説明

浴室システム

【課題】本発明は、1つの散水部によって、殺菌水と温水を散水可能とし、且つ所望濃度の殺菌水を安定して生成することが可能な浴室システムを提供する。
【解決手段】制御装置は、浴室の洗い場床上に殺菌水を散水する殺菌モード中は、切替え手段によって給水管路内の水のみを供給する状態にするとともに、電解槽の電極間に電流を印加する状態とし、浴室の洗い場床上に温水を散水する床暖房モード中は、切替え手段によって給湯管路内の温水のみを供給する状態にするとともに、電解槽の電極間に電流を印加しない状態とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場を殺菌するための殺菌水と、浴室の洗い場を床暖房するための温水(湯)を散水することが可能な浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌性物質又はイオンを含有する殺菌水を散布して、浴室の細菌の発生を抑制する浴室防汚装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
斯かる浴室防汚装置においては、殺菌水を霧状、粒状、流水状等の形態で、浴室壁や洗い場床に散布することにより、細菌に起因する浴室壁や洗い場床の表面に生じる汚れを防止することができることが開示されている。
【0003】
また、浴室の洗い場床上に温水を散湯することで、床暖房を行うことができる床散湯システムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
斯かる床散湯システムにおいては、散湯することで、冬場に入浴する場合に、洗い場床面が冷たく寒気を感じたり、洗い場床面上に残っていた冷たい水滴により寒気を感じることを防止できることが開示されている。
【特許文献1】特開平9−220273号公報
【特許文献2】特開2001−74261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
殺菌水を抗菌性金属で形成された電極の溶出によって生成する簡易的な方法では、供給される水の水質によって、印加した電流に対しての銀イオンの溶出量が異なる。そのため、水の電気伝導度を検出し、それに応じた電流値をかけることによって、水質に応じた電流値制御を行うことが必要となる。
【0005】
このような、電気伝導度を検出して、それに応じた電流値を印加することで所望濃度の殺菌水を生成する方法において、供給された水の温度が異なると、水質が同じであっても検出される電気伝導度の値が変化してしまい、所望の濃度の殺菌水を安定して生成できないおそれがある。つまり、電極間に電流を印加する際に供給される水が、給水管からの冷水(水道水温度)であったり、床暖房に必要な給湯管からの温水であったりすると問題が生じる。
【0006】
従って、所望の濃度の殺菌水を生成するためには、殺菌水用の散水部と、床暖房用の散水部を別個に設け、殺菌水用の散水部には温水が通らないようにし、電極間に電流を印加する際に供給される水温を一定にすることが考えられるが、散水部が複数必要となり、好ましくない。以上の点に鑑み、本発明によれば、1つの散水部によって、殺菌水と温水を散水可能とし、且つ所望濃度の殺菌水を安定して生成することが可能な浴室システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、浴室の洗い場床上に殺菌水と温水とを散水可能な浴室システムであって、殺菌水および温水を洗い場床上に散水する散水部と、前記散水部の上流側に接続され、給水管路および給湯管路が合流する合流部を有する配管系統と、前記配管系統における前記給水管路の途上に取り付けられ、抗菌性金属で形成された一対の電極を有する電解槽と、前記散水部に、前記給水管路内の水のみを供給する状態と、前記給湯管路内の温水のみを供給する状態とに切替え可能な切替え手段と、前記電解槽と、前記切替え手段とを制御するとともに、前記一対の電極間の電気伝導度に応じて印加する電流値を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、浴室の洗い場床上に殺菌水を散水する殺菌モード中は、前記切替え手段によって前記給水管路内の水のみを供給する状態にするとともに、前記電解槽の電極間に電流を印加する状態とし、浴室の洗い場床上に温水を散水する床暖房モード中は、前記切替え手段によって前記給湯管路内の温水のみを供給する状態にするとともに、前記電解槽の電極間に電流を印加しない状態とすることを特徴とする浴室システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る浴室システムによれば、1つの散水部によって、殺菌水と温水を散水可能とし、且つ所望濃度の殺菌水を安定して生成することが可能な浴室システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る浴室システムの一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る浴室システムの全体的な概要を示すものである。
この浴室システムは、浴槽2と、浴槽2の長辺側に隣接する洗い場床3と、浴槽2側から洗い場床3を隔てて浴槽2に対向する第1の壁面4へ横設された浴室カウンタ5と、浴室殺菌装置1とから構成される。洗い場床3は、排水ピット7内に向かって排水用の下り勾配が取られている。ここで、浴室カウンタ5は、第2の壁面42に取り付けられており、浴槽2のリム2aより低い位置に配置されている。
【0011】
また、この浴室には、洗い場床3の浴槽2側端辺から、浴槽2の洗い場床3側端辺までを掩蔽するバスエプロン6と、洗い場床3の浴槽2側端辺に、洗い場床3より一段低く形成され、排水トラップ(図示せず)が取設される排水ピット7が設けられ、排水ピット7上面には、洗い場床上の水が排水ピット7内に流入可能な程度の隙間を空けて排水蓋8が載置される。給湯機44は、上流の給水管45および下流の給湯管16と繋がっている。また、風呂往き管47と風呂戻り管48を通じて浴槽2と繋がっている。給湯機44で加熱された湯は給湯管16を通じて、洗い場水栓から出湯される。また、浴室には浴室リモコン49が設置されている。浴室リモコン49は、通信線50を通じて、給湯機44の制御部(図示せず)と双方向で通信している。また、給湯機44の制御部により、給湯機44から風呂往き管47と風呂戻り管48を通じて浴槽2へのお湯はり運転を行ったり、また、浴槽水の追焚運転を行ったりする。
【0012】
浴室リモコン49には、給湯設定温度などを表示する表示部51と、運転スイッチ52と、運転スイッチ52がON状態の時に点灯する点灯部52aと、湯はりスイッチ53と、湯はりスイッチ53がON状態の時に点灯する点灯部53aと、追焚スイッチ54と、追焚スイッチ54がON状態の時に点灯する点灯部54aと、音声を発生させたりブザー音を鳴動させるためのスピーカー55と、給湯設定温度を設定するための給湯温度設定スイッチ56a、56bが備えられている。
【0013】
浴室殺菌装置1は、制御ボックス(制御装置)10と、機能ユニット11と、散水部12と、リモコン13とを備える。
制御ボックス10は、浴室の天井裏に設置され、リモコン13からの指示により、機能ユニット11内の後述する電磁弁及び電解槽を制御する。機能ユニット11は、殺菌水を生成するユニットであり、浴室カウンタ内に内蔵され、その先端には殺菌水を散布する散水部12が接続される。
【0014】
リモコン13は、浴室前の更衣室等の壁面に設置され、スイッチ13aとLED13bとを備える。殺菌モードのスイッチ13aをONにすると、電解槽の電解が作動を開始するとともに、LED13bが点灯し、電解槽の電解が作動中であることを表示する。またリモコン13には、床暖房モードの床暖房スイッチ70が設けられ、床暖房スイッチ70が押されると、洗い場床に散水部12から、適温の湯が散水される。
【0015】
浴室カウンタ5内部には、図2に示すように、洗い場水栓に給水/給湯する給水管15及び給湯管16が配管される。給水管15は、給水管分岐部75で分岐されて、機能ユニット11に水を供給する水道水導入管17が接続される。この水道水導入管17の途中には止水栓18が設けられ、この止水栓18を閉めることにより、機能ユニット11を取り外す際にも、浴室の通常の使用に支障を来さないようになっている。また、水道水導入管17には第一電磁弁22が設けられている。機能ユニット11の出口部分(電解槽の下流側)には、合流部74を設けて、水道水導入管17と給湯水導入管72とが合流する。給湯管16は、給湯管分岐部71で分岐し、給湯水導入管72に接続される。給湯水導入管72には、第二電磁弁73が設けられ、床暖房スイッチ70と連動して開閉する。尚、本実施形態における切替え手段は、第一電磁弁22と第二電磁弁73から構成される。また、本実施形態における配管系統は、水道水導入管17および給湯水導入管72および合流部74とで構成される。
【0016】
以上に述べた配管図を図3にまとめた。給水管15が、給水管分岐部75で分岐して、一方は洗い場水栓77へ、もう一方は散水部12から殺菌水となって吐水される。給湯管16は、給湯管分岐部71で分岐し、一方は洗い場水栓77へ、もう一方は散水部12から洗い場床を温めるお湯(温水)として吐水される。
【0017】
水道水導入管17により導入された水は、機能ユニット11内において殺菌水に変成され、殺菌水導出管19を経由して散水部12へと送られる。
【0018】
機能ユニット11は、図4(a)に示すように、ケース20内に、水道水導入管17に接続する流入口21を介して順に、電磁弁22、定流量弁23、大気開放弁24、逆止弁25、及び電解槽26が連通され、電解槽26は、流出口27を介して合流部74に接続される。ここで、流入口および流出口は浴室カウンターの前端部側に配置されるように取設されており、流入口と流出口の軸はそれぞれ対角位置に配置されている。電解槽を介して流入口と流出口を連通するための管路部は、流入口から浴室カウンターの後端部側に直進する往路部と、流出口から浴室カウンターの後端部側に直進する復路部と、往路部および復路部の浴室カウンター後端部側の端部を連通するためにU字状に屈曲すると共に、復路部が往路部に比べて高い位置に配置されるように取り付けられる屈曲部と、を有している。
【0019】
機能ユニット11は、ケース20内にウレタン樹脂28が充填されて、防水構造とされている。これにより、電気部品の端子部の防水と、通水部からの漏水が防止される。
【0020】
また、図4(b)に示すように、機能ユニット11の大きさを最小とすべく、流入ロ21と流出口27の軸が、ケース20の対角に位置するように配設される。
【0021】
リモコン13のスイッチ13a(殺菌モード)が押されると、制御ボックス10からの指示により水道水導入管17にある第一電磁弁22が開く。そして、電磁弁22が開くことにより通水され、定流量弁23により流量が一定に保たれた状態で電解槽に電流が印加される。これにより、生成される殺菌水の濃度が一定に保たれると同時に、散水部12から散布される殺菌水の水圧も一定に保たれ、所望の範囲に殺菌水を散布することが可能となる。
【0022】
通水状態になると、電解槽26の電極29に通電が開始され、電極29の電気分解が行われて銀イオンが発生する。銀イオンを含有する水は殺菌水として散水部12へ送られる。こうして生成された殺菌水は、逆止弁25により給水管15へと逆流することが防止される。
【0023】
大気開放弁24は、通電時(電磁弁開)においては閉止状態になって、水が外部に漏出することが防止され、待機時(電磁弁閉)には開放状態になって、逆止弁25より下流側は空気と置換される。これにより、電解槽26内に残存水が残ることが防止される。
【0024】
電解槽26の電極29は、銀、銀合金または銀メッキ金属により形成され、電極29の電気分解が行われると銀イオンが発生する。この電極29は、図5(a)に示すように、電極29同士が水平になるような位置関係で設置されている。これにより、図5(b)に示すように、待機時に残存水の表面張力による電極の導通状態が回避される。このようにすることで、電解槽をコンパクト(厚みを薄く)にしても、待機時に残存水の表面張力によって電極が導通状態になることを回避できる。
【0025】
リモコン13の床暖房スイッチ70(床暖房モード)が押されると、制御ボックス10からの指示により給湯機44が作動し、給湯水導入管72にある第二電磁弁73が開く。そして、電磁弁73が開くことにより温水が通水される。温水の温度は、リモコン13から指定できるように、湯温設定手段をリモコン13に搭載するのが好ましい。これにより、散水部12から所望の温度の温水を散布することが可能となる。
【0026】
散水部12からは、殺菌水と温水が散布される。以下は殺菌水を散布する場合を記述するが、散水部は共通であるため、温水を散布する場合にもあてはまる。散水部12は、図6に示すように、大別して、殺菌水導出管19に接続されるボディ30と、その先端に軸支される回転体31とから構成される。回転体31はまた、上側部材32と下側部材33とに分割され、ワッシャ34を介して、固定ビス35により、ボディ31の先端に回転自在に取設される(図8参照)。回転体31はこのように取り外し可能かつ分解可能に形成されているので、その内部及びボディ30の先端を清掃することができる。
【0027】
回転体31(の下側部材33)には、図7(a)に示すように、4対8個の液体噴出孔33a,33b,33c,33dが設けられる。これらの液体噴出孔33a,33b,33c,33dは、回転体31の回転中心から同一方向へ同一距離偏心して設けられるので、通水状態になると、水流により回転し、洗い場床3ヘ殺菌水を万遍なく散布することができる。
【0028】
これらのうち、液体噴出孔33aは、図7(b)に示すように、水平に開口するものの、液体噴出孔33bは、図7(c)に示すように、仰角4°に開口する。また、液体噴出孔33cは、図7(d)に示すように、仰角8°に、液体噴出孔33dは、図7(d)に示すように、仰角12°にそれぞれ開口する。
【0029】
これにより、洗い場床3の散水部近傍から遠方まで、万遍なく散布することができる。なお、各液体噴出孔の仰角は、散布する洗い場床の広さに応じて適宜決定される。
【0030】
ところで、ボディ30の先端は、図8に示すように、直径D1に形成された軸先端30aのさらに先に直径D2の最先端30bが段落ちして形成される。これに対応して、上側部材32には、軸先端30aが挿通可能な直径D1’の挿通孔32aが形成され、下側部材33には、最先端30bが挿通可能なものの軸先端30aは挿通不能な直径D2’’の挿通孔33eが形成される。
【0031】
これにより、回転体31を分解した後、誤って上側部材32と下側部材33とを上下逆に取り付けることが防止されるので、液体噴出孔33b,33c,33dは仰角を確保でき、常に上方を指向して開口する。
【0032】
本実施の形態に係る浴室システムは上記のように構成されており、以下その殺菌水散布状態について説明する。図9は、殺菌水の散布状態を示す平面図であり、図10は同立面図である。
【0033】
図9に示すGのエリアは、主に仰角0°の液体噴出孔33aからの殺菌水が散布されるエリアであり、同Hのエリアは、主に仰角4°の液体噴出孔33bからの殺菌水が散布されるエリア、同じく、I及びJのエリアは、それぞれ主に仰角8°及び12°の液体噴出孔33c及び33dからの殺菌水が散布されるエリアである。このように、液体噴出口33a,33b,33c,33dの仰角を異ならせることにより広範囲に亘って殺菌水を散布することが可能となる。
【0034】
これに対し、図9に示すFのエリアには、殺菌水は直接散布されない。このエリアには、図10に示すように、散水部12より奥側で浴室カウンタが取設される第2の壁面42、第2の壁面近傍側の第1の壁面4、または第2の壁面近傍側のバスエプロン6に当たり跳ね返った水、及び跳ね返った後そこから洗い場床3の勾配に沿って流れ下る殺菌水により洗浄される。このように、散水部12が回転して吐水する形態であるため、散水部から離れたエリアG,H,I,Jエリア用の液体噴出孔を設けておけば、必然的に散水部12近傍の洗い場床上は、大量の殺菌水が流れることになる。これにより、洗い場床上全面に殺菌水を行き渡らせることが可能となる。特に、水道圧力のみで、散水部12遠方側まで殺菌水を散布するためには、液体噴出孔の総孔面積に限界があるが、本実施形態では、散水部から離れたエリアG,H,I,Jエリア用の液体噴出孔のみで足りるため、水道水圧のみで洗い場床の全面に殺菌水を行き渡らせることができる。
【0035】
この点、散水部12は、浴槽2と洗い場床3を隔てて対向する壁面4近傍、すなわち、排水ピット7と対角位置となるに水上に取設されるので、散水部近傍においても殺菌水が廻らないエリアはない。
【0036】
また、散水部12は、浴室カウンタ5下部に取設されるので、浴室カウンタ5下部が陰になって、殺菌水が廻らないということもない。
【0037】
他方、液体噴出口33dの仰角は一定以下に抑えられるので、無闇に広いエリアに散布することはなく、経済的であるばかりでなく、図10に示すように、殺菌水は最高位置でも浴槽2のリム2aの高さを超えないので、風呂蓋に殺菌水がかかることもない。
【0038】
さらに、殺菌水は、バスエプロン6に向かっても散布されるので、図11に示すように、排水ピット7上の排水蓋8とバスエプロン6との間にできる隙間には、バスエプロン6に当たって流れ落ちる殺菌水によって洗浄される。このように、洗い場床3を流れ落ちる殺菌水だけでは網羅できないエリア(排水ピットにおけるバスエプロン6側の端辺であって、特にその中央付近は洗い場床上を流れた殺菌水が流れにくい。)も洗浄することができる。
【0039】
銀イオンを溶出する際の電解制御内容について記載する。銀イオンを電解溶出する場合、水中の塩素イオンが銀イオンの電解反応を阻害するため、水質によって、印加した電流に対しての銀イオンの溶出効率が異なってくる。すなわち、塩素イオンが高い濃度で含まれる水では、銀の電解効率が下がるため、一定範囲の銀イオン濃度を出すにはより大きな電流を印加する必要がある等、所望の濃度の銀イオン水を得るためには、水質に応じて投入する電流値を変化させる必要ある。
【0040】
この問題を解決するものとして、塩素イオン濃度と相関の高い、水の電気伝導度を検出して、それに応じた電流値をかけることによって、水質に応じた電流値制御を行っている。
【0041】
図12は制御ボックス10の構成要素を表す。制御ボックス10は、電源80に漏電ブレーカ81を介して接続された制御基板82を主要構成要素とする。制御基板82は、リモコン13からの指示により、電磁弁22を開閉するとともに、銀電解槽26の電極29間に電圧を印加する。制御基板82は、また、通電時の電極29間の電流、電圧値を受信する。制御基板82内には、マイコン(図示せず)の他、カウンタ83、EEPROM84、及びROM85が設けられる。カウンタ83は、リモコン13のスイッチ13aがONされる毎にインクリメントし、電気分解が実施された回数を記録する。
【0042】
制御基板82は、通電時の電極29間の電流、電圧値を基に電気伝導度(1/kΩ)を算出し、その値をEEPROM84に記憶する。
【0043】
ROM85には、銀イオン濃度が所定の値(ppb)になる電導度(1/kΩ)と電流値(mA)との関係の制御テーブルが予め複数記憶されている。図13にその制御テーブルの一例を示す。なお、銀イオン濃度の所定の値とは、概ね50〜100ppbである。塩素イオン濃度が高い場合は、銀イオンの電解溶出効率が下がるため、電解電流値を上げることで銀イオン溶出効率の低下を補強し、ほぼ一定の銀イオン濃度を溶出する。水中の塩素イオンは、電気伝導度と相関がある。よって、これこれの電気伝導度が検出された場合にはこれこれの電流値を流しましょう、という電流値補正をリストしたものがこの制御テーブルである。
【0044】
図14は図13の制御テーブルに反映される電気伝導度と電流値の相関を表す。本実施例では、電気伝導度がb値より低い水では、定電圧制御を行う。b値以下の水は、水中の溶存イオンが非常に少ない水道水が対応する。電気伝導度がb値以上a値以下の場合は、電気伝導度に関わらず一定の電流値で定電流制御を行う。日本の水道水の大部分はこの領域に相当し、同じ電流値で、ほぼ一定範囲の銀イオン濃度が溶出できる。電気伝導度がa値以上の場合、電気伝導度に比例して電流値を大きくする。電気伝導度をk(1/KΩ)、電流値をI(mA)とするとI=s×k+(s、tは定数)の一次式で電流値は決定される。この領域は塩素イオン濃度が高く、銀の溶出効率が下がるため、電流値を上げることで溶出効率の低下を補う。
【0045】
図15は水の電気伝導度を検出して、制御式から電流値を自動算出する殺菌水生成装置による銀イオン濃度制御フローチャートを示す。電解槽26を通過する水に対し、電極29において電流、電圧特性が計測される。検出した電気伝導度の値がa値(1/KΩ)以下の場合、一定電流Iaをかける。ただ電導度b値(1/KΩ)以下では、一定電流Iaをかけるには最大電圧Vaをオーバーする領域なため、最大電圧Vaでの定電圧制御を行う。電気伝導度がa値(1/KΩ)以上であれば、電気伝導度−電流値から算出された電流値を所定時間(洗い場床3に殺菌水を吐水する時間)、一定になるように制御する。
【0046】
制御基板には、これらに加え、DIPスイッチ86が設けられ、リモコン13のスイッチ13aでできる操作以外の操作も可能となっている。
【0047】
図16は、洗い場殺菌スイッチ(殺菌モード)がONされた時のフローチャートである。洗い場殺菌SWがONされると、電磁弁73が閉じている時のみ、電磁弁22を開き、電解槽26内に給水管路内の水を供給する状態とする。そして、電解槽26の電極間に電流を印加することで生成された殺菌水を吐水する。電磁弁22を開、殺菌水生成装置の運転をONにしたと同時に、タイマーを作動させ、タイマーが所定時間をカウントしたら、電磁弁22を閉じ、殺菌水生成装置を停止し、運転を終了する。このようにすることで、殺菌モード時は、電解槽内に給水管からの水のみが流入することになるため、大きな温度変化がないため、温度センサーなどを設けることなく安定した濃度の殺菌水を散水することが可能となる。
【0048】
図17は、床暖房スイッチ(床暖房モード)がONされた時のフローチャートである。床暖房SWがONされると、電磁弁22が閉じている時のみ、給湯機44をONし、電磁弁73を開いて、湯を洗い場に吐水する。尚、この時、電解槽の電極間には電流を印加しない。タイマーが所定時間をカウントしたら、電磁弁73を閉じ、湯の吐水を停止し、運転を終了する。
【0049】
本実施例における殺菌水としては、殺菌性物質又はイオンを含有する水を例示することができる。具体的には、抗菌性金属(例えば、銀、銅、亜鉛等)などを挙げることができる。
【0050】
尚、上述した本実施形態による浴室システムによれば、以下の効果が得られる。1つの散水部によって、殺菌水と温水を散水可能とし、且つ所望濃度の殺菌水を安定して生成することが可能な浴室システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る浴室システムの一実施形態の全体概要を示す図。
【図2】浴室カウンタ裏面に取設された機能部を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図3】浴室カウンタ裏面に取設された配管の概略図。
【図4】機能部の詳細を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図図。
【図5】銀電極の配置を模式的に説明する図。
【図6】散布ノズルの構成を示す図。
【図7】散布ノズルの回転体を示す図で、(a)は平面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図、(d)はD−D断面図、(e)はE−E断面図。
【図8】散布ノズルの分解断面図。
【図9】殺菌水の散布状態を示す平面図。
【図10】殺菌水の散布状態を示す立面図。
【図11】排水ピット廻りにおける殺菌水の散布状態を示す斜視図。
【図12】殺菌水生成装置の制御系統を示すブロック図。
【図13】制御基板に記憶された制御テーブルの一例を示す図。
【図14】電気伝導度と電流値との関係を表すグラフ。
【図15】殺菌水生成装置による銀イオン濃度制御フローチャート。
【図16】洗い場殺菌SWがONされた時のフローチャート。
【図17】床暖房SWがONされた時のフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1 浴槽殺菌装置
2 浴槽
2a リム
3 洗い場床
4 第1の壁面
5 浴室カウンタ
6 バスエプロン
7 排水ピット
8 排水蓋
10 制御ボックス
11 機能ユニット
12 散布部
13 リモコン
13a スイッチ
13b LED
13c 報知手段
15 給水管
16 給湯管
17 水道水導入管
18 止水栓
19 殺菌水導出管
20 ケース
21 流入口
22 電磁弁
23 定流量弁
24 大気開放弁
25 逆止弁
26 電解槽
27 流出口
28 ウレタン樹脂
29 電極
30 ボディ
30a 軸先端
30b 最先端
31 回転体
32 上側部材
32a 33e 挿通孔
33a,33b,33c,33d 液体噴出孔33 下側部材
34 ワッシャ
35 固定ビス
42 第二の壁面
44 給湯機
45 給水管
47 風呂往き管
48 風呂戻り管
49 浴室リモコン
50 通信線
51 表示部
52 運転スイッチ
53 湯はりスイッチ
54 追焚スイッチ
55 スピーカー
56a、56b 給湯温度設定スイッチ
70 床暖房スイッチ
71 給湯管分岐部
72 給湯水導入管
73 第二電磁弁
74 合流部
75 給水管分岐部
77 洗い場水栓
80 電源
81 漏電ブレーカ
82 制御基板
83 カウンタ
84 EEPROM
85 ROM
86 DIPスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の洗い場床上に殺菌水と温水とを散水可能な浴室システムであって、
殺菌水および温水を洗い場床上に散水する散水部と、
前記散水部の上流側に接続され、給水管路および給湯管路が合流する合流部を有する配管系統と、
前記配管系統における前記給水管路の途上に取り付けられ、抗菌性金属で形成された一対の電極を有する電解槽と、
前記散水部に、前記給水管路内の水のみを供給する状態と、前記給湯管路内の温水のみを供給する状態とに切替え可能な切替え手段と、
前記電解槽と、前記切替え手段とを制御するとともに、前記一対の電極間の電気伝導度に応じて印加する電流値を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、浴室の洗い場床上に殺菌水を散水する殺菌モード中は、前記切替え手段によって前記給水管路内の水のみを供給する状態にするとともに、前記電解槽の電極間に電流を印加する状態とし、
浴室の洗い場床上に温水を散水する床暖房モード中は、前記切替え手段によって前記給湯管路内の温水のみを供給する状態にするとともに、前記電解槽の電極間に電流を印加しない状態とする
ことを特徴とする浴室システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−207824(P2009−207824A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56657(P2008−56657)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】