説明

浄水器

【課題】突発的な原水の濁りによる濾材の浄水性能低下を防止可能な浄水器を提供する。
【解決手段】浄水器1は、通水路100と濁質除去フィルタ133と濁度センサ110と第1浄水路導入弁101と排水弁102とを備える。濁質除去フィルタ133は、通水路100に配置されて原水を通過させて浄水にする。濁度センサ110は、通水路100を流通する原水の濁度を検知する。第1浄水路導入弁101と排水弁102は、通水路100を流通する水が濁質除去フィルタ133を通過する濾過状態と、通水路100を通過する水が濁質除去フィルタ133を通過しない非濾過状態とを切り替える。第1浄水路導入弁101と排水弁102は、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には濾過状態に切り替え、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には浄水器に関し、特定的には濾材を用いて原水を浄水にする浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器には、原水を濾材で濾過して浄水にしたり、原水に含まれる不純物を沈殿させて原水を浄水にしたりするものがある。浄水器に供給される原水の濁度は必ずしも一定ではなく、例えば原水を流通させる給水管の内壁が剥がれたりすると、突発的に原水の濁度が大きくなることがある。また、台風や大雨などによって一時的に原水の濁度が大きくなることがある。
【0003】
例えば、特開2002−58907号公報(特許文献1)には、原水中の懸濁物質を凝集沈殿させる凝集沈殿装置を2段直列に配置した凝集沈殿システムが記載されている。この凝集沈殿システムには、原水の濁度に応じて、1段処理と2段処理とを選択的に切替可能なバイパスラインが設けられている。この凝集沈殿システムでは、原水の濁度が高い場合には、原水を2段の凝集沈殿装置によって処理する2段処理を行なう。一方、原水の濁度が低い場合には、原水を1段の凝集沈殿装置によって処理する1段処理を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−58907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2002−58907号公報(特許文献1)に記載されている凝集沈殿システムのように、原水中の懸濁物質を凝集沈殿させて原水を浄水にするためには、時間がかかる。また、沈殿凝集システムを配置するための広い場所が必要である。そのため、家庭などで比較的少量の原水を浄水にするような場合に凝集沈殿装置を用いることは難しい。
【0006】
そこで、家庭において浄水を得る場合には、例えば、この凝集沈殿システムの2段の凝集沈殿装置を、それぞれ濾材に置き換えることが考えられる。
【0007】
しかし、上述の凝集沈殿システムの2段の凝集沈殿装置を、それぞれ濾材に置き換えた場合には、原水の濁度が大きい場合に2段処理を選択すると、濁度の大きい原水が濾材を通過する。
【0008】
このように、濁度の大きい水が濾材を通過すると濾材の目詰まりが生じやすくなる。濾材の目詰まりが生じると、濾材の浄水性能が低下する。特に、通常の原水の濁度よりも大きな濁度の原水が突発的に濾材に流入すると、通常の濾材の使用状況から予測される濾材の寿命、すなわち、標準的な濾材の使用可能な期間よりも短い期間しか濾材を使用することができなくなる。
【0009】
そこで、この発明の目的は、突発的な原水の濁りによる濾材の浄水性能の低下を防ぐことが可能な浄水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った浄水器は、通水路と、濾材と、濁度検知部と、切替部とを備える。通水路は、水を流通させるためのものである。濾材は、通水路に配置されて原水を通過させて浄水にするものである。濁度検知部は、通水路を流通する原水の濁度を検知する。切替部は、通水路を流通する水が濾材を通過する濾過状態と、通水路を通過する水が濾材を通過しない非濾過状態とを切り替える。
【0011】
切替部は、濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には濾過状態に切り替え、濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように構成されている。
【0012】
濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には、切替部が浄水器を濾過状態に切り替えることによって、通水路を流通する原水は濾材を通過して、浄水にされる。
【0013】
一方、濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度よりも大きい場合には、切替部が浄水器を非濾過状態に切り替えることによって、通水路を通過する水が濾材を通過しなくなる。
【0014】
