説明

海苔の活性処理方法、活性処理装置および海苔作業船

【課題】金属イオンを利用した環境に優しい活性処理を確実に施すことができる海苔の活性処理方法、活性処理装置および海苔作業船を提供すること。
【解決手段】海苔網Bに対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4を用いて活性処理を施すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔養殖場において海面部分に展張されている海苔網および海苔網に繁殖した海苔に対して効果的な海苔の活性処理を施したり、前記海苔を刈取ったりする場合に用いられる海苔の活性処理方法、活性処理装置および海苔作業船に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、海苔養殖は枠綱に浮子を取付けて海苔網を海面に浮かすように展張して錨で止める浮き流し方式や海中に立設した支柱に海苔網を展張した支柱方式によって行なわれている。
【0003】
また、健康な海苔を育成し、収穫率を向上させるために海苔の刈取り後の海苔網に対して酸処理を施している。
【0004】
本出願人は特許文献1に示すように、このような海苔養殖において、動力推進機構を有する船を海面部分に展張されている海苔網の下面をくぐるように進行させて、前記海苔網を船体の船首部から後部へ相対移動させながら海苔網に対して薬剤処理を施し、更に後部案内部材をもってこの薬剤処理に有効な時間だけ前記海苔網を浮上させた後に海面の前記展張位置へ導びいて再び展張させるようにするとともに、海苔網および海苔養殖施設を構成する綱類をスムースに通過させつつ前記綱類より上方位置に所望の部材を支持することができるとともに、構成が簡単であり、軽量で、コストも低廉な海苔養殖施設を構成する綱類通過装置を提案し、また、前記海苔養殖施設を構成する綱類通過装置を利用して海苔網浸漬体を処理液槽に対して常に所定位置関係に保持し、海苔網および前記綱類をスムーズに通過させることができ、海苔網を確実に処理液槽中の処理液中に浸漬通過させることができ、適正な処理を施すことのできる海苔網処理装置を提案し、また前記海苔養殖施設を構成する綱類通過装置を利用して薬剤処理や海苔の刈取りを施すことのできる海苔作業船を提案している。
【0005】
更に、本出願人は、海苔網に対して次亜塩素酸および次亜塩素酸ソーダの少なくとも1種およびまたは金属イオンを有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施すことも提案している(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3193655号公報
【特許文献1】特開2004−313175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、金属イオンを利用した新たな海苔の活性処理を実現させるものであり、海苔網や海苔に対して、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体(錯イオン)を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて環境に優しい活性処理を確実に施すことができ、また、船上の空中にある間に金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する前記の活性処理液を用いて活性処理を施すとともに、活性処理に有効な時間だけ浮上させておいた後に海面に戻すようにして、海苔の健康的な育成をはかることができ、コストも低廉であり、環境に優しい活性処理を確実に施すことのできる海苔の活性処理方法、活性処理装置および海苔作業船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため本発明の海苔の活性処理方法は、海苔網に対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施すことを特徴とする。この金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液は、金属を電気分解することにより生成された金属イオンを配位子となる成分を含有する溶液に混合させて金属イオンに配位子を配位結合させた溶液とするとよい。また、この活性処理用薬剤としては、酸剤や海水より塩濃度の高い高塩水を用いるとよい。
【0009】
また、本発明の他の海苔の活性処理方法は、動力推進機構を有する海苔作業船を海面部分に展張されている海苔養殖施設の海苔網の下面をくぐるように進行させて、前記海苔網を船体の船首部から後部へ相対移動させながら海苔網に対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施し、その後前記展張位置へ導びいて再び展張させたり、更に後部案内部材をもってこの活性処理に有効な時間だけ前記海苔網を浮上させた後に前記展張位置へ導びいて再び展張させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の海苔の活性処理装置は、金属を電気分解することにより金属イオンを生成する金属イオン生成手段と、この金属イオン生成手段により生成された金属イオンを配位子となる成分を含有する溶液に混合させて金属イオンに配位子を配位結合させて金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を生成する活性処理液生成手段と、前記活性処理液を海苔網と接触させるために貯留する処理液槽とを有することをことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の海苔の活性処理装置は、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液と金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液の少なくとも1種を生成するとともに処理液槽に貯留する活性処理機構を設け、海苔養殖施設を構成する綱類が上面を通過する下方部材と、この下方部材上に接離自在にして載置されている上方部材と、前記両部材間を前記綱類が通過している際に前記上方部材を下方部材に対して一定位置に保持する上方部材保持機構とを有する綱類通過装置における前記下方部材を前記活性処理機構の処理液槽の両側にそれぞれ配設し、前記処理液槽の上部を海苔養殖施設を構成する綱類と一緒に通過する海苔網を処理液槽中の前記活性処理液中に押し下げて浸漬させる海苔網浸漬体を前記両側の上方部材によって支持するように配設したことを特徴とする。ここで海苔養殖施設を構成する綱類とは、海苔網を養殖場において所定位置に展張するために必要な縁綱、側綱、吊り綱等の綱類の総称を意味する。
【0012】
また、本発明の海苔作業船は、前記海苔の活性処理装置や海苔網から海苔を刈取る刈取り機を搭載したことを特徴とする。
【0013】
このように形成されている本発明の海苔の活性処理装置を搭載した海苔作業船を用いて海苔の活性処理方法を施すことにより、海苔網に繁殖している海苔や海苔の刈取り後の海苔網に対して、箱船状の海苔作業船や海苔網の下を通過可能な海苔作業船上において、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて海苔の活性処理を施した後に海面に戻したり、活性処理を施すとともに、海苔網を活性処理に有効な時間だけ浮上させておいた後に海面に戻すようにして、海苔の健康的な育成をはかることができる。
【0014】
具体的には、海苔網の下を通過可能な海苔作業船においては、綱類通過装置の上下の部材間を綱類と一緒に海苔網を通過させている間に、海苔網を上側の海苔網浸漬体と下側の活性処理機構の処理液槽との間を通過させ、海苔網浸漬体により海苔網を処理液槽内の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液等からなる活性処理液中に確実に浸漬させて海苔の活性処理を行うようにしている。
【0015】
箱船状の海苔作業船においては、海苔網を処理液槽内の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液等からなる活性処理液中に確実に浸漬させて海苔の活性処理を行うようにしている。
【0016】
また、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を用いて海苔の活性処理を施す場合には従来の酸剤等の活性処理用薬剤を用いる必要がなくなり、海水の汚染を誘発することもなく環境にも優しいものとなり、環境破壊の要因が全くない素材を用いて海苔の活性処理を施すことができる。更に、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体と活性処理用薬剤とを有効成分として含有する活性処理液を用いて海苔の活性処理を施す場合には、従来の酸剤等の活性処理用薬剤の使用量を大きく低減しても十分な海苔の活性処理を施すことができる。更に、活性処理用薬剤として高塩水を用いると、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を単独で用いる場合と同様に、海水の汚染を誘発することもなく環境にも優しいものとなり、環境破壊の要因が全くない素材を用いて海苔の活性処理を施すことができる。
【0017】
また、このように形成されている海苔の活性処理装置を海苔作業船に搭載したり、海苔網から海苔を刈取る刈取り機を更に搭載することにより、海苔作業船を海苔網の下を潜らせる間に海苔網や海苔に対する活性処理並びに海苔の刈取りを自動的に極めて良好に行なうようにしている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明の海苔の活性処理方法、活性処理装置および海苔作業船は構成されるものであるから、本発明の海苔の活性処理装置を搭載した海苔作業船を用いて海苔の活性処理方法を施すことにより、海苔網に繁殖している海苔や海苔の刈取り後の海苔網に対して、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて環境に優しい活性処理を確実に施すことができる。また、箱船状の海苔作業船や海苔網の下を通過可能な船上の空中にある間に金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて海苔の活性処理を施すとともに、海苔網を活性処理に有効な時間だけ浮上させておいた後に海面に戻すようにして、海苔の健康的な育成をはかることができ、コストも低廉であり、環境に優しい活性処理を確実に施すことができる。
