説明

浄水器

【課題】原水の水質に応じて、濾材の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器を提供する。
【解決手段】浄水器1は、濾材29と、水量計測部22と、水圧計測部23と、演算部27とを備える。濾材29は、原水を通過させて浄水にするものである。水量計測部22は、濾材29を通過する水量を検知するものである。水圧計測部23は、濾材29の原水側の水圧を検知するものである。演算部27は、水量計測部22によって検知される水量と水圧計測部23によって検知される水圧との比に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には浄水器に関し、特定的には、中空糸膜や限外濾過膜(UF膜)等の濾材により原水を濾過し浄水を生成する方式の浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濾材により原水を濾過し浄水を生成する方式の浄水器では、浄水時間、すなわち、浄水器の動作時間が長くなるほど濾材の目詰まりが多くなり、浄水性能が低下する。
【0003】
そこで、各浄水器メーカでは、水道水などの原水の標準的な水質や使用量を想定し、想定されたデータから、濾材の標準的な寿命、すなわち、濾材の標準的な使用可能期間を設定している。濾材の寿命は、カートリッジ方式の浄水器ではカートリッジ交換目安時期、逆洗(逆洗浄)による濾材再生方式の浄水器では逆洗目安時期となる。濾材の標準的な寿命を超えると、濾材の十分な浄水性能が得られなくなる。
【0004】
そのため、使用者が濾材の標準的な寿命を超えて使用したり、標準的な水質よりも悪い水質の原水を浄水したり、あるいは標準的な使用量よりも多い量の原水を浄水したりすると、浄水性能が低下した浄水器を使用することになる。浄水性能が低下した浄水器を使用すると、浄水の出が悪くなる等の利便性の低下や、不充分に浄化された水を飲むことによる使用者の健康被害の恐れがある。
【0005】
あるいは、使用者が濾材の標準的な寿命の前に濾材を交換したり、標準的な水質よりもよい水質の原水を浄水したり、あるいは標準的な使用量よりも少ない量の原水を浄水したりすることで、浄水性能がまだ低下していないにもかかわらず、濾材を交換することになり、不経済である。
【0006】
そこで、適切な時期に濾材を交換することができるように、濾材の寿命を計測、あるいは予測し、使用者に知らせる機能を有する浄水器が提案されている。
【0007】
例えば、実開平6−77878号公報(特許文献1)には、水道水を止水栓からフィルターに直接導き入れて浄化する浄水装置において、止水栓とカートリッジ式の浄化フィルターが収納されたフィルター収納部とを連通する管路に流量計測手段を設け、浄化フィルターに流れ込んだ水の量を計測して表示させる浄水装置が記載されている。この浄水装置の使用者は、表示された実浄水量を視認することにより、フィルターの交換時期を把握する。
【0008】
また、特開平6−126274号公報(特許文献2)には、浄水器の浄水側通水路での積算流量の測定を可能にするために、浄水通路に浄水が滞留しないように構成された浄水器が記載されている。
【0009】
また、特開2004−17031号公報(特許文献3)には、流量センサを備え、この流量センサにより浄化ユニットに流している水量を検知し、浄水可能な許容流量以上の水量の場合に報知手段により報知する浄水管理ユニットが記載されている。また、圧力センサを備え、圧力センサと演算装置により浄化ユニットに流している水量を検知し、浄水可能な許容流量以上の水量の場合に報知手段により報知する浄水管理ユニットが記載されている。
【0010】
また、特開2007−75747号公報(特許文献4)には、フィルターを通過した総水量を計算する通過水量計算手段と、通過水量計算手段が計算した通過水量を表示する通過水量表示手段とを備える浄水器が記載されている。
【0011】
また、特開2008−110327号公報(特許文献5)には、濾材で処理した浄水の通水を検知し、流量を計測する流量計と、計測した流量を表示する表示部とを備える浄水器が記載されている。
【0012】
また、特開平9−66207号公報(特許文献6)には、濾過フィルターの前後の流路中に圧力センサを組み込んでそれぞれの圧力を測定し、差圧から、濾過フィルターの使用中の圧力損失を検出する浄水装置が記載されている。この浄水装置は、濾過フィルターの使用開始後の経過時間または濾過フィルターの圧力損失が設定値を超えると、濾過フィルターの交換が必要である旨を表示するように構成されている。
【0013】
なお、特開平9−206503号公報(特許文献7)には、フィルターの圧力損失や水量低下を抑えてフィルターの寿命を長くする液体清浄化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実開平6−77878号公報
【特許文献2】特開平6−126274号公報
【特許文献3】特開2004−17031号公報
【特許文献4】特開2007−75747号公報
【特許文献5】特開2008−110327号公報
【特許文献6】特開平9−66207号公報
【特許文献7】特開平9−206503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、積算水量の規定値は、水道水の標準的な水質を想定して決められているものであり、同じ積算水量でも、浄化前の原水の水質によって、実際の濾材寿命、すなわち、実質的な濾材寿命が変化する。
【0016】
例えば、標準的な水質よりも水質の悪い原水を浄化した場合、積算水量が規定値に達する前に濾材寿命に達する。逆に、標準的な水質よりも水質のよい原水を浄化した場合、積算水量が規定値に達した後も、濾材の浄水性能が低下せず、引き続き同じ濾材を使用することが可能である。
【0017】
また、同じ原水を浄化する場合でも、季節により原水の水質が変化する場合は、積算水量の規定値を一意に定めることができない。
【0018】
また、特開平9−66207号公報(特許文献6)に記載の浄水装置のように、濾過フィルターの使用開始後の経過時間または濾過フィルターの圧力損失に基づいて、濾材の寿命を正確に予測することは難しい。
【0019】
そこで、この発明の目的は、原水の水質に応じて、濾材の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明に従った浄水器は、濾材と、水量検知部と、水圧検知部と、演算部とを備える。
【0021】
濾材は、原水を通過させて浄水にするものである。水量検知部は、濾材を通過する水量を検知するものである。水圧検知部は、濾材の原水側の水圧、または、濾材の原水側の水圧と濾過水側の水圧との差圧を検知するものである。演算部は、水量検知部によって検知される水量と水圧検知部によって検知される水圧または差圧との比に基づいて濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0022】
濾材により原水が濾過されるときの水の水量と、水圧または差圧との関係は、次の式1の濾過方程式で表すことができる(水科篤郎・桐栄良三編、「化学工学概論」、産業図書、1979年、P.276)。
【0023】
【数1】

ただし、水量(単位時間当りの濾液量)をFr、水圧または差圧(濾過圧)をPr、濾過面積(通水路断面の面積)をA、原水(濾液)の抵抗をμ、濾滓(濾材を目詰まりさせる物質)の抵抗をRc、濾材の抵抗をRmとする。この式を変形させると、式2となる。
【0024】
【数2】

