説明

消防自動車

【課題】エアツール使用の用途に適すると共に、泡消火にも利用できる多用途の消防自動車を提供する。
【解決手段】消防自動車に搭載するポンプユニット1は、エンジン3の駆動力によって動作する流体用ポンプ11と、空気を圧縮して吐出するエアコンプレッサ14と、流体用ポンプ11に作用している駆動力を電磁クラッチのオン・オフによってエアコンプレッサ14に伝達したり遮断したりする第2動力伝達機構15と、を一体に備え、コントロール装置2が、ポンプユニット1の第1圧力センサ16aおよび第2圧力センサ16bからの検出情報に基づいて、予め定めた放水条件を満たすようにエンジン3の回転数を制御して流体用ポンプ11の圧力を調整したり、予め定めた空気圧縮条件を満たすようにエンジン3の回転数を制御してエアコンプレッサ14の圧力を調整したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用ポンプにより消火用流体を消防ホースへ吐出して放水する消防自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の消防自動車は、火災に対応する消火活動を行うための水ポンプ装置を搭載するだけではなく、他の用途でも使用できることが求められている。救助等の他分野でも使用できるように、多用途の消防自動車として、救急患者を収容する救急患者収容室を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−050976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明は、消防自動車本来の消火活動に使う機能とは協働しない、救急車の機能を搭載することで、多用途に対応したに過ぎない。
【0005】
また、消防の救助活動では、エアツール(空気鋸、空気切断機、マット型空気ジャッキ等)を使用することもあるが、そのためには、エアツールへ圧縮空気を供給するコンプレッサを別途搭載しなければならず、消防自動車にエアツールを装備するには、種々問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、エアツール使用の用途に適すると共に、泡消火にも利用できる多用途の消防自動車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、流体用ポンプにより消火用流体を消防ホースへ吐出して放水する消防自動車において、エンジンの駆動力により動作する流体用ポンプと、空気を圧縮して吐出するエアコンプレッサと、エンジンの駆動力をエアコンプレッサに伝達する動力伝達機構と、を一体に備えたポンプユニットと、前記ポンプユニットの動力伝達機構による動力伝達のオン・オフを切り換えることで、エアコンプレッサの駆動制御を行うコントロール装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の消防自動車において、前記ポンプユニットには、流体用ポンプの圧力を検出する第1圧力センサと、エアコンプレッサの圧力を検出する第2圧力センサを設け、前記コントロール装置は、前記ポンプユニットの第1圧力センサおよび第2圧力センサからの検出情報に基づいて、予め定めた放水条件および/または空気圧縮条件を満たすようにエンジンの回転数を制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の消防自動車において、前記エアコンプレッサによる圧縮空気は、エアツールへ供給するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の消防自動車において、前記エアコンプレッサによる圧縮空気は、消火用流体を発砲させるためのエア圧入に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る消防自動車によれば、エンジンの駆動力により動作する流体用ポンプと、空気を圧縮して吐出するエアコンプレッサと、エンジンの駆動力をエアコンプレッサに伝達する動力伝達機構と、を一体に備えたポンプユニットと、前記ポンプユニットの動力伝達機構による動力伝達のオン・オフを切り換えることで、エアコンプレッサの駆動制御を行うコントロール装置と、を備えるので、必要に応じて流体用ポンプとエアコンプレッサを併用することが可能となる。
【0012】
また、請求項2に係る消防自動車によれば、前記ポンプユニットには、流体用ポンプの圧力を検出する第1圧力センサと、エアコンプレッサの圧力を検出する第2圧力センサを設け、前記コントロール装置は、前記ポンプユニットの第1圧力センサおよび第2圧力センサからの検出情報に基づいて、予め定めた放水条件および/または空気圧縮条件を満たすようにエンジンの回転数を制御するようにしたので、消火用の放水と圧縮空気の供給を安全に行うことが可能となる。
【0013】
また、請求項3に係る消防自動車によれば、前記エアコンプレッサによる圧縮空気は、エアツールへ供給するようにしたので、車載のエアツールを使うために別途エアコンプレッサを必要とせず、人命救助活動等に対応できて有用である。
【0014】
また、請求項4に係る消防自動車によれば、前記エアコンプレッサによる圧縮空気は、消火用流体を発砲させるためのエア圧入に用いるので、泡放射及び消火剤の放射にも対応できて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る消防自動車の最良の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は、本実施形態に係る消防自動車に搭載するポンプユニット1の外観形状を示すもので、図1は斜視図、図2は側面図、図3は平面図である。
【0016】
ポンプユニット1は、エンジンの駆動力によって動作する流体用ポンプ11と、この流体用ポンプ11の吸引側圧力調整に用いる真空ポンプ12と、流体用ポンプ11に作用している駆動力を電磁クラッチのオン・オフによって真空ポンプ12に伝達したり遮断したりする第1動力伝達機構13と、空気を圧縮して吐出するエアコンプレッサ14と、流体用ポンプ11に作用している駆動力を電磁クラッチのオン・オフによってエアコンプレッサ14に伝達したり遮断したりする第2動力伝達機構15と、を一体に備える。
【0017】
また、ポンプユニット1は、エアコンプレッサ14と第2動力伝達機構15を備えることで、車両への重量負荷がかかることになるが、流体用ポンプ11および第1,第2動力伝達機構13,15をアルミニウムで作成することにより、ポンプユニット1の総重量を軽減した。なお、真空ポンプ12やエアコンプレッサ14もアルミ製とすることで、更なる重量軽減を図ることもできる。
【0018】
斯く構成したポンプユニット1において、流体用ポンプ11は従来通り消火用の流体吐出に用い、真空ポンプ12も従来通り流体用ポンプ11の吸引側圧力調整に用いるが、エアコンプレッサ14は、圧縮エアの供給先を変えることで、多目的に使用できる。
【0019】
先ず、エアコンプレッサ14による圧縮空気を、車載のエアツール(空気鋸、空気切断機、マット型空気ジャッキ等)へ供給すれば、現場の救助活動にエアツールを使用することが可能になる。
【0020】
また、エアコンプレッサ14による圧縮空気を、消火用流体を発砲させるためのエア圧入に用いれば、泡放射及び消火剤の放射にも対応できる。
【0021】
上述したポンプユニット1の駆動制御を統括的に行うコントロール装置2について、図4のシステム構成ずに基づき説明する。なお、図4の構成においては、真空ポンプ12および第1動力伝達機構13に対する制御を省略してある。
【0022】
ポンプユニット1には、流体用ポンプ11の圧力を検出する第1圧力センサ16aと、エアコンプレッサ14の圧力を検出する第2圧力センサ16bを設けてあり、これら第1,第2圧力センサ16a,16bの検出情報は、コントロール装置2へ供給される。
【0023】
また、エンジン3の回転数をコントロール装置2で検出できるように、回転センサ4の検出信号がコントロール装置2へ入力される。
【0024】
そして、コントロール装置2は、ポンプユニット1の第1圧力センサ16aおよび第2圧力センサ16bからの検出情報に基づいて、予め定めた放水条件(例えば、放水ノズルより放水するための圧力が0.3MPa〜1.0MPa)を満たすようにエンジン3の回転数を制御して流体用ポンプ11の圧力を調整したり、予め定めた空気圧縮条件(例えば、エアツールに空気を充填するために必要な圧力0.7MPa〜1.0MPa)を満たすようにエンジン3の回転数を制御してエアコンプレッサ14の圧力を調整したりする。
【0025】
また、エンジン3の回転数コントロールによって放水条件と空気圧縮条件を同時に満たせば、流体用ポンプ11とエアコンプレッサ14の併用運転が可能で、放水による消火活動を行いながら、エアツールによる救助活動を行うことができる。
【0026】
以上、本発明に係る消防自動車の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明の包摂範囲は、これらの実施形態に限定されるものではなく、公知既存の手法を適宜転用することで実現しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る消防自動車に搭載するポンプ装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る消防自動車に搭載するポンプ装置の側面図である。
【図3】本発明に係る消防自動車に搭載するポンプ装置の平面図である。
【図4】本発明に係る消防自動車のシステム構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ポンプユニット
11 流体用ポンプ
12 真空ポンプ
13 第1動力伝達機構
14 エアコンプレッサ
15 第2動力伝達機構
16a 第1圧力センサ
16b 第2圧力センサ
2 コントロール装置
3 エンジン
4 回転センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用ポンプにより消火用流体を消防ホースへ吐出して放水する消防自動車において、
エンジンの駆動力により動作する流体用ポンプと、空気を圧縮して吐出するエアコンプレッサと、エンジンの駆動力をエアコンプレッサに伝達する動力伝達機構と、を一体に備えたポンプユニットと、
前記ポンプユニットの動力伝達機構による動力伝達のオン・オフを切り換えることで、エアコンプレッサの駆動制御を行うコントロール装置と、
を備えることを特徴とする消防自動車
【請求項2】
前記ポンプユニットには、流体用ポンプの圧力を検出する第1圧力センサと、エアコンプレッサの圧力を検出する第2圧力センサを設け、
前記コントロール装置は、前記ポンプユニットの第1圧力センサおよび第2圧力センサからの検出情報に基づいて、予め定めた放水条件および/または空気圧縮条件を満たすようにエンジンの回転数を制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の消防自動車。
【請求項3】
前記エアコンプレッサによる圧縮空気は、エアツールへ供給するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消防自動車。
【請求項4】
前記エアコンプレッサによる圧縮空気は、消火用流体を発砲させるためのエア圧入に用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消防自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−285424(P2009−285424A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144360(P2008−144360)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(391043240)日本機械工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】