説明

浚渫装置

【課題】従来のポンプ吸引式浚渫装置では、垂直軸周りを回転するカッター側面の回転フードの一部に土砂の取込み口を設け、該取込み口の位置を回転フードの水平回動により変更して浚渫方向を切り換えていたため、前記回転フードとカッターとの隙間に浚渫不純物が巻き込まれて回転フードの回動が阻害される場合がある、という問題があった。
【解決手段】浚渫装置3において、浚渫体4の回動ユニット58をクレーン本体2に対して水平回動させる回動駆動機構60を備え、該回転駆動機構60の垂直軸127を挟んで回動ユニット58の一側に、移送管路73と連通する取込み部72を部分的に設け、他側は、前記移送管路73に対して閉塞構造にすると共に、前記取込み部72の外側には掘削部71を覆設し、浚渫方向切り換え時には、前記回動駆動機構60によって回動ユニット58を水平回動して前記取込み部72の取込み口52を次の浚渫方向に向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川・港湾等の水底の土砂を、該土砂の巻き上げによる濁りが発生しにくい吸引ポンプを使用して取り除くポンプ吸引式の浚渫装置(以下、「浚渫装置」とする)に関し、特に、浚渫方向を迅速かつ確実に切り換え可能な土砂の取込み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クローラクレーンのブームや浚渫船のラダー等(以下、「支持移動装置」とする)の先端に浚渫体を取り付けて河川・港湾などの水底に沈め、該浚渫体に設けたカッターにより水底を掘削し、掘削した土砂を水と一緒に吸引ポンプによって吸い上げて、そのまま貯留槽に貯留したり、目的場所までパイプライン等を通して直接移送するようにしていた。
【0003】
その際、前記支持移動装置によって浚渫体を移動させながら掘削を進める方向(以下、「浚渫方向」とする)を、それまでの前方への1方向だけでなく前後2方向とする技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。該技術においては、ラダーの先端に枢支された垂直軸の周りを回転するカッターを設け、該カッターの側面を、取込み口を一部に開口した回転フードによって覆うことにより、該回転フードを回動するだけで取込み口の開口位置を自在に変更できるようにしている。
【0004】
これにより、浚渫方向を前後2方向のうちの一方向から他方向に切り換える場合であっても、支持移動装置の移動や反転が不要となる。例えば、前進方向への浚渫が終わった後に、回転フードを180度回動して取込み口を後進方向に向けた上で、支持移動装置をそのまま後進させるだけで、後進方向への浚渫が可能となり、前進による浚渫と後進による浚渫を連続して行うことができ、作業時間の短縮が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−261533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記技術では、浚渫方向切り換えに必要な取込み口の開口位置の変更を、回転フードの回動によって行うため、カッターにより十分に破砕できずに残った大きな石や水底に溜まっているビニール片等のゴミ類(以下、「浚渫不純物」とする)が、土砂と一緒に取込み口から多量に取り込まれると、該浚渫不純物が回転フードとカッターとの間に巻き込まれる場合がある。このために、回転フードの回動動作が阻害されて取込み口を浚渫方向に向けるのに時間がかかり、浚渫作業全体としては作業時間の十分な短縮が図れず、しかも、巻き込みが著しい場合には回転フードが破損する、という問題があった。
更に、前記回転フードは、下面は全面を開放し、側面は略半分を開放した半円筒状であり、カッターで掘削した土砂に対する取込み面積が大きすぎるため、十分な吸引力が得られずに浚渫能力が低い、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、支持移動装置の先端に取り付けて水中に浸漬する浚渫体と、該浚渫体を介して水底の土砂を移送経路内に吸い上げる吸引ポンプとを有する浚渫装置において、前記浚渫体の回動ユニットを支持移動装置に対して水平回動させる回動駆動機構を備え、該回転駆動機構の回転軸を挟んで回動ユニットの一側には、前記移送経路と連通する取込み部を部分的に設け、他側は、前記移送経路に対して閉塞構造にすると共に、前記取込み部の外側には掘削部を覆設し、浚渫方向切り換え時には、前記回動駆動機構によって回動ユニットを水平回動して前記取込み部の取込み口を次の浚渫方向に向けるものである。
請求項2においては、前記掘削部は、回転する格子状のカバーと、該カバーの外面に固設されて一体回転する複数のカッターとを有するものである。
請求項3においては、前記取込み部には、一部に開孔部を設けた蓋板と、該蓋板の表面を摺動するシャッター板とを設け、該シャッター板を所定位置まで摺動し前記開孔部の少なくとも一部を覆って前記取込み口を形成すると共に、前記シャッター板の固定位置を変更可能な構成とすることにより、該取込み口の開口面積・開口位置を自在に変更する開口調整機構を設けるものである。
請求項4においては、前記シャッター板は、前記蓋板の中心軸の周りを個別に回動自在な扇状の第一シャッター板と第二シャッター板とにより構成するものである。
請求項5においては、前記吸引ポンプは、前記取込み口に連通する吸引口を設けた管路と、該管路内に圧力流体を高速で噴射する噴射ノズルとから構成し、前記圧力流体の負圧効果により、土砂を前記吸引口から吸引すると共に、吸引した土砂に吹き付ける圧力流体により、土砂を吸引口から管路を通って吐出口まで移送するものである。
請求項6においては、前記噴射ノズルには、少なくとも一方が高圧に加圧された気体と液体を供給し、気体の気相と、該気相の周囲を取り囲む液体・気体の混合相とから成る二相流体によって、前記圧力流体を構成するものである。
請求項7においては、前記管路には、途中部に絞り管部を設け、該絞り管部の一部または全部を交換可能な構成とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、取込み口とその近傍の部材と間の相対的な位置関係はそのままで浚渫方向の切り換えを行うことができ、従来のように、取込み口を設けた回転フードとカッターとの間に浚渫不純物が巻き込まれ、取込み口を浚渫方向に向けるのに時間がかかったり、噛み込みや巻き込みが著しくて回転フードやカッターが破損したりすることがなく、十分な、作業時間の短縮と装置寿命の向上を図ることができる。更に、取込み部は、回動ユニットの一側のみでしかも部分的にしか設けないため、取込み口からの土砂の取込み面積を小さくして吸引力を増加することができ、浚渫能力を大きく向上できる。
請求項2により、格子状のカバーにより、浚渫不純物が移送経路内に侵入するのを防ぎ、土砂の吸引力の低下を回避できる。更に、カッターとカバーとは一体回転するので、浚渫不純物がカッターとカバーとの隙間に噛み込みあるいは巻き込まれてカッターの回転が阻害される、という事態を確実に防ぎ、カッターの回転不良による掘削能力の低下も回避できる。
請求項3により、前記開口調整機構により、土砂の質・量・分布や浚渫速度等の各種条件に応じて、取込み口の開口面積・開口位置を適正化することができ、浚渫能力の更なる向上を図ることができる。
請求項4により、二枚のシャッター板の位置を個別に変更するだけの簡単な構成により、取込み口の開口面積・開口位置を自在に変更することができ、装置コストの低減を図ることができる。しかも、二枚のシャッター板から成るため、修理の際は、破損や腐食によって寿命となった方のみを交換すればよく、メンテナンス性にも優れている。
請求項5により、浚渫不純物が土砂と一緒に吸引ポンプ内に吸引されても、通常のポンプの如く羽根車の回転等が浚渫不純物によって阻害されて土砂の吸引力が低下することがなく、噴射ノズルからの高圧の圧力流体によって吐出口まで高速で移送することができ、浚渫能力の低下を防止できると共に、羽根車等の部品交換が不要でポンプ寿命の向上も図ることができる。
請求項6により、空気中への拡散が液体よりも速やかに起こる気相を圧力流体の噴射軸中心に位置させることができ、噴射ノズルから噴出した圧力流体は、噴出直後には高速で管路内壁に向かって大きく拡がりながら、土砂と浚渫不純物を管路内壁まで運んで激しく衝突させるため、粗大な石を含む浚渫不純物を強力に粉砕して土砂と一緒に高速で移送することができ、浚渫能力の低下を確実に防止できる。加えて、この圧力流体の外側面は液体・気体の混合相で取り囲んだ状態にあり、前記管路内壁は液体の層によって常に覆われるため、管路内壁が土砂や浚渫不純物から受ける衝撃による熱損傷を大きく抑制することができ、管路寿命を延ばしてポンプ寿命の更なる向上を図ることができる。
請求項7により、圧力流体が通過面積の小さな絞り管部を通過する際に、粗大な石を含む浚渫不純物を絞り管部内壁に又は互いに激しく衝突させて強力に粉砕することができ、土砂と一緒により高速で移送することができ、浚渫能力の低下を更に確実に防止できる。加えて、吸引ポンプ全体を交換することなく損傷を受けた部分だけを交換すればよく、吸引ポンプの組立性・メンテナンス性の向上も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に関わる浚渫装置を取り付けた浚渫クレーンの全体構成を示す側面図である。
【図2】吸引ポンプの側面一部断面図である。
【図3】吸引ポンプの噴射ノズル周辺の側面一部断面図である。
【図4】浚渫体の側面一部断面図である。
【図5】取込み部の開口調整機構を示す回動ユニット下部の断面図であって、図5(a)は図4のX−X矢視断面図、図5(b)は図4のY−Y矢視断面図である。
【図6】取込み口の開口面積・開口位置の変更例を示す回動ユニット下部の断面図であって、図6(a)は開口面積が最大の場合の図4のX−X矢視断面図、図6(b)は最下位置で開口面積が最小の場合の図4のX−X矢視断面図、図6(c)は最上位置で開口面積が最小の場合の図4のX−X矢視断面図である。
【図7】前後2方向へ浚渫作業の状況を示す浚渫体の側面図であって、図7(a)は前方へ浚渫する場合の浚渫体の側面図、図7(b)は前方浚渫後に引き続いて後方へ浚渫する場合の浚渫体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1中の矢印Fで示す方向を浚渫体の前方向、図5中の矢印Lで示す方向を浚渫体の左方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前方向と左方向を基準とするものである。
【0011】
まず、本発明に関わる浚渫装置3を取り付けた浚渫用のクローラクレーン(以下、「浚渫クレーン」とする)1の全体構成について、図1により説明する。
該浚渫クレーン1は、岸壁125上のクレーン本体2と浚渫装置3とから構成される。
【0012】
このうちの支持移動装置であるクレーン本体2には、履帯式の一対の走行装置7aを有する走行台車7が備えられ、該走行台車7の上に、旋回ベアリング8を介して上部旋回体9が水平旋回自在に搭載される。該上部旋回体9には、キャビン10が設けられると共に、上部旋回体9の前部からは、ブーム12・アーム13・ブラケット14が前方に連設されてクレーン部11が形成される。そして、該ブーム12・アーム13・ブラケット14は、それぞれ、ブームシリンダ15・アームシリンダ16・ブラケットシリンダ17の伸縮によって前後または上下に揺動可能に構成され、これにより、クレーン部11のクレーン動作が可能となっている。
【0013】
前記浚渫装置3は、前記キャビン10の側部に設けたポンプケース18に収容される吸引ポンプ5、前記ブラケット14の下部に垂下するように連結した浚渫体4、該浚渫体4から前記吸引ポンプ5まで連通する移送管6、及び前記吸引ポンプ5からの土砂120を貯留槽19まで導く吐出管20とから構成される。
【0014】
このような構成において、前記キャビン10内に設けた図示せぬ操作レバー等を操作すると、図示せぬエンジンからのエンジン動力によって油圧ポンプ等が駆動され、作動油が前記ブームシリンダ15・アームシリンダ16・ブラケットシリンダ17に供給されてクレーン部11が動作する。すると、図1に示すように、浚渫体4が河川21中に浸漬され、該浚渫体4で取り込まれた土砂120は、移送管6から吸引ポンプ5内に吸い込まれ、該吸引ポンプ5から吐出管20を介して前記貯留槽19内に移送され貯留される。
【0015】
次に、前記吸引ポンプ5について、図1乃至図3により説明する。
図2に示すように、該吸引ポンプ5は、圧力流体を噴射する噴射ノズル22、前記浚渫体4から移送管6を介して土砂120が吸引される吸引管部23、及び管路を細く絞った絞り管部24から成り、これらのうちの管部23・24によって連続した管路25が構成される。
【0016】
図2、図3に示すように、前記吸引管部23は、絞り管部24の前端よりも大径の大径部26を有し、該大径部26の前端は、前記噴射ノズル22によって閉塞されると共に、この大径部26の前後途中部には、噴射ノズル22から噴射される圧力流体の噴射方向に略垂直方向で上向きの分岐管27が形成されている。そして、該分岐管27の上端は、土砂120の吸引口28となって前記移送管6の後端に接続されており、該移送管6を介して、浚渫不純物が混じった土砂120と河川21からの多量の水が一緒に移送されてくる。
【0017】
該移送管6によって浚渫体4と吸引口28との間は気密に連通されているため、後述するようにして噴射ノズル22から圧力流体が高速で噴出し空気が排出されて管路25内の圧力が負圧となっても(以下、「負圧効果」とする)、余分な外気が吸引管部23内に漏れ入って圧力が上昇することがなく、この負圧効果によって、土砂120、浚渫不純物、及び水を吸引管部23内に強力に吸引することができる。
【0018】
また、前記噴射ノズル22は、加圧空気が流れる内流路29を有する内流管30と、該内流管30先部を取り囲むと共に水が流れる外流路31を有するT字状の外流管32とから成る二重ノズルであり、このうちの内流管30は、鞘管33内に螺刻したネジ33bに前後移動可能に螺挿されている。
【0019】
そして、前記鞘管33は前後中央部にフランジ33aを有し、該フランジ33aは、前記外流管32の本管部34の前端に設けたフランジ34aとはボルト35によって締結されており、内流管30を取り付けた鞘管33が外流管32と着脱可能に連結されている。これにより、圧力流体の流入する外流管32内に容易にアクセスすることができ、補修や部品交換が容易に行え、メンテナンス性を向上させることができる。
【0020】
前記内流管30は、送気管36を介して加圧ポンプ37に接続されており、該加圧ポンプ37を駆動させることにより、送気管36を介して前記内流路29内に高圧の加圧空気が供給されるようにしている。そして、この内流路29内には、前記送気管36の内径と略同径の大径部29a、前方に拡管する絞り部29b、中径部29c、及び細管状の小径部29dが前から順に形成されており、内流路29内の流路断面積を徐々に減少させると共に、前記中径部29cを特に長くして内流路29の全長を長く構成している。これにより、送気管36から送られてきた高圧の加圧空気は、前記内流路29内を通過する間に、流路断面積の減少によって流速が著しく増加し、加えて、この減少が多段階で行われることにより乱流の発生が軽減されるようにしている。
【0021】
前記外流管32においては、その本管部34の前後方向略中央部に上向きの分岐管38が形成され、該分岐管38は送水管39と接続されており、揚水ポンプ40によって圧送されてきた河川21からの水が、送水管39、分岐管38を介して前記外流路31に供給されるようにしている。更に、本管部34は、後端にフランジ34bを有し、該フランジ34bは、前記吸引管部23の大径部26前端に設けたフランジ26aとボルト35によって着脱可能に締結されると共に、フランジ34bには支持孔34cが開口され、該支持孔34cには噴射管41が前記内流管30と同一軸心上に後方から内挿され、該噴射管41は、ボルト42によってフランジ34bと着脱可能に締結されている。
【0022】
この噴射管41の噴射流路43内には、前に拡管する前テーパ部43a、直管部43b、及び後に拡管する後テーパ部43cが前から順に形成され、このうちの前テーパ部43aには、該前テーパ部43aよりも外側面の傾きが小さくなるように前記内流管30先端に形成された先細り部30aが内挿されており、該先細り部30aと前記前テーパ部43aとの間に設けた隙間44を通って、前記外流路31内の水が、噴射管41内の噴射流路43内に流入するようにしている。
【0023】
このような構成において、内流管30を軸心回りに回転して鞘管33内を後方に移動させ、内流管30の先細り部30aを噴射管41の前テーパ部43aに当接させて前記隙間44をなくすと、外流路31内の水は噴射管41の噴射流路43内に供給されず、内流管30の内流路29を通って加速された高速の加圧空気のみが、噴射管41の噴射流路43内に供給される。すると、噴射管41先端の後テーパ部43cからは加圧空気の気相45が空気中に大きく拡がるようにして噴出する。
【0024】
更に、この状態から内流管30を軸心回りに逆回転して鞘管33内を前方に移動させ、内流管30の先細り部30aを噴射管41の前テーパ部43aから離間して隙間44を形成すると、該隙間44を通って外流路31内の水が噴射管41の噴射流路43内に供給される。すると、この水は、内流管30の小径部29dから噴き出す高速の加圧空気による負圧効果によって強力に引き込まれ、その結果、加圧空気は水と略平行に合流して、加圧空気の気相45の周囲を加圧空気と水との混合相46が取り囲む二相流体47が形成される。そして、該二相流体47は、噴射管41先端の後テーパ部43cから空気中に大きく拡がるようにして噴出する。
【0025】
このようにして、空気中への拡散が液相よりも速やかに起こる気相45を噴射軸中心に有する圧力流体が、前記移送管6から、河川21の水と一緒に吸い込まれる土砂120と浚渫不純物に吹き付けられると、該土砂120と浚渫不純物は、気相45によって拡がろうとする圧力流体により、管路25の内壁に向かって斜めに高速で運ばれて激しく衝突する。衝突した土砂120と浚渫不純物は、圧力流体に巻き込まれてそのまま吸引ポンプ5終端の吐出口51まで移送されるか、あるいは、圧力流体にはじき飛ばされて管路内壁で何度も衝突を繰り返しながら吐出口51まで移送される。この際、この圧力流体の外側面は液体・気体の混合相46で取り囲まれており、前記管路内壁は液体の層によって保護された状態となっている。
【0026】
なお、本実施例では、空気のみを高圧に加圧し、水はこの高速の加圧空気の負圧効果によって吸い込み、二相流体47を形成するようにしているが、水も空気と同様に高圧に加圧してよい。或いは、逆に、周囲の水のみを高圧に加圧し、空気はこの高圧水の負圧効果によって吸引空気として吸い込み、二相流体47を形成するようにしてもよい。
【0027】
すなわち、前記吸引ポンプ5は、後述する浚渫体4の取込み口52に連通する吸引口28を設けた管路25と、該管路25内に圧力流体を高速で噴射する噴射ノズル22とから構成し、前記圧力流体の負圧効果により、土砂120を前記吸引口28から吸引すると共に、吸引した土砂120に吹き付ける圧力流体により、土砂120を吸引口28から管路25を通って吐出口51まで移送するので、浚渫不純物が土砂120と一緒に吸引ポンプ5内に吸引されても、通常のポンプの如く羽根車の回転等が浚渫不純物によって阻害されて土砂120の吸引力が低下することがなく、噴射ノズル22からの高圧の圧力流体によって吐出口51まで高速で移送することができ、浚渫能力の低下を防止できると共に、羽根車等の部品交換が不要でポンプ寿命の向上も図ることができる。
【0028】
更に、前記噴射ノズル22には、少なくとも一方が高圧に加圧された気体の空気と液体の水を供給し、加圧空気の気相45と、該気相45の周囲を取り囲む水・空気の混合相46とから成る二相流体47によって、前記圧力流体を構成するので、空気中への拡散が液体よりも速やかに起こる気相45を圧力流体の噴射軸中心に位置させることができ、噴射ノズル22から噴出した圧力流体は、噴出直後には高速で管路内壁に向かって大きく拡がりながら、土砂120と浚渫不純物を管路内壁まで運んで激しく衝突させるため、粗大な石を含む浚渫不純物を強力に粉砕して土砂120と一緒に高速で移送することができ、浚渫能力の低下を確実に防止できる。加えて、この圧力流体の外側面は液体・気体の混合相46で取り囲んだ状態にあり、前記管路内壁は液体の層によって常に覆われるため、管路内壁が土砂120や浚渫不純物から受ける衝撃による熱損傷を大きく抑制することができ、管路寿命を延ばしてポンプ寿命の更なる向上を図ることができる。
【0029】
また、図2に示すように、前記絞り管部24には、同一軸心上に、前方に拡管する前テーパ管48、最小径の直管の最絞り管49、及び後方に拡管する後テーパ管50が前から順に設けられ、このうちの前テーパ管48の前端は、前記吸引管部23の大径部26の後端と接続されている。
【0030】
このような絞り管部24では圧力流体の流速が更に増加するため、前記負圧効果が向上して土砂120と浚渫不純物が吸引管部23内に更に強力に吸引されると共に、この吸引・移送されてきた土砂120と浚渫不純物は、前テーパ管48から最絞り管49に向かって高速で突入する。すると、粗大な石を含む浚渫不純物は、更に高速でこれらの管壁内壁に衝突したり、互いに衝突するようになる。同時に、このような高速下では、圧力が低下するため加圧水の高速流体内にキャビテーション気泡が発生し、該キャビテーション気泡は、流速が低下して圧力が回復する後テーパ管50までくると崩壊し、この気泡崩壊による衝撃力も浚渫不純物に加わることとなる。
【0031】
更に、前記前テーパ管48、最絞り管49、及び後テーパ管50は、それぞれ両端に、フランジ48a・48b、フランジ49a・49b、フランジ50a・50bを有し、このうちのフランジ48aと前記吸引管部23後端のフランジ26b、フランジ48bとフランジ49a、フランジ49bとフランジ50a、及びフランジ50bと吐出管20前端のフランジ20aを、ボルト53によって締結するようにしており、絞り管部24全体或いは絞り管部24の一部を、吸引ポンプ5から外して交換することができる。
【0032】
すなわち、前記管路25には、途中部に絞り管部24を設け、該絞り管部24の一部または全部を交換可能な構成とするので、圧力流体が通過面積の小さな絞り管部24を通過する際に、粗大な石を含む浚渫不純物を絞り管部24内壁に又は互いに激しく衝突させて強力に粉砕することができ、土砂120と一緒により高速で移送することができ、浚渫能力の低下を更に確実に防止できる。加えて、吸引ポンプ5全体を交換することなく損傷を受けた部分だけを交換すればよく、吸引ポンプ5の組立性・メンテナンス性の向上も図ることができる。ただし、水底の浚渫不純物が少ない場合や、揚程が小さく負圧効果も小さくて済む場合等には、通常の直管を使用してもよく、土砂120の質・量・分布や浚渫速度等の各種条件に応じて適宜変更することができる。
【0033】
次に、前記浚渫体4について、図1、図4、図5により説明する。
該浚渫体4においては、前記クレーン本体2の先端のブラケット14に、屈曲管54と回動駆動機構60が固設されている。そして、このうちの屈曲管54の後端は、フランジ54b・フランジ6aを介して、前記移送管6の前端に接続される一方、屈曲管54の下部には、大径の支持部54aが形成され、該支持部54a内には、回動管59の上部に設けた枢支部59aが、水平回動可能に下方から挿入される。更に、該回動管59の下端には、土砂120を取り込む回動ユニット58が連結されている。
【0034】
前記回動管59では、上端に前記枢支部59aが形成された回動上管55、前記回動駆動機構60に回動駆動される回動中管56、及び下端に前記回動ユニット58を連結する回動下管57が、同一の垂直軸127上に設けられる。そして、該回動上管55、回動中管56、及び回動下管57には、それぞれ、フランジ55a、フランジ56a・56b、及びフランジ57aが形成され、このうちのフランジ55aとフランジ56a、フランジ56bとフランジ57aをボルト61によって締結することにより、前記回動管59が構成されており、回動管59全体或いは回動管59の一部を、浚渫体4から取り外して容易に交換できるようにしている。
【0035】
前記回動駆動機構60においては、前記ブラケット14に駆動ケース62が固設され、該駆動ケース62の上面に回動駆動モータ63が載置固定され、該回動駆動モータ63から駆動ケース62内にはモータ軸64が下方に突出されており、該モータ軸64には、小径の駆動ギア65が外嵌されている。更に、前記駆動ケース62内には、前記回動中管56が、ローラ式のベアリング66を介して水平回動可能に支持されると共に、該回動中管56には、ボルト68によって大径の従動ギア67が締結固定され、該従動ギア67は、前記駆動ギア65に常時噛合されている。
【0036】
このような構成において、前記キャビン10内の作業者が、図示せぬ回動スイッチ等を操作し、前記回動駆動モータ63に回動駆動信号を送信すると、前記モータ軸64が回動して駆動ギア65から従動ギア67に回転動力が伝達され、該従動ギア67を固定した回動中管56を有する回動管59が、前記枢支部59aを支点として、前記垂直軸127の周りを水平回動される。これにより、この回動管59の下端に連結された前記回動ユニット58も、クレーン本体2に対して水平回動される。
【0037】
また、前記回動ユニット58は、前記回動管59の下端に上端が接続される取込みケース69と、該取込みケース69の中心に前後方向に貫設された掘削駆動部70と、該取込みケース69の前側下部に設けられた取込み部72と、該取込み部72の更に外側に覆設された掘削部71とから構成される。
【0038】
このうちの取込みケース69においては、太くて短い筒体74が水平方向に延設され、該筒体74の上部からは、前記垂直軸127と同軸上に、前記回動管59と同径の連結管75が立設され、該連結管75のフランジ75aと前記回動下管57のフランジ57bをボルト76によって締結することにより、連結管75が回動管59と同軸上で連結されている。そして、該連結管75、回動管59、及び前記移送管6によって連続した移送管路73が形成される。
【0039】
前記筒体74の軸心方向途中部には、前記連結管75の下方空間を挟むようにして、前後にドーナツ状の蓋板77・蓋板78が覆設され、該蓋板77・蓋板78と筒体74とから、前記移送管路73に連通する取込み室79が形成される。
【0040】
前記掘削駆動部70においては、前記蓋板77の中心孔77aから蓋板78の中心孔78aにかけて軸ケース80が貫設され、該軸ケース80の後部に、連結ケース81と掘削モータ82が連設されている。そして、該掘削モータ82から連結ケース81内に突出されたモータ軸82aの前部は、カップリング83によって掘削軸84の後部に連結されると共に、該掘削軸84は、前後の軸受け85・86によって、前記軸ケース80内に回動自在に軸支されている。
【0041】
そして、蓋板77・78と軸ケース80との間、該軸ケース80と連結ケース81との間、該連結ケース81と掘削モータ82との間は、いずれも気密に接続されており、前記取込み部72以外の箇所から水や空気が前記取込み室79内に侵入しないようにしている。
【0042】
つまり、前記垂直軸127を挟んで回動ユニット58の一側には、取込み部72が部分的に設けられる一方、他側は、前記移送管路73に連通する取込み室79に対して密閉構造となっており、取込み面積を小さくして前記吸引ポンプ5による負圧効果を高め、吸引力を増加させることができる。
【0043】
前記掘削部71においては、直径が順に大きくなる3個のリング91a・リング91b・リング91cが、前から順に前記掘削軸84と同軸上に配置され、該リング91a・リング91b・リング91c同士は、複数の連結バー92によって連結されると共に、リング91b・リング91cは、筒体74の前端近傍で前記掘削軸84に連結された取付軸89に、それぞれ支持バー93b・支持バー93cを介して連結支持されている。これにより、格子状のカバー90が形成される。
【0044】
更に、前記リング91a・リング91cから前方には、いずれも複数の固定ピン94が突出され、該固定ピン94の突出部に、放射状に延出する複数のカッター95が固設されており、該複数のカッター95は、前記カバー90と一体的に回転するようにしている。
【0045】
このような構成において、前記キャビン10内の作業者が、図示せぬ掘削スイッチ等を操作し、前記掘削モータ82に掘削駆動信号を送信すると、モータ軸82aが回動してカップリング83を介して掘削軸84に掘削動力が伝達され、前記取付軸89に取り付けられたカバー90と、該カバー90に固設されたカッター95とが、筒体74前端よりも前方で一体となって回転する。
【0046】
すると、該カッター95の回転によって水底が掘削され、掘削された土砂120は、混入している浚渫不純物の大部分が前記格子状のカバー90で除去された後、前記吸引ポンプ5からの吸引力により、前記取込み口52から吸引され、取込み室79を経由して移送管路73に吸い上げられる。
【0047】
すなわち、前記掘削部71は、回転する格子状のカバー90と、該カバー90の外面に固設されて一体回転する複数のカッター95とを有するので、前記格子状のカバー90により、浚渫不純物が、移送経路である移送管路73内に侵入するのを防ぎ、土砂120の吸引力の低下を回避できる。更に、カッター95とカバー90とは一体回転するので、浚渫不純物がカッター95とカバー90との隙間に噛み込みあるいは巻き込まれてカッター95の回転が阻害される、という事態を確実に防ぎ、カッター95の回転不良による掘削能力の低下も回避できる。
【0048】
次に、前記取込み部72の詳細構成と、該取込み部72において取込み口52の開口面積・開口位置を自在に変更する開口調整機構118について、図4乃至図6により説明する。
図4、図5に示すように、前記取込み部72においては、前記蓋板77の下部に、円周方向に沿って湾曲した楕円状の開孔部96が設けられている。更に、前記蓋板77の表面に沿って、前記軸ケース80の外周面から半径外方向に向かって正面視U字状の内周ガイド板97が張り出す一方、該内周ガイド板97に対向して、前記筒体74の内周面から半径内方向に向かって正面視U字状の外周ガイド板98が張り出されている。
【0049】
該外周ガイド板98と前記内周ガイド板97との間に、いずれも扇状の第一シャッター板99と第二シャッター板100とが、前記開孔部96を挟んで円周方向に沿って左から順に並設されている。そして、該第一シャッター板99と第二シャッター板100の各内周縁は、前記蓋板77の表面と内周ガイド板97の裏面との隙間に摺動可能に内挿されると共に、前記第一シャッター板99と第二シャッター板100の各外周縁も、前記蓋板77の表面と外周ガイド板98の裏面との隙間に摺動可能に内挿されている。
【0050】
更に、前記第一シャッター板99においては、その内周縁近傍には、前記内周ガイド板97の外周面に当接して摺動可能な正面視U字状の内周摺動体101が前方に突設されると共に、外周縁近傍には、前記外周ガイド板98の内周面に当接して摺動可能な正面視U字状の外周摺動体102が前方に突設されている。該内周摺動体101・外周摺動体102によって、第一シャッター板99は、前記内周ガイド板97・外周ガイド板98にガイドされながら、蓋板77の中心軸117の周りを、ずれることなく円周方向に摺動される。
【0051】
そして、第一シャッター板99で前記外周摺動体102よりも内側には、円周方向に長い長孔103が位置決め用に開口され、該長孔103には、前記蓋板77に取り付けた位置決めボルト104が内挿されており、第一シャッター板99の端部を、所定の円周方向位置、図5(a)では円周方向位置114まで回動させた後、この位置決めボルト104によって蓋板77に締結し固定するようにしている。
【0052】
同様に、前記第二シャッター板100においては、その内周縁近傍には、前記内周ガイド板97の外周面に当接して摺動可能な正面視U字状の内周摺動体106が前方に突設されると共に、外周縁近傍には、前記外周ガイド板98の内周面に当接して摺動可能な正面視U字状の外周摺動体107が前方に突設されている。該内周摺動体106・外周摺動体107によって、第二シャッター板100は、前記内周ガイド板97・外周ガイド板98にガイドされながら、蓋板77の中心軸117の周りを、ずれることなく円周方向に摺動される。
【0053】
そして、第二シャッター板100で前記外周摺動体107よりも内側にも、円周方向に長い長孔108が位置決め用に開口され、該長孔108には、前記蓋板77に取り付けた位置決めボルト109が内挿されており、第二シャッター板100の端部を、所定の円周方向位置、図5(a)では円周方向位置115まで回動させた後、この位置決めボルト109によって蓋板77に締結し固定するようにしている。
【0054】
更に、前記第一シャッター板99と第二シャッター板100には、対向する半径部に、それぞれ半円孔105と半円孔110が形成されており、図5(b)に示すように、該半円孔105側の半径部と半円孔110側の半径部とを前記開孔部96の前方で突き合わせることにより、円形の取込み口52を形成すると共に、該取込み口52を除いた開孔部96を、第一シャッター板99と第二シャッター板100とによって覆うことができる。
【0055】
そして、このような構成から成る取込み部72と前記掘削部71は、いずれも前記回動ユニット58の構成部であって、浚渫方向の切り換えの際も一緒に水平回動するため、取込み口52とその近傍の部材、例えば掘削部71のカッター95やカバー90との間の相対的な位置関係はそのままで変動せず、浚渫不純物の噛み込みや巻き込みも起こりにくい。
【0056】
なお、前記蓋板77と蓋板78との間には、前後方向に仕切板111・112が介設され、このうちの仕切板111は、前記連結管75近傍で、筒体74と軸ケース80との間に設けられると共に、仕切板112は、前記開孔部96で仕切板111に近い方の円周方向縁部の近傍で、筒体74と軸ケース80との間に設けられており、前後の蓋板77・78、上下の仕切板111・112、及び筒体74・軸ケース80によって、密閉空間113を形成している。該密閉空間113の分だけ前記取込み室79における流路面積を小さくして土砂120の吸引力の低下を防ぐことができる。
【0057】
また、以上のような開口調整機構118を使って、取込み口52の開口面積・開口位置を変更する場合について説明する。なお、図5、図6中の矢印116で示す方向をシャッター板99・100の左回りの方向として説明する。
図5(a)、図6(a)に示すように、第一シャッター板99を、その左端が円周方向位置114から円周方向位置114Aに至るまで、蓋板77の中心軸117の周りに右回りに回動させた後、前記位置決めボルト104によって蓋板77に固定すると共に、第二シャッター板100を、その右端が円周方向位置115から円周方向位置115Aに至るまで、蓋板77の中心軸117の周りに左周りに回動させた後、前記位置決めボルト109によって蓋板77に固定する。
【0058】
このように、第一シャッター板99と第二シャッター板100を中心軸117の周りに互いに逆方向に回動して、第一シャッター板99の半円孔105と第二シャッター板100の半円孔110を、それぞれ、前記蓋板77の開孔部96の左半円縁96aと右半円縁96bの略前方に位置させると、前記開孔部96が第一シャッター板99と第二シャッター板100とによっては全く覆われずに全開となり、最大開口面積の取込み口52Aが形成される。
【0059】
図5(a)、図6(b)に示すように、第一シャッター板99を、その左端が円周方向位置114から円周方向位置114Bに至るまで、蓋板77の中心軸117の周りに右回りに回動させた後、前記位置決めボルト104によって蓋板77に固定すると共に、第二シャッター板100を、その右端が円周方向位置115から円周方向位置115Bに至るまで、蓋板77の中心軸117の周りに右回りに回動させた後、前記位置決めボルト109によって蓋板77に固定する。この際、位置決めボルト104は長孔103の右端に当接され、位置決めボルト109は長孔108の右端に当接されており、第一シャッター板99と第二シャッター板100は、それ以上は右回りに回動できないようにしている。
【0060】
このように、第一シャッター板99と第二シャッター板100を中心軸117の周りに同方向、ここでは右回りに限界まで回動し、第一シャッター板99の半円孔105と第二シャッター板100の半円孔110から成る円形孔を、蓋板77の開孔部96の左半円縁96a近傍で略前方に位置させると、該左半円縁96a近傍のみが開口され、最も下位置で最小開口面積の取込み口52Bが形成される。
【0061】
図5(a)、図6(c)に示すように、第一シャッター板99を、その左端が円周方向位置114から円周方向位置114Cに至るまで、蓋板77の中心軸117の周りに左回りに回動させた後、前記位置決めボルト104によって蓋板77に固定すると共に、第二シャッター板100を、その右端が円周方向位置115から円周方向位置115Cに至るまで、蓋板77の中心軸117の周りに左回りに回動させた後、前記位置決めボルト109によって蓋板77に固定する。この際、位置決めボルト104は長孔103の左端に当接され、位置決めボルト109は長孔108の左端に当接されており、第一シャッター板99と第二シャッター板100は、それ以上は左回りに回動できないようにしている。
【0062】
このように、第一シャッター板99と第二シャッター板100を中心軸117の周りに同方向、ここでは左回りに限界まで回動し、第一シャッター板99の半円孔105と第二シャッター板100の半円孔110から成る円形孔を、蓋板77の開孔部96の右半円縁96b近傍で略前方に位置させると、該右半円縁96b近傍のみが開口され、最も上位置で最小開口面積の取込み口52Cが形成される。
【0063】
すなわち、前記取込み部72には、一部に開孔部96を設けた蓋板77と、該蓋板77の表面を摺動するシャッター板99・100とを設け、該シャッター板99・100を所定位置である円周方向位置114・115まで摺動し前記開孔部96の少なくとも一部を覆って前記取込み口52・52A・52B・52Cを形成すると共に、前記シャッター板99・100の固定位置を変更可能な構成とすることにより、該取込み口52の開口面積・開口位置を自在に変更する開口調整機構118を設けるので、該開口調整機構118により、土砂120の質・量・分布や浚渫速度等の各種条件に応じて、取込み口52・52A・52B・52Cの開口面積・開口位置を適正化することができ、浚渫能力の更なる向上を図ることができる。
【0064】
更に、前記シャッター板99・100は、前記蓋板77の中心軸117の周りを個別に回動自在な扇状の第一シャッター板99と第二シャッター板100とにより構成するので、二枚のシャッター板99・100の位置を個別に変更するだけの簡単な構成により、取込み口52の開口面積・開口位置を自在に変更することができ、装置コストの低減を図ることができる。しかも、二枚のシャッター板99・100から成るため、修理の際は、破損や腐食によって寿命となった方のみを交換すればよく、メンテナンス性にも優れている。
【0065】
次に、浚渫作業時における浚渫方向の切り換えプロセスについて、図1、図4,図7により説明する。
前記支持移動装置であるクレーン本体2において、キャビン10内に設けた図示せぬ操作レバー等の操作によりクレーン部11を揺動伸縮し、該クレーン部11先端のブラケット14を河川21内に沈めて降下させ、該ブラケット14の下部に連結した浚渫体4を水底119の浚渫位置121に静置する。
【0066】
続いて、キャビン10内に設けた図示せぬ回動スイッチ等の操作により、前記回動駆動モータ63を駆動し、前記枢支部59aを中心にして回動管59と一緒に回動ユニット58を水平回動させる。そして、該回動管59に連通する取込み口52が前方を向いて停止すると、キャビン10内に設けた図示せぬ掘削スイッチ等の操作により、前記掘削モータ82を駆動して掘削部71を作動させ、土砂120の掘削を開始する。同時に、キャビン10内に設けた図示せぬポンプスイッチ等の操作により、前記加圧ポンプ37と揚水ポンプ40を駆動して吸引ポンプ5を作動させ、前記取込み口52から土砂120の取込みを開始する。
【0067】
この土砂120の掘削と取込みを行いながら、クレーン部11を揺動伸縮して浚渫体4を浚渫位置121から浚渫位置122まで前方に移動させると、浚渫位置121から浚渫位置122までの水底119が浚渫され、この範囲に、水底119よりも低位置の浚渫底124が形成される。
【0068】
浚渫位置122に到達すると、浚渫方向を前方から後方に切り換える。つまり、前記掘削部71と吸引ポンプ5を停止させた後、再び前記回動駆動モータ63を駆動し、枢支部59aを中心にして回動管59と一緒に回動ユニット58を180度水平回動させる。そして、取込み口52が後方を向いて停止すると、再び前記掘削部71と吸引ポンプ5を作動させて掘削と取込みを開始し、そのまま、浚渫体4を浚渫位置122から浚渫位置121を経由して浚渫位置123まで後方に移動させる。すると、浚渫位置121から浚渫位置123までの水底119が新たに浚渫されて浚渫底124が拡大される。
【0069】
このような浚渫作業を前後2方向で繰り返しながら、浚渫体4を左右方向に徐々に移動させることにより、浚渫底124の範囲を徐々に拡大することができる。そして、浚渫体4の左右方向への移動は、前記クレーン部11を揺動伸縮させたり、前記走行装置7aを使って走行台車7自体を移動させて行うことができる。
【0070】
すなわち、以上のような構成において、支持移動装置であるクレーン本体2の先端に取り付けて水中に浸漬する浚渫体4と、該浚渫体4を介して水底119の土砂120を移送経路である移送管路73内に吸い上げる吸引ポンプ5とを有する浚渫装置3において、前記浚渫体4の回動ユニット58をクレーン本体2に対して水平回動させる回動駆動機構60を備え、該回転駆動機構60の回転軸である垂直軸127を挟んで回動ユニット58の一側には、前記移送管路73と連通する取込み部72を部分的に設け、他側は、前記移送管路73に対して閉塞構造にすると共に、前記取込み部72の外側には掘削部71を覆設し、浚渫方向切り換え時には、前記回動駆動機構60によって回動ユニット58を水平回動して前記取込み部72の取込み口52・52A・52B・52Cを次の浚渫方向に向けるので、取込み口52・52A・52B・52Cとその近傍の部材、例えば掘削部71のカッター95やカバー90との間の相対的な位置関係はそのままで浚渫方向の切り換えを行うことができ、従来のように、取込み口を設けた回転フードとカッターとの間に浚渫不純物が巻き込まれ、取込み口52・52A・52B・52Cを浚渫方向に向けるのに時間がかかったり、噛み込みや巻き込みが著しくて回転フードやカッターが破損したりすることがなく、十分な、作業時間の短縮と装置寿命の向上を図ることができる。更に、取込み部72は、回動ユニット58の一側のみでしかも部分的にしか設けないため、取込み口52・52A・52B・52Cからの土砂120の取込み面積を小さくして吸引力を増加することができ、浚渫能力を大きく向上できる。
【0071】
なお、本実施例の支持移動装置としては、走行可能なクレーン本体2を用いたが、浚渫範囲が岸壁125から遠く離れている場合等には、浮体式等の浚渫船を用いてもよく、その種類は特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、支持移動装置の先端に取り付けて水中に浸漬する浚渫体と、該浚渫体を介して水底の土砂を移送経路内に吸い上げる吸引ポンプとを有する、全ての浚渫装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
2 クレーン本体(支持移動装置)
3 浚渫装置
4 浚渫体
5 吸引ポンプ
22 噴射ノズル
24 絞り管部
25 管路
28 吸引口
45 気相
46 混合相
47 二相流体
51 吐出口
52・52A・52B・52C 取込み口
58 回動ユニット
60 回動駆動機構
71 掘削部
72 取込み部
73 移送管路(移送経路)
77 蓋板
90 カバー
95 カッター
96 開孔部
99 第一シャッター板
100 第二シャッター板
114・115 所定位置(円周方向位置)
117 中心軸
118 開口調整機構
119 水底
120 土砂
127 垂直軸(回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持移動装置の先端に取り付けて水中に浸漬する浚渫体と、該浚渫体を介して水底の土砂を移送経路内に吸い上げる吸引ポンプとを有する浚渫装置において、前記浚渫体の回動ユニットを支持移動装置に対して水平回動させる回動駆動機構を備え、該回転駆動機構の回転軸を挟んで回動ユニットの一側には、前記移送経路と連通する取込み部を部分的に設け、他側は、前記移送経路に対して閉塞構造にすると共に、前記取込み部の外側には掘削部を覆設し、浚渫方向切り換え時には、前記回動駆動機構によって回動ユニットを水平回動して前記取込み部の取込み口を次の浚渫方向に向けることを特徴とする浚渫装置。
【請求項2】
前記掘削部は、回転する格子状のカバーと、該カバーの外面に固設されて一体回転する複数のカッターとを有することを特徴とする請求項1に記載の浚渫装置。
【請求項3】
前記取込み部には、一部に開孔部を設けた蓋板と、該蓋板の表面を摺動するシャッター板とを設け、該シャッター板を所定位置まで摺動し前記開孔部の少なくとも一部を覆って前記取込み口を形成すると共に、前記シャッター板の固定位置を変更可能な構成とすることにより、該取込み口の開口面積・開口位置を自在に変更する開口調整機構を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浚渫装置。
【請求項4】
前記シャッター板は、前記蓋板の中心軸の周りを個別に回動自在な扇状の第一シャッター板と第二シャッター板とにより構成することを特徴とする請求項3に記載の浚渫装置。
【請求項5】
前記吸引ポンプは、前記取込み口に連通する吸引口を設けた管路と、該管路内に圧力流体を高速で噴射する噴射ノズルとから構成し、前記圧力流体の負圧効果により、土砂を前記吸引口から吸引すると共に、吸引した土砂に吹き付ける圧力流体により、土砂を吸引口から管路を通って吐出口まで移送することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の浚渫装置。
【請求項6】
前記噴射ノズルには、少なくとも一方が高圧に加圧された気体と液体を供給し、気体の気相と、該気相の周囲を取り囲む液体・気体の混合相とから成る二相流体によって、前記圧力流体を構成することを特徴とする請求項5に記載の浚渫装置。
【請求項7】
前記管路には、途中部に絞り管部を設け、該絞り管部の一部または全部を交換可能な構成とすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の浚渫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179184(P2011−179184A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42258(P2010−42258)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(503172253)株式会社ハマダ (7)
【Fターム(参考)】