説明

消泡装置

【課題】動力を必要とせずに消泡することが可能な消泡装置を提供する。
【解決手段】この消泡装置50は、発電所施設から排出された海水を満潮時の海面より高い位置にある放水口より放水する際に発生する泡を消す消泡装置であって、満潮時の海面より高い位置に配設して放水口10から放水された海水を一時的に貯留する第1貯留槽11と、第1貯留槽11より低位置にあって、第1貯留槽11からオーバフローした海水を貯留する第2貯留槽18と、第2貯留槽18を構成する堰堤14の周囲に配設され、第1貯留槽11内の海水を第2貯留槽18に放出して第2貯留槽18に発生した泡20を消す消泡配管12と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡装置に関し、さらに詳しくは、原子力発電所等の復水器により熱交換された海水を放水口より海に放水する際に発生する泡を消す消泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等では、蒸気タービン発電機を回転させる動力源として高温・高圧の蒸気を使用し、タービン発電機を回転した後の蒸気は復水器により冷却されて水に戻されて再使用している。復水器により蒸気を冷却するために大量の水を必要とするため、発電所の多くは海の近くに建設され、冷却水として海水をポンプにより汲み上げて復水器に供給し、高温・高圧の蒸気を冷却して再び海に放水している。このとき、海水の放水口は満潮時の海面より高い位置に配設されるため、放水したときに海水と空気が混合して多くの泡が海面に発生していた。この泡は本来汚染物質を含まないため、清潔且つ無害であるが、長時間海面上を漂ううちに、水垢や大気中のほこりを吸着して見かけ上汚くなるばかりでなく、海流に乗って遥か沖合まで拡がると広い範囲の海面を濁った状態にして、海洋汚染の誤解を招くといった問題がある。
この泡を消す従来技術として特許文献1には、サイホン管を介して海中に放水するための放水装置であって、サイホン管の頂部の空気をサイホン管内の放水流の流速によって放水流中に吸引する原子力発電所用冷却海水放水装置について開示されている。
また、特許文献2には、海面より下側に開口部を備えた堰を設け、この開口部から放水口からの海水が放水されるようにして、放水口からの流量と開口部からの流量が常に等しくなるように制御される発電所放水口の海水白濁抑制方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−289186号公報
【特許文献2】特開平7−191187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、サイホン管に溜まった空気をサイホン管を介して海中に放出するため、そのときに空気と海水が混合して泡が発生するといった問題がある。また、特許文献2に開示されている従来技術は、放水口からの流量と開口部からの流量が常に等しくなるように制御する必要があるため、流量センサや堰を上下するための駆動装置等が必要となり、装置が複雑となってコストが嵩むといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、満潮時の海面より高い位置にある放水口から放水される海水を導いて、複数の散水口から海水を泡に向かって散水することにより、動力を必要とせずに消泡することが可能な消泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、発電所施設から排出された海水を満潮時の海面より高い位置にある放水口より放水する際に海面に発生する泡を消す消泡装置であって、満潮時の海面より高い位置に配設されて前記放水口から放水された海水を一時的に貯留する第1貯留槽と、該第1貯留槽から排水される海水を受ける海面を包囲するために海底に敷設された堰堤により形成された第2貯留槽と、該堰堤の内側に配設されて前記第1貯留槽からの海水の放出時に前記第2貯留槽内の海面に発生する泡を消すための海水を散布する消泡配管と、を備え、前記消泡配管は、前記第1貯留槽内の海水を取水するために高所に配置された取水口と、該取水口から取水した海水を前記第2貯留槽の海面に散水するために低所に配置された複数の散水口と、を備えていることを特徴とする。
