説明

浄水機器

【課題】飲用水、飲食品の製造用水、農業の潅漑用水、および工業用水の品質要求を満たすために、十分に低い量の懸濁粒子、懸濁微生物および溶解塩類を含むように水を浄化すること。
【解決手段】本発明は、膜を介した気化プロセスによって、農業用潅漑、工業的利用、食品あるいは農業用または医薬品組成物の水和または再水和に適した水を提供するための親水性膜の使用に関する。また、本発明は、海水、汽水および他の種類の汚染水(これに限定されない)を含めた、懸濁または溶解された不純物および固形物を含有している可能性のある水を浄化するための、親水性ポリマーの一層または複数の層で構成された親水性膜を含む浄水機器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、パーベーパレーションによる水の浄化および制御された放出に関し、特に、浄水または汚れた水を潅漑、再水和または飲水に直接使用することを可能にする装置において親水性膜を使用することに関する。
本出願は、特願2000−530466の分割出願である。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
水の浄化方法は公知であり、使用される方法の種類は水中の不純物の性質および量に依存する。例えば、粒子形態の不純物および溶液中の不純物は、ともに水から取り除かれる必要がある。その目的は、飲用水、飲食品の製造用水、農業の潅漑用水、および工業用水の品質要求を満たすために、十分に低い量の懸濁粒子、懸濁微生物および溶解塩類を含むように水を浄化することである。
【0003】
浄水方法は、通常、濾過、蒸留または逆浸透に分類される。従来の粒子濾過法では、織物または不織布のような多孔性構築物を用いて、懸濁無機粒子のような粒状形態の不純物を除去する。非常に小さい粒子を濾過しなければならない場合には、微孔性の高分子膜を使用する。すなわち、その膜は、濾過される微粒子が通過することができない非常に小さな孔を有している。
【0004】
溶解塩類を含有している水溶液は、通常、逆浸透または蒸留によって浄化される。その水溶液が海水または汽水の形態である場合、それらの方法は一般的に脱塩として知られている。逆浸透の方法は、半透膜の向こう側へ、イオン溶液に圧力を加えることによる。加えられた圧力がその溶液の浸透圧より大きな場合、浄水がその溶液と接触していない膜側から集められる。逆浸透膜は水を通過させるが、塩イオンは通過させない。実際にはごく僅かな割合、例えば、1%の海塩は膜を通過する。特許文献1[米国特許第5,547,586号]には、酵素補助膜を利用する海水および汽水の脱塩方法が記載されている。逆浸透とは対照的に、海水または汽水を使用する蒸留方法は、非常に少ない量の懸濁粒子および溶解固形物を含む水を得ることができる。しかしながら、水は蒸発潜熱が高く、これは蒸留方法に高エネルギーの投入を必要とし、従って、一般に、逆浸透方法に比べてより高いコストで作動することを意味する。
【0005】
外科用覆い布または防水性衣料用具におけるような水分増大を防止するため、コポリエーテルエステルエラストマーを単独で使用するか、コポリエーテルエステルエラストマーの疎水性層および親水性層が互いに結合された二重構造膜の一部として使用して水蒸気を示差移動させることができることが特許文献2[米国特許第4,725,481号]によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,547,586号明細書
【特許文献2】米国特許第4,725,481号明細書
【特許文献3】米国特許第4,769,273号明細書
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、概して、空気、または、海水、汽水または他の種類の汚染水(これらに制限されない)を含有する懸濁不純物または溶解不純物を含んでいる可能性がある液体水に含有されていた水蒸気を、水から不純物を取り除くための親水性膜の単一層または複数層に通すことによるパーベーパレーションによって、水を浄化および/または制御放出する方法および装置に関する。
【0008】
親水性膜の単一層または複数層は、支持されていない構造の形態、または、支持材料上にコーティングされるか、または支持材料に接着された構造の形態のいずれかで存在し得る。ここで、親水性膜層は、コポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルブロックポリアミド、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコールのホモポリマーまたはコポリマー、または、それらの混合物であってよい。
【0009】
好ましい親水性膜層は、全厚25ミクロンのフィルムについて、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して測定される、少なくとも400g/m2/24hの透湿度を有する親水性ポリマーの重合体で作製される。さらに好ましい親水性膜層は、全厚25ミクロンのフィルムについて、ASTM E96−95(BW法)に従って、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して測定される、少なくとも3500g/m2/24hの透湿度を有する親水性ポリマーで作製される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】「栽培袋(grow−bag)」中で成長し、従来通りに給水された植物の説明図である。
【図2】「栽培袋」中で成長し、実施例11〜14の灌漑袋(irrigation bags)を使用している植物の説明図である。
【図3】実施例17の実験10および実験12の代表的な開口容器中で成長している植物の説明図である。
【図4】実施例19の実験17の代表的な開口容器中で成長している植物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
本発明は、概して、空気、または、海水、汽水または他の種類の汚染水(これに制限されない)を含有する懸濁不純物または溶解不純物を含んでいる可能性がある液体水に含有されていた水蒸気を、水から不純物を取り除くための親水性膜の単一層または複数層に通すことによるパーベーパレーションによって、水を浄化および/または制御放出する方法および装置に関する。親水性膜の単一層または複数層は、支持されていない構造の形態、あるいは、支持材料上にコーティングされるか、または支持材料に接着された構造の形態のいずれかで存在し得る。
【0012】
パーベーパレーションは、所与の溶媒が非多孔性膜またはコーティングへ浸透し、その膜を通過して移動し、続いて蒸気の形態でその膜またはコーティングの反対の面から放出される工程である。したがって、パーベーパレーションは、生成物が液体ではなく蒸気であるという点で、公知の濾過、蒸留あるいは逆浸透工程とは異なる。溶媒が水である場合、非多孔性の親水性膜はパーベーパレーションに好適である。というのは、水は容易にそのような膜に吸着され、膜を通過して移動し、膜から放出されるからである。その後、植物栽培媒体(growing medium)または栽培室(growth chamber)の空気スペースに水分を供給するような適用分野、乾燥物質の水和、または脱水物質の再水和にこの水蒸気を使用することができる。そうでなければ、液体水としてさらに使用するため、この水蒸気を凝縮することができる。
【0013】
親水性膜
「親水性膜」は、水を吸収する非多孔性膜、すなわち、水を通過させることができる非多孔性膜を意味する。親水性膜を挟んで湿度勾配がある場合、この吸収された水は膜の厚みの中を拡散するか、その反対の面から放出され得る。今後、本明細書において一括して膜と称する親水性膜またはコーティングは、以下に記載のような十分に高い透湿度を特徴とするので、膜を通過した水は、植物の潅漑、および食品、飲料、薬品等の再水和(これに制限されない)を包含する適用分野において直接使用することができる。そのような膜には、同一の親水性ポリマーまたは異なる親水性ポリマー(これに制限されない)を含む材料で作られた、単一または複数の個々の層を含み得る。膜の透湿度が全体として十分に高い限り、この水は、記載した所定の実用的適用分野でのその使用に見合った速度で提供され得る。本明細書に記載された非多孔性膜は、そのような膜を細菌およびウイルスのような微生物を含む任意の粒状不純物が通過することを妨げるように機能する。さらに、本発明に記載の親水性ポリマーで作られた膜は、溶解塩類の通過を著しく低下させるか、妨ぐことを見出した。したがって、パーベーパレーションによって所望の量の浄水を生産するために、淡水だけでなく、懸濁不純物または溶解不純物を含んでいる可能性がある水を使用できることは、海水または汽水(これに制限されない)を含む塩水を、本発明を具体化している装置を介して処理した後、農地の潅漑、および植物成長の維持、および/または環境中への水の制御放出に用いることを可能にする。
【0014】
水が親水性ポリマーで作られた膜を通過してパーベーパレーションする速度は、他の要因とともに、水以外の側の含水量に依存する。したがって、本発明の膜に基づいた潅漑システムは自動調整式であり、本質的に「受動的」であってもよく、乾燥条件下および湿気の少ない条件下で植物により多くの水を供給する。
【0015】
上記の農業用潅漑の適用例について記述したような類似の方法においては、膜の反対側の面に接する水が淡水であるか、懸濁不純物または溶解不純物を含んでいる可能性がある水であるかにかかわらず、本発明による膜を通過した水のパーベーパレーションは、乾燥食品および医薬品等を再水和するのに十分である。例えば、飲料水の製造または産業における使用(これに制限されるものではない)を含む適用分野のような、液状形態の水が必要とされる場合、膜を通過してのパーベーパレーションによって生じた水蒸気を液体水に凝縮することができる。
【0016】
水蒸気透過特性
所与の膜が水を透過する速度を測定する標準的な試験は、以前にはASTM E−96−66−BW法(ASTM E−96−66−Procedure BW)と称され知られていたASTM E−96−95−BW法(ASTM E−96−65−Procedure BW)であり、膜の透湿度(WVTR)を決定するために使用されている。この試験では、「Thwing−Albert Vapometer」とも称される、水不透過性カップに基づいた組立体を使用する。このカップは、上部から約3/4±1/4インチ(19±6mm)まで水を含んでいる。カップの口は、測定される試験材料の水透過膜で水が漏れないように封じ、水面とその膜の間に空隙を残した。BW法では、その後、カップを逆さまにすることによって水が膜と直接接触する。その機器を制御された温度および湿度の試験室内に置き、その後、その膜の外側から特定の速度で空気を吹きつける。実験は2回繰り返し行う。数日間にわたって、カップ、水および膜組立体の重量を測定し、結果を平均する。水が膜を通って透過する速度は、所与の厚み、温度、湿度および風速における組立体の減量の平均値として測定された「透湿度」として示され、それは、単位膜表面積および時間に対する質量損失として表される。ASTM E96−95BW法による膜またはフィルムのWVTRは、一般に、厚み25ミクロンのフィルムについて、空気流速3m/s、気温23℃および相対湿度50%で測定する。
【0017】
本発明を具体化する植物栽培実験の条件下(その条件の選択は以下の実施例15〜19に説明する)で、その膜で作られた灌漑袋を使用して栽培植物に水を供給した。現在までに行った実験では、潅漑袋を通過した10g/24h(70g/m2/24hに相当)の水分移動速度は、1つまたは複数の植物の栽培を維持するのに十分であることがわかった。植物栽培を維持するのに要求されるこの水分移動の速度は、単位時間にわたり実験中に使用された膜の単位表面積を水分が通過した速度として表すことができ、それは、本明細書の目的のために「平均水分移動速度」として報告する。本発明を具体化する植物栽培実験の条件下(ただし、その条件の選択は下記の実施例15〜19で説明する)において、70g/m2/24h以上の平均水分移動速度は、表2〜6に示したように、植物栽培を維持するのに十分であることがわかった。
【0018】
これらの実験で、その灌漑袋の内部から植物栽培媒体および植物根へ膜を介して水分が移動する条件は、潅漑袋の表面での空気移動がないときは、栽培媒体中に埋め込まれた潅漑袋からのものである。これらの条件の下では、水蒸気は拡散によってのみ、潅漑袋の内部から膜を介して栽培媒体へ移動した。
【0019】
親水性ポリマー
本明細書の内容においては、本発明を具体化する機器で使用する親水性膜は親水性ポリマーで作られている。「親水性ポリマー」は、国際標準化機構規格ISO62(アメリカ材料試験協会規格ASTM D 570に相応)によって、室温で液体水に接触している場合に水を吸収するポリマーを意味する。
【0020】
親水性のポリマーは、1種または数種のポリマーのブレンドであってもよい。例えば、親水性ポリマーは、商品名Hytrel(登録商標)でE.I.du Pont de Nemours and Companyから利用可能なポリマーなどの、下記に記述するようなコポリエーテルエステルエラストマーか、2種以上のコポリエーテルエステルエラストマーの混合物、あるいは、商品名PEBAXでフランス、Elf−Atouchem Company of Parisから利用可能なポリマーなどのポリエーテルブロックポリアミド若しくは2種以上のポリエーテルブロックポリアミドの混合物、または、ポリエーテルウレタン若しくはポリエーテルウレタンの混合物、または、ポリビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマー、または、ポリビニルアルコールのホモポリマー若しくはコポリマーの混合物が利用できる。
【0021】
本発明における水蒸気透過用の特に好ましいポリマーは、エステル結合を介してヘッド・トゥ・テール型で結合された非常に多数の反復長鎖エステルユニットおよび短鎖エステルユニットを有する1以上のコポリエーテルエスエルエラストマーまたは2以上のコポリエーテルエステルエラストマーの混合物であって、前記長鎖エステルユニットが次式で表わされ、
【0022】
【化1】

【0023】
前記短鎖エステルユニットが次式で表されるものである。
【0024】
【化2】

【0025】
上式で、
a)Gは、約400〜4000の平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
b)Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基であり、
c)Dは、約250未満の分子量を有するジオールから水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、場合によっては、
d)コポリエーテルエステルは、コポリエーテルエステルの長鎖エステルユニットに結合されたエチレンオキシド基をコポリエーテルエステルの総重量に対して0〜68重量パーセントを含んでおり、
e)コポリエーテルエステルは約25〜80重量パーセントの短鎖エステルユニットを含んでいる。
【0026】
この好ましいポリマーは、薄いが強い膜、フィルムおよびコーティングへ加工するのに好適である。好ましいポリマーであるコポリエーテルエステルエラストマー、およびその製造方法は当該技術分野で知られており、例えば、特許文献2[米国特許第4,725,481号]には3500g/m2/24hrのWVTRを有するコポリエーテルエステルエラストマーが記載されている。また、特許文献3[米国特許第4,769,273号]には400〜2500g/m2/24hrのWVTRを有するコポリエーテルエステルエラストマーが記載されている。両特許公報は引用により本明細書に援用する。
【0027】
このポリマーは、酸化防止剤安定剤、紫外線安定剤、加水分解安定剤、染料または顔料、フィラー、抗菌剤等と混合することができる。
【0028】
本発明の状況において、膜として購入可能な親水性ポリマーを使用することは可能であるが、厚さ25ミクロンのフィルムについて、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して測定された、400g/m2/24hを超えるWVTRを有するコポリエーテルエステルエラストマーを使用することがより好ましい。最も好ましいのは、厚さ25ミクロンのフィルムについて、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して測定された、3500g/m2/24hを超えるWVTRを有する購入可能なコポリエーテルエステルエラストマーで作られた膜を使用することである。
【0029】
親水性高分子膜の製造方法
いくつかの方法によって、親水性ポリマーから任意の所望の厚みを有する膜を製造することができる。フィルム形態の膜を製造するための有用で、よく確立された方法は、市販の押出しラインを用いたポリマーの溶融押出しによるものである。簡単に説明すると、これは、融点より高い温度にポリマーを加熱し、水平または環状の鋳型を通すことによってそれを押出し、次いで、ローラーシステムを用いてフィルムを流延成形するか、溶解物からフィルムをブロー成形することを必要とする。
【0030】
有用な支持体には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス繊維等の水分に対して安定な有機ポリマーおよび無機ポリマーの繊維から造られたものを含めた、水蒸気を透過し得る織紙、不織紙、結合紙、織物、水蒸気に対して透過性のスクリーンが含まれる。支持体は強度を増加させるとともに膜を保護する。支持体は、親水性高分子膜の片側のみに、または両側に配置することができる。支持体を片側のみに配置する場合は、支持体は水源に接しているか、水源から離れうる。一般的に、物理的損傷および/または光による劣化から膜を最良の状態で保護するため、支持体は親水性高分子膜で形成された容器の外側に配置する。
