説明

浴室

【課題】不意に動いたり、傾いたりする恐れがなく、安定性及び信頼性が向上した移乗台を備えた浴室を提供すること。
【解決手段】洗い場床2の奥側に設置された浴槽3と、天板20と複数の脚部21とを有し、浴槽に隣接し且つ2つの室壁5a、5bに囲まれたコーナー部Sに取り外し可能に載置される移乗台4と、室壁に固定され、洗い場床側への移乗台の水平移動を拘束すると共に、洗い場床側に傾斜する方向への移乗台の片側持ち上がりを拘束する拘束部材30と、を備えている浴室1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、住宅や各種施設等において、要介助者(身障者や高齢者等)を介助するための様々な設備が設置されている。その1つとして、浴槽に隣接して配置されたバスボードを備えた浴室が知られている(特許文献1参照)。
このバスボードは、天板と脚部とで構成されており、天板上に腰掛けることが可能とされている。これにより、浴槽内に入る際に、バスボードに腰掛けながら体の向きを容易に変えることができるようになっている。そのため、要介助者であっても、比較的容易に入浴を行うことが可能とされている。
【0003】
また、特許文献1記載のバスボードは、脚部の一部が先端に球形ローラが取り付けられた移動脚とされ、残りの脚部が先端に滑り止めゴムが取り付けられた固定脚とされている。そのため、固定脚を持ち上げてバスボードを斜めにし、球形ローラの回転を可能にすることで、バスボードを容易に移動させることができるようになっている。従って、要介助者の入浴時の使用勝手に合わせてバスボードの位置を変更することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2564327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバスボードは、単に浴室内に置かれているだけであるので、使用状況によってはバスボードが水平移動してしまい、腰掛けた際の安定性に欠けるものであった。また、片側に腰掛けてしまった場合には、反対側が持ち上がるようにバスボード自体が傾いてしまう恐れがあり、結果的に転倒に繋がる恐れもあった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、不意に動いたり、傾いたりする恐れがなく、安定性及び信頼性が向上した移乗台を備えた浴室を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
請求項1に係る浴室は、洗い場床の奥側に設置された浴槽と、天板と複数の脚部とを有し、前記浴槽に隣接し、且つ、2つの室壁に囲まれたコーナー部に取り外し可能に載置される移乗台と、前記室壁に固定され、前記洗い場床側への前記移乗台の水平移動を拘束すると共に、洗い場床側に傾斜する方向への移乗台の片側持ち上がりを拘束する凸状の拘束部材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る浴室は、請求項1に記載の浴室において、前記拘束部材が、前記脚部のうち前記洗い場床側の脚部の下端部手前側に位置するように固定され、該脚部を介して前記移乗台の前記水平移動を拘束する第1の拘束部材と、前記洗い場床側とは反対側における前記天板の上方側に位置するように固定され、天板を介して前記移乗台の前記片側持ち上がりを拘束する第2の拘束部材と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る浴室は、請求項1又は2に記載の浴室において、前記拘束部材が、前記浴槽を挟んで対向する室壁にそれぞれ固定され、前記移乗台が、2箇所のコーナー部のいずれにも載置可能とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る浴室は、請求項1から3のいずれか1項に記載の浴室において、前記浴槽と前記室壁との間には、上面が平坦で且つ前記洗い場床の床面よりも上方に位置する床ボードが設置され、前記移乗台が、前記床ボード上に載置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1に係る発明によれば、浴槽に隣接して移乗台が載置されているので、入浴時に移乗台の天板上に腰掛けることができ、容易に体の向き等を変えることができる。従って、入浴の手助けをすることができ、入浴時にかかる体への負担を軽減することができる。
ところで、この移乗台は、浴槽に隣接しているうえ、2つの室壁に囲まれたコーナー部に載置されている。従って、使用時には、洗い場床側に水平移動する可能性がある。しかしながら、洗い場床側に水平移動するような力が移乗台に作用したとしても、室壁に固定された拘束部材によって水平移動が拘束される。従って、洗い場床側に移乗台が不意に動いてしまうことを防止することができる。
更に、天板上に腰掛ける際に、仮に洗い場床に近い方に腰掛けたとしても、室壁に固定された拘束部材によって、移乗台が洗い場床側に傾いて、片側持ち上がりしてしまうことを防止することができる。
【0012】
上述したように、入浴時において、移乗台が不意に水平移動したり傾いたりする恐れがないので、移乗台の安定性及び信頼性を向上することができ、安全に入浴することができる。
【0013】
(2)請求項2に係る発明によれば、室壁に固定された第1の拘束部材が、移乗台の脚部のうち、洗い場床側の脚部の下端部手前側に位置している。そのため、洗い場床側に水平移動するような力が移乗台に作用したとしても、第1の拘束部材によって脚部の動きが規制される。従って、この第1の拘束部材によって、移乗台の水平移動を拘束することができ、洗い場床側に不意に動いてしまうことをより確実に防止することができる。
また、室壁に固定された第2の拘束部材が、洗い場床側とは反対側における天板の上方側に位置しているので、仮に洗い場床に近い方に腰掛けたとしても、天板が傾斜するような動きを規制することができる。従って、移乗台が片側持ち上がりしてしまうことをより確実に防止することができる。
【0014】
このように、第1の拘束部材及び第2の拘束部材によって、移乗台が不意に水平移動したり傾いたりする恐れがないので、移乗台の安定性及び信頼性をより向上することができ、安全に入浴することができる。
また、移乗台を取り外す場合には、移乗台の洗い場床側を持ち上げることで、洗い場床側の脚部が第1の拘束部材を乗り越えるので、移乗台をコーナー部から引き抜くようにして容易に取り外せることができる。これに対して、移乗台をセットする場合には、上記とは逆の動作を行えば良い。このように、移乗台を容易に設置及び取り外しすることができるので、非常に使い易い。
【0015】
(3)請求項3に係る発明によれば、拘束部材が、浴槽を挟んで対向する室壁にそれぞれ固定されているので、移乗台を2箇所のコーナー部の一方或いは両方に載置したとしても、同様に動きを拘束でき不意に水平移動したり傾いたりする恐れをなくすことができる。
【0016】
(4)請求項4に係る発明によれば、上面が平坦な床ボード上に移乗台が載置されているので、移乗台の安定性をより向上させることができる。また、床ボードの上面は洗い場床の床面よりも上方に位置しているので、仮に浴槽の配管等が浴槽の下部に隣接して洗い場床の床面付近まで設けられていたとしても、これらの影響を受けることなく床ボードを設置することが可能である。従って、このような場合であっても、問題なく移乗台を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る浴室の一実施形態を示す図であって、浴室内を上方から見た図である。
【図2】図1に示す浴槽及びバスボードの斜視図である。
【図3】図2に示すバスボードを浴槽側から見た側面図である。
【図4】(a)は図1及び図2に示す第1の拘束部材及び第2の拘束部材の正面図であり、(b)は(a)に示す第1の拘束部材及び第2の拘束部材の断面図である。
【図5】図2に示す状態からバスボードを取り外している状態を示す図である。
【図6】図5に示す状態からバスボードを取り外した後の状態を示す図である。
【図7】図2に示す状態から浴槽を左側パネルに寄せて設置した後、浴槽の右側にバスボードをセットした状態を示す図である。
【図8】本実施形態の変形例を示す図であって、浴槽の両側にバスボードがセットされた浴室の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る浴室の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
本実施形態の浴室1は、図1及び図2に示すように、洗い場床2と、洗い場床2の奥側に設置され、長手方向(矢印L1方向)に設置位置が変更自在とされた浴槽3と、浴槽3の片側に隣接配置されたバスボード4と、これら洗い場床2、浴槽3及びバスボード4を3方から囲む側壁パネル5と、洗い場床2に出入りする出入扉6と、図示しない天井パネルと、で主に構成されている。
【0019】
なお、図1は、浴室1内を天井パネル側から見た上面図である。図2は、図1に示す浴槽3及びバスボード4の斜視図である。また、浴室1内に通常設置される水栓やシャワー等に関しては図示を省略している。