泡は、水が高所から水面に落下したときに、空気を巻き込んだ水が弾けて水膜を形成することにより発生する。本発明に係る消泡装置は、この水膜(泡)に細かい水滴を散水して泡を消滅させる装置である。また、本発明ではモータ等の動力源を使用せずに行なう点が特徴である。そのために、第1貯留槽より低位置にあって、第1貯留槽から排水される海水を受ける海面を包囲するために海底に敷設された堰堤により形成された第2貯留槽を設け、第1貯留槽と第2貯留槽の高低差による水圧により第1貯留槽内の海水を散水口より第2貯留槽に散水する。これにより、動力を必要とせずに第2貯留槽に発生した泡を散水して消泡することができる。
【0006】
請求項2は、前記消泡配管に備えた散水口を複数列に配設したことを特徴とする。
第2貯留槽に発生した泡は、散水することにより消すことができるが、消泡配管を第2貯留槽全面に配設することはコスト的に困難である。従って、泡が外海に流出しないように適切に消泡配管を配設することが重要である。そこで本発明では、消泡配管に備えた散水口を複数列に配設する。これにより、消泡しきれなかった泡を外海に流出する手前で効率よく消すことができる。
請求項3は、前記堰堤の内側に沿って、該第2貯留槽で発生した泡を前記外海に流出するのを防止するフェンスを備えたことを特徴とする。
基本的に泡は軽いため海面上に発生する。その泡に散水して泡を消すわけであるが、海面上は風が吹き、この風の影響で散水が常に一定の場所に散水できるとは限らない。そのため、条件によっては消泡しきれない泡も存在する。そこで本発明では、第2貯留槽の堰堤の内側に沿ってフェンスを備える。これにより、消泡しきれない泡が外海に流出するのを防止することができる。
請求項4は、前記消泡配管は、前記取水口を備えた第1の管と、前記散水口を備えた第2の管とを連接して構成され、前記第2の管の管径を前記第1の管の管径より小さく構成したことを特徴とする。
例えば、圧力が一定の水道管の先端を狭くすると、狭くする前の水の勢いより大きくなって遠い距離まで放水することができる。本発明はこの原理から、取水口を備えた第1の管を太くし、散水口を備えた第2の管を細くして両者を連接する。これにより、散水口から高い水圧の海水を散水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】BWR発電所の全体系統構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る消泡装置の断面構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る消泡装置50を上から見た平面図である。
【図4】図3に示す第2の管16に備えられた散水口の部分を断面として拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1はBWR発電所の全体系統構成を示す図である。
原子炉格納容器1内には、原子炉圧力容器2、燃料3、制御棒4、再循環ポンプ6、圧力抑制プール5等が収容されている。BWR発電所の場合、原子炉格納容器1内でウラン燃料の核分裂時に発生する熱で原子炉冷却材を加熱し、生成した蒸気が直接タービン7を駆動して電気を発生する仕組みとなっている。ここで、主蒸気タービン7を出た蒸気は復水器9により冷却されて水に戻される。また、復水器9は海水を冷却水ポンプ17により汲み上げて循環させて蒸気を冷却し、熱交換された海水は放水口10から再び海に戻される。本発明は、放水口10から放水された海水により発生した泡を消す消泡装置50に関する発明である。
以下、消泡装置50の概略動作について説明する。復水器9は冷却水ポンプ17により外海15から海水を汲み上げて内部の冷却管を通って高圧蒸気の熱と熱交換される。そして熱交換が終了した温海水は放水口10から第1貯留槽11に放水される。第1貯留槽11に貯留した海水は、堰13をオーバフローして低位置にある第2貯留槽18に放流される。そのとき、第2貯留槽18には泡が発生して第2貯留槽18内に溜まる。この泡を消すために、第1貯留槽内に取水口23を備えた消泡配管12を第2貯留槽の堰14の内周に沿って配設する。これにより、第1貯留槽と第2貯留槽の高低差により生ずる水圧により、散水口22から海水を散水して第2貯留槽18内に発生した泡を消泡することができる(詳細は後述する)。
【0009】
図2は本発明の実施形態に係る消泡装置の断面構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。この消泡装置50は、発電所施設から排出された海水を満潮時の海面より高い位置にある放水口10より放水する際に海面に発生する泡を消す消泡装置50であって、満潮時の海面より高い位置に配設されて放水口10から放水された海水を一時的に貯留する第1貯留槽11と、第1貯留槽11から排水される海水を受ける海面を包囲するために海底に敷設された堰堤14により形成された第2貯留槽18と、堰堤14の内側に沿って配設されて第1貯留槽11からの海水の放出時に第2貯留槽18内の海面に発生する泡20を消す消泡配管12と、を備えて構成されている。
