説明

浴用剤

【課題】互いに衝突しても割れや欠け等の欠陥の発生しづらい、粉末の圧縮成形物からなる浴用剤を提供すること。
【解決手段】浴用剤10は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られる固形の浴用剤であって、天面と底面と側面とを有する扁平な略柱状体からなり、天面及び底面は、互いに平行な一対の第1の辺と、これらに対して90度の位置関係にありかつ互いに平行な一対の第2の辺とからなる4辺の群を、2組以上有し、すべての内角が180度未満である多角形の形状である。浴用剤10は、質量が10〜200gで、表面積が1000〜25000mm2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られた浴用剤の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、優れた溶解性を有し、壊れにくく、かつ製造が容易である浴用剤として、表面側の中央に凹部を設けた浴用剤を提案した(特許文献1参照)。この浴用剤は、浴水中に投入されると、溶解の途中で凹部の底に貫通孔が形成される。このことによって、浴用剤の外周面からだけでなく、貫通孔の壁面からも溶解が起こるので、優れた溶解性を示すことになる。また、溶解前の状態では貫通孔は形成されていないので、構造上壊れにくい。
【0003】
前記の浴用剤とは別に、出願人は、圧縮方向に沿った形状として、円錐形や角錐形などの錐形部分を有する浴用剤も提案した(特許文献2参照)。この浴用剤には、圧縮成形によって浴用剤を製造するときにスティッキングが起こりづらいという利点がある。スティッキングとは、圧縮成形に用いられる杵の表面に粉体原料が付着して異物となることなどに起因して、成形物の表面に欠け等の欠陥が生じる現象である。
【0004】
本出願人が提案した前記の各浴用剤とは別に、水溶性の固形入浴剤と、その中に埋め込まれて入浴剤の溶解に伴って再生を開始する電子音発生装置とを備える入浴剤組み合わせ体も知られている(特許文献3参照)。この入浴剤組み合わせ体の実施形態として、同文献の図1には扁平な八角柱状の形状のものが開示されている。この入浴剤組み合わせ体は、重曹、クエン酸、コーンスターチ、植物及びミネラルウオータを混合して型に充填し、その中に電子音発生装置を埋め込んだ後12〜24時間程度放置乾燥することで製造される。したがって、原料である粉末は圧縮された状態になっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−333236号公報
【特許文献2】特開2008−142347号公報
【特許文献3】特開2006−298770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られた浴用剤は、主に圧縮することによる分子間力で結合しているため、他の製造方法で得られた固形物と比較して衝撃に対して脆く、特に質量や表面積が大きい場合、その製造ラインを搬送されている間や、製品の運搬中にお互いが衝突して割れや欠けが特に生じやすい。例えば図6に示すように、扁平な六角柱状の浴用剤100を、その製造ラインにおいて搬送する場合、浴用剤100における互いに平行な側面Sが、製造ラインのガイドGに沿うように搬送すると、搬送方向の前後に角部Cが位置するので、浴用剤100どうしが衝突する場合には、この角部Cが衝突することになる。その結果、衝突の力がこの角部Cに集中することになるので、浴用剤100に割れや欠けが生じやすい。このような不都合は、六角柱状以外に例えば円柱状の場合にも同様に起こる。
【0007】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、粉末の圧縮成形物からなる浴用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られる固形の浴用剤であって、
天面と底面と側面とを有する扁平な略柱状体からなり、
天面及び底面は、互いに平行な一対の第1の辺と、これらに対して90度の位置関係にありかつ互いに平行な一対の第2の辺とからなる4辺の群を、2組以上有し、すべての内角が180度未満である多角形の形状であり、
質量が10〜200gで、表面積が1000〜25000mm2である浴用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、互いに衝突しても割れや欠け等の欠陥が発生しづらく、かつ、浴水中に投入されたときの溶解性が十分に高い粉末の圧縮成形物からなる浴用剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の浴用剤の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す浴用剤をその中心をとおる位置で切った縦断面図である。
【図3】図1に示す浴用剤を天面側からみた平面図である。
【図4】本発明の浴用剤の別の実施形態を天面側からみた平面図(図3相当図)である。
【図5】図1に示す浴用剤を、製造ライン中で搬送する状態を示す模式図である。
【図6】従来の浴用剤を、製造ライン中で搬送する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の浴用剤の一実施形態が示されている。浴用剤10は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られた圧縮成形物である。浴用剤10は、これを浴水中に投入することで溶解分散し、所望の効果・効能を発揮するものである。
【0012】
浴用剤10は比較的質量の大きなものである。具体的には浴用剤10の質量は10〜200g、好ましくは20〜190g、更に好ましくは50〜180gである。浴用剤10の質量は、該浴用剤10が所望の効果・効能を発揮するに足る量の成分を含有し、かつ圧縮成形物としての保形性を十分に確保できる観点から決定される。浴用剤どうしの衝突に起因する欠陥の発生は、浴用剤の質量が前記の範囲の下限値以上である場合に問題となる傾向の高い現象である。
【0013】
上述の範囲内の質量であることを条件として、浴用剤10はその表面積が1000〜25000mm2、好ましくは7000〜12000mm2である。表面積は、浴用剤10の構造上の強度の確保と、浴水中での溶解性とのバランスを考慮して決定される。浴用剤10の表面積は、三次元CADソフト(ソリッドワークス)を用いて測定される。浴用剤どうしの衝突に起因する欠陥の発生は、浴用剤の表面積が前記の範囲の下限値以上である場合に問題となる傾向の高い現象である。
【0014】
図1の縦断面図及び平面図である図2及び図3に示すように、浴用剤10は、天面11、底面12及び側面13を有している。天面11及び底面12は概ね平面になっている。側面13は、天面11及び底面12の双方に対して直交している。そして浴用剤10は、扁平な略柱状体の形状となっている。なお、天面11と側面13との連接部は面取りされている。底面12と側面13についても同様である。
【0015】
天面11及び底面12は、その輪郭がほぼ同形になっている多角形をしている。具体的には、互いに平行な一対の第1の辺と、これらに対して90度の位置関係にありかつ互いに平行な一対の第2の辺とからなる4辺の群を有している。一対の第1の辺は辺LA1,LA2であり、これらの辺に対して90度の位置関係にある第2の辺は辺LB1,LB2である。これら4つの辺が第1の辺群をなしている。更に天面11及び底面12は、辺LA1と辺LB1とをつなぐ辺LC1及び辺LA2と辺LB2とをつなぐ辺LC2も有している。辺LC1と辺LC2とは互いに平行になっている。天面11及び底面12は、更に辺LA1と辺LB2とをつなぐ辺LD1及び辺LA2と辺LB1とをつなぐ辺LD2も有している。辺LD1と辺LD2とは互いに平行になっている。したがって、天面11及び底面12は、互いに平行な一対の第3の辺LC1,LC2と、これらの辺に対して90度の位置関係にある互いに平行な一対の第4の辺LD1,LD2とを有し、これら4つの辺LC1,LC2,LD1,LD2が第2の辺群をなしている。要するに、天面11及び底面12は、4辺からなる前記の辺群を2組有する形状となっている。天面11及び底面12を構成する多角形は、各辺の長さがすべて同じになっている。また該多角形は、そのすべての内角が180度未満になっている。その結果、天面11及び底面12は、正八角形の形状をしている。
【0016】
浴用剤10が以上のような形状を有していることによって、浴用剤10は、強度と浴水中での溶解性とがバランスして、割れや欠け等の欠陥が発生しづらく、かつ浴水中に投入されたときの溶解性が十分に高くなる。詳細には次のとおりである。図5に示すとおり、本実施形態の浴用剤10を、その製造ラインにおいて搬送する場合、浴用剤10における互いに平行な側面Sが、製造ラインのガイドGに沿うように搬送すると、搬送方向の前後に角部は存在せず、面状部S1が存在することになる。したがって、浴用剤10どうしが衝突した場合であっても、衝突は面状部S1どうしでの面による接触となる。その結果、衝突の力が面状に分散されることになるので、浴用剤10に割れや欠けが生じにくくなる。一方、浴用剤が四角柱の形状である場合も、本実施形態と同様に浴用剤どうしが面で以て接触するので、衝突の力が面状に分散され、割れや欠けは生じにくいと言える。しかし、四角柱の形状である場合には、浴用剤を製造ラインのガイドに沿わせるときに、該浴用剤が、最大で90度に近い角度で回転しなければならない場合がある。これに対して、本実施形態のような形状である場合には、浴用剤を製造ラインのガイドに沿わせるときに、最大でも45度未満の角度で回転させるだけで足りるので、整列性が良好で、回転による衝突の衝撃も少なくて好ましい。また四角柱よりも多角柱の形状である方が、浴用剤の表面積を大きくしやすいので、溶解性を高めやすい。
【0017】
多角形をした天面11及び底面12においては、図3に示すようにその内角がすべて等しくなっている。このような形状をしていることによって、上述した図5に示すように、浴用剤10を、その製造ラインにおいて搬送する場合、浴用剤10をガイドGに沿わせるときに、水平面内において浴用剤10の回転が起こりやすくなり、ガイドGに沿わせるときの整列性が良好になるという利点がある。
なお、多角形をした天面11及び底面12におけるすべての内角は、上述のとおり180度未満であるが、このようにした理由は次のとおりである。すなわち、180度を超える内角の部位が存在する場合、その部位は外方に向けて突出した角部となるので(いわゆる星形)、製造ラインにおいてガイドに沿わせて搬送させることができず、また浴用剤どうしが衝突した場合、角部で衝突しやすいからである。
【0018】
多角形の内角がすべて等しければ、上述のとおり浴用剤10の整列性が良好になる。更に多角形における各辺の長さの差を小さくすると、整列性が向上する。そこで浴用剤10における天面11及び底面12の最長辺と最短辺との長さの比(最長辺/最短辺)が2以下であることが好ましい。例えば図4に示す天面11においては、辺LA1,LA2の組の長さが最も長く、次いで辺LC1,LC2の組及び辺LD1,LD2の組の長さが長く、辺LB1,LB2の組の長さが最も短くなっているところ、LA1/LB1の値が2以下であることが好ましい。なお、最長辺と最短辺との長さの比の下限値は1(正多角形の場合)である。
【0019】
浴用剤10が上述の形状を有していることは、特に、浴用剤10が油性成分を0.1質量%以上、好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.18〜20質量%、殊更に好ましくは0.15〜10質量%、特に0.2〜8質量%含有している場合に好適である。この理由は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られた浴用剤において油性成分が含まれると、粉体間の結合力が油性成分の存在によって弱まるため、割れや欠けが更に生じやすくなる傾向にあるからである。
【0020】
浴用剤10どうしの衝突に起因する割れや欠け等の欠陥の発生を一層防止する観点から、浴用剤10はその形状が扁平であることが好ましい。扁平の程度は、天面11及び底面12の最長直径Dmax(図3参照)と浴用剤10の高さH(図2参照)との比であるDmax/Hの値が2〜6、特に2.5〜4.5であることが好ましい。この範囲の扁平の程度を有することで、浴用剤10が転がりにくくなるので、そのことに起因して割れや欠けが発生しづらくなる。浴用剤10の高さHそのものの値は、10〜30mm、特に15〜25mmであることが好ましい。
【0021】
浴用剤10は、質量及び表面積が上述の範囲であることに加え、その密度が、浴用剤10の構造上の強度の確保と、浴水中での沈降性や溶解性とのバランスから、1.2〜1.7g/cm3、特に1.3〜1.6g/cm3であることが好ましい。密度がこの範囲内であることによって、浴用剤10の強度が保持されるのみならず、浴用剤10を浴水中に投入したときに、圧縮され過ぎることに起因する溶解性の低下を効果的に防止することができるとともに、水面に浮いてくることを効果的に防止することができる。浴用剤10の密度は、質量/体積で算出される。体積は、三次元CADソフト(ソリッドワークス)を用いて測定される。
【0022】
図1及び図2に示すように、浴用剤10は、その天面11、具体的には天面の中央部に、凹部14を有している。凹部14は略逆錐形をしている。具体的には、略逆円錐形をしている。凹部14の内壁は、上に向けて凸の滑らかな曲面状をしている。更に、凸部14の底部は下に向けて凸の丸みを帯びた曲面状をしている。凹部14がこのような形状をしていることで、浴用剤10の表面積を容易に前記の範囲内に設定することができる。しかも、浴用剤10の使用前においては、凹部14が存在するにもかかわらず十分な強度が発現する。また浴用剤10を浴水中に投入すると、浴用剤10が溶解して凹部14の底部に貫通孔が形成され、浴用剤10の外周面のみならず、貫通孔の壁面においても溶解が進行するので、溶解性が良好になる。なお、天面11と異なり、底面12には凹部は存在せず、底面12はその全域にわたって概ね平坦になっていても良い。
【0023】
以上の観点から、凹部14の深さdは、浴用剤10の高さHの0.5〜90%、特に20〜80%であることが好ましい。また、天面11において開口している凹部14の開口直径cは、天面11の最長直径Dmaxの10〜90%、特に30〜80%であることが好ましい。
【0024】
浴用剤10の原料となる粉末は、浴用剤10の具体的な用途に応じて適切なものが選択される。例えば浴用剤10が浴水中で二酸化炭素等のガスを発生する発泡タイプの浴用剤である場合、粉末としては、炭酸塩と、固体の酸、中でも有機酸とを用いることができる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。固体の有機酸としては、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸などが挙げられる。なお、これらの炭酸塩及び固体の酸はそれぞれから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の浴用剤における、炭酸塩及び固体の酸の配合量は特に制限されないが、固体の酸と炭酸塩の配合割合を適宜選択して浴湯のpHが4〜7(0.01質量%水溶液)となるようにすれば浴湯中の遊離炭酸ガスの割合が増えるため優れた血行促進効果が得られる。より好ましい酸の含有量は、本発明の浴用剤中10〜80質量%であり、特に好ましくは15〜50質量%である。また、より好ましい炭酸塩の含有量は、本発明の浴用剤中5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
【0025】
また浴用剤10は油性成分を含んでいてもよい。油性成分の種類は特に制限されないが、入浴後の温まり感や肌感触が良好になる等の目的で浴用剤10に配合される。このような油性成分の例としては、脂肪酸エステル;グリセリド;炭化水素油;高級脂肪酸;高級アルコール;精油;シリコーン油等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも常温(25℃)で液体の油性成分であると、粉体間の結合力を更に低下させてしまう傾向があるので、浴用剤10が上述の形状を有していることは好適である。特に、浴用剤10における油性成分の割合が、上述した範囲内であると、浴用剤10を上述の形状とすることと相まって、浴用剤10に割れや欠け等の欠陥が一層生じにくくなるので好ましい。
【0026】
また浴用剤10は更に界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は油性成分を浴水中に良好に分散させる目的で浴用剤10に配合される。用いられる界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が好ましく、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて配合すればよいが、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤と、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤を組み合わせることが好ましい。当該界面活性剤の本発明浴用剤組成物中の含有量は、油性成分の浴水への分散性及び肌の感触の点から合計で0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。浴用剤10における界面活性剤の割合がこの範囲内であると、浴用剤10を上述の形状とすることと相まって、浴用剤10に割れや欠け等の欠陥が一層生じにくくなるので好ましい。
【0027】
浴用剤10は更に高分子結合剤を含んでいてもよい。高分子結合剤は、前記の粉末を原料として圧縮成形によって浴用剤10を製造するときに、粉末の粒子どうしを結合する作用を有する。浴用剤10が浴水に溶解することを考慮すると、高分子結合剤は水溶性のものであることが好ましい。そのような高分子結合剤としては、例えば、デキストリンやポリエチレングリコール等が挙げられ、特に分子量1000〜20000、好ましくは分子量4000〜10000のポリエチレングリコールを用いることができる。なお、高分子結合剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
浴用剤10が上述の形状を有していることは、特に、浴用剤10の高分子結合剤含有量が1〜25質量%、更に2〜20質量%、特に2.5〜15質量%程度の場合に好適である。この理由は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られた浴用剤において高分子結合剤が少量であると、割れや欠けが更に生じやすくなる傾向にあるからである。
【0028】
本発明の浴用剤には、本発明の効果に影響を与えない範囲で、更に通常浴用剤に配合されている公知の浴用剤原料、例えば無機塩類、生薬類、低級アルコール、殺菌防腐剤、保湿剤、金属封鎖剤、香料、色素、その他製剤上必要な成分などを配合することができる。
【0029】
浴用剤10は、粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られたものであればいずれの方法で圧縮成形されたものであっても良いが、例えば打錠により、圧縮成形製剤、例えば錠剤の形態としたものである。打錠方法としては、公知の打錠機、例えば単発打錠機、ロータリー式打錠機、積層打錠機、ロータリー式有核打錠機等を用いることができる。圧縮成形時の条件を適切に制御することで、所望の密度を有する浴用剤10を得ることができる。
【0030】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の浴用剤10においては、天面11及び底面12が正八角形をしていたが、これに代えて各辺の長さが異なる八角形であってもよい。また八角形に限られず、他の多角形、例えば互いに平行な一対の第1の辺と、これらに対して90度の位置関係にありかつ互いに平行な一対の第2の辺とからなる4辺の群を、3組有する多角形である十二角形や、4組有する多角形である十六角形や、5組有する多角形である二十角形を採用してもよい。尤も、多角形の辺の数が多くなると、円形に近い形状となることから、浴用剤10を搬送させるときに、ガイドに沿って移動するよりも、転がって移動しやすくなり、その結果、浴用剤に欠け等が生じてしまうおそれがある。したがって、最も好ましい多角形の形状は、図1ないし図3に示すとおり、八角形が好ましく、特に好ましくは正八角形である。
【0031】
また、前記実施形態の浴用剤10は、天面11の中央部に凹部14を有していたが、浴用剤10の表面積を十分に確保できる場合には、凹部14を形成しなくてもよい。また、浴用剤10の強度を十分に確保できる場合には、凹部14に代えて貫通孔を形成してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0033】
〔実施例1〕
以下の組成の原料を用い、図1ないし図3に示す形状の扁平八角柱状の浴用剤をロータリー式打錠機で製造した。
・炭酸水素ナトリウム 20%
・炭酸ナトリウム 20%
・フマル酸 43%
・ポリエチレングリコール6000 10%
・パルミチン酸イソプロピル(油性成分) 1.5%
・イソステアリン酸イソステアリル(油性成分) 0.5%
・テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(界面活性剤) 1.5%
・ポリオキシエチレンステアリルエーテル(界面活性剤) 0.5%
・香料 1%
・デキストリン 2%
【0034】
得られた浴用剤の質量は75g、表面積は9593mm2であった。天面及び底面の最長直径Dmaxは60mm、高さHは22mmであった。密度は1.5cm3であった。凹部の深さdは14mm、天面における開口直径は47mmであった。得られた浴用剤の破断強度を、圧縮引張り強度測定装置を用いて立て置きにした試料に10mm/分の速度で荷重を加えて、破断点を測定した。その結果、破断強度は52.7kgfであった。
【0035】
〔比較例1〕
実施例1において天面及び底面を正八角形とすることに代えて、直径60mmの円形とし、直径17mmの貫通孔を形成した以外は実施例1と同様にして扁平円柱状の浴用剤を製造した。得られた浴用剤の質量は75g、表面積は9606mm2であった。高さHは19.6mmであった。密度は1.5cm3であった。得られた浴用剤の破断強度を実施例1と同様に測定したところ、31.6kgfであった。
【0036】
実施例1及び比較例1の結果をまとめて以下の表1に示す。同表に示す結果から、実施例1に関しては、製造ラインを搬送されている間や、製品の運搬中にお互いが衝突して割れや欠けが生じることなく良好に製造できることが判る。また、実施例1の浴用剤を150リットル・40℃の浴湯中に投入したところ、該浴用剤よりも表面積の大きな浴用剤である比較例1の浴用剤を同浴湯中に投入した場合と同程度の溶解時間(約5分)が達成された。また、その浴湯から十分な温まりが得られた。
【0037】
【表1】

【符号の説明】
【0038】
10 浴用剤
11 天面
12 底面
13 側面
14 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を主成分とする原料を圧縮成形して得られる固形の浴用剤であって、
天面と底面と側面とを有する扁平な略柱状体からなり、
天面及び底面は、互いに平行な一対の第1の辺と、これらに対して90度の位置関係にありかつ互いに平行な一対の第2の辺とからなる4辺の群を、2組以上有し、すべての内角が180度未満である多角形の形状であり、
質量が10〜200gで、表面積が1000〜25000mm2である浴用剤。
【請求項2】
天面に略逆錐形の凹部を有している請求項1記載の浴用剤。
【請求項3】
前記多角形の内角がすべて等しい請求項1又は2記載の浴用剤。
【請求項4】
前記多角形が正多角形である請求項1ないし3のいずれかに記載の浴用剤。
【請求項5】
天面及び底面の最長直径と高さとの比(最長直径/高さ)が2〜6である請求項1ないし4のいずれかに記載の浴用剤。
【請求項6】
油性成分を0.1質量%以上含有する請求項1ないし5のいずれかに記載の浴用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275257(P2010−275257A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131302(P2009−131302)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】