説明

浴室の構築方法及び構造

【課題】大掛かりな作業とならずに構築でき、また構築後に生じるパン床下や床下回りで作業を行うために別途行う附帯作業が大掛かりとならないようにする。
【解決手段】洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6を有するパン部4と、パン部4の外側に位置する壁載置部7と、壁載置部7に載置して建て込んだ壁部15とを備えた浴室の構造であり、パン部4と壁載置部7が別体であり、施工床部Fにパン部4と壁載置部7が個別に設置され、パン部4が壁部15を建て込んだ壁載置部7から分離できること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の構築方法及び構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室を構築する浴室用防水パンは、洗い場パン部及び浴槽載置パン部と、洗い場パン部及び浴槽載置パン部に連ねた壁載置部とを一体に備え、壁載置部に壁部を載置して建て込むようにしてある(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭61−84771
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記浴室用防水パンを浴室のリフォームに用いるときには、防水パンを設置した後で、壁載置部に壁部を建て込もうとしても、建物壁等が邪魔となり壁部の建て込みができないことがある。このような場合には、壁部の建て込みができる状態まで建物壁等を取り壊す必要があり、作業が大掛かりとなる問題がある。この問題は、殊にマンション等の集合住宅の場合に多い。
【0004】
また、前記浴室用防水パンを用いて浴室を構築した後に、防水パン床下や床下の回りで配管や改修等の作業の必要が生じたとき、浴室外側から作業をしようとしても、建物壁等が邪魔となり作業ができないことがある。このような場合には、浴室を解体し、配管等の作業を行った後に、再度、浴室を構築する必要があり、配管等の作業以外の附帯作業が大掛かりとなる問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するための浴室の構築方法及び構造を提供するものであって、防水パン等の製造コストの上昇を押さえて低コストで施工できる構築方法とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
大掛かりな作業とならずに浴室を構築できるようにし、浴室を構築した後に生じる防水パン床下や床下回りの作業を行うために別途行う附帯作業が大掛かりとならないようにし、更に防水パン等の製造コストの上昇を押さえるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、浴室用防水パンを用いて浴室を構築する方法において、洗い場パン部及び洗い場パン部に連なる壁載置部が一体の洗い場側防水パンと、浴槽載置パン部及び浴槽載置パン部に連なる壁載置部が一体の浴槽側防水パンとを合成樹脂素材で成形型を用いて一体又は別体に成型して浴室用防水パンを得る第1工程と、浴室用防水パンを切断して洗い場パン部及び浴槽載置パン部からなるパン部と壁載置部とに分離する第2工程と、施工床部に分離した壁載置部または予め別途成形した壁載置部を設置する第3工程と、壁載置部に壁部を載置して建て込む第4工程と、施工床部にパン部を設置する第5工程とからなり第1工程乃至第5工程をこの順番で行うことを特徴とする浴室の構築方法である。
【0007】
請求項1記載の発明に係る浴室の構築方法では、施工床部に設置面積の大きなパン部を設置する前に、施工床部にパン部より設置面積の小さな壁載置部を設置して壁部を建て込むので、浴室内となる予定の広い空間を利用して壁載置部の設置及び壁部の建て込みができる。また、パン床下や床下回りでの作業の必要が生じたとき、本発明に係る浴室の構築方法で構築された浴室は、壁載置部に建て込んだ壁部を解体することなく、壁載置部と別体のパン部を分離して床下部分を露出させることで、床下部分を露出させるための附帯作業を簡単にできる。更に、本発明に係る浴室の構築方法にあっては、壁載置部を一体に備えた浴室用防水パンを成型する成形型を用いるため、壁載置部のない防水パンを成型するための大きな成形型を新たに準備する必要がなく、また、予め別途成形した壁載置部を用いる場合であっても、壁載置部は、パン部に比べて小さいために安価に製造することが可能である。
【0008】
施工を容易にするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記壁載置部及び前記パン部の両方を設置するための架台を用い、前記第3工程において該架台を前記施工床部に配置する請求項1記載の浴室の構築方法である。
【0009】
請求項2記載の発明に係る浴室の構築方法では、前記第3工程において施工床部に配置した架台に、壁載置部及びパン部を設置できる。
【0010】
施工を容易にするために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記パン部を設置する支持部と前記壁載置部を一体に備えた架台を用い、前記第3工程において該架台を前記施工床部に配置する請求項1記載の浴室の構築方法である。
【0011】
請求項3記載の発明に係る浴室の構築方法では、前記第3工程において施工床部に配置した壁載置部のある架台に、パン部を設置できる。
【0012】
大掛かりな作業とならずに構築でき、また構築後に生じるパン床下や床下回りで作業を行うために別途行う附帯作業が大掛かりとならないようにするために請求項4記載の本発明が採用した手段は、洗い場パン部及び浴槽載置パン部を有するパン部と、パン部の外側に位置する壁載置部と、壁載置部に載置して建て込んだ壁部とを備えた浴室の構造において、パン部と壁載置部が別体であり、施工床部にパン部と壁載置部が個別に設置され、パン部が壁部を建て込んだ状態の壁載置部から分離できることを特徴とする浴室の構造である。
【0013】
請求項4記載の発明に係る浴室の構造では、パン部と壁載置部が別体に形成され、施工床部にパン部と壁載置部が個別に設置されているため、施工床部に設置面積の大きなパン部を設置する前に、施工床部にパン部より設置面積の小さな壁載置部を設置して壁部を建て込むことができ、浴室内となる予定の広い空間を利用して壁載置部の設置及び壁部の建て込みが可能となり、また、パン床下や床下回りでの作業の必要が生じたとき、壁載置部に建て込んだ壁部を解体することなく、壁部を建て込んだ状態の壁載置部から別体のパン部を分離して床下部分を露出させて作業ができ、床下部分を露出させるための附帯作業を簡単にできる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本発明に係る浴室の構築方法は、設置面積の大きなパン部の設置より前に、施工床部に設置面積の小さい壁載置部を設置して壁部を建て込むので、浴室内となる予定の広い空間を利用して壁部の建て込むことで、大掛かりな作業とならずに浴室を構築できる。また、パン床下や床下回りでの作業の必要が生じたとき、本発明に係る浴室の構築方法で構築された浴室は、壁載置部に建て込んだ壁部を解体することなく、壁載置部と別体のパン部を分離して床下部分を露出させて行うことができるため、床下部分を露出させるための附帯作業が大掛かりとならない。更に、本発明に係る浴室の構築方法は、壁載置部を一体に備えた浴室用防水パンを成型する成形型を用いるため、壁載置部のない防水パンを成型するための大きな成形型を新たに準備する必要がなく、また、予め別途成形した壁載置部を用いる場合であっても、壁載置部がパン部に比べて小さいために安価に製造ができ、全体として製造コストの上昇を押さえることができる。
【0015】
請求項2記載の発明に係る浴室の構築方法では、施工床部に配置した架台を用いて壁載置部及びパン部を設置できるので、この設置の作業を軽減できる。
【0016】
請求項3記載の本発明に係る浴室の構築方法は、壁載置部の有る架台を用いてパン部を設置できるので、壁載置部及びパン部の設置の作業を軽減できる。
【0017】
請求項4記載の本発明に係る浴室の構造は、施工床部に設置面積の大きなパン部を設置する前に、施工床部にパン部より設置面積の小さな壁載置部を設置して壁部を建て込むことができ、浴室内となる予定の広い空間を利用して壁載置部の設置及び壁部の建て込みが可能となるため、大掛かりな作業とならずに構築でき、また、パン床下や床下回りでの作業の必要が生じたとき、壁載置部に建て込んだ壁部を解体することなく、壁部を建て込んだ壁載置部から別体のパン部を分離して床下部分を露出させて行うことができるため、床下部分を露出させるための附帯作業が大掛かりとならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る浴室の構築方法(以下、「本発明構築方法」と言う。)及び浴室の構造(以下、「本発明浴室構造」と言う。)を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1乃至図4は本発明構築方法の第1の実施の形態を示すものであり、図1(A)は成型した浴室用防水パン3を示す斜視図、同図(B)は浴室用防水パン3を切断して得たパン部4を示す斜視図、同図(C)は浴室用防水パン3を切断して得た壁載置部7を示す斜視図、同図(D)は架台8を示す斜視図である。図2(A)は施工床部Fに壁載置部7を設置した状態を示す中間省略した正面断面図、同図(B)は施工床部Fにパン部4を設置する前の状態を示す中間省略した正面断面図、図3は構築して得た本発明浴室構造1の下半側を中間省略して示す正面断面図である。図4(A)は図3(A)中の一点鎖線イで囲まれた部分の拡大図、同(B)は同部分の別態様を示す拡大図である。
