説明

浸漬液及びその製造方法並びに高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法

【課題】ガラス繊維織物の接合強度を向上させる浸漬液及びその製造方法、並びに高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、(a)フルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体を含む浸漬液の中に、ガラス繊維織物を浸漬するステップS23と、(b)浸漬したガラス繊維織物を乾燥させ、ガラス繊維織物の表面に接合膜を付着させるステップS24と、(c)フルオロカーボン樹脂薄膜により、ガラス繊維織物の表面に付着された接合膜を覆うステップS25と、(d)フルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物の接合膜とを熱圧着するステップS26とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬液及びその製造方法に関し、特に浸漬液により高分子被覆膜を有するガラス繊維織物を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外の耐候性を備える生地は、例えば、戸外の広告看板、雨よけ、日傘、テント、個人用の登山リュックサック、登山用保温コートなど、応用範囲が非常に広い。
【0003】
耐候性を備える生地は、一般の生地と異なり、劣悪な天候状況に耐え、雨水に洗われたり、太陽光に曝されたり、高山における強烈な紫外線に曝されたりしても、元来備える材料特性を保持しなければならないため、耐候性が低下したり、材質が硬化したり脆くなったりして性質が変化することを防ぐ必要がある。また、耐候性を備える生地は、一般の生地よりも高い耐磨耗性及び耐酸アルカリ性を備える以外に、一般の生地と同様に軽量かつ薄型という特性を備える必要がある。
【0004】
一般に生地の表面には、耐候性を向上させるために、1層の耐候性樹脂フィルムが形成されている。代表的な方法として、生地表面に耐候性樹脂の薄膜を直接、熱圧着する方法がある。しかし、この熱圧着方式は、生地と薄膜材料との適合性が好ましくなく、接合強度不足が発生することがあった。そのため、使用時間が延びるに従い、耐候性樹脂の薄膜が生地から次第に剥離し、元々備わっていた耐候性が生地から失われるおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、その目的は、ガラス繊維織物の接合強度が不足することを防ぐ浸漬液及びその製造方法並びに高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、(a)フルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体を含む浸漬液の中に、ガラス繊維織物を浸漬するステップと、(b)前記浸漬したガラス繊維織物を乾燥させ、前記ガラス繊維織物の表面に接合膜を付着させるステップと、(c)フルオロカーボン樹脂薄膜により、前記ガラス繊維織物の表面に付着された前記接合膜を覆うステップと、(d)前記フルオロカーボン樹脂薄膜と前記ガラス繊維織物の前記接合膜とを熱圧着するステップと、を含む。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記ステップ(a)の前に、(e1)含フッ素アルコール、メチルシラン、臭素含有アルケン及び水酸化ナトリウムを反応させてフッ素化シリコーングラフト共重合体を生成するステップと、(e2)フルオロカーボン高分子粉末、界面活性剤及び水と、前記ステップ(e1)で生成した前記フッ素化シリコーングラフト共重合体とを混合し、浸漬液を生成するステップと、をさらに含む。
【0008】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、ステップ(d)において、前記フルオロカーボン樹脂薄膜と、前記ガラス繊維織物の前記接合膜とを熱圧着する際、温度は220℃〜380℃であり、圧力は20psi〜200psiである。
【0009】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、ステップ(b)において、前記浸漬したガラス繊維織物を乾燥する際の温度は150℃〜400℃である。
【0010】
請求項5の発明では、請求項1の発明において、前記フルオロカーボン高分子粉末は、PTFE、PVDF、PCTFE、PVF、PFA、FEP又はETFEからなる。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項6の発明では、35質量%〜95質量%のフルオロカーボン高分子分散液と、3質量%〜10質量%のフッ素化シリコーングラフト共重合体とを含み、前記フルオロカーボン高分子分散液は、35質量%〜60質量%のフルオロカーボン高分子粉末と、5質量%〜20質量%の界面活性剤と、5質量%〜20質量%の水と、を含む。
【0012】
請求項7の発明では、請求項6の発明において、前記フッ素化シリコーングラフト共重合体は、含フッ素アルコール、メチルシラン、臭素含有アルケン及び水酸化ナトリウムを反応して生成されたものである。
【0013】
請求項8の発明では、請求項7の発明において、前記含フッ素アルコールは、2,2,2−トリフルオロエタノール、4−トリフルオロメトキシフェノール、3,3,3−トリフルオロプロパノール、4−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、2−メチル−4,4,4−トリフルオロブタノール又は4,4,4−トリフルオロブタノールであり、前記メチルシランは、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体であり、前記臭素含有アルケンは、臭化アリル、1−ブロモ−3−ブテン、5−ブロモ−1−ペンテン又は6−ブロモ−1−ヘキセンである。
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項9の発明では、(a)0.15〜0.30モルの含フッ素アルコールと、0.3×10−3〜3.0×10−3モルのメチルシランと、1.5〜3.0モルの臭素含有アルケンと、20〜50mlの水酸化ナトリウムとを反応させてフッ素化シリコーングラフト共重合体を生成するステップと、(b)フルオロカーボン高分子分散液に、フッ素化シリコーングラフト共重合体を加えるステップと、を含む。
【0015】
請求項10の発明では、請求項9の発明において、前記ステップ(a)は、(a1)2,2,2−トリフルオロエタノール、水酸化ナトリウム及び臭化アリルの混合液を40℃の温度で2時間反応させるステップと、(a2)前記反応後の混合液に、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体を加え、60℃の温度で24時間反応させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浸漬液及びその製造方法並びに高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法は、浸漬液によりガラス繊維織物の表面に接合膜を形成することで、ガラス繊維織物とフルオロカーボン樹脂薄膜との接着強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例による浸漬液の製造方法を示す流れ図である。
【図2】本発明の一実施例による高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法を示す流れ図である。
【図3】本発明の一実施例による高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造装置を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施例による高分子被覆膜を有するガラス繊維織物を電子顕微鏡で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施例による浸漬液及びその製造方法並びに高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法は、浸漬液の中のフルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体を利用し、ガラス繊維織物の表面に接合膜を形成する。この製造工程では、接合膜の化学的な接着効果及び物理的な接着効果により、フルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物との接合強度を有効に向上することができる。
【0020】
(I)浸漬液の製造方法
以下、まず、本発明の一実施例による浸漬液及びその製造方法を説明する。図1は、本発明の一実施例による浸漬液の製造方法を示す流れ図である。
【0021】
図1を参照する。まず、ステップS11に示すように、含フッ素アルコール(fluorine−containing alcohol)、メチルシラン(methylsilane)、臭素含有アルケン(bromine−containing alkene)及び水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)を反応させてフッ素化シリコーングラフト共重合体(graft copolymer containing silicon and fluoride)を生成する。フッ素化シリコーングラフト共重合体を生成する含フッ素アルコールとしては、2,2,2−トリフルオロエタノール(2,2,2−trifluoroethanol)、4−トリフルオロメトキシフェノール(4−trifluoromethoxyphenol)、3,3,3−トリフルオロプロパノール(3,3,3−trifluoropropanol)、4−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール(4−(trifluoromethyl)−benzyl alcohol)、2−メチル−4,4,4−トリフルオロブタノール(2−methyl−4,4,4−trifluorobutanol)及び4,4,4−トリフルオロブタノール(4,4,4−trifluorobutanol)が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。フッ素化シリコーングラフト共重合体の生成に使用するメチルシランとしては、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体(poly(dimethylsiloxane−co−methylhydrosiloxane))及びトリメチルシリル末端(trimethylsilyl terminated)の共重合体であって、分子量350〜13000であるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フッ素化シリコーングラフト共重合体の生成に使用する臭素含有アルケンとしては、臭化アリル(allyl bromide)、1−ブロモ−3−ブテン(1−bromo−3−butene)、5−ブロモ−1−ペンテン(5−bromo−1−pentene)及び6−ブロモ−1−ヘキセン(6−bromo−1−hexene)が挙げられる、これらに限定されるものではない。また、水酸化ナトリウムの濃度は約10%〜80%である。含フッ素アルコールは0.15〜0.30モルであり、メチルシランは0.3×10−3〜3.0×10−3モルであり、臭素含有アルケンは1.5〜3.0モルであり、水酸化ナトリウムは20〜50mlである。
【0022】
本実施例は、例えば2,2,2−トリフルオロエタノール、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体及び臭化アリルを、反応させてフッ素化シリコーングラフト共重合体を生成するステップを行う。まず、28ml、濃度50%の水酸化ナトリウムの中に、2,2,2−トリフルオロエタノールを20.6g入れて均一に混合する。続いて、この混合液の中に24.6gの臭化アリルを加える。その後、前述の混合した反応物を約40℃の温度で、第1段階の反応を約2時間行う。続いて、0.16gのジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体を加え、約60℃の温度で、2段階目の反応を約24時間行う。
【0023】
前述した2段階の反応を行った後、吸引濾過を行って溶剤を除去し、脱イオン水でケーキ洗浄後に乾燥させる。このように、フッ素化シリコーングラフト共重合体の粉末顆粒を得る。上述のステップにより反応して生成されるフッ素化シリコーングラフト共重合体は、以下の式で表される。
【化1】

【0024】
ステップS12において、フッ素化シリコーングラフト共重合体の粉末顆粒を生成した後、フルオロカーボン高分子分散液に加えて浸漬液を得る。本実施例のフルオロカーボン高分子分散液は、浸漬液の35質量%〜95質量%であり、フッ素化シリコーングラフト共重合体は、浸漬液の3質量%〜10質量%である。
【0025】
さらに、フルオロカーボン高分子分散液は、フルオロカーボン高分子粉末、界面活性剤及び水を含む。フルオロカーボン高分子粉末は、フルオロカーボン高分子分散液の35質量%〜60質量%である。界面活性剤は、フルオロカーボン高分子分散液の5質量%〜20質量%である。水は、フルオロカーボン高分子分散液の5質量%〜20質量%である。実際には、フルオロカーボン高分子粉末の材料は、ガラス繊維織物の高分子被覆膜の材料に応じて決定できる。フルオロカーボン高分子粉末の材料は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリビニルホルマール)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)又はETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン)である。
【0026】
他の実施例において、浸漬液は、エポキシ基の変性シリコーン樹脂を選択的に含有し、浸漬液の2質量%〜10質量%である。エポキシ基の変性シリコーン樹脂は、ガラス繊維織物のOH官能基と反応して接着効果を得て、ガラス繊維織物の表面に、高分子被覆膜との適合性が高い界面を設ける。
【0027】
本実施例の製造方法では、まず、ステップS11において、反応によりフッ素化シリコーングラフト共重合体を生成してから、ステップS12において、フルオロカーボン高分子分散液の中にフッ素化シリコーングラフト共重合体を加え、浸漬液を生成する。
【0028】
(II)高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法
図2及び図3を参照する。ガラス繊維織物は、ステップS21において洗浄した後、ステップS22において乾燥させる。図3に示すように、製造装置300は、洗浄槽341の中の洗浄液351(例えば、純水)により、ガラス繊維織物310の表面を洗浄した後、ガラス繊維織物310を第1のオーブン371に入れる。本実施例において、第1のオーブン371は、洗浄した後のガラス繊維織物310を50℃〜150℃で乾燥させる。ここで、乾燥温度は、必ずしも50℃〜150℃に限定されるものではなく、当業者が多くの実験を行わなくとも分かるように、ガラス繊維織物が破壊されない限り、実験条件に応じて適宜変更してもよい。
【0029】
ステップS23において、浸漬液の中にガラス繊維織物を浸漬する。図3に示すように、洗浄して乾燥させたガラス繊維織物310を浸漬槽342に通す。浸漬槽342の中の浸漬液352は、前述の製造工程により生成し、少なくともフルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体を含む。
【0030】
次に、ステップS24において、浸漬した後のガラス繊維織物を乾燥させる。製造装置300では、第2のオーブン372の中で、浸漬した後のガラス繊維織物310をベーク加熱し、ガラス繊維織物310の表面に付着するように接合膜を形成する。この接合膜には、主に前述のフルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体が含まれる。本実施例では、第2のオーブン372により、浸漬した後のガラス繊維織物310を約150℃〜400℃でベーク加熱する。特定の実施例において、第2のオーブン372の温度は280℃〜340℃である。
【0031】
続いて、ステップS25において、ガラス繊維織物の表面に設けられた接合膜をフルオロカーボン樹脂薄膜により覆う。このフルオロカーボン樹脂薄膜の材料は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリビニルホルマール)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー)、FEP(パーフルオロエチレン−プロペンコポリマー)又はETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン)である。フルオロカーボン樹脂薄膜の中のフルオロカーボン原子間の接合が安定しており、良好な耐性、耐熱及び耐化性を備える。本実施例では、フルオロカーボン樹脂薄膜は、ガラス繊維織物の単一表面上を覆ったり、図3に示すように、ガラス繊維織物310の両面が、フルオロカーボン樹脂薄膜320により覆われたりしてもよい(即ち、ガラス繊維織物310の上下両面それぞれがフルオロカーボン樹脂薄膜320により覆われている)。
【0032】
続いて、本実施例の製造方法は、ステップS26において、互いに接触されているフルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物とを熱圧着させる。このステップS26において、フルオロカーボン樹脂薄膜は、接合膜によりガラス繊維織物に密着され、高分子被覆膜を有するガラス繊維織物330を形成する。製造装置300へ実際に応用する際は、熱圧着オーブン373を利用し、約220℃〜380℃の温度範囲内で、約100psiの圧力を加えてフルオロカーボン樹脂薄膜320とガラス繊維織物310とを密着させる。続いて、運搬、包装などの後続ステップを行うことが便利なように、熱圧着形成された高分子被覆膜を有するガラス繊維織物を巻取る。
【0033】
本実施例の高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法は、3段階のベーク加熱工程を経て、3回目のベーク加熱を行うとともに、互いに接触されているフルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物とを圧着させる。ガラス繊維織物は、接合膜の中にあるフルオロカーボン高分子粉末により、熱圧着の過程において投錨効果を発生させることにより、フルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物との間の物理的な接着効果を高めることができる。さらに、ガラス繊維織物は、接合膜の中のフッ素化シリコーングラフト共重合体により、熱圧着工程において化学結合及び分子のエンタングルメント作用(molecular entanglement)を発生させる。これにより、ガラス繊維織物の表面改質を行い、ガラス繊維織物の表面とフルオロカーボン樹脂薄膜との適合性を向上し、フルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物との間の化学的な接着効果を向上することができる。
【0034】
上述の製造工程により製作した高分子被覆膜を有するガラス繊維織物を走査型電子顕微鏡により織物構造を分析すると、図4に示すように、熱圧着後のフルオロカーボン樹脂薄膜Pとガラス繊維織物Fとの間の接合膜の材料層は見えなくなっている。フルオロカーボン樹脂薄膜Pとガラス繊維織物Fとの間には、明らかな界面を有しておらず、連続相が形成されている。そのため、フルオロカーボン樹脂薄膜Pとガラス繊維織物Fとの間の接合強度が向上されている。
【0035】
(III)接合強度試験
接合強度試験では、まず、同じ規格のガラス繊維織物及びフルオロカーボン樹脂薄膜のサンプルを取り出し(規格は表1に示す)、異なる方式によりそれぞれを接合させる。その後、接合された高分子被覆膜を有するガラス繊維織物を、それぞれ治具によりPTFE薄膜で挟持し、PTFE薄膜とガラス繊維織物とを剥離する際に加える力を測定し、剥離強度試験を行う。
【0036】
【表1】

【実施例】
【0037】
(実施例1)
本発明の実施例1では、高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法により、PTFE膜とガラス繊維織物とを接合した。ガラス繊維織物のサンプルを取り出し、95質量%のフルオロカーボン高分子分散液及び5質量%の界面活性剤を含む浸漬液の中に浸漬し、浸漬液に浸漬したガラス繊維織物を340℃で1分間乾燥させた後、PTFE膜とガラス繊維織物とを370℃で100psiの条件下で5分間熱圧着して接合させた。実施例1の剥離強度は、約1000g/cmであった。浸漬液の成分比率及びガラス強度を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
(実施例2)
本発明の実施例2では、高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法により、PTFE膜とガラス繊維織物とを接合した。ガラス繊維織物のサンプルを取り出し、90質量%のフルオロカーボン高分子分散液、5質量%の界面活性剤及び5質量%のフッ素化シリコーングラフト共重合体を含む浸漬液の中に浸漬し、浸漬液に浸漬したガラス繊維織物を340℃で1分間乾燥させた後、PTFE膜とガラス繊維織物とを370℃で100psiの条件下で5分間熱圧着して接合させた。浸漬液の成分比率及びガラス強度を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
(実施例3)
本発明の実施例3では、高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法により、PTFE膜とガラス繊維織物とを接合した。ガラス繊維織物のサンプルを取り出し、85質量%のフルオロカーボン高分子分散液、5質量%の界面活性剤、5質量%のフッ素化シリコーングラフト共重合体及び5質量%の変性シリコーン樹脂を含む浸漬液の中に浸漬し、浸漬液に浸漬したガラス繊維織物を340℃で1分間乾燥した後、PTFE膜とガラス繊維織物とを370℃で100psiの条件下で5分間熱圧着して接合させた。浸漬液の成分比率及び剥離強度を表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
(実施例4)
本発明の実施例4では、高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法により、PTFE膜とガラス繊維織物とを接合した。ガラス繊維織物のサンプルを取り出し、80質量%のフルオロカーボン高分子分散液、5質量%の界面活性剤、10質量%のフッ素化シリコーングラフト共重合体及び5質量%の変性シリコーン樹脂を含む浸漬液の中に浸漬し、浸漬液に浸漬したガラス繊維織物を340℃で1分間乾燥した後、PTFE膜とガラス繊維織物とを370℃で100psiの条件下で5分間熱圧着して接合させた。浸漬液の成分比率及び剥離強度を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
(比較例1)
接着剤を直接適用し、PTFE膜とガラス繊維織物とを貼着し、その貼着条件と剥離強度との関係を表6に示す。
【0046】
【表6】

【0047】
(比較例2)
大気プラズマを利用し、ガラス繊維織物に対して表面改質を行った後、接着剤により貼着する。プラズマ処理条件、貼着条件及び剥離強度を表7に示す。
【0048】
【表7】

【0049】
(比較例3)
熱圧着方式を利用し、PTFE膜とガラス繊維織物とを貼着する熱圧着条件及び剥離強度を表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
上述の実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の剥離強度の試験結果(表2〜表8に示す)に示されるように、実施例1〜実施例4の剥離強度は、比較例1(直接、接着剤を利用して貼着)、比較例2(大気プラズマの表面改質を利用)及び比較例3(熱圧着のみを利用)よりも剥離強度が高い。これにより、本実施例の高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法では、浸漬液を使用し、ガラス繊維織物の表面に接合膜を形成した後、熱圧着してからPTFE膜と融合して連続相を形成し、接合強度を有効に向上できることが分かる。そのため、本発明の実施例により製造された高分子被覆膜を有するガラス繊維織物は、接合強度が高く、フルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物との間の接合効果が良好である。
【0052】
上述したように、本発明の浸漬液及びその製造方法並びに高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法は、熱圧着を行う前に浸漬液の中にガラス繊維織物を浸漬させる。この浸漬液の中には、フルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体が含まれている。ガラス繊維織物は、浸漬して乾燥させた後、接合膜が表面に形成される。フルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体により、それぞれガラス繊維織物とフルオロカーボン樹脂薄膜とを熱圧着し、接面間に物理的な接着効果及び化学的な接着効果を提供することができる。このようにガラス繊維織物とフルオロカーボン樹脂薄膜との接合強度が高いため、フルオロカーボン樹脂薄膜とガラス繊維織物との間の接合強度が高くなる。
【0053】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明による特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0054】
300 製造装置
310 ガラス繊維織物
320 フルオロカーボン樹脂薄膜
330 高分子被覆膜を有するガラス繊維織物
341 洗浄槽
342 浸漬槽
351 洗浄液
352 浸漬液
371 第1のオーブン
372 第2のオーブン
373 熱圧着オーブン
F ガラス繊維織物
P フルオロカーボン樹脂薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルオロカーボン高分子粉末及びフッ素化シリコーングラフト共重合体を含む浸漬液の中に、ガラス繊維織物を浸漬するステップと、
(b)前記浸漬したガラス繊維織物を乾燥させ、前記ガラス繊維織物の表面に接合膜を付着させるステップと、
(c)フルオロカーボン樹脂薄膜により、前記ガラス繊維織物の表面に付着された前記接合膜を覆うステップと、
(d)前記フルオロカーボン樹脂薄膜と前記ガラス繊維織物の前記接合膜とを熱圧着するステップと、を含む高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)の前に、
(e1)含フッ素アルコール、メチルシラン、臭素含有アルケン及び水酸化ナトリウムを反応させてフッ素化シリコーングラフト共重合体を生成するステップと、
(e2)フルオロカーボン高分子粉末、界面活性剤及び水と、前記ステップ(e1)で生成した前記フッ素化シリコーングラフト共重合体とを混合し、浸漬液を生成するステップと、をさらに含む請求項1に記載の高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法。
【請求項3】
ステップ(d)において、前記フルオロカーボン樹脂薄膜と、前記ガラス繊維織物の前記接合膜とを熱圧着する際、温度は220℃〜380℃であり、圧力は20psi〜200psiである請求項1に記載の高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法。
【請求項4】
ステップ(b)において、前記浸漬したガラス繊維織物を乾燥する際の温度は150℃〜400℃である請求項1に記載の高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法。
【請求項5】
前記フルオロカーボン高分子粉末は、PTFE、PVDF、PCTFE、PVF、PFA、FEP又はETFEからなる請求項1に記載の高分子被覆膜を有するガラス繊維織物の製造方法。
【請求項6】
35質量%〜95質量%のフルオロカーボン高分子分散液と、3質量%〜10質量%のフッ素化シリコーングラフト共重合体とを含み、
前記フルオロカーボン高分子分散液は、
35質量%〜60質量%のフルオロカーボン高分子粉末と、
5質量%〜20質量%の界面活性剤と、
5質量%〜20質量%の水と、を含む浸漬液。
【請求項7】
前記フッ素化シリコーングラフト共重合体は、含フッ素アルコール、メチルシラン、臭素含有アルケン及び水酸化ナトリウムを反応して生成されたものである請求項6に記載の浸漬液。
【請求項8】
前記含フッ素アルコールは、2,2,2−トリフルオロエタノール、4−トリフルオロメトキシフェノール、3,3,3−トリフルオロプロパノール、4−(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、2−メチル−4,4,4−トリフルオロブタノール又は4,4,4−トリフルオロブタノールであり、
前記メチルシランは、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体であり、
前記臭素含有アルケンは、臭化アリル、1−ブロモ−3−ブテン、5−ブロモ−1−ペンテン又は6−ブロモ−1−ヘキセンである請求項7に記載の浸漬液。
【請求項9】
(a)0.15〜0.30モルの含フッ素アルコールと、0.3×10−3〜3.0×10−3モルのメチルシランと、1.5〜3.0モルの臭素含有アルケンと、20〜50mlの水酸化ナトリウムとを反応させてフッ素化シリコーングラフト共重合体を生成するステップと、
(b)フルオロカーボン高分子分散液に、フッ素化シリコーングラフト共重合体を加えるステップと、を含む浸漬液の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)は、
(a1)2,2,2−トリフルオロエタノール、水酸化ナトリウム及び臭化アリルの混合液を40℃の温度で2時間反応させるステップと、
(a2)前記反応後の混合液に、ジメチルシロキサンとメチルヒドロシロキサンとの共重合体を加え、60℃の温度で24時間反応させるステップと、を含む請求項9に記載の浸漬液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−132650(P2011−132650A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142592(P2010−142592)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(504427651)財團法人紡織産業綜合研究所 (10)
【Fターム(参考)】