すなわち、水量Frと濾過圧Prとの比(Fr/Pr)は、濾過面積A、原水の抵抗μ、濾滓の抵抗Rc、濾材の抵抗Rmに依存する。ここで、濾過面積Aと濾材の抵抗Rmは定数であり、原水の抵抗μもほぼ一定と考えられるので、水量Frと濾過圧Prの比(Fr/Pr)の変化は、ほぼ濾滓の抵抗Rcにのみ依存する。
【0025】
したがって、式2により、濾滓の抵抗Rc、すなわち、濾材の詰まり具合が大きくなると、水量Frと濾過圧Prの比、ここでは水量Fr/濾過圧Prが小さくなることがわかる。
【0026】
濾滓の抵抗Rcがある限界値より大きくなると、濾材が目詰まりして、使用可能でなくなる、すなわち、濾過時間(動作時間)が濾材の寿命に達する。濾滓の抵抗Rcが大きくなると、検知される水量Fr/濾過圧Prの値が小さくなる。このように、水量Fr/濾過圧Prの値を検知することによって、濾滓の抵抗Rcの大きさを検知して、濾材の目詰まりの程度から濾材の使用可能な期間の残余、すなわち、濾材の寿命を算出することができる。
【0027】
このように、浄水器の水量検知部が濾材を通過する水量Frを検知し、水圧検知部が濾材の原水側の濾過圧Prを検知して、演算部が、水量検知部によって検知される水量Frと水圧検知部によって検知される濾過圧Prとの比に基づいて濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることによって、原水の水質に応じて、実際の濾材の使用可能期間を予測することができる。
【0028】
このようにすることにより、原水の水質に応じて、濾材の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器を提供することができる。
【0029】
特に、濾過圧Prが水圧と濾過水側の水圧との差圧である場合、すなわち、浄水器の水量検知部が濾材を通過する水量Frを検知し、水圧検知部が濾材の原水側の水圧と濾過水側の水圧との差圧を検知する場合には、演算部が、水量検知部によって検知される水量Frと水圧検知部によって検知される差圧との比に基づいて濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることによって、濾材の濾過水側の気圧が大気圧でない場合にも、濾材にかかる圧力に基づいて、原水の水質に応じて、濾材の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器を提供することができる。なお、濾材の濾過水側の気圧が大気圧でない場合とは、例えば、水位が高い場合や、濾材以外のフィルターなど圧損となるものが配置されている場合などである。
【0030】
この発明に従った浄水器は、濾材の使用開始後に水が濾材を通過した累積濾過時間を検知する累積濾過時間検知部を備えることが好ましい。
【0031】
演算部は、累積濾過時間検知部によって所定の累積濾過時間が検知されたときに水量検知部が検知する水量と水圧検知部が検知する水圧または差圧との比と、累積濾過時間検知部によって検知された累積濾過時間との組を作成し、複数の組に基づいて濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0032】
浄水器の濾過時間の経過とともに、濾材は目詰まりする。濾材の目詰まりによって、水量と水圧または差圧との比(Pr/Fr)の値は、濾過時間の経過とともに徐々に小さくなる。
【0033】
図1は、水量と水圧または差圧の比と、累積濾過時間との関係を模式的に示す図である。図1に示すように、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を水量/(水圧または差圧)として、水量Frと濾過圧Prの比の値をプロットして線で結ぶと単調減少のグラフとなる。
【0034】
そこで、水量/(水圧または差圧)が所定の値(Fr/Prt)より小さくなると濾材寿命(Tot)に達している、例えば、カートリッジ交換時期、あるいは逆洗時期である等と定義した場合、図1に破線で示すように、その所定の値(Fr/Prt)まで上述のグラフの線を延長することで、濾材の使用可能な期間の残余、すなわち、現在(T)から濾材寿命までの濾過時間(Tor)をより正確に予測することができる。
【0035】
なお、上記の説明では、水量と水圧または差圧との比として水量/(水圧または差圧)を用いているが、(水圧または差圧)/水量を用いてもよい。(水圧または差圧)/水量を用いる場合には、濾過時間の経過とともに濾材の目詰まりによって値が徐々に大きくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を(水圧または差圧)/水量として、複数の(水圧または差圧)/水量の値をプロットして線で結ぶと、単調増加のグラフとなる。この場合には、(水圧または差圧)/水量がある決められた値より大きくなると濾材寿命に達していると定義すればよい。
【0036】
この発明に従った浄水器は、当該浄水器の使用開始後に経過した累積経過時間を検知する累積経過時間検知部を備えることが好ましい。
【0037】
演算部は、累積経過時間検知部によって所定の累積経過時間が検知されたときに水量検知部が検知する水量と水圧検知部が検知する水圧または差圧との比と、累積濾過時間検知部によって検知された累積濾過時間と、累積経過時間検知部によって検知された累積経過時間との組を作成し、複数の組に基づいて濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0038】
累積経過時間は、累積濾過時間の増加とともに、値が大きくなる。
【0039】
図2は、累積濾過時間と累積経過時間との関係を模式的に示す図である。図2に示すように、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を累積経過時間として、検知された複数の累積濾過時間と累積経過時間の組をプロットして線で結ぶと、単調増加のグラフとなる。
【0040】
そこで、水圧または差圧と水量との比と累積濾過時間とを用いて濾材の使用可能な期間を算出し、図2に示すように、算出された濾材の使用可能な期間の終期(Tot)までグラフの線を延長することで、濾材の使用可能な期間の終期(Tot)までの累積経過時間(Tet)を予測することができる。また、現在(T)から濾材寿命までの累積経過時間の残余(Ter)をより正確に予測することができる。
【0041】
この発明に従った浄水器においては、演算部は、第1累積濾過時間演算行程と、第2累積濾過時間演算行程と、第3累積濾過時間演算行程とを行うことによって、濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0042】
第1累積濾過時間演算行程においては、累積濾過時間をxとし、累積濾過時間xが検知されたときに水量検知部が検知する水量と水圧検知部が検知する水圧または差圧との比をy1とし、xとy1との複数の組について最小二乗法を用いて、y1をxの近似関数としてy1=f1(x)の形で表す。
【0043】
第2累積濾過時間演算行程においては、第1累積濾過時間演算行程で表された近似関数において、濾材の原水側の水量と水圧または差圧との比の所定の値をy1に代入して濾材の原水側の水量と水圧または差圧との比が所定の値になるときのxを求める。
【0044】
第3累積濾過時間演算行程においては、第2累積濾過時間演算行程で求められたxから、累積濾過時間検知部によって検知された最大の累積濾過時間を減算する。
【0045】
このようにすることにより、濾材の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの濾過時間をより正確に予測することができる。
【0046】
この発明に従った浄水器は、当該浄水器の使用開始後に経過した累積経過時間を検知する累積経過時間検知部を備えることが好ましい。
【0047】
演算部は、第1累積経過時間演算行程と、第2累積経過時間演算行程と、第3累積経過時間演算行程とを行うことによって、濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0048】
第1累積経過時間演算行程においては、累積濾過時間をxとし、累積濾過時間xが検知されたときに累積経過時間検知部が検知する累積経過時間をy2とし、xとy2との複数の組について最小二乗法を用いて、y2をxの近似関数としてy2=f2(x)の形で表す。
【0049】
第2累積経過時間演算行程においては、第1累積経過時間演算行程で表された近似関数において、第2累積濾過時間演算行程で求められたxを代入してy2を求める。
【0050】
第3累積経過時間演算行程においては、第2累積経過時間演算行程で求められたy2から、累積経過時間検知部によって検知された最大の累積経過時間を減算する第3累積経過時間演算行程とを行なう。
【0051】
このようにすることにより、濾材の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの累積経過時間をより正確に予測することができる。
【0052】
この発明に従った浄水器においては、演算部は、所定の時間間隔をあけて水量検知部によって検知される水量と水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比の平均に基づいて、濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0053】
水量検知部と水圧検知部が、それぞれ1回だけ計測を行う場合、検知される水量や水圧または差圧の誤差が大きくても、その値を使わざるを得ない。そこで、所定の時間間隔をあけて水量検知部によって検知される水量と水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比の平均を用いることで、誤差を相殺させる、あるいは、相対誤差が大きいと思われる値、例えば、比較的小さな値を用いずに、濾材の使用可能な期間の残余を算出することができる。
【0054】
この発明に従った浄水器においては、水量検知部によって検知される水量と水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比の平均は、所定の時間間隔をあけて水量検知部によって検知される水量と水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比のうち、水圧検知部によって検知される水圧または差圧が所定の値以上の大きさの複数の比の平均であることが好ましい。
【0055】
水圧検知部によって所定の間隔をあけて検知された複数の水圧または差圧の平均を用いても、比較的小さな値では、求められる濾材の使用可能な期間の残余の誤差が大きい場合がある。そこで、相対誤差が大きいと思われる比較的小さな値を用いずに、濾材の使用可能な期間の残余を算出することによって、より正確に濾材の使用可能な期間の残余を算出することができる。
【0056】
この発明に従った浄水器は、報知部を備えることが好ましい。報知部は、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下であることを使用者に報知するように構成されていることが好ましい。
【0057】
濾材の使用可能な期間の残余が0になった後は、浄水器は浄水を供給することができない、また、濾材の洗浄や交換にはある程度の時間がかかる。濾材の洗浄や交換を行っている間、浄水器は浄水を供給することができない。そのため、濾材の使用可能な期間の残余が0になった後に濾材の洗浄や交換を行うと、濾材の使用可能な期間の残余が0になる前に濾材の洗浄や交換を行う場合と比較して、浄水器が浄水を供給することができない期間が長くなる。
【0058】
そこで、報知部が、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下であることを使用者に報知するように構成されていることにより、使用者は、濾材の使用可能な期間の残余が0になるまでの間に、濾材を洗浄したり、交換したりする時期を決定することができる。
【0059】
このようにすることにより、浄水器が浄水を供給することができない期間を比較的短くすることができる。
【0060】
この発明に従った浄水器は、報知部と、濾材を洗浄する洗浄部とを備えることが好ましい。洗浄部は、使用者によって洗浄剤を供給され、洗浄剤を用いて濾材を洗浄することが可能であるように構成されていることが好ましい。報知部は、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、洗浄部に洗浄剤を供給するように使用者に報知するように構成されていることが好ましい。
【0061】
このようにすることにより、使用者は、濾材の使用可能な期間の残余が0になるまでの間に、濾材を洗浄したり、交換したりする時期を決定することができる。また、浄水器が浄水を供給することができない期間を比較的短くすることができる。さらに、洗浄部が洗浄剤を用いて濾材を洗浄することによって、濾材を効果的に洗浄することができる。
【0062】
この発明に従った浄水器は、報知部と、濾材を洗浄する洗浄部とを備えることが好ましい。洗浄部は、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に濾材の洗浄を行うように構成されていることが好ましい。報知部は、濾材の洗浄を行った後に算出された濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、使用者に濾材の交換が必要であることを報知するように構成されていることが好ましい。
【0063】
濾材の洗浄を行った後に算出された濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合には、濾材に洗浄不可能な汚れ成分が堆積していると考えられる。このような場合には、さらに濾材を洗浄しても、汚れ成分が除去されないと考えられる。そこで、報知部が、濾材の洗浄を行った後に算出された濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、使用者に濾材の交換が必要であることを報知するように構成されていることにより、使用者は、洗浄しても汚れ成分を除去することができなくなった濾材を交換することができる。
【0064】
この発明に従った浄水器は、報知部と、濾材を洗浄する洗浄部とを備えることが好ましい。洗浄部は、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に濾材の洗浄を行うように構成されていることが好ましい。報知部は、濾材の洗浄を行う前に算出された濾材の使用可能な期間の残余と濾材の洗浄を行った後に算出された濾材の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合に、使用者に濾材の交換が必要であることを報知するように構成されていることが好ましい。
【0065】
濾材の洗浄を行う前に算出された濾材の使用可能な期間の残余と濾材の洗浄を行った後に算出された濾材の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合には、濾材を洗浄しても、濾材に堆積された汚れ成分が除去されていない。このような場合には、濾材に洗浄不可能な汚れ成分が堆積していると考えられる。そこで、報知部は、濾材の洗浄を行う前に算出された濾材の使用可能な期間の残余と濾材の洗浄を行った後に算出された濾材の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合に、使用者に濾材の交換が必要であることを報知するように構成されている。このようにすることにより、使用者は、洗浄しても汚れ成分を除去することができなくなった濾材を交換することができる。
【0066】
この発明に従った浄水器は、濾材への原水の供給を停止するための原水供給停止部を備えることが好ましい。原水供給停止部は、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材への原水の供給を停止するように構成されていることが好ましい。
【0067】
濾材に汚れ成分が堆積して、濾材の使用可能な期間の残余がある程度よりも短くなっているときに、濾材に原水を供給すると、濾材に加えられる水圧が、濾材の使用可能な期間の残余が長い場合と比較して、大きくなる。濾材に加えられる水圧が大きくなると、濾材が損傷される場合がある。濾材が損傷されると、原水に濾材を通過させても、原水から細菌など除去されるべき物質を除去することができなくなる。そこで、原水供給停止部は、濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材への原水の供給を停止するように構成されていることによって、濾材の損傷を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0068】
以上のように、この発明によれば、原水の水質に応じて、濾材の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】水量と水圧または差圧の比と、累積濾過時間との関係を模式的に示す図である。
【図2】累積濾過時間と累積経過時間との関係を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る浄水器の全体を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る浄水器の全体を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る浄水器の全体を模式的に示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図9】本発明の第4実施形態に係る浄水器の全体を模式的に示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図11】本発明の第5実施形態に係る浄水器の全体を模式的に示す図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図13】本発明の第6実施形態に係る浄水器の全体を模式的に示す図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図15】本発明の第7実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図16】本発明の第8実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図17】本発明の第9実施形態に係る浄水器の制御処理を順に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0071】
(第1実施形態)
図3に示すように、この発明の第1実施形態の浄水器1は、浄水・原水切換部21と、水量検知部として水量計測部22と、水圧検知部として水圧計測部23と、カートリッジ式の濾材29を収容するカートリッジ装着部24と、累積濾過時間検知部25と、メモリ26と、演算部27と、表示部28とを備える。
【0072】
浄水器1は、濾材29が内蔵されたカートリッジを定期的に交換することで浄水性能を維持するカートリッジ方式を採用している。
【0073】
浄水・原水切換部21は、図示しない切換レバー等により、浄水器1が浄水を出力する浄水モードと、原水を出力する原水モードとを浄水器1の使用者が選択するとともに、浄水が出力されている、すなわち、浄水モードでかつ水が流れている場合にのみ、浄水出力信号を累積濾過時間検知部25に出力する。
【0074】
水量計測部22は、累積濾過時間検知部25から計測命令信号が入力されると、浄水器1の通水路内の原水側の水量を計測し、計測された水量値をメモリ26に出力する。なお、水量計測部22としては、流量センサなどを用いることができる。また、水量計測部22は、定流量弁を用いるなどして、浄水器1内の単位時間当たりの流量をほぼ一定にすることを含み、その場合は、その一定値と原水を通水路内に供給する時間の長さとに基づいて、濾材を通過する水量を算出することができる。
【0075】
水圧計測部23は、累積濾過時間検知部25からの計測命令信号が入力されると、浄水器通水路内の原水側の水圧を計測し、計測された水圧値をメモリ26に出力する。
【0076】
なお、水量計測部22及び水圧計測部23は、1回の計測命令信号の受信で、指定された計測時間間隔(≪指定された濾過時間間隔)で、複数回、水量及び水圧を計測してもよい。
【0077】
カートリッジ装着部24には、図示しないカートリッジが装着されている。カートリッジ装着部24は、カートリッジ内部の中空糸膜や限外濾過膜(UF膜)等の濾材29により、原水を濾過し浄水を生成する。また、カートリッジの取り替え時に自動的にリセット命令が出力され、累積濾過時間検知部25内の累積濾過時間とメモリ26内のデータがリセットされる。あるいは、カートリッジ装着部24は、カートリッジ取り替え時に、図示しないリセットボタンを使用者が押すことで、リセット命令が出力される構造にしてもよい。
【0078】
累積濾過時間検知部25は、浄水・原水切換部21から出力される浄水出力信号が受信されている場合、すなわち、原水が濾材29によって濾過されて浄水が出力されている場合にのみ、現カートリッジの使用開始時からの累積濾過時間を計測し、メモリ26に出力する。なお、この累積濾過時間は、カートリッジ装着部24からのリセット信号を受信した時点でリセットされる。
【0079】
累積濾過時間検知部25はまた、指定された濾過時間間隔で、水量計測部22と水圧計測部23に対し、計測命令信号を出力し、水量と水圧の計測を促す。
【0080】
メモリ26は、水量計測部22、水圧計測部23、累積濾過時間検知部25からそれぞれ出力された水量と水圧との比として水量/水圧と、累積濾過時間の組を格納する。なお、水量と水圧は、それぞれ同じ数で複数格納してもよい。
【0081】
演算部27は、メモリ26にデータが追加されたときに、メモリ26に格納されている、各濾過時間間隔で計測された2組以上の水量/水圧、及び累積濾過時間の組から、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間を算出し、表示部28に出力する。
【0082】
表示部28は、演算部27から出力された、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間、すなわち、濾材の使用可能な期間の残余を入力し、表示する。濾材の使用可能な期間の残余の求め方は後述する。
【0083】
以上のように構成された浄水器1の動作を説明する。
【0084】
図4に示すように、ステップS11では、メモリ26に格納されている水量、及び水圧のデータから、式3により水量/水圧を算出する。
【0085】
【数3】

