説明

海水配合モルタル

【課題】海水を使用したモルタルを用いて工事を行う必要がある場合に、十分な初期強度及び長期強度を有するモルタルを提供する。
【解決手段】セメントと、海水と、骨材と、モルタル混和剤とを構成材料とし、これらを混合させてなる海水配合モルタル。前記モルタル混和剤が、二酸化珪素:4〜6質量部、塩化マグネシウム:1〜3質量部、塩化カルシウム:10〜50質量部、酸化マグネシウム:1〜3質量部、水酸化カルシウム:1〜3質量部、酸化アルミニウム:5〜20質量部、海水:残、からなる100質量部の第1液に、濃度0.5〜5質量%のケイ酸リチウム又は硝酸リチウム水溶液である第2液を200〜1000質量部混合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントと、海水と、骨材と、モルタル混和剤とを構成材料とし、これらを混合させてなることを特徴とする海水配合モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に起因すると想定される海面上昇により、いわゆる海抜ゼロメートル地帯が将来的に水没する危険性があることについて指摘がなされている。また、このような地域では、大規模地震発生に伴う津波や台風接近時の高潮のような災害発生時において、海面上昇から沿岸領域を保護するために、緊急避難対策として早急にコンクリート打設による防潮堤を設置することが必要となる。このような事態は、例えば港湾施設や海洋油田施設等における緊急工事の際にも想定し得ることである。
【0003】
港湾施設や海洋油田施設等における緊急工事の際には、入手可能な海水、海砂を使用したモルタルを用いて工事を行う必要がある場合が想定され、このような場合においても、十分な初期強度及び長期強度を有するモルタルを提供する必要がある。この点において、特許文献1は、海水を含むコンクリートについて開示するものであり、特許文献2に記載の無機塩類を主成分とする混和剤は、微粉末状の塩類をセメントに混和して用いるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−281112号公報
【特許文献2】特開平11−43359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、海水を含むコンクリートについて開示する。しかしながら、特許文献1は海水配合型アルミナセメントコンクリートを開示するが、モルタル混和剤を必要とせず、初期強度を十分に有するモルタルを製造することができるかどうかは不明である。
【0006】
また、特許文献2に記載の無機塩類を主成分とする混和剤では、微粉末状の塩類をセメントに混和して用いるものであるが、時間の経過と共にその成分同士が反応変質してその硬度や強度等が低減し、例えば、主成分が塩化カルシウムの場合、施工後3〜6カ月後にはその防水性は殆んど失われるといわれている。また、セメント成形物や施工物に防水性を与えるために混和する従来の混和剤は、施工性には優れるものの、中、長期的な防水性の維持、機械的強度の確保等という点で不十分であるという課題がある。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたものであり、港湾施設や海洋油田施設等における緊急工事の際に、海水を使用したモルタルを用いて工事を行う必要がある場合に、十分な初期強度及び長期強度を有するモルタルを提供することを目的とする。また、極めて短時間で、モルタルの強度を高めることができるため、モルタル基材の被覆施工等に際して優れた施工性と経済性を付加することのできるモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の海水配合モルタルは、セメントと、海水と、骨材と、モルタル混和剤とを構成材料とし、これらを混合させてなることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の海水配合モルタルは、前記(1)において、前記モルタル混和剤が、
二酸化珪素:4〜6質量部、
塩化マグネシウム:1〜3質量部、
塩化カルシウム:10〜50質量部、
酸化マグネシウム:1〜3質量部、
水酸化カルシウム:1〜3質量部、
酸化アルミニウム:5〜20質量部、
海水:残、
からなる100質量部の第1液に、
濃度0.5〜5%のケイ酸リチウム又は硝酸リチウム水溶液である第2液を200〜1000質量部混合してなることを特徴とする。
【0010】
(3)本発明の海水配合モルタルは、前記(1)又は(2)において、前記第1液に、さらに、水酸化カリウム:1〜3質量部を混合してなることを特徴とする。
【0011】
(4)本発明の海水配合モルタルは、前記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記構成材料中、セメント1質量部に対して、骨材2.5〜3質量部を含むことを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の海水配合モルタルは、前記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記構成材料に、さらに鉄筋を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の海水配合モルタルは、海水、海砂を使用しても十分な初期強度を有し、かつ十分な長期強度をも併せ持つモルタルであり、港湾施設や海洋油田施設等における海上での緊急工事、災害発生時等において有用である。すなわち、地震に伴い発生する大津波や集中豪雨で発生する土石流等の災害発生時に、現場で調達可能な海水、海砂を用いて早急にモルタル構造物を建設し、例えば人災を未然に防ぐことが可能となることから、非常に有用性の高い海水配合モルタルである。また、極めて短時間で、モルタルの強度を高めることができるため、モルタル基材の被覆施工等に際して優れた施工性と経済性を付加することのできる海水配合モルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本発明の海水配合モルタルはセメントと、海水と、骨材と、モルタル混和剤とを構成材料とし、これらを混合させてなることを特徴とする。
【0016】
本発明の海水配合モルタルに使用するセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント或いは超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、等各種ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、メーソンリーセメント、白色セメント、鉄セメント、ジェットセメント、膨張セメント、コロイドセメント、エコセメント又はアルミナセメント等を用いることができる。
【0017】
海水配合モルタルに使用する海水は、一般に採取することができる海水の意味であるが、特に採取地域を限定されるものではなく、表層海水、海洋深層水等を使用することができ、港湾施設や海洋油田施設等における海上での緊急工事、災害発生時等に使用できるものであれば特段限定されるものではない。
海水の組成としては、水分96.5〜97%(%は質量%、以下の%記載において同じ)、塩分3〜3.5%であり、塩分中には、塩化ナトリウム78%、塩化マグネシウム9.6%、硫酸マグネシウム6.0%、硫酸カルシウム4.0%、塩化カリウム2.0%、その他が含まれている。
【0018】
海水配合モルタルに使用する骨材は、港湾施設や海洋油田施設等における海上での緊急工事、災害発生時等において入手可能であると想定される海砂を使用するが、これに限定されるものではなく、例えば硬質の粉体、粒子が挙げられ、建築用に使用される川砂、川砂利、山砂、山砂利等の天然骨材、砕石等の人工骨材、高炉スラグ等の副産骨材、等が挙げられる。骨材の粒径は、約0.3mm〜3mm程度のものが好ましい。
【0019】
海水配合モルタルに使用するモルタル混和材は、二酸化珪素:4〜6質量部、塩化マグネシウム:1〜3質量部、塩化カルシウム:10〜50質量部、酸化マグネシウム:1〜3質量部、水酸化カルシウム:1〜3質量部、酸化アルミニウム:5〜20質量部、残:海水からなる100質量部の第1液を作成して、この第1液に第2液となるリチウム成分等を含む水溶液を200〜1000質量部混合して得られる。このような特定組成成分を用いてモルタル混和材を製造することによって、その各成分間の反応を調整して圧縮強度等の機械的特性を維持させることができるとともに、モルタル基材面の被覆材等として適用されるモルタルの耐久性やその施工される基材表面への接着性等を良好に確保することができる。
【0020】
モルタル混和材に使用する二酸化珪素や酸化アルミニウムは、非溶解性の安定な酸化物でありモルタル混和材の主たる成分のひとつとして含有される。
第1液において、二酸化珪素が4質量部より少なくなると、モルタル施工時に必要なスラリー粘性等の調整が困難となるような傾向が生じ、逆に6質量部を超えると、硬化強度等の低下が懸念されるので好ましくない。
【0021】
また、第1液において、酸化アルミニウムが5質量部より少ないと、モルタルを硬化させる際に緻密で強固な結晶化構造に変性させることができにくくなるような傾向が生じ、逆に20質量部を超えると、硬化速度が減少する等の傾向が生じることもあるので好ましくない。
【0022】
塩化カルシウムは、吸湿性、保水性に富み水溶性の無機塩類である。その吸湿性等から凍結防止、融氷雪、霜柱防止、路層安定、モルタルやコンクリートの急結、ブライン、排水処理等の用途に使用される。塩化カルシウムは、路面に適当な湿り気を与え、ホコリの発生を防ぐため、テニスコート、グラウンド、未舗装道路の防塵効果がある。塩化カルシウムは無機成分と反応して、オキシクロライドセメントを形成する性質があり、これによって、組織を強固にする性質も有している。
塩化カルシウムの原料としては微粉のものを使用するのが好ましいが、セメント質材料と混和して溶解するものであれば特に限定することなく使用できる。第1液において、塩化カルシウムは、10〜50質量部の範囲とすることが好ましい。これは、塩化カルシウムが、10質量部未満では凝結時間促進の効果を示さず、50質量部より多くなると押出成形中等にセメントが凝結し始めてその施工性が悪くなるからである。
【0023】
酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウムの機能としては、例えば、セメント構造の緻密化、安定化に加えて、モルタル等の耐薬品性、保水性の向上、膨張収縮率の低減、接着力の向上、硬化前の流動性の向上等が挙げられ、モルタル混和剤以外にも、残土や排泥等の廃棄物処理用凝固剤等、種々の用途に使用しても優れた効果が発揮される。
【0024】
ここで、第1液において、酸化マグネシウムが1質量部より少ないと、モルタル混和材を添加した際における型枠流し込みの施工性が悪くなることがあり、逆に3質量部を超えると、モルタルの硬化強度等が劣化するような問題が生じることもあるので好ましくない。
また、塩化マグネシウムが1質量部より少ないと、混和材を添加したスラリーにおけるスラリー粘性等の調整が困難となる傾向が生じ、逆に3質量部を超えると、溶出するマグネシウムイオンが過剰になって、種々の弊害を生じることがあるので好ましくない。
【0025】
第1液において、水酸化カルシウムが1質量部より少ないと、硬化強度が低下する傾向が生じ、逆に3質量部を超えて添加しても、硬化強度は一定となってそれ以上の強度向上は望めず原料費上昇の原因になるため好ましくない。
【0026】
次に、モルタル混和材を製造する第2液について説明する。前記第1液に第2液となるリチウム成分等を含む水溶液を200〜1000質量部の割合で混合する。
第2液としてのリチウム成分等を含む水溶液としては、濃度:0.5〜5質量%のケイ酸リチウム又は硝酸リチウム水溶液を用いることができ、これにより、モルタル施工後における耐久性等をさらに高めることができる。すなわち、水溶液中のリチウム成分は、モルタルの劣化現象であるアルカリ骨材反応の抑制効果等に優れ、これによって高強度のモルタルを得るためのモルタル混和材としての機能を有している。
第2液におけるケイ酸リチウム又は硝酸リチウム水溶液の濃度が0.5質量%より少ないと、アルカリ骨材反応の抑制効果を有効に発揮させることが困難であり、逆に5質量%を超えると、他の成分と反応が顕著になる上に、原料費上昇の原因になるため好ましくない。
第2液に用いるリチウム成分等を含む水溶液としては、ケイ酸リチウム又は硝酸リチウム水溶液の他、水酸化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム等の水溶液も使用することができる。
【0027】
本発明に使用するモルタル混和材は、前記第1液に、さらに、水酸化カリウム:1〜3質量部を混合することもでき、これによって、施工時におけるモルタルの粘性等を向上させることができる。
水酸化カリウムは、カリウム塩として機能するように用いられ、硝酸カリウム、硫酸カリウム等も使用できる。また、これらの一又は二以上を組み合わせて用いることも可能である。
例えば、水酸化カリウムが1質量部より少ないと、施工時におけるスラリー粘性が悪くなりモルタル基材に被覆された被覆層を緻密に形成するのが困難となるような傾向が生じ、逆に3質量部を超えると、スラリー特性を調整する際にカリウムイオンによるマスク効果等が生じることもあるので好ましくない。
【0028】
本発明の海水配合モルタルは、前記のモルタル混和材1質量部に対し、セメント0.5〜10質量部、骨材(海砂、ケイ砂を含む)1.25〜30質量部を混合してなる。これによって、本モルタルを、例えば、生乾き(若齢)のモルタル基材面に施工されるモルタル被覆層として形成させることができ、モルタル床面施工の工期を短縮させるとともに、モルタル被覆層の強度や耐久性、モルタル基材面への接着性等をさらに高めることができる。
【0029】
通常、モルタルを打設してその床面がまだ乾かないうちに、被覆材としてのモルタル被覆層を形成すると、モルタルからしみ出てくる水分により、モルタル被覆層に膨れ(ブリスター)が発生する。しかし、本モルタル混和材を、セメントや砂に混ぜて被覆材とすることで、モルタル基材からしみ出る水分によるブリスターを防止できる。その理由は現時点で不明であるが、本発明のモルタルが、モルタル基材に含まれているアルカリ性水分と反応し、結晶化水和反応を起こしてモルタル被覆層の膨れを防止できるのではないかと考えられる。すなわち、打設したばかりのモルタルに含まれる水分は、水/セメント比で、通常55%〜57%であり、セメントの水和反応に必要な水分は25〜35%が理想とされている。そのため、セメント硬化反応に寄与しない水分がモルタル基材表面にしみ出てきて、ブリスターを形成すると考えられている。すなわち、工期短縮によるモルタルの十分な養生期間がなく、水分が飛ばないうちに表面に塗装をしたりPタイル等を貼ったりすると、モルタル基材中の過剰な水分によってブリスターが発生すると考えられる。
【0030】
従来、モルタルの養生期間として、1〜2カ月間の乾燥の必要があったが、本モルタル混和材を用いることによりその期間短縮が可能である。例えば、モルタル打設から1(モルタルの厚みが薄い場合)〜3(厚い場合)日間をおいて、モルタル基材表面が生乾き(若齢モルタル)でも、本モルタル混和材をその表面に被覆することで、モルタル基材中の水分と反応させ、十分な硬さのモルタル基材表面を得ることができる。
【0031】
本発明に使用するモルタル混和材における、その好ましい配合割合を設定するために行った各評価試験結果(実施例)について以下に説明する。ここでは、原料成分組成を下記のように設定するとともに、所定の選択された成分を第1液及び第2液とに分けて段階的に調整することによって、モルタル混和材を作成した。
また、本発明に使用するモルタル混和材をセメント製品の凝結促進剤としても機能させることができ、早期に圧縮強度を著しく増大させ、セメント2次製品の凝結時間を短縮することもできる。こうして、冬期におけるモルタル施工時の凍結防止剤としても適用できる。
なお、実施例に対する比較例としては、その成分組成が、セメント1:砂3:水0.6(質量比)の割合で配合して製造された従来の養生コンクリートブロックを採用した。
【0032】
(実施例)
二酸化珪素:5kg、塩化マグネシウム:2kg、塩化カルシウム:20kg、酸化マグネシウム:1.5kg、水酸化カルシウム:1.5kg、酸化アルミニウム:10kg、海水:100Lで第1液を作成した。これに、第2液となる濃度0.5%のケイ酸リチウム水溶液を混合して、モルタル混和剤とした。このモルタル混和材6kgに対して、セメント10kg、砂30kgを混合してモルタルとし、厚さ10cmのモルタルブロックを形成した。
【0033】
(評価結果)
(a)1週経過後のモルタルブロックの圧縮強度
実施例:39.9N/mm
比較例:18N/mm
(b)4週経過後のモルタルブロックの圧縮強度
実施例:45.8N/mm
比較例:18N/mm
本モルタル混和材を用いて作成されたモルタルブロック試験片の圧縮強度は1週経過後の初期強度で39.9N/mmであった。また、4週経過後におけるモルタルブロックの圧縮強度で45.8N/mmであった。なお、通常のモルタルを固化したもの(比較例)の圧縮強度は1週経過後の初期強度で18N/mm、また、4週経過後におけるモルタルブロックの圧縮強度でやはり18N/mmであり、本モルタル混和材によれば、時間経過とともにほぼ2倍以上の強度増加が図れることが確認できた。
【0034】
上記のような実験を、原料成分組成を変更し行うことによって、第1液及び第2液となる各成分組成を特定範囲となるように設定する。これにより、モルタル被覆層の強度等をさらに向上させることができるとともに、モルタル混和材を添加した吹き付け材や塗布材等の機械的特性を適正に維持することができる。
【0035】
本実施形態のモルタル混和材では、実験を重ねた結果、好ましい第1液の組成成分として、二酸化珪素、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化カリウム等の特定成分の組み合わせが有効であることを見出した。また、これに添加する第2液の組成成分としては、ケイ酸リチウム又は硝酸リチウムが適用される。
【0036】
このような成分組成を有して段階的に混合作成された本モルタル混和剤を、セメント及び海砂、海水とともに混練して硬化させることにより、その硬度や強度を高めて、耐久性、防水性等において顕著な効果を発揮させることができる。これは、本モルタル混和材の組成物成分が、モルタルやコンクリート内の微細な空隙を充填し、セメントとの水和反応により生じた水酸化カルシウム等と強固に結合することにより防水性や耐薬品性を獲得するためであると考えられる。
【0037】
本発明の海水配合モルタルは、前記構成材料にさらに鉄筋を加えてもよい。これにより、海水配合モルタルの初期強度、長期強度をさらに向上させることが可能になる。
【0038】
続いて、本発明に使用するモルタル混和材を用いたモルタルの施工方法について説明する。モルタル混和材(全体質量比で10〜13%)+(セメント:海砂(1質量部:2.5〜3質量部))でペースト状モルタルを作成し、これを予めコンクリート打ちをした床の表面に10〜50mm厚で塗装(コテ塗り)して、硬化緻密層を形成する。このとき、モルタルに砂利(バラス)を混合することによりコンクリートとすることにより、50〜200mm程度までの厚塗りが可能である。
【0039】
また、モルタル混和材を、セメント及び海砂との混合物に所定割合で添加して混練したものをペースト状に調整し、モルタル基材面へ塗布又は吹き付けて被覆することで、モルタル基材表面に所定厚みのモルタル被覆層を形成させることができる。こうして、モルタル混和材を、セメント及び海砂との混合物に所定割合で混ぜることによりセメント成分と硬化反応させ、緻密な硬化層とすることができる。
【0040】
本発明に使用するモルタル混和材は、例えば、ポルトランドセメント等のセメント成分と海砂とを混練して適度な粘度に調整したものを、既設のコンクリートの施工物やブロック等の成形品に塗布し、これらの表面に被膜を形成する塗布剤として用いることもできる。
また、本発明に使用するモルタル混和剤は、その組成成分のそれぞれを微粉状にした状態で予めポルトランドセメント等に混和して用いるか、又は所定量のモルタル混和材を海水に溶解し或いは直接モルタル等に投入して均一に溶解し分散させてもよい。
【0041】
なお、本発明に使用するモルタル混和材には、前記カリウム塩の他にアンモニウム塩類やマグネシウム塩類等を海水に添加して、多種多量のアルカリイオンや金属イオンを含有するスラリー状に調整することもできる。このようなスラリーは、そのイオンリッチな性質のため、コンクリートやモルタル等の土壌成分の凝結を促進、活性化するので、モルタル基材に被覆された被覆層は緻密で強固な結晶化構造に変性させることができる。
【0042】
また、従来のモルタル混和材は一括して溶解させるので、この溶解に際して発熱を伴うこと、吸湿性であって固まり易く取扱いが不便であること、モルタル中に均一に溶解し分散させるにはかなりの時間撹拌を要すること等の不具合を伴うが、本実施形態のように予め水溶剤として調整されたものを用いることで、これらの問題を事前に回避することができる。
【0043】
本発明で使用するモルタル混和材を用いる場合、前記組成の塩類を海水に溶解させる。使用にあたっては、用いるセメント成分や骨材(砂等)の種類、モルタルの施工厚等に応じて海水で薄めた上で、これを塗布剤として用いる場合にはポルトランドセメント等に混和して刷毛塗り、吹き付け塗り等の塗装方法や塗装回数、希望する被覆層の厚み等に応じて、適宜セメントの量及び希釈濃度を加減して粘度調整し施工物、成形物に塗布する。
【0044】
また、モルタル基材そのものに本発明で使用するモルタル混和材を添加して、耐久性もしくは耐薬品性、防水性のコンクリートを得る場合にも上記のように希釈した本モルタル混和材を用いることができる。この場合、セメント対骨材の比をほぼ従来通りに調整した混合物に対して本モルタル混和材を従来の水の代わりに注入した上で、適度な流動性が得られるまで練って打設すればよい。軽度の防水工事や補修工事、例えば既設の陸屋根部の漏れや池の漏水の補修程度であれば、施工表面を水洗して浄化し、本モルタル混和材にポルトランドセメント等を混合して糊状若しくは乳液程度の粘度とし、これをモルタル基材面に刷毛塗りすれば十分な防水効果が得られる。
【0045】
なお、モルタル混和材が適用されるモルタル基材の被覆層に高度の耐久性や防水性が要求される場合には、規定範囲内で成分を異ならせて形成した二重層や多重層の被覆層にすることによって、その耐久性や防水性の効果をさらに高めることもできる。このことは、耐薬品層を形成する場合も同様である。なおモルタル混和材を用いてモルタルとする場合、骨材としての砂以外に更に珪石粉やリチウム含有原料等を混合することによりその耐火性を向上させることも可能である。
【0046】
以上説明したように、本発明の海水配合モルタルは、セメントと、海水と、骨材と、モルタル混和剤とを構成材料とし、これらを混合させてなることを特徴とする海水配合モルタルであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。また、本発明で使用するモルタル混和材は、二酸化珪素、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、海水をそれぞれ所定量含むスラリー状の第1液と、リチウム成分等を含む第2液とに分けて段階的に作成して、例えば、ペースト状に調整されモルタル基材表面に被覆形成されるモルタル被覆層に強度等を付与することを要旨とするものである。本実施形態では、塩化カルシウム及び、酸化アルミニウム、二酸化珪素等がそれぞれ特定成分組成となるものについてその一例を説明したが、これらの成分組成は施工されるモルタル基材の実施条件等によって変わり得るものであり、これらの数値のものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の海水配合モルタルは、海水、海砂を使用しても十分な初期強度を有し、かつ十分な長期強度をも併せ持つモルタルであり、港湾施設や海洋油田施設等、海上での緊急工事、災害発生時等において有用である。また、極めて短時間で、モルタルの強度を高めることができるため、モルタル基材の被覆施工等に際して優れた施工性と経済性を付加することのできる海水配合モルタルを提供することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、海水と、骨材と、モルタル混和剤とを構成材料とし、これらを混合させてなることを特徴とする海水配合モルタル。
【請求項2】
前記モルタル混和剤が、
二酸化珪素:4〜6質量部、
塩化マグネシウム:1〜3質量部、
塩化カルシウム:10〜50質量部、
酸化マグネシウム:1〜3質量部、
水酸化カルシウム:1〜3質量部、
酸化アルミニウム:5〜20質量部、
海水:残、
からなる100質量部の第1液に、
濃度0.5〜5質量%のケイ酸リチウム又は硝酸リチウム水溶液である第2液を200〜1000質量部混合してなることを特徴とする請求項1に記載の海水配合モルタル。
【請求項3】
前記第1液に、さらに、水酸化カリウム:1〜3質量部を混合してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水配合モルタル。
【請求項4】
前記構成材料中、セメント1質量部に対して、骨材2.5〜3質量部を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の海水配合モルタル。
【請求項5】
前記構成材料に、さらに鉄筋を加えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の海水配合モルタル。