説明

流量計測装置

【課題】計測された流量を、低消費電力で高精度に所望の温度における流量へ補正できる流量計測装置の提供することを目的とする。
【解決手段】流路1に設けられ第1超音波振動子2及び第2超音波振動子3と、流路1に流れる流体の温度を測定する温度測定手段8と、伝播時間を計時する伝播時間測定手段4と、伝播時間から流量を演算する流量演算手段5と、伝播時間から算出される流体の温度や温度測定手段8で測定された流体の温度から流量を所望の温度での流量に補正する流量補正手段6とを備え、流量補正手段6は、温度測定手段8で測定した流体の温度と伝播時間から算出した流体の温度の差を温度補正値として保持し、伝播時間から算出された流体の温度で流量を補正する場合、温度補正値で算出された温度を補正して流量の補正を行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波を利用してガス、水などの流体の流れを計測する流量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流体の流量計測装置は、図5に示すようなものが一般的であった(例えば、特許文献1)。この装置は流体の流れる流路11に設置した第1超音波振動子12および第2超音波振動子13と、流路11に流れる流体の実温度を測定する温度測定手段18と、第1超音波振動子12、第2超音波振動子13を駆動し超音波信号の送受信の伝播時間を計時する伝播時間測定手段14と、伝播時間測定手段14での測定タイミングを制御する制御手段17と、伝播時間測定手段14で測定された伝播時間から流量を演算する流量演算手段15と、温度測定手段18で測定された温度に従い算出された流量を補正する流量補正手段16から構成されている。
【0003】
この装置において制御手段17は測定タイミングになれば伝播時間測定手段14を動作させる。伝播時間測定手段14は、制御手段17の指示に基づき第1超音波振動子12と第2超音波振動子13を駆動して両超音波振動子間で送受信される超音波信号の伝播時間を測定する。流量演算手段15は、伝播時間測定手段14で測定された伝播時間から流路11を流れる流体の流速及び流量を算出する。温度測定手段18は流路11を流れる流体の実温度を測定する。流量補正手段16は、流量演算手段15で算出された流量を温度測定手段18で測定した温度から所望の温度での流量に補正していた。
【0004】
また、特許文献1には、図6に示すような流量計測装置も開示されている。この装置は流体の流れる流路11に設置した第1超音波振動子12および第2超音波振動子13と、第1超音波振動子12、第2超音波振動子13を駆動し超音波信号の送受信の伝播時間を計時する伝播時間測定手段14と、伝播時間測定手段14での測定タイミングを制御する制御手段17と、伝播時間測定手段14で測定された伝播時間から流量を演算する流量演算手段15と、伝播時間測定手段14で測定された伝播時間から算出した流体の温度に従い流量演算手段15で算出された流量を補正する流量補正手段16から構成されている。
【0005】
この装置において制御手段17は測定タイミングになれば伝播時間測定手段14を動作させる。伝播時間測定手段14は、制御手段17の指示に基き第1超音波振動子12と第2超音波振動子13を駆動して両超音波振動子間で送受信される超音波信号の伝播時間を測定する。流量演算手段15は、伝播時間測定手段14で測定された伝播時間から流路11を流れる流体の流速及び流量を算出する。流量補正手段16は、流量演算手段15で算出された流量を伝播時間測定手段14で測定した伝播時間から算出できる流路を流れる流体の温度から所望の温度での流量に補正していた。
【0006】
ここで、一般的に気体の音速Cと温度Tは一次式で近似することができる。すなわち
C=A×T+C0 A:温度係数 C0:その気体の0℃での音速
と表すことができる。また超音波信号の伝播時間tは第1超音波振動子12と第2超音波振動子13の間の距離Lを流体の音速で割った値になるので、
t=L/C=L/(A×T+C0)
と表すことができる。
【0007】
従って、
T=(L/t−C0)/A
となり、流路を流れる流体が予め判明している場合は音速の温度係数Aと0℃での音速C0が定数になるので、流体の温度Tは伝播時間tから算出することができる。このようにして超音波の伝播時間から流体の温度を算出することで所望の温度での流量に補正していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−241988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の温度測定手段18を用いた上記従来の流量計測装置では、一般的に温度測定手段18にサーミスタを用いるがサーミスタに常時電源供給する必要があるため消費電力が大きくなる課題があった。
【0010】
また、伝播時間から流体温度を算出する上記従来の流量計測装置では、温度測定手段を用いないため低消費電力化はできるが、伝播時間から流体温度を算出する時に、超音波振動子間の寸法バラツキや伝播時間の測定バラツキ、測定誤差などのため高精度に流体温度を算出できず、所望の温度へ流量補正も精度良くできないという課題があった。
