説明

海藻の熱処理装置

【課題】あかもく、めかぶ、モズク等の海藻の急速加熱と急速冷却を連続して行うことで、生産性を向上させるとともに光熱水料を低減する。
【解決手段】圧送ポンプに接続した多岐管内に海藻を分岐して流入させることで伝熱面積を拡張し、この多岐管を熱湯槽に通すことで海藻を急速加熱、引き続く予備冷却の後、冷水槽に通して急速冷却する。これにより付着細菌を殺菌するとともに、色調と食感を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あかもく、めかぶ、モズク等食用に供する海藻を殺菌するとともに、色調と食感を良くするために加熱冷却を連続して行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
あかもく、めかぶ、モズクはビタミン、ミネラルを豊富に含み、日本の食卓に欠かせない食品である。採取したこれらの海藻類は包装前に殺菌処理が必要である。また、あかもく、めかぶは褐色であるが、これを加熱して急速に冷却すると美しい緑色に変化し、食感も向上するので加熱冷却処理は不可欠である。一方、「あかもく」は加熱、冷却過程を経ると、粘りが著しく増加する。この粘りの成分が健康増進に役立つとして生産量が急増しており、生産性の向上が望まれている。
【0003】
上記のように、出荷前の加熱冷却工程が不可欠な海藻類の熱処理に関しては、既に多くの発明がなされている。以下にそれらの例を示す。特許文献1は食塩濃度が0.5%〜1.5%の塩水または湯に浸して食感を改善する方法である。特許文献2は海藻をプラスチック袋に入れて冷凍し、出荷時に90〜100℃に加熱後、袋から出して水冷し、水切りして包装する方法である。特許文献3は15℃〜90℃の水酸化カルシュウム溶液に海藻を浸した後、乾燥または塩蔵する方法である。特許文献4は塩化カリウムを含む溶液に湯通しして塩蔵わかめを作る方法である。特許文献5はpH7〜9で70℃以上の液にわかめを40〜300秒間湯通しした後、海水で冷却、最後に急速冷凍する方法である。特許文献6は塩化カルシウム0.1〜0.5%含む熱湯で煮沸するか、塩化カルシウム4.95%を含むニガリ液を5から10%加えた熱湯で海藻を処理する方法である。
これらの特許文献には熱処理における温度、時間、溶液の成分などは詳しく書かれているが、連続して加熱冷却処理を行う装置に関する発明はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−308537号公報
【特許文献2】特開2001−292743号公報
【特許文献3】特開2002−58457号公報
【特許文献4】特公表2004−00002号公報
【特許文献5】特願2004−329113号公報
【特許文献6】特願2005−211039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
あかもく、めかぶ、モズクの加熱と冷却をゆっくり行うと、発色が悪い、吸水量が増えてふやける、粘りが出ないなどの悪影響が出る。このために急速に加熱して、引き続き急速に冷却することが必須である。現在は、海藻の束を熱湯に一定時間浸けて加熱し、その直後、冷水中に浸けて急速に冷却している。この作業は人手に頼っているために解決を要する次の3つの課題を抱えている。
(1)生産性が低く、大量生産ができない。
(2)熱効率が低く燃料費、電気水道料金がかかる。
(3)作業環境が悪いので人件費が多くかかる。
本発明は海藻の加熱・冷却過程を連続化することでこれらの課題の解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題に鑑み、本願発明は、以下の技術を用いて上記の課題を解決した。
(1) 海藻類を複数の細管から構成される分岐管内を通過させながら、まず高温水槽を通して高温加熱処理を行い、引き続き低温水槽を通して冷却処理を行うことで、海藻類の殺菌、発色、食感の向上を連続して実施する。連続加熱冷却処理によって作業を効率化し生産性を向上する。
(2) 高温水槽から排出される温排水を利用して、原料となる海藻類を予備加熱するとともに、低温水槽から排出される冷排水を用いて、高温加熱された多岐管を予備冷却する。これによって加熱冷却工程の熱効率が向上する。
(3)ボイラーで発生した蒸気を多岐管に直接吹き付けることで、加熱の効率を高め、併せて多岐管を蒸気の力で振動させることにより海藻の詰まりを防止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来は人手によって行っていた、海藻の加熱冷却工程を自動化・連続化することができる。これによって生産性の向上、燃料費・電気料金の低減、および人件費の削減が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】に本発明の構成を示す。1は圧送用のポンプである。2は管内を流れる海藻を急速に加熱冷却するための多岐管である。3は海藻を急速に加熱するための高温水槽である。4は加熱槽の水温を高温に保つために吹き込むための蒸気管である。5は加熱槽を出た海藻を予備冷却するための予備冷却槽である。6は循環する予備冷却水を空気で冷却する送風機である。7は予備冷却槽に循環水を供給する水槽である。8は海藻を急速に冷却するための冷却水槽である。熱処理を終えた海藻は流出孔9から取り出す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、まず裁断した、あかもく、めかぶ、モズク等の海藻を圧送ポンプ1によって、熱処理槽に送り出す。ポンプの海藻投入部は高温水槽からの排熱水により加熱される。この予備加熱によって加熱効率が向上すると共に、海藻の流動性が増大、すなわち流動性が向上して圧送ポンプ1の負荷が減少する。
【0010】
ポンプから送り出された海藻は分岐して多岐管2に送り込まれる。多岐管の目的は熱処理槽内で海藻の伝熱面積を増すことである。細い管ほど熱交換効率は高くなるが、管が詰まりやすくなる。従って、多岐管を構成する細管は裁断したあかもく、めかぶ、モズクの大きさに応じて、それらが詰まらない最小の管径とすることが望ましい。多岐管を構成する細管の本数は必要とされる海藻の処理量と管内を通過する時間によって決められる。
【0011】
多岐管が高温の加熱槽3を通過することで、管内を通過する海藻が急速に加熱される。加熱槽はボイラーの蒸気管4から供給される蒸気を、加熱槽内に吹き込むことで高温に保持される。加熱槽に蒸気を直接吹き込むことで装置の簡素化と熱交換効率向上が達成できる。また、高速蒸気を多岐管に当る際の振動で、管中を通過する海藻の詰まりを防止する。吹き込み蒸気によって加熱水の量が増すので、オーバーフローは圧送ポンプ容器の予備加熱に用いる。
【0012】
加熱槽を出た多岐管は予備冷却槽5を通過することで予備冷却される。予備冷却槽の水は送風機6で大気冷却しながら水槽7を循環する。これによって予備冷却の熱効率を高める。次に多岐管は冷却水槽8に入る。冷却槽には冷水を流入させる、あるいは氷を投入することで多岐管内を流れる海藻を急速冷却する。冷却水のオーバーフローは予備冷却水として使うことにより、予備冷却の効率を向上できる。
【実施例】
【0013】
次に、本願発明の詳細を実施例に基づいて説明する。なお、この実施例は当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本願発明は明細書の全体に記載される技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例によってのみ限定されるものでないことは理解されるべきことである。
【実施例】
【0014】
スクリュー式の圧送ポンプ1に、裁断した50kgのあかもくを入れて、その容器を80℃の湯で加温した。採取したあかもくはガサガサした状態であったが、この加温によって流動性が増したあかもくは0.7MPaの圧力で円滑に圧送することができた。ポンプの出口は外径55mm(内径50mm)のステンレス鋼吐出管に接続されている。吐出管の先は外径が25mm(内径21mm)であり、6本に分岐させた全長が4mの多岐管2となる。吐出管の断面積は19.6cmであって、多岐管6本の総断面積は20.8cmとほぼ等しい。
多岐管は熱湯を満たした180x50x50cmの加熱槽3を通る。多岐管にはボイラーで発生した蒸気を、蒸気管4から直接に吹き付けることで、加熱槽の温度を90℃以上に保つことができた。また、蒸気を吹き付ける振動で通過する海藻の目詰まりを防止できた。多岐管は加熱槽を出たあと、予備冷却器5を通過した後に、5℃の冷水を満たした180x50x50cmの冷却水槽8を通過して多岐管から連続して流出する。
【0015】
原料のあかもくは褐色であったが、本装置によって連続して加熱冷却の後、流出したあかもくは全て均一な緑色になっていた。また、原料のあかもくは粘性が少なかったが、流出したあかもくは商品として必要とされる十分な粘性を示した。
原料の50kgのあかもくは約40リットルの体積があり、これを10分間で熱処理することができた。この時に多岐管内を通過したあかもくの流動速度は毎分2mであって、加熱槽を約1分間、冷却槽を約1分間で通過しており、この急速加熱と冷却の結果、良好な発色と粘りの発現が得られた。
【0016】
(比較例)
裁断した50kgのあかもくを、実施例と同じ条件下で吐出させる際に多岐管2を使用せずに、外径55mmの吐出管を延長して、90℃に保った加熱槽と5℃の冷却槽を通過させた。管内を通過する時間はほぼ同じであったが、熱処理後に流出したあかもくは、緑色の部分と褐色の部分が混じった状態であった。これは流通管の表面近傍と中心部の温度差が大きかったため色むらが生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、あかもく、めかぶ、モズク等、食用に供する海藻を急速に加熱し、連続して急速に冷却することが可能である。これによって有害な細菌類を死滅させるとともに、色調や食感に優れた海藻類を製品化することができる。本発明の最大の特徴は海藻の熱処理を自動化、連続化できることであって、この結果として生産性が向上し、燃料費、電気料金、人件費を大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0018】
1:圧送ポンプ
2:多岐管
3:高温水槽
4:蒸気管
5:予備冷却槽
6:送風機
7:水槽
8:冷却水槽
9:流出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細管から構成される分岐管内に海藻類を通過させながら、まず高温水槽を通して高温加熱処理を行い、引き続き低温水槽を通して冷却処理を行うことにより海藻類の殺菌、発色、食感増進を連続して行う海藻類加熱冷却装置。
【請求項2】
高温水槽から排出される温排水で原料となる海藻類を予備加熱するとともに、低温水槽から排出される冷排水を用いて、高温加熱された多岐管を予備冷却する請求項1に記載の海藻類加熱冷却装置。
【請求項3】
ボイラーで発生する蒸気を多岐管に直接吹き付けることで、加熱効率を高めるとともに、蒸気の力で多岐管を振動させて海藻の詰まりを防止する請求項1に記載の海藻類加熱冷却装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−183056(P2012−183056A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64957(P2011−64957)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(592200338)日本素材株式会社 (29)
【出願人】(511073870)株式会社菊地製作所 (1)
【出願人】(507278476)株式会社シーフーズあかま (1)
【Fターム(参考)】