このように、所定の濁度よりも大きい濁度の原水は濾材を通過させないようにすることによって、突発的に濁度の大きい原水が浄水器内に流入しても、濁度の大きい原水によって濾材が目詰まりすることを防ぐことができる。
【0015】
このようにすることにより、突発的な原水の濁りによる濾材の浄水性能の低下を防ぐことが可能な浄水器を提供することができる。
【0016】
この発明に従った浄水器は、切替部を制御する制御部を備えることが好ましい。制御部は、濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には濾過状態に切り替え、濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように切替部を制御する。
【0017】
このようにすることにより、簡単な構成の切替部を用いて、濾過状態と非濾過状態とを正確に切り替えることができる。
【0018】
この発明に従った浄水器は、原水を貯留するための貯留部を備えることが好ましい。貯留部は、通水路において濁度検知部によって濁度が検知される位置と、濾材との間に配置されることが好ましい。
【0019】
濁度検知部による濁度の検知と切替部による非濾過状態への切り替えまでの間に時間がかかる場合がある。そこで、通水路において濁度検知部によって濁度が検知される位置と濾材との間に貯留部を配置することで、濁度検知部によって濁度を検知された水は、濾材を通過するまでの間に、一時的に貯留部に貯留される。このようにすることにより、突発的に濁度が大きい水が通水路内に流入した場合に、切替部が非濾過状態に切り替える前に濁度の大きい水が濾材を通過することを防ぐことができる。
【0020】
この発明に従った浄水器は、濾材を通過する水量を検知する水量検知部と、濾材を洗浄する洗浄部とを備えることが好ましい。洗浄部は、濁度検知部によって検知される濁度を時間で積分した値と水量検知部によって検知される水量を時間で積分した値との積が所定の値よりも大きい場合に濾材を洗浄するように構成されていることが好ましい。
【0021】
突発的に濁度の大きな水が濾材を通過することがなくても、濾材の使用時間、すなわち、濾材を通過する合計の水量が増加するに従って、濾材には目詰まりが生じやすくなる。また、濾材を通過する水の濁度が大きければ大きいほど、濾材には目詰まりが生じやすい。そこで、濁度検知部によって検知される濁度を時間で積分した値と水量検知部によって検知される水量を時間で積分した値との積が所定の値よりも大きい場合に洗浄部が濾材を洗浄することによって、濾材の浄水性能の低下をより効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、突発的な原水の濁りによる濾材の浄水性能の低下を防ぐことが可能な浄水器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の第1実施形態に係る浄水器の構成を模式的に示す図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る浄水器の制御関連の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る浄水器の別の例を模式的に示す図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る浄水器の構成を模式的に示す図である。
【図5】この発明の第3実施形態に係る浄水器の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の浄水器1は、通水路100に配置される濁度検知部として濁度センサ110と、銀イオン溶出剤120と、プレフィルタ131と、活性炭フィルタ132と、濾材として濁質除去フィルタ133と、タンク140と、ポンプ150と、空気導入部160とを備える。また、浄水器1は、通水路100の外部に、制御部170と、水位センサ143と、報知部144とを備える。通水路100にはまた、第1浄水路導入弁101と、排水弁102と、第2浄水路導入弁103と、中水弁104と、浄水弁105と、逆洗弁106とが配置されている。通水路100の上流側の端部は、水道水などの原水を供給する外部の配管に接続されている。なお、原水は、水道水の他、井戸水や河川水であってもよい。
【0026】
濁度センサ110は、例えば、発光部と受光部とを備え、光の散乱や光の透過を検知することによって水の濁度を検知するように構成されているものが用いられる。
【0027】
濁度センサ110の下流側において、通水路100は2つの配管に接続されている。一方の配管には第1浄水路導入弁101が配置され、他方の配管には排水弁102が配置されている。第1浄水路導入弁101と排水弁102は、切替部の一例である。第1浄水路導入弁101と排水弁102は、後述するように、制御部170から制御信号を受信することによって開閉される。この実施形態においては、第1浄水路導入弁101と排水弁102は、電磁弁であるとする。
【0028】
