説明

消火設備

【課題】気泡を含む消火用水を準備する水槽が不要で、ヘッドから放水した後の気泡を充分な時間に亘り維持して消火性能を高める消火設備を提供する。
【解決手段】火災時に消火ポンプ10により加圧供給される消火用水にN2やCO2などの不活性ガスまたはO2などの活性ガスを混合器36で混合し、分岐管26に接続された閉鎖型ヘッド30から散水させる。混合器36から閉鎖型ヘッド30までの間にバブル発生装置40を設け、10μm以下の気泡径を持つバブルを発生し、バブルを含む消火用水を閉鎖型ヘッド30から散水する。バブル発生装置40は、ヘッドの立下り配管毎に設けたり、ヘッドに一体に組み込んだり、ヘッドの手前となる分岐管の途中、若しくは混合器36の2次側の給水本管18などに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細バブルを含む消火用水をヘッドから散水して消火する消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次側配管にマイクロバブルを含んだ消火用水を加圧供給してヘッドから散水する消火設備が知られている。
【0003】
この消火設備にあっては、マイクロバブル発生装置により窒素ガスと水を高速で混合させて気泡径が10μmを超える数10μmくらいまでの微細気泡であるマイクロバブルを発生し、発生したマイクロバブルを水槽に供給し、火災時にポンプにより水槽の消火用水を、流水検知装置の2次配管に接続した火災により作動した消火ヘッドに供給して放水するようにしている。
【0004】
このように窒素ガスを封入したマイクロバブルを含む水をヘッドから散水することにより、水の冷却効果に加えて窒素ガスの窒息効果によって火災を消火することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−268186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなマイクロバブルを含む水をヘッドから散水する消火設備にあっては、水槽内のマイクロバブルが表面に浮き上がって消滅するのを防止するために水槽内の消火用水を循環ポンプの運転で常に循環されている必要があり、維持管理に手間と費用がかかるという問題がある。
【0007】
また、水槽内に形成したマイクロバブルが均一に水槽内に分布できるとは限らず、ヘッドから理想とするマイクロバブルを含む水を常に継続して散水できる保証がない。
【0008】
本発明は、気泡を含む消火用水を準備する水槽が不要で、ヘッドから放水した後の気泡を充分な時間に亘り維持して消火性能を高める消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、火災時に、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に所定のガスを混合器で混合し、分岐管に接続されたヘッドから散水させる消火設備に於いて、
混合器からヘッドまでの間に、数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生するバブル発生装置を設けたことを特徴とする。なお、バブルの気泡径はバブル発生時の値を意味する。
【0010】
ここで、バブル発生装置をヘッドの立下り配管毎に設ける。また、バブル発生装置をヘッドに一体に組み込んでも良い。また、バブル発生装置をヘッドの手前となる分岐管の途中に設けても良い。
【0011】
混合器を消火ポンプの2次側に接続した給水本管に設け、バブル発生装置を混合器の2次側の給水本管に設ける。
【0012】
混合器を消火ポンプの1次側に接続した吸込み配管に設け、バブル発生装置を混合器の2次側の吸込み配管に設ける。
【0013】
消火ポンプの2次側の給水本管の途中に混合器を設けると共に、混合器の2次側の給水配管に攪拌ポンプを設ける。攪拌ポンプをバイパスする仕切弁を備えたバイパス配管を設ける。
【0014】
バブル発生装置は、
螺旋水流を形成するガイドベーンと、
ガイドベーンにより形成された螺旋水流をせん断して数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生するカッターと、
を備える。
【0015】
バブル発生装置のカッターは、本体内周壁から中心に向けて起立した突起部材を軸方向にスパイラル状に配置する。またバブル発生装置のカッターは、本体中心の軸方向に支持部材を配置し、支持部材の外周に突起部材を起立して軸方向にスパイラル状に配置しても良い。
【0016】
バブル発生装置は、本体内に配置され、渦流を発生するタービンブレードを外周に形成したタービン翼型ノズルを備え、タービン翼型ノズルにより発生された渦流をヘッド流入路の絞り込みにより渦破壊して数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生させる。
【0017】
バブル発生装置は、本体内に配置され、螺旋水流を形成するガイドベーンを備え、ガイドベーンにより発生された渦流を流入路の絞り込みにより渦破壊して数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生させる。
【0018】
バブル発生装置は、本体内に配置され、異なる方向の螺旋水流を形成するガイドベーンを複数並べて数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生させる。

混合器により消火用水に混合させる所定のガスとしては、不活性ガス又は活性ガスを混合させる。不活性ガスとして窒素ガス又は二酸化炭素ガスを混合させる。活性ガスとして酸素ガス又は空気を混合させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の消火設備によれば、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスまたは酸素や空気などの活性ガスと水を配管に設けた混合器で混合し、ヘッドの直前で気泡径が数10μm以下のバブルを生成するため、ヘッドからの放水時に気泡を含む水を継続して放水することができ、放水後も長時間に亘り気泡を維持することができる。
【0020】
本発明で発生するバブルは気泡径が10μm以下にもでき、気泡径が10μmを越えるマイクロバブルに対し充分に小さいことから、マイクロバブルに比べ表面張力の作用による自己収縮が強く、収縮速度が高いためにヘッドから放出した後に急速に収縮して気泡としての特性を維持することができる。
【0021】
また、バブルの生成は不活性ガスまたは活性ガスを含む高速で流れる水を摩擦やせん断することにより発生しており、マイナスに帯電する。一方、燃焼物や建物はプラスに帯電しているため、放水したバブルを含む水が積極的に燃焼面や建物内壁などの放射面に静電力により到達して付着し、水による冷却作用とバブルに含まれる不活性ガスによる燃焼抑制を生じ、通常の消火設備の半分の水量でも、同等の消火効果が期待できる。
【0022】
またバブルに含まれる酸素や空気などの活性ガスが放射面において火災により発生した一酸化炭素と反応して二酸化炭素に変化し、更に、放射面以外の防護空間においては酸素が多少増えることとなり、人体への悪影響を抑えることができる。
【0023】
またナノマイクロバブルの表面帯電によって、ヘッドから放水した後に静電反発力を受け、ナノレベルの気泡であっても、10分以上空中に浮遊して存在することができる。
【0024】
またヘッドから放水されて燃焼場に到達したバブル入りの水は、火災の熱エネルギーをバブルを圧壊するエネルギーに変換し、これによって温度上昇を抑制できる。同時に燃焼場はバブルを形成している水により冷却され、バブルに不活性ガスを含む場合には窒息効果が得られる。
【0025】
またバブルにより覆われた部位は熱遮断効果が生まれ、避難経路や避難時間を確保することができる。
【0026】
またバブル入りの水をヘッドから放水することで、バブルによる総表面積も増大し、煙等の有害分子に吸着して落とすため、避難する人の視界と呼吸を確保することができる。
【0027】
また、バブルは放水してから数時間で消滅するため、泡消火設備であっても消火後の清掃を不要にすることができる。
【0028】
また、不活性ガスのバブルを使用した場合、配管内に溜まる不活性ガスにより配管の腐食を防止することができる。
【0029】
更に、バブルはマイナス電荷を帯びることにより、配管内の汚れを除去することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による消火設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1に設けるバブル発生装置の実施形態を示した断面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】図1に設けるバブル発生装置の他の実施形態を示した断面図
【図5】図1に設けるバブル発生装置の他の実施形態を示した断面図
【図6】給水本管や分岐管にバブル発生装置を設ける本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図
【図7】図6に設けるバブル発生装置の実施形態を示した断面図
【図8】図6に設けるバブル発生装置の他の実施形態を示した断面図
【図9】吸込み管に混合器とバブル発生装置を設ける本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図
【図10】消火ポンプに続いて攪拌ポンプを設ける本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、建物の地下階などのポンプ室に消火ポンプ10が設置され、モータ12により駆動される。モータ12はポンプ制御盤14により起動、停止の運転制御を受ける。消火ポンプ10はモータ12による駆動され、吸込み管15により水源水槽16からの消火用水を吸入し、建物の高さ方向に配置した給水本管18に加圧消火用水を供給する。
【0032】
消火ポンプ10に対しては呼水槽20が設けられる。また消火ポンプ10を起動するため圧力タンク22が設けられる。圧力タンク22は給水本管18に接続され、配管内の加圧消火用水を導入して内部の空気を圧縮している。圧力タンク22には圧力スイッチ24が設けられ、圧力スイッチ24は給水本管18の管内圧力が規定圧力以下に低下したことを検出してポンプ制御盤14に圧力低下検出信号を出力し、これによりモータ12を駆動して消火ポンプ10を起動するようにしている。
【0033】
給水本管18からは分岐管26が消火対象区画、例えば建物の各階などに引き出されている。分岐管26の分岐部分には流水検知装置28が設けられている。流水検知装置28は分岐管26にヘッドからの散水に伴う流動が生じると、この流動により弁を開いて流水検知信号を図示しない制御盤に出力する。
【0034】
流水検知装置28の2次側の分岐管26には閉鎖型ヘッド30が複数設置されている。閉鎖型ヘッド30は感熱ヘッドと感熱ヘッドの作動により消火用水を散水する弁機構を一体に備えている。分岐管26の末端側には末端試験弁32が設けられている。
【0035】
このような消火設備に加え本実施形態にあっては、消火ポンプ10の2次側に接続した給水本管18に混合器36を設け、混合器36に対しては不活性ガス発生装置34で発生した不活性ガスを供給して消火用水に混合するようにしている。
【0036】
不活性ガス発生装置34で発生する不活性ガスは例えば窒素ガスであり、これ以外にCO2ガスなどであっても良い。また不活性ガス発生装置34としてはガスボンベを使用することもできる。
【0037】
更に、本実施形態にあっては、流水検知装置28の2次側の分岐管26に接続した閉鎖型ヘッド30の立下り管の部分にバブル発生装置40を設けている。バブル発生装置40は、閉鎖型ヘッド30の開放で流れる消火用水を、旋回流に変換した後に内部に突出したカレントカッターとして機能する突起部材に衝突させ、消火用水に混合されている不活性ガスを微細な気泡に砕くことによって数10μm以下(好ましくは10μm以下)の気泡径をもつバブルを発生し、開放した閉鎖型ヘッド30から散水させる。
【0038】
図2は図1に設けたバブル発生装置の実施形態を示した説明図である。図2において、バブル発生装置40は分岐管26からの立下げ配管46と閉鎖型ヘッド30との間に配置される。バブル発生装置40は円筒配管となる本体41の1次側にガイドベーン42を配置し、不活性ガスを混合した消火用水を旋回水流に変換する。
【0039】
ガイドベーン42に続いてはキノコ状の頭部をもった突起部材である複数のカレントカッター44が本体41の内周面に、軸方向に沿ってスパイラル状に配置され、ガイドベーン42により変換された旋回流をカレントカッター44に衝突させて不活性ガスの気泡を砕き、これを連続して繰り返すことで、10μm以下の微細なバブルを発生する。
【0040】
図3は図2のA−A断面であり、本体41の内周面に端面から見て例えば90度間隔でスパイラル状にカレントカッター44を配置している。なお、カレントカッター44の配置角度は90度以外に破線で示すように45度間隔としてもよいし、更に細かい角度間隔であっても良い。
【0041】
図4は図1の実施形態に使用するバブル発生装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態にあっては、閉鎖型ヘッドにバブル発生装置の機能を一体化したことを特徴とする。
【0042】
図4において、閉鎖型ヘッド30はボディ48の上部となる1次側に配管接続ネジ52を設けた配管接続部50を一体に形成している。ボディ48の下側にはデフレクター56を備えた弁機構及び感熱作動部54が設けられ、火災による熱気流を受けると感熱作動部54を固定している易溶物質が溶け、デフレクター56の下側の弁機構が分解落下して流路を開放し、デフレクター56は下方に降り、放出された消火用水を周囲に飛散させる。
【0043】
配管接続部50の内部流路には、1次側にガイドベーン42を配置し、続いて複数のカレントカッター44を軸方向に沿ってスパイラル状に配置することによってバブル発生部58を構成している。
【0044】
バブル発生部58は、閉鎖型ヘッド30の開放で流れる消火用水をガイドベーン42により旋回流に変換した後にカレントカッター44に衝突させて不活性ガスの気泡を砕き、これを連続して繰り返すことで、10μm以下の微細なバブルを発生する。
【0045】
このように閉鎖型ヘッド30にバブル発生装置としての構造を一体化することで、分岐管の立下げ配管に対する配管接続作業が簡単となり、また設置スペースをコンパクトにすることもできる。なお、バブル発生部58は必ずしもカレントカッター44を備えていなくても良く、ガイドベーン42にて旋回流にした後に、デフレクター56の上部に設けた放出口を図4のようにガイドベーン44の径よりも絞ることで微細なバブルを形成することもできる。
【0046】
図5は図1の消火設備に使用するバブル発生装置40の他の実施形態を示した断面図である。図5において、バブル発生装置40は円筒配管となる本体41の内部にタービン翼型ノズル80を配置している。タービン翼型ノズル80は流入側を円錐形としたノズル本体82の外周軸方向に複数枚のタービンブレード84を張り出し形成している。
本体41は上部のネジ部41aを図2に示したように立下り管46に接続し、下部のネジ穴41bに図2に示したように閉鎖型ヘッド30を接続する。
【0047】
図5のバブル発生装置40の動作は、ネジ部41aを形成した本体41の流入口から不活性ガスを混合した消火用水を送り込むと、消火用水はタービン翼型ノズル80の外周に形成しているタービンブレード84により高速回転する渦流86に変換され、下部のネジ穴41bに接続された閉鎖ヘッド30に流れ込むときに、渦流86はヘッド流入路で絞り込まれて渦破壊を起し、この渦破壊によって10μm以下の微細な気泡となるバブルを発生する。
【0048】
次に図1の消火設備の動作を説明する。消火設備の立上げ時には消火ポンプ18を運転することにより給水本管18及び分岐管26に所定圧力となるように消火用水を充水する。
【0049】
火災により閉鎖型ヘッド30のいずれかが火災による熱気流を受けて開放作動して消火用水を散水したとすると、分岐管26の流水により流水検知装置28の弁が開放し、流水検知信号を図示しない制御盤などに出力して設備作動表示などの必要な制御や報知を行う。
【0050】
また閉鎖型ヘッド30からの散水で給水本管16の管内圧力も低下し、規定圧力以下に低下したことを圧力タンク22の圧力スイッチ24で検知してポンプ制御盤14に圧力低下検出信号を出力することでモータ12により消火ポンプ10を起動する。
【0051】
同時に圧力スイッチ24からの圧力低下検出信号は不活性ガス発生装置34にも出力され、不活性ガス発生装置34は混合器36に窒素ガスなどの不活性ガスを供給する。
【0052】
混合器36は消火ポンプ10から加圧供給された消火用水に不活性ガス発生装置34から供給された不活性ガスを混合し、分岐管26を介して作動した閉鎖型ヘッド30に消火用水を加圧供給する。
【0053】
閉鎖型ヘッド30の手前には例えば図2に示したバブル発生装置40が配置されており、不活性ガスを混合した消火用水をガイドベーン42により旋回水流に変換した後にカレントカッター44に衝突させ、10μm以下の微細なバブルを発生し、開放している閉鎖型ヘッド30から散水させる。
【0054】
閉鎖型ヘッド30から散水された不活性ガスを含むバブルは、気泡径が10μm以下であり、気泡径が10μmを越える従来のマイクロバブルに対し充分に小さくでき、表面張力の作用による自己収縮が強く、収縮速度が高いためにヘッドから放出した後に急速に収縮して気泡としての特性を維持することができる。
【0055】
また、バブルの生成は不活性ガスを含む高速で流れる水を摩擦やせん断することにより発生しており、マイナスに帯電する。一方、燃焼物や建物はプラスに帯電しているため、放水したバブルを含む水が積極的に燃焼面や建物内壁に静電力により到達して付着し、水による冷却作用とバブルに含まれる不活性ガスによる燃焼抑制を生じ、通常の消火設備の半分の水量でも、同等の消火効果が期待できる。またCO2等のガスのみ放出して消火を行う消火設備よりも、ガスの量を抑えることができて人体への悪影響を低減することができる。
【0056】
また本実施形態のバブルは表面帯電によって、ヘッドから放水した後に静電反発力を受け、ナノレベルの気泡であっても、10分以上浮遊状態で存在することができる。
【0057】
またヘッドから放水されて燃焼場に到達したバブル入りの水は、火災の熱エネルギーをバブルを圧壊するエネルギーに変換し、これによって温度上昇を抑制できる。同時に燃焼場はバブルを形成している水により冷却され、バブルに含まれる不活性ガスによる窒息効果が得られる。
【0058】
またバブルにより覆われた部位は熱遮断効果が生まれ、避難経路や避難時間を確保することができる。
【0059】
またバブル入りの水をヘッドから放水することで、バブルによる総表面積も増大し、煙等の有害分子に吸着して落とすため、避難する人の視界と呼吸を確保することができる。更にバブルは放水してから数時間で消滅するため、消火後の清掃を不要にすることができる。
【0060】
図6は本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態にあっては、バブル発生装置を混合器から閉鎖型ヘッドまでの間の給水本管や分岐管に設けたことを特徴とする。
【0061】
図6において、本実施形態のバブル発生装置60は混合器36の2次側で且つ分岐管26の分岐部分までの間の給水本管18に設けている。また必要に応じて流水検知装置60の2次側の分岐管60にもバブル発生装置60を設けている。即ち、バブル発生装置60は混合器36の2次側から閉鎖型ヘッド30までの間であれば、どの位置に設けても良く、また必要に応じて複数のバブル発生装置60を設けるようにしても良い。それ以外の構成は図1の消火設備と同じである。
【0062】
図7は図6の消火設備で使用するバブル発生装置60の実施形態を示した断面図である。図7において、バブル発生装置60は円筒配管となる本体61の両端に1次側フランジ62と2次側フランジ64を設けて配管の途中に接続可能としている。
【0063】
本体61の内部1次側にはガイドベーン42を配置し、不活性ガスを混合した消火用水を旋回水流に変換する。ガイドベーン42に続いてはキノコ状の頭部をもった突起部材である複数のカレントカッター44を本体41の内周面に、軸方向に沿ってスパイラル状に配置し、ガイドベーン42により変換された旋回流をカレントカッター44に衝突させて不活性ガスの気泡を砕き、これを連続して繰り返すことで10μm以下の微細なバブルを発生する。
【0064】
このように給水本管18及び又は分岐管26にバブル発生装置60を設けることで、図1のように閉鎖型ヘッド毎にバブル発生装置40を設けた場合に比べ、バブル発生装置40の設置数を少なくし、設備コストを低減することができる。
【0065】
なお、バブル発生装置60は図5に示すようなタービン型の構成を適用することもできる。
【0066】
図8は図6の消火設備に使用するバブル発生装置60の他の実施形態を示した断面図である。図8において、バブル発生装置60は円筒配管となる本体61の両端に1次側フランジ62と2次側フランジ64を設けて配管の途中に接続可能としている。
【0067】
本体61の内部1次側にはガイドベーン42を配置し、不活性ガスを混合した消火用水を旋回水流に変換する。ガイドベーン42に続いて支持フィン70により本体61内の中心軸方向に両端を円錐形とした支持部材68を配置する。
【0068】
支持部材68の外周の軸方向にはスパイラル状にキノコ状の頭部をもった突起部材である複数のカレントカッター44を配置し、ガイドベーン42により変換された旋回流をカレントカッター44に衝突させて不活性ガスの気泡を砕き、これを連続して繰り返すことで、10μm以下の微細なバブルを発生する。
【0069】
なお、図7及び図8のバブル発生装置60は給水本管18と分岐管26では管径が異なるだけであり、構造そのものは同じである。
【0070】
図9は本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態にあっては、混合器とバブル発生装置を消火ポンプの吸込み管15に設けたことを特徴とする。
【0071】
図9において、混合器36は消火ポンプ10から水源水槽16に降ろした吸込み配管15に設け、消火ポンプ10の運転のときに水源水槽16から吸込む消火用水に混合器36により不活性ガス発生装置34から供給された不活性ガスを混合し、ポンプ10で加圧して給水本管18から分岐管26の開放作動した閉鎖型ヘッド30に供給している。
【0072】
混合器36に続いてはバブル発生装置60を設け、不活性ガスを混合した消火用水の旋回衝突によりバブルを発生した後に消火ポンプ10で加圧供給するようにしている。それ以外の構成は図1の消火設備と同じである。
【0073】
なお、必要があれば破線で示すように閉鎖型ヘッド30毎に、或いは分岐管26、給水本管18にバブル発生装置40を設けるようにしても良い。
【0074】
このように消火ポンプ10の吸込み配管15に混合器36とバブル発生装置60を設けたことにより、混合器36で不活性ガスを混合してバブル発生装置60でバブルを発生した消火用水を消火ポンプ10の加圧することとなり、このときの攪拌によって消火用水に対する不活性ガスを含むバブルの混合状態を更に均一化することができる。
【0075】
なお、バブル発生装置60は吸込み管15ではなく、消火ポンプ10の2次側の給水本管18に設け、吸込み管15には混合器36のみを設けるようにしても良い。
【0076】
図10は本発明による消火設備の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態にあっては、消火ポンプに続いて攪拌ポンプを設けたことを特徴とする。
【0077】
図10において、消火ポンプ10からの給水配管18には混合器36が設けられ、不活性ガス発生装置34から供給された不活性ガスを消火用水に混合している。混合器36の2次側の給水本管18はうず流ポンプなどを用いた攪拌ポンプ72に接続され、不活性ガスを混合した消火用水を攪拌して不活性ガスを均一に混合し且つ気泡を微細化している。攪拌ポンプ72はモータ74で駆動される。
【0078】
攪拌ポンプ72の2次側に接続した給水本管18の分岐手前までの間にはバブル発生装置60が設けられ、不活性ガスを混合した消火用水の旋回衝突によりバブルを発生して分岐管26に送るようにしている。
【0079】
また必要に応じて破線で示すように、閉鎖型ヘッド30毎に、或いは分岐管26にバブル発生装置40を設けるようしにても良い。
【0080】
また攪拌ポンプ72の故障に対するバックアップとして、消火ポンプ10からバブル発生装置18までの間をバイパスするバイパス配管76を設け、遠隔制御弁78により攪拌ポンプ72の故障時に開放制御することが望ましい。
【0081】
このように消火ポンプ10からの消火用水に不活性ガスを混合器36で混合した後に攪拌ポンプ72で攪拌してヘッド側に供給するようにしたことで、消火用水に対する不活性ガスの混合状態が更に均一となり、また不活性ガスの気泡も小さくなり、バブル発生装置60で効率良くバブルを発生することができる。
【0082】
本発明の他の実施形態として、図1に示した不活性ガス発生装置34に代えて活性ガス発生装置を設け、活性ガスを混合器36により消火ポンプ10から加圧供給された消火用水に混合し、バブル発生装置40において閉鎖型ヘッド30の開放で流れる消火用水を、旋回流に変換した後に内部に突出したカレントカッターとして機能する突起部材に衝突させ、消火用水に混合されている活性ガスを微細な気泡に砕くことによって数10μm以下(好ましくは10μm以下)の気泡径をもつバブルを発生し、開放した閉鎖型ヘッド30から散水させる。
【0083】
本実施形態で使用する活性ガスとしては例えばO2ガスを使用し、活性ガス発生装置によりO2ガスして混合させる。また、活性ガス発生装置の代りにO2ボンベを使用しても良い。
【0084】
このようにO2ガスを消火用水に混合してバブル発生装置40で数10μm以下(好ましくは10μm以下)の気泡径をもつバブルを発生して開放した閉鎖型ヘッド30から散水させた場合には、バブルに含まれるO2ガスが放射面において火災により発生したCOと反応してCO2に変化し、人体への悪影響を抑えることができる。
【0085】
また、放射面以外の防護空間においてはO2が多少増えることとなり、人体への悪影響を抑えることができる。この場合、防護空間においてはO2が多少増えても、放水したバブルを含む水による冷却作用による火災の抑制が充分に行われ、燃焼を促進することにはならない。
【0086】
このように活性ガスとしてO2ガスを含むバブルを発生させて散水する構成は、図6、図9及び図10の実施形態についても同様に適用することができる。また、活性ガスとしてO2ガスの代わりに空気を混合するようにしても良い。空気の混合は、空気に含まれるO2を活性ガスとして使用することになる。
【0087】
なお、上記の実施形態は閉鎖型ヘッドを用いた消火設備を例にとるものであったが、消火薬剤を混合して消火泡をヘッドから散布する泡消火設備や、開放型ヘッドを一斉開放弁の2次側に設けた消火設備など適宜の消火設備に適用することができる。
【0088】
また、ヘッドより前の配管に感知器や起動釦で開放する制御弁を設け、開放型ヘッドから散水する装置であっても良い。
【0089】
また、配管内への充水時は、不活性ガスを一緒に混合しても、しなくても良い。混合した場合は、配管内に溜まる不活性ガスにより、配管内の腐食を防止できる。
【0090】
また本発明に適用できる他のバブル発生装置として、図2のカレントカッター44の代わりに、もしくはカレントカッター44とガイドベーン42の間に、ガイドベーン42と反対の旋回流を形成する第2のガイドベーンを設けてバブルを形成するようにしてもよい。
【0091】
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0092】
18:給水本管
30:閉鎖型ヘッド
32:末端試験弁
34:不活性ガス発生装置
36:混合器
40,60:バブル発生装置
41,61:本体
42:ガイドベーン
44:カレントカッター
46:立下り配管
48:ボディ
50:配管接続部
52:配管接続ネジ
54:感熱作動部
56:デフレクター
58:バブル発生部
62:1次側フランジ
64:2次側フランジ
66:ケーシング
68:支持部材
70:支持フィン
72:攪拌ポンプ
76:バイパス配管
78:遠隔制御弁
80:タービン翼型ノズル
82:本体
84:タービンブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時に、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に所定のガスを混合器で混合し、分岐管に接続されたヘッドから散水させる消火設備に於いて、
前記混合器から前記ヘッドまでの間に、数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生するバブル発生装置を設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置を前記ヘッドの立下り配管毎に設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置を前記ヘッドに一体に組み込んだことを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記前記バブル発生装置を前記ヘッドの手前となる前記分岐管の途中に設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項5】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記混合器を前記消火ポンプの2次側に接続した給水本管に設け、前記前記バブル発生装置を前記混合器の2次側の給水本管に設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項6】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記混合器を前記消火ポンプの1次側に接続した吸込み配管に設け、前記前記バブル発生装置を前記混合器の2次側の吸込み配管に設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項7】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記消火ポンプの2次側の給水本管の途中に前記混合器を設けると共に、混合器の2次側の給水配管に攪拌ポンプを設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項8】
請求項7記載の消火設備に於いて、前記攪拌ポンプをバイパスする仕切弁を備えたバイパス配管を設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置は、
螺旋水流を形成するガイドベーンと、
前記ガイドベースにより形成された螺旋水流をせん断してバブルを発生するカッターと、
を備えたことを特徴とする消火設備。
【請求項10】
請求項9記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置のカッターは、本体管内周壁から中心に向けて起立した突起部材を軸方向にスパイラル状に配置したことを特徴とする消火設備。
【請求項11】
請求項9記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置のカッターは、本体内の軸方向に支持部材を配置し、前記支持部材の外周に突起部材を起立して軸方向にスパイラル状に配置したことを特徴とする消火設備。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれかに記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置は、本体内に配置され、渦流を発生するタービンブレードを外周に形成したタービン翼型ノズルを備え、前記タービン翼型ノズルにより発生された渦流を流入路の絞り込みにより渦破壊して数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生させることを特徴とする消火設備。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置は、本体内に配置され、螺旋水流を形成するガイドベーンを備え、前記ガイドベーンにより発生された渦流を流入路の絞り込みにより渦破壊して数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生させることを特徴とする消火設備。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれかに記載の消火設備に於いて、前記バブル発生装置は、本体内に配置され、異なる方向の螺旋水流を形成するガイドベーンを複数並べて数10μm以下の気泡径を持つバブルを発生させることを特徴とする消火設備。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の消火設備に於いて、前記所定のガスとして、不活性ガス又は活性ガスを混合させることを特徴とする消火設備。
【請求項16】
請求項15記載の消火設備に於いて、前記不活性ガスとして窒素ガス又は二酸化炭素ガスを混合させることを特徴とする消火設備。
【請求項17】
請求項15記載の消火設備に於いて、前記活性ガスとして酸素ガス又は空気を混合させることを特徴とする消火設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate