説明

消毒方法

【課題】経済性に優れ、安全な消毒方法を提供する。
【解決手段】対象物にカルボン酸、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンを含む溶液を接触させつつ、光を照射する対象物の消毒方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸、鉄イオン、光を用いた消毒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の消毒方法には、紫外線照射法、消毒用アルコールや過酢酸等の消毒薬を用いる方法が挙げられる。紫外線照射法は、未だ使用されているようであるが、非照射部分への効果が期待出来ないため、現在では有用性は限定的である(非特許文献1)。また、消毒用アルコールを用いる方法では引火性に注意が必要であり、過酢酸を用いる方法では臭気対策が必要であるなど、安全な消毒方法は見出されていないのが実状である(非特許文献2)。カルボン酸、鉄イオン、光を用いた技術としては、クロロエチレン類等のような有機物の分解が可能であることが知られている(非特許文献3)。しかしながら、当該組み合わせによって消毒が可能であることは見出されていない。
【非特許文献1】消毒薬の使用指針(編集 日本病院薬剤師会)
【非特許文献2】消毒と滅菌のガイドライン(編集 NTT東日本関東病院)
【非特許文献3】資源・素材学会春季大会講演集(2007年) シュウ酸イオンと鉄イオンを用いたクロロエチレン類の光分解メカニズム(東北大学 晴山渉)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、経済性に優れ、安全な消毒方法を提供することにある。発明者らは本目的を解決するため鋭意検討を重ねた結果、カルボン酸、鉄イオン、光を組み合わせることにより消毒が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、対象物にカルボン酸と、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンとを含む溶液を接触させつつ、光を照射する対象物の消毒方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば経済性に優れ、安全な消毒が実施可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の消毒対象物としては、養殖魚や熱帯魚等の魚類に付着した微生物、同様の環境で生息する貝類に付着・寄生している微生物、廃水中の有害生物、医薬用器具、歯科用器具等が挙げられる。特に既に紫外線の適用が試みられている養殖魚や熱帯魚への適用は容易である。また、医薬分野において以前使われていた紫外線ランプを有効に利用するためにも本技術は適用される。
【0007】
本発明に用いられるカルボン酸は、鉄キレートを形成する二塩基カルボン酸が好適に使用される。好ましくはシュウ酸、アジピン酸、ピメリン酸であり、特に好ましくはシュウ酸である。鉄イオンは、2価(II)及び/または3価(III)の鉄塩を水に溶解させることにより得られる。また、アニオン種に制限はなく、水溶性の鉄塩であれば使用可能である。具体例としては、硫酸第一及び第二鉄、硫酸第一鉄及び第二鉄アンモニウム、塩化第一及び第二鉄、硝酸鉄等が挙げられる。光源は、特に制限はなく、紫外線ランプ等も使用可能であるが、経済的に好ましい太陽光の使用も可能である。
【0008】
カルボン酸の濃度や鉄イオンの濃度には、特に制限はなく、溶解度及び対象となる菌類の強さ、濃度を勘案して決定すれば良い。常用されるカルボン酸の濃度は0.1重量%から飽和までである。また、鉄イオンの常用濃度は1ppmから1%の範囲である。尚、本発明におけるカルボン酸は光照射によって消費されていくので、初期濃度は鉄イオンに対し10倍以上(モル比)過剰であることが好ましい。
【実施例】
【0009】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<イースト菌を用いた消毒試験方法>
本発明のカルボン酸、鉄イオン、光の組み合わせによる消毒方法の強さを調べるため、以下の方法で消毒試験を実施した。使用したイースト菌と培地は以下の通り。
イースト菌(パン酵母):日清フーズ株式会社製 日清スーパーカメリア
培養用培地:三愛石油株式会社製 サンアイバイオチェッカーM
手順を以下に示す。
1.イースト菌100mgに超純水10mLを加える。・・・(1)
2.被検液9mLに(1)1mLを加え、太陽光が照射される場所に所定時間放置する。・・・(2)
3.(2)1mLを超純水で100倍に希釈する。・・・(3)
4.バイオチェッカーMを(3)に浸す。
5.30℃にて48時間培養する。
6.対照表により菌数を測定する。
注)ブランクでは被検液の替わりに超純水を用いた。
【0010】
実施例1〜6、比較例1〜8
硫酸第二鉄(アルドリッチ製)と、シュウ酸二水和物(和光純薬製)、アジピン酸(東京化成工業製)、ピメリン酸(東京化成工業製)、マロン酸(和光純薬製)、コハク酸(和光純薬製)、グルタル酸(和光純薬製)とを用い、鉄イオン濃度400ppm、カルボン酸濃度/鉄イオンの比が10モル比であるような溶液をそれぞれ調製した。
6種類の液を被検液とし、太陽光照射時間30分及び60分にて前記イースト菌消毒試験を行った。結果を表1に示す。
【0011】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にカルボン酸と、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンとを含む溶液を接触させつつ、光を照射することを特徴とする対象物の消毒方法。
【請求項2】
対象物が魚類に付着した微生物、貝類に付着・寄生している微生物、廃水中の有害生物、医療用器具または歯科用器具である請求項1記載の対象物の消毒方法。
【請求項3】
カルボン酸が二塩基カルボン酸である請求項1記載の対象物の消毒方法。
【請求項4】
二塩基カルボン酸がシュウ酸、アジピン酸またはピメリン酸である請求項3記載の対象物の消毒方法。
【請求項5】
光が太陽光である請求項1記載の対象物の消毒方法。

【公開番号】特開2009−142367(P2009−142367A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320716(P2007−320716)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】