【0031】
親水性高分子膜を使用する本発明の浄水機器は、制限されない任意の形態または形状であり、具体例として、袋、フィルム、パイプ、チューブ等があげられる。
【0032】
本発明の適用分野
親水性膜の主要な発明的概念として確認された浄化能は、いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、懸濁または溶解された不純物および固形物を含みうる水と接触した場合に、コーティングまたは非支持膜の形態で実現され、それは、水などの高次双極分子がナトリウムおよび塩化物などのイオンに比べると膜またはコーティングの反対側に優先的に吸収、移動されるために生じると考えられる。さらに、膜を挟んで湿度勾配がある場合、源水に接触していない側から水が放出され、植物の根に吸収されるか、水和または再水和される製品に吸収され得る。この他には、その水蒸気を凝縮して飲料水、および農業用水、園芸用水、産業用水、および他の用途用水を提供することができる。
【0033】
農業または園芸の適用例:植物または作物栽培用栽培媒体へ水分を供給するためにその膜を使用する場合、膜を通過した源水の種類と関係なく、流入した水蒸気または吸収された水であり得る栽培媒体の含水量を調節する。水源と栽培媒体の間の含水量の勾配は常に平衡に向かっているので、栽培媒体が乾燥している状態では、膜を介した比較的迅速な水移動速度が生じ、栽培媒体に水を供給する。栽培媒体が既に高含水量を有している状態では、水源と栽培媒体の間の膜を介した勾配は平衡に近づいており、膜を介した栽培媒体への水の移動速度は低く、さらに、平衡に到達した場合は、ゼロであり得る。
【0034】
親水性膜の性質によって、水は土の含水量による決定に応じて膜の全表面にわたって透過し、それは膜の表面に沿って無限に可変的であり得る。水が膜を通過する速度および平衡の条件は、特定の栽培条件に応じて調整することができる。例えば、源水の温度を上昇させるか低下させたり、膜の厚みを変更したり、あるいは1つのまたは複数の層のポリマー組成物を変更することによって調整可能である。
【0035】
親水性膜の層でコーティングされた機器は非支持親水性膜を有している機器と同様に作動するが、両機器は、ともに自己調節式水流出システムであり、栽培媒体の含水量に依存して、要求されるように栽培媒体に水を供給する。
【0036】
本明細書の内容においては、「栽培媒体」とは植物の根が成長する媒体である。したがって、「栽培媒体」という用語は、農業、園芸および水耕法に使用されるがこれに制限されない天然に存在する土、または人工的に調整された土を含んでいる。これらの土には、様々な量の砂、沈泥、粘度および腐植土が含まれる。また、「栽培媒体」は、バーミキュライト、パーライト、泥炭コケ、木生シダ樹幹断片、樹皮チップまたは樹皮断片、ヤシガラ断片などの植物の栽培用に使用される他の材料も含むが、これに制限されるものではない。膜は栽培媒体に水蒸気の形態の水分を供給するので、吸湿性を有する栽培媒体材料はより効果的に水蒸気と結合し、かつ貯蔵し、本発明をより効果的に実施することができる。
【0037】
農業灌漑および園芸潅漑における栽培媒体に最も有効に水分を供給するためには、膜は、栽培媒体にできるだけ接近していなければならない。一般的に、接触を最大限にし、日光による劣化からポリマーを保護するため、膜を完全に栽培媒体で覆う。さらに、植物へ水分を供給するため、栽培媒体中の根域に十分に近いところにその膜を設置する必要がある。
【0038】
膜は、支持されていなくてもよく、強度および耐久性を増加させるように支持体上にコーティングされていてもよい。一般的に、機器は、水を充満するための少なくとも1つの開口部を有している。長期間、水分を供給するために、機器は、袋、パイプまたはチューブの形状であると都合がよく、塩類または他の汚染物質の蓄積を防ぐために連続的にまたは定期的に水をフラッシュことができる。水蒸気は膜を優先的に通過し、細菌、ウイルス等のような微生物を含めた、溶解塩および他の物質、並びに無機物または有機物などの懸濁微粒子を後に残す。
【0039】
本発明の農業に関連する実施形態は、植物を栽培し、種子を発芽させる水分を供給すると同時に、有害な塩類だけでなく、種子や植物に有害なカビ、バクテリア、ウイルスなどの病原体も除外することをも含んでいる。これは、根または種子の反対側の水と接触している膜の層上に植物根または種子を置くことにより達成することができる。この他には、種子発芽については、封じた容器などの、親水性膜中に種子を覆き、その容器を水または湿潤させた媒体に接触して置くことができる。これによって、種子が無菌の環境で発芽することが可能となり、病原菌による発病が原因の種子損失を防ぐことができる。
【0040】
加湿または園芸適用例:農業の適用例では、種子、植物または栽培媒体に水分を供給することの他に、さらに、密閉チャンバの湿度を維持するか、または上昇させるために本発明の機器を使用することができる。実例は、農業の適用例において、栽培チャンバ内で植物の周囲の大気に水分を供給する。
【0041】
植物を温室などの密閉栽培チャンバ内で栽培する場合、湿度の増加は有意で有益な効果をもたらし得る。さらに、本発明の膜をエアスペースに部分的または完全に露出し、パーベーパレーションの方法によって湿度を上昇させることができる。その水送達機器の膜は、エアスペースに部分的にまたは完全に接し得る。親水性ポリマーを劣化から保護するため、膜は光を遮断する支持体の層によって覆うことができる。好ましくは、その機器は日よけの下、または暗くした箱内に設置する。
【0042】
農業の適用例では、一般的に、その機器は水を充満するための少なくとも1つの開口部を有するとともに、長期間、水分を供給するために、袋、パイプまたはチューブの形態であるのが都合よく、塩類または他の汚染物質の蓄積を防止するために水を連続的または定期的にフラッシュできるとよい。
【0043】
水和または再水和:本発明の膜を介したパーベーパレーションの方法および浄水機器を使用して、食品、あるいは医薬組成物または農業組成物などの材料を水和または再水和することができる。乾燥または脱水した材料を本発明の親水性膜を含む密封小袋に保持し、その後、空気に含まれている水蒸気、または、海水、汽水または他の種類の汚染水(これに制限されない)を含めた懸濁不純物または溶解不純物を含んでいる可能性がある液体水を使用して、水和または再水和することができる。
【0044】
脱塩:本発明の重要な特徴は、微粒子だけでなく、塩類(これに限定されない)を含めた水に溶解された汚染物質、並びに、油、グリース等(これに限定されない)を含めた水中でエマルジョンの形態で存在する汚染物質をも、その膜が選択的に区別するということである。また、膜は、汚染されたガス状水蒸気および/または液体混合物を浄化するよう機能し得る。選択的識別のこの方法は、室温で、膜を介して加えられる圧力さえなしに行われる。したがって、本発明は、海水逆浸透、汽水逆浸透、電気透析反転、多重効果蒸留、マルチプルステージフラッシュおよび機械的蒸気圧縮システムなどの従来の脱塩システムよりもはるかに低コストで操作することができる機器を用い、海水、汽水または他の水源の汚染水からスタートさせ、空気に含まれる水蒸気、または、農業での直接使用に対して十分低いレベルの残留塩類を含んでいる液体水を用いることを可能にする。
【0045】
要約すると、農地を潅漑する水を浄化し、栽培媒体用の自己調節式潅水手段を供給し、温室などの栽培チャンバのエアスペースを湿潤し、飲料水を提供し、乾燥食品、医薬品等を水和または再水和するために、本発明の浄水機器を介したパーベーパレーションを用いることができる。
【0046】
本発明は、先行技術のシステムと比較すると、より低費用、より少ない設備基盤で操作することができる。栽培媒体あるいは封入チャンバのエアスペースに水分を供給するための装置は液体水の代わりに水蒸気形態の水を放出するので、装置の膜層に供給される汚れた水の圧力は、通常、逆浸透を使用する海水の浄化に必要とされる2500kPaよりはるかに低くてよい。その圧力は、より少量の塩を含む食塩水の逆浸透に必要とされる低圧力よりもさらに低い。一般に、周囲の大気圧を超えて加えられた圧力差は、約1000kPa未満である。高圧は、膜層が水蒸気を放出する速度を増加させ得るが、過度の圧力は自己調節式の平衡をずらし、栽培媒体を過度に湿潤した状態にしてしまう。さらに、高圧では、圧力に耐えるために、厚い膜が必要であるか、または、好ましくは強い支持体が必要である。
【0047】
したがって、典型的には、加える圧力は約250kPaより低く、非常に多くの場合、約100kPaより低い。多くの場合、加える圧力は、水自体の重量により提供される圧力、または、汚れた水を浄水機器に流すために必要とされる圧力より低いかそれ以下であるので、薄い親水性膜または親水性ポリマーのフィルムを使用することができる。
【実施例】
【0048】
(実施例)
