説明

浄化槽

【課題】 吸入口からポンプハウジング内に導入した被移送水を、移送用ガスのガス流れに伴って吐出口へと移送する移送用ポンプにつき、当該移送用ポンプのコンパクト化を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理装置100は、ポンプハウジング内の流通経路が、吸入口からポンプハウジング内の下部領域へ向けて下方へと延在する第1流通路と、下部領域から吐出口へ向けて上方へと延在する第2流通路と、第1流通路及び第2流通路を区画する区画部により構成された第1エアリフトポンプ140及び第2エアリフトポンプ180を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被移送水を移送する水移送ポンプの構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被移送水を移送する各種の水移送ポンプの構成が知られており、例えば下記特許文献1には、水移送ポンプの中でも特にエアリフトポンプの構成が開示されている。この特許文献1に記載のエアリフトポンプは、吸入側が略U字形状とされた配管からなるポンプ本体に、空気供給管が接続されており、当該空気供給管から空気が供給されることによって、ポンプ本体の吸入部分から吸入された水が配管内を流れ移送先へと移送される構成になっている。特に、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録公報 第2543838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エアリフトポンプが設置される被移送領域の水位に関し下限レベルを規定する場合には、ポンプ本体の吸入側を略U字形状の配管を用いて構成するのが一般的である。これによって、ポンプの揚水によって吸入部分よりも水位が下がるのが防止される。
しかしながら、ポンプ本体を構成する略U字形状の配管に関し、互いに対向する配管部分の間には空間が形成されることとなり、この形成される空間はポンプ本体のコンパクト化を図るうえで阻害要因となる。とりわけ、浄化槽のような水処理装置にエアリフトポンプを内装する場合には、当該エアリフトポンプを極力限られたスペース内に収めることが望まれており、ポンプ本体のコンパクト化を図る技術に対応する要請が高い。
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、吸入口からポンプハウジング内に導入した被移送水を、移送用ガスのガス流れに伴って吐出口へと移送する移送用ポンプにつき、当該移送用ポンプのコンパクト化を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、吸入口からポンプハウジング内に導入した被移送水を、移送用ガスのガス流れに伴って吐出口へと移送する移送用ポンプの構成に適用される。このような移送用ポンプは、特に被処理水の浄化処理を行う浄化槽に好適に設置される。
【0006】
(本発明の第1発明)
本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの水移送ポンプである。
請求項1に記載のこの水移送ポンプは、ポンプハウジングに、吸入口、ガス供給口及び吐出口を少なくとも備え、当該ポンプハウジングに流通経路が形成される構成とされる。吸入口は、ポンプハウジング内へと被移送水を導入(吸入)する開口部位として構成される。ガス供給口は、ポンプハウジング内へと移送用ガスを供給する開口部位として構成される。このガス供給口を通じて供給する移送用ガスとして、典型的にはエア(空気)を用いる。吐出口は、ポンプハウジング内を流通した水をポンプハウジング外へと導出(吐出)する開口部位として構成される。
本構成において、吸入口を通じてポンプハウジング内に導入した被移送水に対し、ガス供給口を通じて移送用ガスが供給されることによって、当該移送用ガスのガス流れに伴って被移送水が流通経路を流通したのち、吐出口からポンプハウジング外へと吐出される。
【0007】
本発明の水移送ポンプにおいては、前記のポンプハウジングは、特に上下方向に長尺状に延在する筒状として構成される。ここでいう「長尺状に延在する筒状」とは、ポンプハウジングの上下方向と交差する方向の断面に関し、当該断面構造が単一の配管自体によって構成される第1の態様や、当該断面構造が複数の配管の集合体として構成されて全体として概ね筒状に構成される第2の態様などを広く包含する趣旨である。
【0008】
また、本発明では、特にポンプハウジング内の流通経路は、第1流通路、第2流通路及び区画部を少なくとも有する構成とされる。第1流通路は、吸入口からポンプハウジング内の下部領域へ向けて下方へと延在する流通路として構成される。第2流通路は、下部領域から吐出口へ向けて上方へと延在する流通路として構成される。本発明においては、こられ第1流通路及び第2流通路に加えて、更に1または複数の別の流通路がポンプハウジング内に形成されてもよい。区画部は、第1流通路と第2流通路を区画する部位として構成される。この区画部の具体的な構成に関しては、板状部分、壁状部分、管状部分などの全部または一部を用いて当該区画部が構成される。この区画部の構成に関し、例えば前述の第1の態様の場合には、単一の配管の延在方向に沿って延在する区画部を当該配管に内装することで、第1流通路及び第2流通路を形成する構成を採用することができる。また、前述の第2の態様の場合には、直線状に延在する単一の配管を、対向する配管部分同士が当接状態となるまでおよそ180度折り曲げることで、互いに当接する(重なり合う)当該配管部分が、第1流通路と第2流通路を区画する区画部となる構成を採用することができる。
【0009】
従って、請求項1に記載の水移送ポンプのこのような構成によれば、ポンプハウジングの外郭によって規定される領域内に、不要な空間が形成されるのを極力防止することが可能となる。これにより、移送用ポンプのコンパクト化を図ることが可能となる。
また、本発明の水移送ポンプでは、ポンプハウジング内の下部領域において、第1流通路と第2流通路との境界部分の大きさ(距離、面積など)を抑えることが可能となる。これに対し、略U字形状の配管によって構成された従来型の水移送ポンプでは、互いに対向する配管部分の間には空間が形成されるため、第1流通路と第2流通路との境界部分が本発明のものよりも長くなる。従って、本発明の水移送ポンプの構成によれば、ポンプハウジング内にブラシ等の洗浄用治具を挿入して、下部領域に堆積したスケール等を除去・洗浄する際の作業を容易に行うことが可能となる。
【0010】
(本発明の第2発明)
本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの水移送ポンプである。
請求項2に記載のこの水移送ポンプでは、請求項1に記載の流通経路は、更に第3流通路を備える構成とされる。この第3流通路は、第1流通路から第2流通路へと流れた被移送水が、当該第1流通路へと循環するのを許容する流通路として構成される。
このような構成によれば、吸入口から吸入した被移送水を吐出口から吐出する移送操作に加え、第1流通路から第2流通路へと水を循環させる循環操作を行うことができる。この循環操作は、吐出口を完全に塞ぐか、或いは吐出口から吐出される水の量を抑えることによって可能とされる。この循環操作は、水移送ポンプの内部洗浄を設置状態のままで行う際に有効である。
【0011】
(本発明の第3発明)
本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの水移送ポンプである。
請求項3に記載のこの水移送ポンプでは、請求項2に記載の第3流通路は、区画部において第1流通路と第2流通路を連通する連通開口によって構成される。このような構成によれば、既存の区画部の連通開口を用いて第3流通路を構成するため、部品点数や製造コストを抑えることができ合理的である。
【0012】
(本発明の第4発明)
本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの水移送ポンプである。
請求項4に記載のこの水移送ポンプは、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の構成において、ポンプハウジングと区画部とが一体化された構成とされる。このような構成によれば、部品点数や製造コストを抑えることができ合理的である。ポンプハウジングと区画部とのこの一体化に際しては、筒状の樹脂(パリソン)を金型ではさみ、そこへ空気を吹き込んで中空の製品を作るブロー成形(中空成形)を用いるのが好ましい。これにより、より安価にエアリフトポンプを製造することが可能となる。
【0013】
(本発明の第5発明)
本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの水処理装置である。
請求項4に記載のこの水処理装置は、処理槽本体に、水処理部、流入口、流出口、水移送ポンプを少なくとも備える構成とされる。水処理部は、被処理水の水処理を行う機能を有する。この水処理部は、固液分離、生物処理、移送処理、貯留処理、消毒処理等、各種の水処理機構の1または複数によって構成される。流入口は、水処理部へと被処理水が流入する開口部位として構成される。流出口は、水処理部にて処理された水が処理槽本体から流出する開口部位として構成される。水移送ポンプは、被処理水が滞留する滞留領域から移送領域へと当該被処理水を移送する機能を有するポンプである。本発明では、このポンプが、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水移送ポンプを用いて構成されている。
従って、請求項5に記載の水処理装置のこのような構成によれば、移送用ポンプのコンパクト化を図ることで、水処理装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、吸入口からポンプハウジング内に導入した被移送水を、移送用ガスのガス流れに伴って吐出口へと移送する移送用ポンプの構成に関し、上下方向に長尺状に延在する筒状のポンプハウジング内の流通経路を、吸入口からポンプハウジング内の下部領域へ向けて下方へと延在する第1流通路と、下部領域から吐出口へ向けて上方へと延在する第2流通路と、第1流通路及び第2流通路を区画する区画部を用いて構成することによって、当該移送用ポンプのコンパクト化を図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における一実施の形態の水処理装置100の構成を示す図である。
【図2】図1中の第1エアリフトポンプ140の縦断面構造を示す図である。
【図3】図2中の第1エアリフトポンプ140のA−A線に関する横断面構造を示す図である。
【図4】本実施の形態の第1エアリフトポンプ140において、中仕切り部145及び蓋部146からなる部材の着脱操作を説明する図である。
【図5】図1中の第2エアリフトポンプ180の縦断面構造を示す図である。
【図6】図5中の第2エアリフトポンプ180のB−B線に関する横断面構造を示す図である。
【図7】本実施の形態の第2エアリフトポンプ180において、中仕切り部185及び蓋部186からなる部材の着脱操作を説明する図である。
【図8】本実施の形態の第1エアリフトポンプ140の変更例を示す図である。
【図9】本実施の形態の第1エアリフトポンプ140の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明における一実施の形態の水処理装置を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される被処理水の処理を行う水処理装置(浄化槽)の構築技術について説明するものである。
【0017】
本発明における一実施の形態の水処理装置100の構成が図1に示される。
図1に示すように、本発明における「水処理装置」としての水処理装置100は、槽本体101の内部に各種の浄化処理機構(本発明における「水処理部」に対応)を収容している。槽本体101は、流入管102(本発明における「流入口」を構成)および流出管103(本発明における「流出口」を構成)を備えており、流入管102から流入した被処理水は槽内で連続的に浄化処理されたのち、流出管103を通じて槽外へ放流されるようになっている。この水処理装置100は、「排水処理装置」あるいは「浄化槽」ともいう。
【0018】
水処理装置100の槽本体101には、処理工程の順に対応して上流(図1中の左側)から第1嫌気濾床槽(嫌気濾床槽1室)110、第2嫌気濾床槽(嫌気濾床槽2室)130、担体流動生物濾過槽150、処理水槽170、消毒槽190が収容されている。
【0019】
嫌気濾床槽110,130には各々濾床112,132が形成され、これらの濾床112,132には、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気分解する嫌気性微生物が付着する所定量の濾材C1,C2が充填されている。本実施の形態では、被処理水が濾床112,132を図1中の矢印方向へ降流することによって被処理水中の有機汚濁物質が嫌気分解されるように構成されている。第1嫌気濾床槽110で処理された水は、いわゆる押し出し流れの原理によって仕切壁の上部に形成された開口堰114を通じて第2嫌気濾床槽130へ移流する。
【0020】
また、第2嫌気濾床槽130には、エアリフト式の流体移送構造(ポンプ構造)を有する第1エアリフトポンプ140が設けられている。この第1エアリフトポンプ140は、ブロワ等のエア供給手段からの所定量のエア(空気)の供給によって作動する。従って、この第2嫌気濾床槽130で処理された水は、作動状態の第1エアリフトポンプ140のポンプ揚水作用によって汲み上げられて、担体流動生物濾過槽150へと移送される。この場合の第2嫌気濾床槽130が、本発明における「滞留領域」に相当し、担体流動生物濾過槽150が、本発明における「移送領域」に相当する。
なお、詳細については後述するが、この第1エアリフトポンプ140の吸入口は、図1中の第2嫌気濾床槽130の「LWL」で示す下側水位レベルに相当する位置に設置されている。従って、この第1エアリフトポンプ140による流量調整によって、嫌気濾床槽110,130の各槽における水位は、図1中の「HWL」で示す上側水位レベルと、「LWL」で示す下側水位レベルとの間に調整されることとなる。
【0021】
担体流動生物濾過槽150へと移流した水は、開口堰134を通じて第2嫌気濾床槽130へと移流する一方、担体充填領域152へと移流する。この担体充填領域152には有機汚濁物質を好気分解(好気処理)する好気性微生物が付着する所定量の担体153が、槽内を流動できる程度に充填されている。この担体153としては、粒状の中空円筒形に形成された担体を好適に用いる。担体153の流動領域の上下には、担体充填領域152を規定する上部担体移動防止用部材154および下部担体移動防止用部材156が設けられている。これら上部担体移動防止用部材154及び下部担体移動防止用部材156は、被処理水の通過は許容するが担体153の通過は防止する多孔板によって構成されている。
【0022】
また、この担体流動生物濾過槽150には、担体充填領域152内に散気装置(散気管)160が設けられており、また担体充填領域152の下方、すなわち散気装置160よりも下方に逆洗装置(逆洗管)162が設けられている。
散気装置160は、散気運転において担体充填領域152の担体153に対し、好気処理に用いるエア(空気)を供給する構成を有する。散気運転時に散気装置160から所定量のエアが供給されると、散気装置160よりも上方に好気処理領域が形成され、散気装置160よりも下方に濾過処理領域が形成される。
一方、逆洗装置162は、逆洗運転において担体充填領域152の担体153に対し、逆洗処理を行う際に用いるエア(空気)を供給する構成を有する。逆洗運転時に逆洗装置162から通常運転時よりも多い所定量のエアが供給されると、担体充填領域152の担体153全体が流動化し、散気運転において被濾過物を濾過した担体153の洗浄処理が行われる。
【0023】
担体流動生物濾過槽150において好気分解(好気処理)された水は、一旦処理水槽170に貯留される。処理水槽170には、第1エアリフトポンプ140と同様のポンプ構造を有する第2エアリフトポンプ180が設けられている。この第2エアリフトポンプ180は、ブロワ等のエア供給手段からの所定量のエア(空気)の供給によって作動する。従って、この処理水槽170に貯留された(滞留した)水は、作動状態の第2エアリフトポンプ180のポンプ揚水作用によって汲み上げられて、消毒槽190へと移送される。この場合の処理水槽170が、本発明における「滞留領域」に相当し、消毒槽190が、本発明における「移送領域」に相当する。消毒槽190への水の移送にこの第2エアリフトポンプ180を用いることによって、放流管底を極力上げることができ、放流ポンプを更に設けた放流ポンプ槽が不要となる。
【0024】
なお、特に図示しないものの、この処理水槽170には、散気運転時に処理水槽170の底部から抜き出した水を循環水として第1嫌気濾床槽110へと移送するポンプや、逆洗運転時に担体流動生物濾過槽150の底部から抜き出した水を、逆洗水として第1嫌気濾床槽110へと移送するポンプが設けられている。また、必要に応じて、処理水槽170と消毒槽190との間に移流量を調節可能な計量装置を設けることもできる。
【0025】
消毒槽190は消毒剤注入装置192を備えており、槽外へ放流する前の水を消毒剤注入装置192から注入される消毒剤によって消毒処理するように構成されている。消毒処理後の水は、流出管103を通じて槽外へと放流される。
【0026】
ここで、上記第1エアリフトポンプ140及び第2エアリフトポンプ180の具体的な構成を、図2〜図7を参照しながら詳細に説明する。これら第1エアリフトポンプ140及び第2エアリフトポンプ180が、本発明における「水移送ポンプ」に対応している。
【0027】
まず、図1中の第1エアリフトポンプ140の縦断面構造が図2に示され、図2中の第1エアリフトポンプ140のA−A線に関する横断面構造が図3に示される。
図2及び図3に示すように、第1エアリフトポンプ140は、上下方向に直線状(長尺状)に延在する有底筒状のポンプハウジング141に、吸入口142、エア供給口143、吐出口144を備える。このポンプハウジング141が、本発明における「ポンプハウジング」に相当する。吸入口142は、ポンプハウジング141内へと被移送水を導入(吸入)する開口部位として構成される。この吸入口142は、第1エアリフトポンプ140を図1中の第2嫌気濾床槽130に設置した状態において、当該第2嫌気濾床槽130の下側水位レベル(LWL)の位置に相当する構成とされる。エア供給口143は、ブロワ等のエア供給手段に接続されており、ポンプハウジング141内へと移送用エアを供給する開口部位として構成される。吐出口144は、ポンプハウジング141内を流通した水をポンプハウジング141外へと導出(吐出)する開口部位として構成される。
【0028】
また、ポンプハウジング141内には、当該ポンプハウジング141の延在方向に沿って延在する平板状の中仕切り部145が設けられており、この中仕切り部145によって区画される第1流通路147及び第2流通路148が、ポンプハウジング141内における被移送水の流通経路を構成している。この中仕切り部145が、本発明における「区画部」に相当する。この流通経路において、第1流通路147は、吸入口142からポンプハウジング142内の下部領域へ向けて下方へと延在し、第2流通路148は、当該下部領域から吐出口144へ向けて上方へと延在する。この第1流通路147が、本発明における「第1流通路」に相当し、第2流通路148が、本発明における「第2流通路」に相当する。本実施の形態では、この第2流通路148にエア供給口143が設けられている。
中仕切り部145は、ポンプハウジング141の上部を塞ぐキャップ状の蓋部146と一体状とされた部材として構成される。この部材は、ポンプハウジング141に対し着脱(装着及び脱着)操作が可能な構成になっている。
【0029】
ここで、図4には、本実施の形態の第1エアリフトポンプ140において、中仕切り部145及び蓋部146からなる部材の着脱操作を説明する図が示される。図4に示すように、当該部材の構成に関し、蓋部146の内周径がポンプハウジング141の上端外径よりも若干小さくなるように構成されており、ポンプハウジング141の上端に蓋部146を嵌め込むことによって、当該部材のポンプハウジング141への装着が可能とされる。更に、当該部材をボルトナット等の固定部材によってポンプハウジング141に固定するような構成を採用することもできる。このような構成によれば、第1エアリフトポンプ140の内部清掃の際、中仕切り部145及び蓋部146からなる部材を、ポンプハウジング141から上方へ抜き出すことによって容易に取り外すことができ、内部清掃作業が容易とされる。また、ポンプハウジング141から中仕切り部145自体を取り外すことができるため、ポンプハウジング141と中仕切り部145の各々を個別に清掃することが可能となる。
【0030】
このような構成の第1エアリフトポンプ140において、エア供給口143から所定量のエアが供給されると、第2流通路148を上方へと向かうエア流れに伴って、第1流通路147には下向きの水の流れが、第2流通路148には上向きの水の流れが形成されることとなる。これにより、吸入口142から吸入された水が、第1流通路147及び第2流通路148を通って、吐出口144から連続的に吐出されるポンプ機能が達せされる。このとき、第1流通路147及び第2流通路148によって、略U字形の水流通経路が形成されることとなる。
【0031】
次に、図1中の第2エアリフトポンプ180の縦断面構造が図5に示され、図5中の第2エアリフトポンプ180のB−B線に関する横断面構造が図6に示される。
図5及び図6に示すように、第2エアリフトポンプ180は、上下方向に直線状(長尺状)に延在する有底筒状のポンプハウジング181に、吸入口182、エア供給口183、吐出口184を備える。このポンプハウジング181が、本発明における「ポンプハウジング」に相当する。これら吸入口182、エア供給口183及び吐出口184には、第1エアリフトポンプ140の場合と、実質的に同様の構成とされ、吸入口182は、ポンプハウジング181内へと被移送水を導入(吸入)する開口部位として構成される。この吸入口182は、第2エアリフトポンプ180を図1中の処理水槽170に設置した状態において、当該処理水槽170の水位レベル(WL)の位置に相当する構成とされる。また、エア供給口183は、ブロワ等のエア供給手段に接続されており、ポンプハウジング181内へと移送用エアを供給する開口部位として構成される。また、吐出口184は、ポンプハウジング181内を流通した水をポンプハウジング181外へと導出(吐出)する開口部位として構成される。
【0032】
また、ポンプハウジング181内には、当該ポンプハウジング181の延在方向に沿って延在する平板状の中仕切り部185が設けられており、この中仕切り部185によって区画される第1流通路187及び第2流通路188が、ポンプハウジング181内における被移送水の流通経路を構成している。この中仕切り部185が、本発明における「区画部」に相当する。この流通経路において、第1流通路187は、吸入口182からポンプハウジング182内の下部領域へ向けて下方へと延在し、第2流通路188は、当該下部領域から吐出口184へ向けて上方へと延在する。この第1流通路187が、本発明における「第1流通路」に相当し、第2流通路188が、本発明における「第2流通路」に相当する。本実施の形態では、この第2流通路188にエア供給口183が設けられている。
【0033】
また、本実施の形態において、中仕切り部185には、その上方位置に連通開口185aが形成されている。この連通開口185aは、第1流通路187と第2流通路188との間を連通する開口部位として構成される。この連通開口185aは、第1流通路187から第2流通路188へと流れた被移送水が、当該第1流通路187へと循環するのを許容する流通路であり、本発明における「第3流通路」及び「連通開口」に相当する。この中仕切り部185は、ポンプハウジング181の上部を塞ぐキャップ状の蓋部186と一体状とされた部材として構成される。この部材は、ポンプハウジング181に対し着脱(装着及び脱着)操作が可能な構成になっている。
【0034】
ここで、図7には、本実施の形態の第2エアリフトポンプ180において、中仕切り部185及び蓋部186からなる部材の着脱操作を説明する図が示される。図7に示すように、当該部材の構成に関し、蓋部186の内周径がポンプハウジング181の上端外径よりも若干小さくなるように構成されており、ポンプハウジング181の上端に蓋部186を嵌め込むことによって、当該部材のポンプハウジング181への装着が可能とされる。更に、当該部材をボルトナット等の固定部材によってポンプハウジング181に固定するような構成を採用することもできる。このような構成によれば、第2エアリフトポンプ180の内部清掃の際、中仕切り部185及び蓋部186からなる部材を、ポンプハウジング181から上方へ抜き出すことによって容易に取り外すことができ、内部清掃作業が容易とされる。また、ポンプハウジング181から中仕切り部185自体を取り外すことができるため、ポンプハウジング181と中仕切り部185の各々を個別に清掃することが可能となる。
【0035】
このような構成の第2エアリフトポンプ180において、エア供給口183から所定量のエアが供給されると、第2流通路188を上方へと向かうエア流れに伴って、第1流通路187には下向きの水の流れが、第2流通路188には上向きの水の流れが形成されることとなる。これにより、吸入口182から吸入された水が、第1流通路187及び第2流通路188を通って、吐出口184から連続的に吐出されるポンプ機能が達せされる。このとき、第1流通路187及び第2流通路188によって、略U字形の水流通経路が確立される。
【0036】
なお、この第2エアリフトポンプ180において、吐出口184を完全に塞ぐか、或いは吐出口184から吐出される水の量を抑えることによって、水循環による内部洗浄操作が可能となる。この洗浄操作の際、吸入口182から吸入された水が、第1流通路187及び第2流通路188を通ったのち、中仕切り部185の連通開口185aを通って第1流通路187へと循環される水の流れが形成されることとなる。このときには、第1流通路187及び第2流通路188に加え、連通開口185aにより形成される流通路によって、略O字形の水流通経路(水循環経路)が確立される。かくして、第2エアリフトポンプ180を設置したままの状態での内部洗浄操作を、水循環を用いて容易に行うことができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態の水処理装置100によれば、特に第1エアリフトポンプ140や第2エアリフトポンプ180を用いることによって、ポンプハウジング内に少なくとも略U字形の水流通経路を有するエアリフトポンプにつき、極力不要な空間をなくし、断面積を抑えたコンパクトな構成が実現されることとなる。本実施の形態の水処理装置100のように、設置スペースが限られた狭い箇所にエアリフトポンプを設置するのに、第1エアリフトポンプ140や第2エアリフトポンプ180は特に効果的である。これにより、エアリフトポンプ自体のコンパクト化のみならず、水処理装置全体としてのコンパクト化を図るのに有効である。
【0038】
また、本実施の形態によれば、第1エアリフトポンプ140や第2エアリフトポンプ180の構成に関し、ポンプハウジング141,181内の下部領域において、第1流通路147,187と第2流通路148,188との境界部分の大きさ(図2中及び図5中の距離d、面積など)を抑えることが可能となる。これに対し、略U字形状の配管によって構成された従来型の水移送ポンプでは、互いに対向する配管部分の間には空間が形成されるため、第1流通路と第2流通路との境界部分が本実施の形態のものよりも長くなる。従って、本実施の形態によれば、ポンプハウジング141,181内にブラシ等の洗浄用治具を挿入して、下部領域に堆積したスケール等を除去・洗浄する際の作業を容易に行うことが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、第1エアリフトポンプ140や第2エアリフトポンプ180の構成に関し、ポンプハウジング141,181の内部を容易に開放することが可能な構成を採用したため、内部清掃作業を容易に行うことが可能である。
【0040】
また、本実施の形態によれば、特に第2エアリフトポンプ180の構成に関し、連通開口185aを洗浄時の水循環に用いる構成を採用したため、第2エアリフトポンプ180を設置したままの状態での内部洗浄操作を容易に行うことが可能である。
【0041】
なお、本実施の形態では、エアリフトポンプ140,180のポンプハウジング141,181は、筒状の樹脂(パリソン)を金型ではさみ、そこへ空気を吹き込んで中空の製品を作る成形法、いわゆる「ブロー成形(中空成形)」と称呼される成形法によって製造することができる。このようなブロー成形を用いてポンプハウジングを製造することによって、エアリフトポンプを安価に製造するのに有効である。この場合、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル(PVC)などの材料を用いて、ポンプハウジング141,181を構成することができる。
【0042】
また、本実施の形態のエアリフトポンプ140,180の構成に関し、ポンプハウジング141,181を単一の配管を折り曲げることよって形成することもできる。具体的には、直線状に延在する単一の配管を、対向する配管部分同士が当接状態となるまでおよそ180度折り曲げる。これにより、配管部分同士の間隔が抑えられ、互いに当接する(重なり合う)当該配管部分が、第1流通路147,187と第2流通路148,188を区画する区画部となる。
【0043】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0044】
上記実施の形態では、第1エアリフトポンプ140及び第2エアリフトポンプ180の構成に関し、中仕切り部145,185を蓋部146,186と一体状に構成する場合について記載したが、本発明では、中仕切り部をポンプハウジングに一体状に構成した変更例を採用することもできる。ここで、図8には、本実施の形態の第1エアリフトポンプ140の変更例が示されている。
【0045】
図8に示すように、この第1エアリフトポンプ140では、ポンプハウジング141と、このポンプハウジング141の上部を塞ぐ蓋部146とは各々別体構造とされている。また、この蓋部146は、ポンプハウジング141に対し着脱(装着及び脱着)操作が可能な構成になっている。具体的には、蓋部146の外周径がポンプハウジング141の上端内径よりも若干小さくなるように構成されており、ポンプハウジング141の上端に蓋部146を嵌め込むことによって、当該蓋部146のポンプハウジング141への装着が可能とされる。この第1エアリフトポンプ140では、ブロー成形(中空成形)によって中仕切り部145が一体状に構成されたポンプハウジング141を用いている。図8に示すような、中仕切り部をポンプハウジングと一体状とする構成は、第2エアリフトポンプ180についても同様に採用され得る。
【0046】
また、図8に示す第1エアリフトポンプ140の構成に関し、図9に示すように、蓋部146に相当する部材を、ポンプハウジング141の一部を切断した切断端材(カット端材)を用いて構成することもできる。ここで、図9には、本実施の形態の第1エアリフトポンプ140の変更例が示されている。この変更例では、ポンプハウジング141の上部に、予め被切断部149を形成しておく。この被切断部149の外周面は、ポンプハウジング141の内周面のネジ溝構造(或いはネジ山構造)と螺合が可能なネジ山構造(或いはネジ溝構造)を備えている。従って、ポンプハウジング141の被切断部149よりも上部を、図9中の左図中の切断線に沿って切断したのち、キャップ状のこの被切断部149を上下反転させて、ポンプハウジング141の上端に螺合させることによって、被切断部149がポンプハウジング141に対する蓋部として装着される。このような構成によれば、ポンプハウジングの一部を用いて蓋部を製造することができるため、エアリフトポンプを更に安価に製造するのに有効である。
【0047】
また、上記実施の形態では、図2に示すような構成の第1エアリフトポンプ140を第2嫌気濾床槽130に設け、図5に示すような構成の第2エアリフトポンプ180を処理水槽170に設ける場合について記載したが、本発明では、第1エアリフトポンプ140にかえて第2エアリフトポンプ180と同様の構成のエアリフトポンプを用いたり、第2エアリフトポンプ180にかえて第1エアリフトポンプ140と同様の構成のエアリフトポンプを用いてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態の水処理装置100において、更に別の処理槽、例えば、夾雑物除去槽、固液分離槽、接触曝気槽、活性汚泥法における曝気槽、また好気処理等の生物処理を行わない嫌気処理槽や溶出槽などを適宜設けることができ、これに応じて第1エアリフトポンプ140や第2エアリフトポンプ180のような構成のエアリフトポンプの設置箇所を適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…水処理装置
101…槽本体
110…第1嫌気濾床槽
130…第2嫌気濾床槽
140…第1エアリフトポンプ
141,181…ポンプハウジング
142,182…吸入口
143,183…エア供給口
144,184…吐出口
145,185…中仕切り部
185a…連通開口
146,186…蓋部
147,187…第1流通路
148,188…第2流通路
149…被切断部
150…担体流動生物濾過槽
152…担体充填領域
153…担体
154…上部担体移動防止用部材
156…下部担体移動防止用部材
160…散気装置
162…逆洗装置
170…処理水槽
180…第2エアリフトポンプ
190…消毒槽
192…消毒剤注入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングに、吸入口、ガス供給口及び吐出口が設けられるとともに、前記ポンプハウジングに流通経路が形成され、前記吸入口を通じてポンプハウジング内に導入した被移送水に対し、前記ガス供給口を通じて移送用ガスが供給されることによって、当該移送用ガスのガス流れに伴って被移送水が前記流通経路を流通したのち、前記吐出口からポンプハウジング外へと吐出される水移送ポンプであって、
前記ポンプハウジングは、上下方向に長尺状に延在する筒状として構成され、当該ポンプハウジングに形成された前記流通経路は、前記吸入口からポンプハウジング内の下部領域へ向けて下方へと延在する第1流通路と、前記下部領域から前記吐出口へ向けて上方へと延在する第2流通路と、前記第1流通路と前記第2流通路を区画する区画部と、
を有する構成であることを特徴とする水移送ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の水移送ポンプであって、
前記流通経路は、更に、前記第1流通路から前記第2流通路へと流れた被移送水が、当該第1流通路へと循環するのを許容する第3流通路を備える構成であることを特徴とする水移送ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の水移送ポンプであって、
前記第3流通路は、前記区画部において前記第1流通路と前記第2流通路を連通する連通開口によって構成されることを特徴とする水移送ポンプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水移送ポンプであって、
前記ポンプハウジングと前記区画部とが一体化された構成であることを特徴とする水移送ポンプ。
【請求項5】
処理槽本体に、被処理水の水処理を行う水処理部と、前記水処理部へと被処理水が流入する流入口と、前記水処理部にて処理された水が前記処理槽本体から流出する流出口と、被処理水が滞留する滞留領域から移送領域へと当該被処理水を移送する水移送ポンプと、を備える水処理装置であって、
前記水移送ポンプとして、請求項1〜4のいずれかに記載の水移送ポンプを用いた構成であることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149443(P2011−149443A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107515(P2011−107515)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【分割の表示】特願2005−213125(P2005−213125)の分割
【原出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】