また、これら図1及び図2に示すように、本実施形態では出入扉6を引き戸タイプとして図示しているが、この場合に限定されず折戸タイプや開き戸タイプでも構わない。
また、本実施形態では3つの側壁パネルのうち、出入扉6に対向するパネルを奥側パネル5aといい、更に、出入扉6から奥側パネル5aに向かって左側のパネルを左側パネル5b、右側のパネルを右側パネル5cという。
また、単に左側というときは出入扉6から奥側パネル5aに向かって左方向を指し、単に右側というときは出入扉6から奥側パネル5aに向かって右方向を指すものとする。
【0020】
洗い場床2は、平面視矩形状とされた床であり、該洗い場床2と奥側パネル5aとの間には図示しない浴槽配置用床が設けられている。この浴槽配置用床は、平面視矩形状とされていると共に、洗い場床2の上面よりも一段低い落とし込み構造とされている。そして、この浴槽配置用床上に、図示しない防水床パンが固定されている。この防水床パンの底壁部には、上面が水平となるように調整された複数の床フラット面が形成されており、該床フラット面上に上記浴槽3が設置されている。
但し、防水床パンが浴槽配置用床上に固定されている場合に限定されるものではなく、例えば、防水床パンと洗い場床とが一体的に形成された浴室床構造であっても構わない。
【0021】
この浴槽3は、右側パネル5cと左側パネル5bとの間の長さよりも長手方向の長さが短い平面視矩形状に形成されている。これにより、浴槽3を右側パネル5c側に寄せて設置した場合には、浴槽3の左側に空間が確保され、浴槽3を左側パネル5b側に寄せて設置した場合には、浴槽3の右側に空間が確保されるようになっている。
本実施形態では、右側パネル5c側に寄せた状態で浴槽3が設置されている。よって、浴槽3の左側に空間が確保されている。
【0022】
また、浴槽3のかまち3aの外縁は、下方に向けて垂下しており、この垂下した部分にそれぞれサイドパネル10及びフロントパネル11が固定されている。サイドパネル10は、右側パネル5c及び左側パネル5bにそれぞれ対向するように取り付けられており、浴槽3の側面を覆って保護している。また、浴槽3を右側パネル5c或いは左側パネル5bのいずれかに寄せて設置した場合であっても、浴槽3の側面が露出しないようになっている。フロントパネル11は、洗い場床2側に対向するように取り付けられている。
【0023】
なお、奥側パネル5a側において、浴槽3のかまち3aの外縁から垂下した部分は、奥側パネル5aに取り付けられた図示しないバックハンガーの係合爪に係合された状態となっている。これにより、浴槽3は、洗い場床2側に傾くことがないように設計されている。
【0024】
バスボード4は、上述したように、浴槽3の左側に確保された空間、即ち、奥側パネル5aと左側パネル5bとによって囲まれたコーナー部Sに配置されており、床ボード15上に取り外し可能に載置されている。
【0025】
床ボード15は、平面視矩形状に形成されており、浴槽3に固定されたサイドパネル10と、右側パネル5cと、奥側パネル5aとにそれぞれ側面が接しながら防水床パンに嵌合するようになっている。床ボード15の上面は、平坦に形成されているうえ、洗い場床2の床面よりも上方(数cm上方)に位置するようになっている。
この床ボード15は、浴槽3の下部に隣接し、且つ、洗い場床2の床面付近まで設けられた配管等を覆い隠す役割を果している。特に、上述したように、床ボード15の上面は洗い場床2の床面よりも上方に位置し、両者の間に段差が付くようになっているので、床面付近まで設けられた配管等を影響を受けることがない。
なお、このように構成された床ボード15は、浴槽3を左側パネル5b側に寄せて設置した場合には、浴槽3の右側に同様に設置することが可能とされている。
【0026】
バスボード4は、図2及び図3に示すように、天板パネル20と、4つの脚部21を有し、天板パネル20を支持する支持体22とを備えている。なお、図3は、床ボード15及びバスボード4を浴槽3側から見た側面図である。
天板パネル20は、長辺が浴槽3の横幅Wと同じ長さの平面視矩形状に形成されており、浴槽3と、左側パネル5bと、奥側パネル5aとの間にほぼ隙間なく収まるように設計されている。この際、バスボード4が床ボード15上に載置された状態で、天板パネル20の上面と、浴槽3のかまち3aの上面とは、略面一になるように高さ調整されている。
【0027】
このように構成されたバスボード4は、上述したように床ボード15上に載置された状態で使用される。この際、バスボード4の4つの脚部21は、バスボード4自体の安定性を増すために、互いにできるだけ間隔を開けた状態で床ボード15上に載置されるように設計されている。よって、4つの脚部21のうち、洗い場床2側に位置する2つの脚部21は、バスボード4のできるだけ前端部(洗い場床2側)に近づくように設計されている。そのため、洗い場床2側にバスボード4が仮に水平移動してしまった場合には、これら2つの脚部21が床ボード15上から脱落する恐れがあるが、本実施形態では以下に説明するようにバスボード4の水平移動を拘束することができるので、このような脱落の恐れがない。つまり、本実施形態では、水平移動に起因してバスボード4が床ボード15から脱落してしまうような不都合を防止する効果をも奏することができるものである。
【0028】
そして、床ボード15上に載置されたバスボード4は、入浴時に入浴者が腰掛けたりする等、多目的なボードとして使用される。なお、このバスボード4は、浴槽3を左側パネル5b側に寄せ、浴槽3の右側に床ボード15を設置した場合には、同様に浴槽3の右側に設置することが可能とされている。
【0029】
ところで、左側パネル5bには、図1から図3に示すように、洗い場床2側へのバスボード4の水平移動を拘束すると共に、洗い場床2側に傾斜する方向へのバスボード4の片側持ち上がりを拘束する凸状の拘束部材30が固定されている。
【0030】
本実施形態の拘束部材30は、第1の拘束部材31と第2の拘束部材32とで構成されている。第1の拘束部材31は、バスボード4の4つの脚部21のうち、洗い場床2側の脚部21の下端部手前側(洗い場床2側)に位置するように固定されており、該脚部21が洗い場床2側に水平移動してしまうことを規制している。
つまり、第1の拘束部材31は、この脚部21を介してバスボード4が洗い場床2側に水平移動してしまうことを拘束している。
【0031】
第2の拘束部材32は、洗い場床2側とは反対側(奥側パネル5a側)における天板パネル20の上方側に位置するように固定されており、該天板パネル20が洗い場床2側に傾斜してしまうことを規制している。
つまり、第2の拘束部材32は、この天板パネル20を介してバスボード4が洗い場床2側に傾斜する方向への片側持ち上がりを拘束している。
【0032】
本実施形態の第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32は、図4(a)及び図4(b)に示すように、弾性材料、例えば、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)等のゴムにより、外形が平面視円形状の円錐台状に形成されている。なお、図4(a)は、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32の正面図である。図4(b)は、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32の断面図である。上面の中心には、平面視円形に刳り貫かれた凹部33が形成されており、該凹部33の底部の中心には下面側に貫通し、ビス34のねじ部を挿通させる挿通孔35が形成されている。
このように構成された第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32は、ビス34によって左側パネル5bに固定されている。この際、ビス34のヘッド部及びワッシャー36は、凹部33内に完全に隠れ、外部に露出することがないように設計されている。
【0033】
また、上述した第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32は、図1及び図2に示すように、左側パネル5bだけでなく、浴槽3を挟んで左側パネル5bに対向する右側パネル5cにも同様の方法により固定されている。従って、浴槽3を左側パネル5bに寄せて設置し、バスボード4を浴槽3の右側にセットしたとしても、同様にバスボード4の水平移動と片側持ち上がりとを共に拘束することができるようになっている。
【0034】
なお、第1の拘束部材31は、浴槽3のフロントパネル11の手前側(洗い場床2側)に位置するようになっている。そして、第2の拘束部材32は、浴槽3のかまち3aの上方側に位置するようになっている。そのため、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32の影響を何ら受けることなく、浴槽3を右側パネル5c或いは左側パネル5bに寄せて設置することが可能とされている。
【0035】
次に、このように構成された浴室1を利用する場合について、説明する。
この浴室1は、図1及び図2に示すように、浴槽3に隣接してバスボード4が載置されているので、入浴時にバスボード4の天板パネル20上に腰掛けることができ、腰掛けながら容易に体の向きを変えることができる。従って、入浴の手助けをすることができ、入浴時にかかる体への負担を軽減することができる。
特に、バスボード4の天板パネル20が浴槽3の横幅Wと同じであり、上面が浴槽3のかまち3aの上面と面一とされている。従って、浴槽3のかまち3aがあたかも大きくなったかのように感じさせることができるうえ、段差がないので腰掛け易い。従って、より効率良く入浴時の手助けをすることができる。
【0036】
ところで、バスボード4は、浴槽3に隣接しているうえ、奥側パネル5a及び左側パネル5bに囲まれたコーナー部Sに載置されている。従って、使用時には、洗い場床2側の一方向に水平移動する可能性がある。しかしながら、左側パネル5bに固定された第1の拘束部材31が、バスボード4の洗い場床2側の脚部21の下端部手前側に位置しているので、洗い場床2側に水平移動するような力がバスボード4に作用したとしても、脚部21の動きが規制される。
従って、バスボード4自体の水平移動(図3に示す矢印A方向)を拘束することができ、洗い場床2側に不意に動いてしまうことを防止することができる。よって、バスボード4は、床ボード15上から脱落する恐れがない。
【0037】
また、天板パネル20上に腰掛ける際に、仮に洗い場床2側に近い方に腰掛けたとしても、バスボード4が洗い場床2側に傾いて、片側持ち上がりしてしまうことを防止することができる。つまり、左側パネル5bに固定された第2の拘束部材32が、洗い場床2側とは反対側における天板パネル20の上方側に位置しているので、仮に洗い場床2側に近い方に腰掛けたとしても、天板パネル20が傾斜するような動き(図3に示す矢印B方向)を規制することができる。従って、上述したように、バスボード4が片持ち上がりしてしまうことを防止することができる。
【0038】
このように、入浴時において、バスボード4が不意に動いたり、傾いたりする恐れがないので、バスボード4の安定性及び信頼性を向上することができ、安全に入浴することができる。
また、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32は、共に平面視円形状に外形形成されているので、突起するような部分がなく、滑らかな外形形状とされている。しかも、ゴム等の弾性材料により形成されている。これらのことから、バスボード4に傷等が付き難く、また、両拘束部材31、32に入浴者や何らかの物が接触してしまったとしても、安全である。
【0039】
また、この浴室1を使用するにあたって、バスボード4を取り外す場合には、図5に示すように、バスボード4の洗い場床2側を持ち上げる(矢印C方向)ことで、洗い場床2側の脚部21が第1の拘束部材31を乗り越えるので、バスボード4をコーナー部Sから引き抜くようにして容易に取り外せることができる。これに対して、バスボード4をセットする場合には、上記とは逆の動作を行えば良い。このように、バスボード4を容易に設置及び取り外しすることができるので、非常に使い易い。
また、バスボード4を取り外すことで、図6に示すように、浴槽3の左側に開いたコーナー部Sを自由な空間とすることができるので、該空間を入浴時の介助スペースとして利用することができる。
【0040】
また、本実施形態の浴室1では、浴槽3の位置を変更することができる。即ち、図7に示すように、浴槽3を左側パネル5b側に寄せた状態で設置し、浴槽3の右側のコーナー部S(奥側パネル5aと右側パネル5cとので囲まれた空間)に床ボード15及びバスボード4をセットすることが可能である。このように、浴槽3の設置位置を介助状況に応じて自在に変更できるので、非常に使い易い。
しかも、この場合であっても、左側パネル5bと同様に、右側パネル5cにも第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32が固定されているので、同様にバスボード4の動きを拘束することができ、不意に水平移動したり傾いたりする恐れをなくすことができる。
また、浴槽3を左側パネル5b側に寄せたとしても、左側パネル5bに固定された第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32が浴槽3に干渉することがない。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、浴槽3の位置は固定されていても構わない。但し、介助状況に応じて浴槽3の位置を変更できるように構成されていることが好ましい。なお、この場合には、浴槽3を長手方向に沿ってスライド移動自在に設計することがより好ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32を共に右側パネル5c及び左側パネル5bに固定した場合を例に挙げたが、この場合に限られず、第2の拘束部材32を奥側パネル5aに固定しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
また、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32の固定方法は、ビス34に限られるものではなく、例えば、室壁側に形成された取付孔に嵌め込んで固定する方法や、接着によって固定する方法等でも構わない。
【0044】
また、第1の拘束部材31及び第2の拘束部材32を円錐台状に形成したが、円柱状や円筒状でも構わない。更には、外形が平面視楕円状に形成されていても構わない。
更に、第1の拘束部材31をバスボード4の洗い場床2側の脚部21の表面に接触するように固定し、第2の拘束部材32をバスボード4の天板パネル20の上面に接触するように固定しても構わない。
こうすることで、両拘束部材31、32とバスボード4との間の遊びをなくすことができ、バスボード4のがたつきをより効果的に抑えることができると共に、より確実にバスボード4の動きを拘束することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、床ボード15及びバスボード4をそれぞれ1つ備えた浴室1を例に挙げて説明したが、この場合に限定されず、図8に示すように、浴槽3の両側にそれぞれ設置しても構わない。
【符号の説明】
【0046】
S…コーナー部
1…浴室
2…洗い場床
3…浴槽
3a…浴槽のかまち
4…バスボード(移乗台)
5a…奥側パネル(室壁)
5b…左側パネル(室壁)
5c…右側パネル(室壁)
15…床ボード
20…天板パネル(天板)
21…脚部
30…拘束部材
31…第1の拘束部材
32…第2の拘束部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場床の奥側に設置された浴槽と、
天板と複数の脚部とを有し、前記浴槽に隣接し、且つ、2つの室壁に囲まれたコーナー部に取り外し可能に載置される移乗台と、
前記室壁に固定され、前記洗い場床側への前記移乗台の水平移動を拘束すると共に、洗い場床側に傾斜する方向への移乗台の片側持ち上がりを拘束する凸状の拘束部材と、を備えていることを特徴とする浴室。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室において、
前記拘束部材は、
前記脚部のうち前記洗い場床側の脚部の下端部手前側に位置するように固定され、該脚部を介して前記移乗台の前記水平移動を拘束する第1の拘束部材と、
前記洗い場床側とは反対側における前記天板の上方側に位置するように固定され、天板を介して前記移乗台の前記片側持ち上がりを拘束する第2の拘束部材と、を備えていることを特徴とする浴室。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浴室において、
前記拘束部材は、前記浴槽を挟んで対向する室壁にそれぞれ固定され、
前記移乗台は、2箇所のコーナー部のいずれにも載置可能とされていることを特徴とする浴室。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の浴室において、
前記浴槽と前記室壁との間には、上面が平坦で且つ前記洗い場床の床面よりも上方に位置する床ボードが設置され、
前記移乗台は、前記床ボード上に載置されていることを特徴とする浴室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273915(P2010−273915A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130387(P2009−130387)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(501362906)積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Fターム(参考)】