説明

流量調節弁

【課題】流量調節ツマミを回転させて流量を調節する際に、ニードル弁がハウジングの内壁と接触して摩耗によりパーティクルが発生するのを防止する。
【解決手段】弁孔13が形成されたハウジング11と、該ハウジング11内の弁座16に対して移動するニードル弁60と、ハウジング11から延びるニードル弁60の基端に取付けられた流量調節ツマミ40とを備え、流量調節ツマミ40を回転することによって、ニードル弁60を弁座16に対して移動させ、それにより、弁孔13を流れる流体の流量を調節する流量調節弁において、ニードル弁60が、流量調節ツマミ40に連結される第一部分64と弁座16に係合する第二部分65とからなり、流量調節ツマミ40を回転することに基づく第一部分64の回転が第二部分65に伝達されないように、第一部分64と第二部分65とが連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座に対してニードル弁を移動させることにより流量を調節するようにした流量調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では種々の分野において、例えば特許文献1に開示されるような流量調節弁が使用されている。このような流量調節弁は、弁孔が形成されたハウジングと、該ハウジング内の弁座に対して移動するニードル弁と、前記ハウジングから延びる前記ニードル弁の基端に取付けられた流量調節ツマミと、前記ハウジングと前記ニードル弁との間のシール状態を調節するシールナットと、前記ハウジングをパネルに固定するパネルナットとを具備し、前記流量調節ツマミを回転することによって、前記ニードル弁を前記弁座に対して移動させ、それにより、前記弁孔を流れる流体の流量を調節している。
【0003】
このような流量調節弁が半導体製造装置の構成部品として使用されている場合には、流量調節弁は半導体製造装置の操作パネル、または半導体製造装置のハウジング等に取付けられる。図4(a)から図4(c)は、一般的な流量調節弁をパネルに取付ける取付け方を説明するための図である。これら図面に示されるように、流量調節弁100をパネル700に取付ける際には、流量調節ツマミ400、シールナット900、パネルナット300を順番に取外し(図4(a))、パネル700に予め形成された穴750にニードル弁600の基端からハウジング110の延長部210を挿入する(図4(b))。次いで、パネルナット300を延長部210に取付けて、流量調節弁100を固定する。その後、シールナット900、流量調節ツマミ400を再び取付けて、流量調節弁を使用できるようにする(図4(c))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−230407号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流量調節弁100がパネル700に取付けられた後においては流量調節ツマミ400は露出した状態にあるので、使用者が不注意等により流量調節弁100のツマミ400に接触し、それにより、一旦設定された流量調節弁100の流量が変動する可能性がある。
【0006】
また、流量調節弁100のツマミ400が不注意などで回転するときには流量が変動するだけでなく、ツマミ400と共にニードル弁600が回転し、それにより、ニードル弁600とハウジング110との間の摩耗によりパーティクルが生じて流体に混入する可能性がある。特に、ニードル弁600が弁座に当接しているときには、ニードル弁600と弁座との間の磨耗により生じたパーティクルも流体に混入する。
【0007】
さらに、図4(a)から図4(c)を参照して前述したように流量制御弁をパネル700に取付けるときには使用者はシールナット900を一旦取外している。シールナット900は流量調節弁のシール状態を設定する部品であるので、シールナット900を取外してしまうと、流量調節弁の出荷時におけるシール状態が維持されなくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、使用者等の不注意により流量が変動するのを防止することのできる流量調節弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために1番目に記載の発明によれば、弁孔が形成されたハウジングと、該ハウジング内の弁座に対して移動するニードル弁と、前記ハウジングから延びる前記ニードル弁の基端に取付けられた流量調節ツマミとを備え、前記流量調節ツマミを回転することによって、前記ニードル弁を前記弁座に対して移動させ、それにより、前記弁孔を流れる流体の流量を調節する流量調節弁において、前記流量調節ツマミが回転するのを固定するツマミ固定手段を具備する流量調節弁が提供される。
