浸透探傷試験における洗浄液の処理方法及び該方法に使用する浸透探傷試験用洗浄液
【課題】 浸透探傷試験における洗浄処理において、被検査物表面に残留している余剰浸透液の洗浄除去が十分に行えると共に、余剰浸透液が混入している洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に回収できる洗浄液の処理方法及び該方法に使用する洗浄液を提供する。
【解決手段】 浸透探傷試験における洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液として該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入した洗浄液を回収し、回収した洗浄液を冷却して混入している余剰浸透液と洗浄液とに分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用する。
【解決手段】 浸透探傷試験における洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液として該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入した洗浄液を回収し、回収した洗浄液を冷却して混入している余剰浸透液と洗浄液とに分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊試験方法の一種である浸透探傷試験における洗浄液の処理方法及び該方法に使用する浸透探傷試験用洗浄液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、前記浸透探傷試験は、各種部材の表面や溶接部位に存在する微細な開口欠陥部(例えば、微細なクラックやピンホール)の探傷に適用されており、種々様々な浸透液と洗浄液とを組み合わせて用いる各種の浸透探傷試験があるが、機械部品(例えば、自動車のピストンロッドやフロントホイールハブなど)を被検査物とする場合には、溶剤除去性染色浸透液又は溶剤除去性蛍光浸透液と有機溶剤からなる洗浄液とを組み合わせて用いる浸透探傷試験(以下、この試験を「溶剤洗浄型浸透探傷試験」という)が汎用されている。
【0003】
溶剤洗浄型浸透探傷試験の基本的態様は、当業者間においてよく知られているとおり、溶剤除去性染色浸透液(通常、油溶性赤色染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い液体が用いられている)又は溶剤除去性蛍光浸透液(通常、紫外線照射下で黄緑色発光する油溶性蛍光染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い液体が用いられている)を被検査物(例えば、ピストンロッド)表面に付着させて(通常、刷毛塗り,スプレー散布,浸漬などの塗布手段によって付着させている)表面開口欠陥部に浸透させる浸透処理を行い、次いで、有機溶剤からなる洗浄液を用いて当該欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する(通常、洗浄液のスプレー散布,洗浄液への浸漬、洗浄液蒸気への接触などの洗浄手段によって洗浄除去されている)洗浄処理を行い、次いで、溶剤除去性染色浸透液を用いた場合には、当該被検査物表面に炭酸マグネシウム粉末や炭酸カルシウム粉末などの白色無機粉末(当業者間では「現像剤」と呼ばれている)の薄層を形成し該薄層によって当該欠陥部に浸透している染色浸透液を薄層表面に吸い出させることによって欠陥指示ニジミ模様を現出させ、自然光又は白色光の下で観察して当該ニジミ模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷し、溶剤除去性蛍光浸透液を用いた場合には、前記白色無機粉末を用いることなく、暗所における紫外線灯(当業者間では「ブラックライト」と呼ばれている)の照射下で当該被検査物表面を観察して黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷するというものである(以下、この基本的態様を採る溶剤洗浄型浸透探傷試験を「周知溶剤洗浄型浸透探傷試験」という)。
【0004】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験に用いられている溶剤除去性染色浸透液及び溶剤除去性蛍光浸透液には、種々様々な処方の製品が市販されており、市販の溶剤除去性染色浸透液の代表例としては、「染色浸透液RP−1000」(商品名・マークテック株式会社製:アゾ系赤色油溶性染料、フタル酸エステル、脂肪族炭化水素及びナフテン系炭化水素からなる赤色浸透液)が挙げられ、溶剤除去性蛍光浸透液の代表例としては、「蛍光浸透液RP−2000C」(商品名:マークテック株式会社製:油溶性蛍光染料、フタル酸ジエチル及び炭化水素系溶剤からなる紫外線照射下で黄緑色発光する浸透液)が挙げられる。
【0005】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験に用いられている有機溶剤からなる洗浄液としては、古くからn−ヘキサン,n−へプタン,ミネラルターペン,キシレン,エタノール,トリクロロエタン,トリクロロエチレン,フロン112,フロン113,フロン225,フッ化プロパノールなどが用いられており、近年では、塩化メチレンや1−ブロモプロパンなども用いられている。
【0006】
また、前記のとおりの周知溶剤洗浄型浸透探傷試験が自動車部品などに適用される場合に採用されている浸透処理及び洗浄処理を行う態様の一つとして、後出特許文献1に次の態様のものが開示されている。
【0007】
すなわち、被検査物(例えば、自動車用フロントホイールハブ)表面に溶剤除去性染色浸透液又は溶剤除去性蛍光浸透液を付着させて表面開口欠陥部に該浸透液を浸透させる浸透処理を行うための当該浸透液が充填されている浸透液槽と、浸透液槽に浸漬して引き上げられる被検査物の開口欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する洗浄処理を行うための洗浄液を加熱して蒸気を発生させる加熱ヒーターを槽底部に設けると共に発生させた蒸気を液化する冷却管を槽上部に設けた蒸気洗浄槽(なお、蒸気洗浄槽内では蒸気と被検査物との温度差によって該蒸気を被検査物表面で結露させることによって余剰浸透液が洗浄・除去される)と、被検査物の形状などに起因して蒸気洗浄槽における洗浄では十分に余剰浸透液が除去できなかった被検査物を洗浄液に浸漬して残存している余剰浸透液の除去を行うための洗浄液が充填されている浸漬洗浄槽とを用い、浸透処理及び洗浄処理を行うという態様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−172681号
【特許文献2】特開平5−72148号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】JIS Z 2343−1〜4:2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験を実施して、複数個の被検査物を連続的(流れ作業的)に探傷する場合には、その洗浄処理に当たっては、洗浄液のスプレー散布、洗浄液への浸漬、特許文献1に開示されている蒸気洗浄槽(洗浄液蒸気発生槽)中での洗浄などの洗浄手段が採られており、当該各洗浄手段においてはいずれも大量の洗浄液が用いられている。
【0011】
前記各洗浄手段を採る洗浄処理にあっては、被検査物表面に残留している余剰浸透液が洗浄液に混入するが、洗浄処理を繰り返すにつれて洗浄液に混入する浸透液の量が増加し、洗浄液中の浸透液量が増加するにしたがって該洗浄液の洗浄能力が低下する。
【0012】
例えば、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における浸透処理及び洗浄処理に、特許文献1に開示されている前記態様を採用すれば、複数個の被検査物を流れ作業にて行えるので、自動車部品などに要求される全数試験を効率よく行えるが、反面、流れ作業の進行と共に洗浄液中の浸透液の量も増加して洗浄能力が低下するから洗浄液を交換する必要がある。
【0013】
特許文献1に開示されている前記態様を採用した場合に限らず、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理が洗浄液への浸漬や洗浄液蒸気発生槽中での洗浄によって行われる場合には、要求される探傷精度にもよるが、通常、洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%に達すると新しい洗浄液に交換されている。
【0014】
本発明者の経験によれば、特許文献1に開示されている前記態様を採用し、当該文献に記載されている1−ブロモプロパンを洗浄液とすると共に蛍光浸透液RP−2000C(商品名・マークテック株式会社製:油溶性蛍光染料、フタル酸ジエチル及び炭化水素系溶剤からなる紫外線照射下で黄緑色発光する浸透液)を用いた場合にも、洗浄液中の余剰浸透液量が約50wt%を越えると洗浄能力が大巾に低下し、また、50wt%に到るまでにも、洗浄液中の浸透液量が増加するにつれて洗浄液の沸点が上昇して行き、洗浄液蒸気中での蒸気の発生効率が徐々に低下した。
なお、この現象は、1−ブロモプロパンに代えて塩化メチレンを洗浄液とした場合にも同様であった。
【0015】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理が洗浄液のスプレー散布、洗浄液への浸漬又は洗浄液蒸気発生槽中での洗浄によって行われている探傷試験実施現場では、通常、洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になった洗浄液は産業廃棄物として処理されている。
【0016】
洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になった洗浄液が産業廃棄物として処理されているのは、当該洗浄液中の余剰浸透液を洗浄液から分離することがきわめて困難なためである。
【0017】
例えば、特許文献2に記載されているとおり、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液と水(洗浄液)とを組み合わせて用いる浸透探傷試験の場合には、その洗浄処理における水(洗浄液)中の余剰浸透液を水(洗浄液)から分離することは、所謂「油・水分離」によって容易に行えるが、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液と有機溶剤からなる洗浄液とを組み合わせて用いる周知溶剤洗浄型浸透探傷試験にあっては、「油・油」の関係であるため、その洗浄処理における洗浄液中の余剰浸透液を洗浄液から分離することがきわめて困難なのである。
【0018】
前記探傷試験実施現場で産業廃棄物として処理されている洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になった洗浄液には、洗浄液が60〜40wt%含まれているから、当該洗浄液中の余剰浸透液を洗浄液から容易に分離できれば、洗浄液のリサイクル使用が可能となり、かつ、分離した余剰浸透液だけを産業廃棄物として処理すればよいから処理コストの低減も可能となる。
【0019】
本発明は、前記技術事情に鑑み、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理において、被検査物表面に残留している余剰浸透液の洗浄除去が十分に行えると共に、余剰浸透液が混入している洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に回収でき、洗浄液のリサイクル使用が可能な洗浄液の処理方法及び該浸透探傷試験用洗浄液を提供することを技術的課題とするものである。
【0020】
本発明者は、前記技術的課題を達成するため、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液と組み合わせる有機溶剤からなる洗浄液の選択及びその使用条件の選定について試行錯誤的な数多くの実験を重ねた結果、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液とハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンからなる洗浄液とを組み合わせ、洗浄処理時には当該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて余剰浸透液を洗浄除去し、洗浄液の回収時には余剰浸透液が混入している洗浄液を冷却して余剰浸透液と洗浄剤とを分離させることによって、被検査物表面に残留している余剰浸透液の洗浄除去が十分に行えると共に、余剰浸透液が混入している洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に回収できるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記技術的課題は、次のとおりの本発明によって達成できる。
【0022】
すなわち、本発明は油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液を被検査物表面に付着させて表面開口欠陥部に該浸透液を浸透させる浸透処理を行い、次いで、有機溶剤からなる洗浄液を用いて当該欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する洗浄処理を行い、次いで、当該欠陥部に浸透している浸透液によって欠陥部の存在を探傷する浸透探傷試験において、前記洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液として該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入した洗浄液を回収し、回収した洗浄液を冷却して混入している余剰浸透液と洗浄液とに分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用することを特徴とする浸透探傷試験における洗浄液の処理方法である(発明1)。
【0023】
また、本発明は、前記発明1における洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点を越えない温度に維持した状態で余剰浸透液が残留している被検査物を当該洗浄液に浸漬して行うものである(発明2)。
【0024】
また、本発明は、前記発明1における洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点温度に加熱して蒸気を発生させ該蒸気を余剰浸透液が残留している被検査物表面で結露させて行うものである(発明3)。
【0025】
さらに、本発明は、ハイドロフルオロエーテルからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液である(発明4)。
【0026】
さらに、本発明は、ハイドロフルオロカーボンからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液である(発明5)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る浸透探傷試験における洗浄液の処理方法(発明1〜3)及び該方法に使用する浸透探傷試験用洗浄液(発明4、5)によれば、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験方法における洗浄処理を洗浄液のスプレー散布、洗浄液への浸漬又は洗浄液蒸気発生槽中での洗浄によって行われている探傷試験現場において、産業廃棄物として処理されている洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になって洗浄能力が劣化した大量の洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に分離できるので洗浄液のリサイクル使用が可能となり、また、分離した余剰浸透液だけを産業廃棄物として処理すればよいから処理コストの低減も可能となるから、省資源の見地からして本発明の奏する効果は非常に大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ハイドロフルオロエーテルに溶解する染色浸透液RP−1000(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図2】ハイドロフルオロエーテルに溶解する蛍光浸透液RP−2000C(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図3】ハイドロフルオロカーボンに溶解する染色浸透液RP−1000(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図4】ハイドロフルオロカーボンに溶解する蛍光浸透液RP−2000C(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図5】実施例1におけるハイドロフルオロエーテル(洗浄液)と染色浸透液RP−1000(前出)との分離状態を示す写真。
【図6】実施例2におけるハイドロフルオロエーテル(洗浄液)と蛍光浸透液RP−2000C(前出)との分離状態を示す写真。
【図7】実施例4におけるハイドロフルオロカーボン(洗浄液)と染色浸透液RP−1000(前出)との分離状態を示す写真。
【図8】実施例5におけるハイドロフルオロカーボン(洗浄液)と蛍光浸透液RP−2000C(前出)との分離状態を示す写真。
【図9】実施例1において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示赤色ニジミ模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【図10】実施例2において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示蛍光模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【図11】実施例4において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示赤色ニジミ模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【図12】実施例5において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示蛍光模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0029】
先ず、本発明を実施するために最も重要なハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンについて説明する。
【0030】
ハイドロフルオロエーテル(沸点61℃)及びハイドロフルオロカーボン(沸点55℃)は、いずれも市場で容易に入手でき、前者の市販品としてはノベックHFE7100(商品名・3M社製)が挙げられ、後者の市販品としてはバートレルXF(商品名・三井デュポンフロロケミカル株式会社製)やソルブ55(商品名・株式会社ソルベックス製)が挙げられる。
【0031】
本発明者は、本発明完成に到る過程において、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験方法に用いられている溶剤除去性染色浸透液(油溶性赤色染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い赤色浸透液)又は溶剤除去性蛍光浸透液(紫外線照射下で黄緑色発光する油溶性蛍光染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い浸透液)をハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンのいずれかに溶解させる場合、当該ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンの液温によって当該染色浸透液又は当該蛍光浸透液の溶解量(濃度)が異なることを実験によって確認している。
【0032】
本発明者が行った実験の内から代表的な実験例を挙げれば、次のとおりである。
【0033】
実験例1:透明ガラス製200mlビーカーに染色浸透液RP−1000(前出)4gを入れて、浴槽内温度を約10℃に維持した浴槽に漬け、当該ビーカーにハイドロフルオロエーテルを撹拌しながら少量づつ添加し、当該染色浸透液がハイドロフルオロエーテルに完全に溶解した時点で添加を中止してビーカー内の液の温度を測定した後に浴槽からビーカーを引き上げ、ビーカー内の液(染色浸透液とハイドロフルオロエーテル)の重量を測定し、ハイドロフルオロエーテルに溶解した染色浸透液をwt%に換算した。その結果を表1及び図1に示す。
【0034】
浴槽内温度を、それぞれ約20℃、約30℃及び約40℃に変更した外は、前記と同じ手法・条件により、染色浸透液RP−1000(前出)がハイドロフルオロエーテルに完全に溶解した時点の温度とハイドロフルオロエーテルに溶解した染色浸透液量(wt%)を求めた。その結果を表1及び図1に示す。
【0035】
図1に示すとおり、液温40℃付近ではハイドロフルオロエーテル中に約25wt%の染色浸透液が溶解しており、液温8℃付近では約4.3wt%の染色浸透液が溶解している。
【0036】
【表1】
【0037】
実験例2:実験例1における染色浸透液を蛍光浸透液RP−2000C(前出)に代えた外は、実験例1と同じ手法・条件によって実験を遂行した結果を表2及び図2に示す。図2に見られるとおり、液温約40℃付近ではハイドロフルオロエーテル中に約22wt%の蛍光浸透液が溶解しており、液温10℃付近では約4wt%の蛍光浸透液が溶解している。
【0038】
【表2】
【0039】
実験例3:実験例1におけるハイドロフルオロエーテルをハイドロフルオロカーボンに代えると共に染色浸透液RP−1000(前出)の量を1gに代え、さらに浴槽内温度を、それぞれ約10℃、約20℃、約30℃、約40℃及び約50℃に設定した外は、実験例1と同じ手法・条件によって実験を遂行した結果を表3及び図3に示す。図3に見られるとおり、液温48℃付近ではハイドロフルオロカーボン中に約5.3wt%の染色浸透液が溶解しており、液温10℃付近では約0.9wt%の染色浸透液が溶解している。
【0040】
【表3】
【0041】
実験例4:実験例1におけるハイドロフルオロエーテルをハイドロフルオロカーボンに代え、染色浸透液の代わりに実験例2で用いた蛍光浸透液を用い、その量を1gに代え、さらに、浴槽内温度を、それぞれ約10℃、約20℃、約30℃、約40℃及び約50℃に設定した外は、実験例1と同じ手法・条件によって実験を遂行した結果を表4及び図4に示す。、図4に見られるとおり、液温約50℃付近ではハイドロフルオロカーボン中に約4.6wt%の蛍光浸透液が溶解しており、液温約9℃付近では約0.7wt%の蛍光浸透液が溶解している。
【0042】
【表4】
【0043】
本発明は、前掲実験例によって確認できるハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンが、いずれもその沸点近傍の液温の場合には周知溶剤洗浄型浸透探傷試験に用いられている溶剤除去性染色浸透液及び溶剤除去性蛍光浸透液に対する溶解力が高いが、液温が低い場合にはその溶解力が低下する現象を利用し、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理にハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンのいずれかを洗浄液として用い、当該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて洗浄処理を行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入・溶解している洗浄液を回収し、回収した余剰浸透液が溶解している洗浄液を冷却することによって余剰浸透液と洗浄液とを分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用するものである。
【0044】
従って、本発明の実施に当たっては、洗浄処理以外は周知溶剤洗浄型浸透探傷試験と同じ手順及び操作によればよい。
【0045】
本発明の実施に当たり、洗浄処理における洗浄手段に洗浄液のスプレー散布又は洗浄液への浸漬を採用する場合に、洗浄液がハイドロフルオロエーテルであるときには、液温35〜50℃に維持した状態にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に適用すれば該余剰浸透液を洗浄除去でき、洗浄液がハイドロフルオロカーボンであるときには、液温35〜45℃に維持した状態にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に適用すれば該余剰浸透液を洗浄除去できる。なお、洗浄手段に洗浄液のスプレー散布を採用した場合には、散布された洗浄液を集め循環させて散布する。
【0046】
洗浄手段に洗浄液蒸気発生槽中での洗浄を採用する場合には、洗浄液がハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンのいずれであっても、それらの各沸点温度に加熱して蒸気を発生させ、発生した蒸気を余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて該余剰浸透液を洗浄除去する。なお、被検査物表面に接触した蒸気は被検査物表面で凝固して液滴となって落下し、加熱されて再び蒸気となる。
【0047】
洗浄処理を前記いずれの洗浄手段を採用する場合にも、洗浄処理を繰り返すにつれて洗浄液に混入する浸透液の量が増加し、洗浄能力が低下し被検査物表面に残留している余剰浸透液を十分に洗浄除去できなくなると、洗浄処理を停止し、浸透液が混入している洗浄液を回収して底部に取り出し口を備えた透明ガラス又は透明プラスチックス製分液槽に移す。
【0048】
前記分液槽に移された浸透液が混入している洗浄液は、当該分液槽を冷却して槽内の液温を10〜20℃に維持した状態にて10〜20分間静置すると、上相が浸透液で下相が洗浄液の二相に分離するので、取り出し口から洗浄液を抜き出して洗浄処理に再使用する。
【0049】
また、再使用する洗浄液がその使用時に該洗浄液に混入する浸透液の量が増加して被検査物表面に残留している余剰浸透液を十分に洗浄除去できなくなれば、洗浄処理を停止し、前記と同じ操作によって浸透液と洗浄液とを分離し、洗浄処理に再使用する。
【実施例】
【0050】
実施例1
【0051】
被検査物を染色浸透液RP−1000(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロエーテルを充填した洗浄液槽中に液温約40℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、当該被検査物表面に市販の現像剤(スーパーチェック現像剤UD−ST(商品名・マークテック株式会社製:無機質白色微粉末を主成分としている))を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置する現像処理を行った後、当該被検査物表面を白色光の下で目視にて観察して白色微粉末薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0052】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテルを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて15分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0053】
図5は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテル50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に約9(上相):7(下相)で分離していることが確認できる。
【0054】
次いで、当該分離槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0055】
図9は、JIS Z 2343−3:2001(前出非特許文献1)に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に染色浸透液RP−1000(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分離槽から抜き出したハイドロフルオロエーテルを充填したビーカー中に液温約40℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、当該試験片表面にスーパーチェック現像剤UD−ST(前出)を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置することにより、当該薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様を白色灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0056】
実施例2
【0057】
被検査物を蛍光浸透液RP−2000C(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロエーテルを充填した洗浄液槽中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、暗所における紫外線灯照射下で当該被検査物表面を目視にて観察して被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0058】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテルを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0059】
図6は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテル50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを暗所における紫外線灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に約8(上相):8(下相)で分離していることが確認できる。
【0060】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0061】
図10は、JIS Z 2343−3:2001に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に蛍光浸透液RP−2000C(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分液槽から抜き出したハイドロフルオロエーテルを充填したビーカー内に液温約35℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、暗所での紫外線灯照射下において当該試験片の試験面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様を撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0062】
実施例3
【0063】
実施例2における洗浄処理を次の洗浄処理に代えた外は、実施例2と同じ手順及び操作によって探傷作業を行う。
【0064】
加熱ヒーターを槽底部に設けると共に槽上部に水が流通する冷却管を設けた蒸気洗浄槽を使用し、当該蒸気洗浄槽にハイドロフルオロエーテルを充填して加熱ヒーターによって沸点温度になるまで加熱して蒸気を発生させる。なお、当該蒸気洗浄槽の上部開口近傍は冷却管によって約35℃に維持させる。
【0065】
浸透処理を行った被検査物を蒸気洗浄槽内に吊り下げ、ハイドロフルオロエーテルの蒸気に接触させて該蒸気を被検査物表面で結露させ、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させ、次いで、実施例2と同様にして被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0066】
そして、当該蒸気洗浄槽内での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、蒸気洗浄槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテルを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0067】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記蒸気洗浄槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0068】
本実施例においても、実施例2の場合と同様に、分液槽内で浸透液とハイドロフルオロエーテルとを容易に分離できると共に分液槽から抜き出したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることを確認している。
【0069】
実施例4
【0070】
被検査物を染色浸透液RP−1000(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロカーボンを充填した洗浄液槽中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、当該被検査物表面にスーパーチェック現像剤UD−ST(前出)を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置する現像処理を行った後、当該被検査物表面を白色光の下で目視にて観察して白色微粉末薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0071】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボンを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて15分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に分離させる。
【0072】
図7は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボン50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に約8(上相):7(下相)で分離していることが確認できる。
【0073】
次いで、当該分離槽から下相のハイドロフルオロカーボンを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0074】
図11は、JIS Z 2343−3:2001に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に染色浸透液RP−1000(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分離槽から抜き出したハイドロフルオロカーボンを充填したビーカー中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、当該試験片表面にスーパーチェック現像剤UD−ST(前出)を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置することにより、当該薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様を白色灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0075】
実施例5
【0076】
被検査物を蛍光浸透液RP−2000C(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロカーボンを充填した洗浄液槽中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、暗所における紫外線灯照射下で当該被検査物表面を目視にて観察して被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0077】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボンを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約15℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に分離させる。
【0078】
図8は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボン50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを暗所における紫外線灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に約8(上相):7(下相)で分離していることが確認できる。
【0079】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロカーボンを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0080】
図12は、JIS Z 2343−3:2001に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に蛍光浸透液RP−2000C(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分液槽から抜き出したハイドロフルオロカーボンを充填したビーカー内に液温約35℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、暗所での紫外線灯照射下において当該試験片の試験面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様を撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロカーボンが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0081】
実施例6
【0082】
実施例5における洗浄処理を次の洗浄処理に代えた外は、実施例5と同じ手順及び操作によって探傷作業を行う。
【0083】
加熱ヒーターを槽底部に設けると共に槽上部に水が流通する冷却管を設けた蒸気洗浄槽を使用し、当該蒸気洗浄槽にハイドロフルオロカーボンを充填して加熱ヒーターによって沸点温度になるまで加熱して蒸気を発生させる。なお、当該蒸気洗浄槽の上部開口近傍は冷却管によって約35℃に維持させる。
【0084】
浸透処理を行った被検査物を蒸気洗浄槽内に吊り下げ、ハイドロフルオロカーボンの蒸気に接触させて該蒸気を被検査物表面で結露させ、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させ、次いで、実施例5と同様にして被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0085】
そして、当該蒸気洗浄槽内での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、蒸気洗浄槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボンを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0086】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記蒸気洗浄槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0087】
本実施例においても、実施例4の場合と同様に、分液槽内で浸透液とハイドロフルオロカーボンとを容易に分離できると共に分液槽から抜き出したハイドロフルオロカーボンが十分な洗浄力を具備していることを確認している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊試験方法の一種である浸透探傷試験における洗浄液の処理方法及び該方法に使用する浸透探傷試験用洗浄液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、前記浸透探傷試験は、各種部材の表面や溶接部位に存在する微細な開口欠陥部(例えば、微細なクラックやピンホール)の探傷に適用されており、種々様々な浸透液と洗浄液とを組み合わせて用いる各種の浸透探傷試験があるが、機械部品(例えば、自動車のピストンロッドやフロントホイールハブなど)を被検査物とする場合には、溶剤除去性染色浸透液又は溶剤除去性蛍光浸透液と有機溶剤からなる洗浄液とを組み合わせて用いる浸透探傷試験(以下、この試験を「溶剤洗浄型浸透探傷試験」という)が汎用されている。
【0003】
溶剤洗浄型浸透探傷試験の基本的態様は、当業者間においてよく知られているとおり、溶剤除去性染色浸透液(通常、油溶性赤色染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い液体が用いられている)又は溶剤除去性蛍光浸透液(通常、紫外線照射下で黄緑色発光する油溶性蛍光染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い液体が用いられている)を被検査物(例えば、ピストンロッド)表面に付着させて(通常、刷毛塗り,スプレー散布,浸漬などの塗布手段によって付着させている)表面開口欠陥部に浸透させる浸透処理を行い、次いで、有機溶剤からなる洗浄液を用いて当該欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する(通常、洗浄液のスプレー散布,洗浄液への浸漬、洗浄液蒸気への接触などの洗浄手段によって洗浄除去されている)洗浄処理を行い、次いで、溶剤除去性染色浸透液を用いた場合には、当該被検査物表面に炭酸マグネシウム粉末や炭酸カルシウム粉末などの白色無機粉末(当業者間では「現像剤」と呼ばれている)の薄層を形成し該薄層によって当該欠陥部に浸透している染色浸透液を薄層表面に吸い出させることによって欠陥指示ニジミ模様を現出させ、自然光又は白色光の下で観察して当該ニジミ模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷し、溶剤除去性蛍光浸透液を用いた場合には、前記白色無機粉末を用いることなく、暗所における紫外線灯(当業者間では「ブラックライト」と呼ばれている)の照射下で当該被検査物表面を観察して黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって開口欠陥部の存在・位置を探傷するというものである(以下、この基本的態様を採る溶剤洗浄型浸透探傷試験を「周知溶剤洗浄型浸透探傷試験」という)。
【0004】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験に用いられている溶剤除去性染色浸透液及び溶剤除去性蛍光浸透液には、種々様々な処方の製品が市販されており、市販の溶剤除去性染色浸透液の代表例としては、「染色浸透液RP−1000」(商品名・マークテック株式会社製:アゾ系赤色油溶性染料、フタル酸エステル、脂肪族炭化水素及びナフテン系炭化水素からなる赤色浸透液)が挙げられ、溶剤除去性蛍光浸透液の代表例としては、「蛍光浸透液RP−2000C」(商品名:マークテック株式会社製:油溶性蛍光染料、フタル酸ジエチル及び炭化水素系溶剤からなる紫外線照射下で黄緑色発光する浸透液)が挙げられる。
【0005】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験に用いられている有機溶剤からなる洗浄液としては、古くからn−ヘキサン,n−へプタン,ミネラルターペン,キシレン,エタノール,トリクロロエタン,トリクロロエチレン,フロン112,フロン113,フロン225,フッ化プロパノールなどが用いられており、近年では、塩化メチレンや1−ブロモプロパンなども用いられている。
【0006】
また、前記のとおりの周知溶剤洗浄型浸透探傷試験が自動車部品などに適用される場合に採用されている浸透処理及び洗浄処理を行う態様の一つとして、後出特許文献1に次の態様のものが開示されている。
【0007】
すなわち、被検査物(例えば、自動車用フロントホイールハブ)表面に溶剤除去性染色浸透液又は溶剤除去性蛍光浸透液を付着させて表面開口欠陥部に該浸透液を浸透させる浸透処理を行うための当該浸透液が充填されている浸透液槽と、浸透液槽に浸漬して引き上げられる被検査物の開口欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する洗浄処理を行うための洗浄液を加熱して蒸気を発生させる加熱ヒーターを槽底部に設けると共に発生させた蒸気を液化する冷却管を槽上部に設けた蒸気洗浄槽(なお、蒸気洗浄槽内では蒸気と被検査物との温度差によって該蒸気を被検査物表面で結露させることによって余剰浸透液が洗浄・除去される)と、被検査物の形状などに起因して蒸気洗浄槽における洗浄では十分に余剰浸透液が除去できなかった被検査物を洗浄液に浸漬して残存している余剰浸透液の除去を行うための洗浄液が充填されている浸漬洗浄槽とを用い、浸透処理及び洗浄処理を行うという態様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−172681号
【特許文献2】特開平5−72148号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】JIS Z 2343−1〜4:2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験を実施して、複数個の被検査物を連続的(流れ作業的)に探傷する場合には、その洗浄処理に当たっては、洗浄液のスプレー散布、洗浄液への浸漬、特許文献1に開示されている蒸気洗浄槽(洗浄液蒸気発生槽)中での洗浄などの洗浄手段が採られており、当該各洗浄手段においてはいずれも大量の洗浄液が用いられている。
【0011】
前記各洗浄手段を採る洗浄処理にあっては、被検査物表面に残留している余剰浸透液が洗浄液に混入するが、洗浄処理を繰り返すにつれて洗浄液に混入する浸透液の量が増加し、洗浄液中の浸透液量が増加するにしたがって該洗浄液の洗浄能力が低下する。
【0012】
例えば、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における浸透処理及び洗浄処理に、特許文献1に開示されている前記態様を採用すれば、複数個の被検査物を流れ作業にて行えるので、自動車部品などに要求される全数試験を効率よく行えるが、反面、流れ作業の進行と共に洗浄液中の浸透液の量も増加して洗浄能力が低下するから洗浄液を交換する必要がある。
【0013】
特許文献1に開示されている前記態様を採用した場合に限らず、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理が洗浄液への浸漬や洗浄液蒸気発生槽中での洗浄によって行われる場合には、要求される探傷精度にもよるが、通常、洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%に達すると新しい洗浄液に交換されている。
【0014】
本発明者の経験によれば、特許文献1に開示されている前記態様を採用し、当該文献に記載されている1−ブロモプロパンを洗浄液とすると共に蛍光浸透液RP−2000C(商品名・マークテック株式会社製:油溶性蛍光染料、フタル酸ジエチル及び炭化水素系溶剤からなる紫外線照射下で黄緑色発光する浸透液)を用いた場合にも、洗浄液中の余剰浸透液量が約50wt%を越えると洗浄能力が大巾に低下し、また、50wt%に到るまでにも、洗浄液中の浸透液量が増加するにつれて洗浄液の沸点が上昇して行き、洗浄液蒸気中での蒸気の発生効率が徐々に低下した。
なお、この現象は、1−ブロモプロパンに代えて塩化メチレンを洗浄液とした場合にも同様であった。
【0015】
周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理が洗浄液のスプレー散布、洗浄液への浸漬又は洗浄液蒸気発生槽中での洗浄によって行われている探傷試験実施現場では、通常、洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になった洗浄液は産業廃棄物として処理されている。
【0016】
洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になった洗浄液が産業廃棄物として処理されているのは、当該洗浄液中の余剰浸透液を洗浄液から分離することがきわめて困難なためである。
【0017】
例えば、特許文献2に記載されているとおり、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液と水(洗浄液)とを組み合わせて用いる浸透探傷試験の場合には、その洗浄処理における水(洗浄液)中の余剰浸透液を水(洗浄液)から分離することは、所謂「油・水分離」によって容易に行えるが、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液と有機溶剤からなる洗浄液とを組み合わせて用いる周知溶剤洗浄型浸透探傷試験にあっては、「油・油」の関係であるため、その洗浄処理における洗浄液中の余剰浸透液を洗浄液から分離することがきわめて困難なのである。
【0018】
前記探傷試験実施現場で産業廃棄物として処理されている洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になった洗浄液には、洗浄液が60〜40wt%含まれているから、当該洗浄液中の余剰浸透液を洗浄液から容易に分離できれば、洗浄液のリサイクル使用が可能となり、かつ、分離した余剰浸透液だけを産業廃棄物として処理すればよいから処理コストの低減も可能となる。
【0019】
本発明は、前記技術事情に鑑み、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理において、被検査物表面に残留している余剰浸透液の洗浄除去が十分に行えると共に、余剰浸透液が混入している洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に回収でき、洗浄液のリサイクル使用が可能な洗浄液の処理方法及び該浸透探傷試験用洗浄液を提供することを技術的課題とするものである。
【0020】
本発明者は、前記技術的課題を達成するため、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液と組み合わせる有機溶剤からなる洗浄液の選択及びその使用条件の選定について試行錯誤的な数多くの実験を重ねた結果、油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液とハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンからなる洗浄液とを組み合わせ、洗浄処理時には当該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて余剰浸透液を洗浄除去し、洗浄液の回収時には余剰浸透液が混入している洗浄液を冷却して余剰浸透液と洗浄剤とを分離させることによって、被検査物表面に残留している余剰浸透液の洗浄除去が十分に行えると共に、余剰浸透液が混入している洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に回収できるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記技術的課題は、次のとおりの本発明によって達成できる。
【0022】
すなわち、本発明は油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液を被検査物表面に付着させて表面開口欠陥部に該浸透液を浸透させる浸透処理を行い、次いで、有機溶剤からなる洗浄液を用いて当該欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する洗浄処理を行い、次いで、当該欠陥部に浸透している浸透液によって欠陥部の存在を探傷する浸透探傷試験において、前記洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液として該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入した洗浄液を回収し、回収した洗浄液を冷却して混入している余剰浸透液と洗浄液とに分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用することを特徴とする浸透探傷試験における洗浄液の処理方法である(発明1)。
【0023】
また、本発明は、前記発明1における洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点を越えない温度に維持した状態で余剰浸透液が残留している被検査物を当該洗浄液に浸漬して行うものである(発明2)。
【0024】
また、本発明は、前記発明1における洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点温度に加熱して蒸気を発生させ該蒸気を余剰浸透液が残留している被検査物表面で結露させて行うものである(発明3)。
【0025】
さらに、本発明は、ハイドロフルオロエーテルからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液である(発明4)。
【0026】
さらに、本発明は、ハイドロフルオロカーボンからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液である(発明5)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る浸透探傷試験における洗浄液の処理方法(発明1〜3)及び該方法に使用する浸透探傷試験用洗浄液(発明4、5)によれば、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験方法における洗浄処理を洗浄液のスプレー散布、洗浄液への浸漬又は洗浄液蒸気発生槽中での洗浄によって行われている探傷試験現場において、産業廃棄物として処理されている洗浄液中の余剰浸透液量が40〜60wt%になって洗浄能力が劣化した大量の洗浄液から再使用可能な洗浄液を容易に分離できるので洗浄液のリサイクル使用が可能となり、また、分離した余剰浸透液だけを産業廃棄物として処理すればよいから処理コストの低減も可能となるから、省資源の見地からして本発明の奏する効果は非常に大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ハイドロフルオロエーテルに溶解する染色浸透液RP−1000(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図2】ハイドロフルオロエーテルに溶解する蛍光浸透液RP−2000C(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図3】ハイドロフルオロカーボンに溶解する染色浸透液RP−1000(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図4】ハイドロフルオロカーボンに溶解する蛍光浸透液RP−2000C(前出)の量と温度との関係を示すグラフ。
【図5】実施例1におけるハイドロフルオロエーテル(洗浄液)と染色浸透液RP−1000(前出)との分離状態を示す写真。
【図6】実施例2におけるハイドロフルオロエーテル(洗浄液)と蛍光浸透液RP−2000C(前出)との分離状態を示す写真。
【図7】実施例4におけるハイドロフルオロカーボン(洗浄液)と染色浸透液RP−1000(前出)との分離状態を示す写真。
【図8】実施例5におけるハイドロフルオロカーボン(洗浄液)と蛍光浸透液RP−2000C(前出)との分離状態を示す写真。
【図9】実施例1において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示赤色ニジミ模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【図10】実施例2において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示蛍光模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【図11】実施例4において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示赤色ニジミ模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【図12】実施例5において余剰浸透液と洗浄液とに分離した洗浄液を用い、タイプ3対比試験片に欠陥指示蛍光模様を現出させた該試験片の試験面を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0029】
先ず、本発明を実施するために最も重要なハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンについて説明する。
【0030】
ハイドロフルオロエーテル(沸点61℃)及びハイドロフルオロカーボン(沸点55℃)は、いずれも市場で容易に入手でき、前者の市販品としてはノベックHFE7100(商品名・3M社製)が挙げられ、後者の市販品としてはバートレルXF(商品名・三井デュポンフロロケミカル株式会社製)やソルブ55(商品名・株式会社ソルベックス製)が挙げられる。
【0031】
本発明者は、本発明完成に到る過程において、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験方法に用いられている溶剤除去性染色浸透液(油溶性赤色染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い赤色浸透液)又は溶剤除去性蛍光浸透液(紫外線照射下で黄緑色発光する油溶性蛍光染料を有機溶剤に溶解した浸透性の強い浸透液)をハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンのいずれかに溶解させる場合、当該ハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンの液温によって当該染色浸透液又は当該蛍光浸透液の溶解量(濃度)が異なることを実験によって確認している。
【0032】
本発明者が行った実験の内から代表的な実験例を挙げれば、次のとおりである。
【0033】
実験例1:透明ガラス製200mlビーカーに染色浸透液RP−1000(前出)4gを入れて、浴槽内温度を約10℃に維持した浴槽に漬け、当該ビーカーにハイドロフルオロエーテルを撹拌しながら少量づつ添加し、当該染色浸透液がハイドロフルオロエーテルに完全に溶解した時点で添加を中止してビーカー内の液の温度を測定した後に浴槽からビーカーを引き上げ、ビーカー内の液(染色浸透液とハイドロフルオロエーテル)の重量を測定し、ハイドロフルオロエーテルに溶解した染色浸透液をwt%に換算した。その結果を表1及び図1に示す。
【0034】
浴槽内温度を、それぞれ約20℃、約30℃及び約40℃に変更した外は、前記と同じ手法・条件により、染色浸透液RP−1000(前出)がハイドロフルオロエーテルに完全に溶解した時点の温度とハイドロフルオロエーテルに溶解した染色浸透液量(wt%)を求めた。その結果を表1及び図1に示す。
【0035】
図1に示すとおり、液温40℃付近ではハイドロフルオロエーテル中に約25wt%の染色浸透液が溶解しており、液温8℃付近では約4.3wt%の染色浸透液が溶解している。
【0036】
【表1】
【0037】
実験例2:実験例1における染色浸透液を蛍光浸透液RP−2000C(前出)に代えた外は、実験例1と同じ手法・条件によって実験を遂行した結果を表2及び図2に示す。図2に見られるとおり、液温約40℃付近ではハイドロフルオロエーテル中に約22wt%の蛍光浸透液が溶解しており、液温10℃付近では約4wt%の蛍光浸透液が溶解している。
【0038】
【表2】
【0039】
実験例3:実験例1におけるハイドロフルオロエーテルをハイドロフルオロカーボンに代えると共に染色浸透液RP−1000(前出)の量を1gに代え、さらに浴槽内温度を、それぞれ約10℃、約20℃、約30℃、約40℃及び約50℃に設定した外は、実験例1と同じ手法・条件によって実験を遂行した結果を表3及び図3に示す。図3に見られるとおり、液温48℃付近ではハイドロフルオロカーボン中に約5.3wt%の染色浸透液が溶解しており、液温10℃付近では約0.9wt%の染色浸透液が溶解している。
【0040】
【表3】
【0041】
実験例4:実験例1におけるハイドロフルオロエーテルをハイドロフルオロカーボンに代え、染色浸透液の代わりに実験例2で用いた蛍光浸透液を用い、その量を1gに代え、さらに、浴槽内温度を、それぞれ約10℃、約20℃、約30℃、約40℃及び約50℃に設定した外は、実験例1と同じ手法・条件によって実験を遂行した結果を表4及び図4に示す。、図4に見られるとおり、液温約50℃付近ではハイドロフルオロカーボン中に約4.6wt%の蛍光浸透液が溶解しており、液温約9℃付近では約0.7wt%の蛍光浸透液が溶解している。
【0042】
【表4】
【0043】
本発明は、前掲実験例によって確認できるハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンが、いずれもその沸点近傍の液温の場合には周知溶剤洗浄型浸透探傷試験に用いられている溶剤除去性染色浸透液及び溶剤除去性蛍光浸透液に対する溶解力が高いが、液温が低い場合にはその溶解力が低下する現象を利用し、周知溶剤洗浄型浸透探傷試験における洗浄処理にハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンのいずれかを洗浄液として用い、当該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて洗浄処理を行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入・溶解している洗浄液を回収し、回収した余剰浸透液が溶解している洗浄液を冷却することによって余剰浸透液と洗浄液とを分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用するものである。
【0044】
従って、本発明の実施に当たっては、洗浄処理以外は周知溶剤洗浄型浸透探傷試験と同じ手順及び操作によればよい。
【0045】
本発明の実施に当たり、洗浄処理における洗浄手段に洗浄液のスプレー散布又は洗浄液への浸漬を採用する場合に、洗浄液がハイドロフルオロエーテルであるときには、液温35〜50℃に維持した状態にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に適用すれば該余剰浸透液を洗浄除去でき、洗浄液がハイドロフルオロカーボンであるときには、液温35〜45℃に維持した状態にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に適用すれば該余剰浸透液を洗浄除去できる。なお、洗浄手段に洗浄液のスプレー散布を採用した場合には、散布された洗浄液を集め循環させて散布する。
【0046】
洗浄手段に洗浄液蒸気発生槽中での洗浄を採用する場合には、洗浄液がハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロカーボンのいずれであっても、それらの各沸点温度に加熱して蒸気を発生させ、発生した蒸気を余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて該余剰浸透液を洗浄除去する。なお、被検査物表面に接触した蒸気は被検査物表面で凝固して液滴となって落下し、加熱されて再び蒸気となる。
【0047】
洗浄処理を前記いずれの洗浄手段を採用する場合にも、洗浄処理を繰り返すにつれて洗浄液に混入する浸透液の量が増加し、洗浄能力が低下し被検査物表面に残留している余剰浸透液を十分に洗浄除去できなくなると、洗浄処理を停止し、浸透液が混入している洗浄液を回収して底部に取り出し口を備えた透明ガラス又は透明プラスチックス製分液槽に移す。
【0048】
前記分液槽に移された浸透液が混入している洗浄液は、当該分液槽を冷却して槽内の液温を10〜20℃に維持した状態にて10〜20分間静置すると、上相が浸透液で下相が洗浄液の二相に分離するので、取り出し口から洗浄液を抜き出して洗浄処理に再使用する。
【0049】
また、再使用する洗浄液がその使用時に該洗浄液に混入する浸透液の量が増加して被検査物表面に残留している余剰浸透液を十分に洗浄除去できなくなれば、洗浄処理を停止し、前記と同じ操作によって浸透液と洗浄液とを分離し、洗浄処理に再使用する。
【実施例】
【0050】
実施例1
【0051】
被検査物を染色浸透液RP−1000(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロエーテルを充填した洗浄液槽中に液温約40℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、当該被検査物表面に市販の現像剤(スーパーチェック現像剤UD−ST(商品名・マークテック株式会社製:無機質白色微粉末を主成分としている))を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置する現像処理を行った後、当該被検査物表面を白色光の下で目視にて観察して白色微粉末薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0052】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテルを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて15分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0053】
図5は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテル50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に約9(上相):7(下相)で分離していることが確認できる。
【0054】
次いで、当該分離槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0055】
図9は、JIS Z 2343−3:2001(前出非特許文献1)に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に染色浸透液RP−1000(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分離槽から抜き出したハイドロフルオロエーテルを充填したビーカー中に液温約40℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、当該試験片表面にスーパーチェック現像剤UD−ST(前出)を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置することにより、当該薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様を白色灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0056】
実施例2
【0057】
被検査物を蛍光浸透液RP−2000C(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロエーテルを充填した洗浄液槽中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、暗所における紫外線灯照射下で当該被検査物表面を目視にて観察して被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0058】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテルを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0059】
図6は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテル50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを暗所における紫外線灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に約8(上相):8(下相)で分離していることが確認できる。
【0060】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0061】
図10は、JIS Z 2343−3:2001に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に蛍光浸透液RP−2000C(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分液槽から抜き出したハイドロフルオロエーテルを充填したビーカー内に液温約35℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、暗所での紫外線灯照射下において当該試験片の試験面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様を撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0062】
実施例3
【0063】
実施例2における洗浄処理を次の洗浄処理に代えた外は、実施例2と同じ手順及び操作によって探傷作業を行う。
【0064】
加熱ヒーターを槽底部に設けると共に槽上部に水が流通する冷却管を設けた蒸気洗浄槽を使用し、当該蒸気洗浄槽にハイドロフルオロエーテルを充填して加熱ヒーターによって沸点温度になるまで加熱して蒸気を発生させる。なお、当該蒸気洗浄槽の上部開口近傍は冷却管によって約35℃に維持させる。
【0065】
浸透処理を行った被検査物を蒸気洗浄槽内に吊り下げ、ハイドロフルオロエーテルの蒸気に接触させて該蒸気を被検査物表面で結露させ、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させ、次いで、実施例2と同様にして被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0066】
そして、当該蒸気洗浄槽内での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、蒸気洗浄槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロエーテルを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0067】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記蒸気洗浄槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0068】
本実施例においても、実施例2の場合と同様に、分液槽内で浸透液とハイドロフルオロエーテルとを容易に分離できると共に分液槽から抜き出したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることを確認している。
【0069】
実施例4
【0070】
被検査物を染色浸透液RP−1000(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロカーボンを充填した洗浄液槽中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、当該被検査物表面にスーパーチェック現像剤UD−ST(前出)を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置する現像処理を行った後、当該被検査物表面を白色光の下で目視にて観察して白色微粉末薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0071】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボンを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて15分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に分離させる。
【0072】
図7は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボン50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に約8(上相):7(下相)で分離していることが確認できる。
【0073】
次いで、当該分離槽から下相のハイドロフルオロカーボンを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0074】
図11は、JIS Z 2343−3:2001に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に染色浸透液RP−1000(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分離槽から抜き出したハイドロフルオロカーボンを充填したビーカー中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、当該試験片表面にスーパーチェック現像剤UD−ST(前出)を用いて厚さ約30μmの白色微粉末薄層を形成して10分間放置することにより、当該薄層表面に現出している赤色欠陥指示ニジミ模様を白色灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロエーテルが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0075】
実施例5
【0076】
被検査物を蛍光浸透液RP−2000C(前出)を充填した浸透液槽中に浸漬して引き上げて5分間放置する浸透処理を行い、次いで、当該被検査物をハイドロフルオロカーボンを充填した洗浄液槽中に液温約35℃に維持して浸漬し、当該被検査物を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させる洗浄処理を行い、次いで、暗所における紫外線灯照射下で当該被検査物表面を目視にて観察して被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0077】
そして、当該洗浄液槽中での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、洗浄液槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボンを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約15℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に分離させる。
【0078】
図8は、前記状態にある浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボン50mlを採取して充填した透明ガラス製50mlメスシリンダーを暗所における紫外線灯照射下で撮影した写真であり、同図によって浸透液(上相)とハイドロフルオロカーボン(下相)との二相に約8(上相):7(下相)で分離していることが確認できる。
【0079】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロカーボンを抜き出し前記洗浄液槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0080】
図12は、JIS Z 2343−3:2001に規定されているタイプ3対比試験片の試験面に蛍光浸透液RP−2000C(前出)を塗布して付着させて5分間放置後、前記分液槽から抜き出したハイドロフルオロカーボンを充填したビーカー内に液温約35℃に維持して浸漬し、当該試験片を振動させながら、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥した後、暗所での紫外線灯照射下において当該試験片の試験面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様を撮影した写真であり、同図によって浸透液を分離したハイドロフルオロカーボンが十分な洗浄力を具備していることが確認できる。
【0081】
実施例6
【0082】
実施例5における洗浄処理を次の洗浄処理に代えた外は、実施例5と同じ手順及び操作によって探傷作業を行う。
【0083】
加熱ヒーターを槽底部に設けると共に槽上部に水が流通する冷却管を設けた蒸気洗浄槽を使用し、当該蒸気洗浄槽にハイドロフルオロカーボンを充填して加熱ヒーターによって沸点温度になるまで加熱して蒸気を発生させる。なお、当該蒸気洗浄槽の上部開口近傍は冷却管によって約35℃に維持させる。
【0084】
浸透処理を行った被検査物を蒸気洗浄槽内に吊り下げ、ハイドロフルオロカーボンの蒸気に接触させて該蒸気を被検査物表面で結露させ、その表面を目視にて観察し余剰浸透液が除去された時点で引き上げて乾燥させ、次いで、実施例5と同様にして被検査物表面で黄緑色に発光している欠陥指示蛍光模様によって当該被検査物表面に存在する開口欠陥部を探傷する作業を、複数個の被検査物について連続して行う。
【0085】
そして、当該蒸気洗浄槽内での余剰浸透液の除去が十分に行えなくなった時点で探傷作業を停止し、蒸気洗浄槽中の浸透液が混入しているハイドロフルオロカーボンを底部に取り出し口を備えた透明ガラス製分液槽に移し、当該分液槽を冷却して液温を約10℃に維持した状態にて10分間静置し、浸透液(上相)とハイドロフルオロエーテル(下相)との二相に分離させる。
【0086】
次いで、当該分液槽から下相のハイドロフルオロエーテルを抜き出し前記蒸気洗浄槽に充填して前記探傷作業を再開する。
【0087】
本実施例においても、実施例4の場合と同様に、分液槽内で浸透液とハイドロフルオロカーボンとを容易に分離できると共に分液槽から抜き出したハイドロフルオロカーボンが十分な洗浄力を具備していることを確認している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液を被検査物表面に付着させて表面開口欠陥部に該浸透液を浸透させる浸透処理を行い、次いで、有機溶剤からなる洗浄液を用いて当該欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する洗浄処理を行い、次いで、当該欠陥部に浸透している浸透液によって欠陥部の存在を探傷する浸透探傷試験において、前記洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液として該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入した洗浄液を回収し、回収した洗浄液を冷却して混入している余剰浸透液と洗浄液とに分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用することを特徴とする浸透探傷試験における洗浄液の処理方法。
【請求項2】
洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点を越えない温度に維持した状態で余剰浸透液が残留している被検査物を当該洗浄液に浸漬して行う請求項1記載の浸透探傷試験における洗浄液の処理方法。
【請求項3】
洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点温度に加熱して蒸気を発生させ該蒸気を余剰浸透液が残留している被検査物表面で結露させて行う請求項1記載の浸透探傷試験における洗浄液の処理方法。
【請求項4】
ハイドロフルオロエーテルからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液。
【請求項5】
ハイドロフルオロカーボンからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液。
【請求項1】
油溶性染料を有機溶剤に溶解してなる溶剤除去性浸透液を被検査物表面に付着させて表面開口欠陥部に該浸透液を浸透させる浸透処理を行い、次いで、有機溶剤からなる洗浄液を用いて当該欠陥部に浸透せずに当該被検査物表面に残留している余剰浸透液を洗浄除去する洗浄処理を行い、次いで、当該欠陥部に浸透している浸透液によって欠陥部の存在を探傷する浸透探傷試験において、前記洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液として該洗浄液をその沸点を越えない温度若しくは沸点にて余剰浸透液が残留している被検査物表面に接触させて行い、当該洗浄処理によって余剰浸透液が混入した洗浄液を回収し、回収した洗浄液を冷却して混入している余剰浸透液と洗浄液とに分離させ、分離した洗浄液を再び洗浄処理に使用することを特徴とする浸透探傷試験における洗浄液の処理方法。
【請求項2】
洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点を越えない温度に維持した状態で余剰浸透液が残留している被検査物を当該洗浄液に浸漬して行う請求項1記載の浸透探傷試験における洗浄液の処理方法。
【請求項3】
洗浄処理をハイドロフルオロエーテル又はハイドロフルオロカーボンを洗浄液とし、当該洗浄液をその沸点温度に加熱して蒸気を発生させ該蒸気を余剰浸透液が残留している被検査物表面で結露させて行う請求項1記載の浸透探傷試験における洗浄液の処理方法。
【請求項4】
ハイドロフルオロエーテルからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液。
【請求項5】
ハイドロフルオロカーボンからなることを特徴とする浸透探傷試験用洗浄液。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−98116(P2012−98116A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245289(P2010−245289)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(390002808)マークテック株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(390002808)マークテック株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
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