【0019】
具体的には、海苔網の下を通過可能な海苔作業船においては、綱類通過装置の上下の部材間を綱類と一緒に海苔網を通過させている間に、海苔網を上側の海苔網浸漬体と下側の活性処理機構の処理液槽との間を通過させ、海苔網浸漬体により海苔網を処理液槽内の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液中に確実に浸漬させて海苔の活性処理を行うようにしている。
【0020】
箱船状の海苔作業船においては、海苔網を処理液槽内の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液中に確実に浸漬させて海苔の活性処理を行うようにしている。
【0021】
また、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を用いて海苔の活性処理を施す場合には従来の酸剤等の活性処理用薬剤を用いる必要がなくなり、海水の汚染を誘発することもなく環境にも優しいものとなり、環境破壊の要因が全くない素材を用いて海苔の活性処理を施すことができる。更に、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体と活性処理用薬剤とを有効成分として含有する活性処理液を用いて海苔の活性処理を施す場合には、従来の酸剤等の活性処理用薬剤の使用量を大きく低減しても十分な海苔の活性処理を施すことができる。更に、活性処理用薬剤として高塩水を用いると、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を単独で用いる場合と同様に、海水の汚染を誘発することもなく環境にも優しいものとなり、環境破壊の要因が全くない素材を用いて海苔の活性処理を施すことができる。
【0022】
また、このように形成されている海苔の活性処理装置を海苔作業船に搭載したり、海苔網から海苔を刈取る刈取り機を更に搭載することにより、海苔作業船を海苔網の下を潜らせる間に海苔網や海苔に対する活性処理並びに海苔の刈取りを自動的に極めて良好に行なうようにしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図1から図8について説明する。
【0024】
図1は本発明の海苔養殖施設を構成する綱類通過装置(以下、綱類通過装置という)を利用して形成されている海苔の活性処理装置を搭載した海苔網の下を通過可能な海苔作業船を示している。
【0025】
図1に示すように、海苔作業船Aによる海苔の刈取りや海苔網Bに対する活性処理は次のようにして行なわれる。
【0026】
すなわち、スクリューD等の自走機構を備えた海苔作業船Aを船尾に配置されている操舵室Cにおいて操船しながら、海苔作業船Aの前方の水面中に張出すように設けられている前部案内部材Eによって海面に展張されている海苔網Bを掬い上げるようにして海苔作業船Aを海苔網Bの下に潜るようにして進行させて行き、甲板の前方部分に配設されている刈取り機Fにより海苔網Bから海苔を刈取り、続いて刈取り機Fの後方に配置されている海苔の活性処理装置Gの処理液槽H内の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液中に海苔網Bを浸漬通過させることにより所定の活性処理を施し、船Aの後方に伸縮自在にして張出された後部案内部材Iにより海苔網Bを活性処理後所定時間空中に保持して活性処理液を海苔網Bに十分に浸透させてから、再び海苔網Bを水面に展張させるようにしている。
【0027】
図2から図6は海苔の活性処理装置Gの1実施形態を示している。
【0028】
本実施形態における海苔の活性処理装置Gは、海苔作業船A上に設置されるとともに金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液が入れられる活性処理機構1の処理液槽2と、この処理液槽2の左右両側に設置されている1対の綱類通過装置3、3と、これらの綱類通過装置3、3によって支持されているとともに、処理液槽2の上部を通過する海苔網Bを処理液槽2中の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液等からなる活性処理液4中に上方から押し下げて浸漬させる海苔網浸漬体5とをもって形成されている。前記綱類通過装置3は、前記処理液槽2に対して前記海苔網浸漬体5を上方に浮かして支持するものである。これによって、処理液槽2と海苔網浸漬体5との間を海苔網Bと綱類の1種である吊り綱Ba等が自由に通過できる。これらの海苔網Bと吊り綱Baとは図2、図3、図5、図6および図8において羽根矢印方向に進行する。
【0029】
本実施形態においては、海苔作業船A上に掬い上げた吊り綱Baを下から支えて後方へ案内する左右1対の断面円形のほぼ水平な案内部材6、6の間に処理液槽2を設置している。そして、各案内部材6上にそれぞれ綱類通過装置3を配設している。本実施形態の綱類通過装置3においては、前記案内部材6が吊り綱Baが上面を通過する下方部材となる。この案内部材6上に上方部材7が接離自在にして載置されているとともに、上方部材保持機構8によって上方部材7と案内部材6との間を吊り綱Baが通過している際に上方部材7を案内部材6に対して一定位置に保持するようにされている。前記上方部材7は、2本の平行な主ロツド9、9の前後2箇所に下方に突出するように湾曲する下方湾曲部10、10を形成し、各下方湾曲部10の湾曲途中をそれぞれ連結材11、11によって連結して一体化し、前後2本の連結材11、11を主ロツド9と平行で下方に突出するように若干湾曲している中間ロツド12により連結して形成されており、左右2つの下方湾曲部10、10によって案内部材6を跨ぐようにして載置されている。また、各主ロツド9の前方端は1箇所に連結され、そこから吊り綱Baを確実に下方湾曲部10と案内部材6との間に導くガイドロツド9aが前方に向けて延設されている。各下方湾曲部10は、吊り綱Baの通過を可能とするとともに、案内部材6と係合することにより上方部材7の左右方向への移動を阻止する作用を発揮する。また、案内部材6の前記各中間ロツド12の後方位置には、それぞれ中間ロツド12と係合して上方部材7の後方への移動を阻止する作用を発揮するストッパ13が突設されている。更に、上方部材7はその自重により上方への移動を阻止されるようになっている。従って、本実施形態における上方部材保持機構8は、案内部材6と各下方湾曲部10との係合部、中間ロツド12とストッパ13との係合部および上方部材7の自重とにより形成されている。
【0030】
また、前記海苔網浸漬体5は、左右1対の上方部材7、7の主ロツド9、9間に連結ロツド14を掛け渡し、この連結ロツド14から処理液槽2の処理液貯留部18内に延びるように複数本(本実施形態においては4本)の略U字形をしたロツド状の浸漬バー15、15を延設し、各浸漬バー15の後端部を後端部材16により連結して形成されている。この処理液槽2は海苔網Bの横幅より広い幅を有する略長方形状に形成されており、内部に立設した隔壁17により内側の活性処理液4が貯留される処理液貯留部18とその外側のオーバーフロー部19とに分割されている。処理液貯留部18内には後述する活性処理機構1の電解槽から活性処理液4が供給されて、常に所定量の活性処理液4が貯留されるように制御されている。また、図3および図5の鎖線に例示するように、活性処理液4の左右方向への揺れを防止するために、各浸漬バー15の上部にパンチングメタルなどにより多数の孔が形成された平板状の処理液揺動防止部材20を立設するようにして固着するとよい。また、後で詳述するが、図2、3および8に示すように、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液等からなる活性処理液の原液を、海苔網Bが処理槽2内の活性処理液中を通過する前(または後)において海苔網Bに直接作用させるためのシャワーリングヘッド51を設けている。
【0031】
次に、活性処理機構1を図8により説明する。この活性処理機構1は、金属を電気分解することにより金属イオンを生成する金属イオン生成手段32と、金属イオンと配位子となる成分とを配位結合させて金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4を生成する錯体生成手段33と、海苔網Bと活性処理液4とを接触させて活性処理を施す接触処理手段34とを有している。
【0032】
この金属イオン生成手段32は、ポンプ35によって吸水管36、仕切弁37を通して吸水される溶液としての海水37を貯留するとともに通過させる溶液貯留室38とこの溶液貯留室38内に電気分解することにより金属イオンを発生させる電極39a、39bを設けて形成されている。両電極39a、39bには直流が印可され、正極側から正帯電した金属イオンが発生させられる。金属イオンの種類は、両電極39a、39bを形成する金属の原子の種類となる。この金属イオンの種類は錯体に配位結合して海苔網に対して滅菌、殺菌等の活性処理を施すことのできるものであればよく、例えば、銀イオン、銅イオン、金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン等の中から選択するとよい。これらの金属イオンは溶液中に微少量存在することにより藻、細菌、微生物等を殺菌、滅菌、死滅させたり、再度の付着を防止することができ、しかも人体にも有害なものではないので、安全に使用することができる。この金属イオンを有効成分として含有する活性処理液4は、ポンプ35の送水力により供給管40を通して錯体生成手段33に送水されるようになっている。また、錯体生成手段33には錯体貯留槽41より錯体の配位子となる成分が含有されている溶液が仕切弁43を有する供給管42を通して供給されるようになっている。錯体貯留槽41内に貯留する錯体の配位子となる成分が含有されている溶液としては、チオ硫酸ナトリウム(Na)、水等の生成された錯体が透明となる公知の溶液を用いるとよい。錯体生成手段33内においては、チオ硫酸ナトリウム等の錯体の配位子となる成分[(S2−]が含有されている溶液中の配位子となる成分が金属イオンに配位結合される。この錯体生成手段33において生成された金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4が、ポンプ45および仕切弁46を備えた供給管44により1個の処理液貯留タンク47に供給されるように形成されている。更に、この処理液貯留タンク47からポンプ48、仕切弁49a、49bを備えた供給管50a、50bにより活性処理液4が処理液槽2の処理液貯留部18と、海苔網Bが処理液貯留部18内に浸漬される前において海苔網Bに活性処理液4を下方よりシャワーリングして直接作用させる活性処理液付与機構としてのシャワーリングヘッド51とに供給されるように形成されている。このシャワーリングヘッド51は図8の破線に示すように、海苔網Bが処理液貯留部18内に浸漬された後に海苔網Bに活性処理液4を下方よりシャワーリングして直接作用させるようにしてもよい。また、処理液貯留タンク47には、活性処理液の他の成分としての活性処理用薬剤が薬剤貯留槽52からポンプ53、仕切弁54を備えた供給管55により供給されるように形成されている。この活性処理用薬剤としては、例えば、海水より塩濃度の高い(例えば、5%)高塩水や従来から用いているクエン酸等の酸剤を用いるとよい。
【0033】
また、吸水管36の途中から処理液貯留タンク47と接続する分岐管36aを分岐させて、処理液貯留タンク47内の処理液の成分濃度を調整できるようにしている。分岐管36aの途中には仕切弁56が設けられている。
【0034】
次に、前述した構成からなる本実施形態の作用を説明する。
【0035】
先ず、錯体生成手段33によって生成する金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4を用いて活性処理を施す場合について説明する。
【0036】
本実施形態においては、一方の仕切弁56を閉じ、他方の仕切弁37を開放して、ポンプ35を稼働させて海水38を吸い上げて、吸水管36を通して金属イオン生成手段32の溶液貯留室38内に海水を通水すると同時に、電極39aと電極39bとに直流を通電すると、正極側から正帯電した金属イオンが発生させられて、この金属イオンを含有する処理液が生成されて、ポンプ35の送水力により供給管40を通して錯体生成手段33に送水される。この場合、例えば両電極39a、39bを銅板によって形成すると、銅イオンが発生され、銅イオンを有効成分として含有する処理液が生成される。この銅イオンの含有量は、例えば、0.1〜1.0ppmとされている。銀イオンの場合には0.04〜0.1ppm程度とするとよい。錯体生成手段33においては、錯体貯留槽41に貯留されているチオ硫酸ナトリウム等の錯体の配位子となる成分が含有されている溶液が仕切弁43を開放された供給管42を通して供給されているので、金属イオンにチオ硫酸ナトリウム等の錯体の配位子となる成分が含有されている溶液中の配位子が配位結合されて金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4が生成される。特に、銀イオンは殺菌作用が高いために活性処理として有効であるが、海水中の塩素と反応して塩化銀を形成して沈殿する性質を有しているが、錯体生成手段33においてチオ硫酸ナトリウムと混合させて錯体[Ag(S3−を生成させるとよい。この銀イオンを用いた錯体は無色透明であるので、活性処理液4に好適である。また、銅イオンを用いる場合には、酸性の溶液を用いて透明な錯体を生成するとよい。このようにして生成された金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4は、ポンプ45の送水力により開放された仕切弁46を経て供給管44により送られて処理液貯留槽47に一旦貯留され、その後ポンプ48によって供給管50a、50bを通して処理液槽2の処理液貯留部18とシャワーリングヘッド51に供給される。また、処理液貯留槽47内の活性処理液4中の金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分の含有濃度の調整は、仕切弁56を開放して分岐管36aを通して適宜量の海水38を処理液貯留槽47内に送るとよい。
【0037】
このようにして処理液槽2内に金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4が充填されている状態にして、海苔作業船Aが海苔網Bの下に潜って行くと、海苔網Bが処理液槽2の処理液貯留部18内に海苔網浸漬体5の浸漬バー15、15によって上から下方に押付けられて強制的に金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4内に浸漬させられて、適正な活性処理が施される。同時に、シャワーリングヘッド51から新鮮な金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4が海苔網Bに向けて上向きに噴射されているので、海苔網Bはより確実に活性処理を施されることになる。このシャワーリングヘッド51の活性処理液4の噴射により、処理液槽2の処理液貯留部18内の活性処理液4が海苔網Bによって消費されるのを補給して、活性処理液4の不足を防止することもできる。なお、図8の破線に示す位置に設けたシャワーリングヘッド51により、処理液槽2の処理液貯留部18を通過した後の海苔網Bに新鮮な活性処理液4を噴射するようにしてもよい。この活性処理を施している時に、海苔網Bの吊り綱Baは、案内部材6上を後方に移動し、綱類通過装置3の主ロツド9の下方湾曲部10の部分に達すると、図6に示すように、海苔作業船Aの進行力により綱類通過装置3および海苔網浸漬体5の自重の総和に抗して下方湾曲部10を持ち上げるようにしながら後方へ移動することにより下方湾曲部10と案内部材6との間をスムースに通過する。この下方湾曲部10と案内部材6との間を通過するのは吊り綱Baだけであるから、吊り綱Baによる上方部材7を持ち上げようとする上向きの力は比較的小さいので、前記上方部材保持機構8によって上方部材7は常に案内部材6に対して一定位置に保持されることとなる。
【0038】
その後、吊り綱Baは同様にして各上方部材7の下方湾曲部10と案内部材6との間を通過して行く。
【0039】
このようにして綱類通過装置3は吊り綱Baの通過を許容するとともに、処理液槽2と海苔網浸漬体5との相対位置関係を一定位置に保持することができ、すなわち横揺れ、立て揺れを防止することができ、そして、海苔網Bと海苔網浸漬体5との相対位置関係をも一定位置に保持することができるので、海苔網Bに対する活性処理を常に適正なものとすることができる。更に、本実施の形態においては、浸漬バー15に固着されている処理液揺動防止部材20が、海苔網作業船Aと一緒に処理液槽2が揺れた時に、処理液槽2内の活性処理液4の揺れを小さく抑えることができ、これにより活性処理液4の不規則な移動を確実に防止することができる。これにより活性処理液4の揺れに起因する重心の変動量を小さく抑えて、海苔作業船Aの安定性を向上させ、かつ、処理液槽2内において海苔網Bを確実に活性処理液4内に浸漬させることにより、海苔網Bに対する活性処理を常に均一に施すことができる。本実施形態における綱類通過装置3は、ロツド材を組み合わせることにより形成されているために、複雑なメカニズムが不要となり、構成が簡単で、軽量であり、コストが非常に低廉となり、しかも吊り綱Baをスムースに通過させることができるものである。また、海苔網浸漬体の構成は前記実施形態に限定されるものではなく、変更可能であり、例えば、図7に示すように、上方部材7、7の間に略U字形のロツド21を掛渡すとともに、海苔網Bを押さえるローラ22をロツド21に回転自在に取付けてもよい。
【0040】
このように本実施形態によれば、海苔作業船Aの進行に伴って、刈取り機Fにより海苔網Bから海苔が刈取られ、続いて海苔の活性処理装置Gにより、海苔網Bが海苔網浸漬体5の下を潜って活性処理液4に浸漬される間に、刈取り後の海苔網Bに対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4による活性処理を均一に施し、更に、船尾より張り出している後部案内部材Iの後端部まで相対移動する間に塩化物水溶液の電気分解生成液からなる活性処理液4を海苔の細胞内に十分に浸透させ、また、葉体に付着している雑菌を殺菌させることによって適正な活性処理が施される。また、後部案内部材Iを縮めておいて、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4による活性処理を均一に施した後に、海苔網を海面に戻して展張させるようにしてもよい。
【0041】
このように本発明の海苔作業船Aを用いて海苔の活性処理方法を施すことにより、海苔の刈取り後の海苔網Bに対して、海苔作業船A上の空中にある間に金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液4を用いて活性処理を施すとともに、活性処理に有効な時間だけ浮上させておいた後に海面に戻すようにして、海苔の健康的な育成をはかることができる。
【0042】
次に、金属イオンに配位子を配位結合させている錯体に更に活性処理用薬剤を加えて、両者を有効成分として含有する活性処理液4を用いて活性処理を施す場合について説明する。
【0043】
この場合には、仕切弁54を開放しポンプ53を稼働させて薬剤貯留槽52から例えば、海水より塩濃度の高い(例えば、5%)高塩水からなる活性処理用薬剤を処理液貯留タンク47供給する。これにより処理液貯留槽47内には金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液4が生成される。その後、前記と同様にしてポンプ48によって供給管50a、50bを通して処理液槽2の処理液貯留部18とシャワーリングヘッド51へに金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液4が供給されて、海苔の活性処理が施される。
【0044】
また、本発明の海苔の活性処理装置を箱船状の海苔作業船に用いる場合には、図8の構成要素のうち、少なくとも金属イオン生成手段32、錯体生成手段33および錯体貯留槽41を箱船に搭載し、錯体生成手段33内に箱船に引き上げた海苔網をどぶ漬け状に浸漬して活性処理を施し、再び海面に海苔網を展張するようにしてもよい。
【0045】
また、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る海苔の活性処理装置を搭載した海苔作業船の構成を示す側面図