第1浄水路導入弁101が配置されている配管には、銀イオン溶出剤120が配置されている。銀イオン溶出剤120としては、例えば、ポリエチレンペレットに銀イオン溶出ゼオライトが練り込まれたものが用いられる。このような銀イオン溶出剤120に水が接触すると、銀イオン溶出剤120から水中に銀イオンが溶出される。
【0029】
通水路100内の部材は、常に水に接触しているため、通水路100や通水路100内の部材、特に、各種のフィルタ内に菌が繁殖しやすい。菌が繁殖すると、フィルタの目詰まりが生じてフィルタの浄水性能が低下する。そこで、銀イオン溶出剤120を通水路100に配置することによって、銀イオンによる殺菌効果で菌の繁殖を抑え、フィルタの目詰まりを防止することができる。
【0030】
銀イオン溶出剤120の下流側にはプレフィルタ131が接続されている。プレフィルタ131は、比較的、目の粗い不織布によって構成されている。プレフィルタ131を通過する水は、プレフィルタ131によって漉されて、水中の比較的大きな不純物が取り除かれる。
【0031】
プレフィルタ131の下流側には、活性炭フィルタ132が接続されている。活性炭フィルタ132は、活性炭によって構成されており、水中の有機物を吸着して水から除去する。
【0032】
濁質除去フィルタ133は、活性炭フィルタ132の下流側に配置されている。濁質除去フィルタ133は、濾材の一例である。濁質除去フィルタ133は、比較的、目の細かい不織布によって構成されている。濁質除去フィルタ133は、膜によって構成されていてもよい。水が濁質除去フィルタ133を通過することによって、細かい不純物も濾し取られる。濁質除去フィルタ133を通過した水は、浄水になる。
【0033】
濁質除去フィルタ133の下流側において、通水路100は2つの配管に接続されている。一方の配管には、第2浄水路導入弁103が配置され、他方の配管には、中水弁104が配置されている。第2浄水路導入弁103は、後述するように制御部170から制御信号を受信することによって開閉される。中水弁104は、使用者によって開閉される。この実施形態においては、第2浄水路導入弁103は、電磁弁であるとする。
【0034】
第2浄水路導入弁103が配置されている配管には、タンク140が接続されている。タンク140内には、通水路100を流通してタンク140内に流入した水が一時的に貯留される。タンク140には、UV(紫外線)照射器141と細菌センサ142とが収容されている。UV照射器141は、タンク140内に貯留される水に紫外線を照射する。細菌センサ142は、タンク140内の水中の細菌の数を検知して制御部170に信号を送信する。
【0035】
水位センサ143は、タンク140内の水位を検知して、制御部170に信号を送信する。
【0036】
報知部144は、細菌センサ142によって、タンク140内の水中に所定の数以上の細菌が検知された場合に、アラーム音を鳴らして、タンク140内の細菌が所定の数以上であることを使用者に報知する。
【0037】
ポンプ150は、タンク140内に貯留されている水を送出する。ポンプ150は、後述する逆洗弁106が開かれるときに駆動するように構成されている。
【0038】
ポンプ150の下流側において、通水路100は2つの配管に接続されている。一方の配管には、浄水弁105が配置され、他方の配管には、逆洗弁106が配置されている。浄水弁105は、使用者によって開閉される。逆洗弁106は、後述するように制御部170から制御信号を受信することによって開閉される。この実施形態においては、逆洗弁106は電磁弁であるとする。
【0039】
浄水弁105が配置されている配管は、浄水器1の外部に連通している。一方、逆洗弁106が配置されている配管には、空気導入部160が接続されている。空気導入部160が接続された配管においては、逆洗弁106と反対側の端部が濁質除去フィルタ133に接続されている。
【0040】
空気導入部160は、ポンプ150から濁質除去フィルタ133に送出される水に空気を供給する。ポンプ150によって送出される水に空気が供給されることによって、水量が同じであっても水流の速度を高めることができる。
【0041】
空気導入部160によって空気を供給された水は、濁質除去フィルタ133に供給される。濁質除去フィルタ133に供給された水は、タンク140には戻されずに、浄水器1から排水される。
【0042】
図2に示すように、浄水器1は、制御関連の構成として、濁度センサ110と細菌センサ142と水位センサ143と第1浄水路導入弁101と排水弁102と第2浄水路導入弁103と逆洗弁106と報知部144とを備える。濁度センサ110と細菌センサ142と水位センサ143は、制御部170に信号を送信する。制御部170は、濁度センサ110と細菌センサ142と水位センサ143から受信した信号に基づいて、第1浄水路導入弁101と、排水弁102と、第2浄水路導入弁103と、逆洗弁106と、報知部144とに制御信号を送信する。
【0043】
制御部170は、濁度センサ110によって検知された原水の濁度が所定の値、例えば2NTU(比濁計濁度単位)より大きい値であるときには、第1浄水路導入弁101を閉じ、排水弁102を開くように、第1浄水路導入弁101と排水弁102に制御信号を送信する。第1浄水路導入弁101が閉じられ、排水弁102が開かれた状態を非濾過状態とする。
【0044】
制御部170は、濁度センサ110によって検知された原水の濁度が所定の値、例えば2NTU以下であるときには、第1浄水路導入弁101を開き、排水弁102を閉じるように、第1浄水路導入弁101と排水弁102に制御信号を送信する。第1浄水路導入弁101が開かれ、排水弁102が閉じられた状態を濾過状態とする。
【0045】
非濾過状態と濾過状態とを切り替えるときの濁度の値は、浄水器1が使用される環境や濾材の種類などによって調整される。例えば、通常、原水の濁度が0.01NTUであり、原水の濁度が1.0NTUよりも大きいときには濁質除去フィルタ133を通過させないようにする場合、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が1.0NTU以下であるときに濾過状態に切り替え、濁度センサ110によって検知される濁度が1.0NTUより大きいときに非濾過状態に切り替える。
【0046】
また、非濾過状態と濾過状態とを切り替えるときの濁度の値は、浄水器1の動作時において、所定の期間内に濁度センサ110によって検知される濁度の値に基づいて定められてもよい。このようにして所定の値を定める場合には、制御部170は、所定の期間内に濁度センサ110によって検知された濁度の値を記憶し、記憶された濁度の値の平均値と標準偏差とを求める。次に、制御部170は、求められた濁度の平均値と標準偏差とを用いて、(平均値+標準偏差×2)を求めて、これを所定の値とする。制御部170は、濁度センサ110によって検知される濁度の値が、求められた(平均値+標準偏差×2)より大きな値のときには非濾過状態に切り替えて、原水が濁質除去フィルタ133を通過しないようにする。また、制御部170は、濁度センサ110によって検知される濁度の値が、求められた(平均値+標準偏差×2)以下の値のときには、濾過状態に切り替えて原水が濁質除去フィルタ133を通過するようにする。
【0047】
制御部170は、細菌センサ142によって検知されたタンク140内の細菌の量が所定の値以上である場合には、報知部144に制御信号を送信し、タンク140内の細菌数が所定の数以上であることを使用者に対して報知させる。
【0048】
制御部170はまた、水位センサ143に検知されたタンク140内の水が所定の水位よりも低い場合には、第1浄水路導入弁101と第2浄水路導入弁103とを開くように、第1浄水路導入弁101と第2浄水路導入弁103に制御信号を送信する。一方、水位センサ143に検知されたタンク140内の水が所定の水位以上である場合には、第1浄水路導入弁101を閉じるように、第1浄水路導入弁101に制御信号を送信する。
【0049】
また、制御部170は、例えば一定の時間間隔で逆洗弁106に制御信号を送信して、逆洗弁106を開閉する。逆洗弁106の開閉は、制御部170が細菌センサ142や水位センサ143から受信する信号と連動してもよい。逆洗弁106が開放されると、ポンプ150(図1)が駆動される。
【0050】
以上のように構成された浄水器1の動作について説明する。
【0051】
水道水などの原水が通水路100内に流入し、濁度センサ110を通過するとき、濁度センサ110によって原水の濁度が検知される。検知された濁度が所定の値、例えば、2NTUよりも大きい場合には、濁度センサ110から制御部170に信号が送信され、制御部170が第1浄水路導入弁101を閉じ、排水弁102を開くように制御する。所定の濁度よりも濁度が大きい水は、第1浄水路導入弁101よりも下流側の通水路100に流入することなく、排水弁102を通って浄水器1の外部に排出される。
【0052】
このように、所定の濁度よりも大きい濁度が検知された水は、濁質除去フィルタ133等を通過することなく、浄水器1から排出される。
【0053】
一方、濁度センサ110によって検知された原水の濁度が所定の値、例えば、2NTU以下である場合には、濁度センサ110から制御部170に信号が送信され、制御部170が第1浄水路導入弁101を開き、排水弁102を閉じるように制御する。所定の濁度以下の水は、第1浄水路導入弁101を通過して、通水路100内において第1浄水路導入弁101よりも下流側に進入する。
【0054】
第1浄水路導入弁101の下流側では、水は、銀イオン溶出剤120を通過する。このとき、水に銀イオンが溶出する。浄水器1が使用されておらず、浄水器1内に原水が供給されないときに、浄水器1の内部に残った水がある場合には、水に銀イオンが徐々に溶出することによって、水中での菌の繁殖を抑制することができる。
【0055】
次に、水は、プレフィルタ131を通過する。プレフィルタ131を通過することによって、比較的大きな不純物が水から取り除かれる。
【0056】
次に、水は、活性炭フィルタ132を通過する。活性炭フィルタ132を通過することによって、水中の有機物が活性炭に吸着されて、水から除去される。
【0057】
次に、水は、濁質除去フィルタ133を通過する。濁質除去フィルタ133を通過することによって、水中の比較的小さい不純物が取り除かれる。
【0058】
このようにして浄水が生成される。
【0059】
生成された浄水は、タンク140内に貯留される。水位センサ143によって検知されるタンク140内の水位が所定の水位よりも低い場合には、第2浄水路導入弁103が開かれて、濁質除去フィルタ133を通過した水がタンク140内に流入する。タンク140内に貯留される水は、UV照射器141によって紫外線を照射され、殺菌される。細菌センサ142によって検知される細菌の数が所定の数以上である場合には、タンク140内の細菌が所定の数以上であることを報知部144が使用者に報知する。
【0060】
報知部144による報知がなされていない場合には、使用者が浄水弁105を開くと、浄水弁105を通って浄水器1から浄水が排出される。使用者は浄水を利用することができる。
【0061】
一方、報知部144による報知がなされている場合には、使用者は、UV照射器141による殺菌をさらに長時間、継続させることができる。また使用者は、報知部144による報知がなされていても浄水弁105を開くことができる。この場合には、浄水器1から排出される水を飲食用に用いる代わりに、洗濯等に用いることが好ましい。
【0062】
また、浄水器1では、所定の時間間隔で逆洗弁106が開放され、ポンプ150が駆動されて、濁質除去フィルタ133の洗浄が行なわれる。タンク140内で紫外線を照射されて殺菌され、浄化された水を濁質除去フィルタ133に、通常の水の流れと逆の方向から供給することによって、濁質除去フィルタ133を洗浄することができる。濁質除去フィルタ133を洗浄した水は、そのまま浄水器1から排出される。
【0063】
使用者はまた、中水弁104を開いて、第2浄水路導入弁103を通過した水をタンク140に貯留せずに、そのまま浄水器1から排出させることができる。このように、タンク140に貯留されずに濁質除去フィルタ133を通過した後、タンク140に貯留されずにそのまま浄水器1の外に排出される水を、中水とする。中水は、濁質除去フィルタ133によって浄化されているが、紫外線照射による殺菌をされていない。そのため、中水は飲料にせず、洗濯等に用いることが望ましい。
【0064】
なお、この実施形態においては、第1浄水路導入弁101と排水弁102は電磁弁であるものとして説明したが、第1浄水路導入弁101と排水弁102は、他の弁であってもよい。例えば、第1浄水路導入弁101と排水弁102は、濁度センサ110が検知する光の透過量、すなわち、通水路100内の明るさに応じて開閉するように構成されていてもよい。
【0065】
例えば、排水弁102として、光の照射により開放される光駆動バルブを用いることができる。光駆動バルブは、例えば、光応答性物質によって形成される可動膜を含む。光応答性物質によって形成される可動膜は、照射される光の量によって可逆的に変形する。このような可動膜を含む光駆動バルブに光が照射されることによって、可動膜が可逆的に変形されて、光駆動バルブが駆動される。排水弁102に用いられる光駆動バルブは、例えば、所定の量より多い散乱光を受光するときに開放され、所定の量以下の散乱光を受光するときに閉塞されるように構成される。
【0066】
通水路100内において、通水路100内の水に光を照射する発光部を設置し、発光部から通水路100内の水に光を照射すると、濁度に応じて散乱光が増す。そこで、通水路100内の散乱光を受光する位置に光駆動バルブによって構成される排水弁102を設けることで、通水路100内の原水の濁度が所定の値よりも大きいときに排水弁102が開放され、所定の値以下であるときに排水弁102が閉塞されるようにすることができる。
【0067】
また、第1浄水路導入弁101としても同様に、光駆動バルブを用いることができる。第1浄水路導入弁101は、通水路100内の透過光を受光する位置に配置される。通水路100内の透過光は、通水路100内の原水の濁度が上昇するに伴って減少する。そこで、所定の量以上の透過光を受光するときに開放され、所定の量より少ない透過光を受光するときに閉塞されるように構成される光駆動バルブを第1浄水路導入弁101として用いる。このようにすることにより、通水路100内の原水の濁度が所定の値以下である場合に第1浄水路導入弁101を開放し、所定の値よりも大きい場合に第1浄水路導入弁101を閉塞することができる。
【0068】
第1浄水路導入弁101と排水弁102がこのように構成されている場合には、第1浄水路導入弁101と排水弁102は制御部170を介さずに開閉される。例えば、通水路100内の明るさが、濁度センサ110が2NTU以下の濁度を検知するときの通水路100内の明るさ以上の明るさである場合には濾過状態に切り替えるよう、第1浄水路導入弁101が開放され、排水弁102が閉塞される。一方、通水路100内の明るさが、濁度センサ110が2NTU以下の濁度を検知するときの通水路100内の明るさよりも低い場合には非濾過状態に切り替えるよう、第1浄水路導入弁101が閉塞され、排水弁102が開放される。
【0069】
一方、第1実施形態の浄水器1のように、制御部170を介して第1浄水路導入弁101と排水弁102とを制御して、濾過状態と非濾過状態とを切り替えることによって、第1浄水路導入弁101と排水弁102として簡単な構成の弁を用いることができる。
【0070】
以上のように、第1実施形態の浄水器1は、通水路100と、濁質除去フィルタ133と、濁度センサ110と、第1浄水路導入弁101と排水弁102とを備える。通水路100は、水を流通させるためのものである。濁質除去フィルタ133は、通水路100に配置されて原水を通過させて浄水にするものである。濁度センサ110は、通水路100を流通する原水の濁度を検知する。第1浄水路導入弁101と排水弁102は、通水路100を流通する水が濁質除去フィルタ133を通過する濾過状態と、通水路100を通過する水が濁質除去フィルタ133を通過しない非濾過状態とを切り替える。
【0071】
第1浄水路導入弁101と排水弁102は、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には濾過状態に切り替え、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように構成されている。
【0072】
濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には、第1浄水路導入弁101と排水弁102が浄水器1を濾過状態に切り替えることによって、通水路100を流通する原水は濁質除去フィルタ133を通過して、浄水にされる。
【0073】
一方、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度よりも大きい場合には、第1浄水路導入弁101と排水弁102が浄水器1を非濾過状態に切り替えることによって、通水路100を通過する水が濁質除去フィルタ133を通過しなくなる。
【0074】
このように、所定の濁度よりも大きい濁度の原水は濁質除去フィルタ133を通過させないようにすることによって、突発的に濁度の大きい原水が浄水器1内に流入しても、濁度の大きい原水によって濁質除去フィルタ133が目詰まりすることを防ぐことができる。
【0075】
このようにすることにより、突発的な原水の濁りによる濁質除去フィルタ133の浄水性能の低下を防ぐことが可能な浄水器1を提供することができる。
【0076】
また、第1実施形態の浄水器1は、第1浄水路導入弁101と排水弁102を制御する制御部170を備える。制御部170は、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には濾過状態に切り替え、濁度センサ110によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように第1浄水路導入弁101と排水弁102を制御する。
【0077】
このようにすることにより、簡単な構成の第1浄水路導入弁101と排水弁102を用いて、濾過状態と非濾過状態とを正確に切り替えることができる。
【0078】
なお、ポンプ150と浄水弁105との間には、加熱部としてヒータ(図示しない)や、冷却部として冷却装置(図示しない)が設置されていてもよい。例えば、使用者はヒータや冷却装置の駆動を調節して、浄水弁105を通って排出される浄水の温度を調節することができる。
【0079】
図3に示すように、第1実施形態の別の例としての浄水器2は、水道から直接、原水を通水路200内に供給するのではなく、原水が貯留された原水タンク220に接続されていてもよい。このように、原水を原水タンク220から浄水器2内に供給する場合には、原水タンク220と濁度センサ110との間にポンプ210を配置する。
【0080】
このようにすることにより、水道水のような水圧がなくても、ポンプ210によって原水タンク220から浄水器2の通水路200内に水を供給して、通水路200内において水を流通させることができる。
【0081】
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態の浄水器3が第1実施形態の浄水器1と異なる点としては、第2実施形態の浄水器3は、貯留部としてバッファ部310を備える。バッファ部310は、通水路300において、濁度センサ110と第1浄水路導入弁101との間に配置されている。浄水器3のその他の構成は、第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0082】
バッファ部310は、一時的に水を貯留するように構成されていればどのような形状であってもよく、例えば、円筒形状の容器であってもよいし、螺旋状に巻かれた管状に形成されていてもよく、また、単に長い管であってもよい。原水がバッファ部310に滞留される時間の長さは、バッファ部310の形状や径、長さによって調節することができる。
【0083】
以上のように構成された第2実施形態の浄水器3の動作について説明する。ここでは、第1実施形態の浄水器1の動作と異なる点について説明する。
【0084】
水道水などの原水が通水路300内に流入し、濁度センサ110を通過するとき、濁度センサ110によって原水の濁度が検知される。検知された濁度が所定の値、例えば、2NTUよりも大きい場合には、濁度センサ110から制御部170に信号が送信される。制御部170は、第1浄水路導入弁101を閉じ、排水弁102を開くように、第1浄水路導入弁101と排水弁102に制御信号を送信する。
【0085】
一方、濁度センサ110によって濁度を検知された原水は、バッファ部310に一時的に貯留される。原水は、バッファ部310に一時的に貯留された後、通水路300内を下流側に流通する。
【0086】
濁度センサ110が制御部170に信号を送信し、制御部170が第1浄水路導入弁101と排水弁102に制御信号を送信し、第1浄水路導入弁101が閉じられて排水弁102が開かれるまでの間に時間がかかる場合がある。しかし、原水は、第1浄水路導入弁101よりも上流側のバッファ部310に一時的に貯留されるので、第1浄水路導入弁101が閉じられるまでに時間がかかっても、濁度の大きい原水が第1浄水路導入弁101を通過することを防ぐことができる。
【0087】
以上のように、第2実施形態の浄水器3は、原水を貯留するためのバッファ部310を備える。バッファ部310は、通水路300において濁度センサ110によって濁度が検知される位置と、濁質除去フィルタ133との間に配置される。
【0088】
濁度センサ110による濁度の検知と第1浄水路導入弁101と排水弁102による非濾過状態への切り替えまでの間に時間がかかる場合がある。そこで、通水路300において濁度センサ110によって濁度が検知される位置と濁質除去フィルタ133との間にバッファ部310を配置することで、濁度センサ110によって濁度を検知された水は、濁質除去フィルタ133を通過するまでの間に、一時的にバッファ部310に貯留される。このようにすることにより、突発的に濁度が大きい水が通水路300内に流入した場合に、第1浄水路導入弁101と排水弁102が非濾過状態に切り替える前に濁度の大きい水が濁質除去フィルタ133を通過することを防ぐことができる。
【0089】
第2実施形態の浄水器3のその他の構成と効果は、第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0090】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態の浄水器4が第1実施形態の浄水器1と異なる点としては、第3実施形態の浄水器4は、水量検知部として流量センサ410を備える。流量センサ410は、通水路400内において第1浄水路導入弁101と銀イオン溶出剤120との間に配置されている。流量センサ410は、通水路400において第1浄水路導入弁101を通過した原水の流量を検知して、制御部170に信号を送信する。第1実施形態の浄水器1と同様に、濁度センサ110は、通水路400中を流通する原水の濁度を検知して、制御部170に信号を送信する。
【0091】
ポンプ150と逆洗弁106と空気導入部160は、洗浄部を構成する。逆洗弁106は、制御部170から受信する信号に基づいて開閉される。
【0092】
制御部170は、濁度センサ110から受信した信号を流量センサ410から受信した信号とに基づいて、濁度と水量との積を求める。制御部170は、求められた濁度と水量との積が所定の値よりも大きい場合には、ポンプ150を駆動し、逆洗弁106を開くように逆洗弁106に制御信号を送信する。
【0093】
第3実施形態の浄水器4のその他の構成は第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0094】
以上のように構成された浄水器4の動作について説明する。ここでは、第1実施形態の浄水器1の動作と異なる点について説明する。
【0095】
浄水器4の通水路400内に原水が流入すると、濁度センサ110は、通水路400中を流通する原水の濁度を検知して、制御部170に信号を送信する。
【0096】
浄水器4が濾過状態に切り替えられている場合には、第1浄水路導入弁101を通過して濁質除去フィルタ133に流れ込む原水は、流量センサ410を通過する。流量センサ410は、通水路400において第1浄水路導入弁101を通過した原水の水量を検知して、制御部170に信号を送信する。
【0097】
制御部170は、濁度センサ110から受信した信号に基づいて、濁度センサ110によって検知された濁度を時間で積分する。また、制御部170は、流量センサ410から受信した信号に基づいて、流量センサ410によって検知された流量を時間で積分する。第3実施形態においては、制御部170は、濁質除去フィルタ133が逆洗された後に経過した時間で、検知された濁度と流量をそれぞれ積分する。
