説明

浄化空気供給構造、この浄化空気供給構造を用いたクリーンルーム、及びガスタービンプラント

【課題】空気供給対象部に供給される空気に含まれる塵埃等の異物を効率的かつ容易に除去することが可能な浄化空気供給構造、この浄化空気供給構造を用いたクリーンルーム、及びガスタービンプラントを提供すること。
【解決手段】空気浄化部2と、空気供給対象部5とを備えた浄化空気供給構造であって、前記空気浄化部2は、洗浄液供給ノズルと、気液接触部21とを備え、前記気液接触部21は、間隔をあけて配置される複数の板状部材に形成された空気流路を通過する空気が前記板状部材の表面を流動する洗浄液及び前記空気流路内を滴下される洗浄液と直接接触して、前記空気内に含まれる塵埃を除去するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化部と空気供給対象部を備え空気供給対象部に浄化された空気を供給可能とされる浄化空気供給構造と、この浄化空気供給構造を用いたクリーンルーム、ガスタービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、クリーンルームや発電プラントを構成するガスタービンでは塵埃等が含まれない清浄な空気が必要とされている。
例えば、クリーンルームではわずかな塵埃の存在によってもクリーンルームとしての機能を果たさなくなって、例えば、半導体素子の生産や医療行為等に重大な支障が生じる結果となる。また、ガスタービンを備えた発電プラント等においては、ガスタービンに供給される空気に塵埃等が含まれていると、空気圧縮機やガスタービンの内部に塵埃が侵入して羽根が浸食されて出力が低下する可能性がある。
【0003】
そのため、クリーンルームでは、例えば、空気供給路にHEPA等の超高性能フィルタを配置して浄化した空気を供給するようになっており、また、ガスタービンでは、例えば、空気供給路に設けたプレフィルタやメインフィルタにより浄化した空気を供給することが広く行なわれている。
【0004】
例えば、ガスタービンの空気圧縮機では、比較的大きなゴミをろ過するためにプレフィルタが用いられ、10μm程度およびそれ以上の大きさの塵埃を除去するためにHEPAまたはその他の高性能フィルタからなるメインフィルタが設けられ、メインフィルタで浄化された空気が圧縮されて燃焼器に供給されて燃料ガスを燃焼し、この燃焼ガスの膨張を利用してガスタービンが駆動されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、大規模な出力を得るための発電設備では大量の吸気をろ過するために数百枚のフィルタが設置される場合がある。
【特許文献1】特開平5−149501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、クリーンルームやガスタービンへの圧縮空気の供給にフィルタを用いる場合、フィルタを交換する際に設備の運転を停止しなければならないために稼働率が低下するうえ、フィルタの購入コストやフィルタ交換工数に係るランニングコストが増大するという問題があった。また、このフィルタ交換は、1年に1〜2回程度の頻度で発生するために大量の産業廃棄物が発生し、環境に関する意識が高まるなか解決するための具体的な技術的手段の確立が要請されている。
【0006】
本発明は、かかる事情を考慮してなされたものであり、空気供給対象部に供給される空気に含まれる塵埃等の異物を効率的かつ容易に除去することが可能な浄化空気供給構造、この浄化空気供給構造を用いたクリーンルーム、及びガスタービンプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、空気浄化部と、該空気浄化部に接続され前記空気浄化部から空気が供給される空気供給対象部とを備えた浄化空気供給構造であって、前記空気浄化部は、洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、気液接触部とを備え、前記気液接触部は、間隔をあけて配置される複数の板状部材から構成されるとともに前記間隔部分に空気流路が形成され、前記空気流路を通過する空気が、前記洗浄液供給ノズルから吐出され前記板状部材の表面を流動する洗浄液及び前記空気流路内を滴下される洗浄液と直接接触して、前記空気内に含まれる塵埃を除去することにより前記空気供給対象部に浄化空気を供給するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る浄化空気供給構造によれば、空気供給対象部に供給される空気が気液接触部に間隔をあけて配置された複数の板状部材を流れ落ちる洗浄液及び空気流路を滴下される洗浄液に直接接触し、空気に含まれる塵埃等の異物が洗浄液に吸着される。その結果、通常のフィルタでは除去が困難な10μm以下の塵埃が除去される。
その結果、フィルタを必須の構成とすることなく浄化空気を空気供給対象物に供給することができる。また、エアフィルタの購入費用及びエアフィルタ交換の工数が不要となるためランニングコストを削減することができる。
