説明

浮上型磁気ヘッド装置の修正方法

【課題】ロードビームと、ロードビームの記録媒体側に位置する弾性変位可能な舌片を有するフレキシャと、舌片の記録媒体側の面に固定されたヘッド本体とを有し、記録媒体の回転駆動状態では、ヘッド本体が記録媒体上に浮上する浮上型磁気ヘッド装置の浮上量及び浮上時荷重のばらつきを抑制する修正方法を提案する。
【解決手段】ロードビーム5の先端部の自由状態でのロール角相当量を検出してロール角相当量がゼロに近づく方向にロードビーム5を曲げる第一の修正ステップと、このロードビーム5による浮上型磁気ヘッド装置の仮実装状態を作り、この仮実装状態におけるフレキシャ6の舌片6dのロール角相当量を検出してロール角相当量がゼロに近づく方向に左右のアウトリガー6bの少なくとも一方を曲げる第二の修正ステップとを含む浮上型磁気ヘッドの修正方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置などに装備される浮上型磁気ヘッド装置の修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮上型磁気ヘッド装置は、回転駆動されるハードディスク(記録媒体)上に延び揺動運動するロードビームに、ヘッド本体(スライダ)を固定した弾性変位可能な舌片を有するフレキシャを結合し、このフレキシャの舌片の記録媒体側の面にヘッド本体を固定している。ディスクが停止しているときは、ロードビームの弾性力によりヘッド本体の下面がディスクの記録面に接触し、ディスクが始動すると、ディスクの移動方向に沿ってヘッド本体とディスク表面の間に空気流が導かれ、ヘッド本体の下面が空気流による浮上力を受けて、ヘッド本体がディスク表面から浮上する。
【0003】
この浮上型磁気ヘッド装置では従来、ヘッド本体の姿勢が正しくディスクに水平になり、また所定の荷重が与えられるように、各種の修正を加える方法が提案されている。例えば、ヘッド本体の姿勢を修正するために、フレキシャの形状(ピッチ角やロール角相当量)を修正し(特許文献2、3、4)、あるいは荷重の大きさを調整するためにロードビームを変形させる技術が提案されている(特許文献1、5、6、7)。
【特許文献1】特開平1-227279号公報
【特許文献2】特開2000-339894号公報
【特許文献3】特開2001-357644号公報
【特許文献4】特開2002-15410号公報
【特許文献5】特開2002-170351号公報
【特許文献6】特開2002-260358号公報
【特許文献7】特開2004-82161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの修正方法を適用しても、実装状態においてディスクに対するヘッド本体の浮上量あるいは浮上時荷重(グラム荷重)にばらつきが生じるのが避けられなかった。浮上型磁気ヘッド装置の修正の目的は、極言すれば、実装状態におけるヘッド本体の浮上量あるいは浮上時荷重のばらつきを最小に抑えることにあり、従来の修正方法では、十分な修正を行うことは困難であった。
【0005】
本出願人は、このような問題意識に基づき、ロードビームの実装状態における変形、特にロール角方向の変形に着目し、この変形の大きさを測定してロール角がゼロに近づく方向にロードビームを曲げ修正する方法を提案した(特願2005-88959号)。この新提案方法は、浮上型磁気ヘッド装置の仮実装状態(記録再生を行わない点以外は実装状態と同じ状態)を作って、ヘッド本体をディスク相当面から浮上させる仮実装ステップと、この仮実装状態において、ロードビーム先端部のロール角相当量を検出するステップと、このロードビームの先端部のロール角相当量に基づき、該先端部のロール角がゼロに近づく方向に該ロードビームを曲げるステップと、を有することを特徴としている。
【0006】
ところが、この新提案方法でも未だ修正が十分に行われないことがあることが分かった。特に、浮上時荷重の左右のアンバランスを除去することが困難であった。従って、本発明は、本出願人が提案した上記の新提案方法をさらに発展改良し、浮上型磁気ヘッドの浮上量あるいは浮上時荷重(グラム荷重)のばらつきをさらに良好に修正できる修正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記新提案方法でも修正が不十分になる原因を追及したところ、上記新提案方法では、ロードビームの仮実装状態を作る際、該ロードビームに荷重をかけて変形させているため、仮実装状態を作る前の該ロードビームの形状(自由状態における形状)を考慮しておらず、これが、十分な修正を行うことができない原因であるとの結論に達してなされたものである。
【0008】
本発明方法は、ロール角相当量の修正を、ロードビームの曲げとフレキシャのアウトリガーの曲げの二段階で行うことで、ロードビームの自由状態における形状誤差も考慮した修正方法を提案するものである。
すなわち本発明は、金属材料からなり記録媒体上に延びるロードビーム;このロードビームに対する固定部と、この固定部から上記ロードビームの自由端部側に延びる左右一対のアウトリガーと、この一対のアウトリガーの先端部から該一対のアウトリガー内に延びる舌片とを有する、上記ロードビームの記録媒体側に位置する金属材料からなるフレキシャ;及びフレキシャの舌片の記録媒体側の面に固定されたヘッド本体;を有し、記録媒体の回転駆動状態では、ヘッド本体が該記録媒体上に浮上する浮上型磁気ヘッド装置の修正方法であって、ロードビームの基部を基準面に固定して先端部を自由状態に保持し、該自由状態での該ロードビーム先端部のロール角相当量を検出する第一の検出ステップと、この第一の検出ステップで検出されたロードビームの先端部のロール角相当量に基づき、該先端部のロール角がゼロに近づく方向に該ロードビームを曲げる第一の曲げステップと、この第一の曲げステップを終了した上記浮上型磁気ヘッド装置の仮実装状態を作って、ヘッド本体をディスク相当面から浮上させる仮実装ステップと、この仮実装状態において、上記フレキシャの舌片のロール角相当量を検出する第二の検出ステップと、この第二の検出ステップで検出された上記フレキシャの舌片のロール角相当量に基づき、該舌片のロール角がゼロに近づく方向に上記左右のアウトリガーの少なくとも一方を曲げる第二の曲げステップと、を有することを特徴としている。
【0009】
ロール角相当量とは、ロール角を角度として検出する必要はなく、ロードビーム先端部のトラック幅方向の高さの差を検出することで、ロール角相当量を検出できることを意味している。
【0010】
第一、第二の曲げステップにおけるロードビームとアウトリガーの曲げは、一実施態様では、該ロードビームの長手方向と直交する方向に対して傾斜するラインに沿って実行することができる。また、このロードビームとアウトリガーの曲げは、該ロードビームとアウトリガーにレーザ光を照射することで実行するのが実際的である。またロードビームの曲げは、該ロードビームとフレキシャとの最も先端側の結合部分より該ロードビームの揺動支点側において与えるのがよい。
【0011】
ロードビームおよびアウトリガーに対するレーザ光の照射は、レーザ光の強度を傾斜ライン上で異ならせる、レーザ照射をトラック幅方向とし照射強度を異ならせる、ロードビームのトラック幅方向の半分だけにレーザ光を照射する、あるいは一対のアウトリガーの一方のみにレーザ光を照射することも可能である。
【0012】
ロードビームには、レーザ光の照射ライン上に位置させて少なくとも一つの貫通穴を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浮上型磁気ヘッド装置の修正方法によれば、ヘッド本体の浮上量あるいは浮上時荷重(グラム荷重)のばらつきを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1ないし図3は、本発明方法を適用して修正する浮上型磁気ヘッド装置の一例を示しており、ヘッド本体1とこれを支持する支持部材2とから構成されている。ヘッド本体1は、ハードディスクなどの記録ディスク(記録媒体)D(図3)に対向するスライダ3を有し、このスライダ3のトレーリング側端面に薄膜素子4が設けられている。スライダ3はセラミック材料などにより形成されている。薄膜素子4は、磁気抵抗効果を利用してディスクDからの洩れ磁界を検出し磁気信号を読み取るMRヘッド(読み出しヘッド)と、コイルなどがパターン形成されたインダクティブヘッド(書き込みヘッド)とを有している。
【0015】
支持部材2は、周知のように、回転駆動されるディスクD外に揺動支点を持ちディスクD上に延びるロードビーム5と、このロードビーム5に結合されたフレキシャ6とから構成されている。ロードビーム5とフレキシャ6はともに、板ばね材料(金属材料、一般的にステンレス)により形成される。ロードビーム5は、大略先細の平板状をしており、その先端部付近には、図示下方向(ディスクD側)に突出する半球状接触部(半球状突起)7が形成されている。
【0016】
フレキシャ6は、固定部6aと、この固定部6aから前方(ロードビーム5の自由端方向)に延びる左右一対のアウトリガー6bと、この一対のアウトリガー6bの先端から内方に延びる接続部6cと、この一対の接続部6cに接続された舌片6dとを備えている。舌片6dと、アウトリガー6b及び接続部6cの間にはコ字形のスリット6eが形成されていて、舌片6dは接続部6cを中心にアウトリガー6bに対して弾性変形可能である。図1に示すように、固定部6aには位置決め孔9が形成されており、この位置決め孔9と、ロードビーム5に形成された位置決め孔8とが位置合せされた後、固定部6aがロードビーム5の下面(ディスクD側の面)にレーザ溶接などの手段などにより固定される。固定点(機械的結合部分)10は、図1では1箇所示しているが、揺動支点側にさらに図示しない複数の固定点を持っている。舌片6dの上面はロードビーム5に下方に向けて突出形成された半球状接触部7に突き当てられ、舌片6dの下面に接着固定されたヘッド本体1が、半球状接触部7の頂点を支点として姿勢を自由に変えることができる。ロードビーム5は、ヘッド本体1をディスクDに接触させる方向の弾性力を有する。ロードビーム5及びフレキシャ6の裏側(ディスクD側の面)には、ヘッド本体1(薄膜素子4)に接続される配線パターンが設けられるが図示を省略している。
【0017】
本実施形態では、以上の浮上型磁気ヘッド装置の修正に当たり、第一の修正ステップとして、図4のように、ロードビーム5の基部5Xを、ベースプレート12の基準面12rに押し当てて固定し自由状態に保持する。基準面12rは、精密な基準平面であり、ロードビーム5の先端部がこの基準面12rと平行であれば、ロール角(相当量)はゼロ(0゜)である。ロール角は、トラック幅方向の基準面12rからの傾きと定義される。先端部とは、半球状接触部7と固定点10(または位置決め孔8(位置決め孔9))との間であって、半球状接触部7に近い部分を言う。
【0018】
第一の修正ステップは、このようにロードビーム5を自由状態に保持した状態において、該ロードビーム先端部のロール角相当量を検出する第一の検出ステップと、この第一の検出ステップで検出されたロードビームの先端部のロール角相当量に基づき、該先端部のロール角がゼロに近づく方向に該ロードビームを曲げる第一の曲げステップと、を含んでいる。
【0019】
具体的には、図5に示すように、ロードビーム5の先端部のこの基準面12rとの高さの差をトラック幅方向に離間させて2点測定することでロール角相当量を検出することができる。図4の符号15は、ロードビーム5及びフレキシャ6表面の任意の点の高さを測定する高さ測定器であり、XY方向に自由に移動することができる。図6に示すように、高さ測定器15は制御部17に接続されており、制御部17から入力される制御信号に応じて、XY方向に移動する。高さ測定器15は、例えばレーザ変位計、干渉縞による変位測定器を用いることができる。
【0020】
図5の下方の実線は、ロードビーム5の先端部のロール角相当量5Rを示した図である。このロール角相当量5Rは、ロードビーム5の表面のトラック幅方向に離間した図2及び図5の2点RとLの基準面12r(と平行な面12r’)からの高さ(ベースプレート12の基準面12rとの高さの差)を測定し、この2点を直線で結んで描いたものである。このロール角相当量5Rの測定結果は、ロードビーム5の先端部のL点の高さがR点より高いことを示している。符号5R'はロール角(ロール角相当量)ゼロを示している。ロール角は、角度として求める必要はなく、このように、トラック幅方向に離間した2点の高さの差(ロール角相当量)で実質的に検出することができる。
【0021】
本実施形態は、この第一の検出ステップで検出したロール角相当量に基づき、第一の曲げステップにおいて、該先端部のロール角がゼロに近づく方向に該ロードビーム5を曲げる。この曲げは、例えばロードビーム5の長手方向と直交する方向(図5のトラック幅方向)に対して傾斜角θだけ傾斜するライン(傾斜ライン)に沿って均一に行うことで、先端部のロール角をゼロに近づけることができる。いま、図5の上部に示す傾斜ライン5Xに沿って先端部が上昇する方向にロードビーム5を均一に曲げると、ロードビーム5の先端部のロール角相当量は小さくなる。すなわち、傾斜ライン5Xは、高さの低いR点側において先端部への距離が長く、高さの高いL点側において先端部への距離が短くなるように傾斜している。このため、傾斜ライン5Xからの距離が長い程、先端部の上昇量は大きくなることとなり、ロール角はゼロに近づく。傾斜ライン5Xの方向(傾斜角θ)は、L点とR点の高さの差に基づいて定めることができる。
【0022】
