説明

浴室床パンの防水シール構造

【課題】止水空隙での確実な止水効果を得ることができる浴室床パンの防水シール構造を提供する。
【解決手段】各壁パネル4及びドア枠の下端を支持部材5により支持し、各浴室床パン3の外端縁とこれに対応する支持部材5の洗い場側端52との間に介在させた止水空隙6を高分子ゲル材71とコーキング剤72とにより止水する。高分子ゲル材71として、径方向の幅を減縮させて長手方向に伸長した状態から径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元するものを用い、止水空隙6に対し径方向の幅を減縮させて長手方向に伸長した状態で収容すると、止水空隙6に密接するまで径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元し、止水空隙6を密接状態でシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床の敷設領域に敷設される浴室床パンの防水シール構造に関し、詳しくは、浴室床パンと壁パネル又はドアの枠体との間を防水した状態にシールするようにしたものに係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種浴室床パンの防水シール構造としては、浴室床パンの端縁と壁パネルの洗い場側の端縁を支持する支持部との間の止水空隙に、ひも状軟質材を嵌装するとともに、有蓋パッキンを覆設することで、止水処理を施すようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−233460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴室床パンの端縁と壁パネルの洗い場側の端縁を支持する支持部との間の止水空隙は均一なものではなく、各浴室床パン及び各壁パネルの組み付け誤差などによっては部分的に止水空間が大小さまざまなものとなる。その場合、前記従来のものでは、ひも状軟質材及び有蓋パッキンが予め規定された大きさであるため、止水空隙の大きさによっては、ひも状軟質材及び有蓋パッキンが止水空隙に収まらなかったり、止水空隙に収めても当該止水空隙に隙間が生じたりするおそれがあり、止水空隙での確実な止水効果が危惧される。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、止水空隙での確実な止水効果を得ることができる浴室床パンの防水シール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、浴室に設けられる浴室床パンの縁部と壁パネル又はドアの枠体とのいずれか一方と、他方を支持する支持部との間に介在する止水空隙を防水した状態にシールする浴室床パンの防水シール構造を前提とする。そして、前記止水空隙に密接状態で収容され、径方向の幅を減縮させて長手方向に伸長した状態から径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元する長尺な高分子ゲル材と、前記高分子ゲル材の上側に充填され、前記止水空隙をシールするシリコン材と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この特定事項により、高分子ゲル材は、浴室床パンの縁部と壁パネル又はドアの枠体とのいずれか一方と他方を支持する支持部との間の止水空隙に当該止水空隙の大きさに応じて長手方向に伸長させて径方向の幅を減縮させた状態で収容されると、この止水空隙に密接するように径方向の幅が増大し、長手方向に収縮した状態に復元する。このため、止水空隙の大きさに左右されることなく当該止水空隙が高分子ゲル材により密接状態でシールされ、高分子ゲル材による確実な止水効果が得られる。しかも、高分子ゲル材の上側に充填されたシリコン材によって止水空隙が二重にシールされる。
これにより、高分子ゲル材とシリコン材とによって止水空隙での確実な止水効果を得ることが可能となる。
【0008】
また、前記高分子ゲル材として、前記止水空隙の大きさよりも復元時の径方向の幅が大きな単一種類のものを適用して、前記止水空隙の大きさに応じてその都度径方向の幅を減縮させるように長手方向に伸長させて対応していてもよい。
【0009】
この場合には、止水空隙の大きさよりも復元時の径方向の幅が大きな単一種類の高分子ゲル材が用いられているので、大きさの異なるあらゆる止水空隙に対し高分子ゲル材が隙間なく密着する。
そして、高分子ゲル材は、止水空隙の大きさに応じてその都度径方向の幅を減縮させるように長手方向に伸長させて対応しているので、異なる止水空隙の大きさに応じて高分子ゲル材を長手方向に伸長させれば、あらゆる止水空隙の大きさに単一種類の高分子ゲル材の径方向の幅を合致させることが可能となる。これにより、高分子ゲル材の長手方向の端部同士の接続箇所が最小限に留められ、シール切れの発生部位を単一の高分子ゲル材の長手方向両端同士にのみとなって、止水性能の信頼性を飛躍的に拡大させることができる。
【0010】
これに対し、前記高分子ゲル材として、復元時における径方向の幅がそれぞれ異なる複数種類のものを用意し、その複数種類の中から前記止水空隙の大きさよりも復元時の径方向の幅の大きな高分子ゲル材を採択していてもよい。
【0011】
この場合には、異なる止水空隙の大きさに応じてその大きさよりも復元時の径方向の幅の大きな高分子ゲル材がその都度採択され、この採択された高分子ゲル材によって当該止水空隙を効率よくシールすることができる。しかも、止水空隙の大きさに応じた最適な高分子ゲル材によってシールされるので、止水空隙内で高分子ゲル材が上下方向に多大に変形してシリコン材の充填量が減少することがなく、高分子ゲル材とシリコン材との二重シールを円滑に行うことができる。
【0012】
更に、前記高分子ゲル材の長手方向の端部同士を接着剤により連結することが好ましい。
【0013】
この場合には、高分子ゲル材の長手方向の端部同士がシール切れすることなく接着剤により連結され、高分子ゲル材による止水効果をより確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上、要するに、径方向の幅を減縮させて長手方向に伸長した状態から径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元する長尺な高分子ゲル材と、この高分子ゲル材の上側に充填されたシリコン材とで浴室床パンの縁部と支持部との間の止水空隙をシールすることで、止水空隙の大きさに左右されることなく当該止水空隙を高分子ゲル材により密接状態でシールするとともに、この高分子ゲル材の上側のシリコン材によって止水空隙を二重にシールし、高分子ゲル材とシリコン材とによる止水空隙での確実な止水効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る浴室床パンの防水シール構造を用いた浴室の洗い場を上方から見た平面図である。
【図2】図1のA−A線において切断した断面図である。
【図3】図1のB−B線において切断した断面図である。
【図4】図1のC−C線において切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る浴室床パンの防水シール構造を用いた浴室の洗い場を上方から見た平面図である。この図1において、1は洗い場であって、この洗い場1の床2の敷設領域には、複数枚の浴室床パン3(図1では4枚)が敷設されている。これらの浴室床パン3は、成形型により略正方形状に成形され、FRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂材よりなる。そして、各浴室床パン3は、それぞれの端縁の位置に合わせて洗い場1の床2の敷設領域に敷設された複数の支持フレーム(図示せず)に支持されている。この各支持フレームは、床2の敷設領域に対する各浴室床パン3の高さを確保するためのレベルアジャスター(図示せず)を備えている。また、互いに相隣なる浴室床パン3,3の端縁の間には、その浴室床パン3,3同士の間に敷設された支持フレームを上方から隠蔽する隠蔽カバー31が装着されている。この各隠蔽カバー31は、FRPなどの合成樹脂により成形され、互いに相隣なる浴室床パン3,3の端縁の間にほぼ隙間なく収容される。
【0018】
図2は図1のA−A線において切断した断面図であって、この図2に示すように、洗い場1の周囲のうちの一辺には、図示しない浴槽が隣接して設けられている。この浴槽及び洗い場1を含む浴室の周囲は、複数枚の壁パネル4とドア(図示せず)とによって仕切られている。前記ドアは、枠体としてのドア枠(図示せず)に対し開閉自在とされている。
【0019】
前記各壁パネル4は、樹脂化粧鋼板41の裏面に裏打材42を貼り合わせて形成されている。この樹脂化粧鋼板41の左右両端縁及びドア枠の左右両端縁には、背面側に折曲された折り曲げ部(図示せず)がそれぞれ形成されており、この両折り曲げ部が連結部材(図示せず)を介して連結されている。また、樹脂化粧鋼板41の下端縁及びドア枠の下端縁にも、背面側に折曲された折り曲げ部43(図2では樹脂化粧鋼板41の折り曲げ部43のみ示す)がそれぞれ形成されている。この場合、互いに相隣なる壁パネル4,4の樹脂化粧鋼板41の左右両端縁同士の間、及び互いに相隣なる壁パネル4の樹脂化粧鋼板41及びドア枠の端縁同士の間には、壁用乾式目地材(図示せず)が打ち込まれてシールされている。
【0020】
また、前記洗い場1の周囲には、前記各壁パネル4及びドア枠の下端を支持する支持部としての支持部材5が沿設されている。この支持部材5は、その短手方向略中央部を長手方向に延び、かつ各壁パネル4及びドア枠の下端縁の折り曲げ部43を収容する凹状溝51を備えている。そして、各壁パネル4及びドア枠の下端縁の折り曲げ部43は、凹状溝51の底部にシート状のシール材44を介して接着されている。このシール材44よりも洗い場1側となる、凹状溝51の洗い場1側縁と各壁パネル4及びドア枠の下端縁との間には、コーキング剤45が充填されて当該両者間が水密状にシールされている。
【0021】
そして、前記洗い場1の周囲側となる各浴室床パン3の外端縁と、これに対応する支持部材5の洗い場側端52との間には、環状の止水空隙6が介在している。この止水空隙6には、断面略円形状の長尺な高分子ゲル材71(例えばオレフィン系エラストマー)が収容されている。この高分子ゲル材71は、径方向の幅を減縮させて長手方向に伸長した状態から径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元するものであり、前記止水空隙6に対し径方向の幅を減縮させるように長手方向に伸長させた状態で収容されると、止水空隙6に密接するまで径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元し、止水空隙6を密接状態でシールする。また、支持部材5の洗い場側端52には洗い場1側(浴室床パン3側)へ突出する段部53が設けられ、この段部53への当接によって高分子ゲル材71が止水空隙6内で位置決めされる。
【0022】
前記高分子ゲル材71としては、各浴室床パン3の外端縁の一辺に相当する長さのものが用いられている。そして、図3に示すように、高分子ゲル材71は、その長手方向の端部同士が接着剤73により連結されている。この接着剤73としては、ポリオレフィンやポリプロピレンなどの難接着被着材に対し接着性を有する1液性の変性シリコン系弾性接着剤(無溶剤)が適用されている。この接着剤73は、硬化後にゴム状弾性体となる。また、高分子ゲル材71としては、復元時における径方向の幅がそれぞれ異なる複数種類のものが用意されている。これは、浴室床パン3及び壁パネル4の組み付け誤差などによって止水空隙6の大きさが均一ではなく、各浴室床パン3毎又は各壁パネル4毎に大小さまざまな大きさとなるからである。そのため、複数種類用意した高分子ゲル材71の中から止水空隙6の大きさよりも復元時の径方向の幅の大きな高分子ゲル材71がその都度採択されている。具体的には、図4に示すように、止水空隙6の大きさが小さい場合には、その小さい止水空隙6の大きさよりも復元時の径方向の幅が若干大きくなるような高分子ゲル材71、つまり若干伸長させることによって止水空隙6の大きさよりも径方向の幅が小さくなるような高分子ゲル材71が採択される。
【0023】
更に、前記高分子ゲル材71の上側には、前記止水空隙6をシールするシリコン材としてのコーキング剤72が充填されている。
【0024】
したがって、本実施の形態では、高分子ゲル材71は、各浴室床パン3の外端縁とこれに対応する支持部材5の洗い場側端52との間の止水空隙6に当該止水空隙6の大きさに応じて伸長させて径方向の幅を減縮させた状態で収容されると、この止水空隙6に密接するように径方向の幅が増大し、収縮状態に復元する。このため、止水空隙6の大きさに左右されることなく当該止水空隙6が高分子ゲル材71により密接状態でシールされ、高分子ゲル材71による確実な止水効果が得られる。しかも、高分子ゲル材71の上側に充填されたコーキング剤72によって止水空隙6が二重にシールされる。
これにより、高分子ゲル材71とコーキング剤72とによって止水空隙6での確実な止水効果を得ることができる。
【0025】
また、高分子ゲル材71として、復元時における径方向の幅がそれぞれ異なる複数種類のものが用意され、その複数種類の中から止水空隙6の大きさよりも復元時の径方向の幅の大きな高分子ゲル材71が採択されるので、異なる止水空隙6の大きさに応じてその都度最適な高分子ゲル材71が採択され、この採択された高分子ゲル材71によって当該止水空隙6を効率よくシールすることができる。しかも、止水空隙6の大きさに応じた最適な高分子ゲル材71によってシールされるので、止水空隙6内で高分子ゲル材71が上下方向に多大に変形してコーキング剤72の充填量が減少することがなく、高分子ゲル材71とコーキング剤72との二重シールを円滑に行うことができる。
【0026】
更に、各高分子ゲル材71の長手方向の端部同士が接着剤73により連結されているので、各高分子ゲル材71の端部同士がシール切れすることなく接着剤73により連結され、高分子ゲル材71による止水効果をより確実に得ることができる。
【0027】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、各壁パネル4及びドア枠の下端を支持部材5により支持し、各浴室床パン3の外端縁とこれに対応する支持部材5の洗い場側端52との間に介在させた止水空隙6を高分子ゲル材71とコーキング剤72とにより止水したが、各浴室床パンの外端縁を支持部材により支持し、各壁パネル及びドア枠の下端とこれに対応する支持部材の外端との間に介在させた止水空隙を高分子ゲル材とコーキング剤とにより止水していてもよい。
【0028】
また、前記実施の形態では、復元時における径方向の幅がそれぞれ異なる複数種類の高分子ゲル材71を用意したが、止水空隙の大きさよりも復元時の径方向の幅が大きな単一種類の高分子ゲル材を用意し、異なる止水空隙の大きさに応じてその都度径方向の幅を減縮させるように長手方向に伸長させて対応していてもよい。この場合には、止水空隙の大きさに応じた径方向の幅の高分子ゲル材をつなぎ合わせて止水空隙を止水する必要がなく、単一種類の高分子ゲル材を長手方向に伸長させてあらゆる止水空隙の大きさに径方向の幅を合致させることが可能となり、シール切れの発生部位を単一の高分子ゲル材の長手方向両端同士にのみ留めて、止水性能の信頼性を飛躍的に拡大させることが可能となる。
【0029】
また、前記実施の形態では、各浴室床パン3の外端縁の一辺に相当する長さの高分子ゲル材71を用いたが、互いに隣接する浴室床パンの外端縁同士の長さつまり洗い場1の一辺に相当する長さの高分子ゲル材が用いられていてもよい。この場合には、接着剤による高分子ゲル材の長手方向端部同士の接続箇所が少なくなる。
【0030】
更に、前記実施の形態では、復元時における径方向の幅がそれぞれ異なる複数種類の高分子ゲル材71を用意したが、単一種類の高分子ゲル材を用い、止水空隙の大きさに応じて径方向の幅を減縮させるように高分子ゲル材を伸長させて収容し、自身の復元力により止水空隙に密接させるようにしてもよい。この場合には、止水空隙の大きさに応じて収容される高分子ゲル材の長手方向の寸法が異なる。つまり、止水空隙の大きさが小さいほど高分子ゲル材の長手方向の寸法が短くなる一方、止水空隙の大きさが大きいほど高分子ゲル材の長手方向の寸法が長くなる。
【符号の説明】
【0031】
1 洗い場
3 浴室床パン
4 壁パネル
5 支持部材(支持部)
6 止水空隙
71 高分子ゲル材
72 コーキング剤(シリコン材)
73 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に設けられる浴室床パンの縁部と壁パネル又はドアの枠体とのいずれか一方と、他方を支持する支持部との間に介在する止水空隙を防水した状態にシールする浴室床パンの防水シール構造であって、
前記止水空隙に密接状態で収容され、径方向の幅を減縮させて長手方向に伸長した状態から径方向の幅が増大して長手方向に収縮した状態に復元する長尺な高分子ゲル材と、
前記高分子ゲル材の上側に充填され、前記止水空隙をシールするシリコン材と、
を備えていることを特徴とする浴室床パンの防水シール構造。
【請求項2】
前記高分子ゲル材としては、前記止水空隙の大きさよりも復元時の径方向の幅が大きな単一種類のものが適用されていて、前記止水空隙の大きさに応じてその都度径方向の幅を減縮させるように長手方向に伸長させて対応している請求項1に記載の浴室床パンの防水シール構造。
【請求項3】
前記高分子ゲル材としては、復元時における径方向の幅がそれぞれ異なる複数種類のものが用意されており、
その複数種類の中から前記止水空隙の大きさよりも復元時の径方向の幅の大きな高分子ゲル材が採択されている請求項1に記載の浴室床パンの防水シール構造。
【請求項4】
前記高分子ゲル材の長手方向の端部同士が、接着剤により連結されている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の浴室床パンの防水シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241354(P2012−241354A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110150(P2011−110150)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(501362906)積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Fターム(参考)】