また、エアフィルタの交換による設備停止を抑制して稼働率を向上することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、クリーンルームであって、請求項1に記載の浄化空気供給構造を用いたことを特徴とする。
【0010】
この発明に係るクリーンルームによれば、浄化した空気をフィルタを用いることなく安定してクリーンルームに供給することができる。
【0011】
請求項3の発明は、ガスタービンプラントであって、請求項1に記載の浄化空気供給構造を用いたことを特徴とする。
【0012】
この発明に係るガスタービンプラントによれば、空気圧縮機等の羽根を洗浄する回数を大幅に減らして稼働率を向上するとともにガスタービンの性能を容易に維持することができ、洗浄に要する工数を削減することができる。
また、フィルタ交換に要するランニングコストを削減することができる。
また、洗浄液の温度を低くしてガスタービンの燃焼器に供給する圧縮空気の温度を低下させた場合、吸気温度上昇によるガスタービンの出力低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る浄化空気供給構造によると、エアフィルタを通過させなくとも微細な塵埃等の異物を除去して浄化された空気を空気供給対象物に供給することができ、その結果、フィルタ交換に係るランニングコストを削減するとともに稼働率を向上することができる。また、フィルタ交換に起因する産業廃棄物を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1を参照してこの発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る浄化空気供給構造を用いたクリーンルーム1であり、空気浄化部2と、クリーンルーム本体(空気供給対象部)5とを備え、クリーンルーム本体5は空気浄化部2に接続され、外部から取り入れる空気を空気浄化部2で浄化した後にクリーンルーム本体5内に供給されるようになっている。図中において矢印Aは、空気の流れる方向を示している。
【0015】
空気浄化部2は、上下方向に重ねて配置された3基の浄化装置20と、洗浄水循環回路27とを備え、洗浄水循環回路27は洗浄水循環回路27Aと洗浄水環流回路27Bとを有している。
【0016】
それぞれの浄化装置20は、気液接触部21と、気液接触部21で浄化された空気をクリーンルーム本体5に導くためのダクト22とを備えており、ダクト22は浄化装置20からクリーンルーム本体5の空気取入部5Aに向かって、例えば、図1に示すように屈曲部22Aが形成されて浄化された空気をクリーンルーム本体5内に導入させやすくなっている。
【0017】
気液接触部21は、複数の板状部材23を有し、それぞれの板状部材23が空気が通過する程度の間隔をあけて配置されており、この間隔部分が空気流路24とされている。
また、気液接触部21は、図2に示すように、洗浄水(洗浄液)を貯留するための貯留槽25と、貯留槽25から吐出された洗浄水を受けるための受水槽26とを備えており、貯留槽25には洗浄水循環回路27Aから供給された洗浄水が貯留されるとともに、受水槽26は洗浄水環流回路27Bを経由して洗浄水が外部に排出されるようになっている。
【0018】
この実施形態において、気液接触部21を構成する板状部材23は、滴下された洗浄水が空気流路24の力で空気の流れ方向後方側に移動されることを考慮して、下方が空気の流れ方向後方側に伸びて形成されている。図2(A)に示した破線は、滴下された洗浄水の経路を示している。
【0019】
貯留槽25は、下面に多数のノズル孔(洗浄液供給ノズル)が形成されて洗浄水を重力で吐出するようになっており、吐出した洗浄水は板状部材23の表面を流れ落ちるとともに空気流路24内を雨のように滴下され、空気流路24内を通過する空気と直接接触するとともに空気に含まれた塵埃等の異物を洗浄水が吸収するようになっている。
【0020】
洗浄水供給回路27Aは、例えば、図示しないクーリングタワー等の給水源に接続されて給水源から供給された洗浄水を3基の気液接触部21に分岐して供給する給水用配管27Cと、それぞれの気液接触部21に対応して給水用配管27Cに設けられた給水ポンプ27Dとを備え、給水源から供給された洗浄水を給水ポンプ27Dによってそれぞれの気液接触部21に供給するようになっている。
【0021】
洗浄水環流回路27Bは、受水槽26とクーリングタワー(図示せず)とを流通可能に接続する環流配管27Dと、受水槽26側から順に環流配管27Dに配置される地下タンク27Fと、環流ポンプ27Gとを備え、受水槽26の水を地下タンク27F経由でクーリングタワーに還流させるようになっている。
なお、洗浄水については、クーリングタワーにおいて水温を調整して用いる構成としてもよく、又クーリングタワーに代えて工業用水源等の一般給水源から給水し、浄化装置20にて空気を浄化した後の洗浄水を廃水施設等に排水する構成としてもよい。