曲げは、理論的には機械的に行うことも可能であるが、量産レベルでは、レーザ光の照射で行うことが実際的である。本実施形態では、図・に示すように、レーザ光を照射するレーザ光源18に、レーザ光の強度と方向を制御する光源制御回路19が接続されおり、この光源制御回路19は制御部17に接続されている。レーザ光源18は、例えば半導体レーザを使用することができる。レーザ光源18から特定の強度のレーザ光を線状に照射し急冷すると(常温中でレーザ光を短時間だけ照射すると)、レーザ光の照射されたラインが谷になるようにロードビーム5が曲がる。曲がり角(先端部の上昇量)は、照射するレーザ光の強度に依存する。
【0023】
従って、傾斜ライン5Xの方向はロール角相当量の検出結果に基づいて定めることができ、照射レーザ光の強度は、ロードビーム5先端の必要とする持ち上げ量(上昇量)に応じて定めることができる。
【0024】
すなわち、傾斜ライン5Xの方向(傾斜角θ)及びレーザ光の強度の組み合わせとロール角相当量との関係は予め求められていて記憶部21に記憶されており、制御部17は、この関係に基づいて演算部22で演算されたロール角相当量が所定の範囲内に収まるように、傾斜ライン5Xの方向とレーザ光の強度とを設定する。傾斜ライン5Xの方向とレーザ光の強度を設定すると、制御部17は、光源制御回路19に、傾斜ライン5Xの方向に対応するレーザ光の出射角度とレーザ光の強度を指定する指示信号を送信する。光源制御回路19は、制御部17の指示信号に従ってレーザ光源18からレーザ光を照射させる。
【0025】
このように、ロール角相当量に基づいて、傾斜ライン5Xの方向とレーザ光の強度を設定し、レーザ光を照射することによって、ロードビーム5を曲げ修正することができる。
【0026】
レーザ光の強度を傾斜ライン5X上で異ならせる、レーザ照射をトラック幅方向とし照射強度を異ならせる、ロードビームのトラック幅方向の半分だけにレーザ光を照射する、等によってもロードビーム5先端の曲がり量(浮上量)を変化させることが可能である。
【0027】
また、この傾斜ライン(曲げライン)5Xは、ロードビーム5とフレキシャ6との最も先端側の結合部分10よりも基部(実装したときの揺動中心)側に設定することが好ましい。結合部分10よりも先端側に傾斜ラインを設定すると、ロードビーム5の先端のロール角をゼロに近づけたとしても、結合部分10を介して結合されているフレキシャ6に支持されたヘッド本体1の姿勢を改善する効果が小さい。またロードビーム5には、レーザ光を照射する傾斜ライン5X上に貫通穴5Yを形成する(傾斜ライン5Xは貫通穴5Y上に設定する)ことが好ましい。貫通穴5Yが存在することで、ロードビーム5を曲げることが容易になる。
【0028】
本実施形態は、以上の第一の修正ステップに続いて、第二の修正ステップを実行する。第二の修正ステップは、第一の修正ステップを終了した浮上型磁気ヘッド装置の仮実装状態を作って、ヘッド本体をディスク相当面から浮上させる仮実装ステップと、この仮実装状態において、フレキシャの舌片のロール角相当量を検出する第二の検出ステップと、この第二の検出ステップで検出された舌片のロール角相当量に基づき、該先端部のロール角がゼロに近づく方向に左右アウトリガーの少なくとも一方を曲げる第二の曲げステップと、を含んでいる。
【0029】
すなわち、以上の第一の修正ステップ(第一の曲げステップ)を終了した磁気ヘッド装置は、図7に示すように、仮ディスクD'上にセットして仮実装状態とされる。仮ディスクD'は、回転中心13を中心に回転する仮ディスク駆動部16(図6)に固定されている。この仮ディスク駆動部16は、仮ディスク駆動回路20を介して制御部17に接続されている。仮ディスク駆動回路20は、制御部17から回転駆動の指示信号を受けると、仮ディスク駆動部16に対して回転のための駆動信号(電流)を供給し、仮ディスク駆動部16は入力された駆動信号に応じた所定の回転数で仮ディスクD'とともに回転する。実装状態と仮実装状態の差は、実際に記録再生を行うか否かにあり、ディスクD(仮ディスクD')を回転させてヘッド本体1の浮上状態を作る点では同一である。ロードビーム5の基部は、ベースプレート12の基準面12rに押し当てられ、仮ディスクD'上に延びている。仮ディスクD'が、回転中心13を中心に回転駆動されると、図7、図8に模式的に示すように、ヘッド本体1が仮ディスクD’上で浮上する。すなわち、ヘッド本体1はリーディング側がトレーリング側よりも仮ディスクD'上に高く持ち上がる傾斜した浮上姿勢となる。浮上量をδ(図8)で示した。この浮上状態においては、ヘッド本体1が、ロードビーム5の半球状接触部7の頂点とフレキシャ6の舌片6dとの接触点(部)を中心に揺動して仮ディスクD'の凹凸に追従する。
【0030】
第二の修正ステップでは、まず、この仮実装状態において、フレキシャ6の舌片6dのロール角相当量を検出する(第二の検出ステップ)。ロール角は、前述のように、舌片6dのトラック幅方向の仮ディスクD'表面からの傾きと定義され、仮ディスクD'の表面と平行なときゼロ(0゜)である。ベースプレート12の基準面12rは、仮ディスクD'の表面と厳密に平行とされている。
【0031】
舌片6dのロール角相当量の測定(検出)に当たっては、制御部17から回転駆動の駆動信号を受けて仮ディスク駆動部16及びこの仮ディスク駆動部16に固定された仮ディスクD'を回転させる。すると、ヘッド本体1が仮ディスクD'上に浮上する。浮上量δが安定したところで、高さ測定器15は、制御部17の指示信号を受けてXY方向に移動し、フレキシャ6の舌片6d上のa点(又はb点)(図9)の仮ディスクD'表面からの高さを測定する。測定値は、制御部17に接続された記憶部21に記憶される。a点(又はb点)の高さを測定した後、高さ測定器15は、b点(又はa点)の仮ディスクD'表面からの高さを測定するように制御部17から指示信号を受ける。測定値は、記憶部21に記憶される。a点とb点の高さの測定値は、制御部17に接続された演算部22でロール角相当量に演算されて、記憶部21に記憶される。
【0032】
図9(B)は、図9(A)のIXB-IXB線に沿う断面図であり、フレキシャ6の舌片6dのロール角相当量(傾斜)が誇張して描かれている。同時に、左右のアウトリガー6bの高低差及びロードビーム5との位置関係を誇張して描いている。図9の例では、舌片6dはb点側がa点側より仮ディスクD’に接近する方向にロールしている。
【0033】
第二の修正ステップでは、この第二の検出ステップでのフレキシャ6の舌片6dのロール角相当量の検出値(仮ディスクD’表面からの傾斜量)に応じ、第二の曲げステップにおいて、今度は、該舌片6dのロール角がゼロに近づく方向にフレキシャ6の左右のアウトリガー6bを曲げる。図9には、このアウトリガー6bを、上述のロードビーム5の曲げと同様に、レーザ光照射により曲げる際の照射ライン6Xの例を示している。照射ライン6Xは、アウトリガー6bの長手方向と直交する方向(図9のトラック幅方向)に対して傾斜角βだけ傾斜している。いま、左右のアウトリガー6bを同図に示す傾斜ライン6Xに沿って先端部が上昇する方向に均一に曲げると、フレキシャ6の舌片6dのロール角相当量は小さくなる。すなわち、傾斜ライン6Xは、高さの低いb点側において先端部への距離が長く、高さの高いa点側において先端部への距離が短くなるように傾斜している。このため、傾斜ライン6Xからの距離が長い程、先端部の上昇量は大きくなることとなり、ロール角はゼロに近づく。傾斜ライン6Xの方向(傾斜角β)は、a点とb点の高さの差に基づいて定めることができる。レーザ光の照射回路その他は、ロードビーム5に対するものと同様のものを用いることができる。
【0034】
また、同様の曲げ修正は、左右のアウトリガー6bの裏面にレーザ光を照射することによっても行うことができる。すなわち、アウトリガー6bの裏面に照射ライン6X’(傾斜角β’)に沿って同様にレーザ光を照射すれば、フレキシャ6の舌片6dのロール角相当量を小さくすることができる。勿論、右方と左方のアウトリガー6bの一方にレーザ光を照射してもよい。
【0035】
以上の第二の修正ステップを終了した浮上型磁気ヘッド装置は、浮上量及び浮上時荷重のばらつきが良好に修正されている。
【0036】
ロードビーム5及びフレキシャ6のアウトリガー6bの曲げ修正は、通常一回のレーザ光照射で行うことができるが、必要に応じてレーザ光の照射条件を変更し、照射を繰り返してもよい。
【0037】
以上の実施形態に示したレーザ光の照射位置は、勿論一例であり、フレキシャ6の舌片6dのロール角相当量に応じて、その照射位置及び強度を定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の修正方法を適用する浮上型磁気ヘッド装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】ロードビーム先端とフレキシャ部分の拡大平面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う、ヘッド本体の浮上状態の模式断面図である。
【図4】図1ないし図3の浮上型磁気ヘッド装置のロードビームの基部を基準面に押しつけて固定し、自由状態に保持した状態を示す概念的側面図である。
【図5】本発明の修正方法の第一の修正ステップを説明する図である。
【図6】本発明の修正方法を適用する浮上型磁気ヘッド装置の制御系統を示すブロック図である。
【図7】図1ないし図3の浮上型磁気ヘッド装置の仮実装状態を示す概念的側面図である。
【図8】同仮実装状態における磁気ヘッドの仮ディスクD’からの浮上状態を示す、図3に対応する断面図である。
【図9】本発明の修正方法の第二の修正ステップを説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ヘッド本体
2 支持部材
3 スライダ
4 薄膜素子
5 ロードビーム
6 フレキシャ
6a 固定部
6b アウトリガー
6c 接続部
6d 舌片
6e スリット
7 半球状接触部
8 9 位置決め孔
10 結合部分
12 ベースプレート
12r 基準面
13 回転中心
15 高さ測定器
16 仮ディスク駆動部
17 制御部
18 レーザ光源
19 光源制御回路
20 仮ディスク駆動回路
21 記憶部
22 演算部
D ディスク(記録媒体)
D' 仮ディスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなり記録媒体上に延びるロードビーム;
このロードビームに対する固定部と、この固定部から上記ロードビームの自由端部側に延びる左右一対のアウトリガーと、この一対のアウトリガーの先端部から該一対のアウトリガー内に延びる舌片とを有する、上記ロードビームの記録媒体側に位置する金属材料からなるフレキシャ;及び
上記フレキシャの舌片の記録媒体側の面に固定されたヘッド本体:
を有し、記録媒体の回転駆動状態では、上記ヘッド本体が該記録媒体上に浮上する浮上型磁気ヘッド装置の修正方法であって、
上記ロードビームの基部を基準面に固定して先端部を自由状態に保持し、該自由状態での該ロードビーム先端部のロール角相当量を検出する第一の検出ステップと、
この第一の検出ステップで検出されたロードビームの先端部のロール角相当量に基づき、該先端部のロール角がゼロに近づく方向に該ロードビームを曲げる第一の曲げステップと、
この第一の曲げステップを終了した上記浮上型磁気ヘッド装置の仮実装状態を作って、ヘッド本体をディスク相当面から浮上させる仮実装ステップと、
この仮実装状態において、上記フレキシャの舌片のロール角相当量を検出する第二の検出ステップと、
この第二の検出ステップで検出された上記フレキシャの舌片のロール角相当量に基づき、該舌片のロール角がゼロに近づく方向に上記左右のアウトリガーの少なくとも一方を曲げる第二の曲げステップと、
を有することを特徴とする浮上型磁気ヘッド装置の修正方法。
【請求項2】
請求項1記載の浮上型磁気ヘッド装置の修正方法において、上記第一、第二の曲げステップにおけるロードビームとアウトリガーの曲げは、該ロードビームの長手方向と直交する方向に対して傾斜するラインに沿って実行される浮上型磁気ヘッド装置の修正方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の浮上型磁気ヘッド装置の修正方法において、第一、第二の曲げステップにおけるロードビームとアウトリガーの曲げは、該ロードビームにレーザ光を照射することで実行される浮上型磁気ヘッド装置の修正方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の浮上型磁気ヘッド装置の修正方法において、上記第一の曲げステップにおけるロードビームの曲げは、上記ロードビームとフレキシャとの最も先端側の結合部分より該ロードビームの揺動支点側において実行される浮上型磁気ヘッド装置の修正方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の浮上型磁気ヘッド装置の修正方法において、上記ロードビームには、レーザ光の照射ライン上に位置させて少なくとも一つの貫通穴が形成されている浮上型磁気ヘッド装置の修正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−59621(P2008−59621A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231454(P2006−231454)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】