説明

浮上防止マンホール及び浮上防止マンホールの施工方法

【課題】地震時に地盤が液状化した際に、マンホールが浮上して道路面に突出することを防止し得る浮上防止用のマンホールを目的とする。
【解決手段】斜壁管4、調整リング5、蓋受枠6を積層したマンホールにおいて、
斜壁管4と調整リング5との間又は調整リング5と蓋受枠6との間に、斜壁管4の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リング1を有し、浮上防止リング1は、モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔1a又は浮上防止リング1の表面に施した凹凸21aを有し、浮上防止リング1の周囲にモルタル又はコンクリートを充填して施工することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に地盤の液状化現象により、マンホールが浮上して道路上にその上部が突出する現象を抑制することが出来る浮上防止マンホール及び浮上防止マンホールの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマンホールの内で、特に組立マンホールについて図7(a)、(b)、(c)で説明する。即ち、組立マンホールは、図に示す如く、一般的に地中のマンホール用穴の底部に栗石又は砕石等からなる基礎(省略)を設け、その上に底版51、管取付壁管52、直壁管53、斜壁管54、調整リング55を順に積層し、該調整リング55上にマンホール蓋を開閉自在に取付けることができる蓋受枠56を載置固定して構成していた。図中57は舗装層、58、59は下水管である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然るに、液状化地盤に設置されたマンホールは、地震等によって地盤が液状化した場合には、図7(a)、(b)、(c)に示す如く、マンホールの「みかけ比重」が液状化した地盤よりも小さい為に浮力が発生する。
【0004】
この浮力がマンホールに作用した場合には、特にマンホール上部の斜壁管54が円錐形の形状をしているために、マンホールの上部の蓋受枠56、調整リング55及び斜壁管54等が道路の舗装層57を破砕して、路面上に大きく突出して交通の邪魔になると共に、マンホールに取付けられていた下水管58、59がマンホールから離脱してしまう等の問題があった。
【0005】
特に、近年発生した新潟県中越地震においては、マグニチュード6.8の地震が発生したため、地域によっては、震度7、震度6の激しい揺れが観測され、この地域においては、地盤に液状化現象が発生し、多くの場所で道路の路面上にマンホールの上部が突出し、交通障害の原因となる問題もあった。
【0006】
それを解決する方法として、特願2005−122100のリング状浮上防止板による防止方法があるが、鋼製のリング状板又はコンクリート製調整リングを用いている。
【0007】
鋼製リングを用いる場合は、浮上力に抵抗するため、リングの板厚を厚くしたり補強のリブを入れ剛性を高くする必要があった。また、鋼製リングでは重量が軽いため、マンホールの見かけ比重を多くすることが、困難であった。
【0008】
一方、コンクリート製調整リングを用いた場合には、鋼製リングよりもマンホールの見かけ比重を大きくすることが可能であったが、反面大きく重いため、狭い現場での施工及び搬送に問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、マンホールの上部に斜壁管の上縁の外径以上の外径を有する浮上防止リングを取付けて構成し、マンホールの施工に当って該浮上防止リングをコンクリートと一体化することによって、地震時に地盤に液状化現象が発生しても、マンホールが浮上することを防止可能かつ、マンホールの見かけ比重を大きくできるとともに施工性及び搬送性のよい浮上防止マンホール及び浮上防止マンホールの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る浮上防止マンホールの構成は、斜壁管、調整リング、蓋受枠を積層したマンホールにおいて、前記斜壁管と前記調整リングとの間又は前記調整リングと前記蓋受枠との間に、前記斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを有し、該浮上防止リングは、モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔又は前記浮上防止リングの表面に施した凹凸を有し、前記浮上防止リングの周囲にモルタル又はコンクリートを充填して施工することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る浮上防止マンホールの施工方法の第一の構成は、上記浮上防止マンホールの施工方法であって、マンホールの底版、管取付壁管、直壁管、斜壁管を設置する工程と、前記斜壁管と前記調整リングとの間又は前記調整リングと前記蓋受枠との間に、前記斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを設ける工程と、モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔又は凹凸を有する前記浮上防止リングの周囲にモルタル又はコンクリートを充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る浮上防止マンホールの施工方法の第二の構成は、上記第一の構成の浮上防止マンホールの施工方法であって、既に設置してあるマンホールの周囲の舗装を切断撤去し、斜壁管の上面まで掘削した後、蓋受枠及び調整リングを撤去する工程と、前記斜壁管と前記調整リングとの間又は前記調整リングと前記蓋受枠との間に、前記斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを設ける工程と、モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔又は凹凸を有する前記浮上防止リングの周囲にモルタル又はコンクリートを充填する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浮上防止マンホールによれば、斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを斜壁管の上縁と蓋受枠との間に介在させたので、地震時にマンホールの地盤が液状化しても、浮上防止リングが周りの舗装層や地盤に押さえられるので、マンホールの浮上を防止することが出来る。さらに、浮上防止リングに設けた貫通孔又は凹凸にコンクリートが充填されて、浮上防止リングはコンクリートと一体化し、あわせてマンホールの見かけ比重が大きくなることで確実にマンホールの浮上を防止することが出来る。さらに、施工性及び搬送性も高めることができる。
【0014】
本発明に係る浮上防止マンホールの施工方法の第一の構成によれば、上記浮上防止マンホールを新規に設置する際に、特殊な工事を行う必要がなく、簡単に施工できる。
【0015】
本発明に係る浮上防止マンホールの施工方法の第二の構成によれば、既存のマンホールを上記浮上防止マンホールにする際に、特殊な工事を行う必要がなく、簡単に施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図により本発明に係る浮上防止マンホールの一実施例を具体的に説明する。図1は本発明に係る第1実施例の浮上防止マンホールの平面図及び縦断面図である。図2は第1実施例で使用される浮上防止リングの平面図及び縦断面図である。図3は第1実施例の浮上防止マンホールの地震時の状態を示す縦断面説明図である。図4は浮上防止マンホールの施工方法の説明図である。図5は既存のマンホールを浮上防止マンホールに変更する施工方法の説明図である。
【0017】
(浮上防止マンホールの構成)
図1乃至図3に示すように、本発明に係る第1実施例の浮上防止マンホールAは、浮上防止リング1、斜壁管4、調整リング5、蓋受枠6、鉄蓋10、マンホールの底版12、管取付壁管13、直壁管14、下水管15、16を有している。
【0018】
図2に示すように、浮上防止リング1は、中央部に丸穴2を有するリング状の鉄板である。浮上防止リング1の外径は、斜壁管4の上縁の外径よりも大きく形成されている。浮上防止リング1は、丸穴2の周りに、複数のボルト穴3と、モルタル又はコンクリートCを充填する貫通孔1aと、を穿孔している。浮上防止リング1の周囲にモルタル又はコンクリートCを充填して施工する。
【0019】
なお、浮上防止リング1は、経済性、入手の容易さから鋼製が望ましいが、特に限定されるものではなく。貫通孔1aの形状は、特に限定されるものではなく、円形、矩形等様々な形状とすることができる。
【0020】
浮上防止リング1の周囲に充填されたモルタル又はコンクリートCは、硬化して浮上防止リング1と一体化する。硬化したモルタル又はコンクリートCの上にアスファルトやコンクリートの舗装層11を形成し、マンホールAの周りの道路面を形成している。
【0021】
斜壁管4は、直壁管14の上に設置され、上縁に浮上防止リング1を設置する。斜壁管4は、下端の内径が直壁管14の内径と同じで、上端の内径が丸穴2の径と同じに形成されており、上端に向かうにつれて径が小さくなるように、斜めに形成されている。
【0022】
調整リング5、蓋受枠6は、順に斜壁管4の上に設置されている。浮上防止リング1、調整リング5、蓋受枠6は、インサートアンカー7、ボルト8、ナット9により、斜壁管4に固定されている。鉄蓋10は蓋受枠6を被蓋する。
【0023】
直壁管14の下端には、管取付壁管13が設置され、管取付壁管13の底には底版12が設置されている。管取付壁管13の側壁には、下水管15、16が連結されている。
【0024】
(浮上防止マンホールAの施工方法)
ここで、浮上防止マンホールAの施工方法について説明する。図4(a)に示すように、まず、従来の浮上防止マンホールの施工と同様に、底版12、管取付壁管13、直壁管14、下水管15、16を設置する。
【0025】
そして、浮上防止リング1をマンホールAの上部に組付けるに当っては、図4(b)に示すように、斜壁管4の上縁に浮上防止リング1を設置する。浮上防止リング1の上に調整リング5、蓋受枠6を載置した後、これ等の浮上防止リング1、調整リング5及び蓋受枠6のボルト穴にボルト8を挿通し、斜壁管4の上縁に埋設されたインサートアンカー7、ボルト8及びナット9によって、これ等の斜壁管4、浮上防止リング1、調整リング5及び蓋受枠6を一体的に相互に連結する。インサートアンカー7、ボルト8、ナット9を用いることによって、浮上防止リング1をマンホールAの上部に簡単に組込み、かつ安定した状態で取付けることが出来る。
【0026】
図4(c)に示すように、斜壁管4、浮上防止リング1、調整リング5及び蓋受枠6を連結した状態で、浮上防止リング1の周囲にモルタル又はコンクリートCを充填する。充填されたモルタル又はコンクリートCは、貫通孔1aに入り込み、浮上防止リング1の上下にムラ無くモルタル又はコンクリートが充填され、硬化して浮上防止リング1と一体化する。図4(d)に示すように、硬化したモルタル又はコンクリートCの上にアスファルトやコンクリートの舗装層11を形成し、マンホールAの周りの道路面を形成する。
【0027】
この浮上防止マンホールAの施工方法によれば、浮上防止マンホールAを新規に設置する際に、特殊な工事を行う必要がなく、簡単に施工できる。
【0028】
ここで、既存のマンホールを浮上防止マンホールAに変更する施工方法について説明する。まず、図5(a)、図5(b)に示すように、回転する環状の切断刃を有するダイヤモンドビット等の環状切断機17で、鉄蓋10の周りの舗装層11を切断する。そして、図4(a)に示すように、調整リング5、蓋受枠6の周りの掘削し、調整リング5、蓋受枠6、鉄蓋10を撤去する。その後は図4(a)〜図4(d)に示す上記新規に浮上防止マンホールAを設置する施工方法と同様にして、浮上防止リング1を設置する。
【0029】
この浮上防止マンホールAの施工方法によれば、既存のマンホールを浮上防止マンホールAにする際に、特殊な工事を行う必要がなく、簡単に施工できる。
【0030】
なお、切断は円環でなく、舗装層11をダイヤモンドカッターにより角形に切断してもよい。また、この時のモルタル又はコンクリートCは、切断形状と同様に角形となる。
【0031】
(浮上防止マンホールAの作用・効果)
上記第1実施例の浮上防止マンホールAは、図3に示す如く、地震が発生して周りの地盤が液状化して、マンホールAに浮力が働いて浮上がろうとする。この際、斜壁管4の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リング1を設けたことにより、マンホールAの上部に取付けられた浮上防止リング1の上面に対して舗装層11による反力が働き、マンホールAが浮上することを防止することが出来る。また、マンホールの見かけ比重を大きくできるとともに施工性及び搬送性を高めることができる。
【0032】
また、浮上防止リング1に設けた貫通孔1aにモルタル又はコンクリートCが充填されて、浮上防止リング1はモルタル又はコンクリートCと一体化し、確実にマンホールAの浮上を防止することが出来る。
【0033】
さらに、モルタル又はコンクリートCが補強材の役割をし、モルタル又はコンクリートCと一体化した浮上防止リング1はより強固になる。このため、浮上防止リング1を薄くしたり、外径をそれほど大きくしなくても、舗装層11による反力に耐えることができ、浮上防止リング1の製造コストをおさえることができる。
【0034】
(第2実施例に係る浮上防止マンホール)
次に、本発明に係る第2実施例に係る浮上防止マンホールについて説明する。図6は第2実施例で使用される浮上防止調整リングの平面図及び縦断面図である。
【0035】
図6に示すように、第2実施例に係る浮上防止マンホールは、上記第1実施例の浮上防止リング1の貫通孔1aに変えて、凹凸21aを設けた浮上防止リング21を用いたものである。すなわち、浮上防止リング21は、表面にモルタル又はコンクリートCを充填する凹凸21aを施してある。
【0036】
凹凸21aの形状は、図6に示す形状に限定されるものではなく、モルタル又はコンクリートCが充填され、硬化した際にモルタル又はコンクリートCと浮上防止リング1とがしっかりと一体化する形状であればよい。
【0037】