【0098】
制御部170は、濁度を時間で積分した値と流量を時間で積分した値との積を求める。制御部170は、求められた積が所定の値よりも大きい場合には、ポンプ150を駆動し、逆洗弁106を開くように逆洗弁106に制御信号を送信する。
【0099】
ポンプ150が駆動され、逆洗弁106が開かれると、タンク140内の水がポンプ150と逆洗弁106と空気導入部160とを通過して、通常の水の流れとは逆方向から濁質除去フィルタ133に流れ込み、濁質除去フィルタ133の逆洗が行なわれる。逆洗に用いられた浄水は、そのまま浄水器4から排出される。
【0100】
以上のように、第3実施形態の浄水器4は、濁質除去フィルタ133を通過する水量を検知する流量センサ410と、濁質除去フィルタ133を洗浄する逆洗弁106と空気導入部160とを備える。逆洗弁106と空気導入部160は、濁度センサ110によって検知される濁度を時間で積分した値と流量センサ410によって検知される水量を時間で積分した値との積が所定の値よりも大きい場合に濁質除去フィルタ133を洗浄するように構成されている。
【0101】
突発的に濁度の大きな水が濁質除去フィルタ133を通過することがなくても、濁質除去フィルタ133の使用時間、すなわち、濁質除去フィルタ133を通過する合計の水量が増加するに従って、濁質除去フィルタ133には目詰まりが生じやすくなる。また、濁質除去フィルタ133を通過する水の濁度が大きければ大きいほど、濁質除去フィルタ133には目詰まりが生じやすい。そこで、濁度センサ110によって検知される濁度を時間で積分した値と流量センサ410によって検知される水量を時間で積分した値との積が所定の値よりも大きい場合に逆洗弁106と空気導入部160が濁質除去フィルタ133を洗浄することによって、濁質除去フィルタ133の浄水性能の低下をより効果的に防ぐことができる。
【0102】
第3実施形態の浄水器4のその他の構成と効果は、第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0103】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【符号の説明】
【0104】
1,2,3,4:浄水器、100,200,300,400:通水路、101:第1浄水路導入弁、102:排水弁、106:逆洗弁、110:濁度センサ、133:濁質除去フィルタ、150:ポンプ、160:空気導入部、310:バッファ部、410:流量センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を流通させるための通水路と、
前記通水路に配置されて原水を通過させて浄水にする濾材と、
前記通水路を流通する原水の濁度を検知する濁度検知部と、
前記通水路を流通する水が前記濾材を通過する濾過状態と、前記通水路を通過する水が前記濾材を通過しない非濾過状態とを切り替える切替部とを備え、
前記切替部は、
前記濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には前記濾過状態に切り替え、前記濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように構成されている、浄水器。
【請求項2】
前記切替部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度以下である場合には前記濾過状態に切り替え、前記濁度検知部によって検知される原水の濁度が所定の濁度より大きい場合には非濾過状態に切り替えるように前記切替部を制御する、請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
原水を貯留するための貯留部を備え、
前記貯留部は、前記通水路において前記濁度検知部によって濁度が検知される位置と、前記濾材との間に配置される、請求項1または請求項2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記濾材を通過する水量を検知する水量検知部と、
前記濾材を洗浄する洗浄部とを備え、
前記洗浄部は、
前記濁度検知部によって検知される濁度を時間で積分した値と前記水量検知部によって検知される水量を時間で積分した値との積が所定の値よりも大きい場合に前記濾材を洗浄するように構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−83677(P2011−83677A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237111(P2009−237111)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】