説明

海苔網の干出装置、海苔養殖システムおよび海苔作業船

【課題】簡易な構造により海苔網の干出および浸漬を容易かつ迅速に行なうことができ、良質の海苔を養殖することができる海苔網の干出装置を提供する。
【解決手段】下方に垂設された2本の脚部4、これら脚部4を連結する長辺3
とからなるコ字形状の剛体状の枠体2であって前記長辺3を並列するように配置されている複数の枠体2と、前記各脚部4の端部に枠体2の並列方向両側に配設されて前記枠体2を起立させる浮子11と、前記各長辺3に挿通され、前記各枠体2を回動自在に支持する回動部材7、前記各回動部材7に連結され、前記各枠体2を連結する連結手段8と、前記長辺3の少なくとも一端側の脚部4に配設されている各浮子11の枠体2の並列方向における一端側にそれぞれ連結されて前記各枠体2を連結する転倒用連結手段9と、前記各枠2体間に張設された海苔網13とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成により良質の海苔を養殖することのできる海苔網の干出装置、海苔養殖システムおよび海苔作業船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、海苔の養殖において、良質の海苔を得るために海苔網の干出および浸漬が繰り返し行なわれている。これは、海水中の雑菌や藻が付着して海苔の苗、芽および葉体に病気が蔓延してしまうことを防止するため、海苔網を海水中における展張状態から空中に干出させて、天日干ししたり、有機酸等による活性処理を行ったり、海水中に展張させることを繰り返して、海苔の育苗、育成を行うためである。
【0003】
このような海苔網の干出および浸漬を行なう従来の海苔網の干出装置の一例としては、特許文献1が提案されている。この従来例においては、一定間隔に平行に配設された複数の支持棒の両端および中央がそれぞれロープからなる連結手段により連結固定されており、これらの連結手段の両端がそれぞれ枠綱に固定されて、海苔網の枠体が形成されている。
【0004】
前記各支持棒の両端部には第1の脚および第2の脚が約30度の挟角をもって延出されている軸受がそれぞれ回動自在に装着されており、前記各第1の脚および第2の脚にはこれらを結ぶ第3の1本の脚が配設され、前記各第1の脚、第2の脚および第3の脚は三角形状の浮体部材をなしている。
【0005】
さらに、前記各第1の脚の延長部にはそれぞれ浮子が取付けられている。
【0006】
また、前記浮体部材が固定された前記第1の脚から突き出る第2の脚および第3の脚の交点と隣り合う軸受との間には、前記海苔網の枠体の海上から干出する上方位置および海中に浸漬する下方位置を制御するための回動制御手段としてのロープが設けられている。このロープの長さを調節することにより、海苔網の海面からの浸漬深さを任意に設定することができるようになっている。
【0007】
そして、前記枠体の上面には複数枚の網が重ね合わされた状態で、固定ロープにより前記連結手段に固定されている。
【0008】
つぎに、前記海苔網の干出に使用される水上走行体は、水上走行体の両側部に並列に設置された2本のガイドと、前記水上走行体の後方において両側方に突出するように設けられた蹴上げ部材とを備えている。
【0009】
前記ガイドは、海面下に位置する前端部から上昇し、前記水上走行体の上部でほぼ水平となり、後部は海面に向かって下降する略円弧状に形成されている。
【0010】
前記蹴上げ部材は、海面付近に位置されており、前記浮体部材を蹴上げた後、スムースに海水に着水させるものであり、前記ガイドに沿ってスムースに海苔網を干出位置および浸漬位置と変更させるものである。
【0011】
前述した構成からなる従来の干出装置によれば、前記海苔網の枠体が海中に浸漬した状態において、前記水上走行体が前記枠体の下側へ潜るように進行すると、前記水上走行体の前記ガイドに沿って前記枠体の各支持棒が持ち上げられていく。そして、各支持棒が持ち上げられていくと、前記浮体部材が吊り上げられた状態となり、各浮子が前記水上走行体の蹴上げ部材によって蹴上げられ、前記浮体部材が回転し、前記枠体が上方位置となるように回転しながら前記蹴上げ部材を乗り越えて着水する。
【0012】
前記水上走行体が、前記枠体をくぐり抜けると、全ての浮体部材が連続的に上方位置となり、前記海苔網が海上に持ち上げられて干出状態となる。この状態において、前記浮体部材は、前記浮子の浮力および枠体の自重と、連結部材の張力により回動が規制され、上方位置に位置決めされる。
【0013】
そして、前記枠体を海中に浸漬させる場合には、前記枠体を干出させるときと反対方向から水上走行体を進行させる。すると、同様に各支持棒が順次持ち上げられていき、浮体部材が吊り上げられ、各浮子は蹴上げ部材により蹴上げられる。そして、前記浮体部材が下方位置側に回転しながら前記蹴上げ部材を乗り越えて着水する。
【0014】
そして、前記水上走行体が、前記枠体をくぐり抜けると、全ての浮体部材が連続的に下方位置となり、前記海苔網が海中に浸漬される。
【0015】
【特許文献1】特開2001−299117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、前述したような従来の海苔網の干出装置においては、海苔網の干出あるいは浸漬の際、水上走行体がそれぞれ一方向からしか進行することができなかった。また、海苔網を浸漬させるときにおいても、水上走行体を進行させる必要があった。さらに、各支持棒の両端と一対の浮体部材とは、軸受をもって相互に相対回転自在に連結されているために、潮流や風波によって、各支持棒の両端に装着されている一対の浮体部材は個別に移動させられてしまって、左右対称の位置を保持することができずにひしゃげてしまう。そのため、海苔網の枠自体が変形してしまい、これに支持されている海苔網も変形してしまい、海苔の育成が悪くなったり、海苔網が損傷を受けるという不都合があった。
【0017】
そこで、本発明は、簡易な構造により海苔網の干出および浸漬を容易かつ迅速に行なうことができ、良質の海苔を養殖することができる海苔網の干出装置、海苔養殖システムおよび海苔作業船を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達成するため本発明に係る海苔網の干出装置は、下方に垂設された2本の脚部と、これら脚部を連結する長辺とからなるコ字形状の剛体状の枠体であって前記長辺を並列するように配置されている複数の枠体と、前記各脚部の端部に枠体の並列方向両側に配設されて前記枠体を起立させる浮子と、前記各長辺に挿通され、前記各枠体を回動自在に支持する回動部材と、前記各回動部材に連結され、前記各枠体を連結する連結手段と、前記長辺の少なくとも一端側の脚部に配設されている各浮子の枠体の並列方向における一端側にそれぞれ連結されて前記各枠体を連結する転倒用連結手段と、前記各枠体間に張設された海苔網とを有することを特徴とする。
【0019】
このような構成を採用したことにより、海苔網の干出および浸漬を行なう機構を簡易な物とすることができる。また、海苔作業船を各枠体の下を通過させることにより容易に各枠体を起立させて海苔網を干出させることができるとともに、転倒用連結手段を引くことにより容易に各枠体を倒して海苔網を海水に浸漬させることができる。
【0020】
また、海苔網の干出装置においては、各脚部の上部に、各枠体の配列方向の少なくとも一方に干出補助部材を配列方向に張出して配設するとよい。
【0021】
このような構成を採用したことにより、各枠体を倒しても干出補助材により海苔網を干出位置に保持することができ、海が荒れている場合においても海苔網を確実に干出位置に保持することができる。
【0022】
本発明の海苔作業船は、請求項1または請求項2に記載の海苔網の干出装置の各枠体の下を通過して各枠体を起立させるガイドを有することを特徴とする。
【0023】
このような構成を採用したことにより、海水に浸漬されている状態の海苔網の下即ち各枠体の下を海苔作業船を通過させると、各枠体が起立され浮体の浮力によって海面上に起立させられ、海苔網が干出位置に保持される。
【0024】
また、本発明の海苔作業船においては、海苔刈り取り機構および海苔の活性処理機構の少なくとも一方を設けるとよい。
【0025】
このような構成を採用したことにより、海苔作業船によって各枠体を起立させると同時に、海苔網から成長した海苔を刈り取ったり、海苔に対する活性処理を施したり、海苔の刈り取りの直後に海苔の活性処理を施すことができる。
【0026】
本発明の海苔の養殖システムは、請求項1または請求項2に記載の海苔網の干出装置を用いて海苔網を海面に展張したことを特徴とする。
【0027】
このような構成を採用したことにより、海苔網の海水からの干出と海水への浸漬とを容易に変更可能として海苔の養殖を行うことができ、高品質の海苔を得ることができる。
【0028】
また、海苔の養殖システムとしては、海苔網の干出装置の各枠体の下を通過して各枠体を起立させるガイドを有する海苔作業船を備えているとよい。
【0029】
このような構成を採用したことにより、海水に浸漬されている状態の海苔網の下即ち各枠体の下を海苔作業船を通過させて、各枠体を起立させて浮体の浮力によって海面上に起立させ、海苔網を干出位置に保持する海苔の養殖を施すことができる。
【0030】
また、海苔の養殖システムは、前記海苔作業船は海苔刈り取り機構および海苔の活性処理機構の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0031】
このような構成を採用したことにより、海苔作業船によって各枠体を起立させると同時に、海苔網から成長した海苔を刈り取ったり、海苔に対する活性処理を施したり、海苔の刈り取りの直後に海苔の活性処理を施すようにして海苔の養殖を行うことができる。
【0032】
本発明において、海苔の養殖とは海苔の育苗、育成のことをいい、一方の海苔の育苗は海苔網を複数枚重ねて海面に展張して、海苔の苗を育てるものであり、他方の海苔の育成は海苔が苗に成長した海苔網を1枚ずつ海面に展張して、海苔の芽や葉体を育てるものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の海苔網の干出装置によれば、海苔網の干出および浸漬を行なう機構を簡易な物とすることができる。また、海苔作業船を各枠体の下を通過させることにより容易に各枠体を起立させて海苔網を干出させることができるとともに、転倒用連結手段を引くことにより容易に各枠体を倒して海苔網を海水に浸漬させることができる。
【0034】
また、各枠体を倒しても干出補助材により海苔網を干出位置に保持することができ、海が荒れている場合にいても海苔網を確実に干出位置に保持することができる。
【0035】
本発明の海苔作業船によれば、海水に浸漬されている状態の海苔網の下即ち各枠体の下を海苔作業船を通過させると、各枠体が起立され浮体の浮力によって海面上に起立させられ、海苔網が干出位置に保持される。
【0036】
また、本発明の海苔作業船によれば、海苔作業船によって各枠体を起立させると同時に、海苔網から成長した海苔を刈り取ったり、海苔に対する活性処理を施したり、海苔の刈り取りの直後に海苔の活性処理を施すことができる。
【0037】
本発明の海苔の養殖システムによれば、海苔網の海水からの干出と海水への浸漬とを容易に変更可能として海苔の養殖を行うことができ、高品質の海苔を得ることができる。
【0038】
また、海苔の養殖システムによれば、海水に浸漬されている状態の海苔網の下即ち各枠体の下を海苔作業船を通過させて、各枠体を起立させて浮体の浮力によって海面上に起立させ、海苔網を干出位置に保持する海苔の養殖を施すことができる。
【0039】
また、海苔の養殖システムによれば、海苔作業船によって各枠体を起立させると同時に、海苔網から成長した海苔を刈り取ったり、海苔に対する活性処理を施したり、海苔の刈り取りの直後に海苔の活性処理を施すようにして海苔の養殖を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を用いて本発明の海苔網の干出装、海苔養殖システムおよび海苔作業船置の実施形態について説明する。
【0041】
図1は本発明に係る海苔網の干出装置の実施形態を示す平面図、図2は図1の左方側面図、図3は図1の側面図、図4は本発明に係る海苔網の干出装置の浸漬状態を示す側面図、図5は本発明に係る海苔網の干出装置の干出方法を示す概略図である。
【0042】
本実施形態の海苔網の干出装置1は、図1から図3に示すように、長辺3と、この長辺3の両端から下方に一体的に垂設された脚部4,4を有する複数のコ字形状の剛体状の枠体2,2...が平行に配置されている。
【0043】
前記各枠体2,2...の長辺3の各両端部にはそれぞれ浮子6が配設されるとともに、各浮子6の内側には筒状の軸受状の回動部材7が長辺3を挿通するようにしてそれぞれ配設されており、隣接する前記各枠体2,2...は、前記各回動部材7においてそれぞれロープからなる連結手段8により相互に連結されている。前記各連結手段8は、前記各枠体2,2...の配列方向において各枠体2,2から延在して延在部8a,8bが設けられている。なお、前記各回動部材7は1つの長尺な筒体等でもよい。
【0044】
さらに、前記各脚部4,4の下端部は枠体2の配列方向に突出するT字状に2股に形成されており、このT字部5の両端部5a,5bにはそれぞれ枠体2を浮力をもって海面上に起立させる浮子11が配設されている。この浮子11としては脚部4から枠体2の並列方向両側に配設されて枠体2を起立させることができるものであればよく、図示している2個の浮子11を連続させて1個の浮子として形成してもよい。枠体2の長辺3の同一側端部備えられている各浮子11の枠体2の並列方向における一端側部分を1本のロープからなる転倒用連結手段9a、9bによって相互に連結している。長辺3の反対側にある浮子11に対する転倒用連結手段9a、9bの連結位置は、各浮子11の枠体2の並列方向に対する反対側の端部とされて、各枠体2を反対方向に引き倒すことができるようにしている。一方の転倒用連結手段のみを設けてもよい。
【0045】
そして、前記各枠体2,2...の長辺3の中央には、隣接配置する各枠体2,2...間にわたって海苔網13が張設されいる。この海苔網13には、海苔網13の撓みを小さくするため一定の間隔毎に前記各枠体2,2...と平行に伸子棒14が配設されている。
【0046】
また、前記海苔網13は、前記各枠体2,2...の配列方向において一定の間隔毎に、吊綱15によって前記各連結手段8に吊設されている。
【0047】
本発明の海苔養殖システムは、前記海苔網の干出装置1を用いて多数の海苔網13を海面にして形成される。更に、図5に示す海苔作業船21をもって海苔網の干出と浸漬とを行ったり、図6に示すように海苔作業船21aに、成長した海苔を刈り取る刈り取り機構27を設けたり、海苔網13に活性処理を施す活性処理機構29を設けて形成される。
【0048】
一方の図5に示す海苔作業船21は、船体22の両側に前方の海中から船体22上、そして船体22の後方に延びる左右一対のガイド部材23を載置している。ガイド部材23の先端部は連結して略U字形に形成するとよい。このガイド部材23は海中の枠体2や海苔網13を掬い上げ、そのご海苔作業船21の後方に移動させる。
【0049】
他方の図6に示す海苔作業船21aは、船体24の後部に動力機25を設け、前後部にそれぞれ方向変換用のスラスタ26a、26bを設けている。更に、ガイド部材23を前方ガイド部材23aと後方ガイド部材23bとに分けている。一方の前方ガイド部材23aは図6に示す前方突出位置と船上に引き込んだ収納位置を移動自在に形成されている。船上の前方には、海苔網13から成長した海苔を刈取る公知の刈り取り機構27がガイド部材23の下方に設置されている。この刈り取り機構27によって刈取られた海苔は収納庫28内に収納されるようになっている。刈り取り機構27の後方には海苔網13に活性処理を施す活性処理機構29が配設されている。この活性処理機構29としては公知の手段から活性処理目的に応じた構成の手段を利用するとよいる。図6においては、有機酸、高塩分の高塩水、電気分解水、次亜塩素酸等の活性液体を貯留する水槽をガイド部材23の下方に配設し、海苔網13を当該活性液体に浸漬させて活性処理を施すものである。また、水槽のほかには、活性処理液体をシャワーリングしたり、噴霧したりするようにしてもよい。
【0050】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の海苔網の干出装置1、海苔養殖システムおよび海苔作業船の作用について説明する。
【0051】
まず、海苔網の干出装置1を用いた海苔の養殖システムにおいては、図4に示すように、種付けされた海苔網13が海面に浸漬されている。
【0052】
そして、海苔網13を干出させて海苔網13を乾燥させ、殺菌および藻を死滅させる。このときには、例えば図5に示すように、海苔網の干出装置1のいずれか一方向図4においては左方から海苔作業船21を侵入させる。
【0053】
そして、海苔作業船21を海苔網13の干出装置1の枠体2の下方に潜るように侵入させることにより、海苔作業船21のガイド部材23の先端部により海苔網の干出装置1の各枠体2,2...および海苔網13が海水中より掬い上げるようにして順次持ち上げられ、当該ガイド部材23上を各枠体2が長辺3を上に脚部4を下方に下げるようにして吊り下げながら後方に移動させられる。続いて、海苔作業船21が通過すると、海苔作業船21のガイド部材23によって直立状態とされた各枠体2,2...が、各浮子11,11の浮力により直立状態のまま水面に着水して直立状態に起立させられていき、図3に示すように、各海苔網13が海中から空中部分へ干出される。
【0054】
つぎに、干出された海苔網13を浸漬させる場合には、各浮子11を連結している2本の転倒用連結手段9a、9bのいずれか一方を、転倒用連結手段9が浮子11に連結されている部分を脚部4の下端部に向かう方向に引っ張ることにより、各浮子11が転倒用連結部材9が連結されている部分が海水中に引き込まれるようにして各脚部4の下端部を中心として回動して各枠体2の全体が転倒されて、図4に示すように、海苔網13を海水に浸漬させることができる。この転倒用連結手段9を引っ張るのは、転倒用連結手段9を海苔作業船21の船体22に連結したり、あるいは船体上の人員が保持して引くとよい。このとき、各枠体2,2...の長辺3に配設された各浮子6の浮力により、海苔網13が海中深く沈下することを防止して、海苔網13を海中の表層域に位置するようになっている。なお、この浮子6は省略することもできる。
【0055】
海苔の育成を行なう場合には1枚の海苔網13を海苔網の干出装置1に展張して行ない、海苔の育苗を行なう場合には複数枚の海苔網13を海苔網の干出装置1に展張して行なうこととなる。
【0056】
図6に示す海苔作業船21aを用いた海苔養殖システムにおいては、海苔網13を干出させる場合には、前記と同様にして前方ガイド部材23aの先端部を海水中に挿入させた状態で海苔作業船21aを各枠体2の下に潜行するようにして進行させることにより行なわれる。掬い上げられた海苔網13から刈り取り機構27によって成長した海苔を刈取って収納庫28に収納する。続いて、海苔が刈取られた海苔網13は、活性処理機構29において所定の活性処理を施される。その後、前記実施形態と同様に各枠体2が浮子11によって海面に起立させられる。本実施形態の海苔作業船21aを用いる場合には、海苔の刈り取りと海苔網の完成処理とを単独で行なうようにしてもよい。
【0057】
図7は 海苔網の干出装置の他の実施形態を示している。本実施形態においては、脚部42の上部に、枠体2の配列方向において少なくとも一方(本実施形態においては両方)に浮力を提供する干出補助部材30として先端に浮子32を備えた2本のアーム31を、ヒンジ34を介して開閉自在に取付けたものである。
本実施形態においては、枠体2を倒した際に長辺部3を干出補助部材30の浮子32によって空中に保持して、海苔網13の干出状態を保持するものである。海が荒天の場合において、枠体2が倒れることがあっても海苔網13を干出させる場合に有効である。また、枠体2を転倒させる方向が決まっている場合には、一方のアーム31のみを開放させるようにするとよい。
【0058】
以上説明したように、本発明の海苔網の干出装置1によれば、海苔網13の干出および浸漬を容易に、かつ迅速に行なうことができ、良質の海苔を養殖することができる。さらに、本発明の海苔網の干出装置1は、複雑な構造を必要としないため、製造コストおよびメンテナンスコストを大幅に削減することができる。さらに、本発明の枠体2は水平な長辺3と両端部の脚部4とを一体的な剛体状に形成しているために、潮流や風波を受けても常にコ字形状を保持することができ、従来のようにひしゃげることがない。よって、常に海苔網13を適正状態を保持して展張することができ、海苔の育成も良好で、収穫率を向上させることができ、海苔網13の損傷を防ぐことができ、コストも低廉にすることができる。
【0059】
また、各枠体2を倒しても干出補助材30により海苔網13を干出位置に保持することができ、海が荒れている場合にいても海苔網13を確実に干出位置に保持することができる。
【0060】
本発明の海苔作業船21、21aによれば、海水に浸漬されている状態の海苔網13の下即ち各枠体2の下を海苔作業船21、21aを通過させると、各枠体2が起立され浮体11の浮力によって海面上に起立させられ、海苔網13が干出位置に保持される。
【0061】
また、本発明の海苔作業船21、21aによれば、海苔作業船21、21aによって各枠体2を起立させると同時に、海苔網13から成長した海苔を刈り取ったり、海苔に対する活性処理を施したり、海苔の刈り取りの直後に海苔の活性処理を施すことができる。
【0062】
本発明の海苔の養殖システムによれば、海苔網13の海水からの干出と海水への浸漬とを容易に変更可能として海苔の養殖を行うことができ、高品質の海苔を得ることができる。
【0063】
また、海苔の養殖システムによれば、海水に浸漬されている状態の海苔網13の下即ち各枠体2の下を海苔作業船21、21aを通過させて、各枠体2を起立させて浮体11の浮力によって海面上に起立させ、海苔網13を干出位置に保持する海苔の養殖を施すことができる。
【0064】
また、海苔の養殖システムによれば、海苔作業船21、21aによって各枠体2を起立させると同時に、海苔網13から成長した海苔を刈り取ったり、海苔網に対する活性処理を施したり、海苔の刈り取りの直後に海苔網の活性処理を施すようにして海苔の養殖を行うことができる。
【0065】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る海苔網の干出装置の実施形態を示す平面図
【図2】図1の左方側面図
【図3】図1の側面図
【図4】本発明に係る海苔網の干出装置の浸漬状態を示す側面図
【図5】本発明に係る海苔網の干出装置の干出方法を示す概略図
【図6】海苔作業船の他の実施形態を示す側面図
【図7】本発明に係る海苔網の干出装置の他の実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0067】
1 海苔網の干出装置
2 枠体
3 長辺
4 脚部
5 T字部
6 浮子
7 回動部材
8 連結手段
9 可動リング
10 連結手段
11 浮子
12a,12b 保持部
13 海苔網
14 伸子棒
15 吊綱
21、21a 海苔作業船
22 船体
23 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に垂設された2本の脚部と、これら脚部を連結する長辺とからなるコ字形状の剛体状の枠体であって前記長辺を並列するように配置されている複数の枠体と、
前記各脚部の端部に枠体の並列方向両側に配設されて前記枠体を起立させる浮子と、
前記各長辺に挿通され、前記各枠体を回動自在に支持する回動部材と、
前記各回動部材に連結され、前記各枠体を連結する連結手段と、
前記長辺の少なくとも一端側の脚部に配設されている各浮子の枠体の並列方向における一端側にそれぞれ連結されて前記各枠体を連結する転倒用連結手段と、
前記各枠体間に張設された海苔網と
を有することを特徴とする海苔網の干出装置。
【請求項2】
前記各脚部の上部に、前記各枠体の配列方向において少なくとも一方に干出補助部材を配列方向に張出して配設したことを特徴とする請求項1に記載の海苔網の干出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の海苔網の干出装置の各枠体の下を通過して各枠体を起立させるガイドを有することを特徴とする海苔作業船。
【請求項4】
前記海苔作業船は海苔刈り取り機構および海苔の活性処理機構の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項3に記載の海苔作業船。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の海苔網の干出装置を用いて海苔網を海面に展張したことを特徴とする海苔の養殖システム。
【請求項6】
海苔網の干出装置の各枠体の下を通過して各枠体を起立させるガイドを有する海苔作業船を備えていることを特徴とする請求項5に記載の海苔の養殖システム。
【請求項7】
前記海苔作業船は海苔刈り取り機構および海苔の活性処理機構の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項6に記載の海苔の養殖システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−89438(P2007−89438A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281267(P2005−281267)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】