説明

液の転写部材及び転写装置

【課題】例えばDNAチップを製作するに際し、薬液をスライドグラス等の基盤に転写する作業の効率化をはかる。
【解決手段】導電性を有するシリンジ21の内部に導電性を有し且つ直線往復移動可能なピン22を絶縁した状態で配置し、両者を制御部30に接続して導通を監視する。両者が導通したとき制御部30で信号を発し警報を発生させる。作業テーブル11の領域11aに基盤1を配列したトレイ50を着脱可能に設け、領域11bに薬液を収容した容器3を供給し且つ回収する供給回収部材Cを配置する。この供給回収部材Cによって容器3を供給し、X方向駆動部材12,Y方向駆動部材13によってキャリッジ14を作業テーブル11に設定された領域11a〜11dの所望位置に移動させ、Z方向駆動部材15を駆動して転写部材Bを昇降させる一連の動作を行わせることで、シリンジ21による薬液の採取、基盤1に対する転写、洗浄、乾燥の各工程を経て点2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、目的の液を基盤上に微細な点状に転写するための転写部材と、この転写部材を用いた転写装置に関し、特にDNA(遺伝子)チップを製造する際に用いて有利な転写部材と転写装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、医療の分野では遺伝子(DNA)を用いた治療や薬品の開発が行われている。このような技術分野の研究機関では、化学合成した異なる遺伝子のコピーを試料としてガラス板や合成樹脂板等からなる基盤上に数千個〜数万個張り付けたDNAチップと呼ばれるものが取り扱われる。
【0003】上記DNAチップはアレイヤーと呼ばれる装置を利用して製造される。ここで、アレイヤーの概略構造について説明する。図10は装置の全体構成を説明する斜視図、図11は試薬を基盤上に転写する転写部材の第1公知例を説明する図、図12は転写部材の第2公知例を説明する図である。
【0004】図10に於いて、作業テーブル61上にはX方向に沿ってXレール62が設けられている。Xレール62には該Xレール62に対し直交方向(Y方向)にYレール63が設けられており、該Yレール63はXモーター62aに駆動されてXレール62上を走行し得るように構成されている。またYレール63にはキャリッジ64が設けられており、Yモーター63aに駆動されてYレール63に沿って横行し得るように構成されている。キャリッジ64には後述する転写部材70又は転写部材80を有するスポッィングヘッド65が設けられており、該スポッィングヘッド65は昇降モーター66に駆動されて上下方向(Z方向)に昇降し得るように構成されている。また作業テーブル61の所定位置には、試薬を収容した容器67が配置されると共に多数の基盤68が配置されている。
【0005】従って、Zモーター66を駆動してスポッィングヘッド65を上昇させ、この状態でXモーター,Yモーターを同期させて駆動することでキャリッジ64を移動させて容器67の位置に到達させ、スポッィングヘッド65を下降させて容器67に収容された試薬を受入れ、その後、スポッィングヘッド65を上昇させてキャリッジ64を移動させて基盤68に到達させ、この位置でスポッィングヘッド65を下降させて基盤68に試薬を点状に転写し、更に、スポッィングヘッド65を上昇させて所定ピッチ移動させて下降させて試薬を点状に転写することが出来る。そしてこの作業を繰り返すことで、基盤68上に数千個〜数万個の試薬の点を形成することが出来る。
【0006】スポッィングヘッド65に設けた第1公知例の転写部材70は、図11に示すように、スリット70aが形成されたペン状に形成されている。この転写部材70では、同図(a)に示すように、容器67に差し込むことによって試薬をスリット70aに浸透させ、同図(b),(c)に示すように基盤68上に移動させ、その後、転写部材70を昇降させて基盤68に対する当接,離隔を繰り返すことで、基盤68にスリット70aに保持した試薬を点状に転写している。
【0007】第2公知例の転写部材80は、図12に示すように、試薬を転写するピン80aと試薬を保持するリング状の保持部材80bとを有して構成されている。この転写部材80では、同図(a),(b)に示すように保持部材80bを容器67に差し込むことによってリング部分に試薬を保持させ、同図(c)〜(f)に示すように、基盤68上に移動させた後、保持部材80bを所定高さに維持してピン80aを昇降させることで、保持部材80bに保持された試薬をピン80bを介して転写している。
【0008】上記第1公知例及び第2公知例に於いて、基盤68上に数千個〜数万個の点を形成する場合、DNAの試料も数千種〜数万種用意される。これらの試料は1枚当たり数十個の窪みを持った容器67に収容されおり、1枚の容器67に収容された全ての試料を基盤68上に転写した後、作業員が新たな容器67を供給する作業を行っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記第1公知例の転写部材はスリットを形成した円錐状に形成され、また第2公知例の転写部材ではピン状に形成されている。また試薬を基盤に転写する場合、前記各転写部材は先端が基盤に当接することになる。このため、各転写部材には瞬間的に軸方向に大きな力が作用することになり、この力によって曲がりが生じるという問題がある。
【0010】特に、基盤上に形成される試薬の点の間隔は約0.1mm 程度であり、転写部材に僅かな曲がりが発生しても、隣接した他の点に干渉する虞が生じる。この場合、転写された試薬に他の試薬が混合することになり、DNAチップとしての価値がなくなるという問題が生じる。また曲がりが生じた転写部材では試薬が転写出来なかったり、該転写部材を繰り返し使用した場合、該転写部材が折れるという問題も生じる。
【0011】更に、従来のアレイヤーでは転写部材に曲がりが生じた場合であっても、この曲がりを検知する手段がなく、DNAチップを製造する一連の作業が終了した後、製造されたDNAチップの検査段階で試薬の混合が生じていたとき、不良であるとして排除されている。このため、製造効率が悪いという問題がある。
