説明

浄水カートリッジ及びその製造方法並びに浄水器

【課題】除菌効果が高く、溶出量が少ない白金ナノコロイドを担持させた浄水カートリッジ及びその製造方法並びに浄水器を提供する。
【解決手段】浄水器10の基台となり各部品が装着及び取付けられる本体ベース11と、本体ベース11に搭載されるプレフィルターユニット14及び浄水カートリッジユニット18と、本体ベース11に搭載された各部品を格納する本体ケース22と、本体ケース22の上部に備えられ浄化された水が吐水される吐水部24とで構成され、浄水カートリッジユニット18は、浄水カートリッジ19と浄水カートリッジケース20とで構成され接続パイプ21に取り付けられ、浄水カートリッジ19は、浄水基材に白金ナノコロイドが担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水カートリッジ及びその製造方法並びに浄水器に関し、詳しくは、浄水基材として抗菌作用が強く、溶出量の少ない白金ナノコロイドを担持させた浄水カートリッジ及びその製造方法並びにこの浄水カートリッジを内蔵した浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭において水道水や井戸水を浄化して飲料水等とするために浄水器が普及している。一般的に、浄水器には水道水や井戸水を浄化するための抗菌作用が施された浄水カートリッジが内蔵されている。この浄水カートリッジに使用されている抗菌作用を発揮するものとしては、活性炭や金属類が挙げられるが、中でも銀が広く用いられている。
【0003】
銀の抗菌効果は、従来知られており、銀食器に代表されるように普段の生活品の様々な所で使用されてきている。その理由は、銀の抗菌効果は、毒素によるものではなく、銀から生じた銀イオンが細菌酵素中のSH基と結合して、細菌のタンパク質を変性させ、細菌の活動を押さえ込むという作用を有していることにある。そして、この作用を利用して浄水器に銀を設け、銀イオンを溶出させて水道水の抗菌を行っている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、浄水エレメントを多層で構成し、少なくとも最下流の層に、銀および少なくとも1つの銀化合物を含み、かつ銀成分を含む層の浄水エレメント基材には銀成分が多層に形成され、その最外層に硫化銀を形成する浄化エレメントの発明が開示されている。下記特許文献1の浄化エレメントの発明では、最下流層の浄水エレメントに銀と銀化合物を含有させているので、浄水が最下層を通過する際に 銀が溶出して浄水器の下流側配管内部の滞留水及び蛇口まで殺菌性能を維持できるとされている。
【0005】
また、下記特許文献2には、活性炭に銀化合物が添着された銀添着活性炭であって、添着された銀化合物が炭酸銀を主体とする銀化合物で、銀添着量が0.03重量%以上0.2重量%以下である銀添着活性炭およびその製造方法、並びに浄水器の発明が開示されている。下記特許文献2の発明によれば、活性炭表面に炭酸銀を主体とする銀化合物が添着された銀添着活性炭を浄水材として用いることにより、0〜40℃の温度範囲で抗菌性を有する銀イオンを安定に溶出させることができるだけでなく、40℃〜80℃における高温領域(水温が高い領域)においても安定的に銀イオンを溶出させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−137010号公報
【特許文献2】特許2008−285348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2で示されているように銀を使用して浄水を行うことは一定の効果を奏することが認められる。しかし、銀イオンはある一定以上の濃度(10ppb以上)がなければ、抗菌等の効果を発揮できないという課題がある。除菌効果を発揮するための銀イオンの濃度は一般的に10ppb〜100ppbの範囲内、好ましくは10ppb〜50ppbの範囲内である必要があり、浄水器においてはこの程度の濃度の銀イオンを安定して溶出させる必要がある。そのため、浄水後の水には比較的多量の銀イオンが溶出しており、使用者がこの水を飲んだとき、水に含まれる銀イオンにより違和感を覚えるおそれもある。また、銀イオンを利用した浄水カートリッジにおいて初期使用時には、銀イオンの溶出量が増える傾向にあるため、銀イオンの溶出量のコントロールが困難であるという問題点も存在する。さらに、一部の国(例えば、中華人民共和国)では、銀を他の金属と同様に厳しい基準で規制するところも存在し、(中華人民共和国では5ppb以下となっている)その規制された溶出量では銀イオンの抗菌性能を発揮させることは困難となる。
【0008】
一方、抗菌対策をしなければ、浄水器内に滞留した水に菌が繁殖してしまう2次汚染が発生し、浄水器未使用の水よりも使用後の水質のほうが悪化するという問題点が存在している。さらに、2次汚染は、たとえ中空糸膜や平膜を併用し、雑菌の流出が止められたとしても、繁殖による細菌量の増大により、中空糸膜や平膜の目詰まりが促進され、想定の処理量が確保できなくなってしまうという新たな問題点も生じる。そのため、浄水器に用いられる除菌用の金属は、溶出量が少なく抗菌力の高い材料が必要となる。
【0009】
そこで、発明者は、種々実験を繰り返した結果、銀よりも抗菌効果が高く、溶出量が少ない抗菌材料として広く知られている白金ナノコロイドを基材に担持させることで、浄水カートリッジを作製することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本願発明の目的は、溶出量が少なく抗菌力の高い白金ナノコロイドを用いた浄水カートリッジ及びその製造方法並びにこの浄水カートリッジが内蔵された浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の浄水カートリッジは、浄水基材に白金ナノコロイドが担持されていることを特徴とする。
【0012】
また、第2の態様の浄水カートリッジは、前記第1の態様の浄水カートリッジにおいて、前記浄水基材は、活性炭、セラミックス及び不織布の少なくとも一種であることを特徴とする。
【0013】
また、第3の態様の浄水器は、前記第1又は第2の態様の浄水カートリッジが内蔵されていることを特徴とする。
【0014】
また、第4の態様の浄水器は、前記浄水カートリッジは両端が閉じた筒状体内に配置され、前記筒状体の両端に液体注入口及び浄水排出口がそれぞれ設けられたユニット形式の浄水カートリッジユニットとして内蔵されていることを特徴とする。
【0015】
また、第5の態様の浄水器は、前記浄水カートリッジユニットの前記液体注入口側と接続される流路には、液体内のゴミを除去するフィルターが設けられたプレフィルターが備えられていることを特徴とする。
【0016】
また、第6の態様の浄水器は、前記プレフィルターは白金ナノコロイドが担持されていることを特徴とする。
【0017】
また、第7の態様の浄水器は、前記浄水カートリッジは中空円筒状に形成されており、前記液体注入口側から導入された液体が前記中空円筒状の浄水カートリッジ外面側から中空の内面側を経て前記浄水排出口から流出する構成となされていることを特徴とする。
【0018】
また、第8の態様の浄水カートリッジの製造方法は、以下の(1)及び(2)の工程を有することを特徴とする。
(1)白金ナノコロイド溶液の原液又は稀釈液に浄水基材を浸漬する工程。
(2)前記基材を乾燥させる工程。
【0019】
また、第9の態様の浄水カートリッジの製造方法は、前記浄水基材は、活性炭、セラミックス及び不織布の少なくとも一種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
白金ナノコロイドは、従来抗菌剤として知られている銀イオンよりも低濃度でも、良好な抗菌作用を奏することが知られている物質である。本発明の第1の態様の浄水カートリッジにおいては、浄水基材に白金ナノコロイドが担持されているため、浄水基材中の白金ナノコロイド濃度が低濃度でも優れた抗菌効果を発揮させることができる。さらに、白金ナノコロイドは他の金属とは異なり、イオンとして水中に溶出し難い特徴を持っているので、浄化した水に金属イオンが含まれるのを抑制することができる。なお、白金ナノコロイドはすでに食品添加物としても認可され、その安全性が認められている物質であり、たとえ白金ナノコロイドが浄水中に含まれることがあっても、有害性は生じない。
【0021】
本発明の第2の態様の浄水カートリッジにおいては、浄水基材として公知の活性炭、セラミックス及び不織布を用いることができるので、特別な材料で浄水基材を作製する必要がなく、安価で提供することができる。
【0022】
また、本発明の第3の態様の浄水器によれば、本発明の浄水器によれば、上記第1又は第2の態様の浄水カートリッジの効果を奏する浄水器を提供することができる。
【0023】
また、本発明の第4の態様の浄水器によれば、浄水カートリッジがユニット形式で製造されているので、浄水器への取付けや交換が容易となる。
【0024】
また、本発明の第5の態様の浄水器によれば、浄水カートリッジを通る前に水に含まれるゴミ等を取り除くことができるので、浄水カートリッジ内でのゴミ詰まりを抑制し、浄水カートリッジの寿命を長くすることができる。
【0025】
また、本発明の第6の態様の浄水器によれば、プレフィルターにも白金ナノコロイドが担持されているので、プレフィルターにおいても雑菌が繁殖するのを抑制することができる。
【0026】
また、本発明の第7の態様の浄水器によれば、浄水カートリッジが中空円筒状に形成されているので、水と浄水カートリッジとの接する面積を大きくすることができ、大量の水に対して除菌効果を奏させることができるようになる。また、中空円筒状の浄水カートリッジの外側から内側へ導入させるようにすることで、浄水カートリッジ内のゴミ詰まりを抑制することができる。
【0027】
また、本発明の第8の態様の浄水カートリッジの製造方法によれば、上記1の態様の浄水カートリッジを容易に製造することができるようになる。
【0028】
また、本発明の第9の態様の浄水カートリッジの製造方法によれば、基材として公知の活性炭、セラミックス及び不織布を用いることができるので、特別な材料で基材を作製する必要がなく、安価な浄水カートリッジを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例に係る浄水器の側面図である。
【図2】浄水器の上面図である。
【図3】浄水器の底面図である。
【図4】図2のIV−IV線での断面図である。
【図5】プレフィルターユニットの拡大断面図である。
【図6】浄水カートリッジユニットの拡大断面図である。
【図7】図7A及び図7Bは浄水カートリッジの製造工程の簡略図である。
【図8】吐水部の拡大断面図である。
【図9】図9Aは図3のIXA−IXA線での断面図であり、図9Bはロックボタンをロックした状態を示した図であり、図9Cはロックボタンを解除した状態を示した図である。
【図10】図10A〜図10Cは、実施形態に係る浄水器の実験結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について、実施例及び図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するために浄水カートリッジが内蔵された浄水器を例にとって説明するものであって、本発明をこの実施例に記載された浄水カートリッジが内蔵された浄水器に限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適用し得るものである。
【0031】
図1〜図9を参照して実施例に係る浄水カートリッジが内蔵された浄水器について説明する。図1及び図4に示すように、本実施例の浄水器10は、浄水器10の基台となり各部品が装着及び取付けられる本体ベース11と、本体ベース11に搭載されるプレフィルターユニット14及び浄水カートリッジユニット18と、本体ベース11に搭載された各部品を格納する本体ケース22と、本体ケース22の上部に備えられ浄化された水が吐水される吐水部24とで構成されている。また、プレフィルターユニット14には、水道水が供給される切換コック31と接続された給水ホース32が接続されており、プレフィルターユニット14、浄水カートリッジユニット18及び吐水部24はそれぞれが給水パイプ17等によって給水ホース32からの水が通水され、吐水されるように接続されている。
【0032】
図3及び図4に示すように、本体ベース11は、所定面積を有する上面11aと、この上面11aの4辺からそれぞれ垂直に延設された前面11b、後面11c及び両側面11d、11eと、これらに囲まれた底部11fとで構成されている。上面11aには、後述するプレフィルターユニット14が装着されるプレフィルターユニット装着部12及び浄水カートリッジユニット18が装着される浄水カートリッジユニット装着部13が設けられている。また、前面11b、後面11c及び両側面11d、11eには、装着された本体ケース22が載置される突起11hが各面の上面11aとは反対の端部に形成されている。なお、実施例の浄水器10では、後面11cは半円形状に形成されている。
【0033】
さらに、両側面11d、11eには、後述する本体ケース22と本体ベース11を連結するロックピン33が貫通される孔11gがそれぞれの側面11d、11eに形成されている(図9A参照)。底部11fは、前面11b、後面11c及び両側面11d、11eに囲まれた空間部11iと、上面11aの裏側の底面11jとで形成されており、この空間部11iには、後述する給水パイプ17等が収納され、また、底面11jにはプレフィルターユニット14等を装着するためのねじが貫通されるねじ穴が複数形成されている。さらに、底面11jには、浄水器10を安定して設置させるためのゴム製の足ゴム39が4つ形成されている。
【0034】
次に、プレフィルターユニット14は、図3〜図5に示すように、プレフィルター15とプレフィルターカバー16とで構成され、給水パイプ17に取り付けられる。
【0035】
プレフィルター15は、水に含まれるゴミ等の不純物を除去するフィルターであり、一方が塞がれ他方が開口された中空円筒状に形成されている。プレフィルター15は、不織布、ガラス繊維、ビニロック(商品名)、サランハニカム(商品名)、金属メッシュ、繊維状活性炭等で形成されている。なお、プレフィルター自体は公知なので詳細な説明は省略する。
【0036】
プレフィルターカバー16は、プレフィルター15が収納できる大きさで、一方が塞がれ他方が開口された中空円筒状に形成されている。プレフィルターカバー16の塞がれた側の内側にはプレフィルター15が支持及び固定される複数の屈曲突起16aが形成され、さらに、開口された側には、後述する給水パイプ17と螺合接続されるねじ溝16bが形成されている。
【0037】
給水パイプ17は、本体ベース11のプレフィルターユニット装着部12に取り付けられ、プレフィルターユニット14が装着される部分となるものである。給水パイプ17は、水道水が供給される給水ホース32と接続される第1給水パイプ17aと、プレフィルター15を通過したゴミ等が除去された水を供給する第2給水パイプ17bを有し、プレフィルター15が取り付けられる中央が開口され流路が形成された円形の突起状のプレフィルター取付部17c及びプレフィルターカバー16が取り付けられるねじ溝17eが形成されたプレフィルター取付部17cよりも大径の円形の突起状のプレフィルターカバー取付部17dが形成された構成をしている。また、第2給水パイプ17bには、後述する接続パイプ21と接続される接続部17fが形成されている。
【0038】
また、浄水カートリッジユニット18は、図3、図4及び図6に示すように、浄水カートリッジ19と浄水カートリッジケース20とで構成され接続パイプ21に取り付けられる。
【0039】
浄水カートリッジ19は、水道水に含まれる雑菌等の除菌や抗菌を行うものであり、基材としての活性炭に除菌作用のある白金ナノコロイドを担持させたものが用いられ、中空円筒状に形成された構成をしている。
【0040】
ここで、浄水カートリッジ19の製造方法は、図7Aに示すように、まず、基材として中空円筒状に加工された活性炭19'を希釈された白金ナノコロイド溶液40に浸漬し、活性炭19'が白金ナノコロイド溶液40を十分吸収するまで浸漬する。その後、図7Bに示すように、白金ナノコロイドが担持された活性炭を乾燥することで本実施例の浄水カートリッジ19が製造される。このとき、白金ナノコロイド溶液の希釈の割合は、原液の濃度にもよるがコスト面や抗菌性能の持続性を考慮して概ね50倍〜200倍が好ましい。また、希釈に用いる液体は、水道水でもよいが、不純物を処理した水が好ましい。
【0041】
浄水カートリッジケース20は、浄水カートリッジ19を支持及び固定した上蓋20a及び底蓋20bが上カバー20cと底カバー20dで覆われた構成をしている。上蓋20aは、中央に開口20a1が形成され、その開口20a1の周囲から延設された突起20a2を有している。また、底蓋20bは、平坦に形成されている。これら上蓋20a及び底蓋20bの端部は、浄水カートリッジ19が設置される方向に向かって小さな突起20a3、20b1がそれぞれ形成されている。また、底カバー20dは、中央に開口20d1が形成されこの開口20d1の周囲から中央突起20d2が延設されており、この中央突起20d2とは反対方向に底蓋20bよりも大きな大径突起20d3が形成されている。この、中央突起20d2は後述する接続パイプ21と接続される部分となり、大径突起20d3は後述する上カバー20cと係合される部分となる。
【0042】
また、上カバー20cは、中央に開口20c1を有し、この開口20c1の周囲から延設された突起20c2が形成されている。この突起20c2の先端部分は、後述する吐水部24の浄水口ジョイント27と接続されるジョイント部20c3となっている。また、この突起20c2の内部には、上蓋20aの開口20a1と連通され、上蓋20aの突起20a2が嵌め合わされる嵌合部20c4が形成されている。また、上カバー20cの突起20c2とは反対方向には、浄水カートリッジ19が内蔵される部分となる中空円筒部20c5が形成されており、この中空円筒部20c5の先端部分は、底カバー20dと係合される部分となっている。なお、底カバー20dと底蓋20bとが接する部分は、底カバー20dの中心を基準として所定角度ごとに凹凸が繰り返し形成され、接続パイプ21から流れてくる水を浄水カートリッジ19と浄水カートリッジケース20の間に導くことができるように形成されている。
【0043】
接続パイプ21は、本体ケース22の浄水カートリッジユニット装着部13に取り付けられ、浄水カートリッジユニット18が装着されるものである。接続パイプ21は、プレフィルターユニット14の第2給水パイプ17bと接続される接続部21aと、浄水カートリッジケース20の底カバー20dの中央突起20d2が嵌め合わされる嵌合部21bを有した中空の構造をしている。
【0044】
本体ケース22は、図2及び図4に示すように、後述する吐水部24の浄水口ジョイント27が貫通される貫通孔22a1が設けられた上面22aと、プレフィルターユニット14及び浄水カートリッジユニット18が格納可能な大きさの前面22b、後面22c及び両側面22d、22eと、これらの面で囲まれて形成された空間の本体ケース内部22fで構成されている。また、本体ケース22は、本体ベース11に装着されるように、本体ベース11の後面22cが半円形状に形成されている。
【0045】
また、本体ケース22の前面22bには、開閉可能なクリアプレート23が設けられており、このクリアプレート23を開閉して本体ケース22内の掃除やプレフィルター15の交換等ができるようになっている。さらに、本体ケース22の両側面22d、22eには本体ベース11の両側面11d、11eに形成されているロックピン33が貫通される孔11gと対応する位置に同様の孔22gが形成されている(図9A参照)。
【0046】
吐水部24は図4及び図8に示すように、浄水カートリッジユニット18と接続され、浄化された水が吐水される部分である。吐水部24は、アンダーカバー26とトップカバー25で覆われた内部にそれぞれ通水可能な中空の浄水口ジョイント27、通水管28、吐水口ジョイント29及び吐水管30とが連通された構成をしている。
【0047】
アンダーカバー26には、浄水カートリッジユニット18と接続される浄水口ジョイント27が貫通される開口が形成されている。また、トップカバー25には、流量等を表示するための液晶表示パネル36が設けられている。また、アンダーカバー26とトップカバー25が合わされた内部には、浄水口ジョイント27と通水管28と吐水口ジョイント29が収められ、吐水口ジョイント29の先端に吐水管30が接続されている。このとき、吐水口ジョイント29は、アンダーカバー26とトップカバー25とで挟み合わされることで固定されている。また、吐水管30には流量を計測する流量センサー37が設けられ、この内部には、液晶表示パネル36や流量センサー37等を動かすための電池が収納される電池ユニット38が設けられている。
【0048】
次に、浄水器10の組立てを主に図3及び図4を参照して説明する。浄水器10の組立ては、まず、本体ベース11にプレフィルターユニット14及び浄水カートリッジユニット18を装着する。
【0049】
プレフィルターユニット14の装着は、まず、本体ベース11のプレフィルターユニット装着部12にプレフィルター15が装着される給水パイプ17を本体ベース11の底部11f側からねじで取り付ける。そして、図5に示すように、給水パイプ17のプレフィルター取付部17cにプレフィルター15の開口された側を差し込み、次にプレフィルターカバー取付部17dのねじ溝17eにプレフィルターカバー16の開口された側のねじ溝16bを互いに螺合して取り付ける。このとき、プレフィルターカバー16の内部の屈曲突起16aによってプレフィルター15が支持及び固定されている。
【0050】
次に、浄水カートリッジユニット18の装着は、図6に示すように、まず、本体ベース11の浄水カートリッジユニット装着部13に浄水カートリッジユニット18が装着される接続パイプ21を本体ベース11の底部11f側からねじで取り付ける。このとき、プレフィルターユニット14の第2給水パイプ17bと浄水カートリッジユニット18の接続パイプ21を接続させる。
【0051】
浄水カートリッジユニット18は、あらかじめ上蓋20a及び底蓋20bを取り付けた浄水カートリッジ19を底カバー20dに設置した後、浄水カートリッジ19等を覆うように上カバー20cを取付け、底カバーの20dの大径突起20d3と上カバー20cの中空円筒部20c5の先端部分を係合させることで組み立てられる。このとき、上蓋20aの突起20a2が上カバー20cの嵌合部20c4に嵌め合わされる。
【0052】
次に、図4に示すように、本体ケース22を本体ベース11に装着させる。このとき、本体ケース22にはあらかじめ吐水部24を装着させておく。吐水部24の組立ては、図8に示すように、アンダーカバー26の挿入孔26aに浄水口ジョイント27を挿入し、浄水口ジョイント27に通水管28、吐水口ジョイント29及び吐水管30を連結させ、アンダーカバー26にトップカバー25を装着させて行う。そして、本体ケース22と吐水部24の装着は、本体ケース22の上部に形成された貫通孔22a1から、吐水部24の浄水口ジョイント27を貫通させて装着される。このとき、吐水部24が本体ケース22から抜け落ちないように浄水口ジョイント27には本体ケース22の貫通孔22a1より大きい径のEリング35が嵌め込まれている。
【0053】
そして、本体ベース11と本体ケース22の装着は、本体ベース11に本体ケース22を浄水カートリッジユニット18の上カバー20cのジョイント部20c3と吐水部24の浄水口ジョイント27が接続されるように載せ、本体ベース11及び本体ケース22のそれぞれの側面11d、11e、22d、22eに設けられた互いに連通する孔11g、22gに、ロックピン33を本体ベース11の内側の底部から挿入し、本体ケース22の外側からロックボタン34を嵌め込むことで行われる。このとき、図9Aに示すように、ロックピン33の内部にはロックボタン34の係止爪34aと係止される係止溝33aが形成されており、その係止爪34aと係止溝33aが係止されることで固定される。この係止は、ロックボタン34を90°回動させることで係止爪34aをロックピン33の係止溝33aに係止させることができる。また、取り外す際は、さらにロックボタン34を90°回動させることで、ロックピン33の係止溝33aからロックボタン34の係止爪34aの係止を解除させることで行うことができる(図9B及び図9C参照)。
【0054】
そして、図1及び図3に示すように、プレフィルターユニット14の第1給水パイプ17aに水道水が供給される切換コック31と接続される給水ホース32が接続されて、浄水器10の組立てが完了する。なお、これらの組立てにおいて、水漏れを抑制するためのOリングやゴムパッキンが必要な箇所に装着されている。
【0055】
次に、主に図3、図4を参照して浄水器10を流れる水の流れを説明する。浄水器10の流路は、まず、水道水が供給された切換コック31が浄水器10側に供給するように切り換えられると、水道水は給水ホース32を通りプレフィルターユニット14が装着された第1給水パイプ17aから供給される。
【0056】
プレフィルターユニット14に供給された水道水は、まずプレフィルターユニット14内のプレフィルターカバー16の内側とプレフィルター15の外側の間に流れ込む。そして、水道水は圧力がかかっているためにプレフィルター15内に外側から侵入し、プレフィルター15を通過し内側へ流れる。このとき、水道水はプレフィルター15によりゴミ等が取り除かれることとなる。
【0057】
その後、水道水は、プレフィルターユニット14が装着された第2給水パイプ17bから浄水カートリッジユニット18が装着される接続パイプ21へ流れ、浄水カートリッジユニット18内へ供給される。浄水カートリッジユニット18内へ供給された水道水は、浄水カートリッジケース20の内側と浄水カートリッジ19の外側の間に流れ込み、圧力がかかっているために浄水カートリッジ19内に浸入し、浄水カートリッジ19の中空円筒状に形成された内側へ流れ込む。このとき、水道水は、浄水カートリッジ19に担持された白金ナノコロイドの酸化作用により、除菌及び抗菌される。そして、この除菌及び抗菌された浄水は、中空円筒状に形成された浄水カートリッジ19の中央を上昇し、吐水部24へと流れていく。
【0058】
吐水部24では、浄水カートリッジユニット18から流れた浄水は、浄水口ジョイント27、通水管28、吐水口ジョイント29及び吐水管30を通り、吐水される。このとき、通水管28を通過した浄水の量が流量センサー37で計測され、その計測値が液晶表示パネル36に表示される。
【0059】
[白金ナノコロイドの殺菌効果の確認実験]
次に、この白金ナノコロイドを担持した浄水カートリッジを使用した浄水器の殺菌効果、菌の繁殖抑制力及び白金の溶出量の実験結果について説明する。なお、以下の調査では、浄水器として50倍に希釈したプラチナ溶液に含浸させたプラチナ溶液(50倍希釈)処理粒状活性炭フィルター(本発明の浄水カートリッジに対応、以下、単に「活性炭フィルター」という)を用いて行った。
【0060】
まず、殺菌効果について調査した。具体的には、下記(1)〜(4)の手順で行った。
(1)河川水を孔径5μmのメンブランフィルターでろ過し試料水とする。
(2)浄水器に水道水を通水したのち、試料水を通水する。
(3)通水ろ過水は、試料水6リットルを活性炭フィルターに通水し、検水とする。
(4)試料水と通水ろ過水を採取し、一般細菌及び大腸菌群の試験をおこなう。試験方法は、一般細菌は平板培養法、大腸菌群試験はデソキシコレート培地法を用いる。
得られた結果を、図10Aに示す。
【0061】
すなわち、活性炭フィルターを通水させる前の試料水では、一般細菌が1mlあたり4.4×10個及び、大腸菌群が1mlあたり7個存在していたが、本実施形態の活性炭フィルターに試料水を通水させることにより、一般細菌が1mlあたり21個及び大腸菌群が1mlあたり1個に減少し、一般細菌の数は約1/20となり、大腸菌群の数は約1/7となった。その結果、白金ナノコロイドを担持した浄水カートリッジは、高い殺菌作用を有することが確認できた。
【0062】
次に、菌の繁殖抑制力を調査した。具体的には、下記(1)及び(2)の手順で行った。
(1)殺菌効果の試験に使用した浄水器を試料水が滞留した状態で密封し室温で4日間静置する。活性フィルター内部の滞留水について同様の細菌試験を行う。
(2)試験方法は、一般細菌は平板培養法、大腸菌群試験はデソキシコレート培地法を用いる。
得られた結果を、図10Bに示す。
【0063】
すなわち、白金ナノコロイドを担持させた活性炭フィルターを使用した浄水器に滞留した水では、一般細菌も大腸菌群も1mlあたり0個となり、一般細菌も大腸菌群も繁殖することはなかった。その結果、白金ナノコロイドを担持した浄水カートリッジは、非常に高い菌の繁殖抑制力を有することがわかった。
【0064】
次にプラチナの溶出量を調査した。具体的には、下記(1)〜(3)の手順で行った。
(1)活性炭フィルターを装着した浄水器に試料Aとして水道水を約6リットル通水する。最後の通水ろ過水を試料Bとして採る。15分間通水を止めて滞留させたのち、再度通水し、活性炭フィルター内の滞留水を試料Cとして採る。
(2)溶出試験は、試料A、B、Cについてプラチナの濃度を測定する。
(3)測定は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICPMS:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)によりおこなう。
得られた結果を、図10Cに示す。
【0065】
すなわち、試料A〜Cの検出結果では、白金の溶出量は1リットルあたり0.001mg未満、すなわち1ppb未満となった。その結果、白金ナノコロイドを担持した浄水カートリッジは、白金の溶出量が極めて少ないことが分かった。中でも上述した銀の溶出量の規定と比較してもその規定を大きく下回るものとなった。
【0066】
以上の結果から、本実施形態の浄水器によれば、白金ナノコロイドを活性炭に担持した浄水カートリッジを用いることで、高い殺菌効果及び、非常に高い菌の繁殖抑制力を有すると共に、プラチナの溶出量を極めて少ないものとすることが可能となる。
【0067】
なお、実施例の浄水器では、プレフィルターユニットを用いた場合を説明したが、これに限らず、プレフィルターユニットを用いずに、浄水カートリッジユニットへ水道水を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10:浄水器 11:本体ベース 12:プレフィルターユニット装着部 13:浄水カートリッジユニット装着部 14:プレフィルターユニット 15:プレフィルター 16:プレフィルターカバー 17:給水パイプ 18:浄水カートリッジユニット 19:浄水カートリッジ 19':活性炭 20:浄水カートリッジケース 21:接続パイプ 22:本体ケース 23:クリアプレート 24:吐水部 25:トップカバー 26:アンダーカバー 27:浄水口ジョイント 28:通水管 29:吐水口ジョイント 30:吐水管 31:切換コック 32:給水ホース 33:ロックピン 34:ロックボタン 35:Eリング 36:液晶表示パネル 37:流量センサー 38:電池ユニット 39:足ゴム 40:白金ナノコロイド溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水基材に白金ナノコロイドが担持されていることを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記浄水基材は、活性炭、セラミックス及び不織布の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の浄水カートリッジが内蔵されていることを特徴とする浄水器。
【請求項4】
前記浄水カートリッジは両端が閉じた筒状体内に配置され、
前記筒状体の両端に液体注入口及び浄水排出口がそれぞれ設けられたユニット形式の浄水カートリッジユニットとして内蔵されていることを特徴とする請求項3に記載の浄水器。
【請求項5】
前記浄水カートリッジユニットの前記液体注入口側と接続される流路には、液体内のゴミを除去するフィルターが設けられたプレフィルターが備えられていることを特徴とする請求項4に記載の浄水器。
【請求項6】
前記プレフィルターは、白金ナノコロイドが担持されていることを特徴とする請求項5に記載の浄水器。
【請求項7】
前記浄水カートリッジは中空円筒状に形成されており、前記液体注入口側から導入された液体が前記中空円筒状の浄水カートリッジ外面側から中空の内面側を経て前記浄水排出口から流出する構成となされていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の浄水器。
【請求項8】
以下の(1)及び(2)の工程を有することを特徴とする浄水カートリッジの製造方法。
(1)白金ナノコロイド溶液の原液又は稀釈液に浄水基材を浸漬する工程。
(2)前記基材を乾燥させる工程。
【請求項9】
前記浄水基材は、活性炭、セラミックス及び不織布の少なくとも一種であることを特徴とする請求項8に記載の浄水カートリッジの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−40482(P2012−40482A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182400(P2010−182400)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(593019607)ジョプラックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】