【0011】
すなわち、従来の流量計測装置では、低消費電力化と所望温度流量への補正の高精度化が両立できないという課題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、計測した流量を所望の温度での流量に低消費電力でかつ高精度に補正できる流量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の流量計測装置は、流体管路に設けられ超音波信号を送受信する第1振動子及び第2振動子と、前記流体管路に流れる流体の温度を測定する温度測定手段と、前記第1振動子と前記第2振動子間の超音波信号の伝播時間を計時する伝播時間測定手段と、前記伝播時間測定手段で測定された超音波信号の伝播時間から流量を演算する流量演算手段と、前記伝播時間測定手段で計時された伝播時間から算出される流体の温度や前記温度測定手段で測定された流体の温度から前記流量演算手段で算出された流量を所望の温度での流量に補正する流量補正手段とを備え、前記流量補正手段は、前記温度測定手段で測定した流体の温度と伝播時間から算出した流体の温度の差を温度補正値として保持し、伝播時間から算出された流体の温度で流量を補正する場合、前記温度補正値で算出された温度を補正して流量の補正を行うものである。
【0014】
そして、通常は伝播時間から算出した温度に基いて流量を補正するが、定期的に前記温度測定手段で測定した温度と伝播時間から算出した温度の差を温度補正値として更新し、通常伝播時間から流体温度を算出するときの温度補正値として反映させるものである。
【0015】
これによって、通常は伝播時間から算出される温度で流量を補正するので低消費電力化が実現できる。そして、必要に応じ、温度測定手段を用い、流体の温度を高精度で測定して伝播時間から算出した温度との差を温度補正値として更新し、その温度補正値を通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち、低消費電力で高精度な流量補正が実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の流量計測装置は、通常は伝播時間から算出される温度で流量補正するので低消費電力化が実現できる。そして、定期的に温度測定手段で温度を測定し伝播時間から算出した温度との差を温度補正値として更新し、その温度補正値を通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち低消費電力で高精度な流量補正が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1、2、3における流量計測装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における流量計測装置の動作フロー図
【図3】本発明の実施の形態2における流量計測装置の動作フロー図
【図4】本発明の実施の形態3における流量計測装置の動作フロー図
【図5】従来の超音波流量計の構成図
【図6】従来の超音波流量計の構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、流体管路に設けられ超音波信号を送受信する第1振動子及び第2振動子と、前記流体管路に流れる流体の温度を測定する温度測定手段と、前記第1振動子と前記第2振動子間の超音波信号の伝播時間を計時する伝播時間測定手段と、前記伝播時間測定手段で測定された超音波信号の伝播時間から流量を演算する流量演算手段と、前記伝播時間測定手段で計時された伝播時間から算出される流体の温度や前記温度測定手段で測定された流体の温度から前記流量演算手段で算出された流量を所望の温度での流量に補正する流量補正手段とを備え、前記流量補正手段は、前記温度測定手段で測定した流体の温度と伝播時間から算出した流体の温度の差を温度補正値として保持し、伝播時間から算出された流体の温度で流量を補正する場合、前記温度補正値で算出された温度を補正して流量の補正を行うものである。
【0019】
そして、通常は伝播時間から算出される温度で流量補正するので低消費電力化が実現でき、必要に応じて、温度測定手段を用い、流体の温度を高精度で測定して伝播時間から算出した温度との差を温度補正値として更新し、その温度補正値を通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち低消費電力で高精度な流量補正が実現できる。
【0020】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記流量補正手段は、前記温度測定手段で所定時間毎に流体の温度を測定して、保持している前記温度補正値を更新することを特徴とするものである。
【0021】
