説明

浴槽用開閉栓

【課題】ボールチェーンを引く作業のみで、浴槽底部の栓の開閉を可能とする浴槽用の開閉栓構造を提供する。
【解決手段】その上部にテーパ面とストッパーを有するとともに、中央部内面に環状溝、下部に通水部を有する有底の固定筒を設け、その上部に通水部と角穴を有し、下部に孔を有する可動筒を固定筒に内接して位置させ、固定筒底部にその下端を固着したコイルバネを設けるとともに該バネ上端に、弾力を有する係止体を固着し、係止体上部に四角柱状の支持棒を角穴を挿通させて設け、該支持棒上端に、逆円錐台形の閉鎖板を位置させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、栓に付属のボールチェーンを引くだけで、身体をかがみ込むことなく容易に栓の開閉ができる浴槽用の開閉栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より利用されている浴槽用の栓は、浴槽底部に設けた排水口に合致する逆円錐台形のゴム板に金具を介してボールチェーンの一端を取り付け、他端を浴槽の内側適所に取り付けたものであり、本発明にて示すように、コイルバネと係止体を用いた構成物にてボールチェーンを引くだけで栓の開閉を可能とした開閉栓は現在のところ見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既述のように、従来から多用されている浴槽用の栓構造は逆円錐台形のゴム板にボールチェーンを取り付けたものであり、排水の時にはこのボールチェーンをつかんで引いて排水口から取り外すことで浴槽内の湯を排出させることができる。しかし、湯をはるときにはこのゴム板をつまんで浴槽の排水口にはめ込む作業が必要であり、通常はかがみ込んで行う作業となる。健常者ではこの作業に特段の困難性を有しないが、身体の不自由なものにとっては難儀な作業となり、この栓閉時の容易性に配慮した浴槽用の栓は見当たらないのが現状である。
本発明は、以上のような従来からの浴槽用栓に関わる課題を解決するために発明されたもので、コイルバネと係止体を利用した構成にて、ボールチェーンを引くだけで栓の開閉を可能とし、身体作業的負担を極少とする新規かつ有用なる物品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は、固定筒内部に位置する可動筒、コイルバネ、係止体、支持棒、閉鎖板を各々関連させてその主要部を構成した。
すなわち、その上部にテーパ面とストッパーを有するとともに、中央部内面に環状溝、下部に通水部を有する有底の固定筒を設け、その上部に通水部と角穴を有し、下部に孔を有する可動筒を固定筒に内接して位置させ、固定筒底部にその下端を固着したコイルバネを設けるとともに該バネ上端に、弾力を有する係止体を固着し、係止体上部に四角柱状の支持棒を角穴を挿通させて設け、該支持棒上端に、逆円錐台形の閉鎖板を位置させる。
本発明は以上の構成よりなる浴槽用開閉栓である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、閉鎖板に接続しているボールチェーンを引く作業にて栓の開閉を行うことができるため、従来のようにかがみ込む作業が不要となり、身体の不自由なものにとってその作業を容易とする有用なる物品を得ることができる。また、健常者に対しても利便性に富む物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1はステンレス製の固定筒である。この固定筒上端は鍔部2を有するが、この鍔部上面は外方に向かうにつれて下降する傾斜面を有し、また上部内面は下降するにつれて小径となるテーパ面3を有している。このテーパ面下部に隣接して環状のストッパー4が固着される。5は固定筒内面の中ほどに刻設される環状溝、6は該固定筒底部に形成される通水部としての切除部である。この切除部にて固定筒底部には十字形のバネ固定部7が形成される。
10は固定筒内面に接して上下にスライド可能に位置する可動筒である。
この可動筒外径は固定筒内径よりわずかに小さく、またその上下間距離は固定筒の上下間距離より小さい。従ってこの可動筒は固定筒内面に沿って上下にスライド可能である。
この可動筒上面は一部切除されて十字形となった支持棒支部11が形成され、その中央に角穴12が穿設される。13は可動筒上部内面に位置する環体、14は可動筒下部に四等配に穿設される孔である。
20はバネ固定部上に固着されるコイルバネ、21はコイルバネ上端に固着される係止体である。この係止体は図10のように略円弧状の鋼線の両端を鈍角に一部折曲したものを組み合わせ固着して設けられ、四等配に水平に突出する鋼線部分を有している。
【0007】
22は支持棒で、小四角柱体であり、その下端は前記係止体上部に固着され、上端は後述の閉鎖板に固定される。23はゴム製の閉鎖板で、逆円錐台形であるとともにその外径は既述の固定筒上縁のテーパ面と合致する。この閉鎖板中央には段部を有する孔が形成され、ここに前記支持棒の上部が位置している。この支持棒上部は段部を有するとともに雄ネジが刻設されている。24は円柱状の固定金具で、その下部には雌ネジが刻設され、これらのネジ部が螺合して固定金具と支持棒が固定される。なお、固定金具は閉鎖板孔内に固着される。
本発明の使用に際しては、図12のように固定筒内部に各部品を位置させ、可動筒を上下にスライド可能状態にする。図12は閉鎖板が固定筒上部のテーパ面に密着し、コイルバネによる引張力が加わっている状態である。コイルバネ下部は固定筒底部のバネ固定部に固着され、バネ上部の係止体先端は可動筒の孔内に位置しつつ、その弾力にて固定筒内面を押圧している。この固定筒は図14のように、浴槽下部の排水口上部に挿入固定される。すなわち、固定筒鍔部下面は同一水平面上にあり、固定筒外径は排水口内径とほぼ同一である。この状態は栓閉時であり、浴槽内の湯の排出はない。
【0008】
湯の排出の際には図13の中図のように、ボールチェーンをつかんで上方に引くと、閉鎖板と支持棒および係止体は固定されており、また係止体とコイルバネ上部も固定されている。従って、コイルバネの引張力に逆らってこれら各部品は上方に移動する。
可動筒の孔内には係止体先端が位置しており、同時にこの可動筒も上方へ移動するが、固定筒内面には環状溝が刻設されており、また係止体は前記のようにその弾力にて外へ向かう力が働いている。そのために係止体先端はやがて環状溝内にはまり込んで可動筒の上昇は停止する。固定筒下面および可動筒上面には切除部による通水部が形成され、閉鎖板は固定筒から離れて上方に位置している。従って、この固定筒上方から浴槽内の湯が流入し、排水口を経て排出される。この流入にて閉鎖板にも下向きの力が加わるが、係止体が環状溝にはまり込んでいるので栓閉状態への移行はない。
湯を張るときは、再びボールチェーンをつかんでさらに上方へ引き上げると、可動筒上部はストッパーに当接してその上昇はストップするが係止体は撓んで図13下図のように環体に当たり、その中央部はさらに撓んで変形する。この変形にて係止体先端は環状溝および孔から外れて可動筒内面を押圧しながら上方へ移動する。そして、ボールチェーンから手を離すと、コイルバネの引張力にて係止体は下方へ移動を始める。このとき、可動筒には係止体による押圧力が働くために可動筒も同時に下方へ移動を始める。
しかし、可動筒と係止体は押圧関係にあるが可動筒にその下降を妨げる力が働かないので、各部分が同時に下降する。やがて可動筒下面は固定筒下面に接してその下降は停止するが、係止体にはコイルバネの引張力が働いているのでさらに下降してその先端が孔内に入って図13上図の初期状態へと復帰する。なお、可動筒上部の角穴内には角形の支持棒が位置しており、既述の昇降に伴う係止体先端と孔の位置ずれはない。
【0009】
図15〜図18は本発明の他例を示すものである。
前例においては、固定筒に環状溝、可動筒に円形の孔を設けた構成としているが、図15〜図16の例は環状溝と円形孔の上部を上方に向かう傾斜面としたもので、係止体がこの環状溝と孔より外れやすくして、栓開時から栓閉時への移行がより容易となるよう配慮したものである。図17〜図18は上記に加えて、可動筒の下端よりやや上部の内面に小さな段部を形成したもので、栓閉時への移動の際に可動筒をよりスムースに下降させるよう配慮したものである。つまり、栓閉時へ向かうときの係止体と可動筒の下降時においては、既述のようにほぼ同時に下降を始めるが、何らかの原因にて固定筒と可動筒の間に摩擦力が働くと、可動筒の下降速度より係止体の下降速度が速まることが想定される。
この場合には係止体先端が図13中図のように再び環状溝にはまり込む可能性があって栓閉時への移行が妨げられることとなる。これを避けるために、可動筒内面に段部を設けて、係止体下降の時にこの段部に係止体先端が当たることにより、可動筒の下降力を強化したものである。
【0010】
以上、本発明について記したが、本発明は係止体とコイルバネと固定筒および可動筒を組み合わせた構成としたところにその特徴を有し、従来品のように栓閉時のかがみ込む作業を不要としたものである。なお、各部品は閉鎖板を除いてはその耐久性を考慮してステンレスにて製作することが推奨される。また、固定筒内面および可動筒外面は表面仕上げ度を高め、可動筒内面は微細な凹凸を有することが好ましく、これにより各部のスムースな動きが期待される。既述の例では係止体は断面円形の鋼線を用いたが、他に平板状の鋼板にて形成してもよく、この場合は環状溝および孔を適宜に変更することが望まれる。
なお、図は実施の一例を示すものであり、近似の他の構成としてもよい。
以上のごとく、本発明にて身体をかがみ込むことなく容易に栓の開閉ができる浴槽用の開閉栓を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 本発明の固定筒の平面図
【図2】 本発明の固定筒の正面図
【図3】 A−A断面図
【図4】 本発明の固定筒の底面図
【図5】 本発明の可動筒の平面図
【図6】 本発明の可動筒の正面図
【図7】 B−B断面図
【図8】 本発明の要部構造説明図(閉鎖板関係)
【図9】 本発明の要部構造説明図(係止体とコイルバネ・平面視)
【図10】 本発明の要部構造説明図(係止体とコイルバネ・正面視)
【図11】 本発明の要部構造拡大説明図(閉鎖板関係)
【図12】 本発明の内部構造説明図(栓閉鎖時)
【図13】 本発明の機能説明図
【図14】 本発明の装備状態説明図
【図15】 本発明の他例を示す構造説明図
【図16】 本発明の他例を示す要部構造説明図
【図17】 本発明の他例を示す構造説明図
【図18】 本発明の他例を示す要部構造説明図
【符号の説明】
【0012】
1 固定筒
2 鍔部
3 テーパ面
4 ストッパー
5 環状溝
6 切除部
7 バネ固定部
10 可動筒
11 支持棒支部
12 角穴
13 環体
14 孔
20 コイルバネ
21 係止体
22 支持棒
23 閉鎖板
24 固定金具
25 ボールチェーン
26 浴槽底部
30 環状溝
31 孔
32 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上部にテーパ面とストッパーを有するとともに、中央部内面に環状溝、下部に通水部を有する有底の固定筒を設け、その上部に通水部と角穴を有し、下部に孔を有する可動筒を固定筒に内接して位置させ、固定筒底部にその下端を固着したコイルバネを設けるとともに該バネ上端に、弾力を有する係止体を固着し、係止体上部に四角柱状の支持棒を角穴を挿通させて設け、該支持棒上端に、逆円錐台形の閉鎖板を位置させたことを特徴とする浴槽用開閉栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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