説明

海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法

【課題】 海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することである。
【解決手段】 開示された本発明は、流体力学的キャビテーションに基づく、海水などの船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供する。この装置は、液体の流れの方向に直角に配置され且つ均一の又は不均一の間隔で間隔で位置づけられた、さまざまな厚さの金属、セラミック、又はプラスティック材料の板の形をとった、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを収容する、円形、矩形、又は他の任意の断面形状のキャビテーション・チャンバを備えている。キャビテーション・エレメントは、鋭角な端部を有するか又は有しない、且つある通過断面開口比を有する、円形又は非円形のさまざまな断面の、単一又は複数のオリフィスを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法に関する。本発明は、詳細には、流体力学的キャビテーションに基づく、海水などの船舶バラスト水の消毒装置及び方法に関する。海水処理のための本発明の装置及び方法は、ある水域から他の水域に運ばれている船舶バラスト水を処理する船舶において、特に有用性がある。本発明の装置及び方法は、汚染水から持ち運びの出来る飲料水を作るなどの、他の用途を見い出しても良い。
【0002】
船舶が空荷または部分的に荷を積載して出港する場合、バラストタンクの中に海水を取り込んで安定性を保ち且つ浮力を調節する。ほぼあらゆる場合において、このバラスト水にはどうしても生物を含んでしまう。そしてこの船が目的地に着き荷積みの準備をする時、船はバラスト水を排出して、寄港先の水域環境に潜在的な侵入生物種を持ち込むことになる。年間およそ7万隻もの貨物船が、何十億トンものバラスト水を世界中に運んでいる。これにより、何百もの海洋侵入生物種が、元の環境とは異なる環境に持ち込まれる。この形態の環境汚染は、生態学的な不均衡をもたらし、且つ、はっきりとは確定できないが数十億ドルの範囲と見積もられる損害を引き起こす。
【0003】
この問題に取り組むために、バラスト水の処理及び管理を定める規制を多くの国が通過させている。また、国際海事機関(IMO:The International Maritime Organization)は、船舶バラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための条約を採択した。このIMO条約は、どの場所にでも放出され得るバラスト水の水質に対するガイドライン(未批准)を定めている。さまざまな選択肢が、船舶のバラスト水の処理/消毒に対して検討されているところである。本発明は、バラスト水の処理に流体力学的キャビテーションを特に用いている。
【0004】
キャビテーションとは、液体中の微細気泡の形成、成長、及び崩壊の現象である。流体力学的キャビテーションにおいては、流動液体中の圧力変動がキャビテーションを起こす。運動量平衡方程式(momentum balance equation)によれば、流体が狭窄部(constriction)を通過するとき、下流静水圧は、流体速度の増加により低下する。もし圧力が限界値より下(通常、動作温度において媒質の蒸気圧より下)に落ちれば、微小な気泡すなわち上記キャビティ(vapor cavity)が流体中に形成される。これらの微細バブルが生成され得る条件は、キャビテーションの初生(cavitation inception)と称する。流速の増加は、圧力の更なる低下およびキャビテーション強度の増加に帰着する。一般に、圧力の回復は、これらのキャビティが高圧パルスを生成して崩壊するより下流において起こる。もし、キャビティ内の気体の体積が十分に小さければ、圧力インパルス(pressure impulse)は数百バール台と極めて高くなり得、微生物細胞を破裂させてこれを破壊するに充分である。キャビティの非対称な崩壊もまた、極めて高速な液体ジェットをもたらす。このようなジェットの周囲の剪断速度は、微生物を殺すに十分である。本発明は、バラスト水を処理するための新規の装置及び方法を用いる、流体力学的キャビテーション現象を利用している。このような処理は、現在の慣行に起因する環境的に有害な影響に歯止めをかける。
【0005】
水処理装置及び方法の使用については、従来技術において周知となっている。例えば、McNultyによる米国特許第6,840,983号は、水から溶存酸素を除去するためのベンチュリ・インジェクタ(venturi injector)を用いた水処理システム及び方法を記述している。しかしながら、腐食抑制のための酸素除去により焦点を当てており、微生物の除去へは主眼を置いていない。この開示されたシステムは、所望のレベルまでバラスト水中の微生物を殺すには効果的ではない。
【0006】
米国特許第6,835,307号及びオーストラリア特許第6497400号を参照することが出来る。これらは、バラスト水に対する熱処理について説明している。この処理は、バラスト水の処理に、キャビテーションや化学物質を用いない。このシステムは、所望のレベルまでバラスト水中の微生物を殺すには効果的ではない。
【0007】
米国特許第6,773,607号を参照しても良い。ここでは、バラスト水中の外来の海産種(marine species)及び病原菌を死滅させるシステム及び方法について記述している。これらの方法は、船上に保管しておく必要のある、キル剤(killing agent)を加えることに依存している。しかしながら、化学的な消毒技術は、発癌性のおそれのある副生成物の形成のような不都合に悩まされることになる。
【0008】
同様の米国特許第6,773,611号を参照しても良い。この中では、制御システムとバラストタンク・システムを含むバラスト水処理システムについての、装置及び方法が開示されている。この方法は、バラスト水の処理のための殺生剤を加えることに同様に基づいており、そのため、望ましくない副生成物を生成し、さらに有害な化学物質を船上で生成及び保管する必要がある。
【0009】
米国特許第6,770,248号では、超音波キャビテーションに基づくバラスト水処理が開示されている。この処理は、加圧された伝播媒質の中に浸漬された圧電リングを必要とする。これらの要件に加え、この超音波キャビテーションの侵食度は小さく、またこれの能力はスケールアップに伴って劣化する。この方法は、より効果のある流体力学的キャビテーションを用いることがない。
【0010】
同様に、米国特許第6,761,123号を参照することができる。この特許は、ガス状混合物を平衡へと向かって浸み込ませることにより、船舶のバラスト水の中の水生有害生物種(ANS:aquatic nuisance species)を殺す方法を開示している。この方法は、時間がかかり、また長い期間(2〜3日)にわたって真空が必要である。このことは、船のバラスト水の処理のための有用性を厳しく制限する。
【0011】
更なる参照が、米国特許第6,516,738、同第6125778号、並びに同第20020066399A1号及び同第20030015481A1号、並びにPCT特許第W00210076号に対して可能であり、これらはオゾンを用いるバラスト水処理の方法について記述している。これらのシステムは、船上でのオゾンの生成及び保管を必要とする。これらのシステムは、キャビテーションを用いない。これらの方法では、バラスト水処理を行うと必ず化学反応が発生する。
【0012】
米国特許第6,500,345、同第2003029811号、同第20050016933号、及びPCT特許第W02004002895A2号、同第W002072478A2号、同第W00244089A2号には、紫外線、又は化学殺生剤すなわちキル剤を用いるバラスト水処理の装置及び方法を記述されている。紫外線ベースのシステムの効率は、運転の規模とともに劣化する。化学殺生剤の使用は、保管上の危険及び副生成物の形成のため望ましくない。この方法では、バラスト水処理を行うと必ず化学反応が発生する。
【0013】
欧州特許第EP1517860号及び米国特許第2004055966号は、薄膜フイルタによる水のろ過とその後の紫外線照射を含む方法を説明しているが、これには所要の生物の除去効率及びろ過速度を達成する上で一定の制限がある。
【0014】
米国特許第6,284,793号、同第2004129645号、同第2004099608号、同第2005016933A1号、及びPCT特許第W02005061388号には、化学的処理に基づく方法が記述されている。この方法では、生物は過カルボン酸、過酸化水素、イオン化ガス(ionization gases)、二酸化塩素及びシアン化物の添加により破壊される。この方法は、いくつかの有毒且つ有害な化学物質に依存している。この方法では、バラスト水処理を行うと必ず化学反応が発生する。
【0015】
米国特許第6,171,508号を参照することができるが、これは酸化及び脱酸素化に基づく船舶のバラスト水の処理のための方法及び装置を記述している。酸化及び脱酸素化のステップは、物質移動装置(mass transfer equipment)に基づいており、著しく時間及び費用がかかる。
【0016】
米国特許第5,816,181号では、加熱を用いるバラスト水処理が開示されている。この方法は、複数の熱交換器の使用に基づいている。このような熱交換器は、多大なスペースを必要とし、また加熱を用いる消毒は少々費用が掛かる。加熱処理の効果は、化学殺生剤や流体力学的キャビテーションに基づく他の消毒方法ほどには高くは無い。
【0017】
米国特許第5,192,451号は、水溶性のジアルキルジメチル四級アンモニウムポリマーを添加することにより、船のバラストタンク内のゼブラ貝を抑制する方法を開示している。しかしながら、この方法では、バラスト水処理を行うと必ず化学反応が発生し、またこの方法は流体力学的キャビテーションを使用しない。
【0018】
上述の特許に加えて、超音波及び流体力学的キャビテーションについてのいくつかの研究論文が発行されている。例えば、1997年のMoholkar及びPanditの論文、2001年のGogate及びPanditの論文及びこれの中での参考文献などである。これらの研究論文の焦点は、主にキャビテーション現象の基本的な理解の進展と、キャビテーションの新たな応用を探求することにあった。しかしながら、これらの研究のどれも、バラスト水の消毒への流体力学的キャビテーションの利用をテーマにするものではない。
【0019】
上述の既知の従来発明及び研究は、これら発明・研究の特定の目的及び要求を満たしているが、ある港湾水域から他へ運ばれるバラスト水を、化学物質、紫外線、あるいは超音波を用いることなしに消毒することを船舶に可能とさせる、バラスト水処理システム及び方法については説明していない。従って、消毒用化学物質の使用を排除又は低減できる可能性があり、且つ紫外線又は超音波に基づかない、新規の且つより効率的な消毒技術の開発に対する、明らかな必要性が存在する。
【発明の開示】
【0020】
(発明の目的)
本発明の主な目的は、これまでに知られた従来技術の欠点を未然に防ぎ、且つ、これまでに知られた従来技術の水処理装置及び方法の長所を有するのみでなく付加的な長所をも提供する、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、流体力学的キャビテーションの原理に基づき、且つ、キャビテーション・チャンバ内にあるキャビテーション・エレメントから構成され、従って、バラスト水に対するより効率的な且つより適した消毒方法を可能とする、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。これは、未処理のバラスト水が、この水が最初に得られた環境とは生態学的に異なる環境の中に放出されるときに起こり得る環境面での悪影響を抑制する、経済的に好ましく且つ効率的な態様を可能にするであろう。
【0022】
本発明の更なる他の目的は、バラスト水が好ましくは、しかし任意に、単一の又は一連のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバを通過させられ、また前後のキャビテーション・エレメント間の間隔は保持チャンバーの径の4〜100倍の範囲内に存在する、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0023】
又更なる本発明の目的は、バラスト水を、好ましくは、しかし任意に、単一の又は一連のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバを複数回循環させることによる、水処理システム及び方法を提供することにある。循環回数は、後に説明される手順に従って最適化される必要がある。これにより、水(好ましくは、しかし任意に、バラスト水)を効率的に処理することが可能になる。
【0024】
本発明の更なる目的は、好ましくは、しかし任意に、バラスト水が、単一の又は一連のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバを複数回循環させられる、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0025】
本発明の更なる目的は、好ましくは、しかし任意に、バラスト水が、キャビテーション・チャンバに供給される前に船のエンジンの排ガスを用いて余熱される、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0026】
本発明の更なる目的は、好ましくは、しかしこれに限定されるものではないが、水生生物(aquatic organism)を殺す目的のための、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0027】
本発明の更なる目的は、新規で、改善され、且つ環境に優しく、また容易且つ効率的に製造、販売される、更にまたすでに就航している船舶の中に大した修正なしに組み込むことができる、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0028】
本発明の更なる目的は、船上での最小限の設置面積で済み、材料面及び労務面で比較的製造コストが低く、従って、顧客の業界が相対的に低価格を獲得し得る、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0029】
本発明は、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供する。これを実現するために、本発明は、複数のオリフィスを有する単一の又は一連のキャビテーション・エレメントを収容するキャビテーション・チャンバを有するバラスト水処理システムを備える。このチャンバーは、バラスト水を受けるように適合した流入ポートと、処理済のバラスト水を放出するように適合した排出ポートを有する。任意に余熱された処理されるべき水は、流入ポートに入り、バラスト水を効率的に消毒する流体力学的キャビテーションが起こるキャビテーション・エレメントを備えるキャビテーション・チャンバを通過する。消毒済みのバラスト水は、次に、排出ポートを介してレセプタクルに排出される。このレセプタクルは、好ましくは、しかし任意に、バラストタンクである。このバラスト水処理方法は更に、更なる消毒を提供するためにキャビテーション・チャンバを通して上記の水を巡回させることと、同様に、レセプタクル(好ましくは、しかし任意に、バラストタンク、又は代替的に、閉タンク若しくは周囲の航路につながる水路だが、これに限定されない)から周囲の航路にこの水を放出する前に再処理することとを、含んでもよい。
【0030】
このように、この後更に詳しく説明される本発明の一般的な目的は、上述の従来技術の全ての利点を有し、且つ、従来技術によっては予期されず、明らかにされず、提案されず、暗示さえされていない(これら単独でも任意の組み合わせのいずれにおいても)バラスト水処理システム及び方法に帰着する多くの新規の特徴を有する、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供することにある。
【0031】
バラスト水は、キャビテーション・エレメントを備えるキャビテーション・チャンバを通り抜けさせられる。これは、バラスティング(ballasting)及びデバラスティング(de−ballasting)の間に実現されてもよい。好ましくは、しかし任意に、キャビテーション・エレメントを内包するキャビテーション・チャンバは、移送パイプ(これを通して、バラストタンクが水を受け入れ又は排出する)に直列に接続される。ポンプ手段(好ましくは、しかし任意に、多くの船舶に見られるようなバラストポンプ)が、外部の水の供給元から水を受け入れるように適合され、水をキャビテーション・チャンバに通してもよい。
【0032】
このシステムはまた、水をレセプタクル内に取り入れてこの水をレセプタクルから再循環パイプ手段を介して再循環させ、且つ、この水をキャビテーション・チャンバを通してレセプタクルに送り返す再循環手段を含んでもよい。この再循環手段は、任意にしかし好ましくは、処理された水の中に存在する微生物のレベルについて監視される。当然ながら、本発明の更なる特徴もあるが、これらはこの後に説明する。
【0033】
本発明の数々の目的及び利点は、当業者には、現時点で好ましい、とはいえ説明のための、本発明の実施形態の以下の詳細説明を添付の図面に関連して読めば、容易に明確になるであろう。本発明が、これの応用において、以下の記述の中で説明される又は図面の中で例示されるコンポーネントの、構成の詳細及び配置に限定されるものではない、ということが理解されるべきである。本発明は、別の実施形態も可能であり、またさまざまな方法で実施及び実行することができる。同様に、本明細書で用いられる語法及び専門用語は、説明のためであり、限定するものと見なされるべきではないということを理解されたい。
【0034】
それ故に、本発明の以下の詳細説明がよりよく理解されうるように、及び本発明の当該技術への貢献がより正しく評価されうるように、本発明のより重要な特徴を大ざっぱに概説したところである。
【0035】
本明細書において上で概説したような本発明の目的は、本発明を特徴付けるさまざまな新規の特徴とともに、本開示に付加されて本開示の一部を構成する特許請求の範囲において特殊性を伴って指し示されている。本発明、そしてこれの運用上の利点(operating advantages)、及びこれの利用によって達成される具体的な目的についてのより良い理解ために、本発明の現在の実施形態が例示されている、添付の図面及び説明内容を参照すべきである。
【0036】
本発明の海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法は、本明細書に添付した図面の図1〜6に例示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
添付図面の図1では、船舶が、ある港から他の港へ運ばれている水をバラスティング及びデバラスティングの間に処理できるようにする流体力学的キャビテーションを用いる、本発明の処理海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法の基本的なフロー図を例示している。より詳細には、キャビテーション・チャンバ(5)を用いるこのバラスト水処理システムは、取水手段(17)を有し、この取水手段(17)を通して船外から海水が入ってくる。海水はこの後、限定するものではないが、例えばバラストポンプ(18)のようなポンプ手段を介し、任意に熱交換器(4)を通ってキャビテーション・チャンバ(5)上の流入ポートの中に押し込まれる。船のエンジンからの排ガスが、キャビテーション・チャンバ(5)に入るバラスト水の温度をコントロールするために、この熱交換器で用いられる。キャビテーション・チャンバは、単一の又は複数のオリフィスを備える単一の又は一連のキャビテーション・エレメントを備えている。オリフィスの形状は、円形又は非円形のいずれであってもよく、またいずれも縁が鋭くても鋭くなくてもよい。処理されたバラスト水は、キャビテーション・チャンバ(5)から船のバラストタンク(8)へとポンプで送り出される。水質管理点検が、処理された水の水質を監視する適切な方法で、レセプタクル(8)に先立って実行され得る。必要に応じて、レセプタクル(8)の中の水又はこれの一部を、好ましくは、しかし任意に、この水質監視システムによって決定及び/又は制御されるようにバルブ(7、14)で流れを迂回させることにより、デバラスティング・ポンプ(9)の助けを借りて、キャビテーション・チャンバ(12)を通しレセプタクル(8)へと再循環させてもよい。図1の中に表わされた方法及び装置は、船すなわち任意の航海するライナー(liner)上に設置され得るということに注意されたい。
【0038】
図2は、キャビテーション・エレメント及び直列接続フランジ(inline connecting frange)の配置の詳細を伴う、キャビテーション・チャンバ(図1の項番5、12、及び図6のE)の断面を示している。円形、矩形、又は他の任意の断面形状のキャビテーション・チャンバは、流体の流れの方向に直角に配置され且つ保持チャンバーの径の4〜100倍の範囲内の一定の又は不均一の間隔で配置された、さまざまな厚さの金属、セラミック、又はプラスティック材料の板の形をとった、単一又は複数のキャビテーション・エレメント(2)を備えている。キャビテーション・エレメントは、フランジなどの適切な機械的保持装置を用いて、所定の位置に搭載及び保持される。キャビテーション・エレメント(2)は、鋭角な端部を有するか又は有しない、且つある通過断面開口比(a fraction of cross−sectional open area of the passage)を有する、円形、三角形、正方形又は長方形のような異なる断面の、単一又は複数のオリフィスを備えている。オリフィスは、それぞれの穴が500μmから数mmの範囲の径を有する、上述のように円形又は非円形のものであってもよい。これらのキャビテーション・エレメントのアセンブリは、円形又は非円形の断面を有するチャンバー内に、直列に収容されるべく取水端及び排水端上に図2に示すように適切なフランジ(1)で収容される。
【0039】
添付図面の図3には、キャビテーション・エレメントの例が描かれている。図示するように、開口面積比、オリフィス数、オリフィスの場所の分布、及びオリフィスの形状及びサイズが、キーとなる設計であり、且つ動作パラメータである。キャビテーション・チャンバは、単一又は複数のオリフィスを備える単一の又は一連のキャビテーション・エレメントを備えている。オリフィスの形状は、円形又は非円形のいずれであってもよく、またいずれも縁が鋭くても鋭くなくてもよい。
【0040】
図4では、任意の容量のバラスト水処理の目的をかなえる方法及び装置を設計するための手順のフローチャートが示されている。本発明で提案される方法は、キャビテーション崩壊に対する計算流体力学(CFD:computational fluid dynamics)ベースのモデル、及び、レーリー・プレセット方程式の問題解決法を、(i)キャビテーション・チャンバの径、(ii)キャビテーション・エレメントの数、(iii)キャビテーション・エレメント間の間隔、(iv)微細開口面積(fractional open area)及び各キャビテーション・エレメント上のオリフィスの数、径及び分布、(v)動作温度、(vi)動作流量、(vii)キャビテーション・チャンバを通しての再循環回数を同定するために(しかし、これらに限定するものではない)含んでいることが好ましい。所望の総合的な消毒有効性を確実にするために、適切な強度の適当な数のキャビテーション事象を生成するシステムを設計することが不可欠であるということに注意されたい。キャビテーション事象の数は、キャビテーション・エレメントの周に依存する。キャビテーション事象の強度は、開口面積比、言い換えればキャビテーション・エレメントを越えての圧力低下に依存する。異なる微生物には、異なる数密度と強度のキャビテーション事象が必要であろうということに注意されたい。異なるキャビテーション・エレメントは、全体システムを最適化するために直列又は並列で効果的に用いられ得る。
【0041】
所望の海水消毒装置の設計のための全体的な方法論は、図4に示されている。最適の動作パラメータを同定するために用いられる方法論には、微生物の種類を同定することと、所要のキャビテーション事象の強度/数を見積もることとが含まれる。レーリー・プレセット方程式は、キャビティ力学(cavity dynamics)をシミュレートするためと、キャビティの崩壊とこれの結果としての消毒性能とを定量化するために用いられる。キャビテーション数(C)は、流体力学的キャビテーションにおける重要なパラメータであり、これが特定のシステムにおけるキャビテーションの開始条件を決定する。これは、以下のように表わされ得る。
【数1】

【0042】
ここで、pは回復圧力(recovery pressure)、pは液体の蒸気圧、vはオリフィスにおける液体の平均速度、及びρは液体の密度(density)である。キャビテーションは、例えば気体/固体粒子の存在などのいくつかの条件下であればC>1で発生する可能性があるが、理想的な条件下では、C<1に対して発生することが好ましい。計算流体力学(CFD)ベースのモデルは、フローをシミュレートするためと、移動するキャビティの周囲の任意の下流位置における瞬間圧力場を予測するためとに用いられる。
【0043】
これらのCFDモデルは、具体的な設計/構成に対するデジタルコンピュータ上の、質量、運動量、及びエネルギーの保存方程式(conservation equation)の問題解決手法を含んでいる。図4の4番目のボックスのより詳細なフローチャートは、図7に示されており、この中では、消毒装置の設計を最適化するためのCFDを適用する手順が与えられている。CFDモデリングの最初のステップは、キャビテーション・チャンバ/エレメントの具体的な形状(geometry)をモデル化し、更なる計算のためのグリッドを生成することである。次のステップは、キャビテーション・チャンバ/エレメント内のフローを解明するための適切な支配方程式を選択することである。キャビテーションに関連するフローは、常に乱れている。乱流をシミュレートするために、いくつかの異なるモデルが開発されている(例えば、Ranade(2002年)及びこの中の参考文献参照)。本発明に関するキャビテーション・チャンバ/エレメントを通るフローをシミュレートするために、我々は標準k−εモデルを用いて乱流(turbulence)をシミュレートした。基本的な支配方程式は以下である。
【数2】

【0044】
これらの方程式を、市販のCFDソルバーであるFLUENT(米国、フルーエント社(Fluent Inc., USA))を使用して、有限体積法(finite volume method)及びSIMPLEアルゴリズム(Patankar、1972年)を用いて解いた。形状モデリングを、GAMBIT(米国、フルーエント社)と呼ばれる市販のソフトウエアを用いて行った。この計算モデルを評価し、数値解法に関連するエラーを計量した。これらの数値エラーが許容限度内に入ることが証明された後、このモデルをさまざまなキャビテーション・チャンバ/エレメント構成におけるフロー及び圧力場をシミュレートするために用いた。シミュレートされた、キャビティの軌道及びこれら軌道に沿った圧力/速度の履歴を、レーリー・プレセット方程式の次の計算のために保存した。これらのCFDモデルにより予測された変動する圧力場は、キャビティの半径の履歴(cavity radius history)と、流体とともに移動する特定のサイズのキャビティに対する崩壊圧力とを得るために、気泡動力学方程式(bubble dynamics equation)の中に組み込まれる(Pandit及びGogte(2001年)、Ranade(2002年)を参照)。一旦、所望のキャビテーション事象を生成するするためのパラメータが特定されると、CFDモデルは次に、キャビテーション・チャンバの全体的な構成を最適化するために用いられる。この方法論は、バラスト水処理に対するIMOのガイドラインを達成するために、全体システムを最適化する上で役立つ。
【0045】
添付図面の図5は、図4に描かれた方法論を用いて得られる結果の例を表わす。図5(a)は、本発明で提案される方法及び装置の一実施形態に対する予測された流れ場を示している。図5(b)は、本実施形態において生成されるかもしれないキャビティのシミュレートされた軌道を示す。図5(c)は、シミュレートされた力学及びこれにおける単一キャビティの最終的な崩壊を示す。図5(d)は、同じ単位質量当たりのパワー損失に対する、異なるキャビテーション・エレメントに関する予測された相対駆動力を示している。
【0046】
本発明は、流体力学的キャビテーションに基づく、海水などの船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供する。この装置は、液体の流れの方向に直角に配置され且つ均一の又は不均一の間隔で位置づけられ、フランジなどを用いて所定の位置に搭載且つ保持される、さまざまな厚さの金属、セラミック、又はプラスティック材料の板の形をとった、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを収容する、円形、矩形、又は他の任意の断面形状のキャビテーション・チャンバを備えている。キャビテーション・エレメントは、さまざまな長さ対幅比で、鋭角な端部を有するか又は有しない、且つある通過断面開口比を有する、円形、三角形、正方形又は長方形のような異なる断面の、単一又は複数のオリフィスを備えている。オリフィスは、それぞれの穴が500μmから数mmの範囲の径を有する、上述のように円形又は非円形のものであってもよい。
【0047】
従って、本発明は、圧力計(3)と逆止弁を介して、更に任意に熱交換器(4)を介してキャビテーション・チャンバ(5)に直列接続されたバラスト水取水源(17)とポンプ手段(18)とから構成されている取水手段(17及び18)を備え、前記キャビテーション・チャンバ(5)は、流体の流れの方向に直角に配置された単一又は複数のキャビテーション・エレメント(2)を基本的に備え、前記キャビテーション・エレメント(2)は、均一の又は不均一の間隔で離間され、またそれぞれの前記キャビテーション・エレメント(2)は単一の又は複数のオリフィスの形を取った微細開口面積を有し、前記キャビテーション・チャンバ(5)の出力は水質点検ポイント(6)及び逆止弁(7)を介してバラストタンク(8)に通され、前記バラストタンク(8)の出力は、排出ポンプ(9)に接続され且つ逆止弁を介して排出口に接続されていることを特徴とする、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供する。
【0048】
本発明の一実施形態では、キャビテーション・チャンバ(5)は、取水手段(17及び18)を有し、これを通して海水が船外から入ってくる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、ポンプ手段(18)は、例えば、しかし限定されるものではないが、バラストポンプなどの単一又は一連のポンプである。
【0050】
本発明の更なる別の実施形態では、熱交換器(4)は、標準的なエネルギー源すなわち当技術分野で既知の方法、すなわち船のエンジンからの蒸気や排ガスなどのエネルギー源に接続される。
【0051】
本発明の更なる別の実施形態では、キャビテーション・チャンバ(5)は、円形又は非円形などの断面である。
【0052】
本発明の更なる別の実施形態では、キャビテーション・チャンバ(5)は、流体の流れの方向に直角に、直列又は並列に配置され且つ均一の又は不均一の間隔で位置づけられ、フランジなどを用いて所定の位置に搭載且つ保持される、さまざまな厚さの金属、セラミック、又はプラスティック材料の板の形をとった、単一又は複数のキャビテーション・エレメント(2)を収容する。
【0053】
本発明の更なる別の実施形態では、前後のキャビテーション・エレメント間の間隔は、保持チャンバーの径の4〜100倍の範囲内にあり、均一又は不均一に離間されている。
【0054】
本発明の更なる別の実施形態では、キャビテーション・エレメントは、保持チャンバーの断面フロー面積の0.01〜0.90の範囲の開口比を有している。
【0055】
本発明の更なる別の実施形態では、単一又は複数のオリフィスの形で微細開口面積を有するキャビテーション・エレメントは、鋭角な端部を有するか又は有しない、円形又は非円形のいずれかであり、それぞれの穴は500μm〜数mmの範囲の径を有している。
【0056】
本発明の別の実施形態では、(i)キャビテーション・チャンバの径、(ii)キャビテーション・エレメントの数、(iii)キャビテーション・エレメント間の間隔、(iv)微細開口面積及び各キャビテーション・エレメント上のオリフィスの数、径及び分布、(v)動作温度、(vi)動作流量/流速、及び(vii)キャビテーション・チャンバを通しての再循環回数は、本明細書に記載したような、キャビテーション崩壊に対する計算流体力学(CFD)ベースのモデル、及び、レーリー・プレセット方程式を用いて予測及び設定される。
【0057】
本発明の更なる別の実施形態では、水質点検ポイント(6)は、処理された水の水質を監視することができる既知の装置を備えている。
【0058】
本発明の更なる別の実施形態では、もし水質点検ポイント(6)に要求された場合、処理された水又はこれの一部の再循環を可能とするために、前記排出ポンプ(9)の排出口は、圧力計(10)及び逆止弁を通して、且つ任意に熱交換器(11)を通して、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバ(12)の流入ポートへと接続され、そして水質点検ポイント(13)及び逆止弁(14、7)を通してもとの前記バラストタンク(8)へと接続される。
【0059】
従って、本発明は、取り入れた海水を、任意に予熱して、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバの流入ポートへとポンプで送り込むことにより、処理されるべきバラスト水に流体力学的キャビテーションを受けさせ、処理されたバラスト水は水質点検ポイントを通してバラストタンクに送られ、水質点検により要求される場合は、処理された水又はこれの一部は、更なる流体力学的キャビテーションのために再循環されることを備える上述の装置を用いて、海水/船舶バラスト水の消毒方法を提供する。
【0060】
本発明の一実施形態では、処理されるべきバラスト水は、10〜70℃の範囲の温度に任意に予熱される。
【0061】
本発明の別の実施形態では、キャビテーション・エレメントを通る水の流量は、流速が2〜150m/sの範囲になるようにする。
【0062】
本発明の更なる別の実施形態では、水圧は、0.5〜150kg/cmの範囲にある。
【0063】
本発明の別の実施形態においては、流体力学的キャビテーションを用いる水の消毒処理方法は、廃水管理、農業用途、プール及び宇宙用途(pool and space applications)、石油・ガス用途、並びにさまざまな消毒用途を含む(しかしこれらに限定されない)多様な水処理用途にも適している。
【0064】
本明細書に記載のバラスト水の消毒処理は、好ましくは、しかしこれに限るものではないが、船が海水を、好ましくは(しかしこれに限定されものではないが)単一の又は複数のキャビテーション・エレメントのキャビテーション・チャンバにポンプで通すときに行われる。一般的に、ポンプ手段(これは、単一の又は一連のポンプであってもよい)は、船の周りの航路から移送パイプ手段の中に海水を引き込む。ポンプで送り込まれた海水は、好ましくは、しかしこれに限定するものではないが、熱交換器に通される。この水を加熱するためのエネルギー源は、標準的なエネルギー源、すなわち、例えば蒸気又はエンジン排ガスなどの当技術分野で既知の方法であってもよい。キャビテーション・チャンバの制御は、キャビテーション・チャンバに接続された取水系手段(water intake line means)に直列に接続されている調整器を通して実施されてもよい。キャビテーション・チャンバから吐き出される処理済みの水は、レセプタクル、又は任意に複数のレセプタクル、に接続される。レセプタクルは、好ましくは、しかし任意に、バラストタンクである。
【0065】
水処理の開始及び停止は、船の取水と一致するであろう。再循環機構を、水を更に処理するために用いてもよく、また、このようなことの必要性は適切な水質点検システムにより決定されてもよい。現時点では、バクテリアを数えられるインラインの監視センサーは入手できない。しかしながら、特定の病原体の存在を検出するためのセンサーを発明する努力は、どこかで進行中である。もし、再循環機構を作動させる必要がある場合、運転停止操作は、好ましくは、しかし任意に、制御パネル手段により制御されてもよい。使用に当たって、この水処理装置及び方法は、化学的でない、効率的な水処理のために用いてもよいということが、今や理解され得る。
【0066】
本発明の水処理装置及び方法の一実施形態を詳細に説明しれたが、これの変形及び変更が可能であり、これらの全てが本発明の真の精神及び範囲の中に含まれるということが、明白のはずである。上記の説明に関して、当然のことながら、本発明の各パーツに対する最適の寸法関係に対して、以下の手順を用いてもよい。
【0067】
キャビテーション・チャンバをポンプで通される水は、流体力学的キャビテーションによって消毒される。水がキャビテーション・チャンバを通るるときはいつでも、この流れが遭遇する形状の変化に起因する圧力変動により、キャビティが生成される。生成されたキャビティは、さまざまなキャビテーション事象の段階を経て激しく崩壊し、大規模なエネルギーと極めて反応性に富む酸化種との放出をもたらす。この酸化種と、高温・高圧条件とが、微生物の消毒に関与していると考えられている。酸化種の量及び温度/圧力の高さ、従って消毒効率は、形状及び動作条件に依存する。
【0068】
寸法、材料、形状、形態、機能、及び運転態様上でのバリエーションを含む、本発明のパーツに対する最適な寸法関係は、当業者には容易に理解でき且つ明白であると考えられることと、また、図面で例示され、且つ明細書で説明された事柄に対する全ての均等関係は、本発明により包含されるということが意図されているということとに注意されたい。
【0069】
例えば、さまざまな金属、プラスティック、又は他の頑丈な材料で作られた、適切な円形の導管を、上述の移送パイプ手段及び/又は再循環パイプ手段に用いてもよい。また、好ましくは(しかし任意に)船上にある、流体力学的キャビテーションを用いる水の消毒処理方法を説明したが、ここで説明した水処理方法及び装置は、廃水管理、農業用途、プール及び宇宙用途、石油・ガス用途、並びにさまざまな消毒用途を含む(しかしこれらに限定されない)多種多様な水処理用途にも適する可能性がある、ということを理解されたい。加えて、多様な形状及び寸法の多種多様な船倉(hold)すなわちタンク、そしてむき出しの水の塊でさえ、同様に、上述の基本的なレセプタクルすなわちバラストタンクの代わりに用いてもよい。その上、この方法、構成、寸法、形状、並びに圧力・容積要件は、多様な形状及びサイズを有する多種多様な船舶に適合するように構成されてもよいし、また説明されるクローズド再循環システム及び方法は、1つのレセプタクルから他のレセプタクルへ移動可能にしてもよい。本発明は同様に、多種多様なポンプ、レセプタクル、キャビテーション・エレメントすなわちキャビテーション源、圧力バルブ、及び本発明により必要であるが既に船舶又は他の処理場所に存在している他のコンポーネントとともに用いるために適合されてもよい。
【0070】
本発明の新規の装置及び方法は、バラストタンクに格納されたバラスト水の中に含まれる有害生物の殺菌消毒を可能にし、バラスト水の処理を効果的に提供する。上記は、本発明の原理についての例示としてのみ見なされる。更に、当業者には数多くの改良や変更が容易に思い浮かぶであろうことから、示され且つ説明された正確な構成及び動作に本発明を限定することは意図しておらず、従って、全ての適切な改良及び均等物は、本発明の範囲に該当しているものとして復元(restore)できる。
【0071】
本発明の新規性は、如何なる化学物質も如何なる化学反応をも用いることなしに、単に、生物がはびこっている水を、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを収容する単一又は複数のキャビテーション・チャンバに通すことにより、海水/船舶バラスト水を効率的且つ経済的に消毒するための、流体力学的キャビテーションの原理に基づく、比較的低コストで環境に優しい消毒装置及び方法を提供する能力に存在する。
【0072】
均一の又は不均一の間隔で離間され、またそれぞれは、単一の又は複数のオリフィスの形を取った、円形又は非円形の、鋭い端部を伴う又は伴わない、微細開口面積を有する単一又は複数のキャビテーション・エレメントを収容する単一又は複数のキャビテーション・チャンバを提供するという、非自明な進歩性は、本発明の装置の新規性を実現することを可能としている。更に、処理されるべき水を流体力学的キャビテーションにさらすという非自明な進歩性は、海水/船舶バラスト水の消毒を行うための本発明の方法の新規性を実現することを可能とする。
【0073】
(実施例)
本発明の海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法の性能特性を実証するために、実験用の構成を図6に示すように構築した。海からの未処理のチャレンジ水(challenge water)を、7.5馬力の渦巻きポンプ(centrifugal pump)(B)を介してキャビテーション・チャンバ(E)に入れる。キャビテーション・チャンバ(E)にこれを押し通す前に、海水を先ず、研究室内で育成された植物性プランクトン及び動物性プランクトン培養物で植菌(inoculate)することができる、ショア・タンク(A)の中に集める。タンク(A)内の水を、完全に混合し、微生物を含む生物の濃度について評価する。混合された生物とともにこの水を、1〜21.5mmの範囲の径と0.2〜0.9の範囲の微細開口面積の、単一又は複数の穴を有する、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを備えるキャビテーション・チャンバ(E)の注入口に強制的に通す。キャビテーション・チャンバ(E)内のフローを、流量調整弁(C)を用いて制御する。圧力計(D)を、キャビテーション・チャンバ(E)より前に取り付け、異なるオリフィスに対する流体のキャビテーション圧力の記録用である。キャビテーション・チャンバ(E)の排出口からの処理後の水を、回収タンク(F)に集められ、生物の破壊レベルを評価する。
【0074】
生物の破壊レベルの評価は、以下の手順のように実行する。
【0075】
自由生活性の一般細菌に関しての生物カウントを、スプレッドプレート法を用いて、取り入れ水及び排出水において評価する。連続希釈後の一定分量の水サンプル(0.1ml)を、ゾーベルの海用寒天(Zobell marine agar)上にプレート(plate)し、常温で24時間培養する。この後、コロニーを計数し、ml当たりの数として表す。排出水(キャビテーション後)内のバクテリア数を、取り入れ水(キャビテーション前)と比較し、バクテリア数の減少百分率を以下の式を用いて計算する。
【0076】
減少百分率={(I−D)×100}/I
ここで、I=取り入れ水(キャビテーション前)の中の細胞数
D=排出水(キャビテーション後)の中の細胞数
動物性プランクトンに関連する一般細菌に関する生物の計数を、スプレッドプレート法を用いて、取り入れ水及び排出水において評価する。動物性プランクトン細胞を、既知の量の取り入れ水(キャビテーション前)及び排出水(キャビテーション後)を、50μメッシュのふるい絹(bolting silk)で作られたたこし器を通すことにより集め、既知の量のろ過された海水の中に保留する。動物性プランクトン細胞をこの後均質化し(homoginised)、連続希釈後の一定分量のこのホモジネート(0.1ml)を、ゾーベルの海用寒天上にプレートし、常温で24時間培養する。この後、コロニーを計数し、ミリリッター当たりの数として表す。排出水(キャビテーション後)内のバクテリア数を、取り入れ水(キャビテーション前)と比較し、バクテリア数の減少百分率を上記のように計算する。
【0077】
10μよりも大きい細胞サイズの植物性プランクトンに関する生物カウントを、取り入れ水(前キャビテーション状態)及び排出水(後キャビテーション状態)において評価する。この目的のために、既知量の取り入れ水及び排出水を、10μメッシュのふるい絹で作られたたこし器でろ過する。10μメッシュのふるい絹上に残った植物性プランクトン細胞を、この後直ちに既知の量のろ過された海水の中に移す。完全に混ぜた後に、既知量の副サンプルを採取し、紫外線の光の下で赤いクロロフィル蛍光に着色された細胞のみを倒立型エピ蛍光顕微鏡を用いて計数し、ミリリッター当たりの数として表す。排出水中の植物性プランクトン数を、取り入れ水と比較し、数の減少百分率を上記のように計算する。
【0078】
50μよりも大きいサイズの動物性プランクトンに関する生物カウントを、取り入れ水(前キャビテーション状態)及び排出水(後キャビテーション状態)の中で評価する。この目的のために、既知量の取り入れ水及び排出水を、50μメッシュのふるい絹で作られたたこし器でろ過する。こし器上に残った動物性プランクトン細胞を、この後直ちに既知量のろ過された海水の中に移す。完全に混ぜた後に、既知量の副サンプルを採取し、生きている動物性プランクトン(移動性を伴う)のみを、単対物双眼顕微鏡を用いて計数し、立方メーター当たりの数として表す。排出水中の動物性プランクトン数を、取り入れ水と比較し、数の減少百分率を上記のように計算する。
【0079】
以下の例が、実際に実行される本発明の海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法の例として提供されており、従って、これは如何なる方法によっても本発明の範囲を限定するものとはみなされるべきではない。
【0080】
実施例1
非円形の鋭い先端をもつ単一の穴を有する寸法21.5mmのオリフィス板(穴を板の中にドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント1を通る流れとし、開口割合=0.9、キャビテーション・エレメントを通る流体速度7.7m/sに対応して流量=2.8lps、圧力=3kg/cmとした。海水を、生物相(biota)とともに、一度オリフィスに通した。以下の表に示された破壊百分率は、取り入れ水を基準としてのものである。
【表1】

【0081】
実施例2
非円形の鋭い先端をもつ単一の穴を有する寸法21.5mmのオリフィス板(穴を板の中にドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント2を通る流れとし、開口割合=0.5、キャビテーション・エレメントを通る流体速度10.5m/sに対応して流量=1.9lps、圧力=3.8kg/cmとした。海水を、生物相とともに、一度オリフィスに通した。以下の表に示された破壊百分率は、取り入れ水を基準としてのものである。
【表2】

【0082】
実施例3
非円形の鋭い先端の単一の穴を有する寸法21.5mmのオリフィス板(穴を板の中にドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント3を通る流れとし、開口割合=0.25、キャビテーション・エレメントを通る流体速度11m/sに対応して流量=1.0lps、圧力=3.8kg/cmとした。海水を、生物相とともに、一度オリフィスに通した。以下の表に示された破壊百分率は、取り入れ水を基準としてのものである。
【表3】

【0083】
実施例4
直径2mmの円形の穴を持ち、複数の穴を有する寸法21.5mmの鋭い先端のオリフィス板(穴を板の中にドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント4を通る流れとし、開口割合=0.25、キャビテーション・エレメントを通る流体速度8.8m/sに対応して流量=0.8lps、圧力=3.8kg/cmとした。海水を、生物相とともに、一度オリフィスに通した。以下の表に示された破壊百分率は、取り入れ水を基準としてのものである。
【表4】

【0084】
実施例5
直径2mmの円形の穴を持ち、複数の穴を有する寸法21.5mmの鋭い先端のオリフィス板(穴を板の中にドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント5を通る流れとし、開口割合=0.5、キャビテーション・エレメントを通る流体速度9.4m/sに対応して流量=1.7lps、圧力=3.3kg/cmとした。海水を、生物相とともに、一度オリフィスに通した。以下の表に示された破壊百分率は、取り入れ水を基準としてのものである。
【表5】

【0085】
実施例6
直径2mmの円形の穴を持ち、複数の穴を有する寸法21.6mmの鋭い先端のオリフィス板(穴をドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント6を通る流れとし、開口割合=0.75、キャビテーション・エレメントを通る流体速度4.8m/sに対応して流量=1.3lps、圧力=3.2kg/cmとした。海水を、生物相とともに、一度オリフィスに通した。以下の表に示された破壊百分率は、取り入れ水を基準としてのものである。
【表6】

【0086】
実施例7
直径1mmの円形の穴を持ち、複数の穴を有する寸法21.5mmの鋭い先端のオリフィス板(穴をドリルで開けた後、穴の先端を面取り、又は平滑化又は研磨しなかった)を有するキャビテーション・エレメント7を通る流れとし、開口割合=0.25とした。海水は、生物相とともに、さまざまなフロー条件で、オリフィスを通過した。結果は、以下の表に示す。
【表7】

【0087】
実施例8
図4に描かれた方法論を例示するために、キャビテーション・チャンバを通るフローの計算流体力学(CFD)モデリング例をここで提供する。この例は、添付図面の図4に示すような提案された方法論の中で表わされるいくつかのステップを構成している。この実験のために、直径2mmの8つの穴を有する32mmのサイズのキャビテーション・エレメントを通るフローが検討された。円形、三角形、正方形及び長方形の穴(添付図の図3に示すように)を伴う、いくつかの異なるキャビテーション・エレメントが検討された。予測された結果の例は、添付図面の図5(a)に示すようなものである。CFDモデルの結果を用いて、図5(b)に示すように、生成されるキャビティの軌道をシミュレートした。これらのキャビティ軌跡に沿っての圧力の履歴データを使用して、図5(c)に示すように、キャビティ崩壊温度及びキャビティ崩壊圧力を計算した。キャビティ半径の履歴及び最終的崩壊圧力パルスは、移動するキャビティの軌道(CFDシミュレーションにより予測された)と、RP方程式の中のP無限大(P infinity)を代入することにより生成される圧力プロファイルとに基づいて、このキャビティが経験する圧力の変化を代入した後で、RP方程式を解くことにより見積もりされる。この計算モデルを、次に、キャビティを生成するするための異なるキャビテーション・エレメントの、効果及び効率を評価するために用いた。結果の例は、添付図面の図5(d)に示されている。
【0088】
上述の例示的な例の中で提供されたさまざまな動作条件下で得られた生物学的計数の結果より、生物がかなり破壊されているということが明らかである。この観測された破壊は、いかなる化学物質又は熱処理、又は紫外線の利用、又は超音波処理も必要とすることなしに行われた。消毒性能は、上で論じられ且つ添付図面の図4に例示された最適化方法論を用いることにより、著しく強化され得る。このような方法論を用いることにより、バラスト水消毒装置は、特定の微生物の破壊にも合わせられ得る。現在当技術分野で知られている、上述の特許及び他の水処理システム及び方法は、本発明の中にあるような、消毒装置が、基本的に、均一の又は不均一の間隔で離間された単一又は複数のキャビテーション・エレメントを組み込んだ、キャビテーション・チャンバーであり、またそれぞれの前記キャビテーション・エレメントは、単一の又は複数のオリフィスの形を取った、円形又は非円形の、鋭い端部を伴う又は伴わない、微細開口面積を有する、流体力学的キャビテーションを用いるバラスト水の消毒/処理については、想定していない。
【0089】
従来技術おいて現在存在する既知のタイプのバラスト水処理システム及び方法に固有の前述の不都合を考慮して、本発明は、バラスト水の消毒を容易にし、従来技術において指摘された不都合や欠点を克服するための、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバをバラスト水に通過させる、流体力学的キャビテーションを用いるバラスト水処理装置及び方法を提供する。更に、本発明は、上述の従来技術の全ての利点を有し、且つ、従来技術によっては予期されず、明らかにされず、提案されず、暗示さえされていない(これら単独でも任意の組み合わせのいずれにおいても)バラスト水処理システム及び方法に帰着する多くの新規の特徴を有する、海水/船舶バラスト水の消毒装置及び方法を提供する。
【0090】
本発明の主な利点は、
1.海水/船舶バラスト水の消毒が、単に、生物がはびこっている水を、取水管又は排出管に直列に配置された単一又は複数のキャビテーション・チャンバに通すことにより実現される。
【0091】
2.如何なる化学物質又は化学反応の利用をも伴わない。
【0092】
3.単純で、環境に優しく、且つわずかの修正で任意の船舶の既存の取水/排水システムに取り付け可能である。
【0093】
4.船舶のタイプ及びこれのバラスティング及びデバラスティングシステムにもよるが、追加のスペースを全く必要としないか、あるいは最小限の追加スペースしか必要ない。
【0094】
5.化学的方法とは違って船の乗組員の健康へのリスクをもたらさず、また運用のための特別なスキルや追加の労力を必要としない。
【0095】
6.未処理のバラスト水が、この水が最初に得られた環境とは生態学的に異なる環境の中に放出されるときに起こり得る環境面での悪影響を抑制するための、効率的な且つ経済的なバラスト水の消毒を可能とする。
【0096】
7.効率的に海洋生物を殺すことにより、バラスト水を消毒する。
【0097】
8.材料面及び労務面で比較的製造コストが低く、従って、一般消費者及び業界に対して相対的な低販売価格を可能にする。
【0098】
9.本装置及び方法は、所望の効率を実現するために、任意の他の処理システムと連動して用いることができる。
【0099】
従って、本発明が基礎としている概念は、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための原理として容易に利用され得るということを、当業者は理解するであろう。従って、特許請求の範囲は、本発明の精神及び範囲から離れない限りにおいて、このような均等構造を含むものと見なされるということが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本明細書に添付した図面の図1は、本発明の原理に従って構成されたバラスト水処理システム及び方法の現在の実施形態の処理フロー図を表している。
【図2】図2は、本発明の主要コンポーネントを形成し、船舶の中に設置することができるバラスト水処理方法及び装置の一実施形態である、キャビテーション・チャンバの断面を示す図である。
【図3】図3は、本発明に含まれる海水/船舶バラスト水の消毒処理方法及び装置についての、本発明で提案されるキャビテーション・エレメントの例を示す。
【図4】図4は、海水/船舶バラスト水の消毒処理方法及び装置を設計し且つ最適化するために用いる方法論のフローチャートを示す。図4の4番目のボックスのより詳細なフローチャートは、図7に示されており、この中では、消毒装置の設計を最適化するためのCFDを適用する方法論が与えられている。
【図5(a)】添付図面の図5は、図4に描かれた方法論を用いて得られる結果の例を表わす。図5は、本発明の一実施形態の消毒性能に与える、微細開口面積、水力直径(hydraulic diameter)、及び動作圧の影響を表している。
【図5(b)】添付図面の図5は、図4に描かれた方法論を用いて得られる結果の例を表わす。図5は、本発明の一実施形態の消毒性能に与える、微細開口面積、水力直径(hydraulic diameter)、及び動作圧の影響を表している。
【図5(c)】添付図面の図5は、図4に描かれた方法論を用いて得られる結果の例を表わす。図5は、本発明の一実施形態の消毒性能に与える、微細開口面積、水力直径(hydraulic diameter)、及び動作圧の影響を表している。
【図5(d)】添付図面の図5は、図4に描かれた方法論を用いて得られる結果の例を表わす。図5は、本発明の一実施形態の消毒性能に与える、微細開口面積、水力直径(hydraulic diameter)、及び動作圧の影響を表している。
【図6】図6は、本発明で提案される発明された海水の消毒方法及び装置を検証するために用いられた、実験的システムの概要図を示す。
【図7】なし
【符号の説明】
【0101】
17 バラスト水取水源
18 取水ポンプ
3、10 圧力計
4、11 熱交換器
5、12 キャビテーション・チャンバ
6、13 水質管理点検
7、14 2/3方フロー切り替えバルブ(2/3 way flow diversion valve)
8 バラストタンク
9 排出ポンプ
16 熱源
1 フランジ
2 キャビテーション・エレメント
A チャレンジ水タンク(challenge water tank)
B ポンプ
C 流量調整弁
D 圧力計
E キャビテーション・チャンバ
F 回収タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力計(3)と逆止弁とを介して、更に任意に熱交換器(4)を介してキャビテーション・チャンバ(5)に直列接続されたバラスト水取水源(17)とポンプ手段(18)とから構成されている取水手段(17及び18)を備える海水/船舶バラスト水を消毒する装置であって、
前記キャビテーション・チャンバ(5)は、流体の流れの方向に直角に配置された単一又は複数のキャビテーション・エレメント(2)を基本的に備え、
前記キャビテーション・エレメント(2)は、均一の又は不均一の間隔で離間され、および、それぞれの前記キャビテーション・エレメント(2)は単一の又は複数のオリフィスの形を取った微細開口面積を有し、
前記キャビテーション・チャンバ(5)の出力は、水質点検ポイント(6)及び逆止弁(7)を介してバラストタンク(8)に通され、
前記バラストタンク(8)の出力は、排出ポンプ(9)に接続され且つ逆止弁を介して排出口に接続されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記キャビテーション・チャンバ(5)は、取水手段(17及び18)を有し、これを通して海水が船外から入ってくる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプ手段(18)は、限定されるものではないが、例えばバラストポンプなどの単一又は一連のポンプである、請求項1〜2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記熱交換器(4)は、標準的なエネルギー源すなわち当技術分野で既知の方法、すなわち船のエンジンからの蒸気又は排ガスなどのエネルギー源に接続される、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記キャビテーション・チャンバ(5)は、円形又は非円形などの断面である、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記キャビテーション・チャンバ(5)は、液体の流れの方向に直角に、直列又は並列に配置され且つ均一の又は不均一の間隔で位置づけられ、フランジなどを用いて所定の位置に搭載且つ保持される、さまざまな厚さの金属、セラミック、又はプラスティック材料の板の形をとった、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを収容している、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前後のキャビテーション・エレメント間の間隔は、保持チャンバーの径の4〜100倍の範囲内にあり、均一又は不均一に離間されている、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記キャビテーション・エレメントは、保持チャンバーの断面フロー面積の0.01〜0.90の範囲の開口比を有している、請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
単一又は複数のオリフィスの形で微細開口面積を有する前記キャビテーション・エレメントは、鋭角な端部を有するか又は有しない、円形又は非円形のいずれかであり、それぞれの穴は500μm〜数mmの範囲の径を有している、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
(i)キャビテーション・チャンバの径、(ii)キャビテーション・エレメントの数、(iii)キャビテーション・エレメント間の間隔、(iv)微細開口面積及び各キャビテーション・エレメント上のオリフィスの数、径及び分布、(v)動作温度、(vi)動作流量/流速、及び(vii)キャビテーション・チャンバを通しての再循環回数は、この中で説明されるような、キャビテーション崩壊に対する計算流体力学(CFD)ベースのモデル、及び、レーリー・プレセット方程式を用いて予測及び設定される、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記水質点検ポイント(6)は、処理された水の水質を監視することができる既知の装置を備えている、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
もし前記水質点検ポイント(6)に要求された場合、処理された水又はこれの一部の再循環を可能とするために、前記排出ポンプ(9)の排出口は、圧力計(10)と逆止弁とを通して、且つ任意に熱交換器(11)を通して、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバ(12)の流入ポートへと接続され、そして水質点検ポイント(13)及び逆止弁(14、7)を通してもとの前記バラストタンク(8)へと接続される、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載された前記装置を用いて海水/船舶バラスト水を消毒する方法であって、
取り入れた海水を、任意に予熱して、単一又は複数のキャビテーション・エレメントを有するキャビテーション・チャンバの流入ポートへとポンプで送り込むことにより、処理されるべきバラスト水に流体力学的キャビテーションを受けさせ、
処理された水は水質点検ポイントを通してバラストタンクへと流され、
前記処理されたバラスト水又はこれの一部は、もし前記水質点検ポイントにより要求された場合は、更なる流体力学的キャビテーションのために再循環される、方法。
【請求項14】
前記処理されるべきバラスト水は、10〜70℃の範囲の温度に任意に予熱される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記キャビテーション・エレメントを通る水の流量は、流速が2〜150m/sの範囲になるようにする、請求項13〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
水圧は、0.5〜150kg/cmの範囲である、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記流体力学的キャビテーションを用いる水の消毒処理方法は、廃水管理、農業用途、プール及び宇宙用途、石油・ガス用途、並びにさまざまな消毒用途を含む(しかしこれらに限定されない)多様な水処理用途にも適している、請求項13〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
本明細書に付随する実施例及び図面を参照してこの中で実質的に記載される、海水/船舶バラスト水の消毒を行う装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5(a)】
image rotate

【図5(b)】
image rotate

【図5(c)】
image rotate

【図5(d)】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−514664(P2009−514664A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538499(P2008−538499)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000444
【国際公開番号】WO2007/054956
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【出願人】(508131222)ムンバイ・ユニバーシティー・インスティトゥート・オブ・ケミカル・テクノロジー (1)
【出願人】(308040258)
【出願人】(308040270)
【出願人】(308040281)
【出願人】(308040292)
【出願人】(308040306)
【Fターム(参考)】