説明

浄化用濾過器および浄化方法

【課題】水酸化アルミニウムを濾材とすることにより、空中や水中にて例外なく負に帯電しているウイルスやバクテリア等の微生物をクーロン力で捕捉するという水の浄化用濾過器および水の浄化方法を提供する。
【解決手段】水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材7と、水Wの流入口部1aおよび流出口部2aを有し、前記流入口部1aと流出口部2aとの間に前記濾材7を封入するためのケース1,2と、前記ケース1,2から前記粉末が流出するのを防止する濾材流出防止材5,6とを備え、pH4〜pH8の水Wを前記ケース1,2の流入口部1aから前記濾材7を介して前記流出口部2aから流出させることにより、前記濾材7で微生物を捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスやバクテリア等の微生物を含んだ水や空気から前記微生物を除去し、水や空気を浄化するための浄化用濾過器およびその浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルスやバクテリア等の微生物を含んだ水から微生物を除去するための従来技術としては、塩素系殺菌剤を添加、オゾン曝気、紫外線の照射、電解処理、銀や銅等の抗菌金属容器、活性炭を帯電する方法などが提案されている。
又、空中に浮遊したウイルスやバクテリア等の微生物を除去するための従来技術としては、紫外線の照射や、放電によりオゾンガスの放出、配向分極電石不織布フィルタなどが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−269523(要約書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウイルスやバクテリア等の微生物を含んだ水を浄化するための従来技術とその課題:
塩素系殺菌剤として一般に次亜塩素酸ナトリウムが使用されているが、一般細菌などには殺菌効果はあるが、B型肝炎ウイルス、芽胞菌、結核菌などには効果がなく、完全な殺菌方法とはいえない。
【0005】
その他、グルタードアルデヒドやホルマリンなどの化学物質による殺菌処理は、効果は高いが、人体に対して毒性が強いという問題がある。
【0006】
水を電解処理する方法もあるが、水道水のように各種のイオンが存在していることにより電気が流れ、負電極側から水素ガスが発生し、正電極から酸素ガスや微量の塩素ガスが発生する。発生した塩素ガスは水(H2 O)や水酸イオン(OH- )と反応して次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンとなる。この次亜塩素酸イオンが塩素系殺菌剤としての殺菌効果をもたらすことになる。この作用は、水道水のように、浄水場での処理時に塩素系殺菌剤を投入されていた場合にのみ効果を示すものであり、塩素イオンを有しないような井戸水などでは殺菌効果は有しない。更に、不純物を含まない純水に対しては、そもそも電気が流れないため、電解処理は不可能である。
【0007】
水の電気分解で、強酸性水と強アルカリ水とを分けて生成し、その内の強酸性水を殺菌水として使用する方法がある。強酸性水は、あらゆるウイルスやバクテリア等の微生物に対して殺菌効果は高い。しかし、この方法では、電気分解時に同時に生成されてしまう強アルカリ水は使用できずに捨てることになるという問題がある。
【0008】
オゾン曝気による水処理方法では、処理時の殺菌効果は高いが、曝気処理後の時間経過とともに殺菌効果はなくなってしまうという問題がある。
紫外線の照射方法は、一般細菌の殺菌には効果がある。しかし、芽胞菌に対しては相当に強い照射量が必要になる。また、紫外線が直接に当たらない影の部分では、全く殺菌効果はないという問題がある。
【0009】
容器を銀や銅などの抗菌金属にすることによる殺菌方法もあるが、菌が直接これらの金属表面に触れなければ殺菌効果はないという問題がある。
【0010】
活性炭を陽電極板に接触させて、活性炭をプラスに荷電させることにより、負に帯電しているウイルスやバクテリア等の微生物をクーロン力で引き付けて捕捉するという従来技術が提案されている(前記特許文献1参照)。
しかし、水中に含まれているカルシウムイオンやマグネシウムイオンは、正電荷に帯電している活性炭には吸着されず、陰電極板に吸着されてカルシウムやマグネシウムとして付着してしまうという問題が発生する。
【0011】
ウイルスやバクテリア等の微生物が浮遊した空気を浄化するための従来技術とその課題:
空中放電によりオゾンを放出して空気を浄化する方法がある。しかし、オゾンそのものは人体に有害であるため、発生濃度を低くして放出させているのが実情である。そのため殺菌能力は低くなり、除菌効果は殆どないというのが実情である。
【0012】
紫外線の照射方法は、水中と同様に、一般細菌の殺菌には効果がある。しかし、芽胞菌に対しては相当に強い照射量が必要になる。また、紫外線が直接に当たらない影の部分では、全く殺菌効果はないという問題がある。
【0013】
