説明

浴槽システム

【課題】高齢者等の入浴困難者であっても簡単な入浴を可能とし、これとは別に一般家庭においても、通常の浴槽を用いながら、いわゆる「寝湯」のような入浴形態も可能とする浴槽システムを提供する。
【解決手段】第1浴槽Aおよび第2浴槽Bの少なくとも2つの浴槽を備え、第2浴槽Bの貯湯部22は、第1浴槽Aの貯湯部12内に収容可能に構成されていることを特徴とする浴槽システムで、第2浴槽Bは、第2浴槽Bの貯湯部22の開口部に設けられたフランジ24によって、第1浴槽Aの開口部に係合し固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、一般家庭において使用される浴槽を説明するための図である。 図6において一般家庭において使用される浴槽60は、よく知られているように、四方を囲む外枠部602と、外枠部602により形成された貯湯部604とを有する。このような浴槽60は、入浴者が浴槽底面に臀部を接触させ、上半身を若干後傾させたときに、入浴者の肩部付近まで湯に浸かれるように設計されている。そのため、一般的な浴槽60は、この目的に沿うのに十分な深さを持たなければならない。 しかしながら、健常者であればこのような浴槽60への入浴に何ら支障はないが、例えば高齢者等は、入浴の際に相当な困難を伴う。すなわち入浴者は、入浴の際にまず、浴場の床面606に立位し、外枠部602の一部に掴りながら、片方の脚部を外枠部602の最頂部を超える位置まで持ち上げる必要がある。このとき、高齢者等は、身体の柔軟性に乏しいため、脚部を大きく持ち上げるのが困難な場合が多い。続いて、入浴者は、持ち上げた片方の脚部を、浴槽60の底部608に着地させる。このとき、両方の脚部が大きく開く状態となるため、バランスを崩しやすい。また、水の浮力が存在するとはいえ、片方の脚部の着地の衝撃により、入浴者の転倒の危険性がある。続いて他方の脚部を同様に持ち上げる必要があるが、大きく開いた両方の脚部の状態からさらに他方の脚部を持ち上げるのは相当な筋力および柔軟性を必要とする。これらの困難をもたらす理由の一つとしては、上記のように一般的な浴槽60がある程度以上の深さを備えているからである。
【0003】
一方、昨今の競争社会において、ストレスを解消するためのリラクゼーションの方法が数多く提案されているが、その一つとして各種の入浴方法が挙げられる。 例えば特許文献1には、浴槽の底部を底上げして寝台型底部を設け、脚部を折り曲げて入浴できる様底部を設け、更に頭部の支え部と握り用持ち手を設けた浴槽が開示されている。このような浴槽は、いわゆる「寝湯」を可能にし、ストレス解消の一助となる。 しかし、一般家庭においてこのような浴槽を設置した場合は、専ら寝湯としてのみの利用に限定されるため、通常の座位による入浴を行う場合、別途浴槽を設置しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−201848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、高齢者等の入浴困難者であっても簡単な入浴を可能とし、これとは別に一般家庭においても、通常の浴槽を用いながら、いわゆる「寝湯」のような入浴形態も可能とする浴槽システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、 第1浴槽および第2浴槽の少なくとも2つの浴槽を備え、 前記第2浴槽の貯湯部は、前記第1浴槽の貯湯部内に収容可能に構成されていることを特徴とする浴槽システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、 前記第2浴槽は、前記第2浴槽の貯湯部の開口部に設けられたフランジによって、前記第1浴槽の開口部に係合し固定されることを特徴とする請求項1に記載の浴槽システムである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、 前記第2浴槽の貯湯部の少なくとも側壁部が、可撓性部材により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽システムである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、 前記第2浴槽は、前記第1浴槽に設けられた蝶番によって、永久的に固定され、前記第2浴槽の不使用時は、前記第2浴槽を前記第1浴槽の貯湯部から離脱させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浴槽システムである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、 前記第2浴槽は、浴室内の壁部に設けられた蝶番によって、永久的に固定され、前記第2浴槽の不使用時は、前記第2浴槽を前記第1浴槽の貯湯部から離脱させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浴槽システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浴槽システムは、第1浴槽および第2浴槽の少なくとも2つの浴槽を備え、 前記第2浴槽の貯湯部は、前記第1浴槽の貯湯部内に収容可能に構成されているので、高齢者や障害者等の入浴困難者であっても簡単に入浴することができ、また、一般家庭においても、通常の浴槽を用いながら、いわゆる「寝湯」のような入浴形態も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の浴槽システムの一例を説明するための斜視図である。
【図2】第2浴槽の貯湯部が第1浴槽の貯湯部内に収容されている状態を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の浴槽システムの別の例を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の浴槽システムの別の例を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の浴槽システムのさらに別の例を説明するための斜視図である。
【図6】一般家庭において使用される浴槽を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。 図1は、本発明の浴槽システムの一例を説明するための斜視図である。 本発明の浴槽システム1は、外枠部10および該外枠部10により形成された貯湯部12を有する第1浴槽Aと、外枠部20および該外枠部20により形成された貯湯部22を有する第2浴槽Bの2つの浴槽を備え、前記第2浴槽Bの貯湯部22は、前記第1浴槽Aの貯湯部12内に収容可能に構成されている。 なお第2浴槽Bの貯湯部22が第1浴槽Aの貯湯部12に安定的に収容されるには、第2浴槽Bの貯湯部22のフランジ24下面の全面が、第1浴槽Aにおける貯湯部12の開口部の周辺の外枠部に接する形状を有していることが好ましい。第2浴槽Bの貯湯部22の縦方向、横方向ならびに高さ方向のいずれも第1浴槽Aよりサイズが小さくなければならない。 また、図2は、第2浴槽Bの貯湯部22が第1浴槽Aの貯湯部12内に収容されている状態を説明するための斜視図である。図2を参照すると、本発明の浴槽システム1は、その深さが第2浴槽Bの深さに相当し浅くなっている。したがって、入浴者は、従来の入浴方法とは異なる方法を採用することができる。すなわち入浴者は、入浴の際にまず、臀部を第2浴槽Bの底部に着地させる。臀部を中心として上体を旋回させながら、片方の脚部をゆっくりと持ち上げ、浅く形成された第2浴槽Bの底部に着地させる。この入浴方法によれば、片方の脚部を持ち上げる際に、第2浴槽Bの底部に着地している臀部が軸となっているため、転倒の心配がない。また、入浴者に必要以上に身体の柔軟性を求めることもない。続いて、他方の脚部を同様に持ち上げるが、第2浴槽Bの底部に着地している臀部が軸となっているため、転倒の心配がない。浴槽から出る際には、前述の入浴時と逆のプロセスで体を動かすが、何れにせよ臀部を軸とすることにより、立位で片足立ちする状況がないため、浴槽から出る動作を安定的に行える。更に、第2浴槽Bの底部が高い場所に位置しているため、第2浴槽Bの外に出る際には、より低い位置へ移動する事になるため、第1浴槽Aから出る動作にくらべ筋力を必要としない。 また、第1浴槽Aが一般的に使用される浴槽である場合、第2浴槽Bの貯湯部22が浅く形成されているために、いわゆる「寝湯」も可能である。したがって、特許文献1に記載のように「寝湯」を楽しむために別の浴槽を準備する必要がない。
【0014】
また図1および2の形態において、第2浴槽Bは、その貯湯部22の開口部に設けられたフランジ24によって、第1浴槽Aの外枠部10の最上部に係合し固定されている。 この形態によれば、第2浴槽Bの第1浴槽Aへの固定および取り外しが容易となる。
【0015】
図3および4は、本発明の浴槽システムの別の例を説明するための斜視図である。図3および4の形態によれば、第2浴槽Bは、第1浴槽Aの外枠部10の最上部に設けられた蝶番30によって、永久的または半永久的(通常は固定されているが、所望の時点で簡単に取り外し可能な状態)に固定されている。第2浴槽Bの不使用時は、図4に示すように、第2浴槽Bを第1浴槽Aの貯湯部から離脱させる。この形態によれば、第2浴槽Bを必要に応じていつでも簡単に設置することが可能となる。また、第2浴槽Bの保管場所に悩むこともない。
【0016】
図5は、本発明の浴槽システムのさらに別の例を説明するための斜視図である。図5で示す形態は、第2浴槽Bの貯湯部の少なくとも側壁部が、可撓性部材50により形成されていることを特徴としている。可撓性部材50は、貯湯に適当な従来の防水シートから適宜選択すればよい。この形態によれば、貯湯部が硬質である場合に比べ、第2浴槽Bの保管スペースを最小限にすることができる。
【0017】
なお、上記では浴槽システムの浴槽が2つである場合について説明したが、例えば第1浴槽の外枠部10の最上部の異なる辺に複数の蝶番を設け、これに対応する複数の浴槽を固定してもよい。また、一つの蝶番に3つ以上の浴槽を固定する事も可能であり、これに前述の異なる辺に複数の蝶番を設ける場合を組み合わせ、複合的に運用する事が可能である。また図示していないが、第2浴槽Bを、浴室内の壁部に設けられた蝶番によって、永久的または半永久的に固定し、第2浴槽Bの不使用時は、第2浴槽Bを第1浴槽Aの貯湯部から離脱させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 浴槽システム10,20 外枠部12,22 貯湯部24 フランジ30 蝶番50 可撓性部材A 第1浴槽B 第2浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1浴槽および第2浴槽の少なくとも2つの浴槽を備え、 前記第2浴槽の貯湯部は、前記第1浴槽の貯湯部内に収容可能に構成されていることを特徴とする浴槽システム。
【請求項2】
前記第2浴槽は、前記第2浴槽の貯湯部の開口部に設けられたフランジによって、前記第1浴槽の開口部に係合し固定されることを特徴とする請求項1に記載の浴槽システム。
【請求項3】
前記第2浴槽の貯湯部の少なくとも側壁部が、可撓性部材により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽システム。
【請求項4】
前記第2浴槽は、前記第1浴槽に設けられた蝶番によって、永久的に固定され、前記第2浴槽の不使用時は、前記第2浴槽を前記第1浴槽の貯湯部から離脱させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浴槽システム。
【請求項5】
前記第2浴槽は、浴室内の壁部に設けられた蝶番によって、永久的に固定され、前記第2浴槽の不使用時は、前記第2浴槽を前記第1浴槽の貯湯部から離脱させるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浴槽システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−187329(P2012−187329A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54864(P2011−54864)
【出願日】平成23年3月12日(2011.3.12)
【出願人】(599154412)
【Fターム(参考)】