説明

浴槽の排水構造

【課題】浴槽から排水された湯水を防水パンの排水口に確実に排水することのできる浴槽の排水構造を提供すること。
【解決手段】浴槽10の排水口13と防水パン11の排水口16との間に排水パイプ15が配置されている。この排水パイプ15はゴム等の弾性材料により形成されているとともに蛇腹状に設けられて長さ方向に伸縮可能に形成されている。防水パン11側に当接する排水パイプ15の先端部は排水パイプの板厚よりも大きい拡がりを有する環状接地部33として形成され、この環状接地部33は、内側接地部33Aと外側接地部33Bとを有するとともに、接地状態で湾曲した空間Sを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴槽の排水構造に係り、更に詳しくは、浴槽の排水口と防水パンの排水口とを水漏れすることなく連通させる構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴槽排水構造としては、例えば、図3に示されるように、浴槽50の底部に設けられた排水口52と、浴槽50を載置する防水パン53の排水口54との間に排水パイプ55を配置する構造が知られている。この構造においては、排水パイプ55を通じて排水された湯水は排水エルボ57を介して排水されるようになっている。
前記排水パイプ55は、ゴム等の弾性材料を用いて蛇腹状に形成されて伸縮可能に設けられており、図中上端部が排水口52を構成する管体58回りに支持されている一方、下端部(先端部)が排水口54に設けられた目皿59の開口回りに当接するように設けられている。
【0003】
また、その他の浴槽排水構造としては、例えば、特許文献1に示されるように、排水パイプの下端部(先端部)を防水パンの排水口に差込む構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−52378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図3に示される構造にあっては、排水パイプ55が単に蛇腹状となっているだけで、その下端部となる先端部が円状の軌跡に沿って線接触的に防水パンに当接する構造であるため、密着が不十分になり易く、防水パン53上に湯水を漏出させてしまうという不都合がある。特に、浴槽50の底部と防水パン53とのクリアランスが設定値を越えてしまうような設置誤差が生じた場合には、排水パイプ55の先端による密着圧力が不足して上記不都合が一層顕著なものとなる。
また、特許文献1記載の構成にあっては、防水パン側の排水口に排水パイプの下端を差込まないと、防水パン53上に湯水を漏出させてしまう。ところが、排水パイプの下端を防水パンの排水口に正確に位置決めして、差込むことは困難であり、位置ズレや差込不良による防水パン53上へ湯水を漏出させてしまうという不都合がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、浴槽から排水された湯水を防水パンの排水口に確実に導くことのできる浴槽の排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものである。具体的には、浴槽の排水口と防水パンの排水口との間に排水パイプを配置して浴槽の湯水を排水するように設けられた浴槽の排水構造において、
前記排水パイプは弾性材料により伸縮可能に形成され、前記防水パン側に当接する先端部が拡大された環状接地部として形成される、という構成を採っている。
【0008】
本発明において、前記環状接地部は内側接地部と外側接地部とを含み、これら内前接地部と外側接地部とで内外二重にシールするように設けられている。
【0009】
また、前記環状接地部は、内側接地部と外側接地部とを含み、内側接地部と外側接地部に空間を形成可能な状態で接地して前記防水パン側に吸着するように設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0010】
更に、前記排水パイプの先端部は、前記防水パン側に磁気吸着するように設けることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排水パイプの先端部が拡大された環状接地部として形成されているので、従来タイプに比べてシール性能を向上させることができる。
また、環状接地部が拡大して内側接地部と外側接地部を形成し、これによって内外二重のシールを行うことができるので、この点からもシール性能の向上を図ることができる。
更に、内側接地部と外側接地部に空間を形成して防水パン側に吸着するように構成した場合には、環状接地部と防水パン側との密着強度を強く確保することができる。
また、排水パイプの先端と防水パン側とを磁気吸着させる構成では、相互密着性を確実に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は実施形態に係る浴槽の排水構造の概略断面図、(B)は、その要部拡大図。
【図2】浴槽の排水構造の変形例を示す概略断面図。
