説明

浄化装置

【課題】浴水の使用量を抑えつつ簡易な構成で浴水中に発生した汚染物を除去する浄化装置を得ること。
【解決手段】浴槽内の浴水を取り出して加熱し浴槽に戻す給湯装置の浴槽往き配管P18内に対向するように配置されたプラス電極321Aおよびマイナス電極322Bと、プラス電極321Aにプラスのパルス電圧を印加するとともにマイナス電極322Bにマイナスのパルス電圧を印加することによってプラス電極321Aとマイナス電極322Bとの間に放電を発生させる電源制御部と、を備え、電源制御部は、放電によって浴水中に発生した汚染物51を放電分解処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴水中に発生した有機物や無機物などの汚染物を除去する浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴によって人体から発生し浴水中に混ざり込んだ汚れ(有機物と無機物)や細菌(有機物)などの汚染物質は、給湯機の追いだき機能によって追いだき配管内を循環する。そして、浴水中に混ざり込んだ汚染物質は、追いだき配管の内面、熱交換器内面、浴槽などに付着し堆積する。追いだき配管、熱交換器、浴槽などを含んで構成される追いだき機能付き風呂システムでは、追いだき機能付き風呂システム内に所定量の汚染物が付着すると、追いだき時に有機物が再循環し、浴槽や浴水を汚すとともに、熱交換器の熱交換効率を低下させる。また、ロドトルーラに代表される細菌は、追いだき機能付き風呂システム内で増殖してぬめり感のある表面堆積物を形成し、追いだき機能付き風呂システムが衛生的に悪化した状態となる。
【0003】
これに対し、一般的に浄化装置などに使用される水の汚染を防止するための方法として、微小泡の汚染物吸着力によって汚染物(汚れや細菌など)の除去を行う方法がある。この微小泡を用いた汚染物除去方法は、洗浄剤が不要な洗浄方法であり、環境に配慮した洗浄方法としてその利用が広がっている。
【0004】
微小泡は、一般的にはマイナスに帯電しており、プラスに帯電している汚れや細菌などを吸着して除去できるが、微小泡に吸着した汚染物は、洗浄対象から浮上分離するので、別途浮上分離した汚染物の排出機能が必要となる。例えば、油脂や微小な塵に微小泡が吸着浮上した汚れ成分は、汚水を洗浄槽からオーバーフローさせることで洗浄槽横に設置された第2槽に排出され、第2槽に浮いている汚れ成分は、フィルタや回転ドラムで回収、除去される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−136275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術を単に浴槽の追焚き機能付き風呂システムに転用したとしても、浮上する汚れをオーバーフローさせるために、オーバーフローした浴水(洗浄水)を再生させる機構が必要となる。また、オーバーフローした浴水を再生させる構成となっていない浴槽の場合、浴水を不必要にオーバーフロー排出させることとなり、多量の浴水を使ってしまうという問題があった。また、浴水に汚れが浮上している状態では、入浴者の身体に汚れが再付着してしまうという問題があった。これは、追いだき配管を微小泡で洗浄する機能を有した給湯設備では、汚れや細菌自体が分解されるわけではなく、有機物は配管内の循環を続けるからである。このため、循環を続ける汚染物が入浴者に再付着し、浴槽などの清浄性が損なわれるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、浴水の使用量を抑えつつ簡易な構成で浴水中に発生した汚染物を除去する浄化装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、浴槽内の浴水を取り出して加熱し前記浴槽に戻す給湯装置の追いだき配管内に対向するように配置された少なくとも1対の電極と、前記電極にパルス電圧を印加することによって前記電極間に放電を発生させる電圧制御部と、を備え、前記電圧制御部は、前記放電によって前記浴水中に発生した汚染物を放電分解処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極にパルス電圧を印加することによって電極間に放電を発生させ、浴水中に発生した汚染物を放電分解処理するので、浴水の使用量を抑えつつ簡易な構成で浴水中の汚染物を除去できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る浄化装置を有したヒートポンプ給湯装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、浄化装置の構成を示す図(要部拡大図)である。
【図3】図3は、プラス電極とマイナス電極の構成を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【図6】図6は、実施の形態3に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【図7】図7は、実施の形態4に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【図8】図8は、電極上の汚れを分解する際のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【図9】図9は、実施の形態5に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【図10】図10は、実施の形態6のヒートポンプ給湯装置が備えるハニカム電極の構成を示す図である。
【図11】図11は、ハニカム状プラス電極の回転動作を説明するための図である。
【図12】図12は、実施の形態6に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる浄化装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。以下の説明では、ヒートポンプ給湯装置で用いる湯や水を、温水、湯水、高温水(高温度の湯)、低温水(低温度の湯)という場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る浄化装置を有したヒートポンプ給湯装置の構成を示す図である。図1では、ヒートポンプ給湯装置(給湯機)100の回路構成図を示している。本実施の形態のヒートポンプ給湯装置100は、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2と、浴槽15と、給湯口27とを備えている。また、タンクユニット2は、浴水(浴槽水)などを洗浄する浄化装置300を有している。浄化装置300は、浴槽15内の浴水を取り出して加熱し浴槽15に戻す追いだき配管に、2つ以上の対向する電極が所定の距離をもって対向するように配置されて構成され、追いだき配管に配置した電極にパルス電圧(パルス放電電圧)を印加することで電極間において放電させる。
