説明

浮遊粒子状物質除去装置

【課題】洗浄液の交換と洗浄排水の処理に掛かる作業者の負担を軽減し、発生する洗浄排水の量を低減することで環境負荷も低減することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供する。
【解決手段】浮遊粒子状物質除去装置1内の洗浄系統に脱着可能な洗浄液カートリッジ9を接続し、洗浄で発生した洗浄排水25を洗浄液カートリッジ9に回収し、洗浄液カートリッジ9の内部で洗浄排水25中の油分を浮上油促進手段22で浮上分離を促進させ洗浄液8として再生し、浮上油26が洗浄液8に再混合するのを浮上油撹拌防止手段23で防止することによって再利用時の洗浄性を維持し、洗浄液8を繰返し洗浄に用いる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場内で発生する粉じんやオイルミストを除去して空気を清浄化するために用いられる浮遊粒子状物質除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浮遊粒子状物質除去装置は、捕集した粉塵やオイルミストを除去して捕集効率を維持するために捕集した粉塵やオイルミストを洗浄によって洗い落とす必要があった。発生した洗浄排水は凝集剤と反応させ凝集フロックを形成させ、さらに凝集フロックを加圧浮上させることで排水中の埃やオイルミストを汚泥として分離し、発生した汚泥に再び有機凝集剤を添加して再凝集産業廃棄物として廃棄する一方、浄化された洗浄排水を環境中に排出する方法が用いられていた。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
以下、そのような空気清浄機について図5参照しながら説明する。図5に示すように空気集塵機101には洗浄配管102と汚水配水管103が接続されており、洗浄配管102から加圧された水が空気集塵機101内に噴霧されることによって、空気集塵機101内部の汚れと共に汚水が汚水配水管103より排出され、空気集塵機101内が洗浄される。汚水配水管103から排出される汚水は一度既存の排水処理設備である汚水ピット内に蓄えられ、一定量汚水が蓄積した後、ポンプa105aより排出され排水処理される。凝集剤溶解装置106にて凝集剤を溶解調整し、ポンプb105bより凝集剤溶解液を汚水貯留槽107に供給することで汚水と凝集剤溶解液が混合され汚水中の汚染物質が凝集剤と共に凝集され除去される。汚水貯留槽107で汚染物質が凝集除去された後の浄化された汚水はポンプc105cより排出される。
【特許文献1】特開平1−127096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の方法では発生する洗浄排水量が多い場合には汚水ピットで効率的に処理することができるが、発生する洗浄排水量が少ない場合、特に空気清浄機の規模が小さくて洗浄頻度も低い場合には排水処理の効率が悪くなるため、少ない洗浄排水を集めて大量にまとめてから処理する必要があり、洗浄排水を集めるために長大な配水管を接続し、あるいは回収タンクに少量ずつ回収して汚水ピットまで運ぶなどの煩雑な作業をしなければならないという課題があった。
【0005】
また、洗浄ごとに洗浄排水が発生し、洗浄排水が大量に発生するため環境負荷を高めてしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、浮遊粒子状物質除去装置の洗浄によって発生する洗浄排水を簡単に回収し集めることのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することを目的としている。
【0007】
また、発生した洗浄排水を再生して繰り返し洗浄に使用することによって廃棄する洗浄排水の量を減らし、環境負荷を低減することのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の浮遊粒子状物質除去装置は上記目的を達成するために、空気中の浮遊粒子状物質を捕集する捕集部と、前記捕集部へ浮遊粒子状物質を含んだ空気を流入させる送風手段と、前記捕集部に付着した前記浮遊粒子状物質を洗浄するための洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液を前記洗浄液噴霧手段に送液する洗浄液送液手段と、前記洗浄液噴霧手段と前記洗浄液送液手段とを接続する洗浄液配管と、前記浮遊粒子状物質を洗浄した洗浄液を受ける洗浄液受け手段とを備えた浮遊粒子状物質除去装置であって、洗浄液が流出する流出口と洗浄液が流入する流入口を備えたカートリッジを備え、洗浄液を充填した前記洗浄液カートリッジを前記洗浄液送液手段と前記洗浄液受け手段に着脱可能に接続したことを特徴とする浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0009】
これにより、発生した洗浄排水を洗浄液が充填されていたカートリッジに回収することができ、洗浄排水を簡単に回収し集めることのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0010】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジの上面を前記洗浄液受け手段より下に配置したことを特徴とする請求項1に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0011】
これにより、発生した洗浄排水を洗浄排水の自重で洗浄液カートリッジに回収し集めることができ、省エネルギーで洗浄排水を簡単に回収し集めることができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0012】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジの前記流入口と前記洗浄液受け手段とを接続する配管のカートリッジ側に、開閉可能な弁を備えたことを特徴とした請求項1または2に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0013】
これにより、洗浄排水をカートリッジに回収しカートリッジを交換する際に、配管から洗浄排水を漏洩させずに簡単に交換し集めることのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0014】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジの前記流出口と前記洗浄液送液手段とを接続する配管のカートリッジ側に、開閉可能な弁を備えたことを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0015】
これにより、洗浄排水をカートリッジに回収する際に、配管から洗浄排水を漏洩させずに簡単に回収し集めることのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0016】
また他の手段は、前記流出口が前記洗浄液カートリッジの底部に配置され、前記流出口に開閉可能な弁を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0017】
これにより、洗浄排水をカートリッジに回収する際に、カートリッジの流出口から洗浄排水を漏洩させずに簡単に回収し集めることのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0018】
また他の手段は、前記流入口が前記洗浄液カートリッジの底部に配置され、前記流入口に開閉可能な弁を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0019】
これにより、洗浄排水をカートリッジに回収する際に、カートリッジの流入口から洗浄排水を漏洩させずに簡単に回収し集めることのできる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0020】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジ内に浮上する油の浮上速度を促進する浮上油促進手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0021】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、回収した洗浄排水に含まれる油成分の浮上を促進させることができ、回収した洗浄排水を洗浄液として再生することができ、繰返し洗浄を行うことによって洗浄液の使用と洗浄排水の発生量を少なくすることで環境負荷を低減することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0022】
また他の手段は、前記浮上油促進手段が傾斜板であることを特徴とする請求項7に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0023】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、回収した洗浄排水に含まれる油成分を簡単な構成で浮上促進させることができ、動力を用いずに洗浄排水を洗浄液として再生することができ、繰返し洗浄を行うことによって洗浄液の使用と洗浄排水の発生量を少なくすることで環境負荷を低減することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0024】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジ内に浮上した油の撹拌を防ぐ浮上油撹拌防止手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0025】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、カートリッジ内で油を浮上させて再生した洗浄液を再度洗浄に用いる際に浮上した油が洗浄液に再混合されるのを防止することができ、再生された洗浄液で繰返し洗浄する再に洗浄性能が低下するのを防止することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0026】
また他の手段は、前記浮上油撹拌防止手段の比重は洗浄液と浮上油の間であって、フロート状であることを特徴とする請求項9に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0027】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、カートリッジ内で油と分離した洗浄液と浮上した油の間に浮いた浮上油撹拌防止手段が再生された洗浄液への浮上油の再混合を防止することができ、再生された洗浄液で繰返し洗浄する際に洗浄性能が低下するのを防止することが動力を使うことなく可能となり、洗浄排水の量が変動しても浮上油の洗浄液への再混合を防止することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0028】
また他の手段は、前記浮上油撹拌防止手段に傾斜板が一体成形されていることを特徴とする請求項10に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0029】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、カートリッジ内で浮上する油からの傾斜板の深度を一定に保つことができ、洗浄液量が変動しても傾斜板による油の浮上促進効果を一定に保つことができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0030】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジの上面に開口部を備えたことを特徴とした請求項1〜11のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0031】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、再生できなくなった場合に洗浄液を新しい洗浄液に交換する際、カートリッジ内の洗浄排水を簡単に洗浄することができるようになり、カートリッジ自体を再利用しやすくなり、カートリッジを再利用することで廃棄物を減らすことができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0032】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジを円筒形としたことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0033】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、カートリッジの再利用のためカートリッジ内の洗浄がしやすくなり、カートリッジを再利用しやすくすることができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0034】
また他の手段は、前記洗浄液受け手段接続箇所から前記洗浄液カートリッジ内へ流入する洗浄液の向きを洗浄液カートリッジの外周の接線方向に平行とし、前記洗浄液送液手段接続箇所から前記洗浄液送液手段に流出する洗浄液の向きを円筒形洗浄液カートリッジの側面に平行とし、洗浄液カートリッジ内に旋回流を発生させることを特徴とする請求項13に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0035】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、カートリッジに流入する洗浄排水とカートリッジから流出する再生洗浄液の流れでカートリッジ内に旋回流を発生させることができ、発生させた旋回流の力で浮上した油をカートリッジの中央部に集めることができ、効果的に浮上した油の再生した洗浄液への再混合を防止することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0036】
また他の手段は、前記旋回流の方向に対して45度以上90度以下の角度になるように傾斜板の板面を配置したことを特徴とする請求項14に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0037】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、発生させた旋回流を利用して傾斜版による浮上油促進効果をあげることができ、効率よく洗浄排水を再生することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0038】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジの内側壁面を親油性としたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0039】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、洗浄排水中の油分をカートリッジの内壁で捕捉することができ、洗浄排水中の油分の再生洗浄液への再混合を防止することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【0040】
また他の手段は、前記洗浄液カートリッジ内に油吸着剤を備えたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものである。
【0041】
これにより、カートリッジに洗浄排水を簡単に回収し集めることができ、洗浄排水中の油分が多い場合であっても油分を油吸着剤で捕捉することができ、洗浄排水中の油分の再生洗浄液への再混合を防止することができる浮遊粒子状物質除去装置を提供することができるようになる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、発生する洗浄排水を煩雑な作業をしないでも簡単に回収し集めることができるという効果があり、また、洗浄排水を洗浄液に再生し繰り返し洗浄に利用することで廃棄する洗浄排水の量を低減させることができ、環境負荷を低減する事ができるという効果のある浮遊粒子状物質除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために空気中の浮遊粒子状物質を捕集する捕集部と、前記捕集部へ浮遊粒子状物質を含んだ空気を流入させる送風手段と、前記捕集部に付着した前記浮遊粒子状物質を洗浄するための洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液を前記洗浄液噴霧手段に送液する洗浄液送液手段と、前記洗浄液噴霧手段と前記洗浄液送液手段とを接続する洗浄液配管と、前記浮遊粒子状物質を洗浄した洗浄液を受ける洗浄液受け手段とを備えた浮遊粒子状物質除去装置であって、洗浄液が流出する流出口と洗浄液が流入する流入口を備えたカートリッジを備え、洗浄液を充填した前記洗浄液カートリッジを前記洗浄液送液手段と前記洗浄液受け手段に着脱可能に接続したことを特徴とする浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、カートリッジ内の洗浄液を洗浄液送液手段で洗浄液噴霧手段に送液し捕集部に噴霧することによって捕集部を洗浄し、捕集部を洗浄した洗浄排水を洗浄液受け手段で受け集め、集めた洗浄排水を再びカートリッジの中に回収することができるという作用を有し、洗浄排水を回収したカートリッジを浮遊粒子状物質除去装置から取り外すことによって洗浄排水を楽に移動し集めることができる作用を有し、洗浄液の交換のために回収槽の洗浄や洗浄液の注入などの煩雑な作業をしなくてすむようになる。
【0044】
本発明の請求項2記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジの上面を前記洗浄液受け手段より下に配置したことを特徴とする請求項1に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、捕集部を洗浄した洗浄排水を洗浄液受け手段で受け集め、集めた洗浄排水がその自重でカートリッジ内に移動することによって動力なしで洗浄排水をカートリッジ内に回収することができるという作用を有し、エネルギーを消費しないで洗浄排水を回収することができる。
【0045】
本発明の請求項3記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジの前記流入口と前記洗浄液受け手段とを接続する配管のカートリッジ側に、開閉可能な弁を備えたことを特徴とした請求項1または2に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、洗浄排水を回収する際に配管上の弁を開放することによってカートリッジ内に洗浄排水を流入させ、カートリッジを浮遊粒子状物質除去装置から取り外す際に配管上の弁を閉めることによって配管内に残った洗浄排水の管外への漏洩を防止できるという作用を有する。
【0046】
本発明の請求項4記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジの前記流出口と前記洗浄液送液手段とを接続する配管のカートリッジ側に、開閉可能な弁を備えたことを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、カートリッジを浮遊粒子状物質除去装置から取り外す際に弁を閉めることによって、洗浄液が洗浄液送液手段から逆流して配管から漏洩するのを防止できるという作用を有する。
【0047】
本発明の請求項5記載の発明は、上記目的を達成するために前記流出口が前記カートリッジの底部に配置され、前記流出口に開閉可能な弁を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、カートリッジに回収された洗浄排水中に含まれる油成分がカートリッジ内で浮上し洗浄液と分離し、浮上した油分を洗浄排水の上部に残したまま油含有濃度の低下したカートリッジ底部にある洗浄排水を選択的にカートリッジから流出させるという作用を有し、油含有濃度の低下した洗浄排水を繰り返し洗浄に用いることができ、洗浄排水を洗浄液として繰返し再利用することによって廃棄する洗浄排水量を減らすことができる。
【0048】
本発明の請求項6記載の発明は、上記目的を達成するために前記流入口が前記カートリッジの底部に配置され、前記流入口に開閉可能な弁を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、弁を開放することによって油分を含んだ洗浄排水がカートリッジの底部からカートリッジ内に流入させるという作用を有し、カートリッジ内上部にある既に浮上した油分を流入した洗浄排水で混合させることなくカートリッジ内に洗浄排水を回収させることができ、既に浮上した油分が洗浄液に再混合するのを防止することができ、カートリッジ底部の洗浄排水の油含有量を低く保つことができ、洗浄排水を繰返し洗浄に用いることができる。
【0049】
本発明の請求項7記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジ内に浮上する油の浮上速度を促進する浮上油促進手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、カートリッジ内に回収された洗浄排水に含まれる油分が浮上して洗浄液と分離する速度を浮上促進手段が促進するという作用を有し、洗浄排水中の油分を早く浮上分離させることができ、洗浄排水が早く再生される。
【0050】
本発明の請求項8記載の発明は、上記目的を達成するために前記浮上油促進手段が傾斜板であることを特徴とする請求項7に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、洗浄排水中に含まれる小さな油滴が傾斜板表面に付着し、付着した油滴同士が会合することによって油滴径が大きくなるという作用を有し、油滴が大きくなることによって油分の浮上速度を上げることができ、動力を使うことなく簡単な構成で洗浄排水中から早く油分を浮上分離させることができる。
【0051】
本発明の請求項9記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジ内に浮上した油の撹拌を防ぐ浮上油撹拌防止手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、浮上油攪拌防止手段がカートリッジ内で浮上した油分と油分を分離した洗浄排水との間の遮蔽物となることによって洗浄排水が遥動された場合でも浮上油と洗浄排水との間の界面の乱れを防止するという作用を有し、浮上した油が洗浄排水と再混合するのを防止することができ、カートリッジ内の洗浄排水を連続的に洗浄に用いてカートリッジ内の洗浄液が遥動された場合であっても一度浮上分離した油の洗浄液への再混合を防止することができ、洗浄排水を連続的に洗浄に用いても洗浄性能を高く維持することができる。
【0052】
本発明の請求項10記載の発明は、上記目的を達成するために前記浮上油撹拌防止手段の比重は洗浄液と浮上油の間であって、フロート状であることを特徴とする請求項9に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、洗浄液よりも比重が軽くなおかつ浮上した油よりも比重の重い材質で構成された浮上油撹拌防止手段が洗浄排水から分離して浮上した油と洗浄排水との界面に浮遊することによって遮蔽物になるという作用を有し、カートリッジ内の洗浄排水の量が変化した場合であっても浮上油撹拌防止手段が界面の位置を追随するという作用を有し、簡単な構成で洗浄排水量が変化した場合であっても浮上した油が洗浄排水と再混合するのを防止することができ、洗浄排水の量が変動しても洗浄液の再利用時の洗浄性能を高く維持することができる。
【0053】
本発明の請求項11記載の発明は、上記目的を達成するために前記浮上油撹拌防止手段に傾斜板が一体成形されていることを特徴とする請求項10に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、浮上油撹拌防止手段が界面の上下位置を追随することによって傾斜板の界面からの深度を一定に保つという作用を有し、傾斜板の界面からの深度を一定に保つことによって傾斜板に接触する油滴の大きさを一定に保つことができ、油滴の浮上速度促進効果を一定に保つことができ、洗浄排水中の油分を浮上促進させる効果を一定に保つことができる。
【0054】
本発明の請求項12記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジの上面に開口部を備えたことを特徴とした請求項1〜11のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、開口部を開くことによってカートリッジ内部を外側に露出させるという作用を有し、カートリッジ内部を目視しカートリッジ内部に洗浄液や部材を簡単に挿入することができるようになり、洗浄排水が洗浄に使用できなくなった場合にカートリッジを取り外した後に、汚れたカートリッジ内を開口部から洗浄することができ、カートリッジ自体を容易に再生することができる。
【0055】
本発明の請求項13記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジを円筒形としたことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、カートリッジ内部の形状を平坦にし凹凸を少なくするという作用を有し、洗浄されにくい凹凸部位が少ないのでカートリッジ内部を洗浄しやすくすることができ、簡単にカートリッジを再生することができる。
【0056】
本発明の請求項14記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液受け手段接続箇所から前記洗浄液カートリッジ内へ流入する洗浄液の向きを円筒形洗浄液カートリッジの側面に平行とし、前記洗浄液送液手段接続箇所から前記洗浄液送液手段に流出する洗浄液の向きを円筒形洗浄液カートリッジの側面に平行とし、洗浄液カートリッジ内に旋回流を発生させることを特徴とする請求項13に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、円筒の側面に対して平行に流入した洗浄排水と、平行に流出する洗浄液によってカートリッジ内の洗浄排水に旋回流を発生させるという作用を有し、発生した旋回流によって浮上した油が旋回流の中心に集められるという作用を有し、浮上した油と流出口の間の距離を離すことができ、浮上した油が流出口から流出するのを防止でき、浮上油の洗浄排水への再混合を防止することができる。
【0057】
本発明の請求項15記載の発明は、上記目的を達成するために前記旋回流の方向に対して45度以上90度以下の角度になるように傾斜板の板面を配置したことを特徴とする請求項14に記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、円筒形のカートリッジ内に流入した洗浄排水が傾斜板の板面に対して45度から90度の角度でぶつかることによって洗浄排水中の油滴が傾斜板にぶつかりやすくなるという作用を有し、油滴が傾斜板にぶつかる頻度が高くなるので油滴の肥大化速度を早くすることができ、洗浄排水中の油分を早く分離浮上させることができる。
【0058】
本発明の請求項16記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジの内側壁面を親油性としたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、カートリッジ内側の親油性の壁面が油分を吸着しやすくなるという作用を有し、洗浄排水中から分離浮上した油分をカートリッジ内側の壁面が捕捉することができ、洗浄排水が遥動された場合でも壁面が油分を捕捉することによって浮上した油が洗浄液に再混合されるよりも壁面に付着しようとするので、浮上油の再混合を防止することができる。
【0059】
本発明の請求項17記載の発明は、上記目的を達成するために前記洗浄液カートリッジ内に油吸着剤を備えたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置としたものであり、油吸着剤が浮上分離した油分を吸着するという作用を有し、浮上油の量が多い場合であっても洗浄排水の上に浮上した油分を油吸着剤が吸収することによって、浮上分離した油の洗浄排水への再混合を防止することができる。
【0060】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における浮遊粒子状物質除去装置1の構成図である。
【0061】
図1において、浮遊粒子状物質除去装置1は筐体2内に捕集部3を備え、筐体2は空気が流入する空気流入口4と空気が排出する空気排出口5を備えている。
【0062】
筐体2としては、例えばステンレスSUS304や銅など物理的強度と薬剤耐性のある材質で成形することができる。捕集部3としては、例えば電圧を印加できる平行電極板を用いることができ、例えば静電気を利用して空気中の粉じんやミスト状の油を極板に捕集することができる。
【0063】
浮遊粒子状物質除去装置1は空気排出口5の外側に送風手段6を備えている。送風手段6としては例えばシロッコファンを用いることができ、空気排出口5の外側に備えることが望ましいが空気流入口4の外側であってもかまわない。
【0064】
また、捕集部3の上部には噴霧手段7が備えてあり、洗浄液8を充填した洗浄液カートリッジ9の流出口10の端部にある第一の接合部11に第一の洗浄液配管12で接続されている。
【0065】
噴霧手段7としては例えばスプレーノズルを用いることができ、洗浄液8としては例えば界面活性剤を含んだ水系洗浄剤や準水系洗浄剤を用いることができる。特に油水分離性の高い弱アルカリ性あるいはアルカリ性の洗浄液が望ましく、例えばユシロクリーナーPCW90K(ユシロ化学)、ケアクリーンMP(Castrol)、ルノックスHP−10(東邦化学工業)を用いることができる。洗浄液カートリッジ9としては例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂製のタンクあるいはステンレスなどの金属製のタンクを用いることができる。第一の接合部11としては例えば塩化ビニル樹脂製のドレインホースを用いることができ、第一の洗浄液配管12としては例えば塩化ビニルなどの樹脂製のチューブやステンレスSUS304製などの金属製チューブを用いることができる。
【0066】
第一の洗浄液配管12には洗浄液送液手段13が備えてあり、洗浄液カートリッジ9内の洗浄液8を噴霧手段7に送液する。洗浄液送液手段13としては例えばギアポンプやピストンポンプやプランジャーポンプを用いることができる。
【0067】
また、捕集部3の下部には洗浄液受け手段14が備えられており、洗浄液受け手段14の底部は洗浄液カートリッジ9の底部にある流入口15の端部にある第二の接合部16に第二の洗浄液配管17で接続されている。このとき洗浄液受け手段14の底部が洗浄液カートリッジ9よりも上方になるように配置されている。洗浄液受け手段14としては例えばステンレス製のドレインパンを用いることがでる。第二の洗浄液配管17としては例えば塩化ビニルなどの樹脂製のチューブやステンレスなどの金属製チューブを用いることができる。
【0068】
第二の洗浄液配管17が洗浄液カートリッジ9と接続する箇所に第一の開閉手段18が備えられており、第一の洗浄液配管12が洗浄液カートリッジ9と接続する箇所に第二の開閉手段19が備えられている。また、洗浄液カートリッジ9の流出口10には第三の開閉手段20が備えてあり、流入口15には第四の開閉手段21が備えてある。開閉手段としては例えばコックバルブなどを用いることができる。
【0069】
洗浄液カートリッジ9内には浮上油促進手段22が備えてあり、浮上油促進手段22の上部に浮上油撹拌防止手段23が備えられている。また、洗浄液カートリッジ9の上部にはカートリッジ開閉口24が備えられている。浮上油促進手段22は例えばポリプロピレンなどの樹脂で成形された板を水平面に対して角度をつけ一定間隔に並列させた傾斜板を用いることができる。
【0070】
また、浮上油撹拌防止手段23としては例えばポリプロピレン等の樹脂製の網状フィルターを用いることができ、比重が水と油の間である1〜0.89になる素材であればいずれのものも利用することができる。水の比重は1であり浮上油の比重は通常0.89より小さいため、ポリプロピレンなどの比重が0.9の樹脂は水より軽く浮上した油よりも重くなり、重力によって水と浮上した油の間に浮遊することになる。
【0071】
浮上した油と水の中間に網状のフィルターが浮遊することによって、これが水と油の界面の乱流を防止することとなり、水と油の混合を防止することができ、一度分離した油の洗浄液への再混合を防止することができる。
【0072】
カートリッジ開閉口24としては例えば二トリルゴムなどの樹脂製の蓋を取り付けることで利用することができる。
【0073】
上記構成において、オイルミストや塵埃などを含み汚れた空気が空気流入口4から浮遊粒子状物質除去装置1内に流入し、捕集部3にオイルミストや塵埃などが付着し捕捉され、浄化された空気が空気流出口5から排出される。
【0074】
捕集部3に捕捉される油や塵埃が蓄積すると、変質硬化し捕集部3の空気が流れる場所が閉塞し、圧損が増すだけでなく、オイルミストや塵埃の捕集効率低下を招くが、洗浄操作により捕集された油や塵埃の蓄積を防止することによって捕集効率を高く維持できる。
【0075】
捕集部3をより清浄にするため、噴霧手段7から洗浄液8を噴霧し洗浄することができる。噴霧された洗浄液8は粉塵や油とともに洗浄排水25として洗浄液受け手段14に回収される。このとき第一の開閉手段18と第二の開閉手段19と第三の開閉手段20と第四の開閉手段21を開放しておけば、洗浄排水25は自重で洗浄液カートリッジ9内に回収され、連続して洗浄液送液手段13によって送液され洗浄に用いることができるようになる。
【0076】
洗浄排水25とは、噴霧された洗浄液8に捕集部3に付着していた油分や埃などの汚れが混入したものであり、浮遊粒子状物質除去装置1をオイルミスト集塵に用いた場合は特に鉱油を主成分とする切削油や潤滑油などが汚れの成分として混入される。
【0077】
また、油分を含んだ洗浄排水25が洗浄液カートリッジ9内に回収されると浮上油促進手段22によって油滴が捕捉され、油滴同士が会合し肥大化することで油滴系が増大し、浮上速度が上昇することから油分の浮上が促進される。また、浮上油26として、例えば不水溶性切削油であるサルクラットSX−450(協同油脂)は比重が0.88であり比重が浮上油撹拌防止手段23よりも小さいため、浮上油撹拌防止手段23の上部に浮上する。
【0078】
浮上油26とは、捕集部3に付着していた鉱油を主成分とする切削油や潤滑油が一度洗浄液8に混入し、洗浄液カートリッジ9内で浮上して洗浄排水25の上に浮上した油のことである。
【0079】
洗浄排水25を洗浄液カートリッジ9内に回収しながら洗浄液カートリッジ9内で浮上油26を分離し、浮上油26を分離した洗浄液8を洗浄液送液手段13で送液することによって洗浄液8を清浄な状態に保ちつつ連続して洗浄に用いることができるようになる。
【0080】
また、洗浄液8が入っていた洗浄液カートリッジ9内に洗浄排水25を回収するため、洗浄液8を新しいものに交換する際、洗浄液カートリッジ9を新しいものに取り替えるだけで簡単に洗浄液8を交換することができるようになる。
【0081】
このように、洗浄液カートリッジ9内に使用した洗浄排水25を回収することによって、洗浄排水25の搬出と新しい洗浄液8の充填を同時に行うことができるようになるため、作業者の液交換作業の負担を大きく軽減させることができる。浮遊粒子状物質除去装置1を使用する工場などの現場では、作業空間や作業時間が限定されている場合が多く、交換は簡単かつ短時間にできることが望ましい。
【0082】
また、回収した洗浄排水25を入れた洗浄液カートリッジ9を集配することによって、分散配置してある浮遊粒子状物質除去装置から発生する洗浄排水25を一か所に集めて効率的に廃水処理することができるようになる。洗浄排水25を処理するための適切な設備を所有しない場合は、廃水処理業者へ処理を委託する必要があるが、この場合も洗浄液カートリッジ9が搬出可能なのでカートリッジごと廃水処理業者に引き渡すことができ作業負担が軽減される。
【0083】
なお、第一の開閉手段18と第二の開閉手段19と第三の開閉手段20と第四の開閉手段21を設けないで、第一の洗浄液配管12と第二の洗浄液配管17をそれぞれ洗浄液カートリッジ9の上部に接続し、洗浄排水25の自重で逆流を防止させ、洗浄排水25を漏洩させずに洗浄液カートリッジ9に回収することもできる。
【0084】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2における浮上油撹拌防止手段23の構成図である。図2(a)は浮上油促進手段22と一体成形された浮上油撹拌防止手段23の斜視図であり、図2(b)は側面の構成図である。実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省く。
【0085】
図2(a)において、浮上油撹拌防止手段23には開口穴27が多数設けられており、浮上油撹拌防止手段23の下には傾斜板28が斜めに多数接続されている。
【0086】
図2(b)において、傾斜板28は例えばポリプロピレンの樹脂で成形された板状のものであり、浮上油撹拌防止手段23と一体成形されたフロート状となっている。フロート状以外の場合は洗浄液8の容量が変動した場合には洗浄液8と浮上油26の界面を検知して界面に浮上油撹拌防止手段23を移動させる手段が必要となるが、一体成形されたフロート状の場合、洗浄液8の容量が変動しても自重で洗浄液8と浮上油26の界面を追随することができるようになるため、簡便に浮上油撹拌防止手段23を洗浄液8と浮上油26の間に位置させることができる。
【0087】
傾斜板28の傾斜角は例えば、水平面に対して45℃となるように傾斜させることができ、10mm間隔で2枚以上並列に並べたものを用いることができる。傾斜板28に付着した洗浄排水25中の油滴29は互いに会合し大きくなりことによって浮上速度を上昇させ、傾斜板28を伝って浮上し、さらに会合し大きくなりながら洗浄排水25の上面まで浮上する。
【0088】
傾斜板28の水平面に対する角度を90℃に近くすることで傾斜板28に付着した油滴29が浮上しやすくなるが、0℃に近づけたほうが油滴29の傾斜板28に接触する確率が高くなる。このため、傾斜板28の角度は付着した油滴29が浮上しやすくなるように油の性状に合わせて調整すべきであるが、通常の切削油や潤滑油など浮上しやすい油を浮上させる場合は、傾斜板28の水平面に対する角度を45〜60℃に調節することが望ましい。
【0089】
洗浄排水25と浮上油26の界面にはポリプロピレン製の浮上油撹拌防止手段23があり、浮上油26は開口穴27を通過して浮上油撹拌防止手段23の上に浮上する。
【0090】
洗浄液8中に混入している油滴29の径は上方のほうが大きく、浮上油促進手段22の効果を有効に作用させることができる。洗浄液8の底部のほうは油滴29の径が小さく浮上油促進手段22の効果が発揮されにくい。そのため、浮上油促進手段22の効果を一定に保つためには、浮上油促進手段22を洗浄液8の上面に常に配置させることが望ましい。
【0091】
浮上油撹拌防止手段23に浮上油促進手段22を接続し一体成形することによって、浮上油促進手段22を常に洗浄液8の上面から一定の距離に保つことができるため、浮上油促進手段22の効果を一定に保つことができるようになる。また、この場合、一体成形された浮上油撹拌防止手段23が洗浄液8と浮上油26の間に浮遊するように浮上油促進手段22に掛かる浮力を調整するため、浮上油促進手段22は比重が1である樹脂で成形することが望ましい。
【0092】
また、浮上油促進手段22が流入口15の高さに位置している際は問題ないが、流入口15から流入する洗浄排水25が直接流出口10から流出してしまう場合は浮上油促進手段22の効果を発揮することができない。そこで、流入口15から流入する洗浄排水25が直接流出口10から流出しないように、邪魔板を流入口15から洗浄排水25が流入してくる箇所に設けることもできる。
【0093】
上記構成において、開口穴27は浮上してきた油滴を浮上油撹拌防止手段23の下から上に通過させ、洗浄排水25の上に浮上している浮上油撹拌防止手段23の下に溜まった浮上油26を浮上油撹拌防止手段23の上部に通過させることによって、浮上油撹拌防止手段23が浮上油26と洗浄排水25の界面に位置することとなる。
【0094】
洗浄排水25と浮上油26の界面に存在する浮上油撹拌防止手段23の存在によって一度分離した浮上油26と洗浄排水25が再混合されるのを防止することができるようになる。
【0095】
特に洗浄と次の洗浄とのインターバルが長い場合、洗浄排水25中の油は分離してそのほとんどが浮上している場合が多いが、次の洗浄を行う際に、勢い良く洗浄液8を噴霧してしまうと洗浄液カートリッジ9内を通過する洗浄液の流量が多くなり、せっかく分離して浮上した浮上油26を巻き込んで洗浄液8と一緒に噴霧してしまうこととなり、洗浄液8中の油分濃度が上昇するため洗浄液8中の洗浄性能が低下してしまう。
【0096】
このように一度浮上した浮上油26が洗浄液8に再混合されるのを防止することによって、繰返し洗浄液を使用した場合であっても洗浄力を維持することができ、油分を別の回収槽に分別する処理や、吸着剤や凝集剤を使用して回収分別するような煩雑な作業を行わなくても、洗浄液8を繰返し再利用することができるようになる。
【0097】
また、浮上油撹拌防止手段23は水より比重が大きく浮上油26より比重が小さいので、固定しなくても、自重により洗浄排水25と浮上油26の界面に位置されることとなる。従って、洗浄排水25の量が変動した場合であっても常に洗浄排水25と浮上油26の界面を追随することができるようになる。
【0098】
(実施の形態3)
図3は洗浄液カートリッジが円筒形状である実施の形態3における洗浄液カートリッジ9の上面図である。図3(a)は浮上油26が発生した旋回流によって中央部へ集まる様子を示した図で、図3(b)は傾斜板の配置図を示している。実施の形態1または2と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省く。
【0099】
図3(a)において流出口10からの流出の方向と流入口15からの流入の方向がともに、円形状の洗浄液カートリッジ9の側面に対して平行になるよう配置されており、なおかつ流入と流出の向きが同じ方向になるように配置されている。
【0100】
上記構成において、流入口15から洗浄排水25が洗浄液カートリッジ9内に流入する一方で、洗浄液カートリッジ9内で貯留され油分を浮上分離することで再生された洗浄液8が流出口10から流出される。このとき流入の方向と流出の方向がともに円筒形の洗浄液カートリッジ9内で上から見て時計回りの向きで流れているため、時計回りの方向の旋回流が洗浄液カートリッジ9内に形成される。発生した旋回流によって旋回流中心に方向の負圧が発生し、浮上した浮上油26は旋回流中心に引き寄せられる。
【0101】
浮上油26が自然発生した旋回流によって洗浄液カートリッジ9の中央部に引き寄せられ集められることによって、洗浄液8と一緒に流出口10から流出されるのを防止することができるようになる。
【0102】
図3(b)において、傾斜板28が発生する旋回流に対して垂直になるように傾斜板28が配置されている。傾斜板28は4枚平行に重ねた状態のセットを洗浄液カートリッジ9の内部に配置してある。旋回流に対する傾斜板28の角度は45℃から垂直の間が望ましく、垂直にすることによってより油の浮上促進効果を高めることができる。
【0103】
上記構成において、流入口15から流入された洗浄排水25が傾斜板28に垂直にぶつかるようになり、垂直にぶつかることによって応力が大きくなり、洗浄排水25中の油滴29が傾斜板28に接触する確立が高まる。傾斜板28に接触した油滴は捕捉され、油滴同士会合し大きくなり、浮上速度を上げながら浮上促進されるので、接触確立が高まることによって浮上がさらに促進されることとなる。
【0104】
このように、洗浄排水25の自重による流れと洗浄液送液手段13による流れによって少ないエネルギー消費で油の浮上促進効果を高め、なおかつ浮上した油が再生された洗浄液8と一緒に流出されるのを防止することができるようになり、消費エネルギーを抑えて洗浄液8を繰返し使用することができるようになる。
【0105】
(実施の形態4)
図4は実施の形態4における洗浄液カートリッジ9の構成図である。実施の形態1〜3と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省く。
【0106】
図4に示すように、洗浄液カートリッジ9の内壁の一部が親油性内壁30で構成されており、また、洗浄液カートリッジ9内の上部に油吸着剤31が備えられている。親油性内壁30とは、例えば、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、六フッ化プロピレン、パ−フルオロアルキルビニルエ−テル類から選ばれる少なくとも一種のモノマーを構成単位として含む熱可塑性フッ素樹脂をコーティングした壁面を用いることができる。また、油吸着剤31とは、例えばポリプロピレンの繊維状樹脂や活性炭などを用いることができる。
【0107】
上記構成において、洗浄液カートリッジ9内で浮上分離した浮上油26は親油性内壁30に吸着し、また、油吸着剤31に吸収されることによって捕捉されるようになる。油吸着剤31があることによって浮上油26の量が過剰に存在する場合でもしっかりと浮上油撹拌防止手段23の上に捕捉されるようになり、確実に浮上油26の洗浄液8への再混合を防止することができるようになる。
【0108】
また、洗浄液カートリッジ9内が浮上油26で飽和した場合、もしくは洗浄液8の劣化で洗浄性能を維持できなくなった場合は、洗浄液カートリッジ9を取り外し、新しい洗浄液カートリッジ9を取り付けることによって洗浄性能を初期の状態に戻すことができる。
【0109】
例えば洗浄液カートリッジ9全体の重量を検知することによって洗浄液カートリッジ9内の浮上油26の量を推測することができ、浮上油26の量が洗浄液8と等量に達したときに飽和するとあらかじめ設定しておけば、洗浄液カートリッジ9の交換時期を設定することができる。
【0110】
取り外した洗浄液カートリッジ9はカートリッジ開閉口24を開口し、浮上油26を吸着した油吸着剤31を取り外し廃棄し、洗浄液カートリッジ9内の廃液を適切な廃水処理槽で処理し、新しい洗浄液8を充填することによって、再生することができるようになる。
【0111】
また、取り外した洗浄液カートリッジ9の再生は適切な廃液処理業者に委託することによって処理することもできるが、この場合、洗浄液カートリッジ9自体を回収業者に引き渡すだけでよいので作業の負担を著しく軽減させることができる。
【0112】
このように、洗浄に用いる洗浄液8と洗浄によって発生する洗浄排水25を同一の洗浄液カートリッジ9内に回収する構成とし、洗浄液カートリッジ9内に洗浄液8を再利用するための浮上油促進手段22を備えることによって、連続して繰返し洗浄液8を洗浄に用いることができるようになり、廃棄する洗浄排水25の量を最小限にすることができる。
【0113】
また、洗浄液8の交換と洗浄排水25の処理を洗浄液カートリッジ9の脱着だけで簡単にできるようになることから、作業者に掛かる安全性を改善し、作業負担を著しく軽減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の浮遊粒子状物質除去装置を用いることによって煩雑な交換作業をせずとも洗浄液を新しいものに交換することができ、洗浄によって発生した洗浄排水をポンプなどで回収するような煩雑な作業をすることなく簡単に回収して集めることができるようになり、また、発生する洗浄排水の量を少なくすることができるようになる。このため、作業者の労働負担を軽減させるだけでなく、環境負荷を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の浮遊粒子状物質除去装置の構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態2に記載の浮上油撹拌防止手段の斜視図、(b)同側面の構成図
【図3】(a)本発明の実施の形態3に記載の浮上油26が発生した旋回流によって中央部へ集まる様子を示した洗浄液カートリッジの上面図、(b)同傾斜板の配置図
【図4】本発明の実施の形態4に記載の洗浄液カートリッジの構成図
【図5】従来の浮遊粒子状物質除去装置の構成図
【符号の説明】
【0116】
1 浮遊粒子状物質除去装置
2 筐体
3 捕集部
4 空気流入口
5 空気流出口
6 送風手段
7 噴霧手段
8 洗浄液
9 洗浄液カートリッジ
10 流出口
11 第一の接合部
12 第一の洗浄液配管
13 洗浄液送液手段
14 洗浄液受け手段
15 流入口
16 第二の接合部
17 第二の洗浄液配管
18 第一の開閉手段
19 第二の開閉手段
20 第三の開閉手段
21 第四の開閉手段
22 浮上油促進手段
23 浮上油撹拌防止手段
24 カートリッジ開閉口
25 洗浄排水
26 浮上油
27 開口穴
28 傾斜板
29 油滴
30 親油性内壁
31 油吸着剤
101 電気集塵機
102 洗浄配管
103 汚水配水管
104 汚水ピット
105a ポンプa
105b ポンプb
105c ポンプc
106 凝集剤溶解装置
107 汚水貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の浮遊粒子状物質を捕集する捕集部と、前記捕集部へ浮遊粒子状物質を含んだ空気を流入させる送風手段と、前記捕集部に付着した前記浮遊粒子状物質を洗浄するための洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液を前記洗浄液噴霧手段に送液する洗浄液送液手段と、前記洗浄液噴霧手段と前記洗浄液送液手段とを接続する洗浄液配管と、前記浮遊粒子状物質を洗浄した洗浄液を受ける洗浄液受け手段とを備えた浮遊粒子状物質除去装置であって、洗浄液が流出する流出口と洗浄液が流入する流入口を備えたカートリッジを備え、洗浄液を充填した前記洗浄液カートリッジを前記洗浄液送液手段と前記洗浄液受け手段に着脱可能に接続したことを特徴とする浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項2】
前記洗浄液カートリッジの上面を前記洗浄液受け手段より下に配置したことを特徴とする請求項1に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項3】
前記洗浄液カートリッジの前記流入口と前記洗浄液受け手段とを接続する配管のカートリッジ側に、開閉可能な弁を備えたことを特徴とした請求項1または2に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項4】
前記洗浄液カートリッジの前記流出口と前記洗浄液送液手段とを接続する配管のカートリッジ側に、開閉可能な弁を備えたことを特徴とした請求項1〜3のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項5】
前記流出口が前記洗浄液カートリッジの底部に配置され、前記流出口に開閉可能な弁を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項6】
前記流入口が前記洗浄液カートリッジの底部に配置され、前記流入口に開閉可能な弁を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項7】
前記洗浄液カートリッジ内に浮上する油の浮上速度を促進する浮上油促進手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項8】
前記浮上油促進手段が傾斜板であることを特徴とする請求項7に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項9】
前記洗浄液カートリッジ内に浮上した油の撹拌を防ぐ浮上油撹拌防止手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項10】
前記浮上油撹拌防止手段の比重は洗浄液と浮上油の間であって、フロート状であることを特徴とする請求項9に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項11】
前記浮上油撹拌防止手段に傾斜板が一体成形されていることを特徴とする請求項10に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項12】
前記洗浄液カートリッジの上面に開口部を備えたことを特徴とした請求項1〜11のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項13】
前記洗浄液カートリッジを円筒形としたことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項14】
前記洗浄液受け手段接続箇所から前記洗浄液カートリッジ内へ流入する洗浄液の向きを洗浄液カートリッジの外周の接線方向に平行とし、前記洗浄液送液手段接続箇所から前記洗浄液送液手段に流出する洗浄液の向きを円筒形洗浄液カートリッジの側面に平行とし、洗浄液カートリッジ内に旋回流を発生させることを特徴とする請求項13に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項15】
前記旋回流の方向に対して45度以上90度以下の角度になるように傾斜板の板面を配置したことを特徴とする請求項14に記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項16】
前記洗浄液カートリッジの内側壁面を親油性としたことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。
【請求項17】
前記洗浄液カートリッジ内に油吸着剤を備えたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の浮遊粒子状物質除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−162430(P2010−162430A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4218(P2009−4218)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】