説明

浮上防止マンホール構造

【課題】地震による液状化が発生してもマンホールの突き上げ浮上が起き難い浮上防止マンホール構造の提供。
【解決手段】浮上防止マンホール構造Aは、立坑10の底に設置される底板2と、底板2上に載置され砕石基礎20を構成する多数の砕石21と、短管51を連通穴32に配設し砕石基礎20に載置される底版3と、天板4と底板2とを連結する棒状固定具4と、底版3に固定される直壁筒31と、下端が短管51に嵌め込まれ上端の開口52がマンホールの上部に臨むドレーンパイプ5とを備える。この浮上防止マンホール構造Aは、地震で地盤が液状化した際に地下水がドレーンパイプ5を通ってマンホール内に入り、且つアンカー効果により浮き上がり難く、突き上げ浮上を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上防止マンホール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震により地盤が液状化するとマンホールが浮き上がり、地面からマンホールが突き上げ浮上する現象が発生する。
特許文献1の技術は、パイプ下端を、インバートおよび基礎部へ貫通させて地山に到達させ、パイプ上端を地下水位上とする複数本の中空パイプを設け、この中空パイプにより水分を上昇させて上端開口からマンホール内へ放散している。
【特許文献1】特開2007−23603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術は、パイプ下端を、インバートおよび基礎部へ貫通させて地山に到達させる工事に手間がかかる。
【0004】
本発明の第1の目的は、マンホールの突き上げ浮上を防止できる浮上防止マンホール構造の提供にある。
本発明の第2の目的は、地震による液状化が発生してもマンホールの突き上げ浮上が起き難い浮上防止マンホール構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1について)
水抜穴付きの底板は、立坑の底に設置される。この底板上には多数の砕石が載置されて砕石基礎を形成している。
底版は、砕石基礎上に設置され、マンホールの底部となる。
マンホールの側壁となる直壁筒は、底版上に固定され、下部外周の複数箇所に掛止具を取り付けている。
天板は、直壁筒へ遊嵌可能な穴を有し、直壁筒へ嵌め込まれる。この天板は、掛止具に固定されるか掛止具上に載置される。
固定手段により、天板を底板へ連結して固定する。
【0006】
浮上防止マンホール構造は、下部外周の複数箇所に掛止具を取り付け、天板を掛止具に固定するか、天板を掛止具上に載置し、固定手段により天板を底板へ連結して固定している。そして、底板上に多数の砕石を載置して砕石基礎を形成したことによる重量増加(アンカー効果)に加え、土圧による抵抗が天板にかかるため、浮上防止マンホール構造は、突き上げ浮上を防止できる。
【0007】
底版上に固定される直壁筒の下部外周の複数箇所に掛止具を取り付け、天板を掛止具に固定するか、天板を掛止具上に載置する構造であるので、直壁筒の外径を底版の外径と同じにできる。
【0008】
(請求項2について)
水抜穴付きの底板は、立坑の底に設置される。この底板上には多数の砕石が載置されて砕石基礎を形成している。
底版は、砕石基礎上に設置され、マンホールの底部となる。
マンホールの側壁となる直壁筒は、筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に固定される。
天板は、直壁筒へ遊嵌可能な穴を有し、直壁筒へ嵌め込まれ、底版上に載置される。
固定手段により、天板を底板へ連結して固定する。
【0009】
浮上防止マンホール構造は、直壁筒へ嵌め込まれて底版上に載置される天板を、固定手段により底板へ連結して固定している。
そして、底板上に多数の砕石を載置して砕石基礎を形成したことによる重量増加(アンカー効果)に加え、土圧による抵抗が天板にかかるため、浮上防止マンホール構造は、突き上げ浮上を防止できる。
【0010】
浮上防止マンホール構造は、天板を直壁筒へ嵌め込んで底版上に載置し、固定手段により、天板を底板へ連結して固定する構造である。
そして、底板上に多数の砕石を載置して砕石基礎を形成したことによる重量増加に加え、土圧による抵抗が天板にかかるため、浮上防止マンホール構造は、突き上げ浮上を防止できる。
なお、筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に直壁筒を固定し、底版縁を掛止具替わりにして天板を掛止しているので、底版上に固定される直壁筒の下部外周に掛止具を取り付ける必要がない。
【0011】
(請求項3について)
天板の外径を底板の外径よりも大きくすれば、天板にかかる土圧を大きくでき、マンホールの突き上げ浮上を、より一層、防止できる。
【0012】
(請求項4について)
浮上防止マンホール構造は、底版の板縁部に連通穴を穿設し、この連通穴に水密的に短管を取り付け、パイプ下端が短管に内嵌し、パイプ上端の開口がマンホール上部に臨む様にドレーンパイプを取り付けている。
【0013】
上記アンカー効果(砕石基礎による重量増加で底部が重い)と、パイプ下端を短管に内嵌し、パイプ上端の開口をマンホールの上部に臨ませていることにより、浮上防止マンホール構造は、地盤が液状化しても浮き上がり難く、突き上げ浮上を防止できる。
なお、底版の各連通穴に短管を水密的に取り付け、ドレーンパイプを各短管へ水密的に取り付けて立ち上げているので、通常時には、ドレーンパイプ中の水位は上方開口より下方に位置し、上方開口からマンホール内へ地下水が吐出しない。
【0014】
(請求項5について)
連通穴への短管の水密的な取り付けは、以下の様に行う。
径小円筒部、径拡部、径大円筒部、および鍔部を有する円筒ゴムジョイントを短管へ嵌め込んで径小円筒部を締付具で短管端部へ締め付ける。
この締付体(複数)を底版上側から底板の連通穴(複数)へ嵌め込む。
円筒ゴムジョイントの径大円筒部と短管外周面との隙間へ底版上側から楔管を打ち込むと円筒ゴムジョイントが連通穴内で拡がり、円筒ゴムジョイントを連通穴へ水密的に固定することができる。
楔管内にドレーンパイプのパイプ下端を嵌め込む。
【0015】
マンホールの直壁筒および底版の製造と、短管の連通穴への取り付けとを、施工現場でなく工場で行うことができる。また、施工現場では、連通穴に取り付けた短管に、ドレーンパイプの先端を連結すれば良いので、施工現場で底版から容易にドレーンパイプを立ち上げることができる。
このため、現場の作業が簡略化でき(施工が容易)、施工費用が安価で済む。また、現場で組み付ける部材の数を少なくできるので、現場で行う作業の施工工程数も少なくて済む。
【0016】
(請求項6について)
請求項6の浮上防止マンホール構造は、請求項4、5の浮上防止マンホール構造において、連通穴の直下に、砕石の替わりにドレーン材を配している。
ドレーン材を配した浮上防止マンホール構造は、ドレーン材で地下水が濾過されてドレーンパイプへ入るので、ドレーンパイプが異物で詰まったり、マンホール内へ異物が流入するという不具合が防止できる。
【0017】
(請求項7について)
底板は、上下に貫通する複数の水抜穴が開けられ、立坑の底に設置される。
容器内に濾過材を封入したドレーン容器は、底板の板端より内方の底板上面へ容器下端面を固着している。なお、ドレーン容器は、円筒部の長さが短い有底円筒体を逆さにした形状を呈する。
砕石基礎は、底板にドレーン容器を固着した底板構造体の上に多数の砕石を載置して形成している。
底版は、砕石基礎上に設置される。
【0018】
直壁筒は、筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に固定される。
穴付の天板は、直壁筒へ遊嵌可能な穴を有し、直壁筒へ嵌め込んで、底版上に載置される。
固定手段は、天板を底板へ連結して固定している。
ドレーンパイプは、下端開口がドレーン容器内へ連通する様にパイプ下端をドレーン容器に固定し、天板を貫通して上方へ臨み、上端開口が直壁筒内へ連通する様にパイプ上端を直壁筒に固定している。
【0019】
浮上防止マンホール構造は、砕石基礎による重量増加で底部が重いというアンカー効果に加え、容器内に濾過材を封入したドレーン容器の容器下端面を底板の板端より内方の底板上面へ固着し、ドレーンパイプの下端開口がドレーン容器内へ連通する様にパイプ下端をドレーン容器に固定し、天板を貫通して上方へ臨み、上端開口が直壁筒内へ連通する様にパイプ上端を直壁筒に固定するという構造を備えている。
【0020】
このため、地震で地盤が液状化した際には、地下水が底板の水抜穴からドレーン容器内へ入り、濾過材で濾過され、ドレーンパイプ内を通ってマンホール内に入り込む。なお、濾過材で濾過された地下水がマンホール内に入るので、下流の下水施設へ汚泥等を流入させない。
これにより、地盤が液状化してもマンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を防止できる。なお、通常時には、ドレーンパイプ中の水位は上端開口より下方に位置し、ドレーンパイプの上端開口からマンホール内へ地下水が吐出しない。
