説明

浸漬処理装置

【課題】搬送用走行体2上に固定されて搬送されてくるワークWを、当該搬送用走行体2ごと上下反転させて処理浴槽1内に浸漬し、当該ワークWの表面処理を行なうことの出来る、構造簡単な浸漬処理装置を提案する。
【解決手段】地上側走行経路3は、回転台15に対する搬送用走行体2の進入経路と退出経路を兼用するもので、待機姿勢にある回転台15の後端側においてのみ、回転第15上のガイドレール17aと接続し、回転台15の後端側から当該回転台15上のガイドレール17aに乗り移った搬送用走行体2を定位置に位置決めして回転台15に固定する位置決め固定手段と、この位置決め固定手段で位置決めされる回転台15上の定位置まで搬送用走行体2を送り込む送り込み手段と、前記位置決め固定手段を固定解除状態と固定作用状態とに切り換える操作手段が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用走行体上に固定されて搬送されてくるワークを、当該搬送用走行体ごと上下反転させて処理浴槽内に浸漬し、当該ワークの表面処理を行なう浸漬処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の浸漬処理装置は、自動車の車体の表面処理を行なうための浸漬処理装置として知られている。即ち、この種の浸漬処理装置は、特許文献1にも記載されるように、ワークを浸漬して表面処理する処理浴槽と、この処理浴槽上を横断する向きの水平支軸の周りに回転自在に支持された回転台と、この回転台を、前記処理浴槽上で略水平になる待機姿勢と当該待機姿勢から前方下方へ回転して上下逆向きとなる反転姿勢との間で正逆回転させる駆動手段を備え、前記回転台上には、前記水平支軸に対し直交する前後方向に沿って搬送用走行体を走行自在に支持案内する走行体案内手段が設けられ、ワークを搭載固定した搬送用走行体を地上側走行経路から待機姿勢にある前記回転体の走行体案内手段上へ移載出来るように構成されている。尚、特許文献1に記載の構成では、搬送用走行体として、車輪のないパレットが使用され、地上側走行経路及び回転台上の走行体案内手段として、前記パレットを滑動自在に支持するローラーコンベヤが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3638283号(特表平9−510681)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された従来の浸漬処理装置では、搬送用走行体(パレット)の走行経路途中の下側に処理浴槽が配設され、待機姿勢の回転台の後端側から当該回転台上に搬送用走行体を進入させて位置決め固定した状態で回転台を回転させ、搬送用走行体ごとワークを上下反転させて処理浴槽内に浸漬し、回転台を待機姿勢に戻した後は、搬送用走行体を前進移動させて回転台の前端側から地上側走行経路上に進出させるものであった。
【0005】
このような処理浴槽に対して搬送用走行体を通過走行させる通過形の浸漬処理装置では、特許文献1にも記載されるように、ワーク(車体)の全長の中央真下に位置する回転台を、その前端寄りに配置した水平支軸の周りに回転させて、処理浴槽に必要な前後方向長さの短縮を図ろうとした場合、回転する回転台が水平支軸に対して前方に大きく張り出すことになるので、回転台の前端側に接続されている地上側走行経路、具体的には、ガイドレールやローラーコンベヤなどと回転台とが干渉しないように、当該回転台の前端側に接続されている地上側走行経路を回転台の回転中は横側方に逃がすなどの対策が必要になり、多大の設備コストがかかることになる。又、回転台上の定位置に搬送用走行体(パレット)を固定する位置決め固定手段が必須であるが、上記のように搬送用走行体通過形の構成では、位置決め固定手段は、後ろ側から進入してくる搬送用走行体を前後両方向に関して位置固定する状態から、前方へ進出移動出来る状態に切り換える必要があり、単に定位置で搬送用走行体を受け止める固定のストッパーを利用することが出来ないので、この位置決め固定手段に関してもコスト高になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することの出来る浸漬処理装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る浸漬処理装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、ワーク(W)を浸漬して表面処理する処理浴槽(1)と、この処理浴槽(1)上を横断する向きの水平支軸(16)の周りに回転自在に支持された回転台(15)と、この回転台(15)を、前記処理浴槽(1)上で略水平になる待機姿勢と当該待機姿勢から前方下方へ回転して上下逆向きとなる反転姿勢との間で正逆回転させる駆動手段(21)を備え、前記回転台(15)上には、前記水平支軸(16)に対し直交する前後方向に沿って搬送用走行体(2)を走行自在に支持案内する走行体案内手段(17a,17b)が設けられ、地上側走行経路(3)から待機姿勢にある前記回転体(15)の走行体案内手段(17a,17b)上へ、ワーク(W)を搭載固定した搬送用走行体(2)を移載出来るように構成された浸漬処理装置において、前記地上側走行経路(3)は、前記回転台(15)に対する搬送用走行体(2)の進入経路と退出経路を兼用するもので、待機姿勢にある回転台(15)の後端側においてのみ前記走行体案内手段(17a,17b)と接続し、前記走行体案内手段(17a,17b)を介して回転台(15)の後端側から当該回転台(15)上に乗り移った搬送用走行体(2)を定位置に位置決めして回転台(15)に固定する位置決め固定手段(43)と、この位置決め固定手段(43)で位置決めされる回転台(15)上の定位置まで搬送用走行体(2)を送り込む送り込み手段(26a,26b)と、前記位置決め固定手段(43)を固定解除状態と固定作用状態とに切り換える操作手段(54a,54b)が設けられた構成になっている。
【0007】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記回転台(15)は、その前後方向中央位置より前端寄りの位置で前記水平支軸(16)により支持し、待機姿勢にある前記回転台(15)の後端部を受け止める支持手段(38)を配設することが出来る。この場合、請求項3に記載のように、前記回転台(15)上の走行体案内手段は、当該回転台(15)を構成する左右一対の前後方向枠材(18a,18b)の上に敷設されて搬送用走行体(2)の車輪(5a〜6b)を支持する左右一対のガイドレール(17a,17b)から構成し、前記支持手段(38)は、左右一対の前記前後方向枠材(18a,18b)の後端部が嵌入する左右一対の位置決めガイド(39a,39b)と、前記前後方向枠材(18a,18b)の後端部を受け止める受け具(40a,40b)とから構成することが出来る。
【0008】
又、請求項4に記載のように、搬送用走行体(2)の底部には、少なくとも前後二組の左右水平方向の被係止ピン(11a〜12b)を架設し、前記位置決め固定手段(43)は、回転台(15)上に進入する搬送用走行体(2)側の前記各被係止ピン(11a〜12b)が水平方向に嵌合する横向き凹入部(46)を備えた少なくとも前後二組の位置決め部材(44a〜44d)と、ロック用可動片(48)とから構成し、ロック用可動片(48)は、各位置決め部材(44a〜44d)の横向き凹入部(46)内に各被係止ピン(11a〜12b)が嵌合した状態の搬送用走行体(2)の後退移動を阻止する固定作用状態と、当該搬送用走行体(2)の後退移動を許す固定解除状態とに切り換え自在に構成することが出来る。この場合、請求項5に記載のように、前記位置決め固定手段(43)のロック用可動片(48)は、搬送用走行体(2)に設けられた被ロック部材(10a,10b)に対して揺動係脱自在に回転台(15)に軸支し、このロック用可動片(48)を前記被ロック部材(10a,10b)に係合する固定作用状態と前記被ロック部材(10a,10b)から離脱した固定解除状態とに保持するためのバネ(53)を併設することが出来る。尚、ロック用可動片(48)を備えたロック機構は、後述する実施例のように左右一対設けることが出来るが、場合によっては、左右の何れか片側にのみ設けることも出来る。
【0009】
更に、請求項6に記載のように、前記操作手段(54a,54b)は、前記ロック用可動片(48)を固定解除状態から固定作用状態に強制揺動させる第一操作片(55)と当該第一操作片(55)の駆動用アクチュエーター(56)、及び前記ロック用可動片(48)を固定作用状態から固定解除状態に強制揺動させる第二操作片(57)と当該第二操作片(57)の駆動用アクチュエーター(58)から構成することが出来る。
【0010】
又、請求項4に記載の構成を採用する場合、請求項7に記載のように、前記位置決め固定手段(43)のロック用可動片(63)は、搬送用走行体(2)に設けられた被ロック部材(10a,10b)に対して揺動係脱自在に回転台(15)に軸支すると共に被操作部(63b)を設け、このロック用可動片(63)を前記被ロック部材(10a,10b)に係合する固定作用状態に付勢保持するためのバネ(75)を併設し、前記操作手段(64)は、回転台(15)が待機姿勢に戻ったときに前記ロック用可動片(63)の被操作部(63b)に作用して、当該ロック用可動片(63)を前記バネ(75)の付勢力に抗して前記被ロック部材(10a,10b)の移動経路から離れた固定解除状態に運動させる、位置固定の操作部材(82)から構成することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、待機姿勢の回転台の後端に接続する地上側走行経路は、当該回転台に対する搬送用走行体の進入経路と退出経路を兼用するものであって、回転台の回転により処理浴槽での浸漬処理が完了した後のワーク搭載搬送用走行体は、待機姿勢の回転台上から後退移動して元の地上側走行経路に戻る構成であって、回転台の前端側には搬送用走行体を退出させる地上側走行経路がない構成であるため、待機姿勢から回転台が前方下方へ回転するとき、当該回転台の後端部が大きく前方に張り出すような位置、即ち、前端寄り位置で回転台が水平支軸により軸支される構成を採用しても、従来のように、退出側の地上側走行経路を構成するガイドレールやローラーコンベヤを左右両側に退避させるような複雑な構成を採り入れる必要がなく、装置全体の構成が簡単になり、安価に実施することが出来る。
【0012】
又、回転台に必要な位置決め固定手段に、待機姿勢の回転台上に進入してくる搬送用走行体を定位置で受け止める固定のストッパー構造を組み込むことが出来、位置決め固定手段の構成も簡単になり、この点でも安価に実施することが出来る。
【0013】
尚、請求項2に記載の構成によれば、先に説明したように、回転台の前後方向中央位置(当該回転台上に位置決め固定される搬送用走行体上のワーク(車体など)の前後方向中央位置)で当該回転台を水平支軸により軸支する場合と比較して、処理浴槽の前後方向長さを短くすることが出来るのであるが、同時に、当該回転台の後端部を受け止める支持手段のみによって、回転台を待機姿勢で確実に安定良く支持させることが出来る。この場合、請求項3に記載の構成によれば、回転台に作用するワーク搭載搬送用走行体側の荷重を効率よく支持手段の受け具に受けさせることが出来ると共に、回転台の左右横方向の振れも確実に防止し、この回転台上に対する搬送用走行体の進入退出を安全に行なわせることが出来る。
【0014】
又、請求項4に記載の構成によれば、回転台側の少なくとも前後2箇所に設けられた被係止ピンと、これら被係止ピンに対応して回転台側に設けられた固定の位置決め部材とで、この回転台上に進入してくる搬送用走行体を定位置で制止させる機能と、回転台が上下反転したときの搬送用走行体の落下を防止する機能の両方を確実に発揮させることが出来、後は、搬送用走行体が後退移動するのを阻止するロック用可動片を安全対策として追加するだけの極めて簡単な構成をもって、回転台上に搬送用走行体を定位置に位置決めして固定する位置決め固定手段を構成することが出来る。この場合、請求項5に記載の構成によれば、ロック用可動片により、回転台上の搬送用走行体の後退移動を確実に阻止することが出来るのであるが、回転台上の搬送用走行体に後退移動力が働いたとき、搬送用走行体側の被ロック部材からロック用可動片に作用する作用力によって当該ロック用可動片が固定解除方向に運動しないように、ロック用可動片の形状と軸支位置とを考慮しておけば、当該ロック用可動片を固定作用状態と固定解除状態とに保持することの出来るバネを追加するだけの簡単な構成により、安全性を高めることが出来る。
【0015】
更に、請求項6に記載の構成によれば、上記のようにバネ力で固定作用状態又は固定解除状態に保持されているロック用可動片を、2つの操作片とその駆動用アクチュエーターとにより確実に固定解除状態又は固定作用状態に切り換えることが出来る。又、請求項7に記載の構成によれば、ロック用可動片をロック作用状態とロック解除状態とに切り換える手段として、シリンダーユニットなどのアクチュエーターが不要であり、位置固定の操作部材とバネとでロック用可動片をロック作用状態とロック解除状態とに切り換えることが出来るので、本発明装置を簡単且つ安価に実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】装置全体の一部縦断側面図である。
【図2】装置全体の平面図である。
【図3】搬送用走行体の構成を説明する、走行体本体を省略した平面図である。
【図4】搬送用走行体の要部の側面図である。
【図5】搬送用走行体の要部の背面図である。
【図6】ホームポジションにある回転台とその周囲の各手段を示す背面図である。
【図7】ホームポジションにある回転台の要部を示す側面図である。
【図8】A図は動作状態にある回転台上の搬送用走行体位置決め手段の一つを示す一部切欠き側面図、B図は同背面図である。
【図9】片側の送り込み手段を示す縦断背面図である。
【図10】A図は片側の送り込み手段を示す平面図、B図は同側面図である。
【図11】図10Aの要部を示す拡大平面図である。
【図12】回転台上の片側の搬送用走行体ロック手段と当該ロック手段の操作手段とを示す平面図である。
【図13】同上の一部省略背面図である。
【図14】同上の動作状態を示す平面図である。
【図15】搬送用走行体を回転台上に固定する位置決め固定手段のロック用可動片とその操作手段の別実施例を示す側面図である。
【図16】図15の要部の背面図である。
【図17】図15の要部の拡大縦断側面図である。
【図18】図15に示すロック用可動片のロック作用状態での縦断背面図である。
【図19】図15に示すロック用可動片のロック作用状態での平面図である。
【図20】図15に示すロック用可動片がロック解除状態からロック作用状態に移る動作を説明する一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2において、1は平面視が長方形の処理浴槽であって、搬送用走行体2の地上側走行経路3の終端部に、その長辺方向が走行経路3と平行になる向きに設置されている。搬送用走行体2の地上側走行経路3は、左右一対のガイドレール4a,4bによって構成され、搬送用走行体2は、図3〜図5に示すように、一方のガイドレール4a上を転動する前後一対の鍔無し車輪5a,6aと、他方のガイドレール4b上を転動すると共に当該ガイドレール4bを挟む鍔を備えた前後一対の鍔付き車輪5b,6bを有するものであって、上面には、ワーク(車体)Wを支持する複数のワーク支持台7と、当該ワークWを搬送用走行体2に固定する複数のワーク固定具8とが設けられ、左右両側辺には、その前後方向長さの後端近傍位置から左右横向きに突出する被動板9a,9bと、前後方向長さの略中央に位置する被ロック部材10a,10bが配設されている。更に搬送用走行体2の底部には、前側左右一対の車輪5a,5bの内側に隣接するように左右一対の被係止ピン11a,11bが架設されると共に、後ろ側左右一対の車輪6a,6bの内側で且つ前側の左右一対の被係止ピン11a,11bの真後ろよりも更に内側に寄った位置に左右一対の被係止ピン12a,12bが架設されている。これら全ての被係止ピン11a〜12bは、各々左右一対の支持板13a,13b間に左右水平向きに架設されたものである。
【0018】
処理浴槽1上には、地上側走行経路3の終端部として、ガイドレール4a,4bに接続する左右一対の固定ガイドレール14a,14bが架設されている。そしてこの固定ガイドレール14a,14bの遊端に隣接するように、処理浴槽1の上側には回転台15が設けられている。この回転台15は、搬送用走行体2の走行方向の全長と略同一の前後方向長さを有するもので、その前後方向の中央位置より固定ガイドレール14a,14bのある後端部とは反対側の前端寄り位置において、処理浴槽1の上側を左右方向に横断する回転水平支軸16によって一定角度範囲内で正逆回転可能に支持されている。而して、図1及び図2に実線で示すように、回転台15が水平の待機姿勢にあるとき、当該回転台15の前端は、処理浴槽1の長辺方向の略中央に位置する。このときに固定ガイドレール14a,14bの遊端に接続する左右一対のガイドレール17a,17bが回転台15上に敷設されている。
【0019】
回転台15は、左右一対の前後方向枠材18a,18bと、これら両前後方向枠材18a,18bの両端どうしを連結する前後一対の左右方向枠材19a,19bとから構成された矩形枠状のものであって、前記ガイドレール17a,17bは、左右一対の前後方向枠材18a,18bの上に敷設されている。前記回転水平支軸16は、回転台15の左右一対の前後方向枠材18a,18bを貫通するものであって、回転台15は、当該前後方向枠材18a,18bにおいて回転水平支軸16に固着一体化されている。この回転水平支軸16の両端は、処理浴槽1の左右両外側に配設された軸受け20a,20bにより自転可能に支持され、一端には駆動手段21が連動連結されている。この駆動手段21は、回転水平支軸16の一端に取り付けられた大径平歯車22と、この大径平歯車22に咬合する小径平歯車23と、この小径平歯車23を出力軸に取り付けられた減速機付きモーター24から構成されている。尚、図6及び図7に示すように、処理浴槽1を跨ぐように地上設置の門形の固定架台25が設けられており、前記軸受け20a,20bやモーター24は、この固定架台25によって支持され、固定ガイドレール14a,14bは、処理浴槽1に直接支持されている。