【0013】
ヒートポンプユニット1は、圧縮機3と、放熱器4と、膨張弁5と、蒸発器6と、が順番に配管P7で接続された構成となっている。圧縮機3は、冷媒を圧縮して冷媒を高温高圧状態にし、放熱器4は圧縮機3からの冷媒を冷却する。膨張弁5は、放熱器4からの冷媒を減圧し、蒸発器6は、大気から吸熱して冷媒を蒸発させ、圧縮機3に戻す。このヒートポンプユニット1は、例えば自然冷媒である二酸化炭素を冷媒として用い、高圧側では臨界圧を越える状態で運転することが好ましい。
【0014】
タンクユニット2は、貯湯タンク10、風呂追いだき用のプレート式熱交換器11、浄化装置(浴水汚れ分解部)300を有している。貯湯タンク10としては、上部に高温水が下部に低温水が温度層ごとに分離して蓄えられる積層式貯湯タンクを用いる。プレート式熱交換器11は、複数の伝熱プレートが積層された構成を有している。また、本実施の形態の浄化装置300は、浴水内の汚染物(有機物の汚れ、無機物の汚れ、有機物の細菌など)を、微小で無害な有機物や微小で無害な無機物に分解することによって、後述の追いだき機能付き風呂システム内を常に清浄に保たせる機能を有している。
【0015】
プレート式熱交換器11は、1対の配管内を水流が対向して流れる水−水熱交換器である。プレート式熱交換器11は、貯湯タンク10の高温水の熱を、浴槽15からの浴水に伝える機能を有している。プレート式熱交換器11は、上部にタンク側入口111および風呂側出口114が設けられ、下部にタンク側出口112および風呂側入口113が設けられている。上部のタンク側入口111へは、貯湯タンク10からの温水が入れられ、上部のタンク側入口111から供給された温水は下部のタンク側出口112から排出される。下部の風呂側入口113へは、浴槽15からの浴水が入れられ、下部の風呂側入口113から供給された浴水は上部の風呂側出口114から排出される。
【0016】
貯湯タンク10には、上部に温水導出口101および温水導入口103が設けられ、下部に水導入口102および水導出口104が設けられている。下部に配置される水導出口104は、配管P20を介して放熱器4の下部に接続されており、上部配置される温水導入口103は、配管P21を介して放熱器4の上部に接続されている。配管P20は、水導出口104から取り出された貯湯タンク10内の水を、放熱器4へ送る配管であり、その配管上には三方弁22と沸き上げ用送水ポンプ19が配置されている。また、配管P21は、放熱器4から送られてくる温水を、貯湯タンク10へ送る配管であり、放熱器4と貯湯タンク10との間の位置で、三方弁22に接続している。
【0017】
水導出口104から取出された貯湯タンク10の水は、沸き上げ用送水ポンプ19によって配管P20内へ送られ、配管P20を通ってヒートポンプユニット1の放熱器4に供給される。この配管P20からの水は、放熱器4で加熱された後、配管P21を通って貯湯タンク10の上部の温水導入口103から貯湯タンク10内に戻される。ヒートポンプ給湯装置100は、これらの沸き上げ用送水ポンプ19、配管P20、放熱器4および配管P21によって貯湯回路を構成している。
【0018】
プレート式熱交換器11は、上部のタンク側入口111が配管P12を介して貯湯タンク10の温水導出口101に接続されており、下部の風呂側出口114が配管P14を介して貯湯タンク10の下部に接続されている。配管P12は、貯湯タンク10から送られてくる高温水を、プレート式熱交換器11と給湯口27側へ送る配管である。配管P14は、プレート式熱交換器11から取り出された温水(熱交換によって温度が下がった低温水)を、貯湯タンク10へ送る配管であり、その配管上にタンク側送水ポンプ13が配置されている。
【0019】
プレート式熱交換器11の上部のタンク側入口111には、貯湯タンク10の上部に配置された温水導出口101から配管P12を通って高温水が供給される。プレート式熱交換器11は、貯湯タンク10からの高温水で浴水を熱交換した後、下部のタンク側出口112から熱交換後の水を排出する。排出された水は、タンク側送水ポンプ13によって配管P14を通って貯湯タンク10内に戻される。ヒートポンプ給湯装置100は、これらの配管P12、プレート式熱交換器11、タンク側送水ポンプ13および配管P14によってプレート式熱交換器11の一次側送水回路を構成している。
【0020】
配管P12と給湯口27の間には、混合弁23と混合弁24が配置されている。混合弁23は、配管P12、給水管(水導入口102に市水(水道水)を供給する配管)P41、風呂側出口114に接続する注水配管P26に接続されている。また、混合弁24は、配管P12、給水管P41、給湯口27側への配管P42に接続されている。
【0021】
浴槽15は、浴槽往き配管P18および浴槽戻り配管P17によってプレート式熱交換器11に接続されている。浴槽往き配管P18は、プレート式熱交換器11の風呂側出口114からの湯水を、浴槽15へ送る配管であり、その配管途中には汚れセンサ35、浄化装置300が配置されている。汚れセンサ35は、浴槽往き配管P18内の汚れの状態をモニターするセンサであり、浄化装置300よりも前段部(プレート式熱交換器11側)(上流側)に設置されている。浴槽戻り配管P17は、浴槽15からの湯をプレート式熱交換器11の風呂側入口113に送る配管であり、その配管上には風呂側送水ポンプ16、追いだき配管エジェクタ28、逆流防止用の追いだき配管エジェクタ用空気逆止弁29、追いだき配管エジェクタ28への空気の導入を制御する追いだき配管エジェクタ用電磁弁30が配置されている。
【0022】
風呂側送水ポンプ16は、浴槽15からの湯水を浴槽戻り配管P17を介してプレート式熱交換器11に送り込むポンプである。追いだき配管エジェクタ(微小泡発生部)28は、エジェクタ先端から微小泡を発生させ、浴槽戻り配管P17内の温水中に微小泡を送り込む。追いだき配管用エジェクタ28は、追いだき制御のエジェクタ用電磁弁開閉信号によって追いだき配管エジェクタ用電磁弁30が開かれると外部から空気を導入し、微小泡を発生させる。
【0023】
混合弁23は、貯湯タンク10からの高温水や給水管P41からの水を、注水配管P26、浴槽戻り配管P17、浴槽往き配管P18を介して浴槽15に注水する。混合弁24は、貯湯タンク10からの高温水や給水管P41からの水を、配管P42を介して給湯口27へ供給する。
【0024】
プレート式熱交換器11の下部の風呂側入口113には、浴槽15からの湯水が風呂側送水ポンプ16によって浴槽戻り配管P17から風呂側入口113に供給され、プレート式熱交換器11で熱交換されて加温された温水となる。その後、上部の風呂側出口114から排出された温水は浴槽往き配管P18を通って浴槽15内に戻される。ヒートポンプ給湯装置100は、これらの浴槽戻り配管P17、風呂側送水ポンプ16、プレート式熱交換器11および浴槽往き配管P18によってプレート式熱交換器11の二次側送水回路を構成している。
【0025】
浄化装置300の内部には、プラス電極321Aとマイナス電極322Bが配置されており、各電極は放電制御電源33に繋がれている。浄化装置300は、電源制御部34を備えており、電源制御部34は、放電制御電源33の出力を調整する信号を制御する。本実施の形態の浄化装置300は、追いだき機能付き風呂システム内に存在する、汚れや細菌などを放電によって分解除去する。ここでの追いだき機能付き風呂システムは、追いだき配管(浴槽戻り配管P17、浴槽往き配管P18)、プレート式熱交換器11、浴水などであり、浄化装置300は、追いだき配管の内壁面、プレート式熱交換器11の内部、浴水などに存在する汚染物を放電によって分解除去する。
【0026】
つぎに、ヒートポンプ給湯装置100の動作について説明する。ヒートポンプ給湯装置100は、貯湯運転信号が入力されると、ヒートポンプユニット1の運転を開始する。ヒートポンプユニット1では、冷媒が、圧縮機3で圧縮されて高温高圧となり、放熱器4で冷却され、膨張弁5で減圧され、蒸発器6で大気から吸熱して蒸発し、圧縮機3に戻る。このとき、貯湯タンク10の下部に配置された水導出口104からは、沸き上げ用送水ポンプ19によって水が取り出され、配管P20を通って放熱器4に水が供給され放熱器4で加熱される。そして、加熱されて高温となった温水は、貯湯タンク10の上部に配置された温水導入口103から貯湯タンク10内に流入する。これにより、ヒートポンプユニット1で加熱された高温水は、貯湯タンク10の上部から順次貯湯される。
【0027】
風呂追いだきを実施する場合、ヒートポンプ給湯装置100は、タンクユニット2のタンク側送水回路の動作として、貯湯タンク10内の上部高温水を温水導出口101から出湯する。温水導出口101から出湯された高温水は、配管P12を介してプレート式熱交換器11の上部側からタンク側入口111に供給され、プレート式熱交換器11内で熱交換が行われる。熱交換された湯水(減熱後の湯)は、プレート式熱交換器11を通って下部側のタンク側出口112から送り出される。タンク側出口112から送り出された湯水は、配管P14を介して水導入口102から貯湯タンク10内の下部に流入される。この貯湯タンク10とプレート式熱交換器11との間の送水動作は、タンク側送水ポンプ13によって行われる。
【0028】
この結果、給湯用としての高温水の利用量が少なく、貯湯タンク10の底部に市水がほとんど供給されず、貯湯タンク10内に相当量の熱量が蓄積された状態で風呂追いだきを実施した場合であっても、熱交換能力の高いプレート式熱交換器11によって十分に熱交換を行うことができる。これにより、貯湯タンク10の下部を低温状態に保つことができる。
【0029】
ヒートポンプ給湯装置100は、風呂側送水回路の動作として、浴槽15からの水を浴槽戻り配管P17を介してプレート式熱交換器11の下部側の風呂側入口113に供給する。プレート式熱交換器11は、浴槽からの水を熱交換し、熱交換した湯水(加熱後の湯)を、プレート式熱交換器11を通って上部側の風呂側出口114から送り出す。風呂側出口114から送り出された湯水は、浴槽往き配管P18を介して浴槽15に戻される。この浴槽15とプレート式熱交換器11との間の送水動作は風呂側送水ポンプ16により行われる。
【0030】
ヒートポンプ給湯装置100は、タンク側送水回路の高温水をプレート式熱交換器11の上部側から供給するとともに、風呂側送水回路の低温水をプレート式熱交換器11の下部側から供給している。熱は上方に伝わりやすいので、ヒートポンプ給湯装置100は、プレート式熱交換器11の上部を高温の状態に維持することができ、これにより熱交換量を高めることができる。また、ヒートポンプ給湯装置100は、プレート式熱交換器11の下部を低温の状態に維持することができ、これにより貯湯タンク10に戻す温水を低温にすることができる。
【0031】
浴槽戻り配管P17内では、追いだき制御のエジェクタ用電磁弁開閉信号によって追いだき配管エジェクタ用電磁弁30が開かれると、追いだき配管用エジェクタ28によって外部から空気が導入される。これにより、エジェクタ先端から追いだき配管の温水中に微小泡が発生し、微小泡を含む温水が、浴槽往き配管P18、浴水汚れ分解部31、浴槽15、浴槽戻り配管P17、プレート式熱交換器11を循環する。
【0032】
つぎに、浄化装置300の詳細な構成について説明する。図2は、浄化装置の構成を示す図(要部拡大図)である。図2では、汚れや細菌などの汚染物51を吸着した微小泡が電極の間や近傍を通過する時に放電によって分解される動作状態を示している。
【0033】
浴槽往き配管P18内のうち、浄化装置300が配置される位置には、板状チタンのプラス電極321Aとマイナス電極322Bとが所定の間隔で交互に配置されている。プラス電極321Aとマイナス電極322Bの間には、電源制御部34から送られた制御信号によって放電制御電源33から電圧がかけられる。これにより、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの間に放電が起こる。その結果、配管用エジェクタにより生成され追いだき時の温水の流れに乗って移動してきた微小泡に吸着した汚染物51が、放電空間325において微小で無害な微小無害物質52(有機物や無機物)に分解される。
【0034】
つぎに、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの構成について説明する。図3は、プラス電極とマイナス電極の構成を示す図である。図3では、電極の様子を立体的に示している。浴槽往き配管P18の内部には、板状のプラス電極321Aと板状のマイナス電極322Bとが、交互に配置されている。プラス電極321Aとマイナス電極322Bとは、略同じ形状の主面を有しており、プラス電極321Aの主面とマイナス電極322Bの主面とが、互いに平行となるよう配置されている。電極間(プラス電極321Aとマイナス電極322Bとの間)の間隔は例えば5mmである。電極間の間隔は、20mmまで広げても放電状態が維持され、汚れや細菌の分解の効果は維持できる。また、プラス電極321Aとマイナス電極322Bとの間には、10kVのパルス電圧を印加したが、印加するパルス電圧は5kV程度まで下げても放電による分解の効果を維持することができる。また、パルス周波数は100Hzから100kHzまで変化させても分解の効果に大きな違いはない。
【0035】