【0020】
本実施の形態に係る本発明構築方法は、下記に示す第1工程乃至第5工程の各工程をこの順番で行なって本発明浴室構造1を構築する。
【0021】
(第1工程)
第1工程は、成形型(図示略)を用いて合成樹脂素材(例えば、繊維強化合成脂脂であるFRP)で、図1(A)に示す洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6を有するパン部4と、パン部4の洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6の周囲に連なる壁載置部7とを一体に成型し、洗い場側防水パン及び浴槽側防水パンが一体の室用防水パン3を得ることである。上記洗い場パン部5は、床表面に排水勾配を設けた洗い場床部5aの水下に排水凹部5bを凹設し、洗い場床部5aの水上となる三方(本例は、前側、後側及び右側)の周縁に壁載置部7の一部7Aを形成してある。また、上記浴槽載置パン部6は、洗い場床部5aより低い底部6aを有する凹形状となっており、環状の立ち壁6bの洗い場側に作業口6c,6cが開設され、底部6aに浴槽用排水口6dが開設され、立ち壁6bの三方(本例は、前側、後側及び左側)の周縁に壁載置部7の他部7Bが形成されている。壁載置部7は、洗い場側の一部7Aと浴槽設置側の他部7Bが連なって環状となっており、水平の載置面7c及び載置面7cの外周縁から立設した起立片7dを備えている。本例の壁載置部7は、洗い場側の一部7Aと浴槽載置側の他部7Bとが同一高さ位置に形成され、載置面7cが水平で環状となっている。各作業口6cは、浴槽載置側から洗い場パン部5の床下を臨み、パン部4の固定や配管等の作業ができるようにしてあり、作業後に蓋(図示略)で塞がれる。
【0022】
前記浴室用防水パン3は、洗い場パン部5及び浴槽設置パン部6からなるパン部4及び壁載置部7の全てを一体に成型する場合と、図示は省略したが、洗い場パン部5及び洗い場パン部5に連なる壁載置部7Aが一体の洗い場側防水パンと、浴槽載置パン部6及び浴槽載置パン部6に連なる壁載置部7Bが一体の浴槽側防水パンとを別体に成型する場合とがある。
【0023】
(第2工程)
第2工程は、浴室用防水パン3おけるパン部4と壁載置部7との境界部(図1(A)の図中に破線ロで示す位置)をカッター(図示略)で切断し、図1(B)に示すパン部4と、同図(C)に示す壁載置部7とに分離することである。切断作業は、浴室用防水パン3の製造工場で能率よく行なわれるが、施工現場で切断することも可能である。なお、パン部4の洗い場パン部5と浴槽載置パン部6とを分けて成型した場合には、第1工程で成型して得た洗い場側防水パンを切断して壁載置部7の洗い場パン部側部分7Aと洗い場パン部5とに分離すると共に、第1工程で成型して得た浴槽側防水パンを切断して壁載置部7の浴槽載置パン部側部分7Bと浴槽載置パン部6とに分離する。
【0024】
(第3工程)
第3工程は、図2(A)に示す如く、施工床部Fに、第2工程で分離した壁載置部7を、架台8に設けた支持部9を介して設置することである。架台8は、図1(D)に示す如く、金属製角パイプ等で組立てられ、四角形に枠組みした壁載置部用の支持部9と、支持部9に横架した横架部材11a,11bからなるパン部用の支持部11と、両方の支持部9,11に取り付けた複数個の高さ調節可能な脚部12とからなる。壁載置部7は、図2(A)及び図4(A)に示す如く、架台8の支持部9の上面にシール層13を介して又は介することなく配置され、ビス等の止付け具14で取付け固定される。なお、第2工程で切断して得た壁載置部7の洗い場側部分7A及び浴槽載置側部分7Bは、架台8に設けた支持部9に配置されて取付け固定される。
【0025】
なお、前記壁載置部7は、第2工程で得たものが破損する等して再利用できないときには、予め別途成形したものを用いることもある。別途成形した壁載置部7には、例えば、図4(B)に示す如く、架台8の四角形に枠組みした支持部9の上面に支持部9と一体にしたものがある。このように壁載置部7を支持部9と一体に備えた場合には、支持部9の上面に壁載置部7を取付け固定する手間が省略され、施工現場における作業を軽減することが可能となる。
【0026】
(第4工程)
第4工程は、図2(A)に示す如く、架台8に設けた支持部9を介して設置された環状の壁載置部7に、壁パネル等からなる壁部15を載置して建て込むことである。なお、壁部15を建て込むと、壁部15で囲まれた空間(浴室の室内となる空間)へパン部4を搬入できないときには、壁部15を建て込む前に、又は壁部15を建て込む途中でパン部4を搬入し、壁部15の建て込む作業スペースを確保するように、パン部4を傾斜又は起立させておく。なお、第2工程において切断して得たパン部4の分離した洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6は、分離した状態であっても、壁部15で囲まれた空間(浴室の室内となる空間)へ搬入できないときには、予めこの空間へ搬入しておくとよい。
【0027】
(第5工程)
第5工程は、図3及び図4(A)に示す如く、パン部4を、架台8に設けたパン部支持用の支持部11を介して設置することである。設置したパン部4は、その周縁が、前記壁載置部用の支持部9の内側に漏水防止のシール層13を介して載置される。支持部11に対するパン部4の固定は、図3に示す如く、支持部11の横架部材11aに、パン部4の底面側に設けた固定片16をビス等の連結具17で連結して行なう。連結具17の連結作業は、作業口6cを利用して行なわれる。なお、パン部4の固定の別態様としては、図4(B)に示す如く、架台8に設けた前記壁載置部用の支持部9にビス等の連結具18で連結して行なうこともある。設置したパン部4と壁部15の境界の内隅部は、シール材19を充填すると共に、シール材19を化粧材21で覆って、止水と仕上げが行われる。更に、パン部4の固定は、上記連結具17及び連結具18の両方で行うこともある。
【0028】
なお、第2工程において切断して得たパン部4の分離した洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6の両者は、設置前に両者を接合して一体化する場合と、設置した後に両者を接合する場合とがある。
【0029】
(その他の工程)
浴槽(図示略)の設置は、第5工程でパン部4を設置した後に、浴槽設置バン部6に載置して行う。また、出入り口扉(図示略)については、第4工程において、壁載置部7に載置して建て込むか、第5工程の後で、壁載置部7に載置して建て込む。
【0030】
前記の第1工程乃至第5工程の各工程をこの順番で行なう本発明構築方法は、施工床部Fに大きなパン部4を設置する前に、施工床部Fに壁載置部7を設置して壁部15を建て込むので、浴室内となる予定の広い空間S(図2(A)参照)を利用して壁載置部7の設置及び壁部15の建て込みができる。また、パン床下や床下回りでの作業の必要が生じたとき、本発明構築方法で構築された浴室は、壁載置部7に建て込んだ壁部15を解体することなく、壁載置部7と別体のパン部4を撤去又は起立させて床下部分を露出させて必要な作業を行うことができるため、床下部分を露出させるための附帯作業が従来に比べて大掛かりとならない。更に、本発明構築方法は、壁載置部7を一体に備えた浴室用防水パン3を成型する成形型(図示略)を用いるため、壁載置部7のない防水パンを成型するための大きな成形型を新たに準備する必要がなく、また、予め別途成形した壁載置部7を用いる場合であっても、壁載置部7がパン部4に比べて小さく、また、合成樹脂成型にこだわる必要がないため、金属素材等で安価に製造ができる。また、第2工程で切断して分離した壁載置部7を再利用するときには、製造コストを更に低減できる。
【0031】
図1(D)に示す架台8を用いるときには、壁載置部7を設置する支持部9及びパン部4を設置する支持部11が架台8に一体に備えられているため、第3工程における壁載置部7の設置、及び第5工程におけるパン部4の設置の作業の軽減を図ることができる。
【0032】
また、図4(B)に示す架台8を用いるときには、架台8に壁載置部7とパン部4を設置する支持部11が一体に備えられているため、第3工程における壁載置部7の設置、及び第5工程におけるパン部4の設置の作業の軽減を図ることができる。
【0033】
本発明構築方法で構築された本発明浴室構造1は、図3に示す如く、洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6を有するパン部4と、パン部4の外側に位置する壁載置部7と、壁載置部7に載置して建て込んだ壁部15とを備え、パン部4と壁載置部7が別体であり、施工床部Fにパン部4と壁載置部7が個別に設置され、パン部4が壁部15を建て込んだ状態の壁載置部7から分離できるようになっている。施工床部Fに対して壁載置部7は、架台8に設けられた壁載置部用の支持部9を介して設置され、施工床部Fに対してパン部4は、架台8に設けられたパン部用の支持部11を介して設置されている。
【0034】
本発明浴室構造1は、施工床部Fに別体のパン部4と壁載置部7とが個別に設置されているため、施工床部Fに設置面積の大きなパン部4を設置する前に、施工床部Fにパン部4より設置面積の小さな壁載置部7を設置して壁部15を建て込むことができ、浴室内となる予定の広い空間Sを利用して壁載置部7の設置及び壁部15の建て込みが可能となり、また、パン床下Gや床下回りでの作業の必要が生じたとき、壁載置部7に建て込んだ壁部15を解体することなく、壁部15を建て込んだ状態のまま壁載置部7から別体のパン部4を分離して床下G部分を露出させて作業ができ、床下G部分を露出させるための附帯作業を簡単にできる。なお、本発明浴室構造1は、前記本発明構築方法以外の方法で構築することも可能である。
【0035】
(第2の実施の形態)
図5乃至図7は本発明構築方法の第2の実施の形態を示すものであり、図5(A)は施工床部Fに設置した壁載置部7に壁部15を建て込んだ状態を示す中間省略した正面断面図、同図(B)は施工床部Fにパン部4を設置する前の状態を示す中間省略した正面断面図、図6は構築して得た本発明浴室構造31の下半側を中間省略して示す正面断面図である。図7(A)は図6中の一点鎖線ハで囲まれた部分の拡大図、同(B)は同部分の別態様を示す拡大図である。
【0036】
本実施の形態に係る本発明構築方法及び本発明浴室構造31は、前記第1の実施の形態と大きく異なる点が壁載置部用の支持部33及びパン部用の支持部34であり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図5乃至図7において図1乃至図4と同一符号は相当部分を示す。壁載置部用の支持部33は、平面四角形に枠組みした枠部材33aと、枠部材33aに取り付けた複数個の高さ調節可能な脚部12とからなる。パン部用の支持部34は、パン部4の底面の適所に取り付けた複数個の高さ調節可能な脚部からなる。
【0037】
本実施の形態に係る本発明構築方法は、下記に示す第1工程乃至第5工程の各工程をこの順番で行なって本発明浴室構造1を構築する。
【0038】
(第1〜2工程)
第1工程及び第2工程は、前記第1の実施の形態の第1工程及び第2工程と実質的に同一である。
【0039】
(第3工程)
第3工程は、図5(A)に示す如く、第2工程で分離した壁載置部7を、施工床部Fに支持部33を介して設置することである。壁載置部7は、図5(A)及び図7(A)に示す如く、支持部33の枠部材33aの上面にシール層13を介して又は介することなく配置され、ビス等の止付け具14で取付け固定される。
【0040】
なお、前記壁載置部7は、第2工程で得たものが破損する等して再利用できないときには、第1の実施の形態と同様に、予め別途成形したものを用いることもある。別途成形した壁載置部7には、例えば、図7(B)に示す如く、支持部33の枠部材33aの上面に支持部33と一体にしたものがある。
【0041】
(第4工程)
第4工程は、図5(A)に示す如く、第1の実施の形態と同様に、支持部33を介して設置された環状の壁載置部7に、壁パネル等からなる壁部15を載置して建て込むことである。
【0042】
(第5工程)
第5工程は、図6及び図7(A)に示す如く、パン部4を、パン部4の底面に取り付けた脚部からなる支持部34を介して施工床部F上に設置することである。支持部33とパン部4の間には、漏水防止のシール層13を介在させてある。パン部4の固定は、図6に示す如く、パン部4の底面側に設けた固定片35をビス等の連結具17で連結して行なう。連結具17の連結作業は、作業口6cを利用して行なわれる。なお、パン部4の固定の別態様としては、図示は省略しだか、壁載置部用の支持部材33の枠部材33aに横架して取り付けた横架材に、固定片35をビス等の連結具17で連結して行なうこともある。更に、パン部4の固定は、図7(B)に示す如く、支持部33にビス等の連結具18で連結して行なうこともある。設置したパン部4と壁部15の境界の内隅部は、シール材19を充填すると共に、シール材19を化粧材21で覆って、止水と仕上げが行われる。
【0043】
(その他の工程)
浴槽(図示略)の設置及び出入り口扉(図示略)の建て込みについては、第1の実施の形態と実質的に同一である。
【0044】
前記の第1工程乃至第5工程の各工程をこの順番で行なう本発明構築方法で構築された本発明浴室構造3 1は、図6に示す如く、洗い場パン部5及び浴槽載置パン部6を有するパン部4と、パン部4の外側に位置する壁載置部7と、壁載置部7に載置して建て込んだ壁部15とを備え、パン部4と壁載置部7が別体であり、施工床部Fにパン部4と壁載置部7が個別に設置され、パン部4が壁部15を建て込んだ壁載置部7から分離できるようになっている。施工床部Fに対して壁載置部7は、支持部33を介して設置され、施工床部Fに対してパン部4は、パン部4の底面に取り付けた複数個の脚部からなる支持部34を介して設置されている。
【0045】
(第3の実施の形態)
図8及び図10は本発明構築方法の第3の実施の形態を示すものであり、図8(A)は成型した浴室用防水パン43を示す中間省略した正面断面図、図8(B)は施工床部Fに設置した壁載置部47に壁部15を建て込んだ状態を示す中間省略した正面断面図である。図9は構築して得た本発明浴室構造41の下半側を中間省略して示す正面断面図である。図10(A)は図9中の一点鎖線ニで囲まれた部分の拡大図、同(B)は同部分の別態様を示す拡大図である。
【0046】
本実施の形態に係る本発明構築方法及び本発明浴室構造41は、前記第1の実施の形態と大きく異なる点が、パン部44を形成する洗い場パン部45における洗い場床部45aの三方(本例は、前側、後側及び右側)の周囲に立ち壁部45cを設け、立ち壁部45cの上端縁から外側へ壁載置部47の洗い場側47Aを延設したことであり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図8及び図10において図1乃至図4と同一符号は相当部分を示す。
【0047】
本実施の形態に係る本発明構築方法は、下記に示す第1工程乃至第5工程の各工程をこの順番で行なって本発明浴室構造1を構築する。
【0048】
(第1工程)
第1工程は、成形型(図示略)を用いて合成樹脂素材で、図8(A)に示す洗い場パン部45及び浴槽載置パン部46を有するパン部44と、パン部44の洗い場パン部45及び浴槽載置パン部46の周囲に連なる壁載置部47とを一体に成型して浴室用防水パン43を得ることである。上記洗い場パン部45は、床表面に排水勾配を設けた洗い場床部45aの水下に排水凹部(図示略)を凹設し、洗い場床部45aの水上となる三方(本例は、前側、後側及び右側)の周縁に立ち壁部45cを設け、立ち壁部45cの上端縁から外側へ壁載置部47の一部(洗い場側)47Aを延設してある。上記浴槽載置パン部46は、洗い場床部45aより低い底部46aを有する凹形状となっており、環状の立ち壁46bの洗い場側に作業口46cが開設され、底部46aに浴槽用排水口(図示略)が開設され、立ち壁46bの三方(本例は、前側(図8の図面手前側)、後側(同図の図面奥側)及び左側)の周縁に壁載置部47の他部(浴槽設置側)47Bが形成されている。壁載置部47は、洗い場側の一部47Aと浴槽設置側の他47Bが連なって環状となっており、水平の載置面47c及び載置面47cの外周縁から立設した起立片47dを備えている。本例の壁載置部47は、洗い場側の一部47Aと浴槽載置側の他部47Bとが同一高さ位置に形成され、載置面47cが水平で環状となっている。作業口46cは、浴槽載置側から洗い場パン部45の床下を臨み、パン部44の固定や配管等の作業ができるようにしてあり、作業後に蓋(図示略)で塞がれる。
【0049】
前記浴室用防水パン43は、前記第1の実施の形態と同様に、洗い場パン部45及び浴槽設置パン部46からなるパン部44及び壁載置部47の全てを一体に成型する場合と、図示は省略したが、洗い場パン部45及び洗い場パン部45に連なる壁載置部47Aが一体の洗い場側防水パンと、浴槽載置パン部46及び浴槽載置パン部46に連なる壁載置部47Bが一体の浴槽側防水パンとを別体に成型する場合とがある。
【0050】
(第2工程)
第2工程は、浴室用防水パン43おけるパン部44と壁載置部47との境界部(図8(A)の図中に破線ロで示す位置)をカッター(図示略)で切断し、同図(B)に示す壁載置部47と、図9に示す洗い場パン部45及び浴槽載置パン部46からなるパン部44とに分離することである。なお、パン部44の洗い場パン部45と浴槽載置パン部46とを分けて成型した場合には、第1工程で成型して得た洗い場側防水パンを切断して洗い場パン部45と壁載置部47Aとに分離すると共に、第1工程で成型して得た浴槽側防水パンを切断して浴槽載置パン部46と壁載置部47Bとに分離する。
【0051】
(第3工程)
第3工程は、図8(B)に示す如く、施工床部Fに、第2工程で分離した壁載置部47を、架台8に設けた支持部9を介して設置することである。架台8は、前記第1の実施の形態で説明した構成となっている。壁載置部47は、図8(B)及び図10(A)に示す如く、架台8の支持部9の上面にシール層13を介して又は介することなく配置され、ビス等の止付け具14で取付け固定される。
【0052】
なお、前記壁載置部47は、第2工程で得たものが破損する等して再利用できないときには、予め別途成形したものを用いることもある。別途成形した壁載置部47には、例えば、図10(B)に示す如く、架台8の四角形に枠組みした支持部9の上面に支持部9と一体にしたものがある。
【0053】
(第4工程)
第4工程は、図8(B)に示す如く、架台8に設けた支持部9を介して設置された環状の壁載置部47に、壁パネルからなる壁部15を載置して建て込むことである。なお、壁部15を建て込むと、壁部15で囲まれた空間S(浴室の室内となる空間)へパン部44を搬入できないときには、壁部15を建て込む前に、又は壁部15を建て込む途中でパン部44を搬入し、壁部15の建て込む作業スペースを確保するように、パン部44を傾斜又は起立させておく。
【0054】
(第5工程)
第5工程は、図9及び図10(A)に示す如く、パン部44を、架台8に設けた支持部11を介して設置することである。設置したパン部44は、その周縁が、前記壁載置部用の支持部9の内側に漏水防止のシール層13を介して載置される。支持部11に対するパン部44の固定は、図9に示す如く、支持部11の横架部材11aに、パン部44の底面側に設けた固定片56をビス等の連結具17で連結して行なう。連結具17の連結作業は、作業口46cを利用して行なわれる。なお、パン部44の固定の別態様としては、図10に示す如く、架台8に設けた前記壁載置部用の支持部9にビス等の連結具18で連結して行なうこともある。設置したパン部44と壁部15の境界の内隅部は、シール材19を充填すると共に、シール材19を化粧材21で覆って、止水と仕上げが行われる。更に、パン部44の固定は、上記連結具17及び連結具18の両方で行うこともある。
【0055】
なお、第2工程において切断して得たパン部44の分離した洗い場パン部45及び浴槽載置パン部46の両者は、設置前に両者を接合して一体化する場合と、設置した後に両者を接合する場合とがある。
【0056】
(その他の工程)
浴槽(図示略)の設置は、第5工程でパン部44を設置した後に、浴槽設置バン部46に載置して行う。また、出入り口扉(図示略)については、第4工程において、壁載置部47に載置して建て込むか、第5工程の後で、壁載置部47に載置して建て込む。
【0057】
前記の第1工程乃至第5工程の各工程をこの順番で行なう本発明構築方法は、施工床部Fに大きなパン部44を設置する前に、施工床部Fに壁載置部47を設置して壁部15を建て込むので、浴室内となる予定の広い空間Sを利用して壁載置部47の設置及び壁部15の建て込みができる。また、パン床下や床下回りでの作業の必要が生じたとき、本発明構築方法で構築された浴室は、壁載置部47に建て込んだ壁部15を解体することなく、壁載置部47と別体のパン部44を撤去又は起立させて床下部分を露出させて必要な作業を行うことができるため、床下部分を露出させるための附帯作業が従来に比べて大掛かりとならない。更に、本発明構築方法は、壁載置部47を一体に備えた浴室用防水パン43を成型する成形型(図示略)を用いるため、壁載置部47のない防水パンを成型するための大きな成形型を新たに準備する必要がなく、また、予め別途成形した壁載置部47を用いる場合であっても、壁載置部47がパン部44に比べて小さく、また、合成樹脂成型にこだわる必要がないため、金属素材等で安価に製造ができる。また、第2工程で切断して分離した壁載置部47を再利用するときには、製造コストを更に低減できる。
【0058】
本発明構築方法で構築された本発明浴室構造41は、図9に示す如く、洗い場パン部45及び浴槽載置パン部46を有するパン部44と、パン部44の外側に位置する壁載置部47と、壁載置部47に載置して建て込んだ壁部15とを備え、パン部44と壁載置部47が別体であり、施工床部Fにパン部44と壁載置部47が個別に設置され、パン部44が壁部15を建て込んだ壁載置部47から分離できるようになっている。施工床部Fに対して壁載置部47は、架台8に設けられた壁載置部用の支持部9を介して設置され、施工床部Fに対してパン部44は、架台8に設けられたパン部用の支持部11を介して設置されている。
【0059】
本発明浴室構造41は、施工床部Fに別体のパン部44と壁載置部47とが個別に設置されているため、施工床部Fに設置面積の大きなパン部44を設置する前に、施工床部Fにパン部44より設置面積の小さな壁載置部47を設置して壁部15を建て込むことができ、浴室内となる予定の広い空間S(図8(B)参照)を利用して壁載置部47の設置及び壁部15の建て込みが可能となり、また、パン床下Gや床下回りでの作業の必要が生じたとき、壁載置部47に建て込んだ壁部15を解体することなく、壁部15を建て込んだ状態のまま壁載置部47から別体のパン部44を分離して床下G部分を露出させて作業ができ、床下G部分を露出させるための附帯作業を簡単にできる。なお、本発明浴室構造41は、前記本発明構築方法以外の方法で構築することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明構築方法の第1の実施の形態を示すものであり、図(A)は成型した浴室用防水パンを示す斜視図、図(B)は浴室用防水パンを切断して得たパン部を示す斜視図、図(C)は浴室用防水パンを切断して得た壁載置部を示す斜視図、図(D)は架台を示す斜視図である。
【図2】図(A)は第1の実施の形態における施工床部に壁載置部を設置した状態を示す中間省略した正面断面図、図(B)は施工床部Fにパン部を設置する前の状態を示す中間省略した正面断面図である。
【図3】第1の実施の形態において構築して得た本発明浴室構造の下半側を中間省略して示す正面断面図である。
【図4】図(A)は図3(A)中の一点鎖線イで囲まれた部分の拡大図、同(B)は同部分の別態様を示す拡大図である。
【図5】本発明構築方法の第2の実施の形態を示すものであり、図(A)は施工床部に設置した壁載置部に壁部を建て込んだ状態を示す中間省略した正面断面図、図(B)は施工床部にパン部を設置する前の状態を示す中間省略した正面断面図である。
【図6】第2の実施の形態において構築して得た本発明浴室構造の下半側を中間省略して示す正面断面図である。
【図7】図(A)は図6中の一点鎖線ハで囲まれた部分の拡大図、図(B)は同部分の別態様を示す拡大図である。
【図8】本発明構築方法の第3の実施の形態を示すものであり、図(A)は成型した浴室用防水パンを示す中間省略した正面断面図、図8(B)は施工床部に設置した壁載置部に壁部を建て込んだ状態を示す中間省略した正面断面図、
【図9】構築して得た本発明浴室構造の下半側を中間省略して示す正面断面図である。
【図10】図(A)は図9中の一点鎖線ニで囲まれた部分の拡大図、図(B)は同部分の別態様を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0061】
1(31,41)…本発明浴室構造、3(43)…浴室用防水パン、4(44)…パン部、5(45)…洗い場パン部、6(46)…浴槽設置パン部、7(47)…壁載置部、8…架台、9(33)…(壁載置部用)支持部、11(34)…(パン部用)支持部、15…壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室用防水パンを用いて浴室を構築する方法において、洗い場パン部及び洗い場パン部に連なる壁載置部が一体の洗い場側防水パンと、浴槽載置パン部及び浴槽載置パン部に連なる壁載置部が一体の浴槽側防水パンとを合成樹脂素材で成形型を用いて一体又は別体に成型して浴室用防水パンを得る第1工程と、浴室用防水パンを切断して洗い場パン部及び浴槽載置パン部からなるパン部と壁載置部とに分離する第2工程と、施工床部に分離した壁載置部または予め別途成形した壁載置部を設置する第3工程と、壁載置部に壁部を載置して建て込む第4工程と、施工床部にパン部を設置する第5工程とからなり第1工程乃至第5工程をこの順番で行うことを特徴とする浴室の構築方法。
【請求項2】
前記壁載置部及び前記パン部の両方を設置するための架台を用い、前記第3工程において該架台を前記施工床部に配置する請求項1記載の浴室の構築方法。
【請求項3】
前記パン部を設置する支持部と前記壁載置部を一体に備えた架台を用い、前記第3工程において該架台を前記施工床部に配置する請求項1記載の浴室の構築方法。
【請求項4】
洗い場パン部及び浴槽載置パン部を有するパン部と、パン部の外側に位置する壁載置部と、壁載置部に載置して建て込んだ壁部とを備えた浴室の構造において、パン部と壁載置部が別体であり、施工床部にパン部と壁載置部が個別に設置され、パン部が壁部を建て込んだ状態の壁載置部から分離できることを特徴とする浴室の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−84817(P2009−84817A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253295(P2007−253295)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】