【図2】本発明に係る海苔の活性処理装置の実施の形態の1例をスケルトン的に示す平面図
【図3】図2のA−A線に沿った断面図
【図4】図2のB−B線に沿った断面図
【図5】図2に示す海苔の活性処理装置の要部を示す斜視図
【図6】綱類通過装置の綱類通過時の要部を示す拡大側面図
【図7】海苔網浸漬体の他の例を示す斜視図
【図8】活性処理機構の1例を示す構成図
【符号の説明】
【0047】
1 海苔の活性処理機構
2 処理液槽
3、3a 綱類通過装置
4 処理液
5 海苔網浸漬体
6、6a 案内部材
7、7a 上方部材
8、8a 上方部材保持機構
32 金属イオン生成手段
33 錯体生成手段
41 錯体貯留槽
52 薬剤貯留槽
A 海苔作業船
B 海苔網
Ba 吊り綱
F 刈取り機
G 海苔の活性処理装置
I 後部案内部材
J 予備処理機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔網に対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施すことを特徴とする海苔の活性処理方法。
【請求項2】
海苔網に対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施すことを特徴とする海苔の活性処理方法。
【請求項3】
金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液は、金属を電気分解することにより生成された金属イオンを配位子となる成分を含有する溶液に混合させて金属イオンに配位子を配位結合させた溶液からなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の海苔の活性処理方法。
【請求項4】
動力推進機構を有する海苔作業船を海面部分に展張されている海苔養殖施設の海苔網の下面をくぐるように進行させて、前記海苔網を船体の船首部から後部へ相対移動させながら海苔網に対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施し、その後前記展張位置へ導びいて再び展張させることを特徴とする海苔の活性処理方法。
【請求項5】
動力推進機構を有する海苔作業船を海面部分に展張されている海苔養殖施設の海苔網の下面をくぐるように進行させて、前記海苔網を船体の船首部から後部へ相対移動させながら海苔網に対して金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液または金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液を用いて活性処理を施し、更に後部案内部材をもってこの活性処理に有効な時間だけ前記海苔網を浮上させた後に前記展張位置へ導びいて再び展張させることを特徴とする海苔の活性処理方法。
【請求項6】
金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液は、金属を電気分解することにより生成された金属イオンを配位子となる成分を含有する溶液に混合させて金属イオンに配位子を配位結合させた溶液からなる
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の海苔の活性処理方法。
【請求項7】
金属を電気分解することにより金属イオンを生成する金属イオン生成手段と、
この金属イオン生成手段により生成された金属イオンを配位子となる成分を含有する溶液に混合させて金属イオンに配位子を配位結合させて金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液を生成する活性処理液生成手段と、
前記活性処理液を海苔網と接触させるために貯留する処理液槽とを有することをことを特徴とする海苔の活性処理装置。
【請求項8】
金属イオンに配位子を配位結合させている錯体を有効成分として含有する活性処理液と金属イオンに配位子を配位結合させている錯体および活性処理用薬剤を有効成分として含有する活性処理液の少なくとも1種を生成するとともに処理液槽に貯留する活性処理機構を設け、
海苔養殖施設を構成する綱類が上面を通過する下方部材と、この下方部材上に接離自在にして載置されている上方部材と、前記両部材間を前記綱類が通過している際に前記上方部材を下方部材に対して一定位置に保持する上方部材保持機構とを有する綱類通過装置における前記下方部材を前記活性処理機構の処理液槽の両側にそれぞれ配設し、前記処理液槽の上部を海苔養殖施設を構成する綱類と一緒に通過する海苔網を処理液槽中の前記活性処理液中に押し下げて浸漬させる海苔網浸漬体を前記両側の上方部材によって支持するように配設した
ことを特徴とする海苔の活性処理装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の海苔の活性処理装置を搭載したことを特徴とする海苔作業船。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の海苔の活性処理装置および海苔網から海苔を刈取る刈取り機を搭載したことを特徴とする海苔作業船。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate