説明

浴槽用枕

【課題】内部を流れる水や温水の温度を表面へ効率よく伝えることができ、しかも、クッション材を頭部や首筋を載せてもたれたときに快適な形状にすることのできる浴槽用枕を提供する。
【解決手段】
浴槽用枕21aは、浴槽のフランジ部71の上面から側壁面72の上部にかけて配設されている。浴槽用枕21aは、支持板52の表面にクッション材53を接合させた枕部51と、水又は温水を流して冷却又は加熱するための伝熱管61とを有している。クッション材53の表面には凹溝54が形成されており、伝熱管61の吸放熱部62は凹溝54内に納められてその一部がクッション材53から露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽用枕に関し、特に入浴者ののぼせ防止や首筋の保温等に有用な浴槽用枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽のフランジ部に取付けて入浴者の頭部や首筋等を保持させるようにし、さらに水や湯を通過させるようにして首筋等を冷やしたり温めたりできるようにした浴槽用枕が提案されている。
【0003】
このような浴槽用枕としては、例えば実開平5−9385号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この浴槽用枕では、浴槽のフランジ部に金属パイプを固定してあり、金属パイプ内に冷水を通すための水用配管と温水を通すための温水用配管とを貫通させ、金属パイプの外周面をクッション材で覆っている。そして、水用配管又は温水用配管に水又は温水を通過させることによって金属パイプ及びクッション材を冷却又は加温し、浴槽用枕の上に載せた頭部や首筋を冷却したり、加温したりするようにしている。また、金属パイプにはクッション材が巻かれているので、浴槽用枕に頭部や首筋を載せても痛感を与えないようになっている。
【0004】
しかしながら、このような構造の浴槽用枕では、金属パイプの周囲が樹脂製のクッション材で覆われているために熱伝導効率が悪く、入浴者に低い温度や高い温度の刺激を継続して与えることが困難であり、また速やかにのぼせを解消させることも困難であった。
【0005】
さらに、このような構造の浴槽用枕では、金属パイプの外周面にクッション材を巻いているだけであるので、クッション材の形状が円筒状に制約され、入浴者が頭部を載せてもたれたとき快適な形状にすることができなかった。
【0006】
【特許文献1】実開平5−9385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部を流れる水や温水の温度を表面へ効率よく伝えることができ、しかも、クッション材を頭部や首筋を載せてもたれたときに快適な形状にすることのできる浴槽用枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る浴槽用枕は、浴槽のフランジ部上面から側壁面上部にかけて配設されたクッション材と、内部に水又は温水を供給して表面温度を制御される伝熱管とを備え、前記伝熱管は、少なくとも一部が前記クッション材から露出するようにして前記クッション材の表面に設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項1に係る浴槽用枕にあっては、内部に水又は温水を供給して表面温度を制御される伝熱管を備え、伝熱管は少なくとも一部がクッション材から露出するように設けられているので、入浴した状態で首筋などを伝熱管に接触させることにより冷感刺激又は熱感刺激を与えることができ、のぼせ防止や首筋の保温などを行なうことができる。しかも、クッション材で遮られることなく伝熱管が直接首筋などに接触するので、首筋などへの伝熱効率が高く、強い刺激を与えることができる。また、伝熱管が露出している箇所以外はクッション材となっているので、頭部や肩などはクッション材が当たるので、痛感を与える恐れがなく、浴槽用枕を快適に使用することができる。さらに、クッション材の形状が制約を受けにくいので、頭部や首筋を載せてもたれたときに快適な形状にクッション材を設計することが可能になる。
【0010】
本発明の請求項2に係る実施態様は、請求項1の浴槽用枕において、前記クッション材の表面に凹溝が形成され、前記伝熱管は前記凹溝内に納められてその一部がクッション材から露出していることを特徴としている。かかる実施態様にあっては、伝熱管がクッション材の凹溝内に納められているので、伝熱管がクッション材から大きく飛び出ることがなく、伝熱管によって首筋などが痛感を感じにくくなる。
【0011】
本発明の請求項3に係る実施態様は、請求項1又は2に記載の浴槽用枕において、前記クッション材の、浴槽のフランジ部上面と側壁面上部との間の角部に対応する位置に前記伝熱管を配置することにより、前記伝熱管を浴槽の内側の斜め上方へ向けてクッション材から突出させたことを特徴としている。かかる実施態様にあっては、浴槽の内側の斜め上方へ向けて伝熱管が突出しているので、浴槽内で側壁面にもたれたとき、伝熱管が首筋などに当たり易くなり、使用感が良好となる。
【0012】
本発明の請求項4に係る実施態様は、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の浴槽用枕において、前記クッション材は湾曲した支持板の表面を覆うようにして当該支持板に設けられており、前記支持板は浴槽のフランジ部上面から側壁面上部に沿って浴槽に配設されていることを特徴としている。かかる実施態様にあっては、浴槽のフランジ部上面から側壁面上部に沿って浴槽に配設された湾曲した支持板の表面にクッション材が設けられているので、浴槽用枕を浴槽にしっかりと固定することができ、クッション材が浴槽からめくり上がる恐れがなくなる。
【0013】
本発明の請求項5に係る実施態様は、請求項4に記載の浴槽用枕において、前記支持板の裏面に足部を突設し、浴槽のフランジ部上面に開口した嵌合孔に前記足部を嵌合させたことを特徴としている。かかる実施態様によれば、支持板の裏面に設けた足部を浴槽のフランジ部上面に開口した嵌合孔に嵌合させることによって支持板を浴槽に簡単に固定することができ、また、足部によって浴槽用枕を浴槽に位置決めすることができ、浴槽用枕がずれて動くのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【実施例1】
【0015】
図1は浴槽装置1の概略図であり、図2は浴槽装置1を備えた浴槽11の斜視図である。浴槽装置1は、浴槽11、給湯装置12、ヘッダ装置13、制御装置14、リモコン15で構成されている。浴槽11の内壁には、入浴者が入浴している状態において、首筋の付近が当たる位置、臀部から太股にかかる部分が当たる位置及び足の裏が当たる位置には、それぞれ浴槽用枕21a、腰用伝熱体21b、足用伝熱体21cが設けられている。また、入浴者が手で握ることのできる位置には、手用伝熱体21dが設けられており、手用伝熱体21dは取っ手状に形成されている。浴槽11に入浴する時や出浴する時、入浴者は浴槽11内で立ち上がったり座ったりする際に手用伝熱体21dを掴んで安全に入出浴することができる。また、上記のような位置に浴槽用枕21a、腰用伝熱体21b、足用伝熱体21c、手用伝熱体21dが設けられているので、入浴者が浴槽用枕21a、腰用伝熱体21b、足用伝熱体21cに首筋、臀部(腰)、足裏を接触させ、また手用伝熱体21dを握った姿勢をとることにより、首筋や臀部(腰)、足裏、手のひらに温度刺激を与えることができる。また、腰用伝熱体21b、足用伝熱体21c、手用伝熱体21dはステンレス等の熱伝導率の良好な材料によって形成されており、また浴槽用枕21aは後述のようにステンレスその他の金属からなる伝熱管61の一部が露出しているので、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dから身体各部位に温感と冷感を交互に付与する場合には、温度刺激が緩和されにくくて強い温度刺激を与えることができる。また、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dにはそれぞれ、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの表面温度を監視するための温度センサ22a、22b、22c、22dが設けられている。
【0016】
図3(a)(b)はいずれも浴槽11に設置された浴槽用枕21aの断面図である。浴槽用枕21aは、図4(a)(b)(c)に示すような枕部51と図5に示すような伝熱管61によって構成されている。
【0017】
伝熱管61は熱伝導性の良好な材料、特にステンレス等の金属材料によって形成されており、両端が閉じた中空筒体からなる吸放熱部62の両端部に湯水供給管63が接続されている。吸放熱部62は、入浴者の首筋等に接触する部分であって、内部を通過する水又は温水によって冷却又は加熱されて入浴者の首筋等に冷感や温感を与えることができる。吸放熱部62は、首筋等に痛感を与えることのないように、比較的直径の大きな円筒状に形成されている。湯水供給管63は、吸放熱部62に水又は温水を供給及び排出するものであり、L字形に屈曲している(図3(b)参照)。また、吸放熱部62には、伝熱管61を枕部51に固定するためのナット部64が溶接によって固着されている。
【0018】
枕部51は、図4(a)(b)(c)に示すように、支持板52の表面に支持板52を覆うようにしてクッション材53を接合させたものである。支持板52は、硬質樹脂等によって板状に成形されており、浴槽11のフランジ部71の上面から側壁面72の上部にかけての浴槽表面形状に倣うように湾曲している。クッション材53は、合成樹脂発泡体やゴム状弾性を有する軟質樹脂等によって成形されており、クッション材53の表面は入浴者がもたれたときに快適で、かつ安定感を感じるように湾曲させている。
【0019】
また、枕部51は浴槽11のフランジ部71と側壁面72の境界部分(角部)に当たる箇所で大きく湾曲しており、この湾曲部分においてクッション材53の表面には伝熱管61の吸放熱部62を納めるための凹溝54が凹設されている。支持板52の、フランジ部71と重なる箇所の裏面には断面C字状をした取付足55(足部)が突設されており、取付足55の中心には湯水供給管63を挿通させるための管通過孔57が貫通している。クッション材53には、凹溝54と管通過孔57とを連通させるようにして管納入部56となる空間が形成されており、凹溝54に吸放熱部62を嵌めたとき、管納入部56内に湯水供給管63を納めて湯水供給管63の先端部を管通過孔57から外部へ取り出すことができるようになっている。
【0020】
しかして、図3(b)に示すように、吸放熱部62を凹溝54に嵌めて湯水供給管63を管納入部56に納め、湯水供給管63の先端部を管通過孔57から外部へ取り出すようにして浴槽用枕21aを組立てる。支持板52には通孔58が開口されているので、図3(a)に示すように、通孔58からナット部64にビス65を螺合させることにより、凹溝54に納められた吸放熱部62を枕部51に固定することができる。
【0021】
吸放熱部62は入浴者の首筋等に痛感を与えないよう比較的直径が大きくなっているが、吸放熱部62の直径が大きくなると、クッション材53の表面に吸放熱部62を露出させて配置する場合には、吸放熱部62の突出長が大きくなって却って入浴者に痛感を与える恐れがある。しかし、この浴槽用枕21aでは、クッション材53の凹溝54に吸放熱部62を嵌め込むようにして吸放熱部62の首筋等に接触して伝熱する領域だけをクッション材53から露出させているので、吸放熱部62の直径が大きくなっても吸放熱部62のクッション材53からの突出長が大きくならず、首筋等へ痛感を与えにくくなる。
【0022】
また、浴槽11のフランジ部71には2つの嵌合孔73が開口されており、この嵌合孔73に浴槽用枕21aの取付足55を嵌め込んで嵌合させることにより、フランジ部71の上面から側壁面72の上部にかけて浴槽用枕21aが簡単に取付けられる。
【0023】
取付足55の中央に湯水供給管63を挿通させるための管通過孔57を開口しているので、浴槽11のフランジ部71には取付足55を嵌合させるための嵌合孔73と湯水供給管63を通すための孔とを別々にあける必要がなく、フランジ部71には2つの孔をあけるだけで済む。よって、フランジ部71に孔をあける手間が少なくなると共にフランジ部71の強度低下を抑制することができる。
【0024】
こうして浴槽用枕21aを浴槽11に取付けた状態では、吸放熱部62は浴槽11の内側の斜め上方へ向けてクッション材53から突出しており、図1に示すように、浴槽11の内壁面にもたれた入浴者の首筋に当たり易くなる。よって、この浴槽用枕21aにより首筋や頭部に冷感や温感を与えることができ、また、冷却する場合にはのぼせ防止にも使用できる。
【0025】
腰用伝熱体21b及び足用伝熱体21cは、金属(たとえば、ステンレス)などの熱伝導率が高く、熱容量の小さい材料でプレート状に形成されており、内部には水又は温水の流路(図示せず)が蛇行状に形成されている。しかして、この流路に水又は温水を流すことにより腰用伝熱体21b及び足用伝熱体21cの表面を冷却又は加温することができる。
【0026】
手用伝熱体21dは、金属(たとえば、ステンレス)などの熱伝導率が高く、熱容量の小さい材料で中空の取っ手状に形成されており、内部の流路に水又は温水を流して手用伝熱体21dを冷却又は加温できるようになっている。しかして、手用伝熱体21dの内部に湯水を流すことにより、湯水の熱(冷気)を手用伝熱体21dの表面に伝導し、手用伝熱体21dの表面を加熱したり冷却したりできる。
【0027】
図6にヘッダ装置13の概略図を示す。ヘッダ装置13は、湯と水を混合させて任意の温度にした湯水を浴槽用枕21aあるいは各伝熱体21b〜21dに供給するための装置である。ヘッダ装置13には、ヘッダ装置13に湯を供給するための給湯配管27と、ヘッダ装置13に水を供給するための給水配管28と、温度調節した湯水を浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dに供給するための湯水供給配管23とが接続されている。なお、給湯配管27及び給水配管28のヘッダ装置13と反対側の他端は給湯装置12に接続されており、湯水供給配管23の他端はそれぞれ浴槽用枕21aの湯水供給管63及び腰用伝熱体21b〜21dの各流路と接続されている。また、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの数と同じ数だけ混合弁29が設けられている。また、各混合弁29には給湯配管27及び給水配管28が接続され、各混合弁29に湯及び水を供給されるようになっている。また、各混合弁29には湯水供給配管23が接続されている。しかして、混合弁29は、湯と水を適当な比率で混合して、湯水供給配管23から浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dへ任意温度の湯水を供給できる。また、それぞれの湯水供給配管23には、混合弁29側から流量調整弁30、流量センサ31及び温度センサ32が設けられており、ヘッダ装置13は、流量センサ31で流量を測定しながら流量調整弁30の絞り量を調節することによって、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dに供給する湯水の流量を調節している。また、温度センサ32により、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dに供給する湯水の温度を監視している。したがって、ヘッダ装置13は浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dに異なる温度の湯水を供給できるようになっている。
【0028】
また、浴槽用枕21aの湯水供給管63及び各伝熱体21b〜21dの流路には排水管25が接続されており、各排水管25には電磁開閉弁26が設けられている。この電磁開閉弁26を開閉させることによって、湯水を浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21d内に滞留させるか排水管25から排水するかを制御できる。
【0029】
給湯装置12は、特に図示しないがガスバーナーなどで燃料を燃焼させて発生した熱を利用して、上水道などから取り込んだ水を加熱して湯にするものである。また、給湯装置12には給湯配管27及び給水配管28が接続されている。給湯配管27は、給湯装置12で加熱した湯をヘッダ装置13へ供給するための配管である。また、給水配管28は、非加熱の水をヘッダ装置13へ供給するための配管である。なお、給湯装置12は浴槽11に湯水を張ったり追い焚きしたりするための自動給湯装置を兼ねていてもよい。
【0030】
浴槽装置1は、内蔵の制御装置14(制御手段)によって運転制御される。リモコン15は、遠隔から浴槽装置1を操作するものであり、表示部35、設定ボタン36、運転開始ボタン37、選択ボタン38a、38b及び決定ボタン39を備えている。また、冷温運転の設定は、リモコン15の選択ボタン38a、38b及び決定ボタン39を用いて設定することができる。
【0031】
図7及び図8にリモコン15の冷温運転の設定画面を示す。図7は設定したい浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの位置を選択する伝熱体選択画面41であり、浴槽11に設けられた浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの位置が円α1〜α4で表示されている。選択ボタン38a、38bを押すことによって設定対象となる浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dを順番に選択することができ、選択されている浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの位置は円α1〜α4で表示(例えば、選択時は実線、非選択時は破線で表示される)することができる。図8は冷感刺激の温度及び継続時間と温感刺激時の温度及び継続時間を手動で設定(以下、手動設定モードという)するか、ランダムで運転(以下、ランダムモードという)するかを選択するための条件設定画面42である。なお、図8では”手動”の文字の下に線が表示されて手動設定モードを選択している状態を示している。また、手動設定モードを選択した場合には、この条件設定画面42で冷感刺激の温度F1及び継続時間T1と温感刺激の温度F2及び継続時間T2の設定も行う。
【0032】
ここで、手動設定モードとランダムモードの運転の時の浴槽用枕21a(或いは各伝熱体21b〜21d)の温度変化について簡単に説明する。図9(a)、(b)にそれぞれ手動設定モード及びランダムモードにおける冷温運転時の浴槽用枕21a(或いは各伝熱体21b〜21d)の温度のタイムチャートの一例を示す。手動設定モードの場合は、図9(a)に示すように、条件設定画面42で設定した温度と継続時間で冷感刺激と温感刺激を交互に繰り返す。つまり、手動設定モードにおいては、1つの浴槽用枕21a(或いは各伝熱体21b〜21d)から入浴者の身体の各部位に与えられる温度刺激は、温度F1で継続時間T1の冷感刺激と温度F2で継続時間T2の温感刺激を交互に繰り返す。
【0033】
一方、ランダムモードは、冷感刺激と温感刺激の温度と継続時間が不規則に自動で選択され、その温度及び継続時間条件で運転が終了すると、再度温度及び継続時間条件を不規則に自動で選択しなおされ、その条件で運転が行われる。つまり、図9(b)に示すように、ランダムモードでは、さまざまな温度刺激を入浴者の身体の各部位に与える。また、その温度刺激を与えている継続時間も一定ではない。なお、浴槽装置1では、ランダムモードでの温度を20℃〜42℃、継続時間を10秒〜90秒の間で適当な値が自動で選択されるように設定した。
【0034】
図10は浴槽装置1における、制御装置14を中心とする電気的な構成を示す機能ブロック図である。制御装置14は、ROM、EEPROM等のメモリに格納されている運転処理のプログラムに従って浴槽装置1をマイコン制御するものである。また、制御装置14は、リモコン15、温度センサ22a〜22d、電磁開閉弁26、給湯装置12、ヘッダ装置13(混合弁29、流量調整弁30、流量センサ31、温度センサ32)のそれぞれと信号線40を通じて接続されている。すなわち、図10に示すように、制御装置14は、リモコン15、温度センサ22a〜22d、32及び流量センサ31からの信号を受け取り、それに応じて所定の手順で、混合弁29、流量調整弁30、給湯装置12を制御することにより、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの温度を制御し入浴者に温感刺激或いは冷感刺激を与える。
【0035】
図11〜図13はリモコン15を用いて冷温運転の設定を行う時の動作を表わしたフロー図である。以下、図11〜図13に従って冷温運転の設定手順を説明する。図11に示すように、設定ボタン36を押してオンにする(ステップS11)と、図7に示した伝熱体選択画面41が表示部35に表示される(ステップS12)。冷温運転の設定を続ける場合(ステップS13でNoの場合)は、伝熱体選択画面41が表示された状態で選択ボタン38a(△マークのボタン)を押す(ステップS14)と、浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dを表す円α1〜α4の選択位置が一つ戻る(ステップS15)。また、選択ボタン38b(▽マークのボタン)を押す(ステップS16)と、浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dを表す円α1〜α4の選択位置が一つ進む(ステップS17)。ステップS14〜S17を繰り返して、円α1〜α4で表示される浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dのいずれかを選択した状態(実線で表示された状態)で、決定ボタン39を押す(ステップS18)と、伝熱体選択画面41を終了し(ステップS19)、選択した箇所の浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの条件設定処理へ移行する(ステップS20)。
【0036】
図12は、条件設定処理を表したフロー図である。ステップS19で伝熱体選択画面41が終了すると、図8に示すように条件設定画面42が表示部35に表示される(ステップS21)。条件設定画面42では、まず始めに図8に一点鎖線で囲んだ部分で手動設定モードとランダムモードを選択する状態となる(ステップS22)。この状態で選択ボタン38a、38bのいずれかを押す(ステップS23でYesの場合)と手動設定モードとランダムモードの選択状態が切り替わる(ステップS24)ので、任意の運転モードを選択して決定ボタン39を押せば(ステップS25でYesの場合)、運転モードが決定される(ステップS26)。また、ステップS21で条件設定画面42が表示された直後においては、前回の運転時の運転モードが選択された状態になっており、特に運転モードの変更が必要ない場合は選択ボタン38a、38bを押さず(ステップS23でNoの場合)に決定ボタン39を押して(ステップS25)、運転モードを決定すればよい(ステップS26)。ステップS27では、選択した運転モードの確認を行い、手動設定設定モードが選択された場合は、冷温運転を手動設定モードで運転するように設定され、図13に示したフロー図のような冷温運転の時の温度F1、F2、継続時間T1、T2の設定に移行する(ステップS28)。また、ランダムモードが選択された場合は、冷温運転をランダムモードで運転するように設定される(ステップS29)。
【0037】
冷温運転を手動設定モードに設定されると、まず条件設定画面42の冷感刺激の温度F1の数値が設定可能となる(ステップS30)。ここで、選択ボタン38a(△マークのボタン)を押すと、設定値を大きくすることができる(ステップS31〜S32)。一方、選択ボタン38b(▽マークのボタン)を押すと、設定値を小さくすることができる(ステップS33〜S34)。選択ボタン38a、38bを押して設定値を任意の値にし、決定ボタン39を押せば入力した値を冷感刺激の温度F1として確定する(ステップS35)。温度F2、継続時間T1、T2の設定が確定していなければ(ステップS36でNoの場合)、次の設定値の設定状態に移行し(ステップS37)、温度F1の設定と同様にステップS31〜S35を繰り返して各設定値(継続時間T1、T2、温度F2)を入力し、確定させる。なお、本実施例1においては、冷感刺激の温度F1、継続時間T1、温感刺激の温度F2、継続時間T2の順で設定するようにした。各設定値が確定したら(ステップS36でYesの場合)、図11のステップS12に戻り、同様の操作により違う場所の浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dの設定を行う。以上の操作を繰り返して、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの総ての設定を終了したら、伝熱体選択画面41で設定ボタン36を再度押してオフにする(ステップS13でYesの場合)と、冷温運転の設定が終了し、冷温運転の待機状態となる。なお、冷感刺激と温感刺激の条件設定は、順番が入れ替わっていてもかまわない。
【0038】
図14、15は浴槽装置1による冷温運転の動作を表わしたフロー図である。以下、図14、15に従って浴槽装置1による冷温運転開始から終了までを説明する。なお、浴槽11に設けた浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dは、それぞれ個別の設定で冷感及び温感刺激を入浴者に与えることができるが、同じ制御方法で浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの制御を行うので、ここでは、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの内の1つに関係する動作について説明する。また、手動設定モードでの冷温運転は、運転開始後、冷感刺激、温感刺激の順で交互に運転するものとする。
【0039】
リモコン15の運転開始ボタン37が押されてオンになる(ステップS41)と、浴槽装置1は、図14のフロー図に従って冷温運転を開始する。浴槽装置1の冷温運転が開始すると、電磁開閉弁26が閉止され(ステップS42)、同時に運転モードの確認が行われる。ステップS43で手動設定モードが選択されている場合には、冷感刺激の温度F1及び継続時間T1、或いは温感刺激の温度F2及び継続時間T2を読み込む(ステップS44)。読み込んだ各設定値は、目標温度F=F1(或いは目標温度F=F2)、目標時間T=T1(或いは目標時間T=T2)に設定される(ステップS45)。なお、温度F1とF2、また継続時間T1とT2は、交互に目標温度及び目標時間に設定される。一方、ステップS43、S46でランダムモードが選択されている場合には、冷温刺激の温度Frを20〜42℃の範囲内で不規則に設定する(ステップS47)とともに冷温刺激の継続時間Trを10〜90秒の間で不規則に設定する(ステップS48)。また、設定した冷温刺激の温度Fr及び冷温刺激の継続時間Trを目標温度F=Fr、目標時間T=Trに設定する(ステップS49)。以上、ステップS41〜S48により、冷温運転の目標温度F及び目標時間Tが設定される。目標温度F及び目標時間Tが設定されると、浴槽装置1は対象となる浴槽用枕21a(或いは各伝熱体21b〜21d)を目標時間Tの間、目標温度Fを保持するように伝熱体の温度を制御する(ステップS50)。目標温度Fで目標時間Tが経過し、運転終了の命令が入力されいていれば(ステップS51でYesの場合)、冷温運転を終了する。また、運転終了の命令が入力されておらず、運転が継続される場合には(ステップS51でNoの場合)、ステップS46に戻り、運転終了まで繰り返す。
【0040】
次に、ステップS50の浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dの制御動作を図15のフロー図を用いて説明する。まず、対象となる浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dの制御動作を開始すると、温度センサ22a〜22dにより、対象となる浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dの温度が検知される(ステップS53)。温度センサ22a〜22dによって検知された温度が目標温度Fに等しければ(ステップS54でYesの場合)、時間をカウントし目標時間Tが経過するまで目標温度Fに保持される(ステップS62)。一方、温度センサ22a〜22dによって検知された温度が目標温度Fと異なる場合(ステップS54でNoの場合)には、電磁開閉弁26を開成(ステップS55)し、排水管25から排水できる状態にした後、給湯装置12からヘッダ装置13へ湯及び水の供給が開始される(ステップS56)。同時にヘッダ装置13が調節されて目標温度Fの湯水が対象となる浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dに供給され(ステップS57)、対象となる浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dが加熱又は冷却される。また、温度センサ22a〜22dで対象となる浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dの温度を検出しており(ステップS58)、検出温度が目標温度Fと等しくなる(ステップS59)と、電磁開閉弁26を閉止するとともに給湯装置12から湯及び水の供給を停止する(ステップS60、S61)。目標温度Fの状態で目標時間Tが経過すれば(ステップS62でYesの場合)、ステップS50の浴槽用枕21a又は各伝熱体21b〜21dの制御動作を終了し、図14のステップS51へもどり、運転を継続するか終了するかの判断をする。また、目標温度Fの状態で目標時間Tが経過するまでの間(ステップS62でNoの場合)は、温度センサ22a〜22dで検出される温度が目標温度FからずれるとステップS53〜S62を繰り返して温度が目標温度Fになるように調節される。
【0041】
以上説明したように、浴槽装置1は、浴槽11内に湯水を噴出させず、入浴者に冷感刺激及び温感刺激を与えることができるので、冷温運転中も浴槽11内に貯められた湯水の温度が変化しにくい。したがって、入浴者の自律神経が活動し身体機能を充分に調節し終えるまで冷(温)感刺激を継続して与えることができる。また、浴槽用枕21a及び各伝熱体21b〜21dは、各個に冷(温)感刺激時の設定温度及び設定時間を個別に設定できるので、冷(温)感を感じやすい部位と感じにくい部位などで異なる条件に設定することができ、より効果的に自律神経を刺激して活性化させることができる。
【0042】
また、入浴者の入浴中は、入浴者の首筋に設けた浴槽用枕21aに水を流して冷感刺激を与えるようにすれば、首筋を通って頭(脳)に流れる血液を冷やして、入浴中ののぼせなどを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、浴槽装置の概略図である。
【図2】図2は、浴槽装置を備えた浴槽の斜視図である。
【図3】図3(a)(b)は、浴槽に設置された浴槽用枕の断面図である。
【図4】図4(a)(b)(c)は、浴槽用枕を構成する枕部の正面図、下面図及び断面図である。
【図5】図5は、浴槽用枕を構成する伝熱管の斜視図である。
【図6】図6は、浴槽装置のヘッダ装置の概略図である。
【図7】図7は、浴槽装置のリモコンの設定画面を説明する図である。
【図8】図8は、図7とは異なる浴槽装置のリモコンの設定画面を説明する図である。
【図9】図9(a)は、手動設定モードでの伝熱体の温度のタイムチャートである。図9(b)は、ランダムモードでの伝熱体の温度のタイムチャートである。
【図10】図10は、浴槽装置の制御装置の働きを説明するための機能ブロック図である。
【図11】図11は、浴槽装置の動作条件の設定方法を説明するフロー図である。
【図12】図12は、図11の続図である。
【図13】図13は、図12の続図である。
【図14】図14は、浴槽装置の動作を説明するフロー図である。
【図15】図15は、図14の続図である。
【符号の説明】
【0044】
1 浴槽装置
11 浴槽
12 給湯装置
13 ヘッダ装置
14 制御装置
15 リモコン
21a 浴槽用枕
21b 腰用伝熱体
21c 足用伝熱体
21d 手用伝熱体
51 枕部
52 支持板
53 クッション材
54 凹溝
55 取付足
56 管納入部
57 管通過孔
58 通孔
61 伝熱管
62 吸放熱部
63 湯水供給管
64 ナット部
65 ビス
71 フランジ部
72 側壁面
73 嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽のフランジ部上面から側壁面上部にかけて配設されたクッション材と、内部に水又は温水を供給して表面温度を制御される伝熱管とを備え、
前記伝熱管は、少なくとも一部が前記クッション材から露出するようにして前記クッション材の表面に設けられていることを特徴とする浴槽用枕。
【請求項2】
前記クッション材の表面に凹溝が形成され、前記伝熱管は前記凹溝内に納められてその一部がクッション材から露出していることを特徴とする、請求項1に記載の浴槽用枕。
【請求項3】
前記クッション材の、浴槽のフランジ部上面と側壁面上部との間の角部に対応する位置に前記伝熱管を配置することにより、前記伝熱管を浴槽の内側の斜め上方へ向けてクッション材から突出させたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の浴槽用枕。
【請求項4】
前記クッション材は湾曲した支持板の表面を覆うようにして当該支持板に設けられており、前記支持板は浴槽のフランジ部上面から側壁面上部に沿って浴槽に配設されていることを特徴とする、請求項1、2又は3のいずれか1項に記載の浴槽用枕。
【請求項5】
前記支持板の裏面に足部を突設し、浴槽のフランジ部上面に開口した嵌合孔に前記足部を嵌合させたことを特徴とする、請求項4に記載の浴槽用枕。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−313150(P2007−313150A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147675(P2006−147675)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】