そして、通常は伝播時間から算出した温度で流量の補正を行うが、定期的に前記温度測定手段で測定した流体の実際の温度と伝播時間から算出した流体温度の差を温度補正値として更新し、通常伝播時間から流体温度を算出するときの温度補正値として反映させるものである。そして、定期的に温度測定手段で温度を測定し伝播時間から算出した温度との差を温度補正値として更新し、その温度補正値を通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち低消費電力で高精度な流量補正が実現できる。
【0022】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記流量補正手段は、前記流量演算手段で計測した流量が所定流量以上のときに前記温度測定手段で流体の温度を測定して、保持している前記温度補正値を更新することを特徴とするものである。
【0023】
そして、実際に流量がある値以上流れている時は高精度に、それ以外は極力低消費電力に流量の補正ができるので、第2の発明より効率的に低消費電力化と流量の高精度な流量補正の両立が実現できる。
【0024】
第4の発明は、特に第1の発明において、前記流量補正手段は、前記伝播時間測定手段で計時された伝播時間から算出した温度が前記温度測定手段で前回測定した流体の温度から所定値以上変化した場合に、前記温度測定手段で流体の温度を測定して、保持している前記温度補正値を更新することを特徴とするものである。
【0025】
そして、温度変化があったと判定した場合は温度補正値を更新して高精度に流量の補正を行い、温度変化が少ないと判定した場合は温度補正値を更新せずに低消費電力に流量の補正ができるので、第2の発明より効率的に低消費電力化と流量の高精度な補正の両立が実現できる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における流量計測装置の構成図を示すものである。図2は、本発明の第1の実施の形態における流量計測装置の動作フロー図である。
【0028】
図1において、流路1の途中に超音波を送受信する第1超音波振動子2(第1振動子)と第2超音波振動子3(第2振動子)が配置されている。温度測定手段8は、制御手段7からの指示に従い、流路1を流れる流体の温度を直接測定する(以降、温度測定手段8で測定された流体の温度を実温度と称す)。伝播時間測定手段4は、制御手段7からの指示に従い、第1超音波振動子2と第2超音波振動子3を駆動して両超音波振動子間を送受信する超音波信号の伝播時間を計測する。流量演算手段5は、伝播時間測定手段4で測定された超音波信号の伝播時間から流路1に流れる流量を演算する。
【0029】
流量補正手段6は、流量演算手段5で算出された流量を、温度測定手段8で測定された流体の実温度や、伝播時間測定手段4で計測された伝播時間から算出した流体の温度から、所望の温度での流量に補正する流量補正手段である。制御手段7は、伝播時間測定手段4へ流量計測の指示を出力すると共に、温度測定手段8に流体の実温度測定の指示を出力する。
【0030】
以上のように構成された流量計測装置について、以下その動作、作用を図2を用いて説明する。
【0031】
まず、S001で流量計測が開始される。S002で伝播時間から算出した流体の温度Tと実温度Trealの温度差を温度補正値△Tとして△T=0と初期化する。S003で流量を計測するタイミングになれば制御手段7は伝播時間測定手段4に流量計測の指示を出力する。伝播時間測定手段4は、S004で制御手段7からの指示によりオンし、S005で第1超音波振動子2と第2超音波振動子3を駆動し、S006で両超音波振動子間を送受信する超音波信号の伝播時間を測定し出力する。S007で流量演算手段5は伝播時間測定手段4から出力された伝播時間に基いて流路1を流れる流量を演算し出力する。流量補正手段6は、S008で伝播時間測定手段4から出力された伝播時間から流体の温度を算出し、S009で算出した流体の温度をT’として温度補正値△Tだけ更に補正し、S010で補正後の流体温度T’に基き計測流量を所望温度での流量に補正する。
【0032】
制御手段7は、S011で流体の実温度を測定した履歴が無い場合か、S015で前回
流体の実温度を測定してから所定時間以上の時間が経過していれば温度測定手段8に流体の実温度を測定する指示を出力する。そうでない場合は流体の実温度を測定する指示を出力せずにS003の流量計測のタイミング待ちに戻る。温度測定手段8は、S012で制御手段7から流体の温度測定の指示を受けてオンし、S013で流体の実温度Trealを測定し出力する。流量補正手段6は、S014で伝播時間から前回算出した流体温度Tと温度測定手段8から出力された流体の実温度Trealとの差分を新たな温度補正値△Tとして更新する。そしてS003に戻り計測のタイミング待ちとなる。
【0033】
以上のように、通常は流量演算手段5で算出した流量を、伝播時間と温度補正値△Tから算出した流体温度T’に基づき所望温度での流量を算出する。そして、流体の実温度が未測定の場合や前回実温度を測定してから所定時間以上の時間が経過していれば流体の実温度を測定し、伝播時間から算出した温度と実温度との差を新たな温度補正値△Tとして更新する。こうすることで、通常は温度測定手段8をオンすることなく伝播時間から算出される温度で流量補正するので低消費電力化が実現できる。そして、定期的に温度測定手段8で実温度を測定し伝播時間から算出した温度との差を温度補正値△Tとして更新し、その温度補正値△Tを通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち低消費電力で高精度な流量補正が実現できる。
【0034】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における流量計測装置の動作フロー図を示すものである。本発明の第2の実施の形態における流量計測装置の構成図も図1になる。
【0035】
図1において、第1の実施の形態とは制御手段7が温度測定手段8に流体の実温度を測定することを指示するタイミングが異なる。本発明の第1の実施の形態では、実温度を未測定かもしくは前回実温度を測定してから一定時間以上経過している場合に、実流量を測定する指示を出力していた。しかしながら本発明の第2の実施の形態においては流量がある値以上流れていると判定した場合に実流量を測定する指示を出力する。
【0036】
以上のように構成された超音波流量計について以下その動作、作用を図3を用いて説明する。
【0037】
まず、S101で流量計測が開始される。S102で伝播時間から算出した流体の温度Tと実温度Trealの温度差を温度補正値△Tとして△T=0と初期化する。S103で流量を計測するタイミングになれば制御手段7は伝播時間測定手段4に流量計測の指示を出力する。伝播時間測定手段4はS104で制御手段7からの指示によりオンし、S105で第1超音波振動子2と第2超音波振動子3を駆動し、S106で両超音波振動子間を送受信する超音波信号の伝播時間を測定し出力する。S107で流量演算手段5は伝播時間測定手段4から出力された伝播時間に基いて流路1を流れる流量を演算し出力する。
【0038】
流量補正手段6はS108で伝播時間測定手段4から出力された伝播時間から流体の温度を算出し、S109で算出した流体の温度をT’として温度補正値△Tだけ更に補正し、S110で補正後の流体温度T’に基き計測流量を所望温度での流量に補正する。S116で制御手段7は流量がある値以上流れていると判定した場合は温度測定手段8に流体の実温度を測定する指示を出力する。そうでない場合は流体の実温度を測定する指示を出力せずにS103の流量計測のタイミング待ちに戻る。温度測定手段8はS112で制御手段7から流体の温度測定の指示を受けてオンし、S113で流体の実温度Trealを測定し出力する。S114で流量補正手段6は伝播時間から前回算出した流体温度Tと温度測定手段8から出力された流体の実温度Trealとの差分を新たな温度補正値△Tとして更新する。そしてS103に戻り計測のタイミング待ちとなる。
【0039】
以上のように、通常は流量演算手段5で算出した流量を、伝播時間と温度補正値△Tから算出した流体温度T’に基づき所望温度での流量を算出する。そして流量がある値以上流れていると判定した場合は流体の実温度を測定し、伝播時間から算出した温度と実温度との差を新たな温度補正値△Tとして更新する。こうすることで、通常は温度測定手段8をオンすることなく伝播時間から算出した温度で流量補正するので低消費電力化が実現できる。そして実際に流量がある値以上流れた場合に温度測定手段8で実温度を測定し伝播時間から算出した温度との差を温度補正値△Tとして更新し、その温度補正値△Tを通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち本発明の第1の実施の形態より低消費電力で高精度な流量補正を効率良く実現できる。
【0040】
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態における流量計測装置の動作フロー図を示すものである。本発明の第3の実施の形態における流量計測装置の構成図も図1になる。
【0041】
図1において、第1の実施の形態とは制御手段7が温度測定手段8に流体の実温度を測定することを指示するタイミングが異なる。本発明の第1の実施の形態では、実温度を未測定かもしくは前回実温度を測定してから一定時間以上経過している場合に実流量を測定する指示を出力していた。しかしながら本発明の第3の実施の形態においては、流体の実温度が未測定か、もしくは前回流体の実温度を測定してからある値以上温度変化があったと判定した場合に実流量を測定する指示を出力する。
【0042】
以上のように構成された超音波流量計について以下その動作、作用を図4を用いて説明する。
【0043】
まず、S201で流量計測が開始される。S202で伝播時間から算出した流体の温度Tと実温度Trealの温度差を温度補正値△Tとして△T=0と初期化する。S203で流量を計測するタイミングになれば制御手段7は伝播時間測定手段4に流量計測の指示を出力する。伝播時間測定手段4はS204で制御手段7からの指示によりオンし、S205で第1超音波振動子2と第2超音波振動子3を駆動し、S206で両超音波振動子間を送受信する超音波信号の伝播時間を測定し出力する。S207で流量演算手段5は伝播時間測定手段4から出力された伝播時間に基いて流路1を流れる流量を演算し出力する。