【0012】また転写される試薬はガイド部材の内部に保持され、新たな試薬を転写するごとに洗浄される。しかし、ガイド部材の内部に試薬が残留することがあり、この残留した試薬が新たな試薬に混合してしまうという問題がある。
【0013】また基盤はアレイヤーのテーブル面に直接並べられ、転写された基盤は収集されて後工程に運搬される。この基盤を並べる作業及び並べた基盤を収集する作業は作業員の手作業によっている。このため、作業の進行に時間がかかり、転写の処理効率が低下するという問題がある。
【0014】また基盤上に数千個〜数万個の点を形成する場合、容器も100 枚以上必要となる。このような数の容器を作業員が交換するのでは、作業が煩雑であり特に容器の供給順序を間違えた場合、間違えた容器以後の転写は不良となるという問題が生じ、アレイヤーが稼働している間、作業員は現場を離れることが出来ないという問題もある。
【0015】本発明の目的は、ピンとガイド部材との導通を検知して信号を発生することで、ピンに曲がりが生じたことを検出し得るように構成し且つ試薬の混合が生じることのないた転写部材を提供し、且つこの転写部材を用いた液の転写装置と、更に作業テーブルに対して基盤を供給する作業を合理的に行えるように構成すると共に容器の供給と回収を行えるように構成した液の転写装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明に係る転写部材は、目的の液を収容した収容部材から受け取った液を基盤上に点状に転写する液の転写部材であって、導電性を有し且つ基盤に対し離隔及び接近する方向に移動して液を基盤に転写するピンと、導電性を有し且つ内部に前記ピンを移動可能に収容したガイド部材と、前記ピンとガイド部材との間の電気的な導通の有無を検知し導通したとき信号を発生する制御部とを有して構成されるものである。
【0017】上記液の転写部材では、液を転写するピンが導電性を有しており、且つ導電性を有するガイド部材に移動可能に収容され、制御部によってピンとガイド部材との間の導通を監視し、導通したとき信号を発生する。このため、ピンに曲がりが生じたとき、移動に伴ってガイド部材と接触して導通し、制御部から信号が発生する。即ち、ピンとガイド部材との導通を監視することでピンの曲がりを検知することが出来る。
【0018】またピンとガイド部材とが導通したことを検知して信号を発生することで、該信号によって装置全体の動作を停止されることが出来、ブザーを鳴らし或いはパトライトを点灯して作業員に液の転写作業に支障を来すことを知らせることが出来る。
【0019】また他の転写部材は、目的の液を収容した収容部材から受け取った液を基盤上に点状に転写する液の転写部材であって、基盤に対し離隔及び接近する方向に移動して液を基盤に転写するピンと、内部に前記ピンを移動可能に収容したガイド部材とを有し、前記ピンとガイド部材との間に流体を供給してガイド部材から噴出し得るように構成したものである。
【0020】転写部材をこのように構成することによって、1種類の液を転写する毎にガイド部材とピンとの間にある液を流体と共に外部に噴出させて新たに転写する液と混合することがない。
【0021】また本発明に係る転写装置は、液が転写される基盤を配置するための領域及び目的の液を収容した収容部材を設置するための領域が設定された作業テーブルと、上記の如く構成した転写部材を備えたキャリッジを前記作業テーブルに設定された領域内に移動させる移動手段と、前記転写部材を作業テーブルに対し離隔又は接近させる昇降手段と、前記作業テーブルに於ける液が転写される基盤を配置するための領域に対し着脱可能に構成され液が転写される基盤を複数列,複数行並べたトレイとを有して構成されるものである。
【0022】上記転写装置では、上記転写部材を備えたキャリッジを移動手段によって作業テーブルに設定された領域内に移動させると共に昇降手段によって作業テーブルに対し離隔,接近させるように構成したので、転写部材を作業テーブルに配置された容器の位置に到達させて下降させ、この位置で転写部材によって試薬を採取し、その後、転写部材を上昇させて基盤の位置に到達させ、更に、転写部材を下降させてピンを基盤に向けて駆動することで該基盤上に試薬を点状に転写することが出来る。
【0023】特に、複数の基盤を複数列,複数行配列したトレイを作業テーブルに於ける基盤を配置するための領域に対し着脱可能に構成したので、予め所定数の基盤を配列した複数のトレイを用意しておき、基盤に対する転写を実行するのに先立って作業テーブルの所定領域にトレイを装着し、該トレイに配列した基盤に対する試薬の転写が終了したとき、このトレイを取り外すと共に新たなトレイを装着することで、作業テーブルに対する基盤の配列及び収集を短時間で且つ合理的に行うことが出来る。更に、試薬が転写された基盤を後工程に運搬する際にもトレイを運搬することで、安定した状態を保持して容易に取り扱うことが出来る。
【0024】上記液の転写装置に於いて、作業テーブルの目的の液を収容した収容部材の設置するための領域に対し複数の収容部材を供給すると共に回収する収容部材の供給回収手段を設けることが好ましい。
【0025】上記の如く構成した液の転写装置では、作業テーブルに転写すべき液を収容した収容部材を供給回収手段によって所定の設定位置に設定して液を転写し、収容部材に収容された液を全て転写した後、該収容容器を回収して新たな収容容器を設定することで、作業員によることなく、順次収容容器を交換して転写装置を連続運転することが出来る。このため、人手を排除して合理的な作業を進行することが出来る。
【0026】また本発明に係る基盤は、液が転写される基盤であって、所定位置に基準となる点を設けたものである。
【0027】上記基盤では、所定位置に基準となる点を設けたので、複数の基盤を作業テーブルに配置した後、試薬の転写に先立って、基盤の配置位置を走査して前記基準点を検出することで個々の基盤の位置を正確に認識することが出来る。
【0028】また、所定の転写が終了した基盤を次工程に搬送して所定の処理を行うに際し、該基盤に設けた基準となる点を検出することで、基盤上に転写された試薬の位置を認識することが可能となり、この認識に基づいて次工程に於ける所定の処理を円滑に進行させることが出来る。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、上記転写部材及び転写装置の好ましい実施形態について図を用いて説明する。図1は転写装置の構成を説明する平面図である。図2は転写部材の構成を説明する図である。図3はピンに曲がりが生じたときの状態を説明する図である。図4は流体を噴出させるように構成した転写部材の構成を説明する図である。図5は供給回収部材の構成を説明する図である。図6は供給回収部材の動作を説明する図である。図7は供給回収部材による収容部材の供給と回収の手順を説明する図である。図8は作業テーブルとトレイとの関係を説明する図である。図9は基盤に転写した試薬の分布状態を説明する図である。
【0030】本発明に係る転写部材及び転写装置の説明に先立って、基盤1に於ける試薬を転写した点2の分布状態について図9により説明する。
【0031】基盤1はプラスチック板或いはガラス板を選択的に用いて構成されており、一般的にはスライドグラスを用いている。この基盤1に試薬を転写する場合の一例として、10mm角の領域内に約0.2mmのピッチ で2500個の点2を形成すると共に該領域を2×6個作成して1枚の基盤1上に30000 個の点2を形成することがある。また点2は、ピッチが約0.2mmであることから、0.1mm程度の径を持ってに形成される。
【0032】上記点2を形成する液は夫々異なる性格を有するものであり、30000個の点2を形成するためには30000種類の試料が必要となる。このように、各点2は異なる性格を有するため、隣接する他の点2と混合すると試料としての価値がなくなる。従って、各点2が互いに独立した状態で転写されることが必須である。
【0033】基盤1には、予め設定された2か所に基準となる点O(基準点O)が夫々設けられている。この基準点Oは、基盤1に対する液の転写を開始するのに先立って個々の基盤1の正確な位置を検出し、或いは次工程に於いて所定の転写が終了した基盤1に対し所定の処理を行う際に個々の基盤1の正確な位置を検出するためのものである。
【0034】このため、基準点Oは、予め光学的に検出し得る塗料や光を反射するような材料によって形成された点、或いは磁気的に確認し得る点等の点として形成することが可能であり、また後述する転写装置によって試薬の転写に先立って予め設定された位置に例えば試薬を転写することで形成することが可能である。
【0035】従って、予め基準点Oを形成した基盤1を用いた場合、該基盤1に対する転写を開始する場合、例えばCCDカメラによって基盤1が配置された領域を撮影し、或いは基盤1が配置された領域に近接スイッチを走査させることで、該領域に配置された基盤1の正確な位置を検出して制御装置に記憶させ、転写に際しては個々の基盤1の位置を読み出して精度の高い転写を実現することが可能である。このため、基盤1に対し基準点Oを基準として点2を形成することが可能である。
【0036】また基盤1に対する試薬の転写を開始するのに先立って、作業テーブル上に配列された基盤1に基準点Oを形成し、その後、試薬の転写による点2を形成した場合、形成された点2は基盤1に対し如何なる位置に形成されていたとしても、基準点Oに対しては一定の関連を維持しており、試薬の転写が終了した基盤1を次工程に搬送した後、該次工程に於ける所定の処理を実施する場合、個々の基盤1を位置決めしたり、或いは現在の位置を検出する際に、基盤1に形成された基準点Oを利用することが可能である。
【0037】また複数の基盤1に対する一連の転写が終了する毎に、転写部材の洗浄及び乾燥が行われ、その後、別の試料が採取される。即ち、1サイクル毎に新たな試料を転写することとなり、常に新たに転写するための試料を供給することが必要である。
【0038】本実施例に係る転写部材は、基盤1に形成された点2の独立性を保証することを可能とし、且つ作業テーブルに於ける所定位置に転写すべき試薬を収容した収容部材を自動的に供給すると共に回収し得るように構成することで、高い稼働率を実現したものである。
【0039】次に、本実施例に係る転写装置Aと該転写部材Bについて説明する。図1〜図8に於いて、転写装置Aは、作業テーブル11と、作業テーブル11のX方向に設置されたX方向駆動部材12と、作業テーブル11のY方向に設置されX方向駆動部材12によって駆動されてX方向に走行するY方向駆動部材13と、Y方向駆動部材13に駆動されてY方向に横行するキャリッジ14と、キャリッジ14に設けられて転写部材Bを上下方向に駆動するZ方向駆動部材15と、を有して構成されている。
【0040】作業テーブル11には予めX−Y直交座標系に従って位置が指定されており、且つ多数の基盤1(48枚の基盤1)を設置する領域11a,試薬を収容した容器3を設置する領域11b,転写部材Bを洗浄する超音波洗浄器4を設置する領域11c,洗浄後の転写部材Bを乾燥する乾燥器5を設置する領域11d等の機能の異なる領域11a〜11dが設定されている。前記領域11bに容器3を供給し回収する供給回収部材Cが配置されている。
【0041】作業テーブル11の構造については特に限定するものではなく、移動可能な台車として構成されても良く、移動不能なフレームとして構成されても良い。
【0042】作業テーブル11に設定された領域11aにはスライドグラスからなる基盤1が配置される。基盤1は、後述するトレイ50(図7参照)に6×8の行,列で配列され、このトレイ50を作業テーブル11の領域11aに対しピンやネジ等の位置決め方式で装着し得るように構成することで、段取り時間の軽減をはかると共に転写装置Aの稼働率の向上をはかることが可能となるように構成されている。
【0043】領域11bには試薬を収容した容器3が、後述する供給回収部材Cによって供給されて設置される。この容器3は、例えば表面に8×12の円錐状の窪みが形成され、個々の窪みに夫々性格の異なる試薬が収容された所謂マイクロプレートが用いられている。
【0044】領域11cに設置される超音波洗浄器4は一般的な洗浄に用いるものである。また領域11dに設置される乾燥器5としては風乾燥器が用いられている。尚、これらの超音波洗浄器4,乾燥器5は夫々目的の機能を発揮し得るものであれば良く、特に構造を限定するものではない。
【0045】X方向駆動部材12はY方向駆動部材13をX方向に沿って走行させ、転写部材Bを作業テーブル11に設定された全ての作業領域11a〜11dのX方向の範囲に移動させる機能を有するものである。従って、X方向駆動部材12としては、前記機能を満足し得るものであれば良く、特に構成を限定するものではない。
【0046】本実施例では、X方向に沿ってボールネジを配置し、このボールネジに螺合させたボールナットにY方向駆動部材13を取り付けると共にサーボモーターによってボールネジを駆動し得るように構成している。
【0047】Y方向駆動部材13はキャリッジ14をY方向に沿って横行させ、転写部材Bを作業テーブル11に設定された全ての作業領域11a〜11dのY方向の範囲に移動させる機能を有するものである。従って、Y方向駆動部材13としては、前記機能を満足し得るものであれば良く、特に構成を限定するものではない。
【0048】本実施例では、Y方向に沿ってボールネジを配置すると共に該ボールネジをX方向駆動部材12のボールナットに取り付け、該ボールネジに螺合させたボールナットにキャリッジ14を取り付けると共にサーボモーターによってボールネジを駆動し得るように構成している。
【0049】Z方向駆動部材15はキャリッジ14に設けられて転写部材Bを昇降させる機能を有するものである。従って、Z方向駆動部材15としては前記機能を満足し得るものであれば構成を限定するものではない。
【0050】本実施例では、図2に示すように、Z方向に沿って配置されたボールネジ15aと、ボールネジ15aに螺合するボールナット15bと、ボールネジ15を駆動するサーボモーター15cとによって構成している。そして、ボールナット15bに転写部材Bが構成されている。
【0051】上記の如く構成された転写装置Aでは、X−Y方向に沿って設置されたX方向駆動部材12,Y方向駆動部材13を同期させて駆動することで、キャリッジ14(転写部材B)を作業テーブル11に設定された各作業領域11a〜11dに移動させることが可能である。そして、転写部材Bを所望の領域11a〜11dに移動させた後、Z方向駆動部材15を駆動することで、転写部材Bを該領域11a〜11dに設置した基盤1,容器3,洗浄器4,乾燥器5にの何れかに接近させて目的の作業を実施することが可能である。
【0052】次に、転写部材Bの構成について説明する。転写部材Bは容器3に収容された試薬をガイド部材としての機能を兼ねたシリンジ21によって採取すると共に安定した状態で保持し、この試薬をシリンジ21の内部に配置され該シリンジ21によって移動方向をガイドされるたピン22によって移送し、該ピン22が基盤1の表面に当接することで転写して点2を形成するものである。
【0053】転写部材Bは、Z方向駆動部材15のボールナット15bに装着されたフレーム23と、フレーム23に設けられピン22の駆動部材となる第2Z方向駆動部材24と、第2Z方向駆動部材24によって駆動されて昇降するブラケット25と、ブラケット25とピン22を絶縁するスリーブ26と、ブラケット25の下面に取り付けた導電板27と、導電性を有しピン22を付勢するバネ28と、を有して構成されている。
【0054】フレーム23には筒状のシリンジ21が取り付けられている。このシリンジ21は導電性を持った筒状に形成されており、内部の上端側と略中央に一対の絶縁スリーブ29a,29bが設けられている。前記スリーブ29a,29bは内径がピン22を挿通して円滑に摺動し得る径を持って形成され、液の転写時に於けるピン22の移動を案内する機能を有する。
【0055】シリンジ21は絶縁スリーブ29a,29bによって上端側が閉塞され、下端が開口している。またシリンジ21の外形は下端側に向けて径が小さくなるテーパ状に形成されており、容器3に形成された収容部3aが円錐状に形成されている場合であっても円滑に挿入し得るように構成されている。
【0056】上記の如く構成されたシリンジ21では、ピン22の先端とシリンジ21の先端を一致させてこれらの先端を容器3の収容部3aに挿入し、ピン22を上昇させると、シリンジ21の内部に空間が形成され、毛細管現象によって試薬を採取すると共に保持することが可能である。従って、ピン22の上昇量によってシリンジ21内に保持し得る試薬の量を制御することが可能となる。
【0057】尚、転写部材Bに於けるシリンジ21の数は特に限定するものではなく、基盤1に対する点2の形成数等に応じて適宜設定することが可能である。
【0058】ピン22は導電性を有する材料によって形成されており、下方側がシリンジ21の内部に配置されると共に該シリンジ21に設けた絶縁スリーブ29a,29bに案内されると共に、上方側がブラケット25に取り付けた絶縁スリーブ26に案内されて上下方向に移動可能に構成されている。従って、ピン22はフレーム23及びブラケット25から電気的に絶縁された状態に構成されている。
【0059】ピン22は、上端部に形成したフランジ部22aによって下方への移動端が規定されており、且つブラケット25の下面に設けた導電板27と長手方向の所定位置に形成したフランジ状の突部22bとの間に配置されたバネ28によって常に下方へ付勢されている。そしてピン22が下降したとき、シリンジ21に保持された試薬を先端部分に付着させた状態で搬送し、基盤1の表面に当接して該試薬を転写する。ピン22が基盤1に当接する際に瞬間的に軸方向の力が作用する。このため、ピン22は剛性を高めるために絶縁スリーブ29a,29bによって案内され、更に、先端部分がテーパ状に形成されている。