【0020】
図2に示すように、左右一対の固定ガイドレール14a,14bの外側に位置するように、左右一対の送り込み手段26a,26bが配設されている。これら両送り込み手段26a,26bは、左右対称構造のものであって、その構造を、一方の送り込み手段26aを示す図9〜図11に基づいて説明すると、送り込み手段26a,26bのそれぞれは、固定ガイドレール14a,14bを支持する前後方向枠材27に支持用構造体28を介して支持されたものであり、固定ガイドレール14a,14bと平行な前後方向のガイドレールユニット29と、このガイドレールユニット29に前後方向に移動自在に支持案内される可動体30と、この可動体30を往復駆動するシリンダーユニット31と、前記可動体30上に設けられた被動板受止め具32、及び可動プッシャー33から構成されている。
【0021】
ガイドレールユニット29は、左右一対の対面コ形レール29a,29bと、これら両対面コ形レール29a,29bの下側で両対面コ形レール29a,29bを一体化する溝形材29cから構成され、可動体30は、両対面コ形レール29a,29b内に嵌合する左右一対、前後二組の水平軸周りに自転可能な支持用ローラー30aと、両対面コ形レール29a,29b間に嵌合する上下一対、前後二組の垂直軸周りに自転可能な振れ止め用ローラー30bとにより、ガイドレールユニット29に前後方向に移動自在に支持案内される。被動板受止め具32は、可動体30の上端に固着されて前方へ水平に延出すると共に先端が内側へ直角に折曲するL形基板34の先端後側に固着され、可動プッシャー33は、前記L形基板34の基部側の上側に垂直支軸35の周りに回転可能に軸支されている。
【0022】
可動プッシャー33は、図10に仮想線で示すように、搬送用走行体2の被動板9a,9bの移動経路内へ先端が突出する送り込み姿勢と、図10及び図11に実線で示すように、被動板9a,9bの移動経路から外側へ退避した退避姿勢との間で、前記垂直支軸35の周りに回転し得るものであって、付勢手段36によって送り込み姿勢側に付勢され、当該可動プッシャー33に取り付けられた柱状部材33aがL形基板34の側辺に当接して送り込み姿勢に保持される。付勢手段36は、可動プッシャー33に垂直ピン36aにより軸支連結されたロッド36bと、L形基板34上に取り付けられた軸受け板36c上に垂直支軸36dの周りに回転自在に軸支された揺動板36eと、この揺動板36e上に固着され且つ前記ロッド36bが貫通するロッド支持部材36fと、前記ロッド36bに取り付けられたバネ受け座36gと前記ロッド支持部材36fとの間でロッド36bに遊嵌された圧縮コイルバネ36hから構成されている。而して、図10A及び図11に示すように、可動体30がシリンダーユニット31により後退限位置付近まで後退移動せしめられたとき、付勢手段36の付勢力で送り込み姿勢に保持されていた可動プッシャー33を、その後退限位置への移動に伴って付勢手段36の付勢力に抗して退避姿勢に切り換えるカム板37が、ガイドレールユニット29の片側の対面コ形レール29aの外側に取り付けられ、当該可動体30が後退限位置のホームポジションにあるときは、前記カム板37により退避姿勢に保持されているように構成されている。
【0023】
前記固定架台25上には、回転台15を水平の待機姿勢で支持する支持手段38が配設されている。回転台15は、先に説明した通り、固定ガイドレール14a,14bのある後端部とは反対側の前端寄り位置において回転水平支軸16によって回転可能に支持されているので、図6及び図7に示すように、支持手段38は、水平待機姿勢にある回転台15の後端部、具体的には、ガイドレール17a,17bを支持している左右一対の前後方向枠材27の後端部を支持するものであって、固定架台25の左右方向枠材25aに取り付けられている。即ち、当該支持手段38は、前記左右一対の前後方向枠材27の後端部が嵌入する左右一対の位置決めガイド39a,39bと、この各位置決めガイド39a,39b内で前記前後方向枠材27の後端部を支持する受け具40a,40bから構成されている。前記位置決めガイド39a,39bは、上端部が外拡がりに傾斜した左右一対のガイド板41で構成され、受け具40a,40bは、ネジ機構42により高さ調整自在に構成されている。
【0024】
回転台15上には、固定ガイドレール14a,14b上からこの回転台15のガイドレール17a,17b上に乗り移って前進移動してきた搬送用走行体2を、定位置に位置決めして固定する位置決め固定手段43が設けられている。この位置決め固定手段43は、図2に示す4つの位置決め部材44a〜44dと、図2に示す左右一対のロック機構45a,45bから構成されている。位置決め部材44a〜44dは、図6〜図8に示すように、搬送用走行体2の底部の4つの被係止ピン11a〜12bが当該搬送用走行体2の前進移動に伴って水平方向に嵌合する凹入部46を後側辺から切込み形成した垂直板47から構成され、回転台15を構成する前後一対の左右方向枠材19a,19bの後側に取り付けられている。
【0025】
ロック機構45a,45bは、搬送用走行体2の左右両側辺に取り付けられている左右一対の垂直ピンから成る被ロック部材10a,10bを介して搬送用走行体2が定位置から後退移動するのを阻止するものであって、図12〜図14に示すように、それぞれロック用可動片48を備えている。このロック用可動片48は、回転台15を構成する左右一対の前後方向枠材18a,18bの外側に支持用構造体49を介して取り付けられた水平の軸受け板50に垂直支軸51の周りに回転自在に軸支されたもので、軸受け板50に固着されたストッパーピン52a,52bの間で、図12に示す固定解除状態と図14に示す固定作用状態とに回転切換え自在に構成され、前記垂直支軸51を下向きに付勢すべく前記軸受け板50と垂直支軸51の下端のバネ受け座51aとの間で当該垂直支軸51に遊嵌された複数枚の皿バネ53により、垂直支軸51の周りでの回転に対して大きな摩擦抵抗が与えられており、この摩擦抵抗により、前記固定解除状態と固定作用状態とで保持されるように構成されている。尚、このロック用可動片48は、図14に示す固定作用状態にあるとき、その内側に位置する搬送用走行体2側の被ロック部材10a,10bに対して当該搬送用走行体2の前進方向側に前記垂直支軸51が位置するフック形状のものであって、当該被ロック部材10a,10bの後ろ側に隣接する内側辺48aは、搬送用走行体2の走行方向に対して直角向きにある。従って、このロック用可動片48が図14に示す固定作用状態にある状態で搬送用走行体2が後退移動しようとしたときに、被ロック部材10a,10bからロック用可動片48に作用する作用力では、ロック用可動片48が図12に示す固定解除状態に向かって回転することはない。
【0026】
回転台15を水平待機姿勢で支持する固定架台25上には、図2に示すように、当該回転台15の左右両側辺に設けられている前記ロック機構45a,45bのロック用可動片48に対する操作手段54a,54bが設けられている。この操作手段54a,54bは、図12〜図14に示すように、ロック用可動片48を固定解除状態から固定作用状態に強制揺動させる第一操作片55と当該第一操作片55の駆動用アクチュエーターとしてのシリンダーユニット56、及びロック用可動片48を固定作用状態から固定解除状態に強制揺動させる第二操作片57と当該第二操作片57の駆動用アクチュエーターとしてのシリンダーユニット58から構成されている。ロック用可動片48には、常に軸受け板50やその支持用構造体49に対して外側に位置するように垂直下向きに突設された被操作ピン59が設けられ、前記第一操作片55は、前記被操作ピン59の前方側から後方への揺動により当該被操作ピン59を後方に押し移動させるものであって、固定架台25上に支持された基台60上に垂直支軸61により軸支され、前記第二操作片57は、前記被操作ピン59の後方側から前方への揺動により当該被操作ピン59を前方に押し移動させるものであって、前記基台60上に垂直支軸62により軸支されている。又、各操作片55,57を駆動するシリンダーユニット56,58は、各操作片55,57と前記基台60との間に介装されている。
【0027】
以下、使用方法及び作用について説明すると、ワーク支持台7及びワーク固定具8を利用してワークWを定位置に載置固定した搬送用走行体2は、図示省略しているが従来周知の推進装置、例えばチエン駆動のプッシャーや、搬送用走行体2の底部に走行方向に沿って突設された摩擦駆動用帯状板に圧接する摩擦駆動輪、などの推進装置によって駆動され、地上側走行経路3のガイドレール4a,4b上を処理浴槽1に向かって走行し、地上側走行経路3上のガイドレール4a,4bから処理浴槽1に併設の固定ガイドレール14a,14b上に乗り移り、当該固定ガイドレール14a,14bの両外側に配設された左右一対の送り込み手段26a,26bに引き継がれる位置まで送り込まれる。
【0028】
送り込み手段26a,26bは、図10A及び図11に示すように可動体30が後退限位置のホームポジションにあって、可動プッシャー33がカム板37により退避姿勢に切り換えられており。当該可動プッシャー33より前方の被動板受止め具32のみが、搬送用走行体2の被動板9a,9bの移動経路内に突出した状態にある。而して、前記のように固定ガイドレール14a,14b上に送り込まれる搬送用走行体2は、その被動板9a,9bが、退避姿勢の可動プッシャー33を超えて被動板受止め具32の直前位置に達したところで停止する。このとき回転台15は、図1に実線で示す水平の待機姿勢にあって、その後端部は、図6及び図7に示すように、支持手段38で支持されている。
【0029】
上記のように搬送用走行体2が所定位置まで送り込まれたならば、次に左右一対の送り込み手段26a,26bを作動させる。即ち、シリンダーユニット31により可動体30をホームポジションから前進移動させるのであるが、この前進移動の最初に可動プッシャー33がカム板37から前方に離れて、当該可動プッシャー33が付勢手段36の圧縮コイルバネ36hにより垂直支軸35の周りに回動し、柱状部材33aがL形基板34の側辺に当接する送り込み姿勢に切り換えられる。この結果、所定位置で停止していた搬送用走行体2の被動板9a,9bが送り込み姿勢の可動プッシャー33とその前方位置の被動板受止め具32との間に挟まれ、当該送り込み姿勢の可動プッシャー33が被動板9a,9bを押すことにより、搬送用走行体2が前進移動を開始する。このとき、搬送用走行体2が慣性で可動プッシャー33の速度より高速で前進走行することは、当該可動プッシャー33と一体に前進移動する被動板受止め具32によって防止されている。
【0030】
上記のように左右一対の送り込み手段26a,26bにより被動板9a,9bを介して推進される搬送用走行体2は、固定ガイドレール14a,14b上から水平の待機姿勢にある回転台15のガイドレール17a,17b上に乗り移り、当該搬送用走行体2の全体が回転台15上の定位置まで乗り移ったとき、送り込み手段26a,26bの可動体30が前進限位置で停止する。而して、回転台15上の定位置まで搬送用走行体2が送り込まれたとき、当該搬送用走行体2の底部の4つの被係止ピン11a〜12bは、図7及び図8に示すように、回転台15側の位置決め固定手段43の4つの位置決め部材44a〜44dにおける垂直板47の凹入部46内に水平に嵌合しており、更に搬送用走行体2の左右両側辺の被ロック部材10a,10bは、図12に示すように、前記位置決め固定手段43の左右一対のロック機構45a,45bにおける固定解除状態にあるロック用可動片48の内側に達している。この状態で、各ロック機構45a,45bの外側に位置する操作手段54a,54bの第一操作片55をシリンダーユニット56により駆動し、当該第一操作片55によりロック用可動片48の被操作ピン59を後方へ押し移動させ、以て、ロック用可動片48を固定解除状態から図14に示す固定作用状態まで、垂直支軸51の周りに回動させる。このときのロック用可動片48の回動は、皿バネ53によって与えられている大きな摩擦抵抗に抗して行なわれる。
【0031】
図14に示すように、左右一対のロック機構45a,45bのロック用可動片48が固定作用状態に切り換えられることにより、搬送用走行体2の被ロック部材10a,10bが後方に移動することがロック用可動片48によって阻止される状態になると共に、当該搬送用走行体2が前方に移動することは、当該搬送用走行体2側の4つの被係止ピン11a〜12bが回転台15側の4つの位置決め部材44a〜44dによって阻止されているので、結果として、左右一対の送り込み手段26a,26bにより回転台15上に送り込まれた搬送用走行体2は、当該回転台15上の定位置から前後方向には移動出来ない状態に位置決めされる。又、当該搬送用走行体2が回転台15上のガイドレール17a,17bに対して上方に浮き上がることは、当該搬送用走行体2側の4つの被係止ピン11a〜12bが嵌合している回転台15側の4つの位置決め部材44a〜44d(垂直板47の凹入部46)によって阻止されているので、搬送用走行体2は、回転台15上の定位置に固定されたことになる。
【0032】
以上のようにして、搬送用走行体2を水平の待機姿勢にある回転台15上の定位置に、位置決め固定手段43の位置決め部材44a〜44dとロック機構45a,45bにより位置決めすると共に固定したならば、次に回転台15を駆動手段21により回転水平支軸16の周りで前方下方へ所定角度回転させる。即ち、駆動手段21の減速機付きモーター24を稼働させ、小径平歯車23及び大径平歯車22を介して回転水平支軸16を正転駆動させ、当該回転水平支軸16に前端近傍位置が固定された回転台15を前方下方へ回動させる。この結果、図1に仮想線で示すように、搬送用走行体2が回転台15と共に上下反転するように回転水平支軸16の周りで回転し、当該搬送用走行体2上に固定されているワークWが処理浴槽1内の処理浴中に浸漬される。この処理浴に対するワークWの浸漬処理時の回転水平支軸16の最初の回転停止角度(図示例では185度)、回転中の速度切換え、ワークWの浸漬状態での回転方向の反復切換えなどは、処理内容などに応じて予め設定された処理プログラムによって自動的に実行される。
【0033】
尚、ワークWの浸漬処理のために回転台15を水平の待機姿勢から前方下方へ回動させたとき、当該搬送用走行体2を回転台15上の定位置まで送り込んだ左右一対の送り込み手段26a,26bにおける前進限位置の被動板受止め具32と可動プッシャー33との間から搬送用走行体2側の被動板9a,9bが上方へ退出移動することになる。又、当該搬送用走行体2の被ロック部材10a,10bの後退移動を阻止している位置決め固定手段43のロック機構45a,45bは、操作手段54a,54bに対して上方に離れるように、回転台15と一体に回動するが、このとき、操作手段54a,54bの第一操作片55を、図14に仮想線で示す後退限位置までシリンダーユニット56により戻しておけば、ロック用可動片48の被操作ピン59が、操作手段54a,54b側の第一操作片55と第二操作片57との間から容易に上方に退出移動することになる。而して、水平の待機姿勢から回動した状態の回転台15側のロック機構45a,45bのロック用可動片48は、皿バネ53により与えられている摩擦抵抗により、被ロック部材10a,10bの後退移動を阻止する固定作用状態に保持されることになる。
【0034】
ワークWの浸漬処理が完了すれば、駆動手段21により回転台15を水平の待機姿勢に復帰回動させる。回転台15が、その後端部が支持手段38によって支持される水平の待機姿勢に復帰したとき、当該回転台15上の定位置に位置決め固定手段43により位置決め固定されている搬送用走行体2の左右一対の被動板9a,9bは、送り込み手段26a,26bにおける前進限位置の被動板受止め具32と可動プッシャー33との間へ下向きに嵌まり込むと同時に、当該搬送用走行体2側の左右一対の被ロック部材10a,10bを固定している可動台15側の左右一対のロック機構45a,45bの固定作用状態にあるロック用可動片48の被操作ピン59も、操作手段54a,54bにおける第一操作片55と第二操作片57との間に下向きに嵌まり込み、左右一対の送り込み手段26a,26bにより搬送用走行体2を回転台15上の定位置まで送り込んだ直後の状態に戻ることになる。
【0035】
従って、回転台15が水平の待機姿勢に復帰した後、図14に仮想線で示すように、操作手段54a,54bにおける第二操作片57をシリンダーユニット58により前方に駆動して、当該第二操作片57により、回転台15側のロック機構45a,45bにおけるロック用可動片48の被操作ピン59を前方に押して、当該ロック用可動片48を図12に示す固定解除状態に復帰させ、続いて、左右一対の送り込み手段26a,26bの可動体30を前進限位置から後退移動させることにより、当該可動体30と一体に後退移動する被動板受止め具32により、搬送用走行体2側の被動板9a,9bを介して当該搬送用走行体2を、回転台15のガイドレール17a,17b上から固定ガイドレール14a,14b上へ引き込み移動させることが出来る。可動体30が後退限位置のホームポジションに達したとき、搬送用走行体2は、固定ガイドレール14a,14b上の所定位置に達しているので、図示省略している推進装置により、当該搬送用走行体2を再び地上側走行経路3側へ送り戻せば良い。
【0036】
次に、回転台15上に乗り移った搬送用走行体2を定位置に位置決めして回転台15に固定する位置決め固定手段43のロック用可動片とその操作手段の別実施例を、図15〜図20に基づいて説明する。この別実施例に係るロック用可動片63とその操作手段64は、先の実施例に示すロック用可動片48とその操作手段54a,54bと同様に、搬送用走行体2の左右両側辺に設けられた被ロック部材10a,10b各々に対応して左右一対設けられるが、片側のロック用可動片63とその操作手段64について図示及び説明する。
【0037】
回転台15の側辺には支持板65が突設され、この支持板65上に突設された左右一対の軸受け板66間にロック用可動片63の前端部が左右水平向きの支軸67により上下揺動自在に軸支され、当該ロック用可動片63の後端部から上向きに係止部63aが突設されている。このロック用可動片63には、このロック用可動片63の上下揺動運動に連動して前後直線方向に往復移動する被操作部63bが設けられている。この被操作部63bは、上端がロック用可動片63の左右両側に支軸68により前後揺動自在に連結された左右一対のリンク69a,69bと、両リンク69a,69b間の下端部に左右水平向きの支軸70により軸支されたカム従動ローラー71と、左右一対の軸受け板66に設けられた前後方向に長い案内用長孔72に嵌合するように前記支軸70の両端に支承された左右一対のガイドローラー73a,73bによって構成されている。又、前記支軸70には、左右一対のリンク69a,69bの外側において支持板65上を転動する左右一対の支持用ローラー74a,74bが支承されている。
【0038】
更に、前記支軸70を案内用長孔72の後端側に付勢する圧縮コイルバネ75が併設されている。この圧縮コイルバネ75は、左右一対の軸受け板66より前方に離れた位置で支持板65上に突設されたバネ受け座76と、前記支軸70に前端が連結され且つ他端側が前記バネ受け座76を貫通する前後方向のロッド77に設けられた位置調整自在なバネ受け座78との間で、前記ロッド77に外嵌している。ロッド77の前端は、カム従動ローラー71を挟む状態で支軸70に上下揺動自在に連結されたコ形部材79に固着されている。80はロッド77の後端に取り付けられたストッパー部材である。
【0039】
支持板65には、カム従動ローラー71の前後移動経路の下側で前後方向に長い長孔81が設けられている。そして、図15〜図17に示すように、固定架台25上には、回転台15が水平の待機位置にあるとき、前記支持板65の長孔81を経由して当該支持板65より上方に突出する操作部材82が支持部材83を介して配設されている。この操作部材82は、前後方向に沿った偏平板から形成されたもので、その上辺には、支持板65の長孔81から上向きに突出したときに前記カム従動ローラー71を圧縮コイルバネ75の付勢力に抗して前方へ強制移動させる傾斜カム面82aを備えている。即ち、この実施例におけるロック用可動片63の操作手段64は、固定架台25側に位置固定された前記操作部材82のみによって構成されている。
【0040】
上記構成によれば、図15〜図17に示すように、回転台15が水平の待機位置にあるとき、固定架台25側にあって位置固定の操作部材82が、回転台15側の支持板65の長孔81を経由して当該支持板65より上方に突出し、その傾斜カム面82aがカム従動ローラー71を圧縮コイルバネ75の付勢力に抗して前方へ強制移動させている。即ち、回転台15が水平の待機位置にあるときには、カム従動ローラー71、支軸70、支持用ローラー74a,74b、及びガイドローラー73a,73bが案内用長孔72の前端側に移動しており、左右一対のリンク69a,69bの下端が前方に引っ張られてロック用可動片63を下方に引き寄せている。即ち、当該ロック用可動片63は、支軸67の周りで下方に傾動して、その後端部の係止部63aが、回転台15上に対する搬送用走行体2の進入退出走行時の被ロック部材10a,10bの移動経路より下側に離れたロック解除状態に切り換えられていることになる。従って、水平の待機位置にある回転台15上に、先の実施例と同様に搬送用走行体2を進入させることが出来る。
【0041】
搬送用走行体2が回転台15上の所定位置に達して、先の実施例と同様に、回転台15側の位置決め部材44a〜44dに搬送用走行体2側の被係止ピン11a〜12bが嵌合したならば、図20に示すように、回転台15を回転水平支軸16の周りに前下がりの方向に回転駆動すると、この回転台15の回転に伴って、当該回転台15側のカム従動ローラー71が、固定架台25側にあって位置固定の操作部材82から上方に離れてゆくことになり、その結果、回転台15の回転に伴ってカム従動ローラー71が圧縮コイルバネ75の付勢力によって後方に押圧移動せしめられる。この圧縮コイルバネ75の付勢力は、カム従動ローラー71、支軸70、支持用ローラー74a,74b、及びガイドローラー73a,73bを案内用長孔72の前端位置まで移動させ、左右一対のリンク69a,69bを介してロック用可動片63を押し上げることになるので、回転台15が少し回転して操作部材82が回転台15側の支持板65の長孔81から下方に抜出したときには、ガイドローラー73a,73bが案内用長孔72の前端位置(前進限位置)に達し、ロック用可動片63に対して左右一対のリンク69a,69bが略直角の支持姿勢になり、ロック用可動片63は、回転台15上の定位置に位置する搬送用走行体2の被ロック部材10a,10bの直後に後端部の係止部63aが位置するロック作用状態に切り換えられていることになる。
【0042】
上記のように回転台15の回転初期段階でロック用可動片63が自動的にロック解除状態からロック作用状態に切り換えられるので、回転台15上の定位置に移載された搬送用走行体2は、回転台15側の位置決め部材44a〜44dに搬送用走行体2側の被係止ピン11a〜12bが嵌合することと、搬送用走行体2側の被ロック部材10a,10bの直後に回転台15側のロック作用状態にあるロック用可動片63が位置することとによって、先の実施例と同様に、搬送用走行体2を回転台15上の定位置に固定することが出来る。
【0043】
回転台15が逆回転して元の水平待機位置に復帰したときは、固定架台25側の操作部材82が、前記のように回転台15側の支持板65の長孔81内に上向きに進入し、その傾斜カム面82aがカム従動ローラー71を介して左右一対のリンク69a,69bの下端を圧縮コイルバネ75の付勢力に抗して前方へ強制移動させ、ロック用可動片63を下方に引き寄せてロック解除状態に切り換える。従って、当該ロック用可動片63の後端部の係止部63aが、回転台15上に対する搬送用走行体2の進入退出走行時の被ロック部材10a,10bの移動経路より下側に離れるので、水平待機位置の回転台15上から搬送用走行体2を、先の実施例と同様に退出移動させることが出来る。
【0044】
尚、回転台15上で搬送用走行体2を走行自在に支持案内する走行体案内手段として、ガイドレール17a,17bを示したが、搬送用走行体2側にソリ状レールが設けられている場合は、回転台15上には当該ソリ状レールを介して搬送用走行体2を走行自在に支持案内するローラー列から成る走行体案内手段を設けることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の浸漬処理装置は、搬送用走行体上に固定されて搬送されてくる自動車の車体を、当該搬送用走行体ごと上下反転させて、当該車体に対する塗装又は塗装前後の表面処理を行なう処理浴槽内に浸漬して、当該車体の表面処理を行なう浸漬処理装置として活用出来る。
【符号の説明】
【0046】
1 処理浴槽
2 搬送用走行体
3 地上側走行経路
4a,4b,14a,14b,17a,17b ガイドレール
9a,9b 被動板
10a,10b 被ロック部材
11a〜12b 被係止ピン
15 回転台
16 回転水平支軸
21 駆動手段
24 減速機付きモーター
26a,26b 送り込み手段
29 ガイドレールユニット
30 可動体
31,56,58 シリンダーユニット
32 被動板受止め具
33 可動プッシャー
34 L形基板
36 付勢手段
36h 圧縮コイルバネ
37 カム板
38 支持手段
39a,39b 位置決めガイド
40a,40b 受け具
43 位置決め固定手段
44a〜44d 位置決め部材
45a,45b ロック機構
48,63 ロック用可動片
53 皿バネ
54a,54b,64 操作手段
55,57 操作片
59 被操作ピン
63a 係止部
63b 被操作部
65 支持板
66 軸受け板
69a,69b リンク
71 カム従動ローラー
72 案内用長孔
73a,73b ガイドローラー
74a,74b 支持用ローラー
75 圧縮コイルバネ
81 長孔
82 操作部材
82a 傾斜カム面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを浸漬して表面処理する処理浴槽と、この処理浴槽上を横断する向きの水平支軸の周りに回転自在に支持された回転台と、この回転台を、前記処理浴槽上で略水平になる待機姿勢と当該待機姿勢から前方下方へ回転して上下逆向きとなる反転姿勢との間で正逆回転させる駆動手段を備え、前記回転台上には、前記水平支軸に対し直交する前後方向に沿って搬送用走行体を走行自在に支持案内する走行体案内手段が設けられ、地上側走行経路から待機姿勢にある前記回転体の走行体案内手段上へ、ワークを搭載固定した搬送用走行体を移載出来るように構成された浸漬処理装置において、前記地上側走行経路は、前記回転台に対する搬送用走行体の進入経路と退出経路を兼用するもので、待機姿勢にある回転台の後端側においてのみ前記走行体案内手段と接続し、前記走行体案内手段を介して回転台の後端側から当該回転台上に乗り移った搬送用走行体を定位置に位置決めして回転台に固定する位置決め固定手段と、この位置決め固定手段で位置決めされる回転台上の定位置まで搬送用走行体を送り込む送り込み手段と、前記位置決め固定手段を固定解除状態と固定作用状態とに切り換える操作手段が設けられた、浸漬処理装置。
【請求項2】
前記回転台は、その前後方向中央位置より前端寄りの位置で前記水平支軸により支持され、待機姿勢にある前記回転台の後端部を受け止める支持手段が配設されている、請求項1に記載の浸漬処理装置。
【請求項3】
前記回転台上の走行体案内手段は、当該回転台を構成する左右一対の前後方向枠材の上に敷設されて搬送用走行体の車輪を支持する左右一対のガイドレールから構成され、前記支持手段は、左右一対の前記前後方向枠材の後端部が嵌入する左右一対の位置決めガイドと、前記前後方向枠材の後端部を受け止める受け具とから構成されている、請求項2に記載の浸漬処理装置。
【請求項4】
搬送用走行体の底部には、少なくとも前後二組の左右水平方向の被係止ピンが架設され、前記位置決め固定手段は、回転台上に進入する搬送用走行体側の前記各被係止ピンが水平方向に嵌合する横向き凹入部を備えた少なくとも前後二組の位置決め部材と、ロック用可動片とから構成され、前記ロック用可動片は、各位置決め部材の横向き凹入部内に前記各被係止ピンが嵌合した状態の搬送用走行体の後退移動を阻止する固定作用状態と、当該搬送用走行体の後退移動を許す固定解除状態とに切り換え自在に構成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の浸漬処理装置。
【請求項5】
前記位置決め固定手段のロック用可動片は、搬送用走行体に設けられた被ロック部材に対して揺動係脱自在に回転台に軸支され、このロック用可動片を前記被ロック部材に係合する固定作用状態と前記被ロック部材から離脱した固定解除状態とに保持するためのバネが併設されている、請求項4に記載の浸漬処理装置。
【請求項6】
前記操作手段は、前記ロック用可動片を固定解除状態から固定作用状態に強制揺動させる第一操作片と当該第一操作片の駆動用アクチュエーター、及び前記ロック用可動片を固定作用状態から固定解除状態に強制揺動させる第二操作片と当該第二操作片の駆動用アクチュエーターから構成されている、請求項5に記載の浸漬処理装置。
【請求項7】
前記位置決め固定手段のロック用可動片は、搬送用走行体に設けられた被ロック部材に対して揺動係脱自在に回転台に軸支されると共に被操作部が設けられ、前記ロック用可動片を前記被ロック部材に係合する固定作用状態に付勢保持するためのバネが併設され、前記操作手段は、回転台が待機姿勢に戻ったときに前記ロック用可動片の被操作部に作用して、当該ロック用可動片を前記バネの付勢力に抗して前記被ロック部材の移動経路から離れた固定解除状態に運動させる、位置固定の操作部材から構成されている、請求項4に記載の浸漬処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−16660(P2012−16660A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155439(P2010−155439)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】