説明

消色装置

【課題】トナーのオフセットを防止し印刷画像が両面印刷の場合でも能率よく同時消色が可能な消色装置を提供する。
【解決手段】ガラスヒータ40に電源が投入され、その輻射温度が350℃に達したとき、消色性トナーで印字された用紙22が図の左側より搬送ローラ・コロ体26aにより搬送の線速15mm/秒で消色装置24に給紙される。用紙22はガラスヒータ40により加熱されながら搬送され、LED光源37の照射領域に達したとき約200℃前後に加熱されている。ここでLED光源37からの消色光がガラスヒータ40の背面に対し垂直に照射される。照射された消色光はガラスヒータ40を透過して用紙22へ照射され、照射面の消色性トナー画像が消色される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色装置に係わり、更に詳しくは例えばリライタブルプリンタ等に搭載される消色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の一環として紙資源の節減が叫ばれている。画像形成装置等の紙資源の節減と再利用では、片面印刷した用紙の裏面の有効活用などは既に社会一般になされている。また、使用済み用紙を回収し用紙の原料とし、再生紙として再度用いることも一般に行われている。
【0003】
しかし片面印刷の用紙の再利用では、再使用の回数が通常1回に限られてしまう。また、原料として再利用する再には回収自体にエネルギーとコストがかかり、原料として加工する際にもエネルギーが掛かってしまう。
【0004】
そこで、オフィス内において用紙を複数回使用できるようにする取組みが種々為されている。トナー像により一度画像が形成された用紙を紙資源として再利用するには、トナーにより形成された用紙上の画像を物理的に除去または光で消色して再利用可能な用紙とすることが考えられている。
【0005】
画像を物理的に除去して用紙を再利用するためには、用紙の画像形成面にトナーを除去する処理液を塗布し、加熱してトナーを溶解させて画像を除去する方法や、用紙の画像形成面を研摩してトナー画像を削り落とす方法などがあるが、これらの方法は、手数がかかると共に、再利用する用紙に損傷が発生し易いため問題がある。
【0006】
また、例えば、光を用いる消色方法としては、最初に用紙に画像を形成するに際し、近赤外線吸収色素および消色剤を含む消色性トナーによりOA用紙に画像を記録し、この画像を近赤外線等の特殊な光源による光照射によって消色して用紙の再利用を図るという着想は既に論文で公開されている。(例えば、非特許文献1参照。)
【0007】
この非特許文献1の方法において、近赤外線吸収色素は照射された近赤外線を吸収して励起し、消色剤と反応して無色化する。但し、色材がトナー化されていることもあって、トナー結着剤樹脂中の色素は近赤外線を吸収しても常温においてはほとんど消色反応が見られない。
【0008】
このため、熱を加えて反応を加速してから無色化するという消色作用に有効な一般的な方法が行われている。例えば、画像形成時の定着装置と消色時の消色装置を共通にし、トナー画像の消色には事前にトナー像を加熱しておいてから消色光を照射すると消色作用が有効に働くという一般に行われている技術に基づいて、画像形成時に用いる定着装置の熱ローラ対を、消色時の加熱器として兼用し定着装置内において熱ローラ対の下流側に消色光照射用の光源を配置した構成が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−049634号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】細田喜一著、「機能性色素のトナーへの応用」電子写真学会誌、第31号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示される従来技術では、加熱ローラにより加熱されたトナー像に消色光が照射されるまでにトナー像の温度が下がって消色効果が薄れるという問題に加えて、加熱ローラ面にトナー像がオフセットするという問題も解決すべき課題として残されている。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、例えばリライタブルプリンタ等に搭載可能であり、トナーのオフセットを防止し、印刷画像が両面印刷の場合でも能率よく同時消色が可能な消色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の消色装置は、近赤外線吸収色素および消色剤を含む消色性トナーを用いて文字や画像を印字された印字媒体を再使用するために該印字媒体に印字された上記文字や画像を消色するリライタブルプリンタの消色装置において、上記文字や画像を印字された上記印字媒体を搬送する搬送機構と、該搬送機構に近接して平行に配設され近赤外線透過部材を基材とする熱輻射ヒータと、該熱輻射ヒータの背面に配置され該熱輻射ヒータを透過する消色光を照射するLED光照射装置と、を有し、上記熱輻射ヒータは上記搬送機構により搬送される上記印字媒体に熱輻射を加えて加熱し、上記LED光照射装置は、上記熱輻射ヒータにより加熱された上記印字媒体の上記文字や画像を印字された印字面に、上記熱輻射ヒータの背面から上記熱輻射ヒータを透過してLED光を照射するように構成される。
【0014】
この消色装置において、例えば、上記熱輻射ヒータは上記搬送機構の上下にそれぞれ近接して平行に配設され、上記LED光照射装置は上記上下の搬送機構の背面にそれぞれ配置されるように構成することもできる。
【0015】
また、消色装置において、上記熱輻射ヒータは、例えば、石英ガラスと該石英ガラスの表面に塗布された又は焼き付られたITO(酸化インジウムスズ)の透明導電膜とから構成される。
【0016】
また、消色装置において、例えば、上記搬送機構の搬送方向上流側で上記熱輻射ヒータに隣接して配置され、上記搬送機構により搬送される上記印字媒体を予熱するセラミックヒータを更に備えるように構成してもよい。この場合、上記セラミックヒータの予熱放射面以外の面を覆う断熱材を更に備えるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、例えばリライタブルプリンタ等に搭載可能であり、トナーのオフセットを防止し、印刷画像が両面印刷の場合でも能率よく同時消色が可能な消色装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る消色装置を備えたカラー画像形成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1に係る消色装置の用紙搬送経路において用紙の両側端部を挟持して搬送する両側端搬送装置を示す斜視図である。
【図3】実施例1に係る消色装置の用紙搬送経路の平面図である。
【図4】実施例1に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。
【図5】実施例2に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。
【図6】(a)は実施例3に係る消色装置の内部構成を示す側面図、(b)はその消色ユニットの熱輻射ヒータの構成を示す図である。
【図7】実施例4に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。
【図8】実施例5に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、以下で説明する消色性トナーは、特には詳述しないが、近赤外線吸収色素および消色剤を樹脂に混練し、平均粒径が9μmになるように作成したものである。
【0020】
ただし、この消色性トナーにより印字した印字媒体(以下、用紙ともいう)に常温において近赤外線を照射してもほとんど消色反応が見られない。用紙を加熱し、消色性トナーが溶融している状態に近赤外線を照射したとき、消色反応が観察されるようになる。
【0021】
したがって、消色装置には用紙を加熱する要素と近赤外線を照射する要素の2つの要素を備えている必要がある。しかし、この近赤外線吸収色素を含む消色性トナーのプリンタ等は市販されていないので、以下、試作した消色装置を通常のプリンタに組み込んで行った実験により確認した内容を説明する。
【0022】
実験によれば、用紙を加熱する装置と近赤外線を照射する装置を検討した結果、熱源としてヒータの輻射熱を使って用紙を加熱すること、及び消色用近赤外線光源としてLED光を用いることが適しているという結論に至った。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る消色装置を備えたカラー画像形成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。図1に示す画像形成装置(以下、単にプリンタという)1は、消色用の熱源となる熱輻射ヒータと消色光を照射する光源とトナーオフセット防止機構とを有する消色装置を備えている。
【0024】
このプリンタ1は、本体装置筐体2の内部中央において、水平方向に延在する無端状の転写ベルト3を備えている。転写ベルト3は、不図示の張設機構によって張設されながら、駆動ローラ4と従動ローラ5に掛け渡され、駆動ローラ4により駆動されて、図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0025】
転写ベルト3の上循環移動面の上方には、4個の画像形成ユニット6(6r(k)、6y、6c、6m)が配設されている。画像形成ユニット6rは、現像器7内に消色性トナーを収容した消色性トナー画像形成用の画像形成ユニットであり、現像器7内に黒トナーを収容した不図示の黒色画像形成用の画像形成ユニット6kとユーザの任意によって交換可能である。
【0026】
画像形成ユニット6yは、現像器7内にイエロートナーを収容したイエロー色画像形成用の画像形成ユニットであり、画像形成ユニット6cは、現像器7内にシアントナーを収容したシアン色画像形成用の画像形成ユニットであり、画像形成ユニット6mは、現像器7内にマゼンタトナーを収容したマゼンタ色画像形成用の画像形成ユニットである。
【0027】
4個の画像形成ユニット6については、現像器7内に収容されているトナーの種類を除くと、いずれも同一の構造であるので、以下、画像形成ユニット6rを取り上げて、その構造を簡単に説明する。
【0028】
画像形成ユニット6には、転写ベルト3の上循環移動面に接する感光体ドラム8が配設されている。感光体ドラム8には、その周面を取り巻くように近接して、図示を省略したクリーナ、初期化帯電器、光書込ヘッドに続いて、現像器7の下部開口部に保持された現像ローラ9等が配置されている。
【0029】
上記の現像ローラ9は、現像器7に収容されている黒トナー又は消色性トナー(以下、消色性トナーのみについて説明する)の薄層を表面に担持し、光書込ヘッドによって感光体ドラム8の周面上に形成されている静電潜像に消色性トナーの画像を現像する。
【0030】
感光体ドラム8の下部には、転写ベルト3を介して不図示の一次転写ローラが圧接して、そこに一次転写部を形成している。一次転写ローラには、不図示のバイアス電源からバイアス電圧を供給される。
【0031】
一次転写ローラは一次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加して、感光体ドラム8の周面上に現像されている消色性トナーの画像を転写ベルト3に転写する。
【0032】
転写ベルト3の図に示す右端部が掛け渡されている従動ローラ5には、転写ベルト3を介して二次転写ローラ11が圧接し、ここに二次転写部を形成している。二次転写ローラ11には、不図示のバイアス電源からバイアス電圧が供給される。
【0033】
二次転写ローラ11は二次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加し、転写ベルト3に一次転写されている消色性トナーの画像を、図の下方から上方に矢印b又は矢印cで示すように搬送され更に画像形成搬送路12に沿って搬送されてくる記録媒体に転写する。
【0034】
上記の矢印cで示すように搬送される記録媒体14は、上部給紙カセット15に積載されて収容され、不図示の給紙ローラ等により最上部の一枚ごとに取り出され、矢印cに示すように給紙搬送路に送出され、更に画像形成搬送路12を搬送されて、上記の二次転写部を通過しながら消色性トナーの画像を転写される。
【0035】
消色性トナーの画像を転写されながら二次転写部を通過した記録媒体14は、定着搬送路16に沿って定着部17へと搬送される。定着部17の加熱ローラ18と押圧ローラ19は、記録媒体14を挟持し、熱と圧力を加えながら搬送する。
【0036】
これにより、記録媒体14は、二次転写されている消色性トナーの画像を紙面に定着され、加熱ローラ18と押圧ローラ19により更に搬送されて、本体装置筐体2の上面に形成されている排紙トレー21に排紙される。
【0037】
一方、上記の矢印bで示すように搬送される用紙22は、既に紙面に消色性トナー像を形成されている用紙であり、下部給紙カセット23から一枚ごとに取り出されて矢印dに示すように給紙搬送路に送出される。
【0038】
そして、この場合は、用紙22は、消色装置24に搬入される。消色装置24には用紙搬送経路25の上流側(図の左方)と下流側(図の右方)に、それぞれ搬送ローラ・コロ体26(26a、26b)が配置されている。
【0039】
2組の搬送ローラ・コロ体26は、消色装置24に搬入された用紙22を用紙搬送経路25に沿って上流側から下流側へ搬送する。2組の搬送ローラ・コロ体26の間に形成されている用紙搬送経路25には後述する消色ユニットが配置されている。
【0040】
図2は、上記の用紙搬送経路25において用紙22の両側端部を挟持して搬送する両側端搬送装置を示す斜視図である。尚、同図には同上流側の搬送ローラ・コロ体26aと下流側の搬送ローラ・コロ体26bの図示を省略している。
【0041】
図2に示すように、用紙搬送経路25の両側には、駆動ローラ27と従動ローラ28に掛け渡され、内部中央に押さえローラ29を有する無端状の細ベルト31が上下二段に配置された両側端搬送装置32が配置されている。この両側端搬送装置32は、同図に示すように用紙22に対し、用紙22の両側端部を挟持して図の矢印d方向に搬送する。
【0042】
これにより用紙22の両端部が熱により丸まったり、その先端部が下方に垂れ下がって用紙搬送経路25から外れるような不具合を防止することができる。
【0043】
図3は、上記の消色装置24の用紙搬送経路25の平面図である。搬送ローラ・コロ体26a、26b及び両側端搬送装置32によって矢印d方向に搬送される用紙22の上下には、それぞれ、図3に示す6本のヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)が張設されている(図では上方のワイヤを実線、下方のワイヤを破線で示している)。
【0044】
これらのヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)は、それぞれワイヤ保持部34(34a、34b)に保持されている。これらヒータ接触防止ワイヤ33とワイヤ保持部34は、ヒータ接触防止装置35として消色装置24内に固定して配置されている。
【0045】
このヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)は、用紙22が後述する熱輻射ヒータに接触するのを防止するとともに、用紙22の丸まりを上下から押さえて、用紙22が両側端搬送装置32から脱落するのを防止している。
【0046】
このように、図1に示した消色装置24は、用紙22の丸まりや垂れ下がりを防止しながら搬送ローラ・コロ体26aから搬送ローラ・コロ体26bまで、斜めに張られたヒータ接触防止ワイヤ33によって用紙22を案内する。
【0047】
ヒータ接触防止ワイヤ33は、用紙22の搬送方向に対して斜めに張設されていると共に広い間隔で配置されているので、熱輻射ヒータからの消色用輻射加熱と、これも後述するLED光源からの消色用の照射光を遮ることは全く無いといって良い。
【0048】
尚、消色装置24が片面のみの消色構造であると、下部給紙カセット23に用紙22を収容する際、消色する画像面を上面向き又は下面向きのいずれか決められた向きに設定して収容しなければならないので使い勝手が悪くなる。本例では、両面を同時に消色することができるので使い勝手が良い。
【0049】
また、両面を消色する方法としては、両面印刷機構を備えた一般的なプリンタと同様に片面を消色し、用紙を反転させて、裏面を消色する方法が考えられるが、片面の消色性トナー画像に消色に必要な熱を一度加え後に、反対面の消色性トナー画像の消色を行うと、消色性能が低下することがある。
【0050】
すなわち、最初の片面を消色する時に裏面側の画像も加熱され、両面印刷機構で用紙22を反転させて搬送中に裏面側の画像が冷やされ、続けて裏面側を消色する時に消色性能が低下することが経験的に判明している。また、更には、表裏の消色処理を2度にわたって行うことになるので、消色時間が長くなるという不便がある。
【0051】
本例では、両面を同時に消色できるので、消色性能の低下も起こらず、良い消色性能が維持され、また、表裏の消色処理を2度にわたって行う場合よりも消色時間が1/2以下に短縮される。
【0052】
なお、片面の消色の場合でも、表裏両面から加熱すると、片面加熱の場合の用紙裏面からの熱漏洩によるエネルギー損失がなく効率よく加熱することが出来る。また、熱輻射ヒータの設定温度を下げることが出来るため消費電力を低減させる効果が期待できる。
【0053】
図4は、図1に示した消色装置24の内部構成を示す側面図である。図4に示すように、消色装置24は、図2及び図3に示した搬送ローラ・コロ体26、両側端搬送装置32及びヒータ接触防止装置35から成る搬送機構を有する用紙搬送経路25の上下に、それぞれ、熱輻射ヒータとしてのセラミックヒータ36と消色光源としてのLED光源37から成る消色ユニット38を備えている。
【0054】
セラミックヒータ36は、用紙搬送経路25に対し、つまり用紙22に対し、平行に設置されている。他方のLED光源は用紙22がセラミックヒータ36の加熱部を通過直後に消色光を照射するように配置される。
【実施例2】
【0055】
図5は、実施例2に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。なお、プリンタ本体の構成は図1に示した構成と同一であり、消色装置の外観も図1に示した消色装置24と同一である。
【0056】
図5に示すように、本例の消色装置24は、図4と同様の搬送機構を有する用紙搬送経路25の上下に、それぞれ、熱輻射ヒータとしてのセラミックヒータ36と消色光源としてのLED光源37から成る消色ユニット39を備えている。
【0057】
本例の消色ユニット39におけるセラミックヒータ36は、用紙搬送経路25、つまり用紙22に対し、搬送方向下流に向かって末広がり形になるように斜めに設置されている。他方のLED光源はセラミックヒータ36の真下と用紙22との間の空間に向けて消色光を斜め照射するように配置される。
【0058】
ここで、上記の実施例1における消色装置24の消色ユニット38による消色試験結果と、実施例2における消色装置24の消色ユニット39による消色試験結果とを比較検討してみる。
【0059】
セラミックヒータ36の用紙加熱性能を較べると、用紙22に対し、ヒータを斜めに設置するよりも、用紙22に平行に設置し、かつ近接させた方が用紙加熱性能としては優れていることが判明する。従って、実施例1の消色ユニット38の方が熱的には優れている。
【0060】
しかし、消色性能を較べると、加熱中の用紙22に直接消色光を照射する実施例2の消色ユニット39の方が、実施例1の消色ユニット38よりも消色能力が優れている。
【0061】
ところで、前述したように、紙面に消色性トナーで印字された画像に消色反応を起こさせるためには、画像を印字されている用紙を加熱する必要がある。実験によるとその温度は約200℃前後であることがわかっている。
【0062】
実施例1の場合、用紙22がセラミックヒータ36の加熱から抜けた後にLED光源37が消色光を照射している。消色反応を起すためにはその照射域の用紙温度を約200℃に保つ必要がある。
【0063】
用紙温度はセラミックヒータ36の加熱部に突入すると同時に徐々に加熱され、加熱部を抜けるあたりで最高温度に達する。そして、加熱部を抜けた後は、空冷され順次温度が低下していく。
【0064】
したがって、上記のようにセラミックヒータ36の加熱部を抜けた後、LED光源37からの消色光の照射が終了するまでの長い範囲にわたって用紙の温度が約200℃に保たれているということは、加熱部の直下での用紙温度は200数十℃以上に達していると思われる。
【0065】
このような温度環境においては、消色剤の一部が熱破壊される可能性がある、ということは容易に考えられる。また、空気の温度は常に変化しているから、空冷開始後の用紙温度を安定させることは難しい。
【0066】
特に環境温度が低く空気の冷たい場合には、セラミックヒータ36を更に高温度に設定する必要がある。それでは、ますます用紙の温度は高くなり、消色性トナーの消色剤には不利な状況となる。
【0067】
他方、実施例2の場合、LED光源37の消色光を斜めに照射し、消色光がセラミックヒータ36の真下に入り込むように構成されている。用紙22の最高温度は、ヒータ加熱部を抜けたあたりであるから、LED消色光の照射領域はこの温度以下となっている。
【0068】
このため、消色性トナーの消色剤の熱破壊は実施例1の場合に比べて最小に抑えられる。この消色剤の熱破壊を最小に抑えられることが、実施例2の方が実施例1に比べて加熱効率には問題があるが消色性能に優れている理由であると考えられる。
【0069】
そこで発明者は、加熱効率が良く且つ消色性能に優れた消色ユニットをどのように実現すべきかを考えた。加熱効率を良くするためにはヒータを搬送中の用紙に平行に配置すること、消色性能をよくするためには加熱中の用紙に消色光を照射することを考えた。
【0070】
用紙を裏面から加熱して、その用紙の表面から消色光を照射すれば、上記の考えは実現する。しかし、それでは用紙の片面の消色しかできない。そこで、消色光が透過する素材で消色ユニットの熱輻射ヒータを構成することに発明者の考えが到達した。
【実施例3】
【0071】
図6(a)は実施例3に係る消色装置の内部構成を示す側面図であり、図6(b)は、その消色ユニットの熱輻射ヒータの構成を示す図である。なお、プリンタ本体の構成は図1に示した構成と同一であり、消色装置の外観も図1に示した消色装置24と同一である。
【0072】
本例の熱輻射ヒータはガラスヒータ40で構成される。ガラスヒータ40は、石英ガラス板41を基板とし、その石英ガラス板41の一方の面にITO(酸化インジウムスズ)膜から成る透明導電膜42を塗布又は焼き付け、この透明導電膜42の両端部に銀ペーストの電極43が配設されている。
【0073】
電極に通電すると透明導電膜42によりジュール熱が発生し、石英ガラスごと熱せられ、遠赤外線がガラス面から輻射される。このガラスヒータ40は、現在、株式会社ブラストより市販されている。
【0074】
株式会社ブラストによると、ガラスヒータ40の加温能力は最大500℃、消費電力は最大で5W/cm=^2であり低消費電力である。また、昇温は速く、100℃/5秒であり十分にヒータとして使用できる性能を保持している。
【0075】
また、光透過率が85%あり、LED光をかなり透過させる。このガラスヒータ40は市場で出されてから4年以上の使用実績があり信頼性の高い製品である。
【0076】
このガラスヒータ40を図6(a)に示すように消色装置24の用紙搬送経路25(用紙22)に近接して平行に配置する。そして、LED光源37をヒータの背面に対し鉛直方向から消色光を照射するように配置する。
【0077】
このガラスヒータ40とLED光源37から成る消色ユニット44を用いると、消色装置24に搬入された用紙22はガラスヒータ40の直下を通過しながら加熱され、そのヒータ加熱部の後半で加熱中の用紙22に対し、ガラスヒータ40を85%の透過率で透過するLED光源37からの消色光が照射される。
【0078】
より具体的な動作としては、先ず、ガラスヒータ40に電源が投入される。ガラスヒータ40の輻射温度が350℃に達したとき、消色性トナーで印字された用紙22が図の左側より搬送ローラ・コロ体26aにより消色装置24に給紙される。
【0079】
このとき搬送の線速は15mm/秒である。用紙22は搬送されるにつれてガラスヒータ40により加熱される。用紙22がLED光源37の照射領域に達したとき、用紙22は約200℃前後に加熱されている。
【0080】
ここで、LED光源37からの消色光がガラスヒータ40の背面に対し垂直に照射される。照射された消色光はガラスヒータ40を透過して用紙22へ照射され、照射面の消色性トナー画像が消色される。
【0081】
消色性トナー画像を消色された用紙22は図の右側の搬送ローラ・コロ体26bにより消色装置24から排出され、次の工程へ搬送される。
【0082】
このように、用紙22の両面に対する、実施例1の熱的に優れている熱輻射ヒータの対搬送路平行配置と、実施例2の消色性能に優れている消色光の加熱同時照射とが、この実施例3の消色ユニット44によって実現する。
【0083】
実施例2の構成では、加熱中の用紙22に対して消色光を照射するために斜め方向に照射しなければならないが、この場合、用紙22への消色光の照射面が用紙上で用紙進行方向に伸びた面(LED光が円放射の場合は楕円)になり、その照度分布等が複雑である。
【0084】
また、斜め照射の場合、照射角度を少し変化させただけでも照射面の扁平率(楕円の場合の離心率)が大きく変化し、かつ照射位置も移動する。したがって、最適条件を設定するには、正確なLED位置、傾きを精測しながら確認を進めなければならない。かつ、量産の場合、厳密な位置精度が要求される。
【0085】
実施例3のように垂直方向からの照射面は、特殊なレンズを使った場合を除いて円形状であり、その照射分布も単純でわかりやすい。照射ポイントも位置だししやすい。したがって、最適条件の設定も、量産も、格段に容易になるという利点がある。
【実施例4】
【0086】
図7は、実施例4に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。なお、プリンタ本体の構成は図1に示した構成と同一であり、消色装置の外観も図1に示した消色装置24と同一である。
【0087】
また、図7には、説明に必要な部分にのみ番号を付与して示している。他の構成は図6(a)の場合と同様である。図7に示すように、本例の消色ユニット45の熱輻射ヒータは、セラミックヒータ36とガラスヒータ40が隣接して配置される。
【0088】
この構成は、図6のガラスヒータ40の消色光の透過の必要が無い搬送方向上流側の部分をセラミックヒータ36に置き換えたものである。そして、セラミックヒータ36とガラスヒータ40の温度設定をそれぞれ独立に設定可能なように構成してある。
【0089】
セラミックヒータ36に、用紙22を温度200℃になるまで加熱する機能を持たせる。ガラスヒータ40には、その200℃を維持するのに必要な最低の熱量を放射させて用紙22の温度を200℃に維持するという機能をもたせる。ガラスヒータはコストが高いので、上流側をセラミックヒータで置き換えることによりコストダウンを図ることができる。
【0090】
また、この方式で電力を若干減らすことができる。なお、用紙22を加熱すると用紙22に含有される水分が気化して、この気化した水分に含まれる用紙成分の一部がヒータの周辺を汚染する場合がある。
【0091】
この気化成分は、常温から約200℃まで加熱する前半で主に発生する。その前半をセラミックヒータ36により用紙22を200℃まで確実に加温する。これで気化成分をセラミックヒータ36の配置領域で排出させてしまう。これにより、後半のガラスヒータ40の汚染をより少なく抑えることが出来る。
【実施例5】
【0092】
ところで、熱輻射ヒータは用紙22に対向する側の面からと同時に、反対側の面からも熱放射するので、空冷されて熱が奪われていく。したがって、この空冷を出来るだけ抑えることが出来れば消費電力を減らすことが出来る。
【0093】
図8は、実施例4に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。なお、プリンタ本体の構成は図1に示した構成と同一であり、消色装置の外観も図1に示した消色装置24と同一である。また、図8には、説明に必要な部分にのみ番号を付与して示している。他の構成は図6(a)の場合と同様である。
【0094】
図8に示すように、本例の消色ユニット46の熱輻射ヒータも、セラミックヒータ36とガラスヒータ40が隣接して配置される。そして、本例の消色ユニット46では、セラミックヒータ36の熱放射面以外の面を覆う断熱材47が配設される。
【0095】
このようにセラミックヒータ36を断熱材で覆うことにより、熱伝導、放射熱、空冷をある程度抑えることが出来る。実験によると、セラミックヒータ36の裏面を厚み10mmのガラスウールで覆って断熱した場合、ヒータ温度を450℃に設定した場合において10%〜20%の電力を減らすことが出来た。
【0096】
尚、この断熱材47の設置は、図6(a)においても実施でき、消色光が照射される範囲外を断熱材47で覆うことによって、電力を減らすことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えばリライタブルプリンタ等に搭載される消色装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 消色機能付画像形成装置(プリンタ)
2 本体装置筐体
3 転写ベルト
4 駆動ローラ
5 従動ローラ
6(6r(6k)、6y、6c、6m) 画像形成ユニット
7 現像器
8 感光体ドラム
9 現像ローラ
11 二次転写ローラ
12 画像形成搬送路
14 記録媒体
15 上部給紙カセット
16 定着搬送路
17 定着部
18 加熱ローラ
19 押圧ローラ
21 排紙トレー
22 記録媒体(用紙)
23 下部給紙カセット
24 消色装置
25 記録媒体(用紙)搬送経路
26(26a、26b) 搬送ローラ・コロ体
27 駆動ローラ
28 従動ローラ
29 押さえローラ
31 細ベルト
32 両側端搬送装置
33(33a、33b) ヒータ接触防止ワイヤ
34(34a、34b) ワイヤ保持部
35 ヒータ接触防止装置
36 セラミックヒータ
37 LED光源
38、39 消色ユニット
40 ガラスヒータ
41 石英ガラス板
42 透明導電膜(ITO(酸化インジウムスズ)膜)
43 電極
44、45、46 消色ユニット
47 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収色素および消色剤を含む消色性トナーを用いて文字や画像を印字された印字媒体を再使用するために該印字媒体に印字された前記文字や画像を消色するリライタブルプリンタの消色装置において、
前記文字や画像を印字された前記印字媒体を搬送する搬送機構と、
該搬送機構に近接して平行に配設され近赤外線透過部材を基材とする熱輻射ヒータと、
該熱輻射ヒータの背面に配置され該熱輻射ヒータを透過する消色光を照射するLED光照射装置と、
を有し、
前記熱輻射ヒータは前記搬送機構により搬送される前記印字媒体に熱輻射を加えて加熱し、
前記LED光照射装置は、前記熱輻射ヒータにより加熱された前記印字媒体の前記文字や画像を印字された印字面に、前記熱輻射ヒータの背面から前記熱輻射ヒータを透過してLED光を照射する、
ことを特徴とする消色装置。
【請求項2】
前記熱輻射ヒータは前記搬送機構の上下にそれぞれ近接して平行に配設され、前記LED光照射装置は前記上下の搬送機構の背面にそれぞれ配置される、ことを特徴とする請求項1記載の消色装置。
【請求項3】
前記熱輻射ヒータは、石英ガラスと該石英ガラスの表面に塗布された又は焼き付けられたITO(酸化インジウムスズ)の透明導電膜とからなる、ことを特徴とする請求項1又は2記載の消色装置。
【請求項4】
前記搬送機構の搬送方向上流側で前記熱輻射ヒータに隣接して配置され、前記搬送機構により搬送される前記印字媒体を予熱するセラミックヒータを更に備える、ことを特徴とする請求項1又は2記載の消色装置。
【請求項5】
前記セラミックヒータの予熱放射面以外の面を覆う断熱材を更に備える、ことを特徴とする請求項4記載の消色装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113151(P2012−113151A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262605(P2010−262605)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】