説明

海藻類繊維強化バイオ複合材料及び高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法

本発明は、海藻類繊維強化バイオ複合材料、及び高温粉砕技術を導入して強化材としての海藻類繊維を均一に分散可能なバイオ複合材料の製造方法に係り、さらに詳しくは、溶媒抽出及び脱色により海藻類から得られた海藻類繊維を強化材として高温加圧下で成形を行うことにより製造された環境にやさしいバイオ複合材料と、製造過程に高温粉砕過程を導入して、バイオ複合材料中に海藻類繊維を均一に分散可能な高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法に関する。
本発明は、高分子試料及び強化材からなるバイオ複合材料を高温粉砕技術を用いて製造する方法であって、海藻類繊維を乾燥するステップと、乾燥された海藻類繊維を粉砕するステップと、海藻類繊維を乾燥、粉砕及び解離して微細繊維粒子を得るステップと、高分子試料を乾燥して水分を除去するステップと、生分解性高分子または汎用高分子の高分子試料を粉末状に粉砕するステップと、海藻類繊維と乾燥された高分子試料粉末とを混合して、海藻類繊維と高分子試料粉末との一体形混合物を製造するステップと、前記混合物を金型に充填するステップと、高温加圧下で圧縮成形してバイオ複合材料を製造するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類繊維強化バイオ複合材料、及び高温粉砕技術を導入して強化材としての海藻類繊維を均一に分散可能なバイオ複合材料の製造方法に係り、さらに詳しくは、溶媒抽出及び脱色により海藻類から得られた海藻類繊維を強化材として高温加圧下で成形を行うことにより製造された環境にやさしいバイオ複合材料と、製造過程に高温粉砕過程を導入してバイオ複合材料中に海藻類繊維を均一に分散可能な高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車や建築産業に多用されている高分子複合材料は、ほとんどの場合、ガラス繊維を強化材として用いているが、ガラス繊維は人体に有害であり、しかも、リサイクルし難いため、エネルギー及び環境の側面から多くの問題点を抱えている。人体に有害なガラス繊維の使用量を減らすために、最近、天然繊維強化バイオ複合材料が採用されている。
【0003】
バイオ複合材料は、ガラス繊維強化高分子複合材料に比べて約30%以上軽量であるため、自動車部品に適用される場合、燃費向上(1.6%)による省エネを期待可能な先端新素材である。
【0004】
天然繊維は、ガラス繊維とは異なり、機械に対する磨耗率も低く、しかも軽量であることから、製造工程においても80%の生産エネルギーを節減することができる。特に、天然繊維(約5ウォン/g)は、ガラス繊維(20ウォン/g)の約1/4の値段である。
【0005】
天然繊維はガラス繊維(密度:2.55g/cm3)に比べて軽量であり、しかも、靭性及び比強性に優れている。これまで製造されて使用されているバイオ複合材料は、セルロース系強化材として、主として木質系及び非木質系の天然繊維から得られた粉末や繊維を採用している。
【0006】
しかしながら、セルロース系強化材は、木若しくは天然繊維の成長条件、成長部位や成長期間などによって様々な特性を有し、特に、同じ繊維であるとしても、各部位における組成とサイズが異なる場合が多いため、かような繊維をそのまま強化材として用いる場合には、バイオ複合材料の各部位別に異なる特性を有してしまう場合が多い。なお、木質系の強化材の使用により山林が毀損されるという問題や、最近バイオ複合材料の強化材として頻繁に用いられる亜麻、大麻など非木質系の特殊植物の栽培による副作用が懸念されるという問題もある。
【0007】
これに対し、海藻類、特に、紅藻類は根様糸と呼ばれる繊維を多量含有しており、これらの繊維は直径が数ミクロンであって、あらゆる紅藻類においてほとんど一様なサイズを有している。紅藻類繊維の結晶化度はセルロース繊維と同様であり、特に、漂白された紅藻類繊維の熱的安定性はセルロース繊維に比べて卓越している。
【0008】
海藻類の内部から得られるゲル抽出物は、いずれも食品の添加剤、健康補助食品、寒天材料などとして活用されているが、海藻類繊維の場合には、これまで使用分野がほとんどなく、廃棄物として放置される場合が多い。このため、海藻類繊維をバイオ複合材料の強化材とするものを自動車及び住宅の内外装材などに用いると、海藻類繊維の高付加価値産業材料の活用、廃棄物の低減による環境保護などを期待することができる。特に、海藻類は成長期間が短く、養殖方法によって一様な成分とサイズを有する海藻類繊維が得られるため、海藻類繊維強化バイオ複合材料は、セルロース系繊維強化バイオ複合材料に比べて、相対的に均一な機械的特性が得られ、且つ、海藻類繊維の量産のために海藻類を養殖する場合、海藻類の光合成による二酸化炭素の低減効果をも期待することができる。
【0009】
海藻類繊維強化バイオ複合材料は、既存の天然繊維強化バイオ複合材料に比べて、相対的に優れた動力学的な特性を有し、特に、紅藻類繊維の場合、セルロース繊維よりも抜群の熱的安定性を有している。このため、バイオ複合材料の製造工程に当たって、強化材の熱的安定性に対する懸念が相対的に低く、且つ、海藻類繊維強化材を製造する過程に、海藻類繊維の乾燥、粉砕及び解離工程を同時に行うための高温粉砕技術を導入して、強化材を均一に分散可能なバイオ複合材料を製造することができる。
【0010】
韓国の場合、ユ・グキョンにより出願された「海藻類から抽出した繊維質の脱色過程と精製方法」(例えば、下記の特許文献1参照)が提案されている。これは、海藻類の多糖類を加水分解して除去し、海藻類繊維質を酸化剤と還元剤を用いて漂白する技術であり、海藻類をバイオ複合材料の強化材として用いるという記載はない。
【0011】
また、同出願人により出願された「海藻類及び海藻加工副産物を用いた新素材開発及び環境にやさしい樹脂組成物の製造方法」(例えば、下記の特許文献2参照)が提案されている。同文献には、海藻類繊維の抽出分離に対する簡単な工程と量産方法が開示され、また、食品類包装用のフィルム、生体適合性医療用の材料、生分解性プラスチック製品を開発する目的で、ポリオレフィン高分子との反応押出により新素材を製造する技術も開示されている。
しかしながら、この新素材は、主として機能性新素材フィルムに関するものであり、自動車や住宅の内外装材に適用可能な構造用の材料とは異なる。さらに、新素材の性能と密接な関連性がある海藻類繊維の強化材の分散とこれによる動力学的な特性についての内容が示唆されていないため、一部の包装材フィルムの応用に限界がある。
【0012】
さらに、(株)ペガサスインターナショナルより、内部ゲル抽出物の含量が低いパルプを紅藻類から製造する技術(例えば、下記の特許文献3参照)が出願されている。これは、製紙を行うために少量の内部ゲルを含むパルプを製造する技術である。そして、ユ・ハクチョルにより出願された「紅藻類から製造されたパルプ及び紙、並びにその製法」(例えば、下記の特許文献4)が提案されているが、これは、紅藻類から製造された繊維質をバイオ複合材料の強化材として活用する本発明の技術とは異なる。
【0013】
外国特許の場合、フランス人のElf Atochem S.A.により出願されてアメリカに登録された「Cellulose microfibril-reinforced polymers and their applications」(例えば、下記の特許文献5参照)が提案されている。これは、セルロース系の繊維を強化材として用いた高分子複合材料の製造及び応用に関する技術であり、海藻類繊維を強化材として用いる本発明の技術とは異なる。
【0014】
さらに、フランスのTED LAPIDUS 75008 Paris等により出願登録された「composite yarn, article containing such yarn and method for making it」(例えば、下記の特許文献6参照)技術が提案されているが、これは、海藻類を用いて織物を製造する技術であり、構造材料用途のバイオ複合材料に海藻類繊維を用いる本発明の技術とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】大韓民国特許出願第2004−0051814号公報
【特許文献2】大韓民国特許出願第2004−0049633号公報
【特許文献3】大韓民国特許第2005−0096042号公報
【特許文献4】大韓民国特許第2005−0092297号公報
【特許文献5】アメリカ特許第6,103,790号公報
【特許文献6】EP特許第1,007,774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、海藻類繊維を強化材として用いて動力学的な特性に優れたバイオ複合材料を開発することにより、自動車及び住宅の内外装材として採用可能であり、しかも、熱膨張率が低く、且つ、熱安定性に優れていることから、電子製品のケースに適用可能な海藻類繊維強化バイオ複合材料を提供するところにある。
また、本発明の他の目的は、バイオ複合材料の製造工程に高温粉砕技術を導入して、バイオ複合材料内に添加された海藻類繊維強化材の分散性を高める高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法を提供するところにある。
上記の目的を達成するために、本発明による海藻類繊維強化バイオ複合材料は、既存のセルロース系の天然繊維強化バイオ複合材料に比べて優れた動力学的な特性を示す。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明による海藻類繊維は、海藻類から不純物及び内部ゲルが洗浄、抽出、脱水及び漂白により完全に除去された状態であるため、海藻類繊維の結晶化度はセルロースと同様であり、且つ、熱的特性はセルロースよりも優れている。
また、本発明による海藻類繊維は、既存のバイオ複合材料における木質系若しくは非木質系のセルロース繊維強化材の代わりに、生分解性プラスチックと強化材とからなるバイオ複合材料において強化材繊維として用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既存のセルロース系バイオ複合材料よりも動力学的な特性に優れた海藻類繊維強化バイオ複合材料を提供することができる。
また、既存のバイオ複合材料の製造工程に高温粉砕技術を導入して紅藻類繊維を同時に乾燥、粉砕及び解離することにより微細海藻類繊維が得られる結果、海藻類繊維がバイオ複合材料内に均一に分散可能になると共に、優れた動力学的な特性を示す高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明は、セルロースの結晶化度と同様であり、且つ、より熱的安定性に優れた海藻類繊維をバイオ複合材料の強化材として用いることにより、熱的及び機械的な特性に優れたバイオ複合材料を製造することができる。
さらに、既存のバイオ複合材料の製造工程に簡単な高温粉砕工程を導入することにより、複合材料の製造時において最大の障害となっていた強化材の分散問題を解決することができる。
さらにまた、本発明により開発されたバイオ複合材料は、環境にやさしい特性と省エネ特性を併せ持つ先端新素材であって、住宅、自動車産業、電子産業の部品として適用可能であり、このバイオ複合材料が有する軽量特性、生分解特性などにより省エネと環境保護に大幅に貢献することができる。なお、本発明における強化材の分散性に優れたバイオ複合材料の製造方法は繊維及び粉末強化高分子複合材料の製造にも応用できることから、複合材料の性能向上に寄与することができ、その効果は至大であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明による海藻類繊維強化バイオ複合材料の製造方法を示す工程手順図である。
【図2】図2は、従来の技術によるバイオ複合材料の製造方法を示す工程手順図である。
【図3】図3は、本発明による紅藻類繊維強化バイオ複合材料の良好な分散性を示すSEM写真である。
【図4】図4は、従来の技術による紅藻類繊維強化バイオ複合材料のSEM写真である。
【図5】図5は、本発明による紅藻類繊維強化バイオ複合材料と、従来の技術によるバイオ複合材料強化材/強化材のマトリックスの貯蔵弾性率を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、本発明による紅藻類繊維強化バイオ複合材料と、従来の技術によるバイオ複合材料強化材/強化材のマトリックスのタンデルタを比較して示すグラフである。
【図7】図7は、発明による紅藻類繊維強化バイオ複合材料と、従来の技術によるバイオ複合材料強化材/強化材のマトリックスの貯蔵弾性率を比較して示すグラフである。
【図8】図8は、本発明による紅藻類繊維とセルロース繊維の結晶化度を示すグラフである。
【図9】図9は本発明による紅藻類繊維とセルロース繊維の熱分解特性を比較して示すグラフである。
【図10】図10は、本発明による紅藻類繊維とセルロース繊維の熱分解特性を比較して示すグラフである。
【図11】図11は、マトリックスとしてのポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate:PBS)高分子と強化材としての天然繊維とを混合して得られた種々のバイオ複合材料の熱膨張特性を比較して示すグラフである。
【図12】図12は、紅藻類繊維とPBS高分子とからなるバイオ複合材料の紅藻類の含量による熱膨張特性を比較して示すグラフである。
【図13】図13は、紅藻類繊維とPBS高分子とからなるバイオ複合材料の紅藻類の含量による熱膨張特性を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記及び他の目的、特徴および他の利点は、添付図面と結び付けて後述する発明の詳細な説明から一層明らかになろう。
【0021】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態を詳述する。
図1は、本発明による海藻類繊維強化バイオ複合材料の製造方法を示す工程手順図であり、図2は、従来の技術によるバイオ複合材料の製造方法を示す工程手順図である。
【0022】
本発明は、高分子試料及び強化材からなるバイオ複合材料を高温粉砕技術を用いて製造する方法であって、海藻類繊維を乾燥するステップ(S100)と、乾燥された海藻類繊維を粉砕するステップ(S101)と、海藻類繊維を乾燥、粉砕及び解離して微細繊維粒子を得るステップ(S102)と、高分子試料を乾燥して水分を除去するステップ(S200)と、生分解性高分子または汎用高分子の高分子試料を粉末状に粉砕するステップ(S201)と、海藻類繊維と乾燥された高分子試料粉末とを混合して、海藻類繊維と高分子試料粉末との一体形混合物を製造するステップ(S300)と、前記混合物を金型に充填するステップ(S400)と、高温加圧下で圧縮成形してバイオ複合材料を製造するステップ(S500)と、を含む。
【0023】
前記ステップ(S102)においては、1次粉砕された海藻類繊維を高温粉砕装置を用いて5、000〜10、000rpmにて25〜100秒かけて粉砕・解離して微細繊維粒子を得る。
【0024】
前記生分解性高分子は生分解により分解される物質であり、この物質は、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン(PCL)と澱粉とのブレンド体及びポリブチレンサクシネート(PBS)よりなる群から選ばれる。また、前記汎用高分子は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれる。
【0025】
さらに、前記ステップ(S500)においては、常温から135〜180℃まで1分当たりに5℃ずつ昇温して混合物を順調に溶融した後、1000psiの圧力下で2〜15分かけて圧縮を行う。
【0026】
上述したバイオ複合材料の製造方法においては、海藻類から内部ゲル及び不純物を除去した後、漂白を行うことにより海藻類繊維を製造するステップが先行して行われる。
【0027】
前記海藻類繊維を製造するステップは、海藻類繊維を120℃及び3〜3.5Bar(約44psi)の条件下で1時間ずつ2回に亘って熱水処理した後、100℃及び1Bar(約14.5psi)の条件下で1時間かけて1回熱水処理するステップと、前記海藻類繊維を二酸化塩素により90℃の温度条件下で1時間かけて1回攪拌・漂白を行った後、過酸化水素により90℃の温度条件下で1時間ずつ2回に亘って攪拌・漂白を行うステップと、前記海藻類繊維を清水により洗浄するステップと、前記海藻類繊維を常温において乾燥するステップと、をさらに含む。
【0028】
次に、前記海藻類繊維を乾燥するステップ(S100)が行われるが、このステップは、抽出及び漂白された海藻類繊維を100℃の温度条件下で24時間以上乾燥するステップである。
【0029】
次に、前記乾燥された海藻類繊維を粉砕するステップ(S101)が行われるが、このステップは、ミキサーにより海藻類繊維を30秒かけて細かく粉砕するステップである。
【0030】
次いで、海藻類繊維を乾燥、粉砕及び解離して微細繊維粒子を得るステップ(S102)においては、高温粉砕装置を用いて、1次粉砕された海藻類繊維を粉砕・解離して微細繊維粒子を得る。ここで、海藻類微細繊維粒子は、高温粉砕装置を用いて6、000rpmにて30秒以上粉砕した後、80マイクロメートルの篩を通過したものである。粉砕中に、粉砕装置の内部温度は70〜100℃まで上昇するため、海藻類の乾燥と粉砕及び解離を同時に行うことができる。このとき、海藻類繊維は、高温下で微細繊維粒子に粉砕・解離されるため、余分の水分を除去することが可能である。
【0031】
前記高分子試料としては、生分解性高分子や汎用高分子が使用可能であり、プラスチックペレットを用いて、80℃の真空オーブン中において5時間かけて乾燥して水分を除去する(S200)。これは、高分子試料に含まれている水分によりバイオ複合材料の特性が低下することを防ぐためである。前記乾燥が完了した高分子試料は、ミキサーを用いて粉末状に粉砕する(S201)。
【0032】
次に、海藻類繊維と高分子試料粉末との一体形混合物を製造する(S300)。ここで、一体形混合物とは、乾燥、粉砕及び解離が完了した紅藻類微細繊維粒子内に高分子試料粉末が満遍なく浸透・分散されて繊維と高分子試料粉末との分離が全く行われない状態の混合物を言う。
【0033】
次いで、この混合物を金型内に充填し(S400)、高温加圧下で圧縮成形を行う。これにより、海藻類繊維強化材と高分子試料とからなる分散性に優れたバイオ複合材料が製造される(S500)。
【0034】
本発明の一実施形態においては、高分子試料として生分解性高分子であるポリブチレンサクシネート(PBS)を用い、海藻類繊維として緑藻類と褐藻類及び紅藻類よりなる群から選ばれる紅藻類の繊維を用いて、これらの高分子試料と海藻類繊維を高温下で圧縮成形することによりバイオ複合材料を製造している。その結果、前記バイオ複合材料は50mm×50mmのサイズに成形されている。ここで、PBSを用いたバイオ複合材料の製造工程の最適な条件を確保する目的で金型のサイズを50mm×50mmにした場合、常温から135℃まで1分当たりに5℃ずつ昇温した後、135℃においてマトリックスが十分に溶融され、且つ、樹脂が円滑に流れるように、約15〜20分間の滞留時間をおく高温工程を行う。次に、1000psiの圧力下で10分間圧縮を行い、冷却水を用いて金型の温度を常温まで下げた後、成形が完了したバイオ複合材料を外部衝撃なしに金型から離型する。
【0035】
図3は、本発明により製造されたバイオ複合材料の断面分析写真であり、図4は、従来の技術によるバイオ複合材料の断面分析写真である。同図を参照すると、図3は、本発明により、バイオ複合材料の製造工程に高温粉砕工程が導入された場合であり、バイオ複合材料内において紅藻類繊維が均一に分散されていることが分かる。図4は、紅藻類繊維の高温粉砕を行うことなく、紅藻類繊維と生分解性高分子粉末を単に家庭用のミキサーを用いて混合した場合であり、紅藻類繊維が絡んでおり、しかも、分散が均一になされていないことが分かる。
【0036】
その結果、図3に示すように、本発明の特徴的な様相により高温粉砕工程により乾燥・解離された紅藻類繊維を強化材とするバイオ複合材料は、高分子マトリックスの間において優れた分散性と接着特性を示すのに対し、図4に示すように、紅藻類繊維と生分解性高分子粉末とを混合して製造されたバイオ複合材料は、紅藻類繊維の塊体がバイオ複合材料内に存在する結果、生分解性高分子マトリックスとの接着特性に劣っていることが分かる。
【0037】
図5及び図6は、本発明によるバイオ複合材料と、従来の技術によるバイオ複合材料強化材/強化材のマトリックスの貯蔵弾性率及びタンデルタを−100℃から100℃までの温度範囲で測定してそれぞれ比較したグラフであり、a)は、本発明による紅藻類繊維をバイオ複合材料の強化材として用いた場合、b)は、高温粉砕工程未実施の紅藻類繊維をバイオ複合材料の強化材として用いた場合、c)は、天然繊維であるヘネッケン繊維をバイオ複合材料の強化材として用いた場合、d)は、生分解性プラスチックだけをバイオ複合材料のマトリックスとして用いた場合である。
【0038】
図7は、本発明によるバイオ複合材料と、従来の技術によるバイオ複合材料強化材/強化材のマトリックスの貯蔵弾性率を−100℃及びTgにおいて測定して比較したグラフである。同図を参照すると、本発明による高温粉砕方法により乾燥・解離された紅藻類繊維を強化材として用いた場合、通常の混合方法により製造された紅藻類繊維強化バイオ複合材料及びヘネッケン天然繊維強化バイオ複合材料に比べて優れた動力学的な特性を示すことが分かる。
【0039】
図8は、本発明により製造されたa)漂白精製された紅藻類繊維と、b)結晶性セルロース繊維及びc)未加工紅藻類の結晶化度を分析して示すグラフである。15.4(2θ)及び22.54(2θ)におけるピークのX線回折(XRD)パターンは、紅藻類繊維がセルロース繊維と同様な結晶化度を有することを示唆している。
【0040】
図9及び図10は、a)未加工紅藻類と、b)紅藻類抽出物と、c)本発明により製造された漂白精製された紅藻類繊維及びd)結晶性セルロース粉末の熱分解特性を比較して示すグラフである。同図を参照すると、紅藻類繊維は370℃において最大の分解ピークを示し、350℃において最大の分解ピークを示すセルロース繊維よりも熱的安定性に優れていることが分かる。また、紅藻類及び紅藻類抽出物は、内部に含まれているゲル成分により遥かに低い熱安定性を有し、いくつかのピークが混合されているような様子を示す。特に、紅藻類は、50〜150℃及び220〜320℃の広い温度範囲に亘って熱分解されるような特性を示している。
【0041】
図11は、PBSと様々な天然繊維を混合して得られる混合物から成形されたバイオ複合材料の熱膨張特性を測定して示すグラフであり、ヘネッケン、ケナフ及び広葉樹繊維は全体の混合物の重量を基準として30wt%添加し、抽出された紅藻類繊維及び漂白精製された紅藻類繊維は全体の混合物の重量を基準として60wt%混合した。同図を参照すると、本発明に従い乾燥、粉砕及び解離の行われた漂白精製された紅藻類繊維が強化材として用いられたバイオ複合材料の場合、最も低い熱膨張係数を示していることが分かる。
【0042】
さらに、図12及び図13は、抽出された紅藻類繊維とPBSからなるバイオ複合材料における、紅藻類繊維の含量による熱膨張特性を測定して示すグラフである。図12は、紅藻類繊維がそれぞれ0wt%、20wt%、30wt%、40wt%、50wt%または60wt%の含量にて用いられたバイオ複合材料の熱膨張挙動を測定して示すグラフであり、図13は、図12における各バイオ複合材料の熱膨張係数を示す。同図を参照すると、紅藻類繊維の含量が高くなるほど熱膨張係数が下がることが分かる。したがって、本発明によるバイオ複合材料を発熱電子製品のケースに適用するときに熱変形が極力抑えられる結果、電子製品を安定的に支持及び保護することが可能になる。
【0043】
以上述べたように、本発明によれば、既存のセルロース系バイオ複合材料よりも動力学的な特性に優れた海藻類繊維強化バイオ複合材料を提供することができる。
また、既存のバイオ複合材料の製造工程に高温粉砕技術を導入して紅藻類繊維を同時に乾燥、粉砕及び解離することにより微細海藻類繊維が得られる結果、海藻類繊維がバイオ複合材料内に均一に分散可能になると共に、優れた動力学的な特性を示す高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明は、セルロースの結晶化度と同様であり、且つ、より熱的安定性に優れた海藻類繊維をバイオ複合材料の強化材として用いることにより、熱的及び機械的な特性に優れたバイオ複合材料を製造することができる。
さらに、既存のバイオ複合材料の製造工程に簡単な高温粉砕工程を導入することにより、複合材料の製造時において最大の障害となっていた強化材の分散問題を解決することができる。
さらにまた、本発明により開発されたバイオ複合材料は、環境にやさしい特性と省エネ特性を併せ持つ先端新素材であって、住宅、自動車産業、電子産業の部品として適用可能であり、このバイオ複合材料が有する軽量特性、生分解特性などにより省エネと環境保護に大幅に貢献することができる。なお、本発明における強化材の分散性に優れたバイオ複合材料の製造方法は繊維及び粉末強化高分子複合材料の製造にも応用できることから、複合材料の性能向上に寄与することができ、その効果は至大であると言える。
【0044】
以上、添付図面に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、これは単なる例示的なものに過ぎない。よって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有した者であれば、この発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻類から抽出された繊維を強化材として用いて製造されたバイオ複合材料。
【請求項2】
前記繊維は、海藻類から抽出及び漂白されて、熱的安定性に優れ、且つ、セルロースと同様の結晶化度を有することを特徴とする請求項1に記載のバイオ複合材料。
【請求項3】
高分子試料及び強化材からなるバイオ複合材料を高温粉砕技術を用いて製造する方法であって、
海藻類繊維を乾燥するステップ(S100)と、
乾燥された海藻類繊維を粉砕するステップ(S101)と、
海藻類繊維を乾燥、粉砕及び解離して微細繊維粒子を得るステップ(S102)と、
高分子試料を乾燥して水分を除去するステップ(S200)と、
生分解性高分子または汎用高分子の高分子試料を粉末状に粉砕するステップ(S201)と、
海藻類繊維と乾燥された高分子試料粉末とを混合して、海藻類繊維と高分子試料粉末との一体形混合物を製造するステップ(S300)と、
前記混合物を金型に充填するステップ(S400)と、
高温加圧下で圧縮成形してバイオ複合材料を製造するステップ(S500)と、
を含むことを特徴とする高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(S102)においては、
1次粉砕された海藻類繊維を、高温粉砕装置を用いて、5、000〜10、000rpmにて25〜100秒かけて粉砕・解離して微細繊維粒子を得ることを特徴とする請求項3に記載の高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(S500)においては、
常温から135〜180℃まで1分当たりに5℃ずつ昇温して混合物を順調に溶融した後、1000psiの圧力下で10〜15分かけて圧縮を行うことを特徴とする請求項3に記載の高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記生分解性高分子は生分解により分解される物質であり、この物質は、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン(PCL)と澱粉とのブレンド体及びポリブチレンサクシネート(PBS)よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記汎用高分子は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリカーボネートを含む熱可塑性樹脂よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(S300)においては、
海藻類繊維と高分子試料粉末との一体形混合物に対する前記海藻類繊維の含量が20〜60wt%であることを特徴とする請求項3に記載の高温粉砕技術を用いたバイオ複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−502811(P2010−502811A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527289(P2009−527289)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003454
【国際公開番号】WO2008/050945
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508107087)コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ (6)
【Fターム(参考)】