説明

浮遊懸濁物質回収装置及び該装置の設置方法

【課題】煩雑な回収作業が要求されることなく、水域に全体的に分布する浮遊懸濁物質を効率良く回収することのできる浮遊懸濁物質回収装置及び該装置の設置方法を提供すること。
【解決手段】水域100で浮遊可能な浮体12を、所定長さ領域に亘って線状に設置される長尺浮体12として形成し、吸引部45を、長尺浮体12の延在方向に沿って形成する。これによれば、水域100上で線状に表層水を吸引する吸引部45が延在している状態となるので、水域100上で浮遊している浮遊懸濁物質Cを吸引し得る吸引可能領域が多くなり、浮遊懸濁物質Cの回収効率を高めることができる。特に、この線状に設置されている吸引部45により、水流や風によって流される浮遊懸濁物質Cを吸引する率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊懸濁物質回収装置及び該装置の設置方法に関し、特に、貯水池や湖沼などの水域において、水面に浮遊するアオコ、他の微生物及び油等の浮遊懸濁物質を吸引し回収する浮遊懸濁物質回収装置及び該装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水域において発生するアオコ等の浮遊懸濁物質は、大量に発生することで水質汚染や水域の生態系に悪影響を与える原因となるので、それを除去する作業を行う必要がある。しかし、一般的にこのような浮遊懸濁物質は、質量が軽く、風によって水面に浮遊しながら水域上で広範囲に亘って拡散する。従って、このように分布した浮遊懸濁物質の回収作業には多大な労力がかかっていた。
【0003】
この煩雑な作業が要求される浮遊懸濁物質の回収を効率的に行うために種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、オイルフェンスの両端を係留索を介してボートで曳航することで、該オイルフェンスを平面視放物線状にした状態で移動させ、放物状になっているオイルフェンスの中央くぼみ部分に浮遊懸濁物質を集積させて、この集積された浮遊懸濁物質をポンプ等の回収器を用いて回収する水上浮遊物回収装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、水域上の所定領域に設置された環状のオイルフェンスのフロートにポンプ接続用ホースを内蔵させ、このポンプ接続用ホースに、環状の内側領域に向いて設置された回収用ノズルを連通させて、環状オイルフェンスの内側領域に集積された油を吸引採取する油回収型オイルフェンスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−126763号公報
【特許文献2】実開平6−43732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている水上浮遊物回収装置においては、水域上で浮遊懸濁物質が浮遊している場所までボートでオイルフェンスを移動させて、浮遊懸濁物質をオイルフェンスに集める必要がある。ところが、上述のように、回収対象である浮遊懸濁物質は風によって水域上で広範囲に亘って拡散するので、貯水池や湖沼等の面積の大きい水域では、このオイルフェンスの移動に時間がかかり回収作業の効率が著しく低下するという問題があった。特に、このように回収作業が煩雑化すると、装置の駆動時間が長くなり、エネルギー消費量の観点から見ても好ましくなかった。
【0007】
一方、特許文献2に記載の油回収型オイルフェンスにおいては、上述のように、回収用ノズルが環状オイルフェンスの内側領域に向いて設けられているので、環状オイルフェンスによって区画されたフェンス内側領域に存在する油のみしか回収することができない。従って、水域全体に拡散する浮遊懸濁物質を回収する場合は、このオイルフェンスを多数設置しなければならず、この設置作業に多大な労力が費やされるという問題があった。また、水域上の広範囲をカバーすることができるように大型の環状オイルフェンスを用いてオイルフェンスの設置数をなるべく少なくするようにするという方法も考えられるが、この方法の場合、当然、オイルフェンスの内部領域の面積も大きくなるので、フェンス上に設けられている回収ノズルの吸引力が、内部領域全体に亘って行き渡らず、特に、ノズルの吸引力が最も届き辛い内部領域の中央部分近傍に浮遊懸濁物質が残ってしまう可能性があり、その回収率が不十分になってします恐れがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、煩雑な回収作業が要求されることなく、水域に全体的に分布する浮遊懸濁物質を効率良く回収することのできる浮遊懸濁物質回収装置及び該装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の浮遊懸濁物質回収装置は、発電所の貯水池等の水域で浮遊可能な浮体と、該浮体に浮遊支持され、吸引ポンプの駆動によって浮遊懸濁物質が含まれている前記水域の表層水を吸引する吸引部と、を備えた浮遊懸濁物質回収装置において、前記浮体が、所定長さ領域に亘って線状に設置される長尺浮体として形成され、前記吸引部が、前記長尺浮体の延在方向に沿って配置されたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、水域上で所定長さ領域に亘る線状の長尺浮体に沿って吸引部が設けられている、すなわち、水域上で線状に表層水を吸引する吸引部が延在している状態となるので、水域上で浮遊している浮遊懸濁物質を吸引し得る吸引可能領域が多くなり、浮遊懸濁物質の回収効率を高めることができる。特に、この線状に設置されている吸引部により、水流や風によって流される浮遊懸濁物質を吸引する率を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の浮遊懸濁物質回収装置において、前記吸引部は、前記吸引ポンプに接続されるとともに前記長尺浮体の長手方向に沿って延在し水面に接した状態で設置される通水管に設けられた複数の吸水孔部として構成されたことを特徴とする。これによれば、長尺浮体に通水管を設置して、孔を設けるという容易な手法で、浮遊懸濁物質を含む表層水の吸い口を構成することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の浮遊懸濁物質回収装置において、前記通水管は、前記長尺浮体を挟んで両側に設けられ、一方側の第1通水管に設けられている第1吸引孔部から吸引を行なうための第1吸引ポンプと、他方側の第2通水管に設けられている第2吸引孔部から吸引を行なうための第2吸引ポンプと、風向きを検知する風向き検知手段を備え、該風向き検知手段による検知に基づき、前記第1及び第2吸引孔部の内、前記長尺浮体の風上側に設けられている第1吸引孔部に対応する第1吸引ポンプを稼働状態とし、風下側に設けられている第2吸引孔部に対応する第2吸引ポンプを非吸引状態とする吸引ポンプ稼働状態切り替え制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これによれば、風に流されて長尺浮体の風上側に集まった浮遊懸濁物質を、この風上側に設けられている第1吸引部に対応する第1吸引ポンプを稼働させて回収し、浮遊懸濁物質がほとんど集まらない風下側に設置されている第2吸引部に対応する第2吸引ポンプの稼働を停止させる。すなわち、浮遊懸濁物質が多く集積している部分においてのみ回収を行うようにすることで、懸濁浮遊物をより効率良く回収しつつ、可及的な電力消費の抑制を達成することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の浮遊懸濁物質回収装置において、前記長尺浮体は、複数の浮体ピースを、相互に複数連結することで構成され、前記通水管は、前記吸引孔部をそれぞれ有する前記浮体ピースに対応する長さを有する通水管ピースを、相互に複数連結することで構成されたことを特徴とする。
【0015】
これによれば、長尺浮体と通水管は、それぞれ小型の浮体ピースと通水管ピースの形態として、輸送及びそれらの水域上での配置を行い、配置後にそれらを連結することで完成品の長尺浮体及び通水管として使用することができる。従って、長尺浮体及び通水管の輸送及び設置作業による負担を大幅に軽減することができる。また、これらピースの数を増減させることによって、装置全体の長さを調節することができるので、回収装置を所望の長さで設置することができる。
【0016】
請求項5に記載の浮遊懸濁物質回収装置の設置方法は、請求項2〜4の何れか1項に記載の浮遊懸濁物質回収装置において、前記長尺浮体を、前記水域の上流側と下流側を区画するように横切った状態で該水域の両岸において係留して設置し、該長尺浮体に通水管取り付け部材を介して前記通水管を取り付けることを特徴とする。
【0017】
これにより、長尺浮体を水域の両岸に係留し、この浮体に通水管取り付け部材を用いて吸引部を取り付けるという容易な方法で、浮遊懸濁物質回収装置の設置を行うことができる。また、浮遊懸濁物質の吸引部が、水域の流れ方向に対して横切った方向全域をカバーする状態で設置されることとなるので、風や水流によって上流側から下流側に流れる浮遊懸濁物質を全体的に、ほぼ確実に回収することができる
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水域上で所定長さ領域に亘る線状の長尺浮体に沿って吸引部が設けられている、すなわち、水域上で線状に表層水を吸引する吸引部が延在している状態となる。従って、水域上で浮遊している浮遊懸濁物質を吸引し得る吸引可能領域が多くなり、水域に全体的に分布する浮遊懸濁物質を効率良く回収することができる。特に、本発明では、この線状に設置されている吸引部に水流や風によって流れる浮遊懸濁物質が集積されるのを待ってその吸引を行なうこととなるので、従来のように、浮遊懸濁物質を回収する場所まで装置を運ぶというような煩雑な回収作業を要求されることもなくなり、作業全体の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態にかかるアオコ回収装置(浮遊懸濁物質回収装置)が設置された水域としての水力発電所用貯水池の一部を示す概略図。
【図2】アオコ回収装置の概略平面図である。
【図3】アオコ回収装置の概略正面図である。
【図4】図2におけるA−A断面図である。
【図5】通水管取り付け金具の構成を説明する図である。
【図6】制御回路を概略的に示したブロック図である。
【図7】アオコ回収装置の使用状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかるアオコ回収装置(浮遊懸濁物質回収装置)が設置された水域としての水力発電所用貯水池の一部を示す概略図である。図示のように、発電所用貯水池100には、その上流側Aと下流側Bを区画するように一方の岸102から他方の岸104に亘って延在するアオコ回収装置10が設置されている。本実施の形態においては、風や貯水池100の流れによってこのアオコ回収装置10に集積されるアオコを表層水ごと回収する。なお、回収されたアオコを含む表層水は、岸102に設けられている沈殿槽110へ送られて小枝等の比較的大きい塵芥を除去する処理が行なわれ、更に、沈殿槽110で処理された表層水は、アオコ等の比較的小さい懸濁物質をさらに除去する処理を行なう処理槽120に送られる。
【0021】
図2は、アオコ回収装置10の平面図を示しており、図3は、アオコ回収装置の正面図を示しており、図4は、図2におけるA−A断面図を示している。図示のように、アオコ回収装置10は、長尺浮体としてオイルフェンス12を用い、このオイルフェンス12にアオコを吸引する機構を搭載することによって構成されている。
【0022】
オイルフェンス12は、略直方体状の複数のフロートピース13を連結することで構成されている。このフロートピース13は、発泡ポリスチレン等の発泡体をポリウレタン等のカバーでコーティングして形成された略立方体状の3個の浮遊体15を、ポリ塩化ビニル樹脂等の材料で形成されたカーテン17で被覆することによって構成されている。なお、このカーテン17は、浮遊体15を被覆した状態で、浮遊体15の周囲に延在する形状の板状部19を有している(図3参照)。
【0023】
そして、本実施の形態では、上述のフロートピース13の連結は、カーテン17の板状部19の両端位置の連結部21における連結によって行なわれている。また、このフロートピース13を連結して構成されたオイルフェンス12は、例えば、その両端に位置するフロートピース13に設けられた係留用ワイヤ60(図1参照)を、岸102、104に設けられた係止手段62に係止することで貯水池100に係留されている。
【0024】
上述のようにオイルフェンス12は、複数のフロートピース13を連結することで形成するので、小型のフロートピース13の状態で、貯水池100までの輸送を行い、設置の段階においてフロートピース13を連結具で連結して貯水池100に係留することができる。従って、輸送が容易であり、しかも、連結するフロートピース13の数を変更することでオイルフェンス12全体の長さを調整することができる。
【0025】
そして、このオイルフェンス12における各フロートピース13には、後述する通水管を取り付けるための通水管取り付け部材として通水管取り付け金具23が設けられている。
【0026】