ただし、i=1,2,…,Ni、Niは指定された濾過時間間隔でメモリ26に格納されたデータの数(>1)、Fr[i]は指定された濾過時間間隔ごとに計測されたi番目の水量、Pr[i]は指定された濾過時間間隔ごとに計測されたi番目の水圧、Frr[i]は指定された濾過時間間隔ごとに計測されたi番目の水量/水圧である。
【0086】
ステップS11の処理を、指定された濾過時間間隔でメモリ26に格納されたデータの数だけ繰り返す。
【0087】
あるいは、ステップS11では、指定された計測時間間隔で、指定された回数だけ水量と水圧の計測が行われた場合は、式4により水量/水圧を算出する。
【0088】
【数4】

ただし、j=1,2,…,Nj、Njは指定された計測時間間隔でメモリ26に格納された水量/水圧の数(>1)、Fr[i][j]は指定された濾過時間間隔におけるi番目で、指定された計測時間間隔におけるj番目の水量、Pr[i][j]は指定された濾過時間間隔におけるi番目で、指定された計測時間間隔におけるj番目の水圧である。
【0089】
あるいは、ステップS11ではさらに、水圧が所定値以上の組のみに対して水量/水圧を算出する場合は、式5と式6により、水量/水圧を算出する。
【0090】
【数5】

【数6】

ただし、Prlは水圧の所定値(下限値)、Nkは指定された計測時間間隔でメモリ26に格納された水量/水圧の組の中で水圧が所定値以上の組の数、fif(a,b,c)は、判定式aが真であればbの値、偽であればcの値を出力する関数である。
【0091】
なお、式5でNk=0となった場合は、水圧の所定値を下げてNkを再計算するか、あるいは、i番目のデータ(水量/水圧)は、いずれも誤差が大きいので無効と判断して、i番目のデータを以後の計算に用いないようにしてもよい。
【0092】
次にステップS12では、複数の累積濾過時間、水量/水圧の組((To[1],Frr[1]),(To[2],Frr[2]),…(To[Ni],Frr[Ni]))を、入力xを累積濾過時間、出力yを水量/水圧とする関数(曲線)y=f1(x)で近似する。ステップS12は、第1累積濾過時間演算行程の一例である。
【0093】
ただし、To[i]はi番目の累積濾過時間、y=f1(x)は入力xを累積濾過時間、出力yを水量/水圧とする近似関数である。
【0094】
次に、ステップS13では、式7により、カートリッジ使用開始時(前回のカートリッジ交換時)から、(今回の)カートリッジ交換時までの全濾過時間を算出する。ステップS13は、第2累積濾過時間演算行程の一例である。
【0095】
【数7】

ただし、Totは(カートリッジ使用開始時からカートリッジ交換時までの)全濾過時間、Frrtはカートリッジ交換時における水量/水圧である。なお、Frrtは、カートリッジ性能を保つことができる水量/水圧の下限値を表し、カートリッジの種類に応じて決定され、予めメモリ26に格納されている。
【0096】
次に、ステップS14では、式8により、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間を算出する。ステップS14は、第3累積濾過時間演算行程の一例である。
【0097】
【数8】

ただし、Torは現時点からカートリッジ交換までの濾過時間である。このようにして、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間を予測することができる。
【0098】
なお、Torが0以下になった場合は、既にカートリッジ寿命が尽きていることを意味するので、表示部28で、その旨を表示する。
【0099】
ここで、y=f1(x)の具体的な関数式について考察する。
【0100】
まず、入力を濾過時間To、出力を濾滓の抵抗Rcと濾材の抵抗Rmを足し合わせた濾過抵抗R(R=Rc+Rm)とする近似関数をfR(x)で表すと、式9になる。
【0101】
【数9】

式9を式2に代入すると、式10になる。
【0102】
【数10】

よって近似関数y=f1(x)は、式11になる。
【0103】
【数11】

例えば、濾材としてセラミックMF膜を用いた場合の、定水量濾過時における、濾過時間と濾過抵抗の関係は、式12のような指数関数で近似できることが知られている(都築佑太著、岐阜大学水質安全研究室修士論文「粒径の異なる微粒子群が膜ろ過抵抗に与える影響の評価」、2007年)。
【0104】
【数12】

