説明

海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具

【課題】 海水中における金属イオンの溶出作用を抑制させ、持続性を高めることができる海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具の提供。
【解決手段】 海水中で酸化することにより殺菌性を有する銅イオンを溶出する銅メッキ層2の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われ、銅メッキ層2の裏面には粘着剤層3が備えられている構成。
前記合成樹脂製多孔フィルム1の裏面に銅が蒸着メッキされることにより銅の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属が酸化する際に水中に金属イオンを溶出させて水に所定の機能を付加するようにした水処理具であって、海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属が酸化する際に水中に金属イオンを溶出させて水に所定の機能、例えば、殺菌性を付加する水処置具としては、貴なる金属を母材として劣なる金属をメッキした構造のものを水中に浸してイオン作用を促進させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−24675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来例にあっては、水中において金属イオン作用を促進させるものであったため、以下に述べるような問題があった。
【0005】
即ち、海水中で金属イオンを溶出させようとすると、塩分で金属の酸化作用が促進されるため、単体の金属であっても金属イオンの溶出量が過大になり過ぎると共に、持続性に欠けるという問題があり、ましてや、異種金属の組み合わせることによって金属イオン作用促進させる従来例は問題外である。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、海水中における金属イオンの溶出作用を抑制させ、持続性を高めることができる海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、可撓性基材シートの表面に海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する金属層が備えられ、該金属層の表面が非金属製の多孔被覆層で覆われていることを特徴とする手段とした。
【0008】
請求項2記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記可撓性基材シートの裏面には粘着剤層が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0009】
請求項3記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記金属層が前記可撓性基材シートの表面に蒸着メッキされていることにより備えられていることを特徴とする手段とした。
【0010】
請求項4記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する金属層の表面が非金属製の多孔被覆層で覆われ、前記金属層の裏面には粘着剤層が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0011】
請求項5記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記多孔被覆層が前記金属層の表面に塗布又は印刷された耐水性を有する塗料、インク、樹脂等の被覆材で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0012】
請求項6記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記多孔被覆層が多孔フィルムで構成されていることを特徴とする手段とした。
【0013】
請求項7記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項6に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において前記多孔フィルムの裏面に前記金属層が蒸着メッキされることにより前記金属層の表面が前記多孔フィルムで覆われた構成とされていることを特徴とする手段とした。
【0014】
請求項8記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記金属層が錫で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0015】
請求項9記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記金属層が亜鉛で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0016】
請求項10記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具において、前記金属層が銅で構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明請求項1〜10に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具では、上述のように、海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する錫、亜鉛又は銅等より成る金属層の表面が非金属製の多孔被覆層で覆われ、錫、亜鉛又は銅より成る金属層の裏面には可撓性基材シート又は粘着剤層が備えられている構成としたことで、可撓性基材に塗布した粘着剤又は接着剤により、或いは裏面の粘着剤層により、船底やブイ等のように海水に接する部分に貼着させた状態で使用されることにより、多孔フィルムの孔から侵入した海水の塩分で限られた範囲の錫、亜鉛又は銅より成る金属層が酸化する際に金属イオンが溶出され、この金属イオンのオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性により、船底やブイ等にフジツボ等の貝類や藻類が付着するのを防止することができるようになる。
【0018】
また、海水に接する錫、亜鉛又は銅等より成る金属層の表面が非金属製の多孔被覆層で覆われている構成とすることで、海水中における金属イオンの溶出作用を抑制させ、持続性を高めることができるようになるという効果が得られる。
また、多孔被覆層の孔の大きさ、ピッチ、数等を変えることで金属イオンの溶出量を任意に調整することができるようになる。
【0019】
請求項2、4に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具では、上述のように、可撓性基材シート又は金属層の裏面に粘着剤層が備えられることで、あらゆる箇所に簡単に貼り付けて使用することができるようになる。
【0020】
請求項3、7に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具では、上述のように、金属層を蒸着メッキで構成させるようにすることで、製造が容易でコストを低減することができるようになる。
【0021】
請求項5に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具では、上述のように、多孔被覆層が金属層の表面に塗布又は印刷された耐水性を有する塗料、インク、樹脂等の被覆材で構成されることにより、製造が容易でコストを低減することができるようになる。
【0022】
請求項6に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具では、上述のように、多孔被覆層が多孔フィルムで構成されることにより、表面の強度を高めることができるようになる。
また、特に、船底に貼付することにより、海水の抵抗を抑制する効果が得られる。
即ち、船底が平らだと海水はさまざまな方向に流れるため、抵抗の原因になるが、海水に接する多孔フィルムの表面が多数の孔で凹凸状になっているため、この凹凸により、船底に沿って流れる海水の流れが一定の方向に整い、抵抗を減らすことができるようになる。
更に、船底が平らだと、船の後ろに大きな渦ができ、これにより後方へ引っ張られるが、海水に接する多孔フィルムの表面が多数の孔で凹凸状になっているため、この凹凸により、海水を吸うところと弾くところができることで、船底の周りにできる渦が小さくなり、これにより抵抗が減ってスムーズに進むことができるようになる。
そして、単に船底に凹凸を設けただけでは、フジツボ等の貝類や藻類が付着し易くなるため、船底への実施は不可能であったが、金属イオンによる効果が付加されることで初めて実施が可能となる。
また、ブイに貼付することにより、波の抵抗を低減させる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
この発明の実施例は、請求項2、6、8、10に記載の発明に対応する。
(実施例)
図1はこの実施例の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具を示す一部切欠平面図、図2は図1のA−A線における拡大断面図であり、両図において、1は無数の孔11が形成された合成樹脂製多孔フィルム(非金属製の多孔被覆層)、2は銅メッキ層(海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する銅より成る金属層)、3は粘着剤層である。
即ち、この実施例では、前記合成樹脂製多孔フィルム1の裏面に銅が蒸着メッキされることにより銅メッキ層2の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われた構成となっている。
【0024】
この実施例では、海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する銅イオンを溶出する銅メッキ層2の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われ、銅メッキ層2の裏面には粘着剤層3が備えられている構成としたことで、裏面の粘着剤層3により、船底やブイ等のように海水に接する部分に貼着させた状態で使用されることにより、多孔フィルム1の孔11から侵入した海水の塩分で限られた範囲の銅メッキ層2が酸化する際に銅イオンが溶出され、この銅イオンのオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性により、船底やブイ等にフジツボ等の貝類や藻類が付着するのを防止することができるようになる。
【0025】
特に、船底に貼付することにより、海水の抵抗を抑制する効果が得られる。
即ち、船底が平らだと海水はさまざまな方向に流れるため、抵抗の原因になるが、海水に接する多孔フィルム1の表面が多数の孔11で凹凸状になっているため、この凹凸により、船底に沿って流れる海水の流れが一定の方向に整い、抵抗を減らすことができるようになる。
更に、船底が平らだと、船の後ろに大きな渦ができ、これにより後方へ引っ張られるが、海水に接する多孔フィルム1の表面が多数の孔11で凹凸状になっているため、この凹凸により、海水を吸うところと弾くところができることで、船底の周りにできる渦が小さくなり、これにより抵抗が減ってスムーズに進むことができるようになる。
そして、単に船底に凹凸を設けただけでは、フジツボ等の貝類や藻類が付着し易くなるため、船底への実施は不可能であったが、金属イオンによる効果が付加されることで初めて実施が可能となる。タンカーなどのバラスト部屋内に貼ることもできる。 また、ブイに貼付することにより、波の抵抗を低減させる効果が得られる。
【0026】
そして、海水に接する銅メッキ層2の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われている構成とすることで、海水中における銅イオンの溶出作用(抗菌性)を抑制させ、持続性を高めることができるようになるという効果が得られる。
また、合成樹脂製多孔フィルム1の孔11の大きさ、ピッチ、数等を変えることで銅イオンの溶出量を任意に調整することができるようになる。
【0027】
また、前記合成樹脂製多孔フィルム1の裏面に銅が蒸着メッキされることにより銅の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われた構成とすることにな
り、製造が容易でコストを低減することができるようになる。
【0028】
また、前記海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)を有する金属イオンを溶出する銅より成る金属層が銅で構成されることにより、安価にして十分なオリゴダイナミー作用(抗菌性)を得ることができる。
【0029】
以上本発明の実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0030】
例えば、実施例では、金属層として、銅(Cu)、を用いる場合を例にとったが、その他、錫(Sn)又は亜鉛(Zn)を用いることができ、また、それらの合金を用いることもできる。
また、その他に、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)等、オリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性以外の機能を有する金属イオンを溶出する全ての金属を用いた水処理具に本願の構成を応用することができる。
【0031】
また、実施例では、合成樹脂製多孔フィルム1の裏面に銅が蒸着メッキされることにより銅の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われた構成としたが、孔が形成されていない合成樹脂製フィルムの裏面に銅を蒸着メッキした後に、合成樹脂製フィルム及び銅メッキ層を貫通する無数の孔を穿孔するようにしてもよい。
また、銅板または銅箔の表面に合成樹脂製多孔フィルム1を貼り付けることで銅の表面が合成樹脂製多孔フィルム1で覆われた構成としてもよい。
【0032】
また、実施例では、多孔被覆層を合成樹脂製多孔フィルム1で構成させたが、多孔被覆層を金属層の表面に塗布又は印刷された耐水性を有する塗料、インク、樹脂等の被覆材で構成することにより、製造が容易でコストを低減することができるようになる。
【0033】
また、実施例では、粘着剤層を備えたが、これを省略し、使用する際に粘着剤や接着剤を塗布するようにしてもよい。
また、図3に示すように、合成ゴムや合成樹脂等の可撓性基材シート4の表面に海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する金属層(銅メッキ層2等)が備えられ、該金属層の表面が非金属製の多孔被覆層(多孔フィルム1等)で覆われた構成、さらには、図4に示すように、可撓性基材シート4の裏面に粘着剤層3を備えている構成としてもよい。
【0034】
また、粘着剤層3の表面に剥離紙を貼着させるようにしてもよく、また、合成樹脂製多孔フィルム1の表面を剥離紙の表面と同様にシリコン等でコーティングし、これをテープ状に形成して芯材等に巻回しておくことにより、剥離紙を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具を示す一部切欠平面図である。
【図2】図1のA−A線における拡大断面図である。
【図3】他の実施例を示す断面図である。
【図4】他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 合成樹脂製フィルム(非金属製の多孔フィルム)
11 孔
2 銅メッキ層(海水中で酸化することにより殺菌性又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する金属層)
3 粘着剤層
4 可撓性基材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基材シートの表面に海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する金属層が備えられ、
該金属層の表面が非金属製の多孔被覆層で覆われていることを特徴とする海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項2】
前記可撓性基材シートの裏面には粘着剤層が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項3】
前記金属層が前記可撓性基材シートの表面に蒸着メッキされていることにより備えられていることを特徴とする請求項1に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項4】
海水中で酸化することによりオリゴダイナミー作用(抗菌性)又は/及び殺藻性を有する金属イオンを溶出する金属層の表面が非金属製の多孔被覆層で覆われ、
前記金属層の裏面には粘着剤層が備えられていることを特徴とする海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項5】
前記多孔被覆層が前記金属層の表面に塗布又は印刷された耐水性を有する塗料、インク、樹脂等の被覆材で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項6】
前記多孔被覆層が多孔フィルムで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項7】
前記多孔フィルムの裏面に前記金属層が蒸着メッキされることにより前記金属層の表面が前記多孔フィルムで覆われた構成とされていることを特徴とする請求項6に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項8】
前記金属層が錫で構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項9】
前記金属層が亜鉛で構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。
【請求項10】
前記金属層が銅で構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の海水中における貝類又は/及び藻類の付着防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−247636(P2006−247636A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134712(P2005−134712)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(593035696)
【Fターム(参考)】