以下の実施例では、コポリエーテルエステルAは、テレフタル酸ジメチル30部、アルキレンの含量がエチレン65%およびプロピレン35%で構成されるポリ(アルキレン)グリコール57部、ジメチルイソフタレート9部、ブタンジオール16部(化学量論量)、およびトリメチルトリメリテート0.7部から開始し、特許文献2[米国特許第4,725,481号]に開示された方法に従って作られたポリマーである。コポリエーテルエステルAは、ポリ(エチレンオキシド)グリコールを約37重量%含んでおり、コポリエーテルエステルAから作られたその膜は、室温で約54重量%の水膨潤と、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して、厚み25ミクロンのフィルムにおいて測定された、少なくとも10,000g/m2/24hのWVTRを示す。
【0049】
コポリエーテルエステルBは、テレフタル酸ジメチル44部、アルキレンの含量がエチレン65%およびプロピレン35%で構成されるポリ(アルキレン)グリコール51部、ブタンジオール19部(化学量論量)、トリメチルトリメリテート0.4部から開始し、特許文献2[米国特許第4,725,481号]に開示された方法によって作られたポリマーである。コポリエーテルエステルBは、ポリ(エチレンオキシド)グリコールを約33重量%含んでおり、コポリエーテルエステルBから作られたその膜は、室温で約30重量%の水膨潤と、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して、厚み25ミクロンのフィルムにおいて測定された、少なくとも10,000g/m2/24hのWVTRを示す。
【0050】
コポリエーテルエステルCは、テレフタル酸ジメチル50部、アルキレンの含量がプロピレン85%およびエチレン15%で構成されるポリ(アルキレン)グリコール44部、ブタンジオール21部(化学量論量)、トリメチルトリメリテート0.3部から開始し、特許文献2[米国特許第4,725,481号]に開示された方法によって作られたポリマーである。コポリエーテルエステルCから作られたその膜は、室温で約5重量%の水膨潤と、3m/sの速度で、23℃および相対湿度50%における空気を使用して、厚み25ミクロンのフィルムにおいて測定された、少なくとも2,200g/m2/24hのWVTRを示す。
【0051】
実施例1〜10
実施例の第1セット、実施例1〜10は、水蒸気が浄水機器の親水性膜を通過し、親水性膜が水は通過させるが、塩イオンの通過は妨げることを示す。実施例において、親水性ポリマーであるコポリエーテルエステルAの押出しフィルムで作られた5つの親水性膜袋を海水で満たし、別の親水性ポリマーであるコポリエーテルエステルBの押出しフィルムで作られた5つの親水性膜袋を水道水で満たした。閉じた親水性膜袋をシーリングするためにヒートシーラーを使用した。袋は0.1m2と計算された最大有効表面積を有していた。
【0052】
その袋を室温で無調節の湿度である室内に置いた。試料2、3、5、7、8および9を金属トレー上に直接置いた。水蒸気が表面から放出される速度に影響すると思われる気流または「ウィッキング」の効果をできるだけ示すために、試料1および10はトレー上の薄葉紙の上に置き、試料4および6は、ナイロンメッシュ上に置いた。袋は充填された直後、感触によるとその表面は湿ってきた。完全に袋をシーリングし、各袋の上部表面を空気にさらした。
【0053】
その袋は、1週間にわたって、毎日、計量と視覚的検査が行われ、5から7日の間に袋すべての水が空になるまで、測定重量は毎日減少した。この第1事例では、試験が経験的な指標であったので、水の最初の量、水の種類、表面積、水接触面積およびフィルムの厚さなどのすべての要因を考慮に入れることは困難であった。しかしながら、これら検討すべき点を考慮したところ、類似の表面積に対する「水分損失」の速度に見かけの差はなかった。
【0054】
初めは海水を含んでいたが現在空になっている袋は、大きな結晶として視認し得る白色の塩気のある沈殿物が内側に付着していることがわかった。例えば、実施例5の袋には20gを超える固形物が含まれていた。周囲圧力および周囲温度の下で、1日当たり1平方メートル当たり2リットルを超える水を袋を介してパーベーパレーションした。別の測定からは、パーベーパレーションによって袋から水蒸気が放出されるので、水蒸気を除去するために親水性膜の表面を介して空気の十分に速い流れを与えた場合、コポリエーテルエステルAは、1時間、1平方メートル当たり1リットルを超える水を通過させることが可能であることが示唆された。本来の水の蒸発速度は、袋を通過する水の流動の制限因子であったと考えられる。親水性膜袋の試料1および10は薄葉紙上に置き、親水性膜袋の試料4および6はナイロンメッシュ上に置いたが、それらは、金属トレー上に直接置かれた親水性膜袋よりもいくらも速く水を放出することはなかった。また、ポリマーのより厚いフイルムとより薄いフィルムの間に顕著な差はなかった。
【0055】
実施例の結果を下記の表1に要約する。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例11〜14
実施例の次のセット、実施例11〜14では、脱塩機器における親水性ポリマーで作られた親水性膜使用の可能性を確認した。実施例11および14、12および13をそれぞれ図1および図2に示した。
【0058】
これらの実施例において、「栽培袋(grow−bag)」と称する栽培容器を用いた。「栽培袋」は購入可能であり、トマトなどの植物を戸外で栽培するのに好適である湿性土壌混合物を含んでいる、約100×50×15cmのボリュームの封止されているポリエチレン袋である。「栽培袋」を使用する場合、面積100×50cm、高さ15cmの小型植物床のように機能するように、栽培袋の最も大きい水平表面を地表に置くのが標準的な作業方法である。小さな3つのスリットを上部に切りこみ、苗条および葉が袋の上部から出るようにして、3つのトマト幼苗を「栽培袋」の土中へ植えた。「栽培袋」のポリエチレン材料は、過度の水分の蒸発を防止すると同時に、植物根の周囲に土を保持するのに役立った。短いが活発な栽培期があり、植物健康状態の便利な指標として役立つ実質的な葉面積を有することから、トマト植物を選択した。
【0059】
すべてのトマトが元気であることを確認し、「栽培袋」中に定着することを可能にするために、12のトマト植物すべてに2週間、きれいな井戸水を給水した。その環境は、降雨を遮った屋外栽培に相応するように、カバーされているが加温されておらず、完全に換気された開放性温室であった。実験中、植物はすべて、剪定または整枝を行わず、追加補助せず、完全に自然にまかせて成長させた。3つの植物を各々植えている各「栽培袋」には、以下のように異なった方法によって給水した。
【0060】
実施例11:給水をより確実にするため、きれいな井戸水を、並んだ孔を有する穴を開けた固定(static)ホースを通じて給水した。
【0061】
実施例12:きれいな井戸水を、コポリエーテルエステルAのフィルムで作られた、約直径20cm、長さ40cmの管状親水性膜灌漑袋へ給水した。その後、土の頂部とポリエチレン材料の「栽培袋」の間の場所に、長さ50cmの一端に沿って、その潅漑袋を「栽培袋」内に置いた。
【0062】
実施例13:海水を、コポリエーテルエステルAのフィルムで作られた、約直径20cm、長さ40cmの管状親水性膜潅漑袋へ給水した。実施例13において、土の頂部とポリエチレン材料の「栽培袋」の間の場所に、長さ50cmの一端に沿って、その潅漑袋を「栽培袋」内に置いた。
【0063】
実施例14:海水を、実施例11のように、穴を開けた固定ホースを通じて給水した。
【0064】
親水性膜潅漑袋の表面積は0.25m2と概算した。この表面積は、実施例12および実施例13の3つのトマト植物の成長を維持する水分を提供した。
【0065】
1日目に、上記システムを使用して潅水を開始した。すべての植物は緑で、かつ元気であり、優位な点は区別がつかなかった。実施例11の植物に、毎日、植物が元気に見えるよう維持するのに十分な量を給水した。実施例14の植物には、実施例11と同一の測定された水の量を給水した。コポリエーテルエステルエラストマーで作られた膜潅漑袋を満たしている貯蔵部は、潅漑袋が常に満たされているように、実施例12はきれいな井戸水で、実施例13は海水で毎日いっぱいに満たし続けた。
【0066】
4日目までに、毎日海水を給水された実施例14のすべての植物において、茎および葉に黄斑部が現れた。井戸水を用いた実施例11および実施例12、並び海水を用いた実施例13の間には識別可能な差はなかった。実施例11、12および13のすべての植物は元気であった。
【0067】
21日目に、実施例14の植物は色が黄色くなり、柔らかくなったように見えた。実施例11、12および13の植物は、目に見える斑点または欠陥はなかった。
【0068】
