位の設定信号を低くする。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を1段階降下させる。その後は、S15に進み、上記S17で調整された基準電位に応じた流量パルスのH側パルス幅B1及びL側パルス幅B2の時間長を表示器100に表示する。
【0037】
また、上記S16において、L側パルス幅B2がH側パルス幅B1より5%以上長くない場合は、基準電位の調整を行わずにS15に進み、現在の基準電位(未調整の値)に応じた流量パルスのH側パルス幅B1及びL側パルス幅B2の時間長を表示器100に表示する。
【0038】
また、上記S12において、調整時間が経過していないときは、上記S13〜S17の処理を繰り返す。しかし、上記S12において、調整時間が経過したときは、S18に進み、現在の基準電位(未調整の値または調整後の値)に応じた流量パルスのH側パルス幅B1及びL側パルス幅B2の時間長を表示器100に表示する。
【0039】
このように、予め設定された調整時間内にS13〜S17の処理を繰り返すことにより、図6に示すようにH側パルス幅B1とL側パルス幅B2とがほぼ同一(B1≒B2)になり、デューティ比がほぼ50%(本実施例では、45〜55%以内に入るよう)に自動的に調整されると共に、表示器100により調整結果を確認することができる。
【実施例2】
【0040】
図8は制御回路80が実行する基準電位調整処理の実施例2を示すフローチャートである。尚、実施例2においては、上記ロータ20を組み付ける前段階、あるいはロータ20を外してセンサ50A,50Bがマグネット22の磁界を検出できない状態で基準電位の調整処理を行う。すなわち、マグネット22が存在しない状態では、センサ50A,50Bの出力は、ゼロであるはずなので、増幅回路60A,60Bの電位もゼロでなければならない。
【0041】
図8のS21において、基準電位調整スイッチ(図示せず)が手動操作によりオンに操作されると、S22に進み、増幅回路60A,60Bの電位がHレベルか否かをチェックする。S22において、増幅回路60A,60Bの電位がHレベルのときは、S24に進み、電子ボリューム90にH信号を出力する。これにより、電子ボリューム90は、抵抗値を1段階上げて増幅回路60A,60Bに供給される基準電位の設定信号を低くする。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を1段階降下させる。
【0042】
そして、調整された増幅回路60A,60Bの電位がLレベルか否かをチェックする(S24)。このS24において、増幅回路60A,60Bの電位がHレベルのときは、上記S23の処理を繰り返すことにより増幅回路60A,60Bの電位を徐々に低下させる。
【0043】
やがて増幅回路60A,60Bの電位がHレベルからLレベルに切り替わったときは、殆どゼロに近いLレベルであるので、S25に進み、電子ボリューム90にこのときの電位を基準電位として記憶させる。
【0044】
また、上記S22において、増幅回路60A,60Bの電位がHレベルでないときは、S26に進み、電子ボリューム90にL信号を出力する。これにより、電子ボリューム90は、抵抗値を1段階下げて増幅回路60A,60Bに供給される基準電位の指示信号を高くする。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を1段階上昇させる。
【0045】
そして、調整された増幅回路60A,60Bの電位がHレベルか否かをチェックする(S27)。このS27において、増幅回路60A,60Bの電位がLレベルのときは、上記S26の処理を繰り返すことにより増幅回路60A,60Bの電位を徐々に上昇させる。
【0046】
やがて増幅回路60A,60Bの電位がLレベルからHレベルに切り替わったときは、殆どゼロに近いHレベルであるので、S25に進み、電子ボリューム90にこのときの電位を基準電位として記憶させる。
【0047】
このように、実施例2では、センサ50A,50Bがマグネット22を検出しない状態のときに増幅回路60A,60Bの電位がゼロになるように増幅回路60A,60Bの電位を調整し、そのときの電位を基準電位として電子ボリューム90に設定することにより、図6に示すようにH側パルス幅B1とL側パルス幅B2とがほぼ同一(B1≒B2)になり、デューティ比がほぼ50%に自動的に調整することができるので、ロータ20を組み付けた状態では、センサ50A,50Bがマグネット22の通過を正確に検出することが可能になる。
【実施例3】
【0048】
図9は制御回路80が実行する基準電位調整処理の実施例3を示すフローチャートである。尚、図9に示す基準電位調整処理は、例えば、電源スイッチがオンに操作されたときに実行するようにしても良いし、あるいは所定の時間毎(例えば、24時間毎)に実行するようにしても良いし、あるいは調整スイッチ(図示せず)がオンに操作されたときに実行するようにしても良い。
【0049】
本実施例3においては、ロータ20の回転検出を行いながら基準電位のレベルを段階的に徐々に所定電位ずつ上げて(又は段階的に徐々に所定電位ずつ下げて)センサ信号aの最大値SHと交差する電位V1が検出された際の基準電位を上げた回数T1と、センサ信号aの最小値SLと交差する電位V2が検出された際の基準電位を上げた回数T2とを検出する。そして、回数差T2−T1の1/2の回数T3(中央値)を演算し、この回数T3分、電位を戻すことでV1とV2との中央の電位を基準電位として設定する。
【0050】
図9のS31では、電子ボリューム90によるカウンタの数値(T)を零リセットする。なお、この際の基準電位Vはマグネット22から検出されるセンサ信号aの最小値SLより小さい値か、最大値SHより大きい値とする。
【0051】
次に増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号より高レベル(ハイレベル)か否か(高レベルを維持しているか否か)をチェックする(S32)。このS32において、増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号より高レベルであるときは(図10(B)中、V1がセンサ信号の最大値SH以上)、S33に進み、電子ボリューム90にH信号を出力するとともにカウンタの数値を1カウントアップする。これにより、電子ボリューム90は、H信号が入力されるたびに抵抗値を所定値分上げて増幅回路60A,60Bに供給される基準電位の設定値を低下させる。そのため、増幅回路60A,60Bでは、H信号が入力されるたび基準電位を所定電位分降下させる。
【0052】
そして、調整された増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号の最大値SHより低レベルか否か(高レベルを維持しているか否か)をチェックする(S34)。このS34において、増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号の最大値SHより低レベルでないときは、上記S33の処理を繰り返すことにより、電子ボリューム90にH信号を繰り返し出力することにより増幅回路60A,60Bの電位を徐々に低下させる(図10(B)参照)。
【0053】
上記S34において、増幅回路60A,60Bの電位(V1)がセンサ信号の最大値SHより低レベルに達した場合(センサ信号がハイレベル−ローレベルを繰り返すように変動した場合)は、S35に進み、そのときのカウンタのカウント値T1をメモリに記憶させる。続いて、電子ボリューム90にH信号を出力するとともにカウンタの数値を1カウントアップする(S36)。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を降下させる。
【0054】
そして、調整された増幅回路60A,60Bの電位に対して交差するセンサ信号があるか否か(センサ信号がハイレベル−ローレベルを繰り返すように変動しているか否か)をチェックする(S37)。このS37において、調整された電位と交差するセンサ信号があるとき(センサ信号が変動しているとき)は、上記S36で電子ボリューム90にH信号を出力するとともにカウンタの数値を1カウントアップする。
【0055】
また、上記S36、S37を繰り返すことにより時間の経過と共に、電位のレベルがV1からV2に徐々に低下するように推移する(図10(B)中、黒点で示す参照)。そして、S37において、調整された電位と交差するセンサ信号がない(センサ信号が低レベル(ローレベル)を維持している)ときは、電位(V2)がセンサ信号の最小値SLを通過したため、S38に進み、そのときのカウンタのカウント値T2をメモリに記憶させる。これで、電位の降下によりセンサ信号の最大値SHと交差するカウント値T1とセンサ信号の最小値SLと交差するカウント値T2とが得られる。
【0056】
続いて、上記カウント値T2とT1との差に1/2を乗じてカウント値T3を演算する(S39)。このカウント値T3は、図10(B)において、降下する電位がセンサ信号の最大値SHと交差するカウント値T1とセンサ信号の最小値SLと交差するカウント値T2との中央値である。すなわち、カウント値T3は、電位を最小値SLの位置から上記中央値に戻すのに要するL信号の出力回数を意味する。
【0057】
そして、S40では、タイマカウンタが上記S39で演算したカウント値T3回分電子ボリューム90にL信号を出力し続ける。これにより、増幅回路60A,60Bの電位が徐々に上昇して最小値SLと最大値SHとの中央値に上昇する。このように、電位V2をカウント値T3回分上昇させると、増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)に調整される。
【0058】
この後、電子ボリューム90にセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)を基準電位として記憶させる(S41)。これで、増幅回路60A,60Bの基準電位をセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)に設定することができる。
【0059】
また、上記S32において、増幅回路60A,60Bの電位がHレベルでないときは(図10(A)中、V1がセンサ信号の最小値以下)、S42に進み、電子ボリューム90にL信号を出力するとともにカウンタの数値を1カウントアップする。これにより、電子ボリューム90は、増幅回路60A,60Bに出力する基準電位の設定値を1段階高くする。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を1段階上昇させる。
【0060】
そして、調整された増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号の最小値SLより高レベルか否か(センサ信号が変動しているか否か)をチェックする(S43)。このS43において、増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号の最小値SLより高レベルでないときは、上記S42の処理を繰り返すことにより、電子ボリューム90にL信号が何度も出力されることにより増幅回路60A,60Bの電位はL信号の出力回数分だけ上昇する(図10(A)参照)。
【0061】
上記S43において、増幅回路60A,60Bの電位(V1)がセンサ信号の最小値SLより高レベルに達したとき(センサ信号が変動しているとき)は、S44に進み、そのときのカウンタのカウント値T1をメモリに記憶させる。続いて、電子ボリューム90にL信号を出力するとともにカウンタのカウント値を1カウントアップする(S45)。そのため、増幅回路60A,60Bでは、基準電位を1段階上昇させる。
【0062】
そして、調整された増幅回路60A,60Bの電位に対して交差するセンサ信号があるか否か(センサ信号が変動しているか否か)をチェックする(S46)。このS46において、調整された電位と交差するセンサ信号があるとき(センサ信号が変動しているとき)は、上記S45で電子ボリューム90にL信号を出力するとともにカウンタのカウント値を1カウントアップする。
【0063】
また、上記S45、S46を繰り返されてL信号が何度も出力されることにより、電位のレベルがV2からV1に徐々に上昇するように推移する(図10(A)中、黒点で示す参照)。そして、S46において、調整された電位と交差するセンサ信号がない(センサ信号が変動しなくなった)ときは、電位(V1)がセンサ信号の最大値SHを通過したことが検出され、S47に進み、このときのカウンタのカウント値T2をメモリに記憶させる。これで、電位の上昇によりセンサ信号の最小値SLと交差する際のカウンタのカウント値T1とセンサ信号の最大値SHと交差する際のカウンタのカウント値T2とが得られる。
【0064】
続いて、上記カウント値T2とT1との差に1/2を乗じてカウント値T3を演算する(S48)。このカウント値T3は、図10(A)において、上昇する電位がセンサ信号の最小値SLと交差するカウント値T1とセンサ信号の最大値SHと交差するカウント値T2との中央値である。すなわち、カウント値T3は、電位を最小値SLの位置から上記中央値に戻すのに要するH信号の出力回数を意味する。
【0065】
そして、S49では、上記S48で演算したカウント値T3分のH信号を電子ボリューム90に出力する。これにより、増幅回路60A,60Bの電位が徐々に降下して最小値SLと最大値SHとの中央値に降下する。このように、電位V1を時間T3が経過する間に降下させ続けると、増幅回路60A,60Bの電位がセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)に調整される。
【0066】
この後、電子ボリューム90にセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)を基準電位として記憶させる(S41)。これで、増幅回路60A,60Bの基準電位をセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)に設定することができる。
【0067】
このように、実施例3では、増幅回路60A,60Bの基準電位をセンサ信号の最小値SLと最大値SHとの中央値(電位)に設定することにより、図6に示すようにH側パルス幅B1とL側パルス幅B2とがほぼ同一(B1≒B2)になり、デューティ比がほぼ50%に自動的に調整することができるので、ロータ20を組み付けた状態では、センサ50A,50Bがマグネット22の通過を正確に検出することが可能になる。
【0068】
なお、上記実施例では、S31においてカウンタのカウント値を零リセットし、その後電位を上昇(或いは低下)させる毎にカウンタのカウント値を1カウントアップさせるようにしているが、カウンタのカウント値の零リセットはS31において行うのではなく、例えば、S35及びS44のカウンタのカウント数T1を記憶する処理においてカウンタのカウント値Tを零リセットするようにしても良い。そして。この場合にはカウンタのカウント値T2が計測された場合にはこのカウント値の1/2のカウント値分電位を上昇あるいは低下させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記実施例では、タービン式流量計のロータの回転検出を磁気的に検出する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、流量に比例して回転する回転体を有する他の形式の流量計にも適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による流量計測装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】A相とB相の流量パルスによるロータの回転方向の判別とパルス幅が狭くなった場合の計測誤差を説明するための波形図である。
【図3】基準電位の設定値によって流量パルスが生成されない場合を説明するための波形図である。
【図4】基準電位の設定値がH側にずれた場合の波形整形を説明するための波形図である。
【図5】基準電位の設定値がL側にずれた場合の波形整形を説明するための波形図である。
【図6】基準電位の設定値が正しい場合の波形整形を説明するための波形図である。
【図7】実施例1の制御回路80が実行する基準電位調整処理を示すフローチャートである。
【図8】実施例2の制御回路80が実行する基準電位調整処理を示すフローチャートである。
【図9】実施例3の制御回路80が実行する基準電位調整処理を示すフローチャートである。
【図10】実施例3の基準電位調整処理を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0071】
10 流量計測装置
20 ロータ
22 マグネット
30 流量計
40 計数部
50A,50B センサ
60A,60B 増幅回路
70A,70B 波形整形回路
80 制御回路
90 電子ボリューム
100 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測流体の流量に応じて回転する回転体と、
該回転体に設けられたマグネットと、
該マグネットの通過を検出するセンサと、
該センサから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路と、
該増幅回路で増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路と、
前記流量パルスをカウントして流量を演算する演算回路と、
を有する流量計測装置において、
前記増幅回路の基準電位を変更して前記センサ信号の最大値と最小値との中央値が増幅回路の基準電位になるように調整する基準電位調整手段を備えたことを特徴とする流量計測装置。
【請求項2】
被測流体の流量に応じて回転する回転体と、
該回転体に設けられたマグネットと、
該マグネットの通過を検出するセンサと、
該センサでから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路と、
該増幅回路で増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路と、
前記流量パルスをカウントして流量を演算する演算回路と、
を有する流量計測装置において、
前記回転体が無い状態で前記増幅回路の基準電位を変化させ、前記センサの出力がゼロになったときの前記増幅回路の電位を基準電位として設定する基準電位設定手段を備えたことを特徴とする記載の流量計測装置。
【請求項3】
被測流体の流量に応じて回転する回転体と、
該回転体に設けられたマグネットと、
該マグネットの通過を検出するセンサと、
該センサから出力されたセンサ信号を増幅する増幅回路と、
該増幅回路で増幅された信号から流量パルスを生成する波形整形回路と、
前記流量パルスをカウントして流量を演算する演算回路と、
を有する流量計測装置において、
前記基準電位を変化させ、前記基準電位が前記センサ信号の最小値と交差するときの最小電位と最大値と交差するときの最大電位とから当該最小電位と最大電位との中間値である中央電位を演算し、当該中央電位を前記増幅回路の基準電位として設定する基準電位設定手段を備えたことを特徴とする流量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−263858(P2007−263858A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91477(P2006−91477)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】