【0060】導電板27は、ブラケット25側の面が絶縁性を有する絶縁部27aとして形成され、バネ28と当接する面が導電部27bとして形成されている。そして導電部27bと制御部30が電気的に接続されている。またシリンジ21と制御部30も電気的に接続され、該制御部30に於いてピン22とシリンジ21との導通が監視され、両者が導通したとき、信号を発生して該信号によって警報を発生し得るように構成されている。
【0061】本実施例に於いて、シリンジ21とピン22を制御部30に接続するに際し、ピン22をプラス側に接続すると共にシリンジ21をマイナス側に接続している。即ち、DNAからなる試薬はマイナスに帯電しているため、ピン22をプラス側に接続することによって、試薬はピン22に付着し易くなり、基盤1に転写する際の確率を向上させることが可能となる。
【0062】上記の如く構成された転写部材Bでは、第2Z方向駆動部材24を駆動して一度上昇させ、試薬の内部にピン22の先端を浸した後、ピン22を下降させ、この過程でシリンジ21に保持された試薬をピン22によって基盤1に転写することが可能である。
【0063】そしてピン22に作用する軸方向の力によって該ピン22に図3(b)に示すような曲がりが生じたとき、ブラケット25の上昇に伴ってピン22が上昇し、ピン22がシリンジ21に接触したとき両者が導通する。この導通は制御部30によって検知され、該制御部30から信号が発生する。前記信号を利用してブザーやパトライト等の警報を発することが可能である。
【0064】従って、基盤1に形成された点2が隣接する点2に干渉することを防止して点2の独立性を保証することが可能である。
【0065】転写部材Bに於いて、転写すべき試薬はシリンジ21の内部に保持される。このため、新たな試薬を転写する際に既に転写した試薬が残留していた場合、2つの試薬が混合して正確な資料となり得ないおそれがある。
【0066】従って、シリンジ21の所定位置に該シリンジ21の内部と導通するホース差し21aを設けると共に該ホース差し21aにホース21bを接続しておき、このホース21bを図示しない流体供給装置に接続してシリンジ21の内部に流体を供給し、供給された流体をシリンジ21から噴射して同時に内部に残留している試薬を噴出させるように構成している。
【0067】シリンジ21の内部に供給する流体としては水道水或いは蒸留水等の液体、及び空気或いは窒素等のガス体が選択的に利用される。この流体はシリンジ21の内部に残留する試薬を放出させることを目的とするものであり、この目的を達成し得るものであれば良い。しかし、シリンジ21の内部を洗浄し得るものであれば好ましい。このため、シリンジ21に対し水等の液体と空気等のガス体を時間差を於いて供給することが好ましい。
【0068】転写部材Bを上記の如く構成することによって、試薬の混合をなくし、信頼性の高い転写を行うことが可能である。
【0069】またシリンジ21の内部に流体を供給して噴出させる場合、同図に示すようにシリンジ21の先端をガイド21cの内部に挿通した状態で行うことが好ましい。このように、シリンジ21をガイド21cに挿通して内部に流体を供給して噴出させた場合、噴出した流体及び残留した試薬が非管理状態で飛散することがなく、周囲を汚染することがない。
【0070】またガイド21cにもホース21bを接続して流体を供給し得るように構成した場合には、シリンジ21の外周面に付着している試薬を洗浄して除去することが可能となり、より好ましい転写部材Bを構成することが可能である。
【0071】次に、領域11bに容器3を連続的に供給すると共に回収する供給回収部材Cの構成について図5〜図7により説明する。
【0072】供給回収部材Cは、作業テーブル11に設定された領域11bに容器3を供給し、該容器3に収容された試料が基盤1に転写されたとき、転写済みの容器3を領域11bから回収すると共に新たな容器3を供給する機能を有するものであり、長時間にわたる無人化運転を実現するものである。
【0073】供給回収部材Cは、並行して配置された一対の昇降装置からなる供給部材31,回収部材32と、供給部材31,回収部材32に夫々装着され容器3を収容したカートリッジ35を搭載するブラケット33,34と、キャリッジ14に設けられカートリッジ35を供給部材31側から回収部材32側へと移動させる移動部材36と、を有して構成されている。
【0074】供給部材31,回収部材32は、作業テーブル11に設定された領域11bに容器3を供給し、或いは回収するものである。このため、供給部材31,回収部材32の設置位置が領域11bと離隔していても、或いは何れか一方が一致していても差し支えはない。本実施例では、作業テーブル11の面積を小さくするために、供給部材31を容器3の設置領域である領域11bに一致させて配置している。従って、転写部材Bによる試薬の採取は、カートリッジ35が供給部材31のブラケット33に搭載された状態で行われる。
【0075】供給部材31,回収部材32は、カートリッジ35の厚さに応じた一定のピッチでブラケット33を上昇させ、或いはブラケット34を下降させるものであり、このような機能を有するものであれば、例えば油圧シリンダーやエアシリンダー等のシリンダー類、モーターによって駆動されるボールネジ、作業テーブル11に固定したラックに噛合するピニオン等の機構を採用することが可能である。
【0076】本実施例では、供給部材31,回収部材32をサーボモーター31a,32aによって駆動されるボールネジ31b(32b)を有し、該ボールネジ31b(32b)に噛合するボールナット31c(32c)にブラケット33,34を取り付けて構成している。従って、サーボモーター31a,32aを適宜駆動することで、ブラケット33,34を一定のピッチで上昇或いは下降させることが可能である。
【0077】ブラケット33,34は複数のカートリッジ35を搭載して昇降することで、容器3の領域11bに対する供給,回収を行うようにしたものである。このため、ブラケット33,34はカートリッジ35を搭載したとき、該カートリッジ35の底部を受け入れて位置決めし、且つ水平移動させる際の方向を案内するために一対の突起33a,34aを有している。
【0078】カートリッジ35は容器3を安定して収容するものであり、容器3を収容した状態で供給部材31のブラケット33に複数段段積みされ、最上部にあるカートリッジ35が移動部材36によって水平方向に移動して回収部材32のブラケット34に搭載されるものである。カートリッジ35に収容する容器3の数は特に限定するものではない。本実施例では2個の容器3を収容し得るように構成している。
【0079】カートリッジ35は、底面にブラケット33,34に形成した突起33a,34aと嵌合する凸部35aが形成され、表面側に2個の容器3を収容し且つ該容器3の上面に設けたカバー37も嵌入し得る深さを持った凹部35bが形成されている。また凹部35bの表面側には底面に形成した凸部35aと対応する一対の突起35c(ブラケット33,34の突起33a,34aと対応する一対の突起)が形成されており、該突起35cに上部に載置する他のカートリッジ35の底部を嵌合し得るように構成されている。更に、カートリッジ35の表面所定位置には移動部材36に設けたピン36aが嵌合し得る孔35dが形成されている。
【0080】カートリッジ35は夫々性格の異なる試料を収容した容器3を収容するため、各カートリッジ35に如何なる試料が収容されているかを管理することが必須となる。このため、カートリッジ35の側面所定位置には、例えばバーコードのような識別媒体38が設けられており、バーコードリーダー39によって読み取られるように構成されている。
【0081】従って、各カートリッジ35を個別に識別することが可能であり、予め個々のカートリッジ35に収容された試料を管理しておくことで、供給部材31によって領域11b(回収部材32)に供給されるカートリッジ35を識別し、これにより基盤1に転写する試薬の性格を管理することが可能である。
【0082】カートリッジ35は、予め設定された順序で供給部材31のブラケット33に段積みされる。このとき、下方に積まれたカートリッジ35に収容された容器3の収容部3aはカバー37によって被蓋され、これにより、試薬の蒸発や異物の混合を防止し得るように構成されている。
【0083】移動部材36はY方向駆動部材13のキャリッジ14に設けた昇降部材40のブラケット40aに設けられ、Y方向駆動部材13及びX方向駆動部材12に駆動されて供給部材31によって上昇されたカートリッジ35に接近し、ピン36aをカートリッジ35に形成した孔36dに嵌合させ、キャリッジ14の横行に伴ってカートリッジ35を回収部材32に移動させるものである。
【0084】また移動部材36は、カートリッジ35を回収部材32に移動させた後、供給部材31によって新たなカートリッジ35が上昇したとき、該カートリッジ35に収容された容器3を蓋しているカバー37を排除する機能をも有するものである。移動部材36は前記機能を有するものであれば良く、構造を限定するものではない。
【0085】本実施例に於いて、移動部材36は、Y方向駆動部材13に設けたキャリッジ14に設けた昇降部材40と、昇降部材40に駆動されて昇降するブラケット40aと、ブラケット40aに取り付けられピン36aを出没させるシリンダー41と、ブラケット40aに取り付けられ図示しない吸引装置と接続された吸引パッド42とを有して構成されている。
【0086】上記の如く構成された移動部材36では、昇降部材40によってブラケット40aを下降させて吸引パッド42をカバー37に当接させることで該カバー37を吸着し、この状態でブラケット40aを上昇させると共にX方向駆動部材12,Y方向駆動部材13を駆動してキャリッジ14を作業テーブル11に於けるカバー積載位置(例えば回収部材32のブラケット34上)に移動させて吸引を解除することでカバー37を離脱させることが可能である。このように、カバー37を取り外す機構としては、吸引パッド42以外には、例えば一対のラックを対向して配置すると共に1個のピニオンによって駆動し得るように構成しておき、夫々のラックの端部に取り付けた把持部材によってカバー37を掴むような構造がある。
【0087】上記した状態で容器3からの転写を行い、該容器3に収容された試薬の転写が終了したとき、キャリッジ14を供給部材31に対向する位置に戻して昇降部材40を駆動してブラケット40aを下降させ、この状態でシリンダー41を駆動してピン36aを突出させてカートリッジ35に形成した孔35aに嵌合させ、この状態で、キャリッジ14を横行させることで、カートリッジ35を供給部材31に対応する位置から回収部材32に対応する位置に移動させることが可能である。
【0088】1台のカートリッジ35が回収部材32側へ移動した後、供給部材31はカートリッジ351台の厚さに相当する分ブラケット33を上昇させる。同様に回収部材32はカートリッジ1台の厚さに相当する分ブラケット34を下降させる。このようにして新たなカートリッジ35を領域11bに供給し、転写が終了したカートリッジ35を回収することが可能である。
【0089】次に、複数の基盤1を配列した状態で保持するトレイ50の構成について図8により説明する。トレイ50は、所定数(図に示すトレイ50では6×4)の基盤1を配列して固定した状態で作業テーブル11の基盤1の配置領域である領域11aに供給すると共に排出させ、更に、この配列状態を維持して次工程へと運搬し得るように構成したものである。
【0090】トレイ50は所定の厚さを持った板状に形成されており、各列に対応する位置に基盤1を位置決めするために適度な弾力性を持ったゴムや合成樹脂からなる位置決め部材51が設けられ、該位置決め部材51に対応して配列された基盤1を固定する固定部材52が設けられている。
【0091】各位置決め部材51の近傍には溝53が形成され、該溝53と平行に固定部材52を固定するナットを挿入したあり溝54が形成されている。このため、各列毎に配置する基盤1の数に応じて固定部材52をセットし、該固定部材52をあり溝54に挿入したナットに螺合することで、基盤1を固定することが可能である。また一連の作業が終了したとき、固定部材52による基盤1の固定を解除し、溝53に例えば棒状の部材を通して持ち上げることで基盤1を容易に取り外すことが可能である。