ただし、a>0、b>0とする。式12を式11に代入すると、式13になる。
【0105】
【数13】

よって、計測された複数の累積濾過時間、水量/水圧の組より、最小二乗法を用いて、係数a,bを算出することで、f1(x)の関数式を一意に定めることができる。
【0106】
セラミックMF膜以外の濾材を用いた場合でも、実験等により、fR(x)の式を求めることで、f1(x)の式を明らかにすることができる。
【0107】
ただし、式12は、定水量濾過時、かつ原水の水質が一定という条件の下での式であるため、実際の浄水器の使用状況によっては、厳密には式13を満たさない場合が考えられる。
【0108】
しかし、濾過時間と水量/水圧の関係は必ず単調減少になるという点において、式13から大きくずれることはないともいえる。
【0109】
さらに、濾過時間が経過するほど、グラフの線の延長度合いが小さくなってくるので、濾材寿命算出時の誤差が小さくなる。
【0110】
第1実施形態の浄水器1は、カートリッジ方式の浄水器であるが、逆洗による濾材再生方式の浄水器にも有効である。
【0111】
逆洗方式の浄水器では、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間の代わりに、現時点から逆洗による濾材再生が必要となるまでの濾過時間を予測することができる。
【0112】
さらに、逆洗直後の水量及び水圧を計測し、水量/水圧を求めることで、逆洗による濾材29の再生度合いを評価することもできる。
【0113】
例えば、逆洗直後の水量/水圧が所定値より小さければ、さらに念入りに逆洗を行い、それでも所定値より大きくならなければ、濾材の寿命と判断し、濾材、あるいは浄水器自体の交換を促すこともできる。
【0114】
以上のように、第1実施形態の浄水器1は、濾材29と、水量計測部22と、水圧計測部23と、演算部27とを備える。
【0115】
濾材29は、原水を通過させて浄水にするものである。水量計測部22は、濾材29を通過する水量を検知するものである。水圧計測部23は、濾材29の原水側の水圧を検知するものである。演算部27は、水量計測部22によって検知される水量と水圧計測部23によって検知される水圧との比に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0116】
このようにすることにより、原水の水質に応じて、濾材29の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器1を提供することができる。
【0117】
また、第1実施形態の浄水器1は、濾材29の使用開始後に水が濾材29を通過した累積濾過時間を検知する累積濾過時間検知部25を備える。
【0118】
演算部27は、累積濾過時間検知部25によって所定の累積濾過時間が検知されたときに水量計測部22が検知する水量と水圧計測部23が検知する水圧との比と、累積濾過時間検知部25によって検知された累積濾過時間との組を作成し、複数の組に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0119】
浄水器1の濾過時間の経過とともに、濾材29は目詰まりする。濾材29の目詰まりによって、水量と水圧との比(Pr/Fr)の値は、濾過時間の経過とともに徐々に小さくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を水量/水圧として、水量Frと水圧Prの比の値をプロットして線で結ぶと、単調減少のグラフとなる。
【0120】
そこで、水量/水圧が所定の値より小さくなると濾材寿命に達している、例えば、カートリッジ交換時期、あるいは逆洗時期である等と定義した場合、その所定の値まで上述のグラフの線を延長することで、濾材29の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの濾過時間をより正確に予測することができる。
【0121】
なお、上記の説明では、水量と水圧との比として水量/水圧を用いているが、水圧/水量を用いてもよい。水圧/水量を用いる場合には、濾過時間の経過とともに濾材29の目詰まりによって値が徐々に大きくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を水圧/水量として、複数の水圧/水量の値をプロットして線で結ぶと、単調増加のグラフとなる。この場合には、水圧/水量がある決められた値より大きくなると濾材寿命に達していると定義すればよい。
【0122】
また、第1実施形態の浄水器1においては、演算部27は、第1累積濾過時間演算行程と、第2累積濾過時間演算行程と、第3累積濾過時間演算行程とを行うことによって、濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0123】
第1累積濾過時間演算行程においては、累積濾過時間をxとし、累積濾過時間xが検知されたときに水量計測部22が検知する水量と水圧計測部23が検知する水圧との比をyとし、xとyとの複数の組について最小二乗法を用いて、yをxの近似関数としてy=f1(x)の形で表す。
【0124】
第2累積濾過時間演算行程においては、第1累積濾過時間演算行程で表された近似関数において、濾材29の原水側の水量と水圧との比の所定の値をyに代入して濾材29の原水側の水量と水圧との比が所定の値になるときのxを求める。
【0125】
第3累積濾過時間演算行程においては、第2累積濾過時間演算行程で求められたxから、累積濾過時間検知部によって検知された最大の累積濾過時間を減算する。
【0126】
このようにすることにより、濾材29の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの濾過時間をより正確に予測することができる。
【0127】
また、第1実施形態の浄水器1においては、演算部27は、所定の時間間隔をあけて水量計測部22によって検知される水量と水圧計測部23によって検知される水圧との複数の比の平均に基づいて、濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0128】
水量計測部22と水圧計測部23が、それぞれ1回だけ計測を行う場合、検知される水量や水圧の誤差が大きくても、その値を使わざるを得ない。そこで、所定の時間間隔をあけて水量計測部22によって検知される水量と水圧計測部23によって検知される水圧との複数の比の平均を用いることで、誤差を相殺させる、あるいは、相対誤差が大きいと思われる値、例えば、比較的小さな値を用いずに、濾材29の使用可能な期間の残余を算出することができる。
【0129】
また、第1実施形態の浄水器1においては、水量計測部22によって検知される水量と水圧計測部23によって検知される水圧との複数の比の平均は、所定の時間間隔をあけて水量計測部22によって検知される水量と水圧計測部23によって検知される水圧との複数の比のうち、水圧計測部23によって検知される水圧が所定の値以上の大きさの複数の比の平均であることが好ましい。
【0130】
水圧計測部23によって所定の間隔をあけて検知された複数の水圧の平均を用いても、比較的小さな値では、求められる濾材29の使用可能な期間の残余の誤差が大きい場合がある。そこで、相対誤差が大きいと思われる比較的小さな値を用いずに、濾材29の使用可能な期間の残余を算出することによって、より正確に濾材29の使用可能な期間の残余を算出することができる。
【0131】
(第2実施形態)
第1実施形態の浄水器1では現時点からカートリッジ交換までの濾過時間、すなわち、原水が濾材29を通過する時間を予測していたが、第2実施形態の浄水器では、浄水器の使用時と未使用時とに関わらず、浄水器の使用開始後に経過した累積経過時間も加味することで、カートリッジ交換時期を予測することができる。例えば、今から何日後に、さらには何年何月何日にカートリッジ交換を行えばよいかを予測することができる。
【0132】
図5に示すように、第2実施形態の浄水器2が第1実施形態の浄水器1と異なる点としては、累積経過時間検知部35と、演算部37と、表示部38とを備える。浄水器2のその他の構成は、第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0133】
累積経過時間検知部35は、現カートリッジの使用開始時から経過時間を計測する。累積経過時間検知部35は、浄水器未使用時、すなわち、浄水器2から浄水も原水も排出されない時間も含めた累積経過時間を計測する。なお、この累積経過時間は、カートリッジ装着部24からのリセット信号を受信した時点でリセットされる。
【0134】
演算部37は、メモリ26に格納されている複数の水量/水圧、累積濾過時間、及び累積経過時間の組から、カートリッジ交換時期を算出し、出力する。
【0135】
表示部38は、演算部37から出力されたカートリッジ交換時期を入力し、表示する。
【0136】
なお、第1実施形態の浄水器1と同一の処理部に対しては、第1実施形態と同じ番号を付けるとともに、詳細説明を省略する。
【0137】
以上のように構成される第2実施形態の浄水器2の動作について説明する。
【0138】
図6に示すように、ステップS11からステップS14は、第1実施形態の演算部27で行われるステップS11からステップS14と同様である。
【0139】
ステップS25では、複数の累積濾過時間、累積経過時間の組((To[1],Te[1]),(To[2],Te[2]),…(To[Ni],Te[Ni]))を、入力xを累積濾過時間、出力yを累積経過時間とする関数(曲線)y=f2(x)で近似する。近似関数は、(To[1],Te[1])=(0,0)を通るようにする。ステップS25は第1累積経過時間演算行程の一例である。
【0140】
ただし、Te[i]はi番目の累積経過時間、y=f2(x)は入力xを累積濾過時間、出力yを累積経過時間とする近似関数である。
【0141】
なお、濾過時間と経過時間はほぼ比例すると考えられるので、y=f2(x)の関数式として、原点を通る1次関数(y=axの形式で表される一次関数であって、a>0とする)で近似するとよい。
【0142】
ステップS26では、式14により、カートリッジ使用開始時から、カートリッジ交換時までの全経過時間を算出する。ステップS26は、第2累積経過時間演算行程の一例である。
【0143】
【数14】

ただし、カートリッジ使用開始時から、カートリッジ交換時までの全経過時間をTetとする。
【0144】
ステップS27では、式15により、現時点からカートリッジ交換までの経過時間を算出する。ステップS27は、第3累積経過時間演算行程の一例である。
【0145】
【数15】

ただし、現時点からカートリッジ交換までの経過時間をTerとする。
【0146】
このようにして、現時点からカートリッジ交換までの経過時間を予測することができる。
【0147】
なお、Terの値が0以下になった場合は、既にカートリッジ寿命が尽きていることを意味するので、表示部38で、その旨を表示する。
【0148】
以上のように、第2実施形態の浄水器2は、当該浄水器2の使用開始後に経過した累積経過時間を検知する累積経過時間検知部35を備える。
【0149】
演算部37は、累積経過時間検知部35によって所定の累積経過時間が検知されたときに水量計測部22が検知する水量と水圧計測部23が検知する水圧との比と、累積濾過時間検知部25によって検知された累積濾過時間と、累積経過時間検知部35によって検知された累積経過時間との組を作成し、複数の組に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0150】
累積経過時間は、累積濾過時間の増加とともに、値が大きくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を累積経過時間として、検知された複数の累積濾過時間と累積経過時間の組をプロットして線で結ぶと、単調増加のグラフとなる。
【0151】
そこで、水圧と水量との比と累積濾過時間とを用いて濾材29の使用可能な期間を算出し、算出された濾材29の使用可能な期間の終期までグラフの線を延長することで、濾材29の使用可能な期間の終期までの累積経過時間を予測することができる。また、現在から濾材寿命までの累積経過時間の残余をより正確に予測することができる。
【0152】
また、第2実施形態の浄水器2においては、演算部37は、第1累積経過時間演算行程と、第2累積経過時間演算行程と、第3累積経過時間演算行程とを行うことによって、濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0153】
第1累積経過時間演算行程においては、累積濾過時間をxとし、累積濾過時間xが検知されたときに累積経過時間検知部35が検知する累積経過時間をyとし、xとyとの複数の組について最小二乗法を用いて、yをxの近似関数としてy=f2(x)の形で表す。
【0154】
第2累積経過時間演算行程においては、第1累積経過時間演算行程で表された近似関数において、第2累積濾過時間演算行程で求められたxを代入してyを求める。
【0155】
第3累積経過時間演算行程においては、第2累積経過時間演算行程で求められたyから、累積経過時間検知部35によって検知された最大の累積経過時間を減算する第3累積経過時間演算行程とを行なう。
【0156】
このようにすることにより、濾材29の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの累積経過時間をより正確に予測することができる。
【0157】
(第3実施形態)
図7に示すように、この発明の第3実施形態の浄水器3は、浄水・原水切換部21と、水量検知部として水量計測部22と、水圧検知部として差圧計測部43と、カートリッジ式の濾材29を収容するカートリッジ装着部24と、累積濾過時間検知部25と、メモリ26と、演算部27と、表示部28とを備える。
【0158】
浄水器3は、第1実施形態の浄水器1と同様に、濾材29が内蔵されたカートリッジを定期的に交換することで浄水性能を維持するカートリッジ方式を採用している。
【0159】
浄水・原水切換部21は、図示しない切換レバー等により、浄水器3が浄水を出力する浄水モードと、原水を出力する原水モードとを浄水器3の使用者が選択するとともに、浄水が出力されている、すなわち、浄水モードでかつ水が流れている場合にのみ、浄水出力信号を累積濾過時間検知部25に出力する。
【0160】
水量計測部22は、累積濾過時間検知部25から計測命令信号が入力されると、浄水器3の通水路内の原水側の水量を計測し、計測された水量値をメモリ26に出力する。
【0161】
差圧計測部43は、累積濾過時間検知部25からの計測命令信号が入力されると、浄水器通水路内の濾材29の原水側の水圧と濾過水側の水圧との差圧を計測し、計測された差圧値をメモリ26に出力する。
【0162】
なお、水量計測部22及び差圧計測部43は、1回の計測命令信号の受信で、指定された計測時間間隔(≪指定された濾過時間間隔)で、複数回、水量及び差圧を計測してもよい。
【0163】
カートリッジ装着部24には、図示しないカートリッジが装着されている。カートリッジ装着部24は、カートリッジ内部の中空糸膜や限外濾過膜(UF膜)等の濾材29により、原水を濾過し浄水を生成する。また、カートリッジの取り替え時に自動的にリセット命令が出力され、累積濾過時間検知部25内の累積濾過時間とメモリ26内のデータがリセットされる。あるいは、カートリッジ装着部24は、カートリッジ取り替え時に、図示しないリセットボタンを使用者が押すことで、リセット命令が出力される構造にしてもよい。
【0164】
累積濾過時間検知部25は、浄水・原水切換部21から出力される浄水出力信号が受信されている場合、すなわち、原水が濾材29によって濾過されて浄水が出力されている場合にのみ、現カートリッジの使用開始時からの累積濾過時間を計測し、メモリ26に出力する。なお、この累積濾過時間は、カートリッジ装着部24からのリセット信号を受信した時点でリセットされる。
【0165】
累積濾過時間検知部25はまた、指定された濾過時間間隔で、水量計測部22と差圧計測部43に対し、計測命令信号を出力し、水量と差圧の計測を促す。
【0166】
メモリ26は、水量計測部22、差圧計測部43、累積濾過時間検知部25からそれぞれ出力された水量と差圧との比として水量/差圧と、累積濾過時間の組を格納する。なお、水量と差圧は、それぞれ同じ数で複数格納してもよい。
【0167】
演算部27は、メモリ26にデータが追加されたときに、メモリ26に格納されている、各濾過時間間隔で計測された2組以上の水量/差圧、及び累積濾過時間の組から、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間を算出し、表示部28に出力する。
【0168】
表示部28は、演算部27から出力された、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間、すなわち、濾材の使用可能な期間の残余を入力し、表示する。濾材の使用可能な期間の残余の求め方は後述する。
【0169】
以上のように構成された浄水器3の動作を説明する。
【0170】
図8に示すように、ステップS31では、メモリ26に格納されている水量、及び差圧のデータから、式3により水量/差圧を算出する。
【0171】
【数3】

ただし、i=1,2,…,Ni、Niは指定された濾過時間間隔でメモリ26に格納されたデータの数(>1)、Fr[i]は指定された濾過時間間隔ごとに計測されたi番目の水量、Pr[i]は指定された濾過時間間隔ごとに計測されたi番目の差圧、Frr[i]は指定された濾過時間間隔ごとに計測されたi番目の水量/差圧である。
【0172】
ステップS31の処理を、指定された濾過時間間隔でメモリ26に格納されたデータの数だけ繰り返す。
【0173】
あるいは、ステップS31では、指定された計測時間間隔で、指定された回数だけ水量と差圧の計測が行われた場合は、式4により水量/差圧を算出する。
【0174】
【数4】

ただし、j=1,2,…,Nj、Njは指定された計測時間間隔でメモリ26に格納された水量/差圧の数(>1)、Fr[i][j]は指定された濾過時間間隔におけるi番目で、指定された計測時間間隔におけるj番目の水量、Pr[i][j]は指定された濾過時間間隔におけるi番目で、指定された計測時間間隔におけるj番目の差圧である。
【0175】
あるいは、ステップS31ではさらに、差圧が所定値以上の組のみに対して水量/差圧を算出する場合は、式5と式6により、水量/差圧を算出する。
【0176】
【数5】

【数6】

ただし、Prlは差圧の所定値(下限値)、Nkは指定された計測時間間隔でメモリ26に格納された水量/差圧の組の中で差圧が所定値以上の組の数、fif(a,b,c)は、判定式aが真であればbの値、偽であればcの値を出力する関数である。
【0177】
なお、式5でNk=0となった場合は、差圧の所定値を下げてNkを再計算するか、あるいは、i番目のデータ(水量/差圧)は、いずれも誤差が大きいので無効と判断して、i番目のデータを以後の計算に用いないようにしてもよい。
【0178】
次にステップS32では、複数の累積濾過時間、水量/差圧の組((To[1],Frr[1]),(To[2],Frr[2]),…(To[Ni],Frr[Ni]))を、入力xを累積濾過時間、出力yを水量/差圧とする関数(曲線)y=f1(x)で近似する。ステップS32は、第1累積濾過時間演算行程の一例である。
【0179】
ただし、To[i]はi番目の累積濾過時間、y=f1(x)は入力xを累積濾過時間、出力yを水量/差圧とする近似関数である。
【0180】
次に、ステップS33では、式7により、カートリッジ使用開始時(前回のカートリッジ交換時)から、(今回の)カートリッジ交換時までの全濾過時間を算出する。ステップS33は、第2累積濾過時間演算行程の一例である。
【0181】
【数7】

ただし、Totは(カートリッジ使用開始時からカートリッジ交換時までの)全濾過時間、Frrtはカートリッジ交換時における水量/差圧である。なお、Frrtは、カートリッジ性能を保つことができる水量/差圧の下限値を表し、カートリッジの種類に応じて決定され、予めメモリ26に格納されている。
【0182】
次に、ステップS34では、式8により、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間を算出する。ステップS34は、第3累積濾過時間演算行程の一例である。
【0183】
【数8】

ただし、Torは現時点からカートリッジ交換までの濾過時間である。このようにして、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間を予測することができる。
【0184】
なお、Torが0以下になった場合は、既にカートリッジ寿命が尽きていることを意味するので、表示部28で、その旨を表示する。
【0185】
ここで、y=f1(x)の具体的な関数式について考察する。
【0186】
まず、入力を濾過時間To、出力を濾滓の抵抗Rcと濾材の抵抗Rmを足し合わせた濾過抵抗R(R=Rc+Rm)とする近似関数をfR(x)で表すと、式9になる。
【0187】
【数9】

式9を式2に代入すると、式10になる。
【0188】
【数10】

よって近似関数y=f1(x)は、式11になる。
【0189】
【数11】

例えば、濾材としてセラミックMF膜を用いた場合の、定水量濾過時における、濾過時間と濾過抵抗の関係は、式12のような指数関数で近似できることが知られている(都築佑太著、岐阜大学水質安全研究室修士論文「粒径の異なる微粒子群が膜ろ過抵抗に与える影響の評価」、2007年)。
【0190】
【数12】

ただし、a>0、b>0とする。式12を式11に代入すると、式13になる。
【0191】
【数13】

よって、計測された複数の累積濾過時間、水量/差圧の組より、最小二乗法を用いて、係数a,bを算出することで、f1(x)の関数式を一意に定めることができる。
【0192】
セラミックMF膜以外の濾材を用いた場合でも、実験等により、fR(x)の式を求めることで、f1(x)の式を明らかにすることができる。
【0193】
ただし、式12は、定水量濾過時、かつ原水の水質が一定という条件の下での式であるため、実際の浄水器の使用状況によっては、厳密には式13を満たさない場合が考えられる。
【0194】
しかし、濾過時間と水量/差圧の関係は必ず単調減少になるという点において、式13から大きくずれることはないともいえる。
【0195】
さらに、濾過時間が経過するほど、グラフの線の延長度合いが小さくなってくるので、濾材寿命算出時の誤差が小さくなる。
【0196】
第3実施形態の浄水器3は、カートリッジ方式の浄水器であるが、逆洗による濾材再生方式の浄水器にも有効である。
【0197】
逆洗方式の浄水器では、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間の代わりに、現時点から逆洗による濾材再生が必要となるまでの濾過時間を予測することができる。
【0198】
さらに、逆洗直後の水量及び差圧を計測し、水量/差圧を求めることで、逆洗による濾材29の再生度合いを評価することもできる。
【0199】
例えば、逆洗直後の水量/差圧が所定値より小さければ、さらに念入りに逆洗を行い、それでも所定値より大きくならなければ、濾材の寿命と判断し、濾材、あるいは浄水器自体の交換を促すこともできる。
【0200】
以上のように、第3実施形態の浄水器3は、濾材29と、水量計測部22と、差圧計測部43と、演算部27とを備える。
【0201】
濾材29は、原水を通過させて浄水にするものである。水量計測部22は、濾材29を通過する水量を検知するものである。差圧計測部43は、濾材29の原水側の差圧を検知するものである。演算部27は、水量計測部22によって検知される水量と差圧計測部43によって検知される差圧との比に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0202】
このようにすることにより、原水の水質に応じて、濾材29の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器3を提供することができる。
【0203】
特に、演算部27が、水量計測部22によって検知される水量Frと差圧計測部43によって検知される差圧との比に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることによって、濾材29の濾過水側の気圧が大気圧でない場合にも、濾材29にかかる圧力に基づいて、原水の水質に応じて、濾材29の使用可能期間の残余を予測することが可能な浄水器3を提供することができる。なお、濾材29の濾過水側の気圧が大気圧でない場合とは、例えば、水位が高い場合や、濾材29以外のフィルターなど圧損となるものが配置されている場合などである。
【0204】
また、第3実施形態の浄水器3は、濾材29の使用開始後に水が濾材29を通過した累積濾過時間を検知する累積濾過時間検知部25を備える。
【0205】
演算部27は、累積濾過時間検知部25によって所定の累積濾過時間が検知されたときに水量計測部22が検知する水量と差圧計測部43が検知する差圧との比と、累積濾過時間検知部25によって検知された累積濾過時間との組を作成し、複数の組に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0206】
浄水器3の濾過時間の経過とともに、濾材29は目詰まりする。濾材29の目詰まりによって、水量と差圧との比(Pr/Fr)の値は、濾過時間の経過とともに徐々に小さくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を水量/差圧として、水量Frと差圧Prの比の値をプロットして線で結ぶと、単調減少のグラフとなる。
【0207】
そこで、水量/差圧が所定の値より小さくなると濾材寿命に達している、例えば、カートリッジ交換時期、あるいは逆洗時期である等と定義した場合、その所定の値まで上述のグラフの線を延長することで、濾材29の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの濾過時間をより正確に予測することができる。
【0208】
なお、上記の説明では、水量と差圧との比として水量/差圧を用いているが、差圧/水量を用いてもよい。差圧/水量を用いる場合には、濾過時間の経過とともに濾材29の目詰まりによって値が徐々に大きくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を差圧/水量として、複数の差圧/水量の値をプロットして線で結ぶと、単調増加のグラフとなる。この場合には、差圧/水量がある決められた値より大きくなると濾材寿命に達していると定義すればよい。
【0209】
また、第3実施形態の浄水器3においては、演算部27は、第1累積濾過時間演算行程と、第2累積濾過時間演算行程と、第3累積濾過時間演算行程とを行うことによって、濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0210】
第1累積濾過時間演算行程においては、累積濾過時間をxとし、累積濾過時間xが検知されたときに水量計測部22が検知する水量と差圧計測部43が検知する差圧との比をyとし、xとyとの複数の組について最小二乗法を用いて、yをxの近似関数としてy=f1(x)の形で表す。
【0211】
第2累積濾過時間演算行程においては、第1累積濾過時間演算行程で表された近似関数において、濾材29の原水側の水量と差圧との比の所定の値をyに代入して濾材29の原水側の水量と差圧との比が所定の値になるときのxを求める。
【0212】
第3累積濾過時間演算行程においては、第2累積濾過時間演算行程で求められたxから、累積濾過時間検知部によって検知された最大の累積濾過時間を減算する。
【0213】
このようにすることにより、濾材29の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの濾過時間をより正確に予測することができる。
【0214】
また、第3実施形態の浄水器3においては、演算部27は、所定の時間間隔をあけて水量計測部22によって検知される水量と差圧計測部43によって検知される差圧との複数の比の平均に基づいて、濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていることが好ましい。
【0215】
水量計測部22と差圧計測部43が、それぞれ1回だけ計測を行う場合、検知される水量や差圧の誤差が大きくても、その値を使わざるを得ない。そこで、所定の時間間隔をあけて水量計測部22によって検知される水量と差圧計測部43によって検知される差圧との複数の比の平均を用いることで、誤差を相殺させる、あるいは、相対誤差が大きいと思われる値、例えば、比較的小さな値を用いずに、濾材29の使用可能な期間の残余を算出することができる。
【0216】
また、第3実施形態の浄水器3においては、水量計測部22によって検知される水量と差圧計測部43によって検知される差圧との複数の比の平均は、所定の時間間隔をあけて水量計測部22によって検知される水量と差圧計測部43によって検知される差圧との複数の比のうち、差圧計測部43によって検知される差圧が所定の値以上の大きさの複数の比の平均であることが好ましい。
【0217】
差圧計測部43によって所定の間隔をあけて検知された複数の差圧の平均を用いても、比較的小さな値では、求められる濾材29の使用可能な期間の残余の誤差が大きい場合がある。そこで、相対誤差が大きいと思われる比較的小さな値を用いずに、濾材29の使用可能な期間の残余を算出することによって、より正確に濾材29の使用可能な期間の残余を算出することができる。
【0218】
第3実施形態の浄水器3のその他の構成と効果は、第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0219】
(第4実施形態)
第3実施形態の浄水器3では現時点からカートリッジ交換までの濾過時間、すなわち、原水が濾材29を通過する時間を予測していたが、第4実施形態の浄水器では、浄水器の使用時と未使用時とに関わらず、浄水器の使用開始後に経過した累積経過時間も加味することで、カートリッジ交換時期を予測することができる。例えば、今から何日後に、さらには何年何月何日にカートリッジ交換を行えばよいかを予測することができる。
【0220】
図9に示すように、第4実施形態の浄水器4が第3実施形態の浄水器3と異なる点としては、累積経過時間検知部35と、演算部37と、表示部38とを備える。浄水器4のその他の構成は、第3実施形態の浄水器3と同様である。
【0221】
累積経過時間検知部35は、現カートリッジの使用開始時から経過時間を計測する。累積経過時間検知部35は、浄水器未使用時、すなわち、浄水器4から浄水も原水も排出されない時間も含めた累積経過時間を計測する。なお、この累積経過時間は、カートリッジ装着部24からのリセット信号を受信した時点でリセットされる。
【0222】
演算部37は、メモリ26に格納されている複数の水量/差圧、累積濾過時間、及び累積経過時間の組から、カートリッジ交換時期を算出し、出力する。
【0223】
表示部38は、演算部37から出力されたカートリッジ交換時期を入力し、表示する。
【0224】
なお、第3実施形態の浄水器3と同一の処理部に対しては、第3実施形態と同じ番号を付けるとともに、詳細説明を省略する。
【0225】
以上のように構成される第4実施形態の浄水器4の動作について説明する。
【0226】
図10に示すように、ステップS41からステップS44は、第3実施形態の演算部27で行われるステップS31からステップS34と同様である。
【0227】
ステップS45では、複数の累積濾過時間、累積経過時間の組((To[1],Te[1]),(To[2],Te[2]),…(To[Ni],Te[Ni]))を、入力xを累積濾過時間、出力yを累積経過時間とする関数(曲線)y=f2(x)で近似する。近似関数は、(To[1],Te[1])=(0,0)を通るようにする。ステップS45は第1累積経過時間演算行程の一例である。
【0228】
ただし、Te[i]はi番目の累積経過時間、y=f2(x)は入力xを累積濾過時間、出力yを累積経過時間とする近似関数である。
【0229】
なお、濾過時間と経過時間はほぼ比例すると考えられるので、y=f2(x)の関数式として、原点を通る1次関数(y=axの形式で表される一次関数であって、a>0とする)で近似するとよい。
【0230】
ステップS46では、式14により、カートリッジ使用開始時から、カートリッジ交換時までの全経過時間を算出する。ステップS46は、第2累積経過時間演算行程の一例である。
【0231】
【数14】

ただし、カートリッジ使用開始時から、カートリッジ交換時までの全経過時間をTetとする。
【0232】
ステップS47では、式15により、現時点からカートリッジ交換までの経過時間を算出する。ステップS47は、第3累積経過時間演算行程の一例である。
【0233】
【数15】

ただし、現時点からカートリッジ交換までの経過時間をTerとする。
【0234】
このようにして、現時点からカートリッジ交換までの経過時間を予測することができる。
【0235】
なお、Terの値が0以下になった場合は、既にカートリッジ寿命が尽きていることを意味するので、表示部38で、その旨を表示する。
【0236】
以上のように、第4実施形態の浄水器4は、当該浄水器4の使用開始後に経過した累積経過時間を検知する累積経過時間検知部35を備える。
【0237】
演算部37は、累積経過時間検知部35によって所定の累積経過時間が検知されたときに水量計測部22が検知する水量と差圧計測部43が検知する差圧との比と、累積濾過時間検知部25によって検知された累積濾過時間と、累積経過時間検知部35によって検知された累積経過時間との組を作成し、複数の組に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0238】
累積経過時間は、累積濾過時間の増加とともに、値が大きくなる。すなわち、横軸を累積濾過時間とし、縦軸を累積経過時間として、検知された複数の累積濾過時間と累積経過時間の組をプロットして線で結ぶと、単調増加のグラフとなる。
【0239】
そこで、差圧と水量との比と累積濾過時間とを用いて濾材29の使用可能な期間を算出し、算出された濾材29の使用可能な期間の終期までグラフの線を延長することで、濾材29の使用可能な期間の終期までの累積経過時間を予測することができる。また、現在から濾材寿命までの累積経過時間の残余をより正確に予測することができる。
【0240】
また、第4実施形態の浄水器4においては、演算部37は、第1累積経過時間演算行程と、第2累積経過時間演算行程と、第3累積経過時間演算行程とを行うことによって、濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。
【0241】
第1累積経過時間演算行程においては、累積濾過時間をxとし、累積濾過時間xが検知されたときに累積経過時間検知部35が検知する累積経過時間をyとし、xとyとの複数の組について最小二乗法を用いて、yをxの近似関数としてy=f2(x)の形で表す。
【0242】
第2累積経過時間演算行程においては、第1累積経過時間演算行程で表された近似関数において、第2累積濾過時間演算行程で求められたxを代入してyを求める。
【0243】
第3累積経過時間演算行程においては、第2累積経過時間演算行程で求められたyから、累積経過時間検知部35によって検知された最大の累積経過時間を減算する第3累積経過時間演算行程とを行なう。
【0244】
このようにすることにより、濾材29の使用可能な期間の残余、すなわち、現在から濾材寿命までの累積経過時間をより正確に予測することができる。
【0245】
第4実施形態の浄水器4のその他の構成と効果は、第3実施形態の浄水器3と同様である。
【0246】
(第5実施形態)
図11に示すように、第5実施形態の浄水器5は、浄水・原水切換部21と、水量検知部として水量計測部22と、水圧検知部として水圧計測部23と、カートリッジ式の濾材29を収容するカートリッジ装着部24と、累積濾過時間検知部25と、メモリ26と、演算部27と、表示部28と、報知部51とを備える。
【0247】
浄水器5は、第1実施形態の浄水器1と同様に構成されている。浄水器5の各部材は、浄水器1の各部材と同様に構成されている。浄水器5が浄水器1と異なる点としては、浄水器5は、報知部51を備える。
【0248】
報知部51は、演算部27から信号を受信して、使用者に報知を行う。報知は、音や光、振動等によって行われる。報知部51は、演算部27から出力された、現時点からカートリッジ交換までの濾過時間、すなわち、濾材29の使用可能な期間の残余についての情報を使用者に報知する。
【0249】
浄水器5のその他の構成は浄水器1と同様である。
【0250】
以上のように構成された浄水器5の動作を説明する。
【0251】
図12に示すように、ステップS51では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であるかどうかを判断する。演算部27は、第1実施形態と第2実施形態のいずれの方法で濾材29の使用可能な期間の残余を求めてもよい。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であれば、ステップS52に進む。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下でなければ、ステップS51に戻る。
【0252】
ステップS52では、演算部27は、報知部51に制御信号を送信して、使用者に、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下であることを報知させる。
【0253】
なお、第5実施形態の浄水器5では、水量計測部22によって検知される水量Frと水圧計測部23によって検知される水圧との比に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されているように説明したが、第3実施形態の浄水器3のように、水量計測部22によって検知される水量Frと、濾材29の原水側の水圧および濾過水側の水圧との差圧とによって濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていてもよい。
【0254】
以上のように、第5実施形態の浄水器5は、報知部51を備える。報知部51は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下であることを使用者に報知するように構成されている。
【0255】
濾材29の使用可能な期間の残余が0になった後は、浄水器5は浄水を供給することができない、また、濾材29の洗浄や交換にはある程度の時間がかかる。濾材29の洗浄や交換を行っている間、浄水器5は浄水を供給することができない。そのため、濾材29の使用可能な期間の残余が0になった後に濾材29の洗浄や交換を行うと、濾材29の使用可能な期間の残余が0になる前に濾材29の洗浄や交換を行う場合と比較して、浄水器5が浄水を供給することができない期間が長くなる。
【0256】
そこで、報知部51が、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下であることを使用者に報知するように構成されていることにより、使用者は、濾材29の使用可能な期間の残余が0になるまでの間に、濾材29を洗浄したり、交換したりする時期を決定することができる。
【0257】
このようにすることにより、浄水器5が浄水を供給することができない期間を比較的短くすることができる。
【0258】
第5実施形態の浄水器5のその他の構成と効果は、第1実施形態の浄水器1と同様である。
【0259】
(第6実施形態)
図13に示すように、第6実施形態の浄水器6は、浄水・原水切換部21と、水量検知部として水量計測部22と、水圧検知部として水圧計測部23と、カートリッジ式の濾材29を収容するカートリッジ装着部24と、累積濾過時間検知部25と、メモリ26と、演算部27と、表示部28と、報知部51と、洗浄部52とを備える。
【0260】
浄水器6は、第5実施形態の浄水器5と同様に構成されている。浄水器6の各部材は、浄水器5の各部材と同様に構成されている。浄水器6が浄水器5と異なる点としては、浄水器6は、濾材29を洗浄する洗浄部52を備える。
【0261】
洗浄部52は、洗浄剤を用いて濾材29を洗浄することが可能であるように構成されている。使用者は、洗浄部52に洗浄剤を供給することができる。洗浄剤としては、例えば、クエン酸や炭酸水素ナトリウム等を用いることができる。この実施形態においては、洗浄剤を「薬剤」と表す。しかし、洗浄剤は、化学的に合成された薬剤である必要はなく、濾材29の汚れを除去するために用いられるものであれば何でもよい。
【0262】
浄水器6は、例えば、使用者が薬剤を洗浄部52に供給した後、ボタン(図示しない)を押すように構成されている。使用者に押されたボタンは、演算部27に信号を送信する。演算部27は、ボタンから信号を受信することによって、洗浄部52に薬剤が投入されたと判断する。
【0263】
また、報知部51は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、洗浄部52に洗浄剤を供給するように使用者に報知するように構成されている。
【0264】
なお、第6実施形態の浄水器6においても、例えば、水量計測部22によって検知される水量Frと水圧計測部23によって検知される水圧との比に基づいて濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている。また、第3実施形態の浄水器3のように、水量計測部22によって検知される水量Frと、濾材29の原水側の水圧および濾過水側の水圧との差圧とによって濾材29の使用可能な期間の残余を算出するように構成されていてもよい。
【0265】
浄水器6のその他の構成は浄水器5と同様である。
【0266】
以上のように構成された浄水器6の動作を説明する。
【0267】
図14に示すように、ステップS61では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であるかどうかを判断する。演算部27は、第1実施形態と第2実施形態のいずれの方法で濾材29の使用可能な期間の残余を求めてもよい。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であれば、ステップS62に進む。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下でなければ、ステップS61に戻る。
【0268】
ステップS62では、演算部27は、報知部51に制御信号を送信して、使用者に、洗浄部52に薬剤を供給することを促す報知をさせる。
【0269】
ステップS63では、演算部27は、使用者によって洗浄部52に薬剤が供給されたかどうかを確認する。使用者によって洗浄部52に薬剤が供給された場合には、ステップS64に進む。使用者によって洗浄部52に薬剤が供給されていない場合には、ステップS63に戻る。
【0270】
ステップS64では、演算部27が洗浄部52に制御信号を送信して、洗浄部52が濾材29を洗浄するように制御する。ステップS65では、濾材29の洗浄を終了する。
【0271】
以上のように、第6実施形態の浄水器6は、報知部51と、濾材29を洗浄する洗浄部52とを備えることが好ましい。洗浄部52は、使用者によって洗浄剤を供給され、洗浄剤を用いて濾材29を洗浄することが可能であるように構成されている。報知部51は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、洗浄部52に洗浄剤を供給するように使用者に報知するように構成されている。
【0272】
このようにすることにより、使用者は、濾材29の使用可能な期間の残余が0になるまでの間に、濾材29を洗浄したり、交換したりする時期を決定することができる。また、浄水器6が浄水を供給することができない期間を比較的短くすることができる。さらに、洗浄部52が洗浄剤を用いて濾材29を洗浄することによって、濾材29を効果的に洗浄することができる。
【0273】
なお、洗浄部52としては、濾材の洗浄を行う機能があれば、他の方式によるものであってもよい。例えば、浄水を用いて濾材を逆洗したり、原水を用いて濾材表面を洗浄したりする方式などである。また、この場合に薬剤を供給するには、浄水、または、原水の経路中に投入するなどすればよい。
【0274】
第6実施形態の浄水器6のその他の構成と効果は、第5実施形態の浄水器5と同様である。
【0275】
(第7実施形態)
第7実施形態の浄水器は、第6実施形態の浄水器6(図13)と同様に構成されている。以下に、第7実施形態の浄水器の動作について説明する。
【0276】
図15に示すように、ステップS71では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であるかどうかを判断する。演算部27は、第1実施形態と第2実施形態のいずれの方法で濾材29の使用可能な期間の残余を求めてもよい。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であれば、ステップS72に進む。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下でなければ、ステップS71に戻る。
【0277】
ステップS72では、演算部27は洗浄部52に制御信号を送信して、濾材29を洗浄するように制御する。
【0278】
ステップS73では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下であるかどうかを判断するために、濾材29を洗浄した後に計測された水量と水圧(または差圧)との比が所定の値以下であるかどうかを判断する。ここで、差圧とは、濾材29の原水側の水圧と濾過水側の水圧との差圧である。濾材29を洗浄した後に計測された水量と水圧(または差圧)との比が所定の値以下であれば、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である。この場合には、ステップS74に進む。濾材29を洗浄した後に計測された水量と水圧(または差圧)との比が所定の値以下でなければ、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下ではないといえる。この場合には、ステップS71に戻る。
【0279】
ステップS74では、演算部27は、報知部51に制御信号を送信して、使用者に、濾材29を交換する必要があることを報知させる。
【0280】
ステップS75では、演算部27は、濾材29が交換されたかどうかを判断する。濾材29が交換されていれば、濾材29の洗浄の制御処理を終了する。濾材29が交換されていなければ、ステップS75に戻る。
【0281】
以上のように、第7実施形態の浄水器は、報知部51と、濾材29を洗浄する洗浄部52とを備える。洗浄部52は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に濾材29の洗浄を行うように構成されている。報知部51は、濾材29の洗浄を行った後に算出された濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、使用者に濾材29の交換が必要であることを報知するように構成されている。
【0282】
濾材29の洗浄を行った後に算出された濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合には、濾材29に洗浄不可能な汚れ成分が堆積していると考えられる。このような場合には、さらに濾材29を洗浄しても、汚れ成分が除去されないと考えられる。そこで、報知部51が、濾材29の洗浄を行った後に算出された濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、使用者に濾材29の交換が必要であることを報知するように構成されていることにより、使用者は、洗浄しても汚れ成分を除去することができなくなった濾材29を交換することができる。
【0283】
第7実施形態の浄水器のその他の構成と効果は、第6実施形態の浄水器と同様である。
【0284】
(第8実施形態)