図5には、この通水管取り付け金具23の構成を説明する図を示す。図示のように、この通水管取り付け金具23は、側面視略逆U字形の一対のフロート固定部25を有している。この一対のフロート固定部25の金具上部部分25aには、フロートピース13のカーテン19にネジ止めを行なうためのネジ止め部27が2箇所設けられており、この通水管取り付け金具23は、フロートピース13の上方から被せられ、ネジ止め部27においてネジ止めを行なうことにより、フロートピース13に設置固定される。
【0027】
そして、通水管取り付け金具23のフロート固定部25は、金具上部部分25aの両端から屈曲して、フロートピース13への設置固定状態においてフロートピース13の両側面13bに沿う一対の垂下部25bを有している。更に、この一対の垂下部25bの最下部位置には、この垂下部25bに対して直交する平面状に延在する一対の配管設置部29が形成されている。すなわち、この配管設置部29は、フロートピース13の両側部(上流A側と下流B側)に配置されることとなる。
【0028】
また、本実施の形態では、このフロートピース13の両側部に配置された一対の配管設置部29のフロート固定部25から離間する側のそれぞれの先端には、回転軸部31を介して板状の遮蔽部33が形成されており、この遮蔽部33は、回転軸部31の調整によって配管設置部29に対してなす角度が調節されるようになっている。この遮蔽部33は、回転軸部31の調整によって配管設置部29の先端から上方に屈曲するような形態をとる(図4参照)ことで、配管設置部23側に流れ込む可能性のある瓦礫等の比較的大きな浮遊物を遮断するために設けられているものである。
【0029】
更に、本実施の形態では、所定のフロートピース13に取り付けられている通水管取り付け金具23の一対のフロート固定部25の一方に、風向き検知手段としての風見鶏35が設けられている。
【0030】
そして、フロートピース13の両側のそれぞれの配管設置部29には、通水管37−1、37−2が設置されている。本実施の形態では、通水管37−1が上流側に設置されており、通水管37−2が下流側に設置されている。この通水管37−1、37−2は、フロートピース13の長手方向の長さよりも若干長い通水管ピース39同士を連結して連通させることで構成されている。なお、本実施の形態では、この通水管ピース39同士の連結は、それらの両端にファスナー部41を形成しこの部分を結合することで行われる。
【0031】
従って、上記オイルフェンス12の場合と同様に、小型の通水管ピース39として貯水池100までの輸送を行うことができ、設置の段階において通水管ピース39を連結して、通水管37−1、37−2を形成することができる。そして、上述のフロートピース13の数の増減に合わせて、連結する通水管ピース39の数も増減させることで、オイルフェンス12の長さに合わせて、通水管37−1、37−2の長さを調節することができ、結果として、アオコ回収装置10を、適用する水域の幅などに合わせて所望の長さに設置することができる。
【0032】
更に、この通水管ピース39の一端のファスナー部41の近傍には、蛇腹型の収縮連結部材43が設けられている。この収縮連結部材43は、例えば、ウレタンやエラストマー等の樹脂で形成されており、この収縮連結部材43によって水の流れや風によって隣り合う通水管ピース39同士の結合を解除するような力が働いた場合であっても、その力によるズレ変位を吸収することができる。従って、この収縮連結部材43の伸縮で通水管37は全体として側方への変位が許容されるので、結果としてアオコ回収装置10は全体的に側方に湾曲可能となっており、強風にさらされることによる通水管37の破壊が防止される。
【0033】
そして、この通水管ピース39には、アオコを吸引する吸引部としての吸引孔部45が設けられている。本実施の形態では、この吸引孔部45は、通水管ピース39の長手方向に沿って一定の大きさ及び間隔で複数設けられており、この設けられた複数の孔全体として格子形状をなしている。このように、本実施の形態では、通水管ピース39に孔を設けるという容易な手法で表層水を吸い上げる吸い口を構成することができる。また、吸引孔部45が一定の大きさで整列した状態で配置されることとなるので、吸引のためのポンプを駆動させた際における各吸引孔部45の吸込力を可及的に均一化することができる。従って、例えば、隣同士に配置された吸引孔部45の吸引力の違いにより、片方の吸引孔部35に多くの表層水が吸引され、その吸引孔部45の目詰まりが発生し易くなるという事態を防止することができる。
【0034】
上述のように、通水管ピース39で構成される通水管37がオイルフェンス12を挟んで上流A及び下流B側に設けられているので、この吸引孔部45も、オイルフェンス12を挟んで両側に配置される。本実施の形態では、上流A側の吸引孔部を吸引孔部45−1であり、下流B側の吸引孔部を吸引孔部45−2である。この各吸引孔部45−1、45−2から表層水を吸い込むために吸水用ポンプとして、それぞれの吸引孔部45−1、45−2に対応した真空ポンプ47−1、47−2が、貯水池100の一方側の岸102に設けられている。すなわち、貯水家100の真空ポンプ47−1の稼働により、貯水池100の上流A側に設けられている吸引孔部45−1から表層水が吸い込まれ、真空ポンプ47−2の稼働により、下流B側に設けられている吸引孔部45―2から表層水が吸い込まれる。
【0035】
図6は、2個の真空ポンプ47−1、47−2の制御回路を概略的に示したブロック図である。図示のように、2個の真空ポンプ47−1、47−2の稼働状態及び非稼働状態を制御するポンプ制御部49は、上述の風見鶏35からの信号に基づいて真空ポンプ47−1、47−2の稼働制御を行う。
【0036】
具体的に、風見鶏35が、上流A側及び下流B側のどちらにも向いていない状態(図2参照)と比較して若干でも下流B側に向いている場合、すなわち、アオコ回収装置10の上流A側が風上である場合に、ポンプ制御部49は、真空ポンプ47−1を稼働させ、真空ポンプ47−2を停止させる。逆に、風見鶏35が上流A側に向いている場合、すなわち、アオコ回収装置の下流B側が風上である場合に、ポンプ制御部39は、真空ポンプ47−2を稼働させ、真空ポンプ47−1を停止させる。
【0037】
以下、上記構成を有するアオコ回収装置10の使用状況について説明する。
【0038】
図7は、本実施の形態に係るアオコ回収装置10の使用状況を説明する説明図である。図示のように、風W(白抜き矢印で示す)が、貯水池100の上流A側から下流B側に向かって吹いている場合、風や水流に流された水面のアオコCはアオコ回収装置10の上流A側に集積される。特に、アオコCは、質量が軽く極めて風に流され易いことがわかっているので、アオコ回収装置10の上流A側の吸引口部45−1の近傍には、多量のアオコCが集積する。
【0039】
風見鶏35は下流B側に向いているので、ポンプ制御部39は、風下であるアオコCが集積している側の真空ポンプ47−1を稼働させ、アオコCが集積していない側の真空ポンプ47−2を停止させる。従って、アオコCが集積しているアオコ回収装置10の上流A側の部分の吸引孔部45−1からアオコCを含む表層水が吸引される。
【0040】
特に、本実施の形態では、上述のように風向きや水流方向と略直交して貯水池100の上流A側と下流B側を区画するようにオイルフェンス12が延在している。すなわち、オイルフェンス12は、貯水池100を横切るようにその幅方向全域に亘って延在しているので、このオイルフェンス12の全域に亘って設けられている複数の吸引孔部45も貯水池100の幅方向全域に存在することとなる。従って、極めて広い吸引領域で貯水池100に生息するアオコを吸引採取することができ、風や水流に流されてくるアオコも確実に集積して回収することができる。しかも、従来のアオコ回収装置のように、アオコの回収を、貯水池100の特定の箇所に装置を移動させながら行なう必要がないので、アオコの回収効率を大幅に向上させることができる。
【0041】
そして、本実施の形態では、風の影響でほとんどアオコが集積されないアオコ回収装置10の下流側の吸引孔部45−2(風下側に設置されている吸引孔部)からの吸い込みを行なうための真空ポンプ47−2は、停止されているので、電力の消費も抑えることができる。すなわち、回収作業に必要とされる電力を可及的に抑えつつ、アオコの回収効率を極めて高くすることができる。
【0042】
一方、風が逆向きに吹いている場合、すなわち、下流B側から上流A側に向かって風が吹いている場合には、風見鶏35は上流A側を向くこととなるので、ポンプ制御部49は、真空ポンプ47−1を停止し、真空ポンプ47−2を稼働させる。この場合、アオコCはアオコ回収装置10の下流B側に集積するので、真空ポンプ47−2を駆動させ、下流B側の吸引孔部45−2からアオコCを多量に含む表層水が吸引回収する。この場合、上流A側の吸引孔部45−1から吸い込みを行うための真空ポンプ47−1を停止する。なお、アオコCは、風によって流されるだけでなく、水流によっても流されるので、水流の影響が強ければ、上流A側の吸引孔部45−1ではなく、下流B側の吸引孔部45−2にアオコCが集積される可能性も考えられるが、通常、アオコの集積は、水流による影響よりも、風による影響を強く受けることが知られているので、上述のように流れ方向と風向きが反対となる場合には、風向きの影響のみを考慮することが好ましい。
【0043】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態では、アオコ回収装置10を貯水池100の流れ方向に対してほぼ直交して延在するように設置しているが、アオコ回収装置10を流れ方向に対して斜めに延在するように両岸102、104に設置するようにしても良い。これにより、装置自体の延在領域が大きくなるので、アオコの吸引可能領域をより増加させることができる。
【0044】
また、流速が速く、風の影響よりも流れの影響でアオコが移動するような水域では、風向きを検知することなく、アオコ回収装置10のオイルフェンス12の流れと対向する片側のみに吸引孔部45を設け、水流により集積したアオコを回収するようにしても良い。
【0045】
更に、本実施の形態では、浮遊懸濁物質の回収としてアオコの回収を行っているが、回収すべき浮遊懸濁物質としては、アオコだけではなく、他の微生物や油等の種々のものを想定可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 アオコ回収装置(浮遊懸濁物質回収装置)
12 オイルフェンス(長尺浮体)
13 フロートピース(浮体ピース)
23 通水管取り付け金具(通水管取り付け部材)
35 風見鶏(風向き検知手段)
37 通水管
39 通水管ピース
45 吸引孔部
47 真空ポンプ(吸引ポンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電所の貯水池等の水域で浮遊可能な浮体と、該浮体に浮遊支持され、吸引ポンプの駆動によって浮遊懸濁物質が含まれている前記水域の表層水を吸引する吸引部と、を備えた浮遊懸濁物質回収装置において、
前記浮体が、
所定長さ領域に亘って線状に設置される長尺浮体として形成され、
前記吸引部が、
前記長尺浮体の延在方向に沿って配置されたことを特徴とする浮遊懸濁物質回収装置。
【請求項2】
前記吸引部は、
前記吸引ポンプに接続されるとともに前記長尺浮体の長手方向に沿って並設された通水管に設けられた複数の吸水孔部にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の浮遊懸濁物質回収装置。
【請求項3】
前記通水管は、前記長尺浮体を挟んで両側に設けられ、
一方側の第1通水管に設けられている第1吸引孔部から吸引を行なうための第1吸引ポンプと、
他方側の第2通水管に設けられている第2吸引孔部から吸引を行なうための第2吸引ポンプと、
風向きを検知する風向き検知手段を備え、該風向き検知手段による検知に基づき、前記第1及び第2吸引孔部の内、前記長尺浮体の風上側に設けられている第1吸引孔部に対応する第1吸引ポンプを稼働状態とし、風下側に設けられている第2吸引孔部に対応する第2吸引ポンプを非吸引状態とする吸引ポンプ稼働状態切り替え制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の浮遊懸濁物質回収装置。
【請求項4】
前記長尺浮体は、
複数の浮体ピースを、相互に複数連結することで構成され、
前記通水管は、
前記吸引孔部をそれぞれ有する前記浮体ピースに対応する長さを有する通水管ピースを、相互に複数連結することで構成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の浮遊懸濁物質回収装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか1項に記載の浮遊懸濁物質回収装置において、
前記長尺浮体を、前記水域の上流側と下流側を区画するように横切った状態で該水域の両岸において係留して設置し、
該長尺浮体に通水管取り付け部材を介して前記通水管を取り付けることを特徴とする浮遊懸濁物質回収装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253426(P2010−253426A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108679(P2009−108679)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】