【0092】トレイ50の所定位置には複数の止め穴55が形成されており、作業テーブル11であって、止め穴55に対応する位置にネジ穴56が形成されている。従って、トレイ50を作業テーブル11上に配置し、止め穴55に図示しないボルトを挿通してネジ穴56に螺合させることで、トレイ50(基盤1)を作業テーブル11の領域11aに配置することが可能である。
【0093】尚、基盤1に転写される試薬の点2の間隔が0.2mmと小さいため、基盤1の位置決め精度を厳密に管理することが好ましい。このため、作業テーブル11の領域11aに対応する部分に、トレイ50を受け入れる溝、或いはガイド部材を固定して構成した位置決め部57を形成しておくことが好ましい。このように、位置決め部57を形成することで、トレイ50の位置決めを容易に行うことが可能となり、且つ位置決め精度を向上することが可能となる。
【0094】次に、上記の如く構成された転写装置Aにより基盤1に試薬を転写する動作及びカートリッジ35を供給,回収する動作について説明する。
【0095】先ず、供給部材31のブラケット33に所定段数に積み上げたカートリッジ35を搭載し、最上段のカートリッジ35が作業テーブル11と同高さになるように上昇させる。また回収部材32のブラケット34は突起34aが作業テーブル11と同高さになるように上昇させておく。同時に作業テーブル11の領域11aにトレイ50を供給して固定しておく。
【0096】Z方向駆動部材15を駆動してフレーム23を上昇限に設定し、この状態で、X方向駆動部材12,Y方向駆動部材13を駆動して移動部材36を供給部材31に対応する位置に移動させ、昇降部材40を駆動すると共に吸引パッド42を駆動してカートリッジ35に収容された容器3を被蓋するカバー37を吸着し、その後、所定位置に移動してカバー37を排除する。これにより、試薬が露出した状態となり、転写の準備が完了する。
【0097】次に、転写部材B(シリンジ21)を容器3の収容部3aに対向させる。次いで、Z方向駆動部材15を駆動してフレーム23を下降させ、シリンジ21の先端とピン22の先端を一致させた状態で収容部3aに差し込むことで試薬を採取し、Z方向駆動部材15及び第2Z方向駆動部材24を駆動してピン21,シリンジ22を上昇させることで、キャリッジ14を移動可能とし、その後、X方向駆動部材12,Y方向駆動部材13を駆動してシリンジ21を目的の基盤1に対向させ、Z方向駆動部材15を駆動してフレーム23(ピン22)を所定の高さに下降させる。この状態で基盤1に対する転写作業を開始する。
【0098】基盤1に対する転写作業は、ピン22を基盤1の方向に下降させることで行われる。即ち、シリンジ21の内部に配置されたピン22は、先端部分が試薬の内部に侵入していることとなり、この状態でピン22を下降させると、ピン22の先端面は試薬に濡れた状態で基盤1に当接する。そしてピン22の当接に伴って、該ピン22に付着していた試薬が基盤1に転写される。またピン22の先端が基盤1に当接した後、更にブラケット25は所定の高さまで下降する。この下降に伴ってバネ28が歪み、ブラケット25のストロークとピン22のストロークの差を吸収する。
【0099】ブラケット25が下降限に到達した後、サーボモーター24cを反対方向に回転させてブラケット25を上昇させる。ブラケット25の昇降ストロークはピン22がシリンジ21の内部に収容され得る高さを上限とし、基盤1に当接し得る高さを下限とする範囲内に設定されている。
【0100】ブラケット25が上昇限に到達した後、X方向駆動部材12,Y方向駆動部材13を駆動してシリンジ21(ピン22)を超音波洗浄器4に移動させ、該超音波洗浄器4によって洗浄し、更に、乾燥器5によって乾燥させる。その後、再度シリンジ21を容器3の収容部3aであって、既に転写した収容部3a以外の収容部3aに対応させて前述と同様にしてシリンジ21に試薬を採取する。このような動作を繰り返すことで、複数の基盤1に所定数の試料からなる点2を形成することが可能である。
【0101】試薬の転写が進行して供給部材31のブラケット33に搭載されたカートリッジ35に収容された容器3の全ての収容部3aの試薬が転写された後、移動部材36を供給部材31に対応する位置に移動させ、ピン36aを突出させて該ピン36aをカートリッジ35の孔35dに嵌合させ、この状態を維持してキャリッジ14を横行させてカートリッジ35を回収部材32のブラケット34に移動させる。
【0102】上記の如くしてカートリッジ35(試薬が転写された容器3)を回収部材32に移動させる。次いで、回収部材32はカートリッジ35の厚さに相当する分下降し、また供給部材31はカートリッジ35の厚さ分上昇し、当初2段目にあったカートリッジ35の底部を作業テーブル11と同高さに設定する。更に、移動部材36が供給部材31に対応する位置に移動し、該供給部材31の最上段(当初2段目)のカートリッジ35を蓋しているカバー37を吸着して回収部材32にある容器3の上部に移動させることで、該容器3を被蓋する。
【0103】上記の如き転写部材Bによる試薬の転写と、供給回収部材Cによる容器3の領域11bに対する供給と回収を繰り返すことで、基盤1に所定数の異なる性格を持った点2を形成することが可能である。
【0104】基盤1に対する転写を実施する過程で、ピン22に曲がりが生じた場合、該ピン22がシリンジ21と接触した時点で両者が導通して制御部30で検知され、この検知に伴って信号が発生する。そして発生した信号によって転写装置Aの稼働を停止させ、或いはブザーやパトライトにより警報を発することが可能である。
【0105】また領域11aに配置された全ての基盤1に試薬を転写した後、該基盤1を配列しているトレイ50を作業テーブル11から排出し、新たなトレイ50を供給して引き続き基盤1に対する試薬の転写を行うことが可能である。
【0106】前述の実施例では、作業テーブル11上に転写部材Bを移動させる手段としてX方向駆動部材12,Y方向駆動部材13,Z方向駆動部材15を構成したが、本発明はこの構成に限定するものではなく、例えば多関節アームからなるロボットによって転写部材Bを移動させるように構成しても良い。
【0107】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明に係る転写部材では、導電性を有するガイド部材の内部に導電性を有するピンを移動可能に収容すると共に両者の導通の有無を制御部によって監視し、導通したとき信号を発生させるように構成したので、試薬を基盤に転写する際に屡々発生するピンの曲がりを電気的な導通としてとらえて検知し、更に信号を発生することが出来る。このため、ピンの曲がりを速やかに知ることが出来、適切に対応することが出来る。従って、ピンの曲がりに伴う基盤上に形成された点どうしの干渉を防ぐことが出来、且つピンが折れる以前に交換するとが出来る。
【0108】また基盤を行列させたトレイを用いることによって、転写装置に対する多数の基盤の供給を容易とし且つ試薬を転写した後の次工程への供給を容易に実施することが出来る。
【0109】また容器を配置する領域に試薬を収容した容器を供給し且つ回収するように構成することによって、異なる試薬を収容した容器を予め設定された位置に供給し且つ回収することが出来る。このため、作業員を必要とせず、長時間の無人化運転を実現することが出来る。特に、容器或いは容器を収容したカートリッジにバーコード等の識別媒体を設けた場合には厳密な試薬の管理を実施することが出来る。
【0110】また本発明に係る基盤では、所定位置に基準となる点を設けることによって、試薬の転写を実行する際に、或いは転写が終了した基盤を次工程で所定の処理を実行する際に個々の基盤の正確な位置を検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】転写装置の構成を説明する平面図である。
【図2】転写部材の構成を説明する図である。
【図3】ピンに曲がりが生じたときの状態を説明する図である。
【図4】流体を噴出させるように構成した転写部材の構成を説明する図である。
【図5】供給回収部材の構成を説明する図である。
【図6】供給回収部材の動作を説明する図である。
【図7】供給回収部材による収容部材の供給と回収の手順を説明する図である。
【図8】作業テーブルとトレイとの関係を説明する図である。
【図9】基盤に転写した試薬の分布状態を説明する図である。
【図10】従来の装置の全体構成を説明する斜視図である。
【図11】試薬を基盤上に転写する転写部材の第1公知例を説明する図である。
【図12】転写部材の第2公知例を説明する図である。
【符号の説明】
A 転写装置
B 転写部材
C 供給回収部材
O 基準点
1 基盤
2 点
3 容器
3a 収容部
4 超音波洗浄器
5 乾燥器
11 作業テーブル
11a〜11d 領域
12 X方向駆動部材
13 Y方向駆動部材
14 キャリッジ
15 Z方向駆動部材
15a ボールネジ
15b ボールナット
15c サーボモーター
21 シリンジ
21a ホース差し
21b ホース
21c ガイド
22 ピン
23 フレーム
24 第2Z方向駆動部材
25 ブラケット
26,29a,29b スリーブ
27 導電板
27a 絶縁部
27b 導電部
28 バネ
30 制御部
31 供給部材
31a,32a サーボモーター
31b(32b) ボールネジ
31c(32c) ボールナット
32 回収部材
33,34 ブラケット
33a,34a 突起
35 カートリッジ
35a 凸部
35b 凹部
35c 突起
35d 孔
36 移動部材
36a ピン
37 カバー
38 識別媒体
39 バーコードリーダー
40 昇降部材
40a ブラケット
41 シリンダー
42 吸引パッド
50 トレイ
51 位置決め部材
52 固定部材
53 溝
54 あり溝
55 止め穴
56 ネジ穴
57 位置決め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 目的の液を収容した収容部材から受け取った液を基盤上に点状に転写する液の転写部材であって、導電性を有し且つ基盤に対し離隔及び接近する方向に移動して液を基盤に転写するピンと、導電性を有し且つ内部に前記ピンを移動可能に収容したガイド部材と、前記ピンとガイド部材との間の電気的な導通の有無を検知し導通したとき信号を発生する制御部とを有することを特徴とする液の転写部材。
【請求項2】 目的の液を収容した収容部材から受け取った液を基盤上に点状に転写する液の転写部材であって、基盤に対し離隔及び接近する方向に移動して液を基盤に転写するピンと、内部に前記ピンを移動可能に収容したガイド部材とを有し、前記ピンとガイド部材との間に流体を供給してガイド部材から噴出し得るように構成したことを特徴とする液の転写部材。
【請求項3】 液が転写される基盤を配置するための領域及び目的の液を収容した収容部材を設置するための領域が設定された作業テーブルと、請求項1又は2に記載した転写部材を備えたキャリッジを前記作業テーブルに設定された領域内に移動させる移動手段と、前記転写部材を作業テーブルに対し離隔又は接近させる昇降手段と、前記作業テーブルに於ける液が転写される基盤を配置するための領域に対し着脱可能に構成され液が転写される基盤を複数列,複数行並べたトレイと、を有することを特徴とする液の転写装置。
【請求項4】 前記作業テーブルの目的の液を収容した収容部材の設置するための領域に対し収容部材を供給すると共に回収する収容部材の供給回収手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載した液の転写装置。
【請求項5】 液が転写される基盤であって、所定位置に基準となる点を設けたことを特徴とする基盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2000−287670(P2000−287670A)
【公開日】平成12年10月17日(2000.10.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−45967
【出願日】平成11年2月24日(1999.2.24)
【出願人】(592213730)株式会社化研興業 (6)
【Fターム(参考)】