配向分極電石不織布フィルタは、正と負の表面電荷を有していることにより、クーロン力により空中の菌を捕集できる。しかし、湿度が所定量を越えると表面電荷がなくなり、菌の捕集効果は殆どなくなってしまうという問題がある。
【0014】
以上のように、従来技術として様々な方法がある。しかし、いづれも何らかの課題や問題を持っており、水中や空気中に含んだウイルスやバクテリア等の微生物を安全で容易に除去できるものがないというのが実情である。
【0015】
したがって、本発明の主な目的は、空中や水中に存在するウイルスやバクテリア等の微生物を除去するための浄化用濾過器および浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の水の浄化用濾過器は、水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、水の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、前記ケースから前記粉末が流出するのを防止する濾材流出防止材とを備え、pH4〜pH8の水を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から流出させることにより、前記濾材で微生物を捕捉する。
【0017】
ここで、水酸化アルミニウムAl (OH)3は、水H2 Oに触れることにより、その水が酸性においては正電荷となり、アルカリ性では負電荷の両性を示し、pH8付近において等電位点に達することが知られている。したがって、一般の水道水や純水の示すpH7付近では、若干ではあるが正電荷に帯電している。図8は、特開平11−153288号の表1から引用したものであり、前記記述を裏付けるものである。
【0018】
一方、微生物は負に帯電していることが知られている(特開2000−42355(段落0011),特開2006−262825(段落0042)参照)。
したがって、ウイルスやバクテリア等の微生物を含んだ水が流入口部から流入することにより、水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材は正電荷を帯びる。そのため、負の電荷を帯びているウイルスやバクテリアなどの微生物は、クーロン力により前記濾材に捕捉されることとなり、流出口部から無菌の水を得ることができる。
なお、クーロン力とは、電荷を帯びた粒子間に働く力であり、異なる電荷の粒子間には引力が働く。
【0019】
なお、濾材に捕捉されたウイルスやバクテリアは、動けないため捕食ができず、時間の経過と共に死滅する。
【0020】
本水の浄化用濾過器を用いて浄化された水の使用用途としては、飲料水の他に、家畜の飲料水や水耕栽培などの用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1にかかる水の浄化用濾過器を示す概略縦断面図である。
【図2】同濾過器の分解縦断面図である。
【図3】本発明の実施例2にかかる水の浄化用濾過器を示す概略縦断面図である。
【図4】同濾過器の分解縦断面図である。
【図5】本発明の実施例3にかかる空気の浄化用濾過器の除菌フィルタを示す概略縦断面図である。
【図6】濾材部を示す概略断面図である。
【図7】除菌フィルタを組み込んだ空気の浄化用濾過器を示す概略構成図である。
【図8】水酸化アルミニウムと水との電荷の関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい態様において、前記水酸化アルミニウムの粉末の平均粒径が1.0μm〜100μmである。
かかる態様によれば、濾材流出防止材から流出しない程度の平均粒径の水酸化アルミニウムの粉末を用いることにより、水酸化アルミニウムの粉末が流出口部から流れ出るのを防止し得る。
なお、水酸化アルミニウムの粉末の平均粒径が100μmを超えると粒子間の空隙が大きくなりすぎて、微生物を吸着できないおそれがある。
一方、同粉末の平均粒径が1.0μm以下になると、粉末の取り扱いが難しくなる上、目詰まりを生じ易くなる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、前記濾材流出防止材は多孔質セラミックスまたは多孔質フィルムまたはミクロ繊維からなる。
かかる態様によれば、濾材流出防止材として多孔質セラミックスまたは多孔質フィルムまたはミクロ繊維を用いることにより、水酸化アルミニウムの粉末が流出口部から流れ出るのを防止し得る。
【0024】
本発明の好ましい態様において、前記ケースの水の流れ方向に直交する方向に向って突出する突出部または段部を設けることにより、前記流入口部から入った水が、前記突出部または段部により前記ケースの内壁よりも中央の前記濾材内を流れ易くした。
本態様によれば、前記突出部または段部を設けることにより、水がケースの内壁に沿って流れにくくなり、濾材に接触し易くなる。すなわち、前記ケースの内壁面に沿って流れた水が前記ケースに沿って流れず、水酸化アルミニウム粉末の濾材の内側に入り込んでいくため、ウイルスやバクテリア等の微生物が濾材に捕捉され易くなる。
【0025】