【図3】従来例を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1において、浴槽10は図示しない脚部を介して防水パン11上に載置されており、浴槽10の底部に設けられた排水口13と、防水パン11下に位置する排水エルボ14の上部に設けられた排水口16との間には、排水パイプ15が配置されている。浴槽10の排水口13は、浴槽10に形成された穴20内に位置する排水筒21と、この排水筒21の下部外周側に装着された、例えば、ボビン形状に設けられた管状体23とにより構成されている。
【0015】
前記排水エルボ14は、防水パン11に形成された穴25の開口縁に装着されたパッキン27と、当該パッキン27の下部に設けられた排水管29と、この排水管29の上端内周側にねじ込まれたフランジ付きリング30とにより構成され、このリング30の内周側に目皿31が配置されるようになっている。
【0016】
前記排水パイプ15は、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、フッ素系ゴム、EPDM等の弾性材料により形成されているとともに、蛇腹状に設けられて長さ方向に伸縮可能となっている。この排水パイプ15は、上端部が管状体23の下部に連結されており、下端部となる先端部が二股に分岐して拡大された環状接地部33として形成され、当該環状接地部33が目皿31の上面に当接するようになっている。ここで、環状接地部33は内側接地部33Aと外側接地部33Bとを含む形状をなし、これら内側接地部33Aと外側接地部33Bとが目皿31の開口回りに接地することで、内外二重にシールするようになっている。環状接地部33は、無負荷状態において、内側接地部33Aと外側接地部33Bとの間に湾曲した凹部をなし、内側接地部33Aと外側接地部33Bが接地して圧縮されたときに空間Sを形成し得るようになっている。
【0017】
前記排水パイプ15は、防水パン11に載置させる前の段階では、図示例の長さよりも長く延びた形状をなしており、防水パン11に載置したときに、環状接地部33が目皿31の開口回りに当接することで、圧縮力を受けて当該目皿31に強く密着することができる。この際、環状接地部33が復元しようとすることで、空間S内部が負圧となり、環状接地部33全体が吸盤類似の吸着力を発揮することとなる。
【0018】
従って、このような実施形態によれば、浴槽10から排出される湯水を防水パン11上に漏出させることなく、排水エルボ14に確実に排水できる、という効果を得る。
【0019】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施例に対し、形状、位置若しくは方向、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0020】
例えば、前記実施形態では、排水パイプ15の先端部が拡大された環状接地部33として形成された場合を図示、説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図2に示されるような変形例を採用することができる。この変形例は、排水パイプ15の先端部に磁石40を埋設する一方、目皿31側の相対位置に、磁性体41を埋設し、これら磁石40と磁性体41とを磁気接着させるように設けたものである。
このような変形例によれば、より強く密着度を高めることができ、排水エルボ14への排水確実性が保証される。
なお、この変形例において、目皿31自体が磁性体であれば、前記磁性体41を埋設する必要はないことになる。また、排水パイプ15側に磁性体を埋設する一方、目皿31側に磁石を埋設してもよい。
【0021】
また、前記実施形態における環状接地部33は、空間Sが負圧領域を形成するように内側接地部33Aと外側接地部33Bとの間に湾曲した凹状部を備える形状を有するものとしたが、湾曲した凹状部を設けることなく、断面形状が反転したT字状をなすように設けてもよい。この場合、下面全体が接地面として作用することになり、接地面積が更に拡大されることになる。
【符号の説明】
【0022】
10…浴槽、11…防水パン、13、15…排水口、14…排水エルボ、15…排水パイプ、33…環状接地部、33A…内側接地部、33B…外側接地部、S…空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の排水口と防水パンの排水口との間に排水パイプを配置して浴槽の湯水を排水するように設けられた浴槽の排水構造において、
前記排水パイプは弾性材料により伸縮可能に形成され、前記防水パン側に当接する先端部が拡大された環状接地部として形成されていることを特徴とする浴槽の排水構造。
【請求項2】
前記環状接地部は内側接地部と外側接地部とを含み、これら内前接地部と外側接地部とで内外二重にシールすることを特徴とする請求項1記載の浴槽の排水構造。
【請求項3】
前記環状接地部は、内側接地部と外側接地部とを含み、内側接地部と外側接地部に空間を形成可能な状態で接地して前記防水パン側に吸着するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の浴槽の排水構造。
【請求項4】
前記排水パイプの先端部は、前記防水パン側に磁気吸着するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の浴槽の排水構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate