説明

消臭用組成物及び消臭方法

【課題】
システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤が毛髪と反応することで発生する不快な特異臭を、毛髪処理剤の効果を損なわず、かつ毛髪のダメージや染毛色の変色を伴わずに減少させるための消臭用組成物及びその消臭方法を提供すること。
【解決手段】アミノ変性シリコンと、ポリオキシアルキレン変性シリコンを含有し、かつ有機酸及びその塩、又は無機酸及びその塩からなる1種以上のpH緩衝物質にてpH2.8〜6.8に調整され、1g当りの酸度が0.00001〜0.08ミリ当量の範囲にあることを特徴とするシステアミン反応臭の消臭用組成物、及びこの消臭用組成物を毛髪に塗布又は噴霧するシステアミン反応臭の消臭方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシステアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤が毛髪と反応することで発生する不快な特異臭を減少させるための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤は、主に毛髪の変形を目的とし、従来のパーマ剤やカーリング剤に比べて低pHでも効果が得られるため、ダメージ毛やカラー毛に最適とされる毛髪処理剤である。
【0003】
ところがシステアミンは毛髪に作用したとき従来の還元剤、すなわちチオグリコール酸及びその塩、システイン及びその塩又は誘導体、亜硫酸塩類にない不快な特異臭を発生する。
【0004】
この不快な特異臭を抑制するため、pH2〜2.7、1mL当たり0.1〜0.5ミリ当量の酸を含有する後処理剤が提供されている(特開平3−271214)。
しかしながらこの後処理剤をダメージ毛やカラー毛に適用すると、ダメージが増したり、染毛色が変色するという欠点があった。
【0005】
また、同様に過酸化水素を含む第2剤で処理する方法も提示されている(特開2004−155748)が、更に著しいダメージと変色を伴うものであった。また、過酸化水素は現薬事法では、チオグリコール酸及びその塩、システイン及びその塩又は誘導体を主剤とするパーマネントウェーブ用剤、すなわち医薬部外品にしか配合できないためシステアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤や消臭剤等のいわゆる化粧品には使用できず、実用的でない。
【0006】
一方、pH3〜7においてポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンを含有する煙草臭消臭剤が提示されている(特開平6−219927)。この消臭剤をシステアミン反応臭の消臭に適用すると、ダメージや変色は発生しなかったが、消臭の効果は得られなかった。
【0007】
また、人体の腋臭、足臭及び体臭並びに獣臭等の消臭剤として、水溶性金属塩0.03〜5重量%、非イオン界面活性剤0.01〜5重量%、シリコーンオイル0.1〜10重量%を含む組成物が提示されている(特開2000−178161)。しかしながら、この組成物もシステアミン反応臭の消臭には効果がなかった。
【0008】
以上のように、これらの方法においてはその効果は不充分で満足すべき結果が得られなかった。
【0008】
【特許文献1】 特開平3−271214号公報
【特許文献2】 特開平6−219927号公報
【特許文献3】 特開2000−178161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤が毛髪と反応することで発生する不快な特異臭を、毛髪処理剤の効果を損なわず、かつ毛髪のダメージや染毛色の変色を伴わずに減少させるための消臭組成物及びその消臭方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、アミノ変性シリコンと、ポリオキシアルキレン変性シリコンを含有し、かつ有機酸及びその塩、又は無機酸及びその塩からなる1種以上のpH緩衝物質にてpH2.8〜6.8に調整され、1g当りの酸度が0.00001〜0.08ミリ当量の範囲にあることを特徴とするシステアミン反応臭の消臭用組成物を毛髪に塗布又は噴霧することにより不快な特異臭を減少できる優れた消臭方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の消臭組成物及び消臭方法は、システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処剤が毛髪と反応することで発生する不快な特異臭を、毛髪処理剤の効果を損なわず、かつ毛髪のダメージや染毛色の変色を伴わずに減少させる優れたものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いるアミノ変性シリコンは、式(1)で表され、このうち一般的なものはジメチルシロキサンと、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルシロキサン又はγ−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルシロキサンの共重合体でアモジメチコン(AMODIMETHICONE)ともいい、多くは界面活性剤を含みエマルジョンの形態として市販されている。
【0013】
【化1】

(m,nはそれぞれ1〜2000の整数、a,bはそれぞれ0〜100の整数、但しa,bのどちらかが0の場合は一方は1〜100の整数、RはH,OH又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0014】
代表的には例えば、信越化学工業社製のKF−8002、KF−8004、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSM8702C、SM8704C、SM8904、GE東芝シリコーン社製のUM−120などが挙げられる。
【0015】
その配合量は0.01重量%〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%〜3.0重量%である。0.01重量%より少ないと効果を発揮せず、5.0重量%より多く配合しても、効果はあまり変わらないので、不経済である。
【0016】
本発明に用いるポリオキシアルキレン変性シリコンは、ジメチルポリシロキサンの側鎖の一部をポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン基で置換した重合体で、一般的には式(2)で表され、ポリエーテル変性シリコン又はジメチコンコポリオール(DIMETHICONE COPOLYOL)とも呼ばれ、市販されている。
【0017】
【化2】

(p,qはそれぞれ1〜3000の整数、xは0〜10の整数、y,zはそれぞれ0〜100の整数、但しy,zのどちらかが0の場合は一方は1〜100の整数、A及びA’は炭素数2〜4のアルキレン基、R’はH又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0018】
代表的には例えば、信越化学工業社製のKF351A、KF352A、KF6004、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSH3771C、SH3771M、SH3749、GE東芝シリコーン社製のTSF4440、TSF4452、TSF4460などが挙げられる。
【0019】
その配合量は0.01重量%〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%〜3.0重量%である。0.01重量%より少ないと効果を発揮せず、5.0重量%より多く配合しても、効果はあまり変わらないので、不経済である。
【0020】
本発明で用いるpH緩衝物質は有機酸及びその塩、又は無機酸及びその塩からなる。有機酸としては、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等があり、その塩としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩、すなわち乳酸ナトリウム、クエン酸二水素一ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、酒石酸水素カリウム、リンゴ酸二アンモニウム等が挙げられる。
【0021】
また無機酸としては、リン酸等があり、その塩としてはリン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムのほかリン酸二水素一カリウム塩、リン酸水素二アンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
これらのpH緩衝物質を1種又は2種以上を組み合わせ、pH2.8〜6.8に調整する。pHが2.8未満であると毛髪にダメージを与え、パサツキを生じる。また、pHが6.8より高いと消臭の効果を発揮しない。
【0023】
pH緩衝物質の配合量は、組成物1g当りの酸度が0.00001〜0.08ミリ当量、好ましくは0.0005〜0.05ミリ当量の範囲になるように配合する。組成物1g当りの酸度が0.00001ミリ当量より小さいと消臭の効果を発揮せず、0.08ミリ当量より大きいと毛髪を傷めるだけでなく、対象の毛髪がカラー毛の場合はその染毛色を変色させる。
【0024】
本発明におけるシステアミン反応臭の消臭用組成物には、目的の効果が損なわれない範囲で通常の化粧料に用いられる任意の成分を配合することができる。例えば、溶剤、油剤、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、増粘剤、着色剤、着香剤、抗炎症剤等が挙げられる。
【0025】
また、本発明による消臭用組成物は、システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤で処理した後の毛髪に直接塗布又は噴霧して用いるのが好ましい。処理する前に適用しても効果は変わらないが、毛髪処理剤の効果を阻害する恐れがある。なお、本発明による消臭用組成物適用後は、通常酸化剤を含む第二剤を適用するが、そのまま放置して空気による酸化を利用してもよい。
【0026】
塗布又は噴霧の方法は特に限定されないが、例えば通常美容室等で用いられる油差し様のアプリケーターやクシ・ブラシの他、ポンプスプレーやアトマイザー、エアスプレー等の形態とすることができる。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合量は重量%とする。
【0028】
実施例におけるアミノ変性シリコンとしては、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSM8704Cを、ポリオキシアルキレン変性シリコンとしては、同社製のSH3771Cを使用した。
【0029】
実施例におけるシステアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤は以下のものを使用した。水80〜90gにシステアミン塩酸塩水溶液(システアミンとして50重量%含む)3g、グリセリン3g、ポリオキシエチレン(20E.O.)ラノリン0.5g、ヒドロキシエタンジホスホン酸4Na0.1gを順次溶解し、アンモニア水でpH8.5に調整した後、さらに水を加え全量を100gとする。
【0029】
次に実施の手順を示す。
1.酸化染毛剤(ヘアダイ)にて染色した毛髪に、システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤を塗布し、ロッドに巻く。
2.15分放置後、ブランクとしての反応臭を評価後、水洗する。
3.消臭用組成物を塗布し、15分放置後消臭の効果を評価する。
4.5%臭素酸Na水溶液(酸化剤)を塗布し、15分放置する。
5.ロッドアウトして水洗後、タオルドライし、ヘアドライヤーにて乾燥する。
6.触感によるダメージ(パサツキ)と目視による変色を評価する。
【0030】
なお、消臭の効果についての評価基準は以下に基づくものとする。
◎・・・不快な特異臭がほとんどなく、消臭されている。
○・・・不快な特異臭が少し残っている。
△・・・不快な特異臭がかなり残っている。
×・・・ブランクと同等の不快な特異臭がある。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1に示すように、1g当りの酸度が0.00001ミリ当量未満であると消臭の効果を発揮せず、0.08ミリ当量を超えると毛髪のダメージ及び染毛色の変色が著なる。なお、この間のpHは6.3〜3.3であった。
【0034】
また、表1において、アミノ変性シリコンの代わりにジメチルポリシロキサンを、ポリオキシアルキレン変性シリコンの代わりにポリオキシエチレン(20E.O.)ヤシ油脂肪酸ソルビタンを配合したものは、いずれも消臭の効果は得られなかった。
【0035】
アミノ変性シリコン及びポリオキシアルキレン変性シリコンの配合量は表2に示すとおり、それぞれ0.01重量%未満であると消臭の効果を発揮しなかった。また、5.0重量%を超えると効果はあるものの不経済である。
【0036】
なお、実施例3の消臭用組成物を毛髪に塗布した後、システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤を塗布してロッドに巻き15分放置して、同様に上述の4〜6の操作をしたものは、消臭の効果は実施例3と同等であったが、毛髪のカールは実施例3のものより若干緩やかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤の反応臭を消臭するための消臭剤であって、アミノ変性シリコンと、ポリオキシアルキレン変性シリコンを含有し、かつ有機酸及びその塩、又は無機酸及びその塩からなる1種以上のpH緩衝物質物質にてpH2.8〜6.8に調整され、1g当りの酸度が0.00001〜0.08ミリ当量の範囲にあることを特徴とする消臭用組成物。
【請求項2】
アミノ変性シリコンの含有量が、0.01重量%〜5.0重量%及びポリオキシアルキレン変性シリコンの含有量が0.01重量%〜5.0重量%である請求項1に記載の消臭用組成物。
【請求項3】
システアミン及び/又はその塩を含む毛髪処理剤で処理された後の毛髪に請求項1又は請求項2に記載の消臭用組成物を直接塗布又は噴霧することを特徴とする消臭方法。

【公開番号】特開2006−117622(P2006−117622A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336644(P2004−336644)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(397031304)エステートケミカル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】