説明

海洋由来のBacillusbarbaricusSCSIO02429及びこれを用いたイカオリゴペプチドの調製方法

本発明は海洋由来のBacillus barbaricus SCSIO 02429 CCTCC NO:M 2010213に関する。また、本発明はイカオリゴペプチドの調製方法に関し、その特徴はBacillus barbaricus SCSIO 02429を酵素生産発酵誘導培地に加えて発酵させ、加水分解用粗酵素溶液を得た上で、イカ内臓をスラリー状に破砕して粗酵素溶液に加え、酵素分解を行ってグリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物を得て、さらにブロメラインを加えて酵素分解を進め、得られた酵素分解物を静置して油層と水層に分離させ、油層を除去して乾燥させてイカオリゴペプチドを得る。本発明のイカオリゴペプチドの収率は40〜46%、アミノ酸の収率は16〜22%に達する。このイカオリゴペプチドには海洋養殖動物の種苗死亡率を下げ、体重増加率を高める作用があり、飼料中の魚粉など従来のタンパク質源に代わることができるため、海洋養殖配合飼料の機能性タンパク源、添加物などとして使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バシラス(Bacillus)属菌に関し、具体的には、海洋由来のバシラス属菌Bacillus barbaricus SCSIO 02429菌株及びこの菌株を利用したイカオリゴペプチドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の海洋漁業の迅速な発展に伴い、イカの年間生産量は30万トン前後に達し、我が国の重要な水産加工原料の一つになっている。イカの加工処理過程において、15%程度の内臓廃棄物が生じ、これら廃棄物にはタンパク質が豊富に含まれているが、極めて腐乱・変質しやすいため、貯蔵が難しい。通常の処理方法ではイカ油を抽出し終わった廃棄物を埋めるが、近頃はイカ内臓に一次加工を行ってイカのスラリーを作製し、魚類の飼料に直接用いるという報告もある。しかし、こうした高度加工を経ていない飼料は生物学的利用能が高くない上、水環境を汚染し、養殖動物の病害流行の機会が増えることになる。このため、イカ内臓の開発利用を進めることは、経済的及び環境保護的に見て重要な意義がある。イカ内臓の酵素分解方法の研究も広い注目を浴びており、バイオ酵素技術を用いて、イカの粗タンパク質を、水産動物に吸収されやすく、一定の生理機能を持つオリゴペプチド類のタンパク質源に分解するのは、一つの効果的な方法であり、かつその研究もいくつか行われている。例えば薛長湖、劉春娥らによる、酵素の種類、用量、反応温度、反応時間などの要素がイカ内臓の粗タンパク質転換率に及ぼす影響についての研究(特許文献1)、袁亜輝らによる、イカ内臓の酵素分解を利用した海の旨み成分の生産、張井らによる、イカ内臓の酵素分解液中の重金属除去方法についての研究などである。
【0003】
すでに報告されているイカ内臓の酵素分解方法において、使用酵素の種類には、トリプシン、ペプシン、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、パパイン、ブロメライン及びこれら酵素の混合物がある。しかし現段階のイカ内臓の加水分解方法にはまだ、粗タンパク質の加水分解率が低い、酵素分解生成物の残留粗タンパク質が海洋養殖動物に吸収・利用されにくいといった問題がある。また反応温度の向上、反応時間の延長、触媒使用量の増加などの手段により粗タンパク質の加水分解度を高めると、今度は分解が進み過ぎる現象が起こり、目標とするオリゴペプチドの収率が大幅に下がる。例えば、イカ内臓の加水分解によるアミノ酸の収率が70%を超えるが、オリゴペプチドの収率は却って非常に低くなるという文献報告がある。粗タンパク質の加水分解効率を高めると同時に、目標とするオリゴペプチドの収率を保証できれば、イカ内臓の利用水準は大きく向上する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】劉春娥、林洪、曹立民、単俊偉、「イカ内臓タンパク質の酵素加水分解技術の研究」、(中国)、食品工業科技、2004年、第25巻、第9号、p.83−85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、海洋中から新しいバシラス属菌を開発することにあり、もう一つの目的は、このバシラス属菌を利用してイカ内臓を酵素分解し、粗タンパク質の加水分解率が高くオリゴペプチドの収率が高い、イカオリゴペプチドの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
我々は中国南海(南シナ海)の深海堆積物からBacillus barbaricus SCSIO 02429を分離し、Bacillus barbaricus SCSIO 02429による発酵で得られた粗酵素溶液で、内臓タンパク質中のペプチド鎖につながったグリコサミノグリカン(GAG)側鎖を破壊し、さらにブロメラインを加えてタンパク質ペプチド鎖の加水分解を触媒した。得られたイカオリゴペプチドの収率は40%〜46%、アミノ酸の収率は16%〜22%で、これにより本発明の目的を実現した。
【0007】
Bacillus barbaricus SCSIO 02429は2010年8月31日に中国典型培養物保蔵センター(China Center for Type Culture Collection、略称CCTCC)に保管されており、所在地は武漢市武昌珞珈山、保管番号はCCTCC NO:M 2010213である。
【0008】
上記のBacillus barbaricus SCSIO 02429は2009年に採取された南シナ海の深海堆積環境(経度:119°57.260′、緯度:20°59.877′、水深229m)から分離されたものである。細菌培地を用いて平板希釈法により分離し、画線法で単離した。16S rRNA塩基配列の相似解析により、Bacillus barbaricusと99%(722/728bp)の相似度があることがわかり、Bacillus barbaricus種の菌株の一つSCSIO 02429と鑑別された。この菌株はISP2培地(蒸留水1リットル当たり酵母エキス4.0g、麦汁10.0g、ブドウ糖4.0g、寒天20.0gを加える、pH 7.0)において28〜37℃で良好に生育する。
【0009】
「一般細菌鑑別マニュアル」及び「バージィズ鑑別細菌学マニュアル」の基準、方法、種の分類特徴に従い、被験菌株に細菌の形態観察、生理・生化学テストなどの試験を行った。この菌株はPYES培地(0.3%カゼインペプトン、0.3%酵母エキス、0.23%コハク酸二ナトリウム、pH7.2)においても同じく良好に生育し、褐色、不透明、平坦な円形コロニーで、最大コロニー径は5mmである。コロニーは生育初期には完全な境界を有するが、それに続く生育過程において境界は徐々に消失する。細胞は桿状を示し、芽胞は楕円形で、細胞はグラム陽性である。PYES培地において、28〜37℃ではいずれも良好に生育し、3週間培養した後は、4〜47℃で明らかな生育が観察できる。この菌は2%及び5%塩化ナトリウムを含むPYES培地において生育でき、3週間培養した後、12%NaClを含むPYES培地培地で生育が観察できる。菌株はpH6.0で生育を観察でき、pH7.0、8.0、9.5では迅速に生育できるため、この菌には耐アルカリ性があることがわかる。SCSIO 02429株菌の生理・生化学テストの結果は表1の通りで、表中の「+」は陽性又は利用できる、「−」は陰性又は利用できないことを示す。
【0010】
【表1】

【0011】
SCSIO 02429 株菌と、最も近い菌株Bacillus barbaricus V2−BIII−A2(参考文献:Taubel M.,Kampfer P,Buczolits S,Lubitz W,Busse H−J R. Bacillus barbaricus sp. nov.,isolated from an experimental wall painting. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,2003年,第53巻、p.725−730。この菌の16S rDNA配列のGenBank/EMBL/DDBJにおける登録番号はAJ422145である)とは、生理学的特性において大部分が一致するが、D−リボース、クエン酸塩、スクロースの利用、最高耐容塩分濃度が5%という特徴において異なる。このため、SCSIO 02429はBacillus barbaricusの菌株の一つと鑑別され、Bacillus barbaricusには現在まだ中国語の訳語はない。
【0012】
本発明のイカオリゴペプチドの調製方法は、以下の手順を含むことを特徴とする。
(1)Bacillus barbaricus SCSIO 02429菌種を菌種活性化培地に接種し、30〜37℃で18〜24時間培養し、活性化後、酵素生産誘導発酵培地を入れた容器に加え、pH=7.0〜8.0、30〜37℃の条件で12〜24時間発酵させ、発酵液のプロテアーゼ活性が2000〜3000ユニット/mLに達し、グリコサミノグリカナーゼ活性が0.95〜1.12ユニット/mLに達したときのグリコシル加水分解用粗酵素溶液を得る工程であって、前記酵素生産誘導発酵培地は、イカ内臓スラリー、ペプトン、酵母エキス、複合塩及び水を質量比20〜30:5:5:10:1000で混合加熱し溶かして作成したものであり、前記複合塩は、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、塩化マグネシウム及び塩化アンモニウムを質量比5〜8:2:2:3で混合したものである工程、
(2)イカ内臓原料をスラリー状に破砕後、手順(1)に記載した粗酵素溶液と体積比1:1〜2:1で混ぜて酵素分解を行い、反応開始時のpHは6.5〜7.0、温度は40〜50℃、時間は5〜8時間で、グリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物を得る工程、及び、
(3)イカ内臓原料1グラムにつきブロメライン1000〜1500ユニット(酵素活性)を加える比率により、ブロメラインを手順(2)で得られた粗タンパク質酵素分解物に加え、pHを6.5〜7.0に調節し、35〜40℃で4〜6時間反応させ、得られた酵素分解物を静置し、粗脂肪層と水層に分離し、脂肪層を除去し乾燥させて、イカオリゴペプチドを得る工程。
【0013】
手順(3)に述べる乾燥は、噴霧乾燥などでよい。本発明に用いるペプトンと酵母エキスは市販のものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、Bacillus barbaricus SCSIO 02429の生産する粗酵素の酵素分解により内臓タンパク質中のペプチド鎖につながったグリコサミノグリカン側鎖を破壊し、グリコシル基によるタンパク質ペプチド鎖の加水分解点への保護作用を除去するもので、反応の過度の加水分解が防がれるような温和な条件では、イカオリゴペプチドの収率は40〜46%、アミノ酸の収率は16〜22%に達する。このイカオリゴペプチドには海洋養殖動物の種苗死亡率を下げ、体重増加率を高める作用があり、飼料中の魚粉など従来のタンパク質源に代えることができる。また一定の生理活性を持ち、水産動物の体重増加率と生存率を有意に高めることができるため、海洋養殖配合飼料の機能性タンパク質源、添加物などとして使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施例は本発明についてのさらなる説明であり、本発明に対する制限ではない。
【0016】
実施例におけるBacillus barbaricus SCSIO 02429は中国典型培養物保蔵センターに保管され、保管番号はCCTCC NO:M 2010213である。使用したイカは広州市黄沙海産市場で購入し、鑑別によりアカイカ(Ommastrephes bartrami)と同定され、内臓を採取し、−18℃で保存し、使用の24時間前に4℃で解凍した。使用したブロメラインは南寧▲ぱん▼博生物工程有限公司の生産であり、80万ユニット(酵素活性)/gである。ペプトンはOxide社の生産で、酵母エキス(Yeast extract)は碧雲天生物技術研究所より購入した。
【実施例1】
【0017】
1Lの水にペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天15gを加え、pHを7.0に調節し、菌種活性化培地を得た。
【0018】
イカ内臓スラリー100g、ペプトン25g、酵母エキス25g、複合塩50gを量って取り、脱イオン水5000mLを加え、加熱して溶かし、pHを7.0に調節し、発酵槽に移し入れ、蒸気滅菌し、酵素生産発酵培地を得た。この中の複合塩は塩化ナトリウム20.9g、硫酸カリウム8.3g、塩化マグネシウム8.3g及び塩化アンモニウム12.5gからなる。
【0019】
Bacillus barbaricus SCSIO 02429の菌種を菌種活性化培地に接種し、30℃で24時間培養した。活性化後、菌種を酵素生産発酵培地5Lの入った発酵槽に加え、pH=7.0、30℃、撹拌速度100r/min、換気率0.2の条件において24時間発酵させ、プロテアーゼ活性2000ユニット/mL、グリコサミノグリカナーゼ活性0.95ユニット/mLになったら発酵完了とし、加水分解用粗酵素溶液4.7Lを得た。
【0020】
プロテアーゼ活性の測定方法:中華人民共和国専門標準「プロテアーゼ活性測定法SB/T 10317−1999」の方法により測定した。
【0021】
グリコサミノグリカナーゼのユニット(酵素活性)の定義:60 ℃、pH 5.2、反応30分で、グルコサミン1μmolを形成するのに必要な1分当たりの酵素量。グリコサミノグリカナーゼ活性の測定方法:一定量のグリコサミノグリカンを量って取り、0.2mol/Lの酢酸溶液に溶かし、0.2mol/Lの酢酸ナトリウムでpHを5.2に調節し、0.5%のグリコサミノグリカン溶液に調合した。グリコサミノグリカン溶液1.5mLを吸って取り、60 ℃で2 分保温した後、酵素液0.5mLを加え、振とうし、30min反応させた後、フェリシアン化カリウム試薬3mLを加え、反応を止め、Imoto法でその還元糖量を測定し、グリコサミノグリカンの分解速度を計算した。
【0022】
イカ内臓の切片5kgを量って取り、均質化装置を用いて2000r/minで10分粉砕し、約4.7Lのペースト状物を得、酵素生産発酵生成物を入れた発酵槽に移し、2.0mol/Lの酢酸で溶液のpHを6.5に調節し、温度を40℃にし、撹拌速度100r/minで8時間反応させ、グリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物を得た。
【0023】
グリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物にブロメライン6.25gを加え、酵素用量をイカ内臓原料1gにつき約1000ユニット(酵素活性)にした。均一になるまで撹拌した後、反応温度を40℃に設定し、撹拌速度50回転/分、pHは7.0、反応時間6時間とした。反応が終わったら、撹拌を止め、生成物を静置して油層と水層に分離させ、上層の粗油を除去した後、サンプリングしイカオリゴペプチドの収率とアミノ酸収率を測定すると、結果はそれぞれ40%と16%であった。酵素分解物はただちに噴霧乾燥し、イカオリゴペプチド粉末853gを得た。
【0024】
ゲルクロマトグラフィーでオリゴペプチドの収率とアミノ酸収率を測定した。このとき、オリゴペプチド収率(%)=N/N×100、アミノ酸収率%=N/N1×100で、Nは酵素分解液中に含まれるアミノ酸態窒素の全量、Nは分子質量300〜1000Daのペプチド類流出分に含まれるアミノ酸態窒素量(g)、Nは分子質量100〜250Daの流出分に含まれるアミノ酸態窒素量(g)である。ケルダール窒素定量法によりN1を測定した。酵素分解物は脱脂、遠心分離し不溶物を除去して重量を量り、0.2mol/Lリン酸ナトリウム緩衝液に溶かし、SephadexLH 20ゲルカラムに装填し、0.2mol/Lリン酸ナトリウム緩衝液で溶出し、順にそれぞれの保持容積の流出分を収集し、その後ゲル浸透HPLCで各流出分の分子質量分布を測定した。300〜1000Da分子質量範囲内の流出分を合わせたものがオリゴペプチドフラグメントであり、ケルダール窒素定量法でそれに含まれるアミノ酸態窒素量を測定したものがNである。100〜250Da分子質量範囲内の流出分を合わせたものが遊離アミノ酸フラグメントであり、ケルダール窒素定量法で含まれるアミノ酸態窒素量を測定したものがNである。各流出分の分子質量分布はゲル浸透HPLCで測定した。このとき、計算公式はV=−b’lgM+c’であり、式中のVは保持容積、Mは分子質量、b’とc’は定数である。定数b’とc’は、0.2mol/Lリン酸ナトリウム緩衝液を用いて1mL/minでクロマトグラフカラム(PL aquagel−OH 30 8um、SEC社、英国)を平衡化し、吸光度214nmで一定化し、ブルーデキストラン溶液を用いて試料注入しV(死容積)を測定し、グリシン溶液を用いて試料注入しV(ゲルカラムベッドの全容積)を測定し、標準タンパク質混合液を用いて試料注入し、流速1.0mL/minで、各種標準タンパク質の溶出容積Vを記録し、分子量対数―Vの検量線を作成することで得られる。直接Sephadex LH−20カラムのクロマト分離で得た各流出分を試料とし、試料注入して保持容積Vを測定し、公式により分子質量分布範囲を計算した。
【実施例2】
【0025】
1Lの水にペプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム10g、寒天15 gを加え、pHを7.0に調節して菌種活性化培地を得た。
【0026】
イカスラリー150g、ペプトン25g、酵母エキス25g、複合塩50gを量って取り、脱イオン水5000mLを加え、加熱して溶かし、pHを8.0に調節し、発酵槽に移し、蒸気滅菌し、酵素生産発酵培地を得た。この中の複合塩は塩化ナトリウム26.6g、硫酸カリウム6.7g、塩化マグネシウム6.7g及び塩化アンモニウム10.0gからなる。
【0027】
Bacillus barbaricus SCSIO 02429の菌種を活性化培地に接種し、37℃で18時間培養した。活性化したら、菌種を酵素生産発酵培地5Lの入った発酵槽に加え、pH=8.0、37℃、撹拌速度100r/min、換気率0.2の条件において12時間発酵させ、プロテアーゼ活性が3000ユニット/mL、グリコサミノグリカナーゼ活性が1.12ユニット/mLになったら発酵完了とし、加水分解用粗酵素溶液4.7Lを得た。プロテアーゼ活性とグリコサミノグリカナーゼ活性は実施例1の方法で測定した。
【0028】
イカ内臓の切片10kgを量って取り、均質装置を用いて2000r/minで10分粉砕し、約9.4Lのペースト状物を得、酵素生産発酵生成物を入れた発酵槽に移し、2.0mol/Lの酢酸で溶液のpHを7.0に調節し、温度を50℃にし、撹拌速度100r/minで5時間反応させ、グリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物を得た。
【0029】
グリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物にブロメライン18.15gを加え、酵素用量をイカ内臓原料1gにつき約1500ユニット(酵素活性)にする。均一になるまで撹拌した後、反応温度を35℃に設定し、撹拌速度50 r/min、pHは6.5、反応時間4時間とした。反応が終わったら、撹拌を止め、生成物を静置して油層と水層に分離させ、上層の粗油を除去してから、サンプリングしイカオリゴペプチドの収率とアミノ酸収率を測定したところ、結果はそれぞれ46%と22%であった。酵素分解物はただちに噴霧乾燥し、イカオリゴペプチド粉末1630gを得た。オリゴペプチド収率とアミノ酸収率は実施例1の方法で計算した。
【実施例3】
【0030】
ハイブリッドティラピア(Oreochromis niloticus x O. aureus)の種苗は広東柏士聯羅非魚苗養殖場の提供で、孵化1日の同一群のハイブリッドティラピア仔魚である。実験前にまず仔魚を50リットルのプラスチック槽に放して2日馴化させ、馴化期間は給餌しなかった。
【0031】
ハイブリッドティラピア種苗を1つの対照群と4つの実験群に分けた。このうち対照群に用いる飼料配合は魚粉46%、麦芽根15%、タピオカでん粉19%、酵母3%、大豆レシチン1%、コリン0.5%、リン酸水素カルシウム0.5%、調合ビタミン0.4%、調合ミネラル塩0.6%、セルロース8%、大豆油1%、アルギン酸ナトリウム1%、ゼラチン4%、実験群1に用いる飼料配合は魚粉41%、実施例1で得られたイカオリゴペプチド5%、麦芽根15%、タピオカでん粉19%、酵母3%、大豆レシチン1%、コリン0.5%、リン酸水素カルシウム0.5%、調合ビタミン0.4%、調合ミネラル塩0.6%、セルロース8%、大豆油1%、アルギン酸ナトリウム1%、ゼラチン4%、実験群2に用いる飼料配合は魚粉41%、実施例2で得られたイカオリゴペプチド5%、麦芽根15%、タピオカでん粉19%、酵母3%、大豆レシチン1%、コリン0.5%、リン酸水素カルシウム0.5%、調合ビタミン0.4%、調合ミネラル塩0.6%、セルロース8%、大豆油1%、アルギン酸ナトリウム1%、ゼラチン4%、実験群3に用いる飼料配合は魚粉36%、実施例1で得られたイカオリゴペプチド10%、麦芽根15%、タピオカでん粉19%、酵母3%、大豆レシチン1%、コリン0.5%、リン酸水素カルシウム0.5%、調合ビタミン0.4%、調合ミネラル塩0.6%、セルロース8%、大豆油1%、アルギン酸ナトリウム1%、ゼラチン4%、実験群4に用いる飼料配合は魚粉36%、実施例2で得られたイカオリゴペプチド10%、麦芽根15%、タピオカでん粉19%、酵母3%、大豆レシチン1%、コリン0.5%、リン酸水素カルシウム0.5%、調合ビタミン0.4%、調合ミネラル塩0.6%、セルロース8%、大豆油1%、アルギン酸ナトリウム1%、ゼラチン4%とした。相応の飼料配合を高水分条件において混ぜてスラリー状にし、50℃負圧(0.097 mPa)で乾燥、破砕し、篩にかけ、粒子の大きさ60〜80μmとし、得られた飼料は20℃の冷蔵庫に保管した。
【0032】
幼魚飼育槽にはエアストーンを置き、24時間空気を供給し、毎日50%の水を替え、槽底の廃棄物を吸引し(吸出し)、またサーモスタットで温度を27℃に制御した。毎日仔魚体重の10%の配合飼料を3回給餌し、実験周期は21日で、3回繰り返した。
【0033】
死亡率と体重増加率は下の方法により計算した。
実験の開始時と終了時にそれぞれハイブリッドティラピアの体重(0.001gまで正確に)及び幼魚の数を測定する。
死亡率=(実験開始時の幼魚数−実験終了時の幼魚数)/実験開始時の種苗数×100%
絶対体重増加率=(実験終了時の幼魚重量(g)−実験開始時の幼魚重量(g))/実験日数
【0034】
結果は、対照群の幼魚の死亡率は53%±8%、絶対体重増加率0.0053±0.0012g/日、実験群1の幼魚の死亡率は42%±10%、絶対体重増加率0.0062±0.0005g/日、実験群2の幼魚の死亡率は45%±10%、絶対体重増加率0.0068±0.0011g/日、実験群3の幼魚の死亡率は38%±2%、絶対体重増加率0.0075±0.0015g/日、実験群4の幼魚の死亡率は39%±6%、絶対体重増加率0.0069±0.0012g/日であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bacillus barbaricus SCSIO 02429、中国典型培養物保蔵センター管理番号M 2010213の菌株。
【請求項2】
イカオリゴペプチドの調製方法であって、
(1)請求項1に記載のBacillus barbaricus SCSIO 02429の菌種を菌種活性化培地に移し入れ、30〜37℃で18〜24時間培養し、活性化後に、酵素生産誘導発酵培地を入れた容器に加え、pH=7.0〜8.0、30〜37℃の条件で12〜24時間発酵させ、発酵液のプロテアーゼ活性が2000〜3000ユニット/mLに達し、グリコサミノグリカナーゼ活性が0.95〜1.12ユニット/mLに達したときのグリコシル基加水分解用粗酵素溶液を得る工程であって、前記酵素生産誘導発酵培地は、イカ内臓スラリー、ペプトン、酵母エキス、複合塩及び水を質量比20〜30:5:5:10:1000で混合・加熱して溶かして作成され、前記複合塩は、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、塩化マグネシウム及び塩化アンモニウムを質量比5〜8:2:2:3で混合したものである工程、
(2)イカ内臓原料をスラリー状に破砕後、手順(1)に記載の粗酵素溶液と体積比1:1〜2:1で混ぜて酵素分解を行い、反応開始時のpHが6.5〜7.0、温度が40〜50℃、時間が5〜8時間で、グリコシル側鎖が破壊された粗タンパク質酵素分解物を得る工程、及び、
(3)イカ内臓原料1グラムにつきブロメライン1000〜1500ユニット(酵素活性)の比率で、ブロメラインを手順(2)で得られた粗タンパク質酵素分解物に加え、pHを6.5〜7.0に調節し、35〜40℃で4〜6時間反応させ、得られた酵素分解物を静置して粗脂肪層と水層に分離し、脂肪層を除去し乾燥させてイカオリゴペプチドを得る工程を含む方法。
【請求項3】
手順(3)に記載の乾燥が噴霧乾燥である、請求項2に記載のイカオリゴペプチドの調製方法。

【公表番号】特表2012−532629(P2012−532629A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535620(P2012−535620)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/CN2010/079627
【国際公開番号】WO2012/040980
【国際公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(511282070)中国科学院南海海洋研究所 (2)
【Fターム(参考)】