説明

消火システム

【課題】 水ポンプの始動前に呼び水を満たすための真空ポンプを省略できるようにする。
【解決手段】 同一のコンプレッサ3を用い、水ポンプ1の始動前にはこのコンプレッサの吸引機能を利用して、この水ポンプ内等の空気を吸引し、この水ポンプの始動以降は、このコンプレッサの圧送機能を利用して、この水ポンプから混合器2に圧送する水に外気を混合させる。このようにコンプレッサ3の吸引機能と圧送機能とを使い分けることによって、別途真空ポンプを設ける必要をなくすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火システムに関し、特に一つのコンプレッサによって、水ポンプの始動前には、この水ポンプに呼び水を満たすと共に、この水ポンプの始動以降には、この水ポンプから圧送される水等に圧縮空気を混合することができる消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水ポンプで圧送した水に消火原液を混入させた後に、コンプレッサからの圧縮空気を混合して発泡させてからノズルで放出することによって、効果的に消火を行なう消火システムが提案されている。さらにこれらの消火システムには、地上や建物等に設置するものに限らず、いわゆる消防自動車として車に搭載し、火災現場に急行して迅速に消火を行なうものもある。
【0003】
ところで消火用として、多量の水を使用する場合には、通常水ポンプによって貯水槽、池、川あるいは海等から水を吸い上げて使用している。特に車載用に用いる消火システムでは、搭載できる消火用の水量には限度があるため、貯水槽等から水を吸い上げる水ポンプが必要となる。しかるに、このように水ポンプによって外部から水を吸い上げる場合には、予め水ポンプや、水源と水ポンプとの間のホース等に充満している空気を吸い出して、いわゆる呼び水で満たさないと、水ポンプで水を吸い上げることができない。したがって水ポンプによって外部から水を吸い上げる場合には、水ポンプの始動前に、呼び水を満たすための真空ポンプが必要であった。
【0004】
ここで水ポンプによって外部から水を吸い上げる消火システムの1例を、図3および図4に示す。なお図3は、水ポンプの始動前の作動状況を示し、図4は、この水ポンプの始動以降の作動状況を示している。すなわち図3に示すように、水ポンプ101の始動前は、真空ポンプ108を作動させて、この水ポンプ内および水源104からこの水ポンプまでの流路111内に残存する空気を吸引して外気に排出する。
【0005】
なお水ポンプ101と真空ポンプ108との間の流路106には、止水弁161と逆止弁162とが、この順序で設けてある。止水弁161は、真空ポンプ108が、空気だけを吸引し、水が侵入しないようにするためのものである。すなわち止水弁161は、ダイヤフラムに連結した弁によって流路を開閉するものであって、真空ポンプ108によって空気が吸引され、この止水弁内の圧力が低下している間は、このダイヤフラムが膨脹して弁を開位置に保ち、この止水弁内に水が吸込まれると、その水圧で弁を閉ざす機構になっている。また逆止弁162は、水ポンプ101の始動以降に、停止させた真空ポンプ108から空気を吸込まないようにするためのものである。また水ポンプ101の吐出側にも、逆止弁112が設けてあり、真空ポンプ108によって、この水ポンプの吐出側流路内の空気が吸引されないようにしている。
【0006】
一方図4に示すように、水ポンプ101の始動以降は、真空ポンプ108を停止させ、この水ポンプによって水源104から水を吸上げて、混合器102に圧送する。またコンプレッサ103は、吸引した外気を混合器102に圧送する。そして水ポンプ101から圧送される水に消火原液105を混入し、混合器102においてコンプレッサ103から圧送された空気を混入して発泡させ、噴射ノズルから放出する。なおコンプレッサ103の吐出側の流路107に設けた逆止弁172は、このコンプレッサの停止後に、混合器102等に残留する水や消火原液が逆流することを防止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに上述した従来の消火システムにおいては、真空ポンプ108は、呼び水を満たすために、水ポンプ101を始動する前にのみ使用し、一旦この水ポンプを始動した後は使用されない。また水ポンプ101で圧送した水等に圧縮空気を混合して、発泡状にするために使用するコンプレッサ103は、外気から空気を吸引するものである。しかもこのコンプレッサ103は、水ポンプ101を始動した後にのみ使用され、この水ポンプを始動する前に使用されることはない。
【0008】
したがって同一のコンプレッサ103を使用して、水ポンプ101を始動する前には、空気の吸い込み機能を利用し、この水ポンプを始動した後には、空気の圧送機能を利用するように、双方の機能を使い分けることが可能である。
【0009】
そこで本発明の目的は、一つのコンプレッサによって、水ポンプの始動前には、水ポンプと吸い上げ流路とに呼び水を満たすと共に、この水ポンプの始動以降には、水ポンプから圧送される水等に圧縮空気を混合することができる消火システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決すべく本発明による消火システムの特徴は、水源から水を吸上げる水ポンプと、この水ポンプから水が圧送される混合器と、コンプレッサと、このコンプレッサの流入路とを備え、この流入路は、この水ポンプの入口に連通する流路と、外気に連通する流路と、これらの流路のいずれかを選択する切替え手段とを有していることにある。そして上記コンプレッサは、上記水ポンプの始動前においては、上記切替え手段の一方の選択によって上記水源からこの水ポンプまでの流路内、及びこの水ポンプ内の空気を吸引し、この水ポンプの始動以降においては、この切替え手段の他方の選択によって外気を吸引して上記混合器に圧送する。
【0011】
上記水ポンプと混合器との間の流路、またはこの混合器のいずれかには、消火原液を混入するのが望ましい。また上記切替え手段は、上記外気に連通する流路に設けた開閉バルブであって、この開閉バルブは、この水ポンプの始動前には閉じ、この水ポンプの始動以降には開くように構成することが望ましい。
【0012】
さらに上記消火システムは、車載用に用いることが望ましい。
【0013】
ここで「水源」とは、消火のための水を蓄えているものを意味し、例えば貯水槽、池、河川、海が該当する。また「水ポンプ」とは、水源から水を吸い上げる揚水ポンプを意味し、その形式、能力、あるいは数量を問わない。例えばピストン式やギア式等の容積型ポンプ、あるいは渦流式等の非容積型ポンプが該当する。「混合器」とは、水ポンプから圧送される水と、コンプレッサから圧送された空気とを混合する全ての装置を意味し、例えば水の流路の壁面に形成した穴やスリット等から、空気を流入させるもの、あるいは水の流路内に、パイプ等を挿設して、このパイプ等から空気を流入させるものが該当する。「コンプレッサ」とは、外気から空気を吸い込んで圧送する圧縮機を意味し、ピストン式やスクリュー式等の容積型圧縮機、あるいは遠心式等の非容積型圧縮機が該当する。
【0014】
また「水ポンプの入口に連通する流路」とは、後述するように水ポンプの始動前において、水源からこの水ポンプまでの流路内、及びこの水ポンプ内の空気を吸引することができるように連通した流路を意味し、水源からの水が流入する水ポンプの入口に限らず、水ポンプ内の流路に連結する場合も含む。「切り替え手段」とは、水ポンプの入口に連通する流路、または外気に連通する流路のいずれかを選択できる全ての手段を意味し、手動のものに限らず、電気や流体の圧力等で作動するものも含む。例えば複数の開閉バルブからなるもの、3方バルブ、あるいは開閉バルブと逆止弁とからなるものが該当する。「コンプレッサは、上記水ポンプの始動前においては、上記切替え手段の一方の選択によって上記水源からこの水ポンプまでの流路内及びこの水ポンプ内の空気を吸引する」とは、上述したように、水ポンプを始動する前には、コンプレッサの空気の吸い込み機能を利用することを意味する。「上記コンプレッサは、上記水ポンプの始動以降においては、上記切替え手段の他方の選択によって外気を吸引して上記混合器に圧送する」とは、上述したように、水ポンプの始動以降は、コンプレッサの空気の圧送機能を利用することを意味する。
【0015】
「消火原液」とは、水と混合して圧縮空気等を混入すると発泡し、泡消火剤として使用できる全ての液剤を意味し、例えばたん白泡消火剤や合成界面活性剤泡消火剤が該当する。「開閉バルブ」とは、流路を開閉する全てのバルブを意味し、手動のバルブの他、電気や油圧等で開閉するバルブが該当する。
【発明の効果】
【0016】
一つのコンプレッサによって、水ポンプの始動前には、水ポンプと水源からこの水ポンプまでの流路内とに呼び水を満たすと共に、この水ポンプの始動以降には、水ポンプから圧送される水に圧縮空気を混合することができるので、真空ポンプが不要となる。したがって製造コストや整備コストを大幅に削減でき、真空ポンプの車載スペースを、他の目的に有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1及び図2を参照しつつ、本発明による消火システムの構成を説明する。なお図1は、水ポンプ始動前の本システムの作動状態を示しており、図2は、水ポンプ始動以降の本システムの作動状態を示している。すなわち本発明による消火システムは、いわゆる消防車に搭載して使用するものであって、図1及び図2に示すように、貯水池等の水源4から、吸込み用のホースからなる流路11を介して水を吸上げる水ポンプ1と、この水ポンプから水が圧送される混合器2と、コンプレッサ3とを備えている。水ポンプ1と、混合器2との間の流路には、合成界面活性剤泡消火剤等からなる消火原液5が混入される。
【0018】
なお水ポンプ1は遠心式ポンプを使用し、コンプレッサ3はロータリー・スクリュー式のものを使用している。また混合器2は、水ポンプ1から圧送される水に消火原液5を混入した流体を、末狭まりのノズル流路に導入して、このノズル流路にコンプレッサ3から圧送された外気を導入して発泡させ、泡消火剤を形成するものである。また消火原液5は容器に収納され、流速の早い水ポンプ1からの流出経路に吸引される。なお消火原液5、およびコンプレッサ3から圧送される外気の流量は、水ポンプ1から圧送される水の流量に応じて、適宜増減できる流量調整手段を備えている。
【0019】
水ポンプ1とコンプレッサ3の入口とは、ホースからなる流路6で連通しており、この流路には、この水ポンプからこのコンプレッサの入口に向かって、止水弁61と、この止水弁への逆流を防止する逆止弁62と、外気に連通する流路9とが、この順序で設けてある。外気に連通する流路9には、電動式の開閉バルブ91が設けてある。また水ポンプ1の吐出側には、この水ポンプへの逆流を防止する逆止弁12が設けてある。コンプレッサ3の出口と混合器2とは、ホースからなる流路7で連通しており、この流路には、このコンプレッサの出口からこの混合器に向かって、外気に連通する開閉バルブ71と、このコンプレッサへの逆流を防止する逆止弁72とが、この順序で設けてある。
【0020】
なお止水弁61は、水ポンプ1の始動前において、いわゆる呼び水を満たす場合に、水源4から吸上げた水がコンプレッサ3に吸込まれないようにするためのものであり、上述したようなダイヤフラムを使用した公知のものを使用している。また逆止弁12、62、72は、スプリングで弁を弁座口に押圧する、いわゆる公知のチェックバルブを使用している。なお逆止弁12、62、72は、電磁弁等の他の手段を使用してもよい。
【0021】
さて図1を参照しつつ、水ポンプ1の始動前における本システムの作動を説明する。すなわちこの作動状態では、外気に連通する流路9に設けた開閉バルブ91は閉じており、外気と遮断されている。一方コンプレッサ3の出口と混合器2とを連結する流路7に設けた開閉バルブ71は開いており、外気に連通している。したがってこの状態で、コンプレッサ3を作動させると、このコンプレッサの吸引力によって、上流に設けた逆止弁62を開き、停止している水ポンプ1内、および水源4からこの水ポンプまでの流路11内の空気を吸引し、開いた開閉バルブ71から外気に排出する。なおこの際には、逆止弁12によって、水ポンプ1の吐出側流路内の空気が吸引されることを防止している。またコンプレッサ3から流出する空気は、開いた開閉バルブ71を通じてほぼ外気圧まで減圧するため、その後流に設けた逆止弁72によって、混合器2への流入が防止される。以上のように水ポンプ1の始動前においては、コンプレッサ3の吸引機能によって、この水ポンプに呼び水が満たされる。
【0022】
次に図2を参照しつつ、水ポンプ1の始動以降における本システムの作動を説明する。すなわちこの作動状態では、水ポンプ1及びコンプレッサ3が共に作動している。但し外気に連通する流路9に設けた開閉バルブ91は、開いて外気に連通しており、したがってこのコンプレッサは外気を吸引する。
【0023】
一方コンプレッサ3の吐出側の流路7に設けた開閉バルブ71は閉じており、したがってこのコンプレッサから圧送される空気は、逆止弁72を押し開いて、混合器2に流入する。そして水ポンプ1から圧送される水に消火原液5が混入した流体を発泡させ、泡消火剤を形成し、噴射ノズルから放出される。以上のように水ポンプ1の始動以降においては、コンプレッサ3の圧送機能によって、外気が混合器2に圧送されて、泡消火剤が形成される。
【0024】
なお本消火システムは、車載用に用いる場合に限らず、そのまま据え付け用として用いることもできる。また本消火システムは、消火原液5を混入しないで、水ポンプ1から混合器2に圧送した水に、コンプレッサ3から圧送した空気を混入して、消火水を霧状にして放出する場合にも利用できる。消火原液は、水ポンプ1と混合器2との間の流路に混入する場合に限らず、この混合器に混入してもよい。また水ポンプ1の始動前において、この水ポンプ等からコンプレッサ3によって吸引した空気を、外気に排出しないで混合器2に導入し、噴射ノズルから外気に排出するように構成することも可能である。このような場合には、開閉バルブ71が不要になる。また水ポンプ1を始動した後に、開閉バルブ91を開いて、コンプレッサ3によって外気を吸引する場合には、逆止弁62を省くこともできる。なお水ポンプ1およびコンプレッサ3は、発電機等からの電気で作動するモータ等の公知の手段で駆動する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の消火システムは、真空ポンプを設置しなくても呼び水を満たすことができるために、製造や整備コストが低減でき、またその分車載スペースを、他の目的に有効利用することができる。このため消火システムに関する産業に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】水ポンプの始動前における作動状態を示す構成図である。
【図2】水ポンプの始動以降における作動状態を示す構成図である。
【図3】従来の水ポンプの始動前における作動状態を示す構成図である。
【図4】従来の水ポンプの始動以降における作動状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1、101 水ポンプ
11、111 流路
12、112 逆止弁
2、102 混合器(発泡器)
3、103 コンプレッサ
4、104 水源
5、105 消火原液
6、106 流路
61、161 止水弁
62、162 逆止弁
7、107 流路
71 開閉バルブ
72、172 逆止弁
9 流路
91 開閉バルブ
108 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源から水を吸上げる水ポンプと、この水ポンプから水が圧送される混合器と、コンプレッサと、このコンプレッサの流入路とを備え、
上記流入路は、上記水ポンプの入口に連通する流路と、外気に連通する流路と、これらの流路のいずれかを選択する切替え手段とを有し、
上記コンプレッサは、上記水ポンプの始動前においては、上記切替え手段の一方の選択によって上記水源からこの水ポンプまでの流路内及びこの水ポンプ内の空気を吸引し、
上記コンプレッサは、上記水ポンプの始動以降においては、上記切替え手段の他方の選択によって外気を吸引して上記混合器に圧送する
ことを特徴とする消火システム。
【請求項2】
請求項1において、上記水ポンプと混合器との間の流路、またはこの混合器のいずれかに消火原液を混入することを特徴とする消火システム。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかにおいて、上記切替え手段は、上記外気に連通する流路に設けた開閉バルブであって、
上記開閉バルブは、上記水ポンプの始動前には閉じ、
上記開閉バルブは、上記水ポンプの始動以降には開く
ことを特徴とする消火システム。
【請求項4】
車載用に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの1に記載の消火システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−325696(P2006−325696A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150361(P2005−150361)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】