そして、消泡配管12は、第1貯留槽11内の海水を取水するために高所に配置された取水口23と、取水口23から取水した海水を第2貯留槽18の海面に散水するために低所に配置された複数の散水口22と、を備え、第1貯留槽11と第2貯留槽18の高低差による水圧により第1貯留槽11内の海水を散水口22より第2貯留槽18に散水する。尚、第1貯留槽11内には、放水口10から放水された海水を分流させる仕切り部19を設け、また、消泡配管12は、一部を堰13の内部に埋設し、取水口23を備えた第1の管26と、複数の散水口22を備えた第2の管16とを連接して構成され、第2の管16の管径を第1の管26の管径より小さく構成した。また、消泡配管12を支持するために、堰堤14の内側に沿って支持台25を配設した。また、第2貯留槽18の堰堤14の内側に沿って、第2貯留槽18で発生した泡20を外海15に流出するのを防止するフェンス24を備えた。
【0010】
次に本発明の消泡装置50の動作について説明する。図1に示す復水器9は冷却水ポンプ17により外海15から海水を汲み上げて内部の冷却管を通って高圧蒸気の熱と熱交換される。そして熱交換を終了した温海水は放水口10から第1貯留槽11に放水される。第1貯留槽11は満潮時の外海15の海面より高い位置に配設される。第1貯留槽11に貯留した海水は、堰13をオーバフローして低位置にある第2貯留槽18に放流される。また、堰13の外側にはテトラポッド(登録商標)等の消泡ブロック27が積み上げられ、泡を可能な限り消すようにしている。しかし、第2貯留槽18には消しきれない泡20が発生して第2貯留槽18内に溜まる。この泡20を消すために、第1貯留槽11内に取水口23を備えた消泡配管12を第2貯留槽18の堰14の内側に沿って配設する。第1貯留槽11は第2貯留槽18より高い位置にあるので、消泡配管12内には、第1貯留槽11と第2貯留槽18の高低差により生じる水圧が発生する。これにより、散水口22から海水が散水して第2貯留槽18内に発生した泡20を消泡する。尚、第2の管16を2箇所に設けて、第2の管を16と16aとすることにより、より広い範囲に散水が可能となる。
即ち、泡20は、水が高所から水面に落下したときに、空気を巻き込んだ水が弾けて水膜を形成することにより発生する。本実施形態に係る消泡装置50は、この水膜(泡)に細かい水滴を散水して泡を消滅させる装置である。また、本実施形態ではモータ等の動力源を使用せずに行なう点が特徴である。そのために、第1貯留槽11より低位置にあって、第1貯留槽11からオーバフローした海水を貯留する第2貯留槽18を設け、第1貯留槽11と第2貯留槽18の高低差による水圧により第1貯留槽11内の海水を散水口22より第2貯留槽18に散水する。これにより、動力を必要とせずに第2貯留槽18に発生した泡20を散水して消泡することができる。
【0011】
また、消泡配管12に備えた散水口22を複数列に配設する。即ち、第2貯留槽18に発生した泡20は、散水することにより消すことができるが、消泡配管12を第2貯留槽18全面に配設することはコスト的に困難である。従って、泡20が外海15に流出しないように適切に消泡配管12を配設することが重要である。そこで本実施形態では、消泡配管12に備えた散水口22を複数列に配設する。これにより、消泡しきれなかった泡20を外海15に流出する手前で効率よく消すことができる。
また、第2貯留槽18の堰堤14の内側に沿って、第2貯留槽18で発生した泡20を外海15に流出するのを防止するフェンス24を備える。即ち、基本的に泡20は軽いため海面上に発生する。その泡20に散水して泡を消すわけであるが、海面上は風が吹き、この風の影響で散水が常に一定の場所に散水できるとは限らない。そのため、条件によっては消泡しきれない泡も存在する。そこで本実施形態では、第2貯留槽18の堰堤14の内側に沿ってフェンス24を備えることにより、消泡しきれない泡が外海15に流出するのを防止することができる。
また、消泡配管12は、取水口23を備えた第1の管26と、散水口22を備えた第2の管16とを連接して構成され、第2の管16の管径を第1の管26の管径より小さく構成した。例えば、圧力が一定の水道管の先端を狭くすると、狭くする前の水の勢いより強くなって遠い距離まで放水することができる。本実施形態はこの原理から、取水口23を備えた第1の管26を太くし、散水口22を備えた第2の管16を細くして両者を連接する。これにより、散水口22から水圧の高い海水を散水することができる。