60日を過ぎて直物が完全に成長したとき、実施例11、12および13の植物には果実がなった。その植物は正常な形状、質、さらに色を有していた。実施例14の植物は枯れており、非常に少数で小さく、貧弱な形状の果実がなっていた。コポリエーテルエステルエラストマーから作られた本発明の膜を通した海水を給水した実施例13を含む、実施例11、12および13の植物は、良好な果実を結ぶことができた。実施例11、12または13の植物の果実の数量または品質の間に、識別可能な差は認められなかった。実施例14の果実は、他の植物の果実と対比すると、形状において茶色および黄色の斑点が認められた。
【0069】
実施例12および13のコポリエーテルエステルエラストマーで作られた親水性膜潅漑袋を「一杯に満たす」のに必要な水の量は、著しく天候によって変動した。暑い日は、コポリエーテルエステルエラストマーで作られた親水性膜潅漑袋に0.5リットルの水の追加が必要であり、涼しく湿度の高い日は、潅漑袋をいっぱいに満たす必要はほとんどなかった。これは、膜を介した水のパーベーパレーションが自己調節式であり、親水性膜と接触する大気および土の含水量および温度に依存していたことを示している。実施例12および13では、コポリエーテルエステルエラストマーで作られた膜袋は、土から、さらに植物付近の加湿された大気から植物に水分を供給した。
【0070】
水(測定されなかったが、植物に有害である濃度ではなかったことが明らかであった量の溶解塩を含む)のみが親水性膜を通過してパーベーパレーションすることができ、親水性膜潅漑袋中に残存している海水中の塩類が連続的に濃度増加しているので、実施例13の植物に給水されたコポリエーテルエステルエラストマーで作られた膜潅漑袋中に汚染物および塩分の形成があると思われる。これは、使用される任意の塩水を断続的に流すか、より大きな供給源から連続的に循環する場合、コポリエーテルエステルエラストマーで作られた親水性膜潅漑袋は、実施例11〜14で用いた実験的「季節」よりさらに長期間、植物成長を保持することができ、したがって、供給源水中の塩類の形成を制限することができることを示唆している。
【0071】
実施例11〜14の実験を終えた後に「栽培袋」を切り開いた結果、海水を用いて直接給水した実施例14の「栽培袋」の内容物は、感触によると湿っていた。さらに、これは、栽培媒体が暗色であることから明らかである。ここで、海水を用いて直接給水した後の土は高い塩分含有量を示していた。親水性コポリエーテルエステルエラストマー膜を介して海水を給水した実施例13の「栽培袋」中の土を含めた、実施例11〜13の他の「栽培袋」の内容物は、すべて感触については乾いており、色は薄かった。
【0072】
実施例15〜19
当該の植物に対する水可給性の厳しい条件の下で、本発明の膜を通過して潅漑された多くの植物の栽培可能性を調査するために、さらなる実験を実施した。たとえ非常に厳しい栽培条件を使用したとしても、結果は、本発明の実施形態の1つに従って自己調整の親水性蒸気透過膜の能力を明白に示す。
【0073】
栽培された植物には、トマト、ハツカダイコン、トウモロコシ、モロコシがある。これらの実験では、異なる大きさおよび多孔性のポリプロピレンプラスチック、テラコッタおよび合板で作られた栽培容器を使用した。代表的な実験を図3および図4に示した。実施例15〜19で使用する表土は最大15重量%の水分まで乾燥させ、使用する砂は完全に乾燥した。
【0074】
比較対照として用いられるポリプロピレンプラスチックで作られた栽培容器とともに、テラコッタまたは合板で作られた多孔性の栽培容器をほとんどの実験で使用した。多孔性の栽培容器は、圃場で一般的に見受けられる水の外部損失をシミュレートするために、栽培容器の壁を通って水蒸気を放出させるのに都合がよい。実施例18の実験15を除くすべての実験において、栽培容器の上部は大気に対して開放されており、水蒸気は土の上部から放出することができた。植物は、約80日のほとんどの栽培期間、約30℃の温室環境で試験された。
【0075】
これらの厳しい条件は、実施例11〜14に記載の実験が実施された穏やかな条件とは対照的であった。実施例11〜14では、「栽培袋」容器には湿った土が含まれており、その容器は密閉されたポリエチレン袋であった。実施例15〜19で使用した合板およびテラコッタを作っているより多孔性の容器とは対照的に、「栽培袋」を作ったポリエチレン材料は、これらの栽培容器の壁を介した水蒸気の損失を防いだ。
【0076】
特段の記載がない限り、実施例15〜19で使用する親水性膜潅漑袋は、50ミクロンの厚膜のコポリエーテルエステルBから調製された防水の平らな水平の袋である。すべての親水性膜潅漑袋は、側面へ封入された可撓管が供給されており、この点で、袋は、栽培容器の外部の貯蔵部から一杯に満たすことができた。親水性膜潅漑袋は、特段の記載がない限り、乾燥し施肥された砂、または乾燥し施肥された表土(最大含水量15重量%)の深さ約10cmに埋めた。異なる実験では、親水性膜潅漑袋には、脱イオン水、汽水または海水が種々に含まれていた。すべての事例において、親水性膜潅漑袋は、外部の貯蔵部から可撓管を通じて脱イオン水がいっぱいに満たされていた。
【0077】
植物は、少量の水が満たされた栽培容器内のその場で発芽したか、幼苗として栽培容器へ移植されたかのいずれかである。実験は温室条件下で実施した。試験終了時に、植物を栽培容器から取り出し、栽培媒体を洗浄し、乾燥した。乾燥苗条、根および果実は、別々に計量した。
【0078】
実施例15〜19の栽培実験は約80日後に中止した。各実験の親水性高分子膜を通過した水分移動速度は、毎日、各貯蔵部をいっぱいに満たすのに必要な量を測定することによって決定した。
【0079】
植物が完全なる成長に達し、親水性膜潅漑袋を介したパーベーパレーションによる水分損失速度が安定したならば、親水性高分子膜の単位面積当たりの平均水分移動速度を計算した。
【0080】
実施例15:この実施例では、穀物(トウモロコシ)植物を、実験1、2、3および4で説明した4つの栽培容器中の乾燥し施肥された砂または表土中で、土の下、深さ約10cmに埋められたコポリエーテルエステルBで作られた親水性膜潅漑袋を用いて栽培した。容器は、テラコッタ(実験1および実験3)またはポリプロピレンプラスチック(実験2および実験4)で作った。その親水性膜潅漑袋は、各栽培容器の底に沿って約半分まで拡張した。植物Aは、親水性膜灌漑袋上に直接配置し、植物Bは、潅漑袋の端の上に配置し、植物Cは、栽培容器の一方の端部に潅漑袋から遠ざけて配置して、3つの植物を各容器で栽培した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
苗条と根の重量は、より多孔性のテラコッタ容器(実験1および3)に比べて、ポリプロピレンプラスチック容器(実験2および4)によって、より水分が保持されていることを示している。表土上で栽培された植物(実験1および実験2)は、砂上で栽培された植物(実験3および実験4)より成長がよかった。
【0083】
親水性膜潅漑袋に最も接近して配置され、したがって水源に最も接近していた植物Aは、潅漑袋から最も遠く離れていた植物Cよりもはるかに大きな程度に成長した。これは、親水性膜潅漑袋を通ってパーベーパレーションする水が植物の成長を維持したことを示している。
【0084】
実施例16:実験5、6、7および8で説明した4つの栽培容器において、約7〜10cmの高さの予め発芽させたモロコシ幼苗を、テラコッタ(実験5および実験7)またはポリプロピレンプラスチック(実験6および実験8)の容器中、土の下、深さ約10cmに、コポリエーテルエステルBで作られた親水性膜潅漑袋を埋めた、乾燥し施肥した砂または表土中に移植し、栽培した。その潅漑袋は、各栽培容器の底に沿って約半分に広がっていた。
【0085】
植物Aは親水性膜灌漑袋上に直接配置し、植物Bは潅漑袋の端の上に配置し、植物Cは栽培容器の一方の端部に潅漑袋から遠ざけて配置して、3つの植物を各容器で栽培した。
【0086】
上述の実施例15と同様に、表3に示した苗条および根の重量、並びに平均水分移動速度は、表土で栽培されたモロコシ植物(実験5および実験6)の成長が、砂で栽培した植物(実験7および実験8)よりよかったことを明確に示している。植物Aは最も大きな程度まで成長し、植物Cは最も小さい程度までしか成長せず、これは、親水性膜潅漑袋水源と植物との近接度を反映している。
【0087】
【表3】

【0088】
実施例17:実験9、10、11および12で説明した4つの栽培容器において、約7〜10cmの高さの予め発芽させた穀類(トウモロコシ)幼苗を、テラコッタ容器中、土の下、深さ約10cmに親水性膜潅漑袋を埋めた、乾燥し施肥した表土に移植し、栽培した。親水性膜潅漑袋として、2つの異なる材料、すなわち、実験11に対してはコポリエーテルエステルAを、実験9、10および12に対してはコポリエーテルエステルBを用いた。コポリエーテルエステルAは、コポリエーテルエステルBが30重量%の水を吸収するのに対して、50重量%以上の水を吸収する。したがって、コポリエーテルエステルAは、コポリエーテルエステルBより高い水蒸気透過性を示す。
【0089】
その親水性膜潅漑袋は、実験9および実験11では使用した栽培容器の底に沿って約半分に広がっていたが、実験10および実験12では使用した栽培容器の全底にわたって広がっていた。植物Aは灌漑袋上に直接配置し、植物Bは親水性膜潅漑袋の端の上に配置し、植物Cは実験9および実験11の栽培容器の一方の端部に潅漑袋から遠ざけて配置して、3つの植物を各容器で栽培した。植物はすべて、実験10および実験12で使用される親水性膜潅漑袋の上に直接配置した。
【0090】
実験9と比較した場合、実験10は、親水性膜潅漑袋の表面積の増大による効果を示し、実験11は、高い水蒸気透過性を有する材料の使用による効果を示している。最後に、実験12は、実験10で使用したのに比べてより大きな表面積の親水性膜潅漑袋内で、淡水ではなく海水を使用した結果を示す。
【0091】
これらの実験のトウモロコシ植物に関する苗条および根の重量、並びに水分移動速度の平均値を表4に示す。データは、より大きな表面積の親水性膜潅漑袋を使用することによって(実験10)、栽培条件における顕著な改良が達成できたことを示している。また、標準のコポリエーテルエステルB(実験9)の代わりに、潅漑袋としてより透過性のあるコポリエーテルエステルAを使用することによって(実験11)、より大きな植物の成長が導かれた。実験12は、海水を含んだ袋を介して潅漑した場合においてでさえ、トウモロコシ植物をうまく栽培できたことを示している。
【0092】
【表4】

【0093】
実施例18:実験13、14、および15で説明した3つのテラコッタ栽培容器では、コポリエーテルエステルBで作られ、土の下、深さ約15cmに埋められた親水性膜潅漑袋を用いて、約15cmの高さの予め発芽させた穀類(トウモロコシ)幼苗を栽培した。また、実験16で説明した第4のテラコッタ栽培容器では、実験13、14および15に記載したのと同様の親水性膜潅漑袋を使用して、トマトCelebrityの幼苗を栽培した。その潅漑袋は各栽培容器の全底に沿って拡がった。1つの植物が、親水性膜潅漑袋の上に直接配置され、各容器において成長された。上述の実施例15、16および17に記載された容器(ボリューム15×15×60cm)と比較すると、実験13、14、15および16で使用した容器は大きかった(50×50×50cm)。すべての潅漑袋は同じ大きさであるとともに栽培容器の全底にわたって拡がった結果、実施例15、16および17に記載の実験で使用した3つの植物に利用可能な265cm2または600cm2の面積に比較して、約1,450cm2の表面膜面積が、これらの実験13、14、15および16で使用した一つの植物に利用可能であった。
【0094】
対照実験13では、淡水を含有する潅漑袋を介して潅漑した、乾燥施肥表土でトウモロコシ幼苗を栽培した。実験14では、潅漑袋中の水源として海水を使用した。実験15では、トウモロコシ植物用の栽培媒体として、表土の代わりに乾燥施肥砂を使用し、栽培容器は、土面から水の蒸発を遅らせるのために、1枚の黒いポリエチレンプラスチックで覆った。実験16では、トウモロコシの代わりにトマト植物Celebrityを使用し、対照実験13に記載したのと同一の残りの他の要因とともに、親水性膜潅漑袋中の水源としての海水を使用して潅漑した。乾燥苗条および乾燥根の重量および水分移動速度の平均値を表5に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
実施例19:実験17および実験18では、合板栽培容器(60×60×200cm)を使用した。乾燥施肥表土中にトマト幼苗CelebrityおよびRutgersを移植し、栽培した。トマト植物Celebrityは、高さ約20cmの幼苗として移植し、トマト植物Rutgersは、高さ約10cmの幼苗として移植した。これらの異なる2つの種類のトマトを使用し、それらの成長反応を比較した。トマトCelebrityはより大きな植物に成長し、有限(determinate)品種であるが、トマトRutgersはより制限された大きさに成長し、中性(indeterminate)品種である。
【0097】
実験17では、土の下で、各栽培容器の60cm幅端部の一方の表面直下から始まり、他方の60cm幅端部の栽培容器の底まで、200cmの長さに沿って直線傾斜で次第に下降する深さに、コポリエーテルエステルBで作られた親水性膜潅漑袋が埋められている。植物Aは灌漑袋が表面直下にある浅い端部付近に配置し、植物Cは灌漑袋が栽培容器の底部に達している深い端部付近に配置して、植物A、BおよびCの配置を直線に配列した。同様に、植物Wは浅い端部付近に配置し、植物Yは栽培容器の深い端部付近に配置して、植物A、BおよびCの配列と平行して植物W、XおよびYの配置を直線に配列した。植物間には推奨される少なくとも50cmの栽植距離を保つために、植物A、BおよびCに対して植物W、XおよびYをずらして配置した。
【0098】
実験18では、潅漑袋を使用せずに、じょうろから脱イオン水を個々の植物に給水した。この比較対照実験では、各植物の正常な成長に十分な水量を使用した。
【0099】
実験17で栽培された植物の相対的な苗条および根の重量は、潅漑袋に比較的接近している植物A、BおよびWが、この水源からさらに遠い位置にある植物C、XおよびYに比べてより大きく成長したことを示した。
【0100】
実験17および実験18の苗条および根の重量、並びに実験17の水分移動速度平均値のデータを表6に示した。
【0101】
【表6】

【0102】
実施例20および実験21
実施例20および実施例21のこのセットは、本発明の給湿適用例を示すためのものである。
【0103】
実施例20では、水道水を含有する防水の密封袋を厚み50ミクロンのコポリエーテルエステルBのフィルムで作り、室温で作業台上部に置いた。紙タオルは、膜表面と接触するよう親水性膜袋の上部に置き、紙タオル上にハツカダイコン、レタス、カブ、芽キャベツ、ほうれん草、キャベツおよびビオラ植物の種子を置き、種子の上に別の紙タオルを置き、そのアセンブリを暗所に置いた。5日後に、袋の内部からパーベーパレーションした水分のみを使用して、上記の植物種のすべての種子が発芽した。
【0104】
実施例21では、従来のヒートシール装置を使用して、コポリエーテルエステルBで作られた厚み50ミクロンの親水性膜の2つの層の間に大豆種子を封入し、種子のまわりに空気を閉じ込めた、2×2cmの大きさの気密性正方形半透明小袋を得た。その後、その親水性膜小袋をビーカーに入れた水道水上に浮かし、室温で暗所に置いた。2週間後に、親水性膜を通過して小袋内にパーベーパレーションした水によって、大豆が小袋内で発芽したことが観察された。
【0105】
実施例22
本実施例は、脱塩適用例における本発明の可能性を示すためのものである。
【0106】
本実施例では、コポリエーテルエステルAで作られた2個の親水性膜袋に各々約0.5Lの海水を充填し、密封し、袋の周囲に空気の自由な通過がある温暖な室内に置いた。実験に先立って、各袋の重量を測定した。3日以内に、両袋には水がなくなり、乾燥した塩分の析出物が残っていた。その後、袋を再び計量し、最初の重量を基準として計算したところ、その固形物は3.7重量%を超えていた。さらに、その袋を徹底的に洗浄して、膜表面上の塩などのいかなる可溶性不純物も除去した。袋を乾燥し、再度計量した。また、最初の重量が同一である対照試料の水を、従来の技術を使用して蒸発させ、析出物の重量を測定した。両試料から3.7重量%から3.8重量%の間の固形物が得られたが、それは、95%を超える水中の固形物含有量(溶解されたものおよび微粒子のもの)が親水性膜によって濾過されたことを意味している。
【0107】
実施例23
実施例23は再水和の適用例を示すものである。本実施例では、脱水固形物を再水和した。乾燥乳児ミルク、砂糖(蔗糖)または食卓塩(塩化ナトリウム)について各々2つの試料を、コポリエーテルエステルAで作られた密封親水性膜小袋に別々に置いた。それらの小袋は水中に置いた。すなわち、各々の1つの試料は真水中に、もう1つの試料は海水中に置いた。内容物が急速に再水和されるのを確認した。再水和の速度は、粉末の異なる吸湿性値に基づいて多様であった。発明の親水性膜による小袋中に脱水固形物を供給するということの特別な利点は、食品を純水でない水源によって再水和することができるので、ユーザが飲料水を運ぶ必要がないということである。
【0108】
実施例24
実施例24は、親水性膜を通ってパーベーパレーションする水を使用して植物を種子から成長させる別の適用例を具体化するものである。ボリューム60×45×3cmの開口プラスチック水槽を最も広い面を水平に置き、2cmの深さまで真水で満たした。コポリエーテルエステルCで作られた厚み25ミクロンの親水性膜を水面に浮かせるように水槽の上部にわたして置き、水槽の端の上を覆った。親水性膜の上部上に市販の利用可能な園芸用混合物の芝種子をまき、結晶固形物、緩効性肥料を含む約3mmのミズゴケで周りを覆った。実験は、容器内へ光が入るように透明なプラスチックの蓋で覆った。
【0109】
1週後、透明なプラスチックの蓋の内側は、凝縮水の小滴で覆われるようになり、この凝縮水がミズゴケにしみ込む、親水性膜の端に沿って一部の芝種子が発芽した。また、少数の種子は、凝縮水から離れた親水性膜の中央を超えて発芽した。さらに、水が蓋上で凝縮し、ミズゴケに達するのを防ぐために、蓋をこの時点で除去した。この時から、2日または3日毎に、イギリス海峡の海水を用いて親水性膜下の水を連続的に補給し、膜を通過してミズゴケへ入るパーベーパレーションされた水を交換した。
【0110】
2週間後、親水性膜の全表面にわたって、芝生が種子から成長するのが確認された。追加の芝種子は、残りの実験の間に発芽したことが確認された。
【0111】
実験は14週間後に終了した。その時に、芝は非常に密な根の塊を形成した。18cmを超える緑で健康な芝の葉は正常に成長した。本実験は、汽水源を使用し、本発明の膜を通過してパーベーパレーションする水を使用して芝を生育することができることを示している。
【0112】
浄化という用語は、浄水が用いられるべき使用に多少依存するということを当業者は認識するであろう。例えば、植物を栽培するために使用される水は人が消費するのに必要とされるほど純粋な水でなくてもよい。もちろん、純度を高めるために、連続的段階において浄化工程を繰り返すことができること、すなわち、1つまたは複数の親水性膜のより厚みのある層に、汚染物質水を通過させる(または、さらに付加的な濾過システムを通過させる)ことができることは理解され得るであろう。さらに、純度は、使用の内容に依存した異なった成分に関連するであろう。例えば、植物を栽培する水では塩含有量のみが重要であるが、人が消費する水では活性微生物含有量が最も重要であり、静脈注射用の薬品を(再)水和する水では、全生物学的負荷および塩含有量が非常に重要である。したがって、浄化は、その用途に対して求められる十分な品質の水を調製する工程が重要であると理解すべきである。一般に、本発明の内容の範囲では、膜から放出された浄水は、約1%未満の(好ましくは0.1%未満、およびそれより低い)溶解固固形物、懸濁固形物および粒子物を含んでいる。溶解塩類に関しては、一般に、これらは膜中および膜上に保持され、浄化された蒸気は膜から放出され、溶解固形物に対して約1%未満の(および典型的にはより低い)純度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源、および1または複数の層を含む親水性膜を含む浄水機器であって、
前記水源は水および塩を含み、
前記親水性膜は、コポリエーテルエステルエラストマーまたは2以上の前記コポリエーテルエステルエラストマーの混合物を含み、
前記親水性膜は、水が蒸気として当該膜を通過でき、水源からの塩が前記親水性膜を通過するのを防止でき、
さらに、前記親水性膜は、少なくとも400g/m2/24hの速度で前記膜の向こう側への水蒸気の示差移動を可能にすることを特徴とする浄水機器。
【請求項2】
前記コポリエーテルエステルエラストマーが、多数の反復長鎖エステルユニットおよび多数の反復短鎖エステルユニットを含み、前記長鎖エステルユニットおよび短鎖エステルユニットが、エステル結合によってヘッド・トゥ・テール型で結合されており、
前記長鎖エステルユニットが、
【化1】

[上式で、
a)Gは、約400〜4000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
b)Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基である。]
の一般式を有し、
前記短鎖エステルユニットが
【化2】

[上式で、
c)Dは、約250未満の分子量を有するジオールから水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
d)Rは300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基である。]
の一般式を有し、
コポリエーテルエステルは、任意選択的に、コポリエーテルエステルの長鎖エステルユニットに含まれるエチレンオキシド基を、コポリエーテルエステルの総重量を基準にして0〜68重量パーセント含んでおり、
コポリエーテルエステルは約25〜80重量パーセントの短鎖エステルユニットを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の浄水機器。
【請求項3】
25ミクロンの膜厚を有する前記コポリエーテルエステルエラストマーが、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、少なくとも400g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする請求項2に記載の浄水機器。
【請求項4】
25ミクロンの膜厚を有する前記コポリエーテルエステルエラストマーが、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、少なくとも3500g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする請求項2に記載の浄水機器。
【請求項5】
親水性膜を通過した水蒸気を凝縮するする手段をさらに含む請求項1から4のいずれか1項に記載の浄水機器。
【請求項6】
前記親水性膜は、支持材料上にコーティングされるか、または支持材料に接着されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の浄水機器。
【請求項7】
前記支持材料は、織紙、不織紙、結合紙、織物、水蒸気に対して透過のスクリーンであることを特徴とする請求項6に記載の浄水機器。
【請求項8】
前記水源は、海水または汽水を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の浄水機器。
【請求項9】
水および塩を含む水源を浄化する方法であって、該方法が、
コポリエーテルエステルエラストマーまたは2以上の前記コポリエーテルエステルエラストマーの混合物から作成された親水性膜を提供する工程であって、前記膜が少なくとも400g/m2/24hの速度で前記膜の向こう側への水蒸気の示差移動を可能にし、且つ、前記膜が第1ボリュームに隣接した第1表面および第2ボリュームに隣接した第2表面を有する工程と、
水源を第1表面に接触するように配置する工程と、
第1ボリュームと第2ボリュームの間に湿度差が存在することを保証する工程であって、前記湿度差が、第1表面から第2表面へ通過する第1のボリューム内の水で起こり、前記水は、膜の第1表面および第2表面を水蒸気として通過し、さらに前記塩は、膜の第1表面によって第1ボリューム中に保持される工程と、
前記膜を通過した水蒸気を凝縮する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記膜を介して圧力差を提供する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の水源を浄化する方法。
【請求項11】
前記膜の第2表面に存在する水蒸気を利用して第2ボリューム中の湿度を増大する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9または10に記載の水源を浄化する方法。
【請求項12】
第2ボリュームが密閉されたチャンバであることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の水源を浄化する方法。
【請求項13】
前記第2ボリューム中に存在する水を利用して、第2チャンバ中に置かれた少なくとも植物種子または幼苗を発芽させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の水源を浄化する方法。
【請求項14】
前記コポリエーテルエステルエラストマーが、多数の反復長鎖エステルユニットおよび多数の反復短鎖エステルユニットを含み、前記長鎖エステルユニットおよび短鎖エステルユニットが、エステル結合によってヘッド・トゥ・テール型で結合されており、
前記長鎖エステルユニットが、
【化3】

[上式で、
a)Gは、約400〜4000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
b)Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基である。]
の一般式を有し、
前記短鎖エステルユニットが
【化4】

[上式で、
c)Dは、約250未満の分子量を有するジオールから水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
d)Rは300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基である。]
の一般式を有し、
コポリエーテルエステルは、任意選択的に、コポリエーテルエステルの長鎖エステルユニットに含まれるエチレンオキシド基をコポリエーテルエステルの総重量を基準にして0〜68重量パーセント含んでおり、
コポリエーテルエステルは約25〜80重量パーセントの短鎖エステルユニットを含む、
ことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の水源を浄化する方法。
【請求項15】
25ミクロンの膜厚を有する前記コポリエーテルエステルエラストマーが、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、少なくとも400g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする請求項14に記載の水源を浄化する方法。
【請求項16】
25ミクロンの膜厚を有する前記コポリエーテルエステルエラストマーが、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、少なくとも3500g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする請求項14に記載の水源を浄化する方法。
【請求項17】
前記親水性膜は、支持材料上にコーティングされるか、または支持材料に接着されることを特徴とする請求項9から16のいずれか1項に記載の水源を浄化する方法。
【請求項18】
前記支持材料は、織紙、不織紙、結合紙、織物、水蒸気に対して透過性のスクリーンであることを特徴とする請求項17に記載の水源を浄化する方法。
【請求項19】
前記方法が室温で行われることを特徴とする請求項9から18のいずれか1項に記載の水源を浄化する方法。
【請求項20】
前記水源は、海水または汽水を含むことを特徴とする請求項9から19のいずれか1項に記載の水源を浄化する方法。
【請求項21】
密閉チャンバのエアスペースに水分を供給する方法であって、
前記チャンバ内に湿度増加機器を提供する工程であり、前記機器が水源、非多孔性親水性膜、任意選択的に、水源で前記機器を満たすための少なくとも1つの開口、および任意選択的に支持材料よりなり、非多孔性親水性膜が支持材料上にコーティングまたは接着されている工程を含み、
前記水源は、水、および懸濁固形物、溶解固形物、汚染物質、塩類および生物学的物質の少なくとも1つを含有し、
前記非多孔性親水性膜は、水が当該膜を通過することができ、密封チャンバのエアスペースへ水蒸気として水を放出することができ、前記非多孔性親水性膜は、懸濁固形物、溶解固形物、汚染物質、塩類および生物学的物質の少なくとも1つが前記非多孔性親水性膜を通過するのを防止し、
前記非多孔性親水性膜が、1または複数の親水性ポリマー層を含み、前記親水性ポリマーが、コポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルブロックポリアミド、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコールのホモポリマー、ポリビニルアルコールのコポリマー、およびそれの混合物から選択され、
さらに、前記1または複数の親水性ポリマー層が、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、25ミクロンの厚さで、少なくとも400g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記親水性ポリマーがコポリエーテルエステルエラストマーまたは前記コポリエーテルエステルエラストマーの2以上の混合物であり、前記コポリエーテルエステルエラストマーが、多数の反復長鎖エステルユニットおよび多数の反復短鎖エステルユニットを含み、前記長鎖エステルユニットおよび短鎖エステルユニットが、エステル結合によってヘッド・トゥ・テール型で結合されており、
前記長鎖エステルユニットが、
【化5】

[上式で、
a)Gは、約400〜4000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
b)Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基である。]
の一般式を有し、
前記短鎖エステルユニットが
【化6】

[上式で、
a)Dは、約250未満の分子量を有するジオールから水酸基を除去した後に残っている二価の基であり、
b)Rは300未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除去した後に残っている二価の基である。]
の一般式を有し、
コポリエーテルエステルは、任意選択的に、コポリエーテルエステルの長鎖エステルユニットに含まれるエチレンオキシド基をコポリエーテルエステルの総重量を基準にして0〜68重量パーセント含有しており、
コポリエーテルエステルは約25〜80重量パーセントの短鎖エステルユニットを含有する、
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
膜厚25ミクロンの膜厚を有する前記コポリエーテルエステルエラストマーが、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、少なくとも3500g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記密閉チャンバが栽培チャンバであることを特徴とする請求項21から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記栽培チャンバが温室であることを特徴とする請求項21から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記非多孔性親水性膜の一部のみがエアスペースと接触することを特徴とする請求項21から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記非多孔性親水性膜がエアスペースと完全に接触することを特徴とする請求項21から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記非多孔性親水性膜は、光を遮断する支持材料の層によって覆われていることを特徴とする請求項21から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記光を遮断する支持材料は、織紙、不織紙、結合紙、水蒸気に対して透過性の織物および水蒸気に対して透過性のスクリーンから選択されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記機器は、袋、パイプまたはチューブから選択されることを特徴とする請求項21から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
水源、非多孔性親水性膜、任意選択的に、水源で前記湿度増加機器を満たすための少なくとも1つの開口、および任意選択的に支持材料よりなり、非多孔性親水性膜が支持材料上にコーティングまたは接着されている湿度増加機器であり、
前記水源は、水、および懸濁固形物、溶解固形物、汚染物質、塩類および生物学的物質の少なくとも1つを含有し、
前記非多孔性親水性膜は、水が当該膜を通過することができ、密封チャンバのエアスペースへ水蒸気として水を放出することができ、前記非多孔性親水性膜は、懸濁固形物、溶解固形物、汚染物質、塩類および生物学的物質の少なくとも1つが前記非多孔性親水性膜を通過するのを防止し、
前記非多孔性親水性膜は1または複数の親水性ポリマー層を含み、前記親水性ポリマーはコポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルブロックポリアミド、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコールのホモポリマー、ポリビニルアルコールのコポリマー、およびそれの混合物から選択され、
さらに、前記1または複数の親水性ポリマー層が、ASTM E96−95(BW法(Procedure BW))に従って、25ミクロンの厚さで、少なくとも400g/m2/24hの透湿度を有し、前記透湿度は、23℃の空気温度、相対湿度50%、および3m/sの空気速度で測定されることを特徴とする湿度増加機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−585(P2011−585A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−156139(P2010−156139)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【分割の表示】特願2000−530466(P2000−530466)の分割
【原出願日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(500365889)デザイン テクノロジー アンド イノベーション リミテッド (3)
【Fターム(参考)】