【0022】
クリーンルーム本体5は、例えば、半導体素子を取り扱う作業スペースや、医療分野における無菌室、手術室、微生物の培養スペース等他の用途に用いる構成としてもよい。
【0023】
第1の実施形態に係る浄化空気供給構造を用いたクリーンルーム1によれば、通常のフィルタでは除去が困難な10μm以下の5μmの塵埃についても細くすることが可能とされる。
その結果、フィルタを必須の構成とすることなく浄化空気をクリーンルーム本体5に供給することができる。
また、エアフィルタの購入費用及びエアフィルタ交換の工数が不要となるためランニングコストを削減することができる。
また、フィルタの交換による設備停止を抑制してクリーンルーム1の稼働率を向上することができる。
【0024】
図3は、クリーンルーム1に適用可能とされる第1の変形例に係る空気浄化部3の気液接触部30を示す図である。
気液接触部30が洗浄流動部20と異なるのは、洗浄流動部30では、2基の気液接触部21が浄化対象の空気の流れに直列に配置されている点であり、気液接触部21の構成については気液接触部20と同様であるため同じ符号を付して説明を省略する。
気液接触部30において、洗浄水は空気の流れに対して上流側の気液接触部21から下流側の気液接触部21に流れるように構成されている。
なお、例えば、3以上複数基の洗浄水流動部21を直列に配置してもよい。
【0025】
気液接触部30では、気液接触部21が直列に配置されているため、空気の浄化性能を向上させることができる。
また、洗浄水が空気の流れに対して上流側の気液接触部21から下流側の気液接触部21に流れるので、供給された空気はクリーンルーム本体5側では塵埃等を含まない洗浄水と接触し、浄化されていない空気は、洗浄流動部30への空気取入口側で塵埃等を吸収した洗浄水と接触するので空気の浄化性能の低下を抑制しつつ洗浄水の節約することができる。
また、洗浄水の温度を調整した場合、クリーンルーム本体5に供給する空気の温度を所望の温度に容易に近づけることができる。
【0026】
図4は、クリーンルーム1に適用可能とされる第2の変形例に係る空気浄化部4の気液接触部40を示す図である。
気液接触部40が洗浄流動部20と異なるのは、洗浄流動部40では、少なくとも二つの気液接触部21が一つのダクト41に接続されていて、二つの気液接触部21を用いて浄化した大容量の空気をダクト41に排出するように構成されている。気液接触部21の構成については気液接触部20と同様であるため同じ符号を付して説明を省略する。
【0027】
図4では、気液接触部21が左右両側から一つのダクト41に接続された構成とされているが、例えば、3以上の複数基の洗浄水流動部21をダクト41に向かって配置してもよいし、これら複数の洗浄水流動部21を配置する場合に、水平方向に配置し、又は上下方向に配置し、又は水平方向と上下方向の双方向に並べて配置する構成としてもよい。
【0028】
気液接触部40では、複数の気液接触部21がダクト41を介してクリーンルーム本体5に接続されているので、大容量の空気を低速で静かにクリーンルーム本体5内に供給することができる。
【0029】
次に、図5を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、第2の実施形態に係るコンバインドサイクル方式の発電プラント(ガスタービンプラント)6を示す図である。
【0030】
コンバインドサイクル方式の発電プラント6は、空気浄化部7と、燃焼ガスを作動流体とするガスタービン81と、ガスタービン81の排ガスを熱源とする排熱回収ボイラ82と、この排熱回収ボイラ82で発生する高圧の蒸気により駆動する蒸気タービン83とを備え、ガスタービン81と蒸気タービン83の両出力を結合して高出力の発電を行うようになっている。また、ガスタービン81と蒸気タービン83、および発電機85は、同一軸上に配置されている。
【0031】
空気浄化部7は、空気圧縮機86の空気取入口に接続され、空気圧縮機86に空気を供給するように構成されている。なお、ガスタービン81と、空気圧縮機86とは、空気供給対象部8を構成している。
【0032】
空気浄化部7の吸気口7Aから取り入れた空気を空気圧縮機86で圧縮して燃焼器87に送出し、燃焼器87において圧縮空気と例えばLNGガス等の燃料とを混合して燃焼させ、燃焼ガスを発生させるようになっている。
その燃焼ガスの膨張力によって、ガスタービン81が駆動され、ガスタービン81から排出される高温の排ガスの余熱を、排熱回収ボイラ82で回収して高圧の蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービン83に供給して蒸気タービン83を駆動するようになっている。
【0033】
発電機85は、ガスタービン81および蒸気タービン83の出力により回転され、この回転力によって発電を行なうとともに、その電力は変圧器88および送電線89を介して送電されるようになっている。
【0034】
なお、この実施の形態では、空気浄化部7を通過した空気の温度を所定温度とするために、洗浄水を冷却して所定温度とするための冷熱源9が接続されている。
冷熱源9は、例えば、氷蓄熱槽、水冷式のブライン冷凍機、冷却塔、熱交換器により構成される周知の冷凍手段を用いることが可能であり、氷蓄熱槽内の製氷を、夜間電力を利用して夜間に行うことも可能である。
【0035】
このように、空気浄化装置7内において、洗浄水と空気とを直接接触させることにより5μm程度(従来のフィルタでは概ね10μm以上が対象)の塵埃を95%程度まで除去することができる。
【0036】
洗浄水を冷熱源9で冷却して空気圧縮機86に供給する空気を冷却し、ガスタービン81の燃焼器87に供給する圧縮空気の温度を低下させた場合、吸気温度上昇によるガスタービン81の出力低下を抑制することができる。
【0037】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、本発明に係る浄化空気供給構造をクリーンルーム1、コンバインドサイクル方式の発電プラント6に用いる場合について説明したが、その他の設備に適用可能であることはいうまでもない。
例えば、コンバインドサイクル方式の発電プラント6以外のガスタービンを備えた発電設備等にも適用できる。
【0038】
また、上記実施の形態においては、空気浄化部2、7の空気流路にフィルタが設けられていない場合について説明したが、フィルタを設けた構成としてもよい。
また、上記実施の形態においては、洗浄液が水である場合について説明したが、洗浄剤等を含む洗浄液を用いてもよく、かかる場合の洗浄剤の種類、濃度等は、空気に含まれる塵埃等の大きさ、材種等によって任意に選択可能である。
【0039】
また、上記実施の形態においては、発電プラント6が冷熱源9を備えた構成の場合について説明したが、冷熱源9を備えない構成としてもよい。
また、発電プラントは大規模発電に限らず、空気圧縮機を備えたガスタービンを用いる発電機であれば、規模に関わらず適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクリーンルームの概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る機液接触部の概略を示す概略図であり、(A)は側面図を、(B)は正面図を示している。
【図3】第1の実施形態に係る空気浄化部の第1の変形例の構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る空気浄化部の第2の変形例の構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るコンバインドサイクル方式の発電プラントの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 クリーンルーム
2、7 空気浄化部
5 クリーンルーム本体(空気供給対象部)
6 コンバインドサイクル方式の発電プラント(ガスタービンプラント)
8 空気供給対象部
20、30、40 気液接触部
21 板状部材
81 ガスタービン(空気供給対象部)
86 空気圧縮機(空気供給対象部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気浄化部と、
該空気浄化部に接続され前記空気浄化部から空気が供給される空気供給対象部と、を備えた浄化空気供給構造であって、
前記空気浄化部は、
洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、
気液接触部と、を備え、
前記気液接触部は、
間隔をあけて配置される複数の板状部材から構成されるとともに前記間隔部分に空気流路が形成され、
前記空気流路を通過する空気が、前記洗浄液供給ノズルから吐出され前記板状部材の表面を流動する洗浄液及び前記空気流路内を滴下される洗浄液と直接接触して、前記空気内に含まれる塵埃を除去することにより前記空気供給対象部に浄化空気を供給するように構成されていることを特徴とする浄化空気供給構造。
【請求項2】
請求項1に記載の浄化空気供給構造を用いたことを特徴とするクリーンルーム。
【請求項3】
請求項1に記載の浄化空気供給構造を用いたことを特徴とするガスタービンプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−51913(P2010−51913A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221210(P2008−221210)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(502271896)東京都市サービス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】