第8実施形態の浄水器は、第6実施形態の浄水器6(図13)と同様に構成されている。以下に、第8実施形態の浄水器の動作について説明する。
【0285】
図16に示すように、ステップS81では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であるかどうかを判断する。演算部27は、第1実施形態と第2実施形態のいずれの方法で濾材29の使用可能な期間の残余を求めてもよい。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であれば、ステップS82に進む。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下でなければ、ステップS81に戻る。
【0286】
ステップS82では、演算部27は洗浄部52に制御信号を送信して、濾材29を洗浄するように制御する。
【0287】
ステップS83では、演算部27は、濾材29の洗浄前の濾材29の使用可能な期間の残余と濾材29の洗浄後の濾材29の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下であるかどうかを判断するために、濾材29の洗浄前に計測された水量/水圧(または差圧)と濾材29を洗浄した後に計測された水量/水圧(または差圧)との差が所定の値以下であるかどうかを判断する。ここで、差圧とは、濾材29の原水側の水圧と濾過水側の水圧との差圧である。濾材29の洗浄前に計測された水量/水圧(または差圧)と濾材29を洗浄した後に計測された水量/水圧(または差圧)との差が所定の値以下であれば、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である。この場合には、ステップS84に進む。濾材29の洗浄前に計測された水量/水圧(または差圧)と濾材29を洗浄した後に計測された水量/水圧(または差圧)との差が所定の値以下でなければ、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下ではないといえる。この場合には、ステップS81に戻る。
【0288】
ステップS84では、演算部27は、報知部51に制御信号を送信して、使用者に、濾材29を交換する必要があることを報知させる。
【0289】
ステップS85では、演算部27は、濾材29が交換されたかどうかを判断する。濾材29が交換されていれば、濾材29の洗浄の制御処理を終了する。濾材29が交換されていなければ、ステップS85に戻る。
【0290】
以上のように、第8実施形態の浄水器は、報知部51と、濾材29を洗浄する洗浄部52とを備える。洗浄部52は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に濾材29の洗浄を行うように構成されている。報知部51は、濾材29の洗浄を行う前に算出された濾材29の使用可能な期間の残余と濾材29の洗浄を行った後に算出された濾材29の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合に、使用者に濾材29の交換が必要であることを報知するように構成されている。
【0291】
濾材29の洗浄を行う前に算出された濾材29の使用可能な期間の残余と濾材29の洗浄を行った後に算出された濾材29の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合には、濾材29を洗浄しても、濾材29に堆積された汚れ成分が除去されていない。このような場合には、濾材29に洗浄不可能な汚れ成分が堆積していると考えられる。そこで、報知部51は、濾材29の洗浄を行う前に算出された濾材29の使用可能な期間の残余と濾材29の洗浄を行った後に算出された濾材29の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合に、使用者に濾材29の交換が必要であることを報知するように構成されている。このようにすることにより、使用者は、洗浄しても汚れ成分を除去することができなくなった濾材29を交換することができる。
【0292】
第8実施形態の浄水器のその他の構成と効果は、第6実施形態の浄水器と同様である。
【0293】
(第9実施形態)
第9実施形態の浄水器は、第6実施形態の浄水器6(図13)と同様に構成されている。浄水・原水切換部21(図13)は、原水供給停止部の一例である。以下に、第9実施形態の浄水器の動作について説明する。
【0294】
図17に示すように、ステップS91では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定値A以下であるかどうかを判断する。演算部27は、第1実施形態と第2実施形態のいずれの方法で濾材29の使用可能な期間の残余を求めてもよい。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下であれば、ステップS92に進む。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値以下でなければ、ステップS91に戻る。
【0295】
ステップS92では、演算部27は報知部51に制御信号を送信して、濾材29を洗浄するように使用者に促すための報知をするように制御する。
【0296】
ステップS93では、演算部27は、濾材29の洗浄が実施されていないかどうかを判断する。濾材29の洗浄が実施されていない場合には、ステップS94に進む。濾材29の洗浄が実施されている場合には、ステップS91に戻る。
【0297】
ステップS94では、演算部27は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定値B以下であるかどうかを判断する。所定値Bは、所定値Aよりも小さい値であるとする。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値B以下であれば、ステップS95に進む。濾材29の使用可能な期間の残余が所定値B以下でなければ、ステップS94に戻る。
【0298】
ステップS95では、演算部27は、浄水・原水切換部21に制御信号を送信して、濾材29への原水の供給を停止させる。
【0299】
以上のように、第9実施形態の浄水器は、濾材29への原水の供給を停止するための浄水・原水切換部21を備える。浄水・原水切換部21は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材29への原水の供給を停止するように構成されている。
【0300】
濾材29に汚れ成分が堆積して、濾材29の使用可能な期間の残余がある程度よりも短くなっているときに、濾材29に原水を供給すると、濾材29に加えられる水圧が、濾材29の使用可能な期間の残余が長い場合と比較して、大きくなる。濾材29に加えられる水圧が大きくなると、濾材29が損傷される場合がある。濾材29が損傷されると、原水に濾材29を通過させても、原水から細菌など除去されるべき物質を除去することができなくなる。そこで、浄水・原水切換部21は、濾材29の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、濾材29への原水の供給を停止するように構成されていることによって、濾材29の損傷を防ぐことができる。
【0301】
第9実施形態の浄水器のその他の構成と効果は、第6実施形態の浄水器と同様である。
【0302】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【符号の説明】
【0303】
1,2:浄水器、21:浄水・原水切換部、22:水量計測部、23:水圧計測部、25:累積濾過時間検知部、26:メモリ、27:演算部、29:濾材、35:累積経過時間検知部、37:演算部、38:表示部、43:差圧計測部、51:報知部、52:洗浄部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を通過させて浄水にする濾材と、
前記濾材を通過する水量を検知する水量検知部と、
前記濾材の原水側の水圧、または、前記濾材の原水側の水圧と濾過水側の水圧との差圧を検知する水圧検知部と、
前記水量検知部によって検知される水量と前記水圧検知部によって検知される水圧または差圧との比に基づいて前記濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている演算部とを備える、浄水器。
【請求項2】
前記濾材の使用開始後に水が前記濾材を通過した累積濾過時間を検知する累積濾過時間検知部を備え、
前記演算部は、前記累積濾過時間検知部によって所定の累積濾過時間が検知されたときに前記水量検知部が検知する水量と前記水圧検知部が検知する水圧または差圧との比と、前記累積濾過時間検知部によって検知された累積濾過時間との組を作成し、複数の前記組に基づいて前記濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている、請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
当該浄水器の使用開始後に経過した累積経過時間を検知する累積経過時間検知部を備え、
前記演算部は、前記累積経過時間検知部によって所定の累積経過時間が検知されたときに前記水量検知部が検知する水量と前記水圧検知部が検知する水圧または差圧との比と、前記累積濾過時間検知部によって検知された累積濾過時間と、前記累積経過時間検知部によって検知された累積経過時間との組を作成し、複数の前記組に基づいて前記濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている、請求項2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記演算部は、前記累積濾過時間をxとし、前記累積濾過時間xが検知されたときに前記水量検知部が検知する水量と前記水圧検知部が検知する水圧または差圧との比をy1とし、xとy1との複数の組について最小二乗法を用いて、y1をxの近似関数としてy1=f1(x)の形で表す第1累積濾過時間演算行程と、
前記第1累積濾過時間演算行程で表された近似関数において、前記濾材の原水側の水量と水圧または差圧との比の所定の値をy1に代入して前記濾材の原水側の水量と水圧または差圧との比が所定の値になるときのxを求める第2累積濾過時間演算行程と、
前記第2累積濾過時間演算行程で求められたxから、前記累積濾過時間検知部によって検知された最大の前記累積濾過時間を減算する第3累積濾過時間演算行程とを行なうことによって、前記濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている、請求項2に記載の浄水器。
【請求項5】
当該浄水器の使用開始後に経過した累積経過時間を検知する累積経過時間検知部を備え、
前記演算部は、前記累積濾過時間をxとし、前記累積濾過時間xが検知されたときに前記累積経過時間検知部が検知する累積経過時間をy2とし、xとy2との複数の組について最小二乗法を用いて、y2をxの近似関数としてy2=f2(x)の形で表す第1累積経過時間演算行程と、
前記第1累積経過時間演算行程で表された近似関数において、前記第2累積濾過時間演算行程で求められたxを代入してy2を求める第2累積経過時間演算行程と、
前記第2累積経過時間演算行程で求められたy2から、前記累積経過時間検知部によって検知された最大の累積経過時間を減算する第3累積経過時間演算行程とを行なうことによって、前記濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている、請求項4に記載の浄水器。
【請求項6】
前記演算部は、所定の時間間隔をあけて前記水量検知部によって検知される水量と前記水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比の平均に基づいて、前記濾材の使用可能な期間の残余を算出するように構成されている、請求項1に記載の浄水器。
【請求項7】
前記水量検知部によって検知される水量と前記水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比の平均は、所定の時間間隔をあけて前記水量検知部によって検知される水量と前記水圧検知部によって検知される水圧または差圧との複数の比のうち、前記水圧検知部によって検知される水圧または差圧が所定の値以上の大きさの複数の比の平均である、請求項6に記載の浄水器。
【請求項8】
報知部を備え、
前記報知部は、前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下であることを使用者に報知するように構成されている、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項9】
報知部と、
前記濾材を洗浄する洗浄部とを備え、
前記洗浄部は、使用者によって洗浄剤を供給され、洗浄剤を用いて前記濾材を洗浄することが可能であるように構成され、
前記報知部は、前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、前記洗浄部に洗浄剤を供給するように使用者に報知するように構成されている、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項10】
報知部と、
前記濾材を洗浄する洗浄部とを備え、
前記洗浄部は、前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に前記濾材の洗浄を行うように構成され、
前記報知部は、前記濾材の洗浄を行った後に算出された前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、使用者に前記濾材の交換が必要であることを報知するように構成されている、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項11】
報知部と、
前記濾材を洗浄する洗浄部とを備え、
前記洗浄部は、前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に前記濾材の洗浄を行うように構成され、
前記報知部は、前記濾材の洗浄を行う前に算出された前記濾材の使用可能な期間の残余と前記濾材の洗浄を行った後に算出された前記濾材の使用可能な期間の残余との差が所定の値以下である場合に、使用者に前記濾材の交換が必要であることを報知するように構成されている、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項12】
前記濾材への原水の供給を停止するための原水供給停止部を備え、
前記原水供給停止部は、前記濾材の使用可能な期間の残余が所定の値以下である場合に、前記濾材への原水の供給を停止するように構成されている、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の浄水器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−98331(P2011−98331A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69873(P2010−69873)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】