【0010】
すなわち1番目の発明においては、流量調節ツマミを操作する際にはツマミ固定手段によって流量調節ツマミの固定状態を解除する必要がある。従って、使用者等が不注意により流量調節ツマミに接触した際に流量調節弁の流量が変動するのを防止することができる。ツマミ固定手段としてロックナットを使用するのが好ましい。
【0011】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記流量調節ツマミ固定手段の寸法は少なくとも前記流量調節ツマミの寸法よりも大きいようにした。
すなわち2番目の発明においては、使用者は片手で流量調節ツマミおよびツマミ固定手段の両方を把持し、使用者から遠位に位置するツマミ固定手段を緩めた後で流量調節ツマミを調節できるので、流量調節弁の流量を容易に調節できる。
【0012】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、さらに、前記ハウジングと前記ニードル弁との間のシール状態を調節するシール調節手段を具備し、前記シール調節手段が前記ハウジングの一部として形成されていて、固定ピンにより前記ハウジングに固定されている。
すなわち3番目の発明においては、シール調節手段が固定されているので製造業者によって予め設定されたシール状態の初期値が使用時に変動するのを防止することができる。なお、固定ピンは、例えばスプリングロールピンである。
【0013】
4番目の発明によれば、弁孔が形成されたハウジングと、該ハウジング内の弁座に対して移動するニードル弁と、前記ハウジングから延びる前記ニードル弁の基端に取付けられた流量調節ツマミとを備え、前記流量調節ツマミを回転することによって、前記ニードル弁を前記弁座に対して移動させ、それにより、前記弁孔を流れる流体の流量を調節する流量調節弁において、前記ニードル弁が、前記流量調節ツマミに連結される第一部分と前記弁座に係合する第二部分とからなり、前記流量調節ツマミを回転することに基づく前記第一部分の回転が前記第二部分に伝達されないように、前記第一部分と前記第二部分とが連結されている流量調節弁が提供される。
【0014】
すなわち4番目の発明においては、流量調節ツマミを回転させて流量を調節する際に、ニードル弁の第二部分がハウジングの内壁と接触して摩耗によりパーティクルが発生するのを防止できる。特に、流量調節弁が閉弁状態に在る場合には、ニードル弁の先端と弁孔との間でパーティクルが発生することも防止できる。
【0015】
5番目の発明によれば、4番目の発明において、前記ニードル弁の前記第一部分には前記ハウジングに螺合するネジ山部が形成されており、さらに、該ネジ山部と前記弁孔との間において前記ニードル弁周りに設けられたシール部材を具備する。
すなわち5番目の発明においては、ニードル弁のネジ山部が摩耗してパーティクルが発生したとしても、シール部材が存在するので、ネジ山部において発生したパーティクルが流体に混入するのを避けられる。
【0016】
6番目の発明によれば、弁孔が形成されたハウジングと、該ハウジング内の弁座に対して移動するニードル弁と、前記ハウジングから延びる前記ニードル弁の基端に取付けられた流量調節ツマミとを備え、前記流量調節ツマミを回転することによって、前記ニードル弁を前記弁座に対して移動させ、それにより、前記弁孔を流れる流体の流量を調節する流量調節弁において、前記流量調節ツマミの周面から延びるスリーブを具備し、該スリーブが前記シール調節手段周りを被覆するように形成されている流量調節弁が提供される。
【0017】
すなわち6番目の発明においては、スリーブによってシール調節手段が被覆されるので、使用者等が不注意によりシール調節手段にアクセスするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
1番目から5番目の発明によれば、使用者等の不注意により流量が変動するのを防止するという共通の効果を奏しうる。
さらに、2番目の発明によれば、流量調節弁の流量を容易に調節できるという効果を奏しうる。
さらに、3番目の発明によれば、製造業者によって予め設定されたシール状態の初期値がパネル取付時に変動するのを防止することができるという効果を奏しうる。
さらに、4番目の発明によれば、ニードル弁の第二部分がハウジングの内壁と接触して摩耗によりパーティクルが発生するのを防止できるという効果を奏しうる。
さらに、5番目の発明によれば、ネジ山部において発生したパーティクルが流体に混入するのを避けられるという効果を奏しうる。
さらに、6番目の発明によれば、使用者等が不注意によりシール調節手段にアクセスするのを防止することができるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)本発明の第一の実施形態に基づく流量調節弁の正面図である。(b)本発明の第一の実施形態に基づく流量調節弁の側断面図である。
【図2】(a)図1に示されるニードル弁の連結状態を説明するための第一の図である。(b)図1に示されるニードル弁の連結状態を説明するための第二の図である。
【図3】(a)本発明の第二の実施形態に基づく流量調節弁の正面図である。(b)本発明の第二の実施形態に基づく流量調節弁の側断面図である。
【図4】(a)一般的な流量調節弁をパネルに取付ける取付け方を説明するための第一の図である。(b)一般的な流量調節弁をパネルに取付ける取付け方を説明するための第二の図である。(c)一般的な流量調節弁をパネルに取付ける取付け方を説明するための第三の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1(a)は本発明の第一の実施形態に基づく流量調節弁の正面図であり、図1(b)は本発明の第一の実施形態に基づく流量調節弁の側断面図である。これら図面に示されるように、本発明の流量調節弁10のハウジングは、下方部分11と上方部分20とから構成されている。ハウジングの下方部分11には流入口18と流出口19とが形成されており、これら流入口18および流出口19は後述する弁孔13および軸孔14を介して下方部分11内において互いに連通している。
【0021】
図1(b)から分かるように、ハウジングの下方部分11には該下方部分11よりも幅狭の下方スリーブ12が設けられている。一方、ハウジングの上方部分20には、下方スリーブ12に係合する上方スリーブ22が形成されている。図示されるように、下方スリーブ12の外面と上方スリーブ22の内面とにそれぞれ形成されたネジ山部によって、ハウジングの上方部分20は下方部分11に螺合している。そして、上方部分20は固定ピンとしての役目を果たすスプリングロールピン15によって下方部分11に固定されている。スプリングロールピン15は上方部分20の上方スリーブ22と下方部分11の下方スリーブ12とを連結しており、通常はスプリングロールピン15は外部からアクセスできない位置に配置されている。そして、ハウジングの下方部分11と上方部分20とが一旦組み付けられると、ニードル弁60の大部分が挿入される共通の軸孔14がハウジング内に形成されるようになる。なお、スプリングロールピン15以外の手段によって上方部分20と下方部分11とを固定するようにしてもよい。
【0022】
なお、図1(a)および図1(b)に示される実施形態においては、ハウジングの上方部分20は、上方部分20とニードル弁60との間のシール状態を調節するシール調節部材としての役目を果たしうる。しかしながら、図示されるように通常はスプリングロールピン15によって上方部分20が下方部分11に固定されている。すなわち、本発明の第一の実施形態においては製造業者によって予め設定されたシール状態の初期値が維持されるので、使用者等がハウジングの上方部分20に接触したとしても、上方部分20とニードル弁60との間のシール状態が変化することはない。特に、図4を参照して説明したように従来技術の流量調節弁100をパネルに取付ける際にはシールナットを取外すので、シール状態の初期値が変更される可能性がある。しかしながら、本発明においては、パネル取付時においても、シール調節部材としての上方部分20を取外す必要がないので、シール状態は変動しない。
【0023】
上方部分20よりも幅狭の筒状延長部21がハウジングの上方部分20から延びている。さらに、図示されるように、ニードル弁60が延長部21の上方から延びている。延長部21の外面にはネジ山部が形成されており、パネルナット30が延長部21のネジ山部に螺合している。このパネルナット30は流量調節弁10をパネル(図示しない)に固定するのに使用される。従って、通常は延長部21の長さはパネルの厚さとパネルナット30の厚さとの合計よりも大きい。
【0024】
さらに、図1(b)に示されるように、ニードル弁60の基端には流量調節ツマミ40が取付けられている。流量調節ツマミ40に形成された孔にニードル弁の基端を挿入し、固定ネジ41によって流量調節ツマミ40をニードル弁60に固定している。また、図1(a)および図1(b)に示されるように流量調節ツマミ40とパネルナット30との間には後述するロックナット35がネジ山部61に螺合している。図示されるように、ロックナット35の寸法は流量調節ツマミ40およびパネルナット30の寸法よりも大きくなっている。さらに、使用者が流量調節ツマミ40、ロックナット35、パネルナット30のそれぞれを容易に把持できるように、流量調節ツマミ40、ロックナット35、パネルナット30の各周面にはローレットが形成されている。
【0025】
また、図1(b)に示されるように、ニードル弁60は流量調節ツマミ40に固定される第一部分64と、弁体67を含む第二部分65とから構成されている。第一部分64は、第二部分65と連結する幅広部62を含んでおり、幅広部62の周面にはネジ山部63が形成されている。図示されるように、このネジ山部63は上方部分20の延長部21の内面に形成されたネジ山部に螺合している。これらネジ山部が存在しているために、流量調節ツマミ40を回転することによってニードル弁60は軸方向に移動する。
【0026】
ハウジングの下方部分11には流入口18に連通する幅狭の弁孔13が形成されている。図示されるように弁孔13は軸孔14よりも幅狭になっており、軸孔14と弁孔13との間には弁座16が形成されている。一方、弁先部66が第二部分65の弁体67から延びている。図1(a)および図1(b)において流量調節弁10は閉弁状態にあるので、第二部分65の弁体67が弁座16に当接し、第二部分65の弁先部66が弁孔13内に挿入された状態にある。なお、流量調節ツマミ40を回転することによって、流量調節ツマミ40は図面において一点鎖線により示される位置まで移動でき、それにより、流量調節弁10が開弁状態となる。
【0027】
また、図1(b)に示されるように幅広部62の下方においては、略円錐台状の第一パッキン71が第二部分65周りにおいて軸孔14の傾斜部14aに嵌合している。さらに、下方部分11と上方部分20との間に延びるフランジを有する第二パッキン72が第一パッキン71の上方に配置されている。これら第一パッキン71および第二パッキン72は単一部材であってもよい。
【0028】
前述したようにロックナット35はニードル弁60の第一部分64のネジ山部61に螺合している。ロックナット35は流量調節ツマミ40が回転するのを規制する役目を果たしている。図1(a)および図1(b)に示される実施形態においては、ロックナット35はハウジングの上方部分20の延長部21に隣接した位置に在るときに流量調節ツマミ40が回転しないように固定する。従って、このときには使用者等が流量調節ツマミ40に接触したとしても流量調節ツマミ40は回転せず、従って、流量調節弁10の流量は変動しない。そして、ロックナット35を緩めてロックナット35と延長部21との間に所定量以上の隙間が形成されると、流量調節ツマミ40の回転が許可され、それにより、流量調節弁10の流量を調節できるようになる。
【0029】
流量調節弁10をパネル(図示しない)に取付ける際には、図4の概ね同様な手順で、流量調節ツマミ40、ロックナット35およびパネルナット30を順番に取外す。次いで、ハウジングの延長部21を図示しないパネルの孔に挿入する。パネルの孔は延長部21の寸法に対応しているので、パネルは上方部分20の手前で停止する。次いで、パネルナット30を延長部21に螺合して、流量調節弁10をパネルに固定する。その後、ロックナット35および流量調節ツマミ40を再び取付ける。前述したように本発明の第一の実施形態においては、ハウジングの上方部分20がシール調節部材の役目を果たしており、しかも流量調節弁10の取付時には上方部分20を取外す必要はないので、ニードル弁60とハウジングとの間のシール状態を出荷時のまま維持することが可能となる。
【0030】
そして、本発明の第一の実施形態に基づく流量調節弁10の使用時においては、ロックナット35を緩めてロックナット35と上方部分20の延長部21との間に所定量の隙間を形成した後、流量調節ツマミ40を回転してニードル弁60を上方に移動させる。これにより、流入口18から流入した流体が、弁孔13および軸孔14を通って流出口19から流出するようになる。
【0031】
流量調節弁10の流出口19から所望量の流体が流出しているときに、ロックナット35を上方部分20の延長部21に隣接するように移動させられる。これにより、流量調節ツマミ40が固定されるので、使用者等が不注意により流量調節ツマミ40に接触したとしても、流量調節弁10の流量は変動することはない。
【0032】
一方、流量調節弁10の流量をさらに増大させることを望む場合には、ロックナット35を延長部21から離間するように再び移動させ、次いでニードル弁60が開弁方向に移動するように流量調節ツマミ40をさらに回転させる。流量調節弁10の流量を低減することを望む場合には、ロックナット35を延長部21から離間するように再び移動させ、次いでニードル弁60が閉弁方向に移動するように流量調節ツマミ40を回転させればよい。
【0033】
前述したように、ロックナット35の寸法は流量調節ツマミ40の寸法よりも大きく、また流量調節ツマミ40はロックナット35よりも使用者から見て手前に位置している。従って、使用者が流量調節弁10の流量を調節するときには、使用者は片手で流量調節ツマミ40およびロックナット35の両方を把持し、使用者から遠位に位置するロックナット35を緩めた後で流量調節ツマミ40を調節する。ロックナット35と流量調節ツマミ40とがこのような寸法であるために、使用者は流量調節弁10の流量を容易に調節できるようになる。このような操作は、ロックナット35の寸法が流量調節ツマミ40の寸法よりも小さい場合よりも有利である。更に、ロックナット35の寸法をパネルナット30の寸法よりも大きくすることにより、流量調節弁10の設置(パネルマウント)後にロックナット35及びツマミ40を調整する際、パネルナット30に再びアクセスすることができなくなり、流量調節弁10の設置が不安定になることを防止する効果もある。つまり、ロックナット35の寸法を最も大きくすることにより、使用者のパネルナット30へのアクセスを不可能とし、また、その後のツマミ調整時にも使用者に容易に調整できる環境を与えることができる。
【0034】
また、図1(a)および図1(b)を参照して説明した実施形態においてはシール調節部材としての役目を果たす上方部分20がハウジングの一部として形成されているが、シール調節部材が独立した部品として流量調節弁10に設けられていてもよい。そして、このような場合には、ロックナット35の寸法がシール調節部材の寸法よりも大きいのが好ましく、それにより、使用者がシール調節部材に接触することを抑制できるのは明らかである。
【0035】
図2(a)および図2(b)は、図1に示されるニードル弁の連結状態を説明するための第一および第二の図である。図2(a)に示されるように、ニードル弁60の第一部分64の幅広部62には、軸方向に延びる第一の孔73と、この第一の孔73よりも幅狭で第一の孔73と同心に位置する第二の孔74とが形成されている。さらに、第一の孔73の内壁には半径方向内側に突出するリング型の突出部75が設けられている。
【0036】
一方、図2(a)の下方に示されるように、第二部分65の弁先部66とは反対側の端部においては段差部83が設けられており、段差部83よりも幅狭の延長部84が段差部83から延びている。図示されるように、これら段差部83および延長部84はニードル弁60の第二部分65と同心に配置されていて、第一部分64の第一の孔73および第二の孔74のそれぞれに概ね対応した形状である。しかしながら、段差部83および延長部84の外径は、第一および第二の孔73、74の内径よりもいくぶん小さくされている。さらに、図2(a)に示されるように、段差部83の周面には、環状の凹部85が該周面に沿って形成されている。
【0037】
図2(b)に示されるように、第一部分64と第二部分65とを連結する際には、第二部分65の延長部84および段差部83のそれぞれが第一部分64の第一の孔73および第二の孔74に挿入され、それにより、第二部分65が第一部分64にスナップ係合されるようになる。このときには、第一部分64の突出部75は第二部分65の環状凹部85に係合するようになる。
【0038】
第一部分64と第二部分65とが連結すると、第一の孔73と段差部83との間および第二の孔74と延長部84との間にはわずかながら隙間が形成されるようになる。しかしながら、突出部75が凹部85に係合しているので、第二部分65は第一部分64から懸架した状態となる。第一部分64と第二部分65とが一旦連結されると、第二部分65が第一部分64から離脱することはない。
【0039】
このようにして形成されたニードル弁60は、図1(b)を参照して前述したようにネジ山部63が上方部分20の内側に螺合するように流量調節弁10に組込まれている。第一部分64の端部に固定された流量調節ツマミ40を回転させると、ネジ山部63によってニードル弁60は開弁方向または閉弁方向に移動する。しかしながら、本発明においては、第二部分65は突出部75によって抜落ちが防止されているので、流量調節ツマミ40によって第一部分64が回転した場合であっても、第二部分65は軸方向には移動するものの、第二部分65自体は単に空回りするだけであって回転することはない。
【0040】
図1(b)から分かるように、第二部分65が回転する場合には、第二部分65が軸孔14の内壁によって摩耗してパーティクルが発生する可能性があるが、本発明においては第二部分65は回転しないので、このようなパーティクルは発生しない。特に、流量調節弁10が閉弁状態にあるときに流量調節ツマミ40を回転させると、弁先部66および弁体67が弁孔13および弁座16によってそれぞれ摩耗する可能性もあるが、本発明においては第二部分65が回転しないので弁先部66および弁体67も回転せず、従って、特に閉弁状態におけるパーティクルの発生を最小限に抑えることが可能となる。
【0041】
また、前述したようにニードル弁60の幅広部62がハウジングの上方部分20の内壁に螺合しているので、流量調節弁10の調節時にはこの螺合部分が摩耗してパーティクルが発生しうる。ところが、本発明においては、螺合部分の下方、つまり螺合部分と弁孔13との間に第一パッキン71および第二パッキン72が設けられている。このため、螺合部分において発生したパーティクルはこれら第一パッキン71、72によって捕獲されるので、パーティクルが流体に混入するのが抑制される。
【0042】
図3(a)は本発明の第二の実施形態に基づく流量調節弁の正面図であり、図3(b)は本発明の第二の実施形態に基づく流量調節弁の側断面図である。図3(a)および図3(b)において、図1(a)および図1(b)を参照して説明したのと同一の参照符号が付された部材については前述したのとほぼ同様であるので詳細な説明はせず、説明を要する部材についてのみ改めて説明することとする。
【0043】
図3(a)に示されるように、第二の実施形態に基づく流量調節弁10’のハウジング11は上方に向かって延びる延長部21を含んだ単一部材より形成されている。図3(b)に示されるように、延長部21の内側には、スリーブ状のアジャストナット45が挿入されている。このため、本発明の第二の実施形態においては、ニードル弁60の幅広部62におけるネジ山部63がアジャストナット45の内面に設けられたネジ山部46に螺合している。
【0044】
さらに、図3(b)から分かるように、シールナット90がアジャストナット45と延長部21とを包含するように配置されている。図示されるように、シールナット90の内壁に設けられたネジ山部91は延長部21の周面のネジ山部に螺合している。このため、シールナット90を回転させるとシールナット90は軸方向に移動する。
【0045】
シールナット90が下方に移動すると、アジャストナット45も下方に移動される。これにより、アジャストナット45が第一パッキン71および第二パッキン72を下方に付勢するので、ニードル弁60の第二部分65とこれらパッキン71、72との間のシール状態が高まる。同様に、シールナット90を上方に移動させる場合には、アジャストナット45が第一パッキン71および第二パッキン72を付勢する力が低下し、それにより、第二部分65とパッキン71、72との間のシール状態も低下するようになる。また、パネルナット30はシールナット90の下方において延長部21の周面のネジ山部に同様に螺合している。
【0046】
シールナット90がハウジング11とは別個に形成されている場合には使用者等が、特にパネル(図示しない)への取付時にシールナット90に接触してシール状態が変化する可能性があるものの、本発明の第二の実施形態においては流量調節ツマミ40の下端から下方に延びるスリーブ43が設けられている。図示される実施形態においては、スリーブ43は流量調節ツマミ40と一体的な部材であるが、流量調節ツマミ40とは別部材のスリーブ43が流量調節ツマミ40の側面に取付けられた構成であってもよい。
【0047】
図3(b)から分かるように、スリーブ43の内径はシールナット90の外径よりも大きい。そして、スリーブ43はシールナット90の周面を取囲むのに十分な長さまで延びている。すなわち、スリーブ43は防護壁としての役目を果たすので、通常は使用者等が外部からシールナット90にアクセスすることはできない。それゆえ、本発明の第二の実施形態においては、使用者等が不注意によりシールナット90にアクセスするのを防止し、シール状態が変動するのを防止できる。また、前述した実施形態においては流量調節ツマミ40を固定するためにロックナット35を使用しているが、流量調節ツマミ40を固定することのできるあらゆる手段を採用できるものとする。なお、前述した実施形態に示される構成要素のうちのいくつかを適宜組み替えることは本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10、10’ 流量調節弁
11 ハウジングの下方部分
12 下方スリーブ
13 弁孔
14 軸孔
14a 傾斜部
15 スプリングロールピン
16 弁座
18 流入口
19 流出口
20 ハウジングの上方部分
21 延長部
22 上方スリーブ
30 パネルナット
35 ロックナット
40 流量調節ツマミ
41 固定ネジ
43 スリーブ
45 アジャストナット
46 ネジ山部
60 ニードル弁
62 幅広部
64 第一部分
65 第二部分
66 弁先部
67 弁体
71、72 パッキン
73、74 孔
75 突出部
83 段差部
84 延長部
85 凹部
90 シールナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁孔が形成されたハウジングと、
該ハウジング内の弁座に対して移動するニードル弁と、
前記ハウジングから延びる前記ニードル弁の基端に取付けられた流量調節ツマミとを備え、
前記流量調節ツマミを回転することによって、前記ニードル弁を前記弁座に対して移動させ、それにより、前記弁孔を流れる流体の流量を調節する流量調節弁において、
前記ニードル弁が、前記流量調節ツマミに連結される第一部分と前記弁座に係合する第二部分とからなり、前記流量調節ツマミを回転することに基づく前記第一部分の回転が前記第二部分に伝達されないように、前記第一部分と前記第二部分とが連結されている流量調節弁。
【請求項2】
前記ニードル弁の前記第一部分には前記ハウジングに螺合するネジ山部が形成されており、
さらに、該ネジ山部と前記弁孔との間において前記ニードル弁周りに設けられたシール部材を具備する請求項1に記載の流量調節弁。
【請求項3】
弁孔が形成されたハウジングと、
該ハウジング内の弁座に対して移動するニードル弁と、
前記ハウジングから延びる前記ニードル弁の基端に取付けられた流量調節ツマミとを備え、
前記流量調節ツマミを回転することによって、前記ニードル弁を前記弁座に対して移動させ、それにより、前記弁孔を流れる流体の流量を調節する流量調節弁において、
前記流量調節ツマミの周面から延びるスリーブを具備し、該スリーブが前記シール調節手段周りを被覆するように形成されている流量調節弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−102643(P2011−102643A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1110(P2011−1110)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【分割の表示】特願2004−340538(P2004−340538)の分割
【原出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(591257111)サーパス工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】