つぎに、電極間に印加されるパルス電圧のパターンについて説明する。図4は、実施の形態1に係る浴水汚れ分解方法(汚染物分解方法)のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。浄化装置300の電源制御部34は、まずプラス電極321Aへの電圧印加を開始する。具体的には、プラス電極321Aに、10kHz、5kVのパルス電圧を連続的に印加する。このプラス電極321Aへのパルス電圧の印加は、停止することなく連続して行われる。プラス電極321Aへの電圧印加を開始してからマイナス電極322Bへの電圧印加を開始するまでの1秒間が、図4に示すパターンA11である。
【0036】
電源制御部34は、プラス電極321Aへのパルス電圧の印加を開始してから1秒後に、プラス電極321Aへのパルス電圧の印加を維持しつつ、マイナス電極322Bに10kHz、−5kVのパルス電圧を1m秒間印加する。このマイナス電極322Bへの1m秒間の電圧印加が、図4に示すパターンB11である。この後、電源制御部34は、マイナス電極322Bへの電圧印加を1秒間停止し、その後再びマイナス電極322Bに10kHz、−5kVのパルス電圧を1m秒間印加する。マイナス電極322Bへの電圧印加を停止している1秒間が、図4のパターンA12である。また、パターンA12の後、再びマイナス電極322Bに電圧印加した1m秒間が図4のパターンB12である。このように、電源制御部34は、プラス電極321Aへの電圧印加を連続的に行うとともに、マイナス電極322Bへの電圧印加は断続的に行なう。
【0037】
電源制御部34は、プラス電極321Aへの電圧印加を開始してから、マイナス電極322Bに10kHz、−5kVのパルス電圧を1m秒間印加し終えるまでの一連のパターン(パターンA11からパターンB11まで)を1サイクルの電圧印加パターンとし、この1サイクルの電圧印加パターンを例えば10回繰り返す。
【0038】
電源制御部34によって、上述のパターンA11とパターンB11とからなる電圧印加パターンを10サイクル繰り返すことによって、プラス電極321Aにパルス電圧5kVが印加されている間(パターンA11やパターンA12の間)は、マイナスに帯電した汚れや細菌などがプラス電極321Aに引き寄せられて吸着(汚れ吸着)する。さらに、このパターンA11やパターンA12の間は、プラス電極321Aとマイナス電極322B(実施の形態1では0V)の間の一部で放電がおこり、汚れや細菌などの一部がプラス電極321Aへの吸着と同時に分解される。さらに、マイナス電極322Bに10kHz、−5kVのパルス電圧が1m秒間印加されている間(パターンB11やパターンB12の間)は、微小泡に吸着している汚れや細菌などが完全に分解(汚れ放電分解)される。
【0039】
なお、ここではマイナス電極322Bに1秒おきに10kHzのパルス電圧−5kV、1m秒を印加した場合について説明したが、汚れや細菌などが少ない場合には、1分おきに1回程度(1m秒)の放電でも汚れや細菌などを分解して低減することができる。また、マイナス電極322Bへの1m秒間の電圧印加時間を100m秒間まで長くすると、汚れや細菌などの分解がさらに進み、汚れや細菌などの量を1/3以下にすることができる。
【0040】
なお、浄化装置300の構成を、プラス電極321Aやマイナス電極322Bを移動させることによって電極間の距離を変更させる機構(電極間距離変更機構)を有する構成としてもよい。この構成の場合、浄化装置300は、電極間の距離を縮めることによって放電を開始させ、電極間の距離を広げることによって放電を終了させる。
【0041】
このように、追いだき配管内にプラス電極321Aとマイナス電極322Bとを所定の距離をもって対向するよう配置しておき、プラス電極321Aにプラスのパルス電圧を印加しているので、追いだき配管を循環する浴水に含まれる汚れや細菌などをプラス電極321Aの表面に吸着できる。また、プラス電極321Aにプラスのパルス電圧を印加しつつ、マイナス電極322Bにマイナスのパルス電圧を印加しているので、電極間に放電が起こり、汚れや細菌などを無害で極微小な物質に効率良く分解できる。したがって、追いだき配管、熱交換器内部、浴水を常に清浄に保つことが可能となる。
【0042】
このように実施の形態1によれば、追いだき配管内に配置したプラス電極321Aとマイナス電極322Bとにパルス電圧を印加することによって、汚れや細菌などを吸着、分解するので浴水の使用量を抑えつつ簡易な構成で浴水中に発生した汚れや細菌などを除去できる。
【0043】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。実施の形態2でも実施の形態1のヒートポンプ給湯装置100と同様の構成を有したヒートポンプ給湯装置100を用いて浴水内の汚れや細菌を除去するので、その説明は省略する。
【0044】
浄化装置300の電源制御部34は、まずプラス電極321Aとマイナス電極322Bへの電圧印加を開始する。具体的には、プラス電極321Aに、10kHz、2kVのパルス電圧を連続的に印加するとともに、マイナス電極322Bへも、10kHz、2kVのパルス電圧を印加する。プラス電極321Aへのパルス電圧の印加は、停止することなく連続して行われる。電源制御部34は、プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bへの電圧印加を開始した後、所定時間(例えば1秒)の経過後に、プラス電極321Aへのパルス電圧の印加を維持しつつ、マイナス電極322Bへ印加するパルス電圧を10kHz、−8kVに変更する。プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bへの電圧印加を開始してから、マイナス電極322Bへの印加電圧を変更するまでの間が、図5に示すパターンA21である。電源制御部34は、パターンA21の後、マイナス電極322Bへは、10kHz、−8kVのパルス電圧を1m秒間印加する。このマイナス電極322Bへの1m秒間の電圧印加が、図5に示すパターンB21である。
【0045】
この後、電源制御部34は、プラス電極321Aへのパルス電圧の印加を維持しつつ、マイナス電極322Bへ印加するパルス電圧を10kHz、2kVに変更する。これにより、プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bに、10kHz、2kVのパルス電圧が印加されることとなる。電源制御部34は、プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bへの2kVの電圧印加を開始した後、所定時間の経過後に、プラス電極321Aへのパルス電圧の印加を維持しつつ、マイナス電極322Bへ印加するパルス電圧を10kHz、−8kVに変更する。プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bへの2kVの電圧印加を開始してから、マイナス電極322Bへの印加電圧を変更するまでの間が、図5に示すパターンA22である。電源制御部34は、パターンA22の後、マイナス電極322Bへは、10kHz、−8kVのパルス電圧を1m秒間印加する。このマイナス電極322Bへの1m秒間の電圧印加が、図5に示すパターンB22である。このように、プラス電極321Aへの電圧印加を連続的に行うとともに、マイナス電極322Bへの電圧印加は2kVと−8kVとを切り替えながら行なう。
【0046】
電源制御部34は、マイナス電極322Bへの2kVの電圧印加を開始してから、マイナス電極322Bに−8kVの電圧を印加し終えるまでの一連のパターン(パターンA21からパターンB21まで)を1サイクルの電圧印加パターンとし、この1サイクルの電圧印加パターンを所定回数(例えば10回)繰り返す。
【0047】
プラス電極321Aとマイナス電極322Bにパルス電圧2kVが印加されている間(パターンA21やパターンA22の間)は、全ての電極が2kVとなるので、パターンA11やパターンA12の場合よりも、汚れや細菌を吸着する能力が向上する。また、プラス電極321Aとマイナス電極322Bにパルス電圧2kVが印加されている間は、10kVの印加時と比較して電極間に放電はほとんど起こらず、マイナスに帯電した汚れや細菌などが10kVの印加時よりも吸着され易い状態となる。また、マイナス電極322Bに対して−8kVの電圧を印加している間(パターンB21やパターンB22の間)は、プラス電極321Aとの電位差が10kVとなり、電極間で放電が開始して汚れや細菌などが分解される。
【0048】
このように実施の形態2によれば、プラスの電圧を印加する際には、全ての電極がプラスに帯電するので、プラス電極321Aのみがプラスに帯電する場合よりも、汚れや細菌を吸着する能力が向上する。また、印加するプラスの電圧が2kVなので電極間にほとんど放電が起きず、10kVの印加時よりもマイナスに帯電した汚染物51を多く吸着できる。また、マイナス電極322Bに対して−8kVの電圧を印加しているので、この間は、電極間の電位差が10kVとなり、電極間で放電が開始して汚染物51を分解することが可能となる。
【0049】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。実施の形態3でも実施の形態1のヒートポンプ給湯装置100と同様の構成を有したヒートポンプ給湯装置100を用いて浴水内の汚れや細菌などを除去するので、その説明は省略する。なお、本実施の形態のヒートポンプ給湯装置100は、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの何れか一方が電極を0Vに設定し、他方の電極にパルス電圧を印加する。
【0050】
本実施の形態では、プラス電極321Aとマイナス電極322Bとが交互に配置された電極板を1枚置きに0Vとし、その間に位置する電極に対して±10kVのパルス電圧を印加する。換言すると、電源制御部34が、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの何れか一方の電極を0Vに設定し、他方の電極に±10kVのパルス電圧を印加する。具体的には、電源制御部34が、±10kVのパルス電圧を印加する方の電極に30kHzの振幅で、300m秒間だけ印加し、その後、パルス電圧の印加を10秒間停止する。プラス電極321Aまたはマイナス電極322Bへ300m秒間だけ電圧を印加している間が、図6に示すパターンA31である。プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bへ10秒間の印加電圧停止期間が、図6に示すパターンB31である。電源制御部34は、この300m秒間の電圧印加と、10秒間の電圧印加停止と、を所定回数(例えば10サイクル)繰り返す。これにより、本実施の形態では、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの何れか一方のみの印加電圧を変更しながら浴水内の汚れや細菌などを除去する。
【0051】
このように実施の形態3によれば、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの何れか一方のみの印加電圧を制御しているので、プラス電極321Aとマイナス電極322Bとを独立制御する場合よりも、2倍の効率で放電させることができる。したがって、汚れや細菌などの分解効率も2倍に向上させることができる。その結果、放電時に使用する電力を半減させることが可能となる。
【0052】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。実施の形態4でも実施の形態1のヒートポンプ給湯装置100と同様の構成を有したヒートポンプ給湯装置100を用いて浴水内の汚染物51を除去するので、その説明は省略する。
【0053】
本実施の形態では、汚れセンサ35によって、浴槽戻り配管P17内の汚れの状態をモニターし、汚れセンサ35が検出した汚れの状態に応じて、パルス電圧の印加および停止を制御する。汚れセンサ35は、汚れや細菌などの量に比例した電圧信号を電源制御部34に出力する。電源制御部34は、汚れセンサ35からの電気信号に基づいて、汚れや細菌などの汚染物51の量(以下、汚れ量という)を算出する。電源制御部34には、予め汚れ量の上限(汚れ上限閾値)と下限(汚れ無し閾値)(汚れ下限閾値)を設定しておく。電源制御部34は、汚れ量が設定しておいた汚れ上限閾値を越えた場合に、電極間にパルス電圧を印加する。このとき、電源制御部34は、例えば実施の形態4で説明したパルス電圧と同じ条件のパルス電圧を印加する。すなわち、プラス電極321Aとマイナス電極322Bとが交互に配置された電極板を1枚置きに0Vとし、その間に位置する電極に対して±10kV、30kHzのパルス電圧を印加する。
【0054】
電源制御部34は、汚れ量が汚れ上限閾値を越えた場合に±10kV、30kHzのパルス電圧をONにし、汚れ量が下限の汚れ無し閾値を下まわった場合にパルス電圧をOFFにする。これにより、汚れや細菌などの汚れ量に応じたパルス電圧の印加が可能となり、動作電力を従来の約半分以下に低減することが可能となる。
【0055】
なお、汚れセンサ35がモニタした汚れ状態に応じて、電極への電圧印加を制御する方法を、実施の形態1〜3に適用してもよい。この場合、電源制御部34は、汚れ量が汚れ上限閾値を越えた場合に、汚れ放電分解するパルス電圧を電極に印加し、汚れ量が下限の汚れ無し閾値を下まわった場合に、汚れ吸着するパルス電圧を電極に印加する。
【0056】
このように実施の形態4によれば、汚れ量が汚れ上限閾値を越えている間だけパルス電圧をONにしているので、効率良く汚染物51を分解することが可能となる。また、汚れ量が汚れ上限閾値を越えた場合に、汚れ放電分解するパルス電圧を電極に印加し、汚れ量が下限の汚れ無し閾値を下まわった場合に、汚れ吸着するパルス電圧を電極に印加するので、低い動作電力で効率良く汚染物51を除去することが可能となる。
【0057】
実施の形態5.
図8は、電極上の汚れを分解する際のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。実施の形態5でも実施の形態1のヒートポンプ給湯装置100と同様の構成を有したヒートポンプ給湯装置100を用いて浴水内の汚染物51を除去するので、その説明は省略する。
【0058】
本実施の形態では、放電電極(プラス電極321Aとマイナス電極322B)の表面の汚れや細菌などを除去して放電電極を再生(洗浄)するためのパルス電圧を印加する。例えば、電源制御部34は、プラス電極321Aやマイナス電極322Bの電極板に対して−10kV、10kHzのパルス電圧を1秒間印加するとともに、その後1秒間だけパルス電圧の印加を停止する処理を1サイクルとして、このサイクルを複数回(例えば30回)繰り返す。換言すると、電源制御部34は、プラス電極321Aやマイナス電極322Bの電極板に対して−10kV、10kHzのパルス電圧を1秒間隔で1秒間印加する制御を繰り返す。
【0059】
このような放電電極への電圧印加中においては、電極表面で水が電気分解され微小泡が電極表面に生成されるともに、放電によって汚れや細菌が分解される。そして、放電電極上で分解された汚れや細菌は、微小泡によって電極上から脱離させられる。このように、放電電極への電圧印加によって、追いだき時の温水の流れに乗って移動してきた追いだき配管用エジェクタ28によって生成された微小泡による電極洗浄効果が高まる。これにより、プラス電極321Aやマイナス電極322Bの電極表面の汚れや細菌などを吸着、分解、脱離することが可能となる。なお、図8では、マイナス電極322Bに電極洗浄を行うためのマイナスのパルス電圧を印加する場合を示したが、電極洗浄を行うためのマイナスのパルス電圧をプラス電極321Aに印加してもよい。また、電極洗浄を行うためのマイナスのパルス電圧を、マイナス電極322Bとプラス電極321Aの両方に印加してもよい。
【0060】
図9は、実施の形態5に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。図9では、汚れや細菌などの吸着、分解、電極の再生を繰り返すパルス電圧印加パターンを示している。
【0061】
浄化装置300の電源制御部34は、まずプラス電極321Aへの電圧印加を開始する。具体的には、プラス電極321Aに、10kHz、5kVのパルス電圧を連続的に印加する。プラス電極321Aへの電圧印加を開始してからマイナス電極322Bへの電圧印加を開始するまでの所定時間(例えば1秒)が、図9に示すパターンA61である。
【0062】
電源制御部34は、プラス電極321Aへのパルス電圧の印加を開始してから所定時間の経過後に、マイナス電極322Bに10kHz、−5kVのパルス電圧を所定時間だけ印加する。このマイナス電極322Bへの1m秒間の電圧印加が、図9に示すパターンB61である。このパターンB61の間、電源制御部34は、プラス電極321Aへのパルス電圧(10kHz、5kV)を継続しておく。
【0063】
この後、電源制御部34は、図8で説明したパルス電圧と同様のパルス電圧を印加する。具体的には、電源制御部34は、プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bの電極板に対して−15kV、10kHzのパルス電圧を1秒間印加するとともに、その後1秒間だけパルス電圧の印加を停止する処理を1サイクルとして、このサイクルを複数回(所定時間)繰り返す。このサイクルを、繰り返している間が、図9のパターンC61である。
【0064】
この後、電源制御部34は、再びプラス電極321Aに10kHz、5kVのパルス電圧を所定時間印加し、この所定時間の間だけ、マイナス電極322Bへの電圧印加を停止する。この所定時間が、図9に示すパターンA62である。
【0065】
電源制御部34は、プラス電極321Aへの5kVの電圧印加を開始してから、プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bへの−15kVの電圧印加を終えるまでの一連のパターン(パターンA61からパターンC61まで)を1サイクルの電圧印加パターンとし、この1サイクルの電圧印加パターンを繰り返す。
【0066】
プラス電極321Aに、プラスのパルス電圧(5kV)の電圧が印加されている間(パターンA61の間)は、マイナスに帯電した汚れや細菌などがプラス電極321Aに吸着する。
【0067】
また、プラス電極321Aとマイナス電極322Bとの間に、適切な電圧差を印加することによって電極間放電が行われている間は、汚染物51がプラス電極321Aへ吸着するとともに分解される。換言すると、プラス電極321Aにプラスの電圧(5kV)を印加するとともに、マイナス電極322Bにマイナスの電圧(−5kV)を印加している間(パターンB61の間)は、汚染物51の吸着と分解が行われる。
【0068】
また、プラス電極321Aおよびマイナス電極322Bに対してマイナスの電圧(−15kV)を印加している間(パターンC61の間)は、電極表面で水が電気分解されて電極表面に微小泡が生成される。これにより、分解後の汚染物51が電極から脱離して、電極洗浄効果が高まる。なお、図8や図9で説明した電極洗浄を行う際のパルス電圧の印加を、実施の形態1〜4のパルス電圧印加パターンと組み合わせてもよい。
【0069】
このように実施の形態5によれば、プラス電極321Aやマイナス電極322Bの電極板に対して−10kV、10kHzのパルス電圧を1秒間隔で印加するので、電極表面で水が電気分解されて電極表面に微小泡が生成される。したがって、プラス電極321Aやマイナス電極322Bを容易に洗浄することが可能となる。
【0070】
実施の形態6.
図10は、実施の形態6のヒートポンプ給湯装置が備えるハニカム状電極の構成を示す図である。実施の形態6のヒートポンプ給湯装置100は、実施の形態1のヒートポンプ給湯装置100と比べて電極の構造、電極に印加するパルス電圧のパターン、電極の動作などが異なる。
【0071】
実施の形態6のヒートポンプ給湯装置100は、実施の形態1のプラス電極321Aに対応する電極として触媒・吸着剤添着ハニカム状プラス電極(ハニカム状プラス電極323)を備え、実施の形態1のマイナス電極322Bに対応する電極として触媒・吸着剤添着マイナス電極(マイナス電極324)を備えている。
【0072】
浴槽往き配管P18上で浄化装置300が配置される位置には、ハニカム状プラス電極323とマイナス電極324とを含んで構成される電極機構50が配置されている。電極機構50は、概略円柱状の筐体と、この筐体の円柱中心軸部分を貫通する回転軸151と、を有している。
【0073】
概略円柱状の筐体は、一方の半円柱の外壁がマイナス電極324で構成され、他方の半円柱の外壁は電極以外の部材(絶縁体)で構成されている。そして、電極以外の部材で構成された半円柱内を、回転軸151と平行な方向に浴槽往き配管P18が接合されている。換言すると、電極機構50は、回転軸151が浴槽往き配管P18の軸方向と平行な方向になるよう配置されている。これにより、浴槽往き配管P18を流れてくる浴水は、概略円柱状の筐体内を通過し、再び浴槽往き配管P18を流れていく。概略円柱状の筐体内には、ハニカム状プラス電極323が前記筐体と所定の隙間をもって格納されている。ハニカム状プラス電極323は、正六角柱の側壁面を隙間無く並べた構造を有しており、六角柱の柱軸方向が、筐体の柱軸方向となるよう、筐体内に配置されている。したがって、浴槽往き配管P18を流れてくる浴水は、概略円柱状の筐体内で正六角柱内を通過する。
【0074】
追いだき配管を循環する浴水内の汚染物51などを吸着、分解する際には、概略円柱状の筐体を固定したまま、ハニカム状プラス電極323が回転軸151を軸として回転する。図11は、ハニカム状プラス電極の回転動作を説明するための図である。同図に示すように、ハニカム状プラス電極323を、回転軸151を軸として回転させると、下部側の正六角柱が、上部側へ移動し、上部側の正六角柱が下部側へ移動する。
【0075】
図12は、実施の形態6に係る浴水汚れ分解方法のパルス電圧印加パターンを模式的に示す図である。図12では、ハニカム状プラス電極323に浴水内の汚染物51を吸着させるとともに、吸着した汚染物51を除去してハニカム状プラス電極323を再生する際に電極間に印加するパルス電圧のパターンを示している。本実施の形態では、ハニカム状プラス電極323が追いだき配管内を通過することによって、ハニカム状プラス電極323の表面に汚れや細菌などを吸着させる。そして、汚染物51を吸着したハニカム状プラス電極323を、マイナス電極324側へ回転させ、電極間の放電電極によってハニカム状プラス電極323上の汚染物51を分解する。
【0076】
追いだきが始まると、浄化装置300の電源制御部34は、ハニカム状プラス電極323にプラスのパルス電圧を連続的に印加する。このハニカム状プラス電極323へのパルス電圧の印加は、停止することなく連続して行われる。これにより、ハニカム状プラス電極323のうち、浴槽往き配管P18によって挟まれた領域の近傍(マイナス電極324の外側である絶縁体に囲まれたハニカム)に、汚れや細菌などの汚染物51を含むマイナスに帯電した微小泡が吸着する。
【0077】
マイナス電極324へは、所定のタイミングで所定時間だけマイナスのパルス電圧が印加される。その後、所定時間だけマイナスのパルス電圧を停止し、所定時間が経過した後、マイナス電極324へ所定時間だけマイナスのパルス電圧が印加される。電源制御部34は、このマイナス電極324へのパルス電圧の印加と停止を繰り返す。マイナス電極324へのパルス電圧を印加している間が、図12のタイミング(A71)、タイミング(A72)、タイミング(A73)である。
【0078】
また、追いだきが始まってハニカム状プラス電極323にプラスのパルス電圧を印加している間、ハニカム状プラス電極323は、回転軸151を軸として回転する。例えば、ハニカム状プラス電極323は、1時間に1回程度の速度でゆっくり回転する。ハニカム状プラス電極323は除々に回転し、180度回転すると、ハニカム状プラス電極323で汚染物51を含む微小泡を吸着した箇所が、マイナス電極324の配置された空間に移動する。これにより、ハニカム状プラス電極323のうち、マイナス電極324で覆われた位置のハニカム上の汚染物51が、ハニカム状プラス電極323とマイナス電極324との間の放電によって分解され、ハニカム状プラス電極323(吸着材)の表面は清浄な状態に戻る。
【0079】
このように、ハニカム状プラス電極323は、下部側(マイナス電極324で覆われていない箇所)で汚染物51を吸着するとともに、上部側(マイナス電極324で覆われている箇所)で汚染物51を分解する。そして、ハニカム状プラス電極323が回転することによって、下部側は上部側に移動して汚染物51が分解され、上部側は下部側に移動して汚染物51を吸着する。本実施の形態のヒートポンプ給湯装置100は、これらの工程によって、ハニカムの下半分で汚れや細菌などを吸着する処理と、反対側のマイナス電極324に覆われた上半分で汚れや細菌などを分解する処理と、を繰り返している。これにより、ヒートポンプ給湯装置100は、汚染物51の吸着処理と、汚染物51の分解処理と、を同時に実施することが可能となる。
【0080】
なお、ハニカム状プラス電極323は、正六角柱を隙間無く並べた構造に限らず、柱体を並べた構造であればよい。また、本実施の形態では、追いだきの際に、ハニカム状プラス電極323やマイナス電極324に電圧を印加するとともに、ハニカム状プラス電極323を回転させたが、追いだきを行っていない時に、ハニカム状プラス電極323やマイナス電極324に電圧を印加し、ハニカム状プラス電極323を回転させてもよい。また、本実施の形態では、マイナス電極324が半円柱状である場合について説明したが、マイナス電極324は何れの形状であってもよい。
【0081】
このように実施の形態6によれば、ハニカム状プラス電極323とマイナス電極324の間隔を調整し、適正なパルス電圧を印加することで、ハニカム状プラス電極323とマイナス電極324との間で放電を起こすことが可能となり、時間の経過とともにパルス電源をON/OFFする制御が不要となる。
【0082】
なお、実施の形態1〜6で説明した印加電圧、パルス周波数、パルス電圧の印加時間、パルス電圧の停止時間などは一例であり、他の値を用いて浄化装置300を動作させてもよい。また、プラス電極321Aとマイナス電極322Bの配置位置は、何れの位置であってもよい。また、実施の形態1〜6で説明した浴水汚れ分解方法や電極上の汚れ分解方法を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明にかかる浄化装置は、浴水中に発生した有機物や無機物などの汚染物の除去に適している。
【符号の説明】
【0084】
1 ヒートポンプユニット
2 タンクユニット
3 圧縮機
4 放熱器
5 膨張弁
6 蒸発器
10 貯湯タンク
11 プレート式熱交換器
13 タンク側送水ポンプ
15 浴槽
16 風呂側送水ポンプ
19 沸き上げ用送水ポンプ
22 三方弁
23 混合弁
24 混合弁
27 給湯口
28 追いだき配管エジェクタ
29 追いだき配管エジェクタ用電磁弁
30 追いだき配管エジェクタ用空気逆止弁
33 放電制御電源
34 電源制御部
35 汚れセンサ
50 電極機構
51 汚染物
52 微小無害物質
101 温水導出口
102 水導入口
103 温水導入口
104 水導出口
111 タンク側入口
112 タンク側出口
113 風呂側入口
114 風呂側出口
151 回転軸
300 浄化装置
321A プラス電極
322B マイナス電極
323 ハニカム状プラス電極
324 マイナス電極
325 放電空間
100 ヒートポンプ給湯装置
P7,P12,P14,P20,P21,P41,P42 配管
P17 浴槽戻り配管
P18 浴槽往き配管
P26 注水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の浴水を取り出して加熱し前記浴槽に戻す給湯装置の追いだき配管内に対向するように配置された少なくとも1対の電極と、
前記電極にパルス電圧を印加することによって前記電極間に放電を発生させる電圧制御部と、
を備え、
前記電圧制御部は、前記放電によって前記浴水中に発生した汚染物を放電分解処理することを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
前記追いだき配管内の前記電極よりも上流側に配置されて、前記汚染物を吸着するマイナス帯電した微小泡を発生させる微小泡発生部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記電極の少なくとも1つの電極にプラスのパルス電圧を印加することによって、プラスのパルス電圧を印加した電極に前記微小泡を吸着させる吸着処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記電圧制御部は、前記1対の電極のうち一方の電極にプラスのパルス電圧を印加するとともに、他方の電極にマイナスのパルス電圧を印加することによって前記放電分解処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記電圧制御部は、前記電極にマイナスのパルス電圧を印加することによって、マイナス帯電した放電分解後の汚染物を前記電極から脱離させる脱離処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の浄化装置。
【請求項5】
前記電圧制御部は、前記1対の電極のうち一方の電極にプラスからマイナスまで電位を振ったパルス電圧を印加することによって、前記プラスのパルス電圧を印加する際には前記電極へ前記微小泡を吸着させ、前記マイナスのパルス電圧を印加する際には前記微小泡に吸着した汚染物を放電分解させることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の浄化装置。
【請求項6】
前記追いだき配管内に配置されて、前記追いだき配管内の汚れ量を検知する汚れセンサをさらに備え、
前記電圧制御部は、前記汚れセンサが上限閾値以上の汚れ量を検出した場合に、前記電極にパルス電圧を印加し、前記汚れセンサが下限閾値以下の汚れ量を検出した場合に前記電極へのパルス電圧の印加を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の浄化装置。
【請求項7】
前記電圧制御部は、前記電極にパルス電圧を印加することによって、前記電極表面で水を電気分解させ、これによりマイクロバブルを発生させて前記脱離処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の浄化装置。
【請求項8】
前記電圧制御部は、前記吸着処理を行う際に、前記電極の少なくとも1つの電極に前記電極間で放電のおきないプラス電圧値を印加することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の浄化装置。
【請求項9】
前記1対の電極はプラスのパルス電圧が印加されるプラス電極およびマイナスのパルス電圧が印加されるマイナス電極であり、
前記追いだき配管の軸方向に平行な軸方向を有したハニカム構造のプラス電極と、
前記プラス電極を格納し、かつ前記追いだき配管と同軸方向であって且つ異なる中心軸で前記プラス電極が回転するとともに前記浴水が前記ハニカム構造の軸方向へ流れるよう前記プラス電極の一部が前記追いだき配管途中に挿入される筐体と、
前記筐体のうち前記浴水が通過しない位置の外壁面に配置されるマイナス電極と、
を有した電極機構をさらに備え、
前記プラス電極および前記マイナス電極にパルス電圧を印加させながら前記プラス電極を回転させるとともに、前記プラス電極のうち前記浴水が通過する位置に回転させられたプラス電極によって前記微小泡を吸着させ、かつ前記マイナス電極が配置された位置に回転させられたプラス電極と前記マイナス電極との間で放電を発生させて前記微小泡に吸着した前記汚染物を放電分解させることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1つに記載の浄化装置。
【請求項10】
前記電極を移動させることによって前記電極間の距離を変更させる電極間距離変更機構をさらに備え、前記電極間距離変更機構が前記電極間の距離を縮めることによって放電が開始され、前記電極間の距離を広げることによって放電が終了させられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−179206(P2010−179206A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22890(P2009−22890)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】