【0012】
図3は本発明の実施形態に係る消泡装置50を上から見た平面図である。同じ構成要素には図2と同じ参照番号を付し、重複する説明は省略する。本発明の消泡装置50は、放水口10から放水された海水を仕切り部19により左右に分流させる。第1貯留槽11に貯留した海水が堰13をオーバフローして第2貯留槽18に落下する。そのとき、落下の衝撃により第2貯留槽に泡が発生する。この図から明らかなように、消泡配管12は第1貯留槽11から第2貯留槽18の堰堤14の内周を囲むように配設され、取水口23の一端が再び第1貯留槽11に戻るように構成されている。これにより、第1貯留槽11内にある2箇所の取水口23から流れ込んだ海水は、太い第1の管26を介して分岐点28に流入し、分岐点28から細い第2の管16に流入し、散水口22から海水が散水する。このように、本発明の実施形態に係る消泡装置50では、第2貯留槽18により閉じた範囲に泡20を閉じ込めて消泡するため、泡20が外海15に流出する可能性を最小限にすると共に、消泡の効率を高めることができる。
図4は図3に示す第2の管16に備えられた散水口の部分を断面として拡大した図である。第1の管16は堰堤14に固定された支持台25に固定部材29により固定され、2列に設けられた散水口22から海水を散水する。また、支持台25には、第2貯留槽内の泡を外海15に流出させないように、ゴム板等で構成したフェンス24を海面内に没するように設置する。
以上で説明した実施形態では散水口22が固定的な場所に配置されているが、第2の管16を移動手段により第2貯留槽18上を往復するように構成して、発生した泡20に対して広い範囲に亘って散水するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0013】
1 原子炉格納容器、2 蒸気発生器、3 核燃料、4 制御棒、5 圧力抑制室、6 冷却材ポンプ、7 主蒸気タービン、8 発電機、9 復水器、10 放水管、11 第1貯留槽、12 消泡配管、13 堰、14 堰堤、15 外海、16 第2の管、17 冷却水ポンプ、18 第2貯留槽、19 仕切り部、20 泡、22 散水口、23 取水口、24 フェンス、25 支持台、26 第1の管、27 消泡ブロック、28 分岐点、29 固定部材、50 消泡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電所施設から排出された海水を満潮時の海面より高い位置にある放水口より放水する際に海面に発生する泡を消す消泡装置であって、
満潮時の海面より高い位置に配設されて前記放水口から放水された海水を一時的に貯留する第1貯留槽と、該第1貯留槽から排水される海水を受ける海面を包囲するために海底に敷設された堰堤により形成された第2貯留槽と、該堰堤の内側に配設されて前記第1貯留槽からの海水の放出時に前記第2貯留槽内の海面に発生する泡を消すための海水を散布する消泡配管と、を備え、
前記消泡配管は、前記第1貯留槽内の海水を取水するために高所に配置された取水口と、該取水口から取水した海水を前記第2貯留槽の海面に散水するために低所に配置された複数の散水口と、を備えていることを特徴とする消泡装置。
【請求項2】
前記消泡配管に備えた散水口を複数列に配設したことを特徴とする請求項1に記載の消泡装置。
【請求項3】
前記堰堤の内側に沿って、該第2貯留槽で発生した泡を前記外海に流出するのを防止するフェンスを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の消泡装置。
【請求項4】
前記消泡配管は、前記取水口を備えた第1の管と、前記散水口を備えた第2の管とを連接して構成され、前記第2の管の管径を前記第1の管の管径より小さく構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の消泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−492(P2011−492A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143073(P2009−143073)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】