説明

浄化排水散水システム

【課題】中水の表面電位特性及びラジカル密度を高めて洗浄効率を向上させる。また、中水の流動性や拡散性が高めて被洗浄物の付着した異物を効率的に除去可能にする。
【解決手段】第1貯水槽に貯められた雨水等の排水中の異物をろ過手段により除去して中水に生成した後、該中水をバブル発生手段によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成し、散水手段から被散水物へ散水可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等の排水を利用して構造物(建物、外壁、建物付随施設等を含む)や車輛、機械器具等の被散水物に散水する浄化排水散水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
雨水等の排水を再利用する用途としては、従来、防災、治水目的が主であったが、近年においては、公園や学校、店舗等のトイレに使用する洗浄水や緑化施設において散水に使用したりする利水機能への要求が高くなっている。
【0003】
排水を上記のような用途で使用する場合には、濁り、色、臭いなどを除去するなどしてある程度浄化して中水道水化(本発明における中水道水は、中水又は再生水とも称される。以下においては、中水と称する。)する必要がある。従来、排水を中水に生成する技術として、例えば特許文献1に示す排水浄化処理システムが提案されている。
【0004】
該排水浄化システムは、雨水等の排水流路において、その排水を貯留するとともに内部に設けた傾斜構造物を介して異物を分離する機能を有する第1槽と、比重差による水と異物の分離機能を有する第2槽と、水との比重差によって沈降あるいは浮上することのない異物を水と分離する機能を有する第3槽とを、第1槽に流入した排水を自然に第2槽、第3槽へと順次導けるように連設し、第1槽から第3槽までの排水処理によって上記排水を利水可能な水に浄化処理して中水化することを特徴としている。
【0005】
上記排水浄化処理は、排水をろ過処理する際に排水をバブル化(マイクロバブル、ナノバブルを含む。)し、これらバブル(気泡)にごみ等の異物(汚れ)を付着させることによりろ過効率を高めている。しかし、上記排水浄化処理により生成された中水を構造物(建物、外壁、建物付随施設等を含む)や車輛、機械器具等の被散水物に対して散水する用途に使用する場合には、以下の問題を有している。
【0006】
即ち、上記処理により生成された中水にあっては、排水のろ過、従って気泡(バブル)に対する汚れの付着に伴って気泡密度が低下し、気泡による表面電位特性が低下したり、ラジカル密度が低下したりして洗浄効率が悪くなる問題を有している。また、上記中水にあっては、同様に気泡密度の低下により流動性や拡散性が悪くなる問題を有している。
【0007】
特に光触媒処理された被散水物に対して上記中水を散水した場合、流動性や拡散性が低下することにより酸化チタン層への親水性が悪くなり、酸化チタン層に付着した異物(汚れ)を効率的に除去できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−307497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、バブル化された排水をろ過して生成された中水を被散水物へ散水した場合には、表面電位特性及びラジカル密度が低いため、洗浄効率が悪い点にある。また、中水にあっては流動性や拡散性が悪く、被散水物の付着した異物を効率的に除去できない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1は、雨水等の排水を貯める第1貯水槽と、第1貯水槽に貯められた排水中の異物を除去して中水に生成するろ過手段と、ろ過後の中水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成するバブル発生手段と、散水用中水を被散水物へ散水する散水手段とを備えたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、中水の表面電位特性及びラジカル密度を高めて洗浄効率を向上させることができる。また、上記中水の流動性や拡散性が高めて被洗浄物の付着した異物を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】洗浄用中水の生成方法を示す説明図である。
【図2】散水手段の一例を示す説明図である。
【図3】実施例2の散水手段を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1貯水槽に貯められた雨水等の排水中の異物をろ過手段により除去して中水に生成した後、該中水をバブル発生手段によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成し、散水手段から被散水物へ散水させることを最適の実施形態とする。
【実施例1】
【0014】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1に示すように中水の元になる雨水等の排水は、例えば建造物の屋上にて収集され、送水管1を介して第1貯水槽3内に貯められる。上記第1貯水槽3内に排水を貯めるにあたって、排水中に含まれる葉っぱや小枝等の比較的大きな異物は、送水管1の経路に設置された網等のフィルター(図示せず)により除去される。
【0015】
上記第1貯水槽3に貯められた排水中に含まれる比較的外形や比重が大きい砂等の異物は、該第1貯水槽3内にて沈殿して除去される。そして第1貯水槽3内の上澄み排水は、ポンプ4により汲み上げられてろ過手段5へ供給され、排水中の微小な異物が除去される。該ろ過手段5は、従来公知の構造でタンク内に各種ろ材やフィルタ、ろ過膜を設けた構造で、これらろ材やフィルタ、ろ過膜に対してポンプ4により加圧された排水を強制的に通過させることにより異物を除去する。上記ろ過手段5を通過した排水は、中水に生成される。
【0016】
そして上記ろ過手段5によりろ過処理された中水は、第2貯水槽7内に貯められる。上記第2貯水槽7には、バブル発生手段9が設けられ、上記第2貯水槽7から汲み上げられた中水をバブル発生手段9によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成した後、第3貯水槽11内に貯める。
【0017】
中水に生成されるバブル形態としては、直径が30μm 付近に分布のピークがあり、気泡濃度としては数百個/mL 程度の低濃度型又は10μm 付近に気泡分布のピークがあり、気泡個数は数千個/mL 以上の高濃度型のマイクロバブル、若しくは1μm 以下のナノ単位のナノバブルの何れであってもよい。
【0018】
上記第3貯水槽11内に貯められた散水用中水がマイクロバブルの場合には、生成されたマイクロバブルにより白濁している。これに対して第3貯水槽11内に貯められた散水用中水がナノバブルの場合には、マイクロバブルに比べて気泡が更に微小なため、マイクロバブル化された散水用中水より透明度が高くなる。
【0019】
また、マイクロバブル化された散水用中水の生成方法としては、中水を渦流形成し、この渦流中に空気を巻き込んだ後にファン等で切断、粉砕して生成する方法が知られている。また、ナノバブル化された散水用中水の生成方法としては、上記のように生成されたマイクロバブルを圧壊して生成したり、ナノレベルの無数の穴を有したSPG(シラスポーラスガラス)膜を用い、この膜から圧縮ガスを放出して生成する。これらバブル発生手段9は、従来公知の装置を使用することにより中水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成される。
【0020】
上記のように中水がマイクロバブル化またはナノバブル化された散水用中水においては、気泡の上昇速度が遅く、水中での滞留状態が長時間にわたって維持される。そして散水用中水の気泡は、負の電荷に帯電し、気泡同士が反発し合って結合する事がなく、洗浄用中水中の気泡濃度が低下することがない。また、上記の散水用中水は、気泡の自己圧壊作用によりラジカル生成されて高いラジカル密度に保たれる。
【0021】
なお、上記したバブル発生手段9により中水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水を生成するタイミングは、後述する被散水物に対する散水に先立って行えばよい。
【0022】
第3貯水槽11内に貯められたバブル生成後の散水用中水は、加圧ポンプ13を介して水栓15に接続され、該水栓15に接続されたホース17の先端部に取り付けられた散水手段19から被散水物へ散水される。上記散水手段19としては、図2に示すように散水用中水を霧状又は筋状に噴射する噴射ノズル、スプリンクラー、被散水物が建造物の壁面等の場合には、壁面に相対して配置され、該壁面に向かって散水用中水を放水する多数の孔が形成されたパイプ21により構成される。
【0023】
被散水物に対して散水または噴射された散水用中水は、生成された高密度のマイクロバブルまたはナノバブルによる表面電位特性により被散水物に付着した異物を電気的に吸着して効率的に除去することができる。また、散水用中水は、マイクロバブルまたはナノバブルによるラジカル密度が高いため、被散水物に付着した異物を酸化分解して効率的に除去することができる。更に、散水用中水は、マイクロバブルまたはナノバブルにより被洗浄物に対する流動性及び拡散性が高く、被散水物の表面にて効率的に広がりながら流動して付着した異物を効率的に除去することができる。
【0024】
このため、本発明に係る散水用中水で被散水物を散水して洗浄する場合には、散水用中水を高い圧力で噴射する必要がなく、垂れ流す程度で散水することにより付着した異物を除去することができ、散水用中水の噴射圧力で被散水物が損傷するのを防止することができる。なお、散水手段19をパイプ21とする構成は、一例で、これに限定されるものではなく、例えば壁面に対してホースを固定し、該ホースから吐出される散水用中水を直接垂れ流する例であってもよい。
【0025】
特に、酸化チタン層により光触媒処理された被散水物に対して散水する場合にあっては、被覆処理された酸化チタン膜に対して散水用中水を良好に流動及び拡散させながら表面電位特性及び高密度ラジカル特性により付着した異物を効率的に除去することができる。
【0026】
また、機械器具、例えば金型等に対して本例に係る散水用中水を散水して異物を除去する用途にあっては、中水中の成分が不明なため、本洗浄用としては使用できないが、本洗浄の前処理用に使用することができる。
【0027】
更に、本例に係る散水用中水を緑化施設に植えられた樹木や植物(以下、樹木等と称する。)への打ち水として使用する散水用途にあっては、これら樹木等が植えられた土壌中の水分は、アルカリ性養分の吸収により酸性化する傾向にあるため、マイクロバブル化またはナノバブル化によりアルカリ化した散水用中水を散水することにより酸性化した土壌中の水分を最適なpH値(pH5.5〜6.5)になるように調整し、樹木等の生育環境を改善することができる。
【0028】
本実施例は、排水をろ過手段5によりろ過して中水に生成した後に該中水をバブル発生手段9によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成し、被散水物に散水された際には、被散水物の表面に対して効率的に広がりながら流動し、付着した異物をマイクロバブルまたはナノバブルによる高い表面電位特性、ラジカル密度で効率的に除去することができる。
【0029】
また、上記のように生成された散水用中水を樹木等へ散水する場合には、樹木が植えられた土壌中の酸性化した水分を最適なpH値へ調整して生育環境を改善することができる。
【実施例2】
【0030】
実施例1は、被洗浄物を洗浄するに先立って処理槽7に貯めたろ過後の中水をバブル発生手段9によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成して被散水物へ散水可能としたが、実施例2は図3に示すように散水手段19にバブル発生手段9を取付け、被散水物に対して散水する際に処理槽7から供給される中水を上記バブル発生手段9により直接マイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成することを特徴とする。
【符号の説明】
【0031】
1 送水管
3 第1貯水槽
4 ポンプ
5 ろ過手段
7 第2貯水槽
9 バブル発生手段
11 第3貯水槽
13 加圧ポンプ
15 水栓
17 ホース
19 散水手段
21 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水等の排水を貯める第1貯水槽と、
第1貯水槽に貯められた排水中の異物を除去して中水に生成するろ過手段と、
ろ過後の中水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成するバブル発生手段と、
散水用中水を被散水物へ散水する散水手段と、
を備えた浄化排水散水システム。
【請求項2】
請求項1において、被散水物に対する散水に先立ってろ過後の中水をバブル発生手段によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成して第3貯水槽に貯めた浄化排水散水システム。
【請求項3】
請求項1において、被散水物に対して散水する際に、ろ過後の中水をバブル発生手段により直接、マイクロバブル化またはナノバブル化して散水用中水に生成する浄化排水散水システム。
【請求項4】
請求項1において、散水用中水は、被散水物を洗浄する用途に使用する浄化排水散水システム。
【請求項5】
請求項1において、散水用中水は、被散水物に対する打ち水の用途に使用する浄化排水散水システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−19151(P2013−19151A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152423(P2011−152423)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(311009044)株式会社トータルアシスト (3)
【Fターム(参考)】