本実施例の浮上防止リング21を用いた浮上防止マンホールにおいても、上記第1実施例の浮上防止マンホールAと同様に、マンホールが浮上することを防止することが出来る。特に本実施例では、浮上防止リング1に設けた凹凸21aにより、浮上防止リング1とモルタル又はコンクリートCの付着が強固になり、浮上防止リング1はモルタル又はコンクリートCと一体化し、確実にマンホールAの浮上を防止することが出来る。
【0038】
さらに、縞鋼板のような予め表面に凹凸21aがある材料を用いるを用いることで、安価に製作することができる。
【0039】
また、本実施例の浮上防止マンホールにおいて、浮上防止リング1、21は、斜壁管4と調整リング5との間に設けた構成としたが、浮上防止リング1、21を調整リング5と蓋受枠6との間に設けてもよい。
【0040】
また、浮上防止リングは、貫通孔1aと凹凸21aの両方を設けたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る浮上防止マンホールは、前記実施例で説明した組立マンホールの他に、現場でコンクリートを打設して構成する古い形式の現場施工マンホールにも利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る第1実施例の浮上防止マンホールの平面図及び縦断面図である。
【図2】第1実施例で使用される浮上防止リングの平面図及び縦断面図である。
【図3】第1実施例の浮上防止マンホールの地震時の状態を示す縦断面説明図である。
【図4】浮上防止マンホールの施工方法の説明図である。
【図5】既存のマンホールを浮上防止マンホールに変更する施工方法の説明図である。
【図6】第2実施例で使用される浮上防止リングの平面図及び縦断面図である。
【図7】従来のマンホールが地盤が液状化した際に浮上る状態を示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0043】
A …浮上防止マンホール
C …モルタル又はコンクリート
1、21 …浮上防止リング
1a …貫通孔
2 …丸穴
3 …ボルト穴
4 …斜壁管
5 …調整リング
6 …蓋受枠
7 …インサートアンカー
8 …ボルト
9 …ナット
10 …鉄蓋
11 …舗装層
12 …底版
13 …管取付壁管
14 …直壁管
15 …下水管
16 …下水管
17 …環状切削機
21a …凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜壁管、調整リング、蓋受枠を積層したマンホールにおいて、
前記斜壁管と前記調整リングとの間又は前記調整リングと前記蓋受枠との間に、前記斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを有し、
該浮上防止リングは、モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔又は前記浮上防止リングの表面に施した凹凸を有し、前記浮上防止リングの周囲にモルタル又はコンクリートを充填して施工することを特徴とする浮上防止マンホール。
【請求項2】
請求項1に記載の浮上防止マンホールの施工方法であって、
マンホールの底版、管取付壁管、直壁管、斜壁管を設置する工程と、
前記斜壁管と前記調整リングとの間又は前記調整リングと前記蓋受枠との間に、前記斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを設ける工程と、
モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔又は凹凸を有する前記浮上防止リングの周囲にモルタル又はコンクリートを充填する工程と、を有することを特徴とする浮上防止マンホールの施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載の浮上防止マンホールの施工方法であって、
既に設置してあるマンホールの周囲の舗装を切断撤去し、斜壁管の上面まで掘削した後、蓋受枠及び調整リングを撤去する工程と、
前記斜壁管と前記調整リングとの間又は前記調整リングと前記蓋受枠との間に、前記斜壁管の上縁の外径よりも大きな外径を有する浮上防止リングを設ける工程と、
モルタル又はコンクリートを充填する貫通孔又は凹凸を有する前記浮上防止リングの周囲にモルタル又はコンクリートを充填する工程と、を有することを特徴とする浮上防止マンホールの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−101404(P2008−101404A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285149(P2006−285149)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】