本発明の水の浄化方法としては、水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、水の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、前記ケースから前記粉末が流出するのを防止する濾材流出防止材とを備えた水の浄化用濾過器を用い、pH4〜pH8の水を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から流出させることにより、正電荷に帯電した前記濾材で負電荷に帯電した微生物を捕捉する。
前記流入口部から流入される水としては、水酸化アルミニウムが水に溶けてイオン化してしまわないためにはpH4〜pH8が好ましく、より好ましくはpH6〜pH8に設定される。
【0026】
本発明にかかる空気の浄化用濾過器としては、水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、空気の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と前記流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、前記流入口部の上流において空気を加湿するための加湿器とを備え、前記加湿されてpH4〜pH8の水分を含む空気を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から放出させることにより、前記濾材で微生物を捕捉する。
【0027】
前記空気の浄化用濾過器は、加湿された空気中の水分と、水酸化アルミニウムとが反応することで、該水酸化アルミニウムが帯電し、空気中のウイルスやバクテリア等の微生物を水酸化アルミニウムが捕捉することで、空気の除菌が可能となる。
【0028】
本発明にかかる空気の浄化方法としては、水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、空気の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と前記流出口部とその間に前記濾材を封入するためのケースと、前記流入口部の上流において空気を加湿するための加湿器とを備えた空気の浄化用濾過器を用い、前記加湿されてpH4〜pH8の水分を含む空気を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から放出させることにより、正電荷に帯電した前記濾材で負電荷に帯電した微生物を捕捉する。
【実施例】
【0029】
実施例1:
水の浄化用濾過器;
図1および図2は実施例1を示す。
図1は、ウイルスやバクテリア等の微生物で汚染された水Wから微生物を除去した水Wを生成するための水浄化用濾過器の構成を示している。図2は、図1の分解図を示す。
【0030】
図2に示すように、本実施例の水の浄化用濾過器は、第1および第2外筒ケース1,2、一対のOリング9,10およびフィルタカートリッジ8を備えている。
【0031】
前記第1外筒ケース1は、水W(図1)の流入口部1aと雌ネジ1bを有している。第2外筒ケース2は、水W(図1)の流出口部2aと、前記雌ネジ1bに螺合する雄ネジ2bを有している。前記第1および第2外筒ケース1,2は、前記雌ネジ1bと雄ネジ2bにより、図1に示すように、互いに螺合可能に設定されている。
【0032】
図2に示す前記カートリッジ8は、第1および第2内筒ケース3,4、濾材流出防止材5,6および濾材7を備えている。
水Wが流入される側の第1内筒ケース3には多数の流入口部3aが形成されている。水Wが流出される側の第2内筒ケース4には多数の流出口部4aが形成されている。前記第1および第2内筒ケース3,4には、第1内筒ケース3と第2内筒ケース4とが嵌合し、接着や溶着等を用いて互いに密着される接合部3b,4bが形成されている。
【0033】
前記第1内筒ケース3の多数の流入口部3aの下流側には、第1濾材流出防止材5が該多数の流入口部3aの下流側の面に密着するように設けられている。一方、第2内筒ケース4の多数の流出口部4aの上流側には、第2濾材流出防止材6が該第2内筒ケース4の上流側の面に密着するように設けられている。
前記第1および第2濾材流出防止材5,6は、たとえば、微細な物質を通過させないような多孔質セラミックスや多孔質フィルムやミクロ繊維等で形成されている。
【0034】
図1に示すように、前記第1および第2濾材流出防止材5,6の間に水酸化アルミニウムを入れて、第1および第2内筒ケース3,4を互いに密閉することで、前記濾材流出防止材5,6の間に濾材7が封入されたカートリッジ8が形成される。
【0035】
なお、前記カートリッジ8は、予め組み立てられ、ユーザーが交換可能なフィルタカートリッジ8として出荷される。
前記カートリッジ8は、所定時間が経過するか、所定量の水が通過した時点で定期的に新たなカートリッジ8と交換される。
【0036】
前記フィルタカートリッジ8の両端と、外筒ケース1,2の内面との間には、Oリング9,10が配設され、流入口1aから入った水Wが、必ずフィルタカートリッジ8の中の濾材7を通過して、流出口21aら出るように組み立てられる。
【0037】
このような構成により、図1に示すように、ウイルスやバクテリア等の微生物を含んだ水Wが流入口部1aから流入すると、前記水Wは、図2に示すカートリッジ8の多数の流入口部3aによって満遍なく濾材7に送られる。前記水Wに反応した水酸化アルミニウムの濾材7は正電荷を帯び、そのため、負の電荷を帯びているウイルスやバクテリアなどの微生物がクーロン力により濾材7に捕捉される。
その後、ウイルスやバクテリアが濾材7により捕捉されて除去された水Wは、多数の流出口部4aを通り、図1の矢印で示すように、浄化用濾過器の第2外筒ケース2の流出口部2aから無菌の水Wとして流出される。
【0038】
実施例2:
図3および図4は実施例2を示す。
たとえば、前述した図1の矢印11に示すように、水Wがフィルタカートリッジ8の内壁面に沿って流れた場合、濾材にウイルスやバクテリア等の微生物が捕捉されずにフィルタカートリッジ8から出てしまう可能性がないとはいえない。以下に述べる本実施例2は、その対策を施したものである。
【0039】
本実施例2の水の浄化用濾過器は、前述した実施例1と類似した構成であるため、類似機能部品には前記実施例1に記載した同一番号を付し、実施例1と異なる部分を主に説明する。
【0040】
図4に示すように、第1内筒ケース3の内壁面3cは、第2内筒ケース4の内壁面4cよりも径小に形成されている。そのため、第1内筒ケース3の内壁面3cと第2内筒ケース4の内壁面4cとの境目には段差が形成されている。
図3に示すように、第1内筒ケース3の内壁面3cに沿って流れた水Wは、矢印12で示すように、第2内筒ケース4の内壁面4cに沿って流れず、水酸化アルミニウム粉末の濾材7内に入り込んでいくため、ウイルスやバクテリア等の微生物は濾材7に捕捉され易くなる。
【0041】
なお、本実施例2では、第1内筒ケース3と第2内筒ケース4の内壁面に段差を設けたが、段差以外に不図示の突起部を設けることで、水Wが内壁面にのみに沿って流れる流路が無くなるようにしてもよい。
【0042】
実施例3:
空気の浄化用濾過器;
図5〜図7は実施例3を示す。
【0043】
ここで、前述したように、周知の配向分極電石不織布フィルタは、正と負の表面電荷を有していることにより、クーロン力により空中のウイルスやバクテリア等の微生物を捕集できる。しかし、湿度が所定量を越えると表面電荷がなくなりクーロン力が作用しなくなる。そのため、空中のウイルスやバクテリア等の微生物の捕集が困難になる。
【0044】
これに対して、水酸化アルミニウムは湿度さえあれば正の電荷を帯びるため、加湿機能を備えた空気清浄機への応用にも適している。
したがって、前述した実施例1の水の浄化用濾過器を空気の浄化用濾過器に応用した例を以下に示す。
本実施例3の浄化用濾過器は、前述した実施例1と類似した構成であるため、類似機能部品には前述した実施例1と同一番号を付し、実施例1と異なる部分を主に説明する。
【0045】
図7は、図5に示す除菌フィルタ18を組み込んだ空気清浄機の構成を示したものである。図7の矢印で示すように、送風機16によりプレフィルタ15を介して吸い込まれた室内の空気Waは、加湿器17により加湿される。加湿された空気Waは除菌フィルタ18を通して室内に戻される。
なお、加湿器17としては、たとえば、超音波式や加熱式など周知の加湿器を採用することができる。
【0046】
図5は、空中に浮遊しているウイルスやバクテリア等の微生物を除去した空気Waを生成するための空気清浄機用の除菌フィルタ18の構成を示す。
【0047】
前記除菌フィルタ18は第1および第2外筒ケース1,2を備えている。前記第1外筒ケース1と第2外筒ケース2とは、互いに嵌合していると共に、ネジ13により空気漏れがないように互いに固定されている。
【0048】
前記第1および第2外筒ケース1,2内には、カートリッジ8が設けられている。前記カートリッジ8内には、濾材流出防止材5,6に挟まれた濾材ケース14が設けられている。濾材ケース14内には、水酸化アルミニウムからなる濾材7が封入されている。
【0049】
図6に示すように、前記濾材ケース14には、ハニカム状の隔壁14aが多数形成されている。前記多数の隔壁14a内には、水酸化アルミニウムからなる濾材7がそれぞれ封入されている。
したがって、前記実施例1との大きな差異は、水酸化アルミニウム粉末からなる濾材7を単に封入するのではなく、ハニカム状の隔壁14aをもった濾材ケース14に封入している点である。これは、細かな隔壁14aを設けることにより、空気の流路の断面において、自重や振動などによって濾材7に大きな空隙が発生してしまうのを防止するためである。
【0050】
図7の加湿器17により加湿された空気Waが図5に示す除菌フィルタ18を通過すると、除菌フィルタ18内の水酸化アルミニウムからなる濾材7が空気Wa中の水分に反応し正の電荷を持つため、吸い込んだ空気Waの中に含まれていたウイルスやバクテリア等の微負電荷の生物がクーロン力で捕捉される。したがって、除菌された空気を室内に戻すことができ、空気清浄機としての機能を果たすことができる。
【0051】
なお、室内の空気Waが、所定の湿度を持っていれば、必ずしも加湿器17を作動させる必要はない。そこで、図7に不図示の湿度センサを配設し、室内の湿度が低過ぎる時のみ、すなわち、室内の空気Wa中の水分量が所定量以下になり水酸化アルミニウムからなる濾材7が正の電荷を持ち得なくなる場合のみ、加湿器17を作動させるようにしてもよい。
【0052】
もしも、pH8以上のアルカリ水の場合、水酸化アルミニウムは負電荷を帯びることになる。その場合、濾材7全体が負電荷を帯びることになり、水中の含まれた負電荷の微生物は、所定の流速以下であれば、クーロン力で反発されてフィルタ内に入っていけなくなる。即ち、アルカリ水の場合でも、流速の管理をすれば、水中のウイルスやバクテリア等の微生物を除去することも可能である。
【0053】
もしも、水がpH8の弱アルカリ性で、水酸化アルミニウムが等電位点となってしまう場合は、炭酸等を添加して強制的に酸性側にpH調整してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の水の浄化用濾過器は、ウイルスやバクテリア等の微生物を含んだ水や空気から微生物を除去し、水や空気を浄化する用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,2:外筒ケース
3,4:内筒ケース
5,6:濾材流出防止材
7:濾材
8:フィルタカートリッジ
9,10:Oリング
11,12:(水の流路を示す矢印)
13:ネジ
14:濾材ケース
15:プレフィルタ
16:送風機
17:加湿器
18:除菌フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、
水の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、
前記ケースから前記粉末が流出するのを防止する濾材流出防止材とを備え、
pH4〜pH8の水を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から流出させることにより、前記濾材で微生物を捕捉する水の浄化用濾過器。
【請求項2】
請求項1において、前記水酸化アルミニウムの粉末の平均粒径が1.0μm〜100μmである水の浄化用濾過器。
【請求項3】
請求項2において、
前記濾材流出防止材は多孔質セラミックスまたは多孔質フィルムまたはミクロ繊維からなる水の浄化用濾過器。
【請求項4】
請求項3において、
前記ケースの水の流れ方向に直交する方向に向って突出する突出部または段部を設けることにより、
前記流入口部から入った水が、前記突出部または段部により前記ケースの内壁よりも中央の前記濾材内を流れ易くした水の浄化用濾過器。
【請求項5】
水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、
水の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、
前記ケースから前記粉末が流出するのを防止する濾材流出防止材とを備えた水の浄化用濾過器を用い、
pH4〜pH8の水を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から流出させることにより、正電荷に帯電した前記濾材で負電荷に帯電している微生物を捕捉する水の浄化方法。
【請求項6】
水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、
空気の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と前記流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、
前記流入口部の上流において空気を加湿するための加湿器とを備え、
前記加湿されてpH4〜pH8の水分を含む空気を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から放出させることにより、前記濾材で微生物を捕捉する空気の浄化用濾過器。
【請求項7】
水酸化アルミニウムの粉末からなる濾材と、
空気の流入口部および流出口部を有し、前記流入口部と前記流出口部との間に前記濾材を封入するためのケースと、
前記流入口部の上流において空気を加湿するための加湿器とを備えた空気の浄化用濾過器を用い、
前記加湿されてpH4〜pH8の水分を含む空気を前記ケースの流入口部から前記濾材を介して前記流出口部から放出させることにより、正電荷に帯電した前記濾材で負電荷に帯電している微生物を捕捉する空気の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200818(P2011−200818A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71769(P2010−71769)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(593183551)名村電機工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】