説明

浮体式起伏型ゲートの扉体起立・倒伏作動装置

【課題】浮体式起伏ゲートの扉体を強制的に起立・倒伏作動させることが可能で、扉体の自動起立・倒伏作動時において扉体に取り付けられたワイヤーロープが弛むことなく常時緊張状態を確保してゲート全閉作動に支障が発生しない、浮体式起伏型ゲートの扉体起立・倒伏作動装置を提供する。
【解決手段】河川水位の変動に対して自動的に扉体25が起立・倒伏作動する浮体式起伏ゲート設備であって、ワイヤーロープ22を扉体25の先端部と巻取り・巻出しドラム5に連結し、ドラム5を回転作動させることによって扉体25を強制的に起立作動させてゲート閉操作を行う扉体起立・倒伏作動装置において、ドラム5の駆動軸4とドラム5を回転させる動力発生装置の入力軸がクラッチを介して接続・開放可能に連結され、さらに駆動軸4には常にワイヤー巻取り方向に回転力を作用させるバネ式緊張装置が連結されるとともに、ワイヤー巻出し方向の回転速度を制御する遠心ブレーキ装置が連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧作用力と重力を原動力として自動開閉作動を行う浮体式起伏ゲート設備において、扉体を強制的に起立・倒伏作動させることが可能な浮体式起伏ゲートの扉体起立・倒伏作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川堤防の樋管に、河川水の逆流防止を目的として河川水位の変化に応じて浮体式の扉体を自動的に開閉作動させることが可能な浮体式起伏ゲート設備が設置されている。
【0003】
図6は、河川堤防の樋門の出口を開放・閉塞するゲート設備として設置された従来の浮体式起伏型ゲート設備を示す側断面図であり、同図の(a)は全閉状態を示し、(b)は開放状態を示す。
【0004】
図6において、河川堤防の樋管の出口に浮体式起伏型扉体25が設置されている。この浮体式起伏型扉体25は、樋管出口の水路部床にヒンジ26で設置されており、水路部の上下流の水位変化による水圧力(浮力)を利用して樋管の出口を自動開閉するようになっている。27は側部戸当金物である。
【0005】
図6(a)に示すように、本河川側の水位41が支川側(樋管)の水位42より高いときは、浮体式起伏型扉体25が起立して樋管出口を閉塞し、水の逆流を防止する。また、本河川側の水位41が支川側(樋管)の水位42に近づくと、浮体式起伏型扉体25が徐々に開放し、本河川側の水位41が支川側(樋管)の水位42より低くなると、図6(b)に示すように浮体式起伏型扉体25が開放して支川側(樋管)の水が本河川側に自然排水される。
【0006】
このように、このゲート形式は、水路河床に下部ヒンジ方式で設置された浮体式の扉体がゲートの上・下流水位変化に対し、その水圧作用力と重力を原動力とし的確に開閉作動することから、人為的な操作を必要とせずに樋管の止水・排水管理が可能となる。
【0007】
しかしながら、従来の浮体式起伏型ゲート設備は、ゲート全開時において倒伏した扉体の上部又は下部河床部に土砂が堆積すると扉体の完全な起立・倒伏動作が困難となり、土砂堆積が過度に進行すると、堆積土砂の重量によって扉体の自動起立作動が不可能になるなどの問題点を有している。
【0008】
この問題に対応するため、図5に示すように、小形の浮体式起伏ゲート設備において、扉体25の先端のワイヤーロープ連結部24にワイヤーロープ22の一端を取付け、ワイヤーロープ22の他端を転向滑車23、ワイヤーガイド29を介してワイヤー巻取装置31のドラムに巻き取り・巻き戻し可能に連結する。ワイヤー巻取装置32のドラムの回転操作によってワイヤーロープ22を巻き取りあるいは巻出しにより扉体25を強制的に起立・倒伏作動させることができる扉体操作装置を設置した事例がある。なお、30は上部戸当金物、31は上部支持金物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3488653号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、扉体25の自由な自動起立・倒伏動作を可能とするためには、全倒伏状態の扉体25の位置に対応するワイヤーロープ22の巻出し長さが必要となる。このため、扉体25が倒伏状態から、図5に示すように自動起立作動を行っている状態ではワイヤーロープ22が扉体上面で弛んだ状態となり、この弛んだワイヤーロープ22がゲート自動全閉時において扉体25と上部戸当金物30や上部支持金物31との間に挟まり込み、ゲート不完全閉作動障害を発生させるという重大な問題点を有している。
【0011】
そこで、本発明は、扉体を強制的に起立・倒伏作動が可能な浮体式起伏ゲートの扉体の自動起立・倒伏作動時において、扉体でワイヤーロープが弛むことなく常時緊張状態を確保してゲート全閉作動に支障が発生しない、浮体式起伏型ゲートの扉体起立・倒伏作動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の問題点を解決するため、本発明の浮体式起伏ゲートの扉体起立・倒伏作動装置は、河川堤防等に設けられる樋管に水路河床部ヒンジ方式で設置され、河川水位の変動に対して自動的に扉体が起立・倒伏作動して樋管通水断面を開放および閉鎖する浮体式起伏ゲート設備であって、扉体先端部にワイヤーロープの一端を取り付け、同ワイヤーロープの他端を巻取り・巻出しドラムに連結し、巻取り・巻出しドラムを回転作動させることによって扉体を強制的に起立作動させてゲート閉操作を行う扉体起立・倒伏作動装置において、前記巻取り・巻出しドラムの駆動軸と前記巻取り・巻出しドラムを回転させる動力発生装置の入力軸がクラッチを介して接続・開放可能に連結され、さらに前記ワイヤー巻取り・巻出しドラムの駆動軸には常にワイヤー巻取り方向に回転力を作用させるバネ式緊張装置が連結されるとともに、ワイヤー巻出し方向の回転速度を制御する遠心ブレーキ装置が連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浮体式起伏ゲートの扉体起立・倒伏作動装置は、クラッチを開放した状態において、扉体が水位変動により自動起立作動する場合は巻取りドラムがバネ式緊張装置によって常に巻取り方向に回転しようとすることによりワイヤーの弛み発生を防止する。
【0014】
反対にクラッチを開放して自動倒伏作動時には、遠心ブレーキ装置によって扉体の急速な倒伏動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の扉体作動装置の機構図である。
【図2】本発明の扉体作動装置を備えた浮体式起伏ゲート設備の全体図である。
【図3】本発明の扉体作動装置を備えた浮体式起伏ゲート設備において、(a)は扉体起立状態を示す図、(b)は扉体起立状態を示す図である。
【図4】本発明の扉体作動装置を備えた浮体式起伏ゲート設備において、扉体の自動起立作動時の状態を示す図である。
【図5】従来の扉体作動装置を備えた浮体式起伏ゲート設備において、扉体の自動起立作動時の状態を示す図である。
【図6】従来の浮体式起伏ゲート設備を示し、(a)は止水状態を示す図、(b)は排水状態を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、装置架台12上に設置される動力発生装置としてウォーム減速機1、多板クラッチ2、ギヤボックス(変速機)3、駆動軸4が順次連結され、駆動軸4にはワイヤー巻取り・巻出しドラム5が固定され、ウォーム減速機1を手動ハンドル操作により回転させ、多板クラッチ2、ギヤボックス(変速機)3及びワイヤー巻取り・巻出しドラム5を回転作動させることができる機構となっている。多板クラッチ2はクラッチ操作ハンドル10で入り・切りされる。
【0017】
ワイヤー巻取り・巻出しドラム5は、駆動軸4によって渦巻きバネからなるバネ式緊張装置6と連結している。バネ式緊張装置6はワイヤー巻取り・巻出しドラム5がワイヤーロープ巻出し回転することによってねじられるものとする。また、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5は、駆動軸4、ギヤボックス3、軸継手7、遠心ブレーキ軸8を経由して遠心ブレーキ9と連結している。遠心ブレーキ軸8には開度計11が設けられ、扉体の起立・倒伏動作にともない駆動軸4、ギヤボックス3、軸継手7、遠心ブレーキ軸8の回転が伝達されて扉体の開度が表示される。
【0018】
図2及び図3において、本発明の扉体作動装置21のワイヤー巻取りドラム5にワイヤーロープ22の一端が連結され、浮体構造で起伏型の扉体25の上部に設けられたワイヤーロープ連結部24にワイヤーロープ22の一端が連結されている。
【0019】
ワイヤーロープ22は、側部戸当金物27に設けられたワイヤー溝28内に納められ、樋管の通水断面外とし、排水時の流木・塵芥による支障が発生しないようにされている。 ワイヤー溝28内には転向滑車23、ワイヤーガイド29が設置され、ワイヤーロープ22が円滑に巻き取り、巻出しできる経路が確保されている。
【0020】
図1に示すように、多板クラッチ2を接続した状態でウォーム減速機1をハンドル操作によって浮体構造起伏型扉体25を閉操作すると、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5がワイヤーロープ22を巻き取り、図3(a)に示すとおり、扉体25を起立作動させることができる。
【0021】
同様に、多板クラッチ2を接続した状態でウォーム減速機1をハンドル操作によって扉体25を開操作すると、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5がワイヤーロープ22を巻出し、図3(b)に示すとおり扉体25を自重によって倒伏作動させることができる。
【0022】
図3(a)に示す扉体起立状態では、ワイヤーロープ22には扉体25の自重による倒伏方向モーメントにより緊張力が作用している。この状態で、図1に示すクラッチ入り切り操作ハンドル10を操作して多板クラッチ2を開放することにより、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5を巻出し方向に自由回転させ、扉体25を自重によって倒伏作動させることができる。
【0023】
このとき、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5と連係している遠心ブレーキ9が作用して、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5の回転速度を制御し、扉体25の倒伏速度を制御し、急速な倒伏作動による事故の発生や、設備損傷の発生を防止する。
【0024】
図4に示すように、ゲートの自動作動時には、多板クラッチ2を開放した状態とする。扉体25が全倒伏し、ワイヤーロープ22が巻き出された状態においてバネ式緊張装置6によりワイヤーロープ22には常にバネ式緊張装置6の渦巻きバネによる緊張力が作用している。
【0025】
図4に示すように、河川水位の変化によって扉体25が起立作動すると、ワイヤー巻取り・巻出しドラム5がバネ装置6によって巻取り方向に回転してワイヤーロープ22を巻取る。これによりワイヤーロープ22に弛みが発生することを防止する。
【0026】
河川水位の変化によって扉体25が倒伏作動するときは、ワイヤー巻取り・巻き戻しドラム5がバネ装置6をねじりながら、巻出し方向に回転してワイヤーロープ22を巻き出す。
【0027】
以上のように、任意操作によって確実に扉体を開閉操作可能で、かつ自動作動に対しワイヤー巻取り・巻き戻しドラムを追従回転作動させることによりワイヤーロープの弛みを防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
1:ウォーム減速機 2:多板クラッチ
3:ギヤボックス(減速機) 4:駆動軸
5:ワイヤー巻取り・巻き戻しドラム 6:バネ式緊張装置
7:軸継手 8:遠心ブレーキ軸
9:遠心ブレーキ 10:クラッチ操作ハンドル
11:開度計 12:装置架台
21:扉体作動装置 22:ワイヤーロープ
23:転向滑車 24:ワイヤーロープ連結部
25:扉体 26:ヒンジ
27:側部戸当金物 28:ワイヤー溝
29:ワイヤーガイド 30:上部戸当金物
31:上部支持金物 32:ワイヤー巻取り装置
41:本河川側の水位 42:支川側の水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川堤防等に設けられる樋管に水路河床部ヒンジ方式で設置され、河川水位の変動に対して自動的に扉体が起立・倒伏作動して樋管通水断面を開放および閉鎖する浮体式起伏ゲート設備であって、扉体先端部にワイヤーロープの一端を取り付け、同ワイヤーロープの他端を巻取り・巻出しドラムに連結し、巻取り・巻出しドラムを回転作動させることによって扉体を強制的に起立作動させてゲート閉操作を行う管理用操作装置において、
前記巻取り・巻出しドラムの駆動軸と前記巻取り・巻出しドラムを回転させる動力発生装置の入力軸がクラッチを介して接続・開放可能に連結され、
さらに前記ワイヤー巻取り・巻出しドラムの駆動軸には常にワイヤー巻取り方向に回転力を作用させるバネ式緊張装置が連結されるとともに、ワイヤー巻出し方向の回転速度を制御する遠心ブレーキ装置が連結されていることを特徴とする浮体式起伏型ゲートの扉体起立・倒伏作動装置。
【請求項2】
ワイヤーロープは、側部戸当金物に設けられたワイヤー溝内に納められ、ワイヤー溝内には転向滑車、ワイヤーガイドが設置されてワイヤーロープの巻き取り、巻出しできる経路が形成されていることを特徴とする請求項1記載の浮体式起伏型ゲートの扉体起立・倒伏作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−246990(P2011−246990A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121773(P2010−121773)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(594148645)株式会社協和製作所 (10)
【Fターム(参考)】