【0044】
流量補正手段6はS208で伝播時間測定手段4から出力された伝播時間から流体の温度を算出し、S209で算出した流体の温度をT’として温度補正値△Tだけ更に補正し、S210で補正後の流体温度T’に基き計測流量を所望温度での流量に補正する。制御手段7はS211で流体の実温度を測定した履歴が無い場合か、S217で前回流体の実温度を測定してから一定以上の温度変化があったと判定した場合は温度測定手段8に流体の実温度を測定する指示を出力する。そうでない場合は流体の実温度を測定する指示を出力せずにS203の流量計測のタイミング待ちに戻る。温度測定手段8はS212で制御手段7から流体の温度測定の指示を受けてオンし、S213で流体の実温度Trealを測定し出力する。S214で流量補正手段6は伝播時間から前回算出した流体温度Tと温度測定手段8から出力された流体の実温度Trealとの差分を新たな温度補正値△Tとして更新する。そしてS203に戻り計測のタイミング待ちとなる。
【0045】
以上のように、通常は流量演算手段5で算出した流量を、伝播時間と温度補正値△Tから算出した流体温度T’に基づき所望温度での流量を算出する。そして流体の実温度を未測定の場合や前回実温度を測定してから一定以上の温度変化があると判定した場合は流体
の実温度を測定し、伝播時間から算出した温度と実温度との差を新たな温度補正値△Tとして更新する。こうすることで、通常は温度測定手段8をオンすることなく伝播時間から算出される温度で流量補正するので低消費電力化が実現できる。そして前回実温度を測定してから一定以上の温度変化があったと判断した場合に温度測定手段8で実温度を測定し伝播時間から算出した温度との差を温度補正値△Tとして更新し、その温度補正値△Tを通常伝播時間から流体の温度を算出する時の温度補正値として反映させることで高精度に流体温度を算出することが可能になり、所望温度での流量への補正も高精度に実現できる。すなわち本発明の第1の実施の形態より低消費電力で高精度な流量補正を効率良く実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる流量計測装置は、通常は温度測定手段をオンせず、伝播時間から算出される温度で流量補正するので低消費電力化ができる。そして定期的に温度測定手段で流体の実温度を測定し、伝播時間から算出される温度との誤差を補正することで高精度に流量補正することができ、低消費電力で高精度な流量補正が可能となる。従って、非常に低消費電力で高精度の流量計測装置を実現することが可能となるので、流量測定基準器及びガスメーターや水道メーター等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 流路(流体管路)
2 第1超音波振動子(第1振動子)
3 第2超音波振動子(第2振動子)
4 伝播時間測定手段
5 流量演算手段
6 流量補正手段
7 制御手段
8 温度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管路に設けられ超音波信号を送受信する第1振動子及び第2振動子と、
前記流体管路に流れる流体の温度を測定する温度測定手段と、
前記第1振動子と前記第2振動子間の超音波信号の伝播時間を計時する伝播時間測定手段と、
前記伝播時間測定手段で測定された超音波信号の伝播時間から流量を演算する流量演算手段と、
前記伝播時間測定手段で計時された伝播時間から算出される流体の温度や前記温度測定手段で測定された流体の温度から前記流量演算手段で算出された流量を所望の温度での流量に補正する流量補正手段と、
を備え、
前記流量補正手段は、前記温度測定手段で測定した流体の温度と伝播時間から算出した流体の温度の差を温度補正値として保持し、伝播時間から算出された流体の温度で流量を補正する場合、前記温度補正値で算出された温度を補正して流量の補正を行う構成とされていること、
を特徴とする流量計測装置。
【請求項2】
前記流量補正手段は、前記温度測定手段で所定時間毎に流体の温度を測定して、保持している前記温度補正値を更新することを特徴とする請求項1記載の流量計測装置。
【請求項3】
前記流量補正手段は、前記流量演算手段で計測した流量が所定流量以上のときに前記温度測定手段で流体の温度を測定して、保持している前記温度補正値を更新することを特徴とする請求項1記載の流量計測装置。
【請求項4】
前記流量補正手段は、前記伝播時間測定手段で計時された伝播時間から算出した温度が前記温度測定手段で前回測定した流体の温度から所定値以上変化した場合に、前記温度測定手段で流体の温度を測定して、保持している前記温度補正値を更新することを特徴とする請求項1記載の流量計測装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257332(P2011−257332A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133626(P2010−133626)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】