なお、容器内に濾過材を封入したドレーン容器を採用しているので、濾過材の量を多くすることができるとともに、濾過材の流失を防止できる。
【0021】
(請求項8について)
浮上防止マンホール構造は、複数の集水孔を穿設したパイプ外壁を濾過材で被覆し、先端が閉塞した副ドレーンパイプの基端を、上端開口より下方位置でドレーンパイプに連結して連通させている。
地震で地盤が液状化した際には、直壁筒の周囲の間隙水(地下水)を、濾過材を介して集水孔から副ドレーンパイプ内に入って、マンホールの直壁筒内へ排水できるので、マンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を、より一層、防止できる。
なお、通常時には、副ドレーンパイプ内の水位は上端開口より下方に位置するため、副ドレーンパイプを介してマンホール内へ地下水が吐出しない。
また、パイプ外壁を濾過材で被覆しているので、副ドレーンパイプが異物で詰まったり、マンホール内へ異物が流入するという不具合が防止できる。
【0022】
(請求項9について)
浮上防止マンホール構造は、天板および固定手段がないので、構造が簡単であるとともに、材料代を節約できる。
天板によるアンカー効果は、ないものの、地震で地盤が液状化した際には、直壁筒の周囲の間隙水(地下水)および底板下部の地下水をマンホールの直壁筒内へ排水できるので、マンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
浮上防止マンホール構造は、板上に多数の砕石を載置して砕石基礎を形成し、立坑の底に設置される底板と、砕石基礎上に設置される底版と、筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に固定される直壁筒と、直壁筒へ嵌め込まれ、底版上に載置される穴付の天板と、天板を底板へ連結して固定する固定手段と、パイプ上端の開口がマンホール上部に臨む様に水密的に底版に取り付けられるドレーンパイプとを具備する。
【0024】
この浮上防止マンホール構造は、アンカー効果(マンホールの底部が重い)により浮き上がり難く、且つ、地震で地盤が液状化した際に地下水がドレーンパイプを通ってマンホール内に入り込むので突き上げ浮上を防止できる。
【0025】
マンホールの直壁筒および底版の製造と、短管の連通穴への取り付けとを工場で行うことができる。また、施工現場では、連通穴に配設した短管にパイプ先端を連結すれば良いので、ドレーンパイプの立ち上げが容易である。
このため、現場の作業が簡略化でき(施工が容易)、施工費用が安価で済む。また、現場で組み付ける部材の数を少なくできるので、現場で行う作業の施工工程数も少なくて済む。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1(請求項2〜6に対応)を図1〜図3に基づいて説明する。
浮上防止マンホール構造Aは、立坑10の底に設置される底板2と、板上に載置され砕石基礎20を構成する多数の砕石21と、砕石基礎20に載置される底版3と、底版3に固定される直壁筒31と、直壁筒31へ嵌め込まれて底版3上に載置される天板4と、底版3から立設するドレーンパイプ5と、天板4を底板3へ連結して固定する棒状固定具40(固定手段)とを備える。
【0027】
立坑10の底に設置される底板2は、鉄等の金属で形成され、ボルト穴(四個)および砕石21より小さい多数の小穴(水抜穴)を有する。この底板2は、板上に多数の砕石21を載置して砕石基礎20を形成している。
【0028】
砕石基礎20に載置される底版3(コンクリート製)は、円板状であり、三個の連通穴32が120°づつ隔てて、直壁筒31の内壁に近い底版縁部に開けられている。
各連通穴32には円筒ゴムジョイント53が嵌め込まれ、円筒ゴムジョイント53には楔管54が圧入され、楔管54には短管51(合計三本)が嵌め込まれている。
【0029】
直壁筒31は、金具や接着剤等を用い、水密的に底版3へ含浸接着されている。
天板4(鉄等の金属製)は、ボルト穴(四個)、および直壁筒31へ遊嵌可能な穴41を有し、穴41を直壁筒31へ嵌め込んで、底版3上に載置される。
この天板の外径を底板の外径よりも大きくすれば、天板にかかる土圧を大きくでき、マンホールの突き上げ浮上を、より一層、防止できる。
【0030】
棒状固定具40は、各ボルト穴へ嵌めこまれるアンカーボルト43とナット44とからなり、ナット44を締め付けることにより、天板4と底板2とが連結固定される。
【0031】
底版3から立設する三本のドレーンパイプ5(樹脂製)は、下端が短管51に嵌め込まれ、内方を向いた開口52 (上端開口)が地下水位より上方位置に配されている。
【0032】
つぎに、浮上防止マンホール構造Aの施工方法を説明する。
<工場での作業>
底版3を、工場で、図3の(a)〜(e)に示す様に製造する。
図3の(a)に示す如く、120°づつ隔てて、三個の連通穴32を底版3の底版縁部に開ける。なお、現場で直壁筒31を下ろした際に、直壁筒31の内壁に近い位置に連通穴32を開ける。
【0033】
円筒ゴムジョイント53は、短管51の外径に内径が略等しい径小円筒部53aと、内外径が拡がっていく径拡部53bと、径大円筒部53cと、穴淵へ引っ掛けるための鍔部53dとを有する。この円筒ゴムジョイント53を短管51へ嵌め込み、径小円筒部53aをステンレスバンド53e(締付具)で短管端部51aへ締め付ける。この締付体を底版上側から連通穴32へ嵌め込む{図3の(b)参照}。
【0034】
楔管54をハンマー等で叩いて、円筒ゴムジョイント53の円筒部内へ楔管54を圧入する{図3の(c)参照}。これにより、円筒ゴムジョイント53は、底版3の連通穴32へ水密的に接合する。
【0035】
<現場での作業>
アンカーボルト43をボルト穴に嵌め込んだ底板2を、トラック等で、直壁筒31、およびドレーンパイプ5等とともに現場へ運搬する。
この底板2をロープで吊るして立坑開口から立坑10内へ下ろし、図2の(a)に示す様に、立坑10の底に設置する。
【0036】
図2の(b)に示す様に、砕石21を多数個、立坑開口から底板2内に載置して平らな砕石基礎20を作る。なお、予め、地下水を濾過するためのドレーン材22を、砕石21の替わりに、底版3を載置した際に各連通穴32が臨む位置へ配しておく。
【0037】
工場で円筒ゴムジョイント53の円筒部内へ楔管54を圧入した底版3を施工現場へ運び、立坑開口から立坑10内へ下ろし、砕石基礎20に底版3を載置する{図3の(d)→図2の(c)}。
【0038】
図2の(d)に示す様に、直壁筒31を立坑開口から立坑10内へ入れて底版3上に載置し、直壁筒31を底版3に固定する{図2の(d)参照}。
【0039】
直壁筒31へ遊嵌可能な穴41を有する天板4を、直壁筒31へ嵌め込んで、底版3上に載置する{図2の(e)参照}。
ナット44を締め付け、天板4と底板2とを連結固定する{図2の(f)参照}。
立坑開口からドレーンパイプ5を直壁筒31内へ下ろし、短管51の管内へドレーンパイプ5を挿入{図3の(e)参照}する。
【0040】
本実施例の浮上防止マンホール構造Aは、以下の利点を有する。
[あ]浮上防止マンホール構造Aは、立坑10の底に設置した底板2へ多数の砕石21を入れて砕石基礎20とし、底版縁部に開けた連通穴32に短管51を水密的に取り付けた底版3を砕石基礎20に載置し、底版3に直壁筒31を固定し、棒状固定具40のナット44を締め付けることにより、天板4と底板2とを連結固定しているので、マンホールの底部を重くできアンカー効果が得られる。
更に、ドレーンパイプ5の下端を短管51に連結し、開口52をマンホールの上部に臨ませているので、地震で地盤が液状化した際に地下水がドレーンパイプ5を通ってマンホール内に入り込む。よって、地盤が液状化してもマンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を防止できる。
【0041】
なお、底版3の各連通穴32に短管51を水密的に取り付け、ドレーンパイプ5を各短管51へ水密的に取り付けて立ち上げているので、通常時には、ドレーンパイプ5中の水位は上方開口より下方に位置し、ドレーンパイプ5の上方開口からマンホール内へ地下水が吐出しない。
【0042】
[い]浮上防止マンホール構造Aは、直壁筒31および底版3の製造と、短管51の連通穴32への取り付けとを工場で行う。そして、現場で、連通穴32に短管51を取り付けた底版3を砕石基礎20に載置し、直壁筒31を底版3上に載置して固定し、棒状固定具40のナット44を締め付けて、天板4と底板2とを連結固定し、ドレーンパイプ5を短管51内へ挿入している。
【0043】
連通穴32の形成や短管51の取付等の下準備を工場で行っているので、現場の施工が簡単になるとともに、現場の施工を少ない工程数で行うことができる。また、現場で組み付ける部材の数を少なくできる。故に、施工期間が短く、施工費が安価で済む。
【0044】
[う]浮上防止マンホール構造Aは、天板4の外径が底板2の外径よりも大きいので、天板4にかかる土圧を大きくできる。このため、天板4の外径が底板2の外径と同じ場合に比べ、浮上防止マンホール構造Aは、マンホールの突き上げ浮上を、より一層、防止できる。
【0045】
[え]浮上防止マンホール構造Aは、連通穴32の直下に、砕石21の替わりにドレーン材22を配している。このため、地盤が液状化した際に、ドレーン材22により地下水が濾過されてドレーンパイプ5へ入るので、ドレーンパイプ5が異物で詰まったり、マンホール内へ異物が流入するという不具合が防止できる。
【実施例2】
【0046】
つぎに、本発明の実施例2(請求項2に対応)を図4および図5に基づいて説明する。 浮上防止マンホール構造Bは、立坑10の底に設置される底板6と、マンホール底となる底版7と、底版7上に固定される直壁筒31と、底版7上に載置される天板8と、天板8を底板6に固定する棒状固定具9(固定手段)とを具備する。
【0047】
底板6(鉄製)は、底版7より径大な円板部(外径φ130cm)と、円板部の縁から立ち上がる円筒部とからなる。底板6の円板部には、多数の水抜穴60、および棒状固定具9を通すためのボルト穴61(四個)が形成されている。
この底板6の円筒部内には、水抜穴60より大きい多数の砕石21が入れられ、上面が平坦な砕石基礎20(20cm厚)を形成している。
【0048】
底版7(コンクリート製;外径φ110cm)は、肉厚(13cm)の円板状を呈し、砕石基礎20上に水平に設置されている。
天板8(鉄製;外径φ150cm)は、底版7の外径より小さく直壁筒31の外径より大きい嵌込穴81(穴;φ106cm)を有する円環状を呈する。この天板8は、立坑10の上方から、直壁筒31へ遊嵌させた状態で降ろして底版7上に載置される。なお、アンカーボルト90を通すためのボルト穴82(四個)が板面に形成されている。
【0049】
棒状固定具9は、ボルト穴61周囲の底板6下面にボルト頭部91を溶接し、天板8のボルト穴82を雄ネジ部92が貫通するアンカーボルト90(4−M32)と、雄ネジ部92に捩じ込まれるナット93とからなる。
【0050】
つぎに、浮上防止マンホール構造Bの施工方法を説明する。
(1)浮上防止マンホール構造Bを埋設するための立坑10を掘削する。
(2)アンカーボルト90を溶接した、水抜穴60付の底板6を立坑開口から立坑10内へ降ろし、立坑底に載置する{図5の(a)参照}。なお、アンカーボルト90のボルト頭部91をボルト穴61周囲の底板6下面に工場で予め溶接しておく。
【0051】
(3)多数の砕石21を底板6の円筒部内へ投入し、上面が平坦な砕石基礎20を形成する{図5の(b)参照}。
(4)砕石基礎20上に底版7を設置する{図5の(c)参照}。
【0052】
(5)直壁筒31を立坑開口から立坑10内へ降下させ底版7上に載置して固定する。直壁筒31の固定は、接着剤や複数個の取付金具を用い、下筒面が底版縁より内側に臨む様に、水密的に底版7へ含浸接着する{図5の(d)参照}。なお、直壁筒31は、予め、工場で製造しておく。
【0053】
(6)底版7の外径より小さく、直壁筒31の外径より大きい嵌込穴81を有する天板8を、立坑10の上方から直壁筒31に対して遊嵌状態に降ろして底版7上に載置する{図5の(e)参照}。
(7)天板8のボルト穴82から突出する雄ネジ部92にナット93を捩じ込み、底版7に天板8を固定する{図5の(f)参照}。
【0054】
[お]浮上防止マンホール構造Bは、多数の砕石21を底板6上に載置して砕石基礎20を形成したことによる重量増加に加え、土圧による抵抗が天板8にかかるため、突き上げ浮上を防止できる。
浮上防止マンホール構造Bを埋設する土質の種類に応じ、砕石21の量(砕石基礎20の高さ)や、天板8の大きさを調整する。例えば、突き上げ浮上が起き易い土質の場合には、砕石21の量を増やし、天板8を大きくする。
【0055】
[か]浮上防止マンホール構造Bは、嵌込穴81付の天板8を立坑10の上方から遊嵌状態に降ろして底版7上に載置し、アンカーボルト90とナット93により天板8を底板6に固定する構造であるので、天板8を直壁筒31へ固定する掛止具が不要である。
【実施例3】
【0056】
つぎに、本発明の実施例3(請求項7に対応)を図8に基づいて説明する。
浮上防止マンホール構造Cは、図8に示す如く、立坑10の底に設置される底板2と、容器内に濾過材23aを封入したドレーン容器23と、底板2にドレーン容器23を溶接した底板構造体24の上に多数の砕石21を載置して凹状に形成した砕石基礎20と、砕石基礎20内に埋設される底版3と、底版3上に固定される直壁筒31と、直壁筒31へ嵌め込まれて、底版3上に載置される天板4と、パイプ下端55をドレーン容器23に固定し、パイプ上端56を直壁筒31に固定したドレーンパイプ5(四本)と、天板4を底板2へ連結して固定する棒状固定具40(固定手段)とを具備する。
【0057】
底板2(円盤状)は、鉄等の金属で形成され、ボルト穴25(四個)および砕石21より小さい多数の小穴26(水抜穴)を有する。
底板2より径小のドレーン容器23(有底円筒状)は、鉄等の金属で形成され、容器下端面27を、底板2の板端より内方の底板上面へ溶接している。このドレーン容器23内には、濾過材23aが封入されている。
【0058】
ドレーン容器23より径小の底版3(コンクリート製)は、厚肉の円盤状であり、底版表面が露出する様に、砕石基礎20の凹部内に埋設される。
円筒状の直壁筒31は、金具や接着剤等を用い、筒下面が底版縁より内側となる位置に底版3へ含浸接着されている。
【0059】
天板4(鉄等の金属製)は、ボルト穴h(四個)、および直壁筒31へ遊嵌可能な穴41を有し、穴41を直壁筒31へ嵌め込んで、底版3上に載置される。
棒状固定具40は、ボルト穴25、hへ嵌めこまれるアンカーボルト43とナット44とからなり、ナット44を締め付けることにより、天板4と底板2とが連結固定される。
【0060】
ドレーンパイプ5(四本;樹脂製)は、開口57(下端開口)がドレーン容器23内へ連通し、天板4を貫通して立設し、地下水位より上方位置で開口52(上端開口)を直壁内31へ連通させている。
【0061】
本実施例の浮上防止マンホール構造Cは、以下の利点を有する。
[き]浮上防止マンホール構造Cは、砕石基礎20による重量増加で底部が重いというアンカー効果に加え、容器内に濾過材23aを封入したドレーン容器23の容器下端面27を底板2の板端より内方の底板上面へ固着し、ドレーンパイプ5の下端開口がドレーン容器内へ連通する様にパイプ下端55をドレーン容器23に固定し、天板4を貫通して上方へ臨み、開口52が直壁筒31内へ連通する様にパイプ上端56を直壁筒31に固定するという構造を備えている。
このため、地震で地盤が液状化した際には、地下水が底板2の水抜穴26からドレーン容器23内へ入り、濾過材23aで濾過され、ドレーンパイプ5内を通ってマンホール内に入り込む。なお、濾過材23aで濾過された地下水がマンホール内に入るので、下流の下水施設へ汚泥等を流入させない。
これにより、地盤が液状化してもマンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を防止できる。なお、通常時には、ドレーンパイプ5中の水位は上方開口より下方に位置し、ドレーンパイプ5の開口52からマンホール内へ地下水が吐出しない。
なお、容器内に濾過材23aを封入したドレーン容器23を採用しているので、濾過材23aの量を多くすることができるとともに、濾過材23aの流失を防止できる。
【実施例4】
【0062】
つぎに、本発明の実施例4(請求項8に対応)を図9に基づいて説明する。
浮上防止マンホール構造Dは、図9に示す如く、立坑10の底に設置される底板2と、容器内に濾過材23aを封入したドレーン容器23と、底板2にドレーン容器23を溶接した底板構造体24の上に多数の砕石21を載置して凹状に形成した砕石基礎20と、砕石基礎20内に埋設される底版3と、底版3上に固定される直壁筒31と、直壁筒31へ嵌め込まれて、底版3上に載置される天板4と、パイプ下端55をドレーン容器23に固定し、パイプ上端56を直壁筒31に固定したドレーンパイプ5(三本)と、天板4を底板2へ連結して固定する棒状固定具40(固定手段)と、基端72を開口52(上端開口)より下方位置でドレーンパイプ5に連結して連通させた副ドレーンパイプ71、71とを具備する。
【0063】
副ドレーンパイプ71(合計六本)は、ドレーンパイプ5を対峙して、二本づつ平行に配置され複数の集水孔73を穿設したパイプ外壁を濾過材74で被覆し、先端を閉塞させている。
【0064】
本実施例の浮上防止マンホール構造Dは、以下の利点を有する。
[く]浮上防止マンホール構造Dは、複数の集水孔73を穿設したパイプ外壁を濾過材74で被覆し、先端が閉塞した副ドレーンパイプ71、71の各基端72を、上端開口52より下方位置でドレーンパイプ5に連結して連通させている。
地震で地盤が液状化した際には、直壁筒31の周囲の間隙水(地下水)を、濾過材74を介して集水孔73から副ドレーンパイプ71、71内に入って、マンホールの直壁筒内320へ排水できるので、マンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を、より一層、防止できる。
なお、通常時には、副ドレーンパイプ71、71内の水位70は、開口52より下方に位置するため、副ドレーンパイプ71、71を介してマンホール内へ地下水が吐出しない。
また、パイプ外壁を濾過材74で被覆しているので、副ドレーンパイプ71、71が異物で詰まったり、マンホール内へ異物が流入するという不具合が防止できる。
【0065】
つぎに、本発明の実施例5(請求項9に対応)を図10に基づいて説明する。
浮上防止マンホール構造Eは、図10に示す如く、浮上防止マンホール構造Dから天板4および棒状固定具40(固定手段)を省き、ドレーンパイプ5を二本とし、各ドレーンパイプ5を対峙して副ドレーンパイプ71を二本づつ平行に配置している。
【0066】
浮上防止マンホール構造Eは、天板4および棒状固定具40がないので、構造が簡単であるとともに、材料代を節約できる。
天板4によるアンカー効果は、ないものの、地震で地盤が液状化した際には、直壁筒31の周囲の間隙水(地下水)および底板下部の地下水をマンホールの直壁筒内320へ排水できるので、マンホールが浮き上がり難く、マンホールの突き上げ浮上を防止できる。
【0067】
(変形例1;請求項1に対応)
取付金具35等で底版7上に固定した直壁筒31の下部外周に、ボルト36でL字金具37(掛止具)を複数取り付け、直壁筒31より大きい嵌込穴81(穴)付きの天板8を嵌め込んでL字金具37上に載置し、アンカーボルト90とナット93により天板8を底板6に固定する構造であっても良い(図6参照)。
【0068】
(変形例2;請求項2に対応)
図4に示す実施例2において、底板6と天板8との固定を、棒状固定具9を用いず、鉄板94を溶接して固定しても良い(図7参照)。
【0069】
(変形例3、4)
棒状固定具9、40(固定手段)の数は、4本に限定されず、任意である。
また、連通穴32の数は、3個に限定されず、任意である。
【0070】
浮上防止対策を施すマンホールは、現場打ちマンホールであっても良い。
底版、直壁筒は、断面円形に限らず、断面角形であっても良い。
底板の下に、砕石または濾過材を敷いても良く、この場合、ドレーン容器内に濾過材を配する必要はない。
【0071】
請求項4、5、7、8、9におけるドレーンパイプの数、請求項8、9でドレーンパイプに連結する副ドレーンパイプの数は、任意である。
閉塞させた副ドレーンパイプの先端に、集水孔を開けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【図2】実施例1に係る浮上防止マンホール構造の現場での施工を示す工程図である。
【図3】実施例1に係る浮上防止マンホール構造の工場での組立を示す工程図である。
【図4】実施例2に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【図5】実施例2に係る浮上防止マンホール構造の現場での施工を示す工程図である。
【図6】変形例1に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【図7】変形例2に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【図8】実施例3に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【図9】実施例4に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【図10】実施例5に係る浮上防止マンホール構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
A、B、C、D、E 浮上防止マンホール構造
2、6 底板
3、7 底版
4、8 天板
5 ドレーンパイプ
10 立坑
20 砕石基礎
21 砕石
22 ドレーン材
23 ドレーン容器
31 直壁筒
32 連通穴
37 L字金具(掛止具)
9、40 棒状固定具(固定手段)
41 穴
51 短管
52 開口(上端開口)
53 円筒ゴムジョイント
53a 径小円筒部
53b 径拡部
53c 径大円筒部
53d 鍔部
53e ステンレスバンド
54 楔管
57 開口(下端開口)
60 水抜穴
70 水位
71 副ドレーンパイプ
72 基端
73 集水孔
74 濾過材
81 嵌込穴(穴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑の底に設置され、板上に多数の砕石を載置して砕石基礎を形成した水抜穴付きの底板と、
砕石基礎上に設置される底版と、
底版上に固定され、下部外周の複数箇所に掛止具を取り付けた直壁筒と、
該直壁筒へ遊嵌可能な穴を有し、前記直壁筒へ嵌め込んで、前記掛止具に固定されるか掛止具上に載置される穴付の天板と、
該天板を前記底板へ連結して固定する固定手段とを備える浮上防止マンホール構造。
【請求項2】
立坑の底に設置され、板上に多数の砕石を載置して砕石基礎を形成した水抜穴付きの底板と、
砕石基礎上に設置される底版と
筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に固定される直壁筒と、
該直壁筒へ遊嵌可能な穴を有し、前記直壁筒へ嵌め込んで、底版上に載置される穴付の天板と、
該天板を前記底板へ連結して固定する固定手段とを備える浮上防止マンホール構造。
【請求項3】
前記天板の外径を前記底板の外径よりも大きくしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮上防止マンホール構造。
【請求項4】
前記底版の板縁部に連通穴を穿設し、
該連通穴に水密的に短管を取り付け、
パイプ下端が前記短管に内嵌し、パイプ上端の開口がマンホール上部に臨む様にドレーンパイプを取り付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の浮上防止マンホール構造。
【請求項5】
径小円筒部、径拡部、径大円筒部、および鍔部を有する円筒ゴムジョイントを前記短管へ嵌め込んで前記径小円筒部を締付具で短管端部へ締め付け、
この締付体を底版上側から前記連通穴へ嵌め込み、
前記径大円筒部と短管外周面との隙間へ底版上側から楔管を打ち込み、
更に楔管内に前記ドレーンパイプのパイプ下端を嵌め込んだことを特徴とする請求項4に記載の浮上防止マンホール構造。
【請求項6】
前記連通穴の直下に、前記砕石の替わりにドレーン材を配したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の浮上防止マンホール構造。
【請求項7】
上下に貫通する複数の水抜穴が開けられ、立坑の底に設置される底板と、
該底板の板端より内方の底板上面へ、容器下端面を固着し、容器内に濾過材を封入したドレーン容器と、
前記底板に前記ドレーン容器を固着した底板構造体の上に多数の砕石を載置して形成した砕石基礎と、
底版表面が露出する様に砕石基礎内に埋設される底版と、
筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に固定される直壁筒と、
該直壁筒へ遊嵌可能な穴を有し、前記直壁筒へ嵌め込んで、底版上に載置される穴付の天板と、
該天板を前記底板へ連結して固定する固定手段と、
下端開口が前記ドレーン容器内へ連通する様にパイプ下端を前記ドレーン容器に固定し、前記天板を貫通して上方へ臨み、上端開口が直壁筒内へ連通する様にパイプ上端を前記直壁筒に固定したドレーンパイプとを具備することを特徴とする浮上防止マンホール構造。
【請求項8】
複数の集水孔を穿設したパイプ外壁を濾過材で被覆し、先端が閉塞した副ドレーンパイプの基端を、前記上端開口より下方位置で前記ドレーンパイプに連結して連通させたことを特徴とする請求項7に記載の浮上防止マンホール構造。
【請求項9】
上下に貫通する複数の水抜穴が開けられ、立坑の底に設置される底板と、
該底板の板端より内方の底板上面へ、容器下端面を固着し、容器内に濾過材を封入したドレーン容器と、
前記底板に前記ドレーン容器を固着した底板構造体の上に多数の砕石を載置して形成した砕石基礎と、
底版表面が露出する様に砕石基礎内に埋設される底版と、
筒下面が底版縁より内側に臨む様に底版上に固定される直壁筒と、
下端開口が前記ドレーン容器内へ連通する様にパイプ下端を前記ドレーン容器に固定し、上端開口が直壁筒内へ連通する様にパイプ上端を前記直壁筒に固定したドレーンパイプとを具備し、
複数の集水孔を穿設したパイプ外壁を濾過材で被覆し、先端が閉塞した副ドレーンパイプの基端を、前記上端開口より下方位置で前記ドレーンパイプに連結して連通させたことを特徴とする浮上防止マンホール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−52391(P2009−52391A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132959(P2008−132959)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(599024001)株式会社サンリツ (20)
【Fターム(参考)】