説明

液体、特に透析液を運搬するためのカセット

この発明は、溶液バッグ、および、患者または分析器に繋がる管路を接続するための接続要素を有する、液体を運搬するためのカセットに関する。この発明によれば、カセットは、再び所望の温度に達するまで、所望の温度を上回る温度に加熱された液体を長時間にわたって効果的に導くための制御装置を有する。この発明はさらに、上述のカセットを受けるための装置を有する分析器、および、カセットの中で導かれる液体の温度設定方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クレーム1のプリアンブルに係る、液体、特に透析液を運搬するためのカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
透析液を運搬するための対応するカセットは、EP 991 05 771 Bから既に公知であり、このカセットは、溶液バッグ、ならびに、患者および透析器に繋がる管路を接続するための接続要素を備え、流入物および流出物を有する少なくとも1つのポンプ室を有し、供給されかつ運搬された液体を導くための管路を有し、管路の壁は、壁に作用する圧縮力を付与することによって管路を閉鎖することができるように少なくとも区画に分けて作られている。この既に公知のカセットは、透析流体を求められている所望の温度に加熱するための加熱装置を含む。
【0003】
このようなカセットは、たとえば腹膜透析の分野、ここでは特に「サイクラー」と呼ばれる機械の助けを借りて腹膜を充填したり空にしたりし、カセットシステムによって流量制御が行なわれる腹膜透析の分野において用いられる。
【0004】
透析液は、カセットの中で求められている所望の温度に加熱され、その後、腹膜に注入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、患者への液体の供給を中断しなければならないサイクラーの不測の停止が生じた場合、もはやカセットを循環していない透析液は、加熱装置の慣性により、所望の温度を上回る温度に加熱される。所望の温度を超えるために、過熱された透析液は、サイクラーを再び始動する際に、もはや患者に注入する目的で使用することができない。したがって、透析液は、公知のシステムでは完全に廃棄される。しかしながら、この結果、好ましくなくかつ最終的にはコスト集約的に、消費量が増えることになる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、過熱されたかもしれない液体を、廃棄する必要なく、求められている所望の温度に戻すことができるようにクレーム1のプリアンブルに係る液体を運搬するためのカセットをさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、この発明に従って、クレーム1の特徴の組合せによって解決される。したがって、液体、特に透析液を運搬するためのカセットであって、上記カセットは、溶液バッグ、および、患者または透析器に繋がる管路を接続するための接続要素を備え、上記カセットは、流入物および流出物を有する少なくとも1つの運搬室を有し、上記カセットはさらに、供給されかつ運搬された液体を導くための管路を有し、管路をセクション方向に(abschnittsweisen)閉鎖するための弁と、管路の中に存在する液体を予め設定可能な所望の温度に加熱するための加熱装置とをさらに有する、カセットが提供される。この発明によれば、このようなカセットには、再び所望の温度に達するまで、所望の温度を上回る温度に加熱された液体を長時間にわたってカセットの中で導く制御装置が設けられる。
【0008】
これによって、液体を再利用できる。過剰な熱は、カセット内での対応する循環によって、それを取囲むカセットに伝達されることができる。
【0009】
カセットの好ましい実施例は、メインクレームに続く従属クレームによってもたらされる。
【0010】
したがって、カセットの中の液体の温度を測定するための少なくとも1つの温度センサが設けられる。
【0011】
特に有利な実施例によれば、所望の温度に達するまで間に媒体を配置できる2つのポンプ室が設けられる。
【0012】
有利に、加熱装置は連続流加熱器として作られる。
この発明はさらに、前に記載したカセットの中の液体の温度設定方法に関する。この発明によれば、液体はここでは、所望の温度に達するまで2つのポンプ室の間に配置される。
【0013】
この発明に係る方法の好ましい実施例は、クレーム5に続く従属クレームによってもたらされる。
【0014】
したがって、液体の所望の温度を超えると、液体を排出する管路が接続された管路が閉鎖される。同時に、加熱装置の加熱力が減少する。液体は、一方のポンプ室を通って加熱装置からそれぞれ他方のポンプ室に送られる。
【0015】
過熱された液体が導かれるポンプ室の中に高い割合の冷液が既に存在する場合には、混合液体、すなわち、結果として生じた混合温度を有する液体が、逆方向の動作で加熱装置を通ってそれぞれ他方のポンプ室に順番に同時に運搬されて、このプロセスにおいて加熱装置を冷却する。
【0016】
これに対して、過熱された液体がポンプ室に混入することにより、その混合温度で過熱された液体が結果として生じる場合には、混合液体は、順方向の動作で加熱装置を通ってそれぞれ他方のポンプ室に運搬されて、カセットの中で過剰な熱を分散させる。
【0017】
最後に、この発明は、前に記載したカセットを受けるための装置を有し、カセットのポンプ室を作動させるためのポンプユニットを有する、特に腹膜透析プロセスを行なうための透析器に関する。
【0018】
この発明のさらなる特徴、詳細および利点は、以下の発明の好ましい実施例の説明によってもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】唯一の図は、この発明に係るカセットの実施例の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図はカセット10を示しており、このカセット10は、使い捨てカセットとして作られており、有利に腹膜透析装置のサイクラーの透析器の対応して設計された切抜き部または台に差込むことができる。参照数字2,4,6は、溶液バッグ、患者もしくは透析器に繋がる管路、または排出管路も接続するための接続要素を示している。2つの固定して取付けられたホース(図示せず)がコネクタ4および6に配置されており、一方のホースは患者ホースに相当し、他方は排出ホースに相当する。接続要素2は、たとえば溶液バッグまたは他の薬剤容器の接続を操作者が行なえるようにする。
【0021】
カセット10は、射出成形技術または深絞り技術でも製造できるプラスチック製のベース本体12を含む。切抜き部および通路がベース本体12内に延びており、互いに隣接して配置された2つの運搬室20,22およびカセットに配置された管路(たとえば、30,40,50,60)の壁を部分的に形成している。ポンプ室20と22との間には、管路80および90も形成されている。
【0022】
連続流加熱器52は、管路50の領域における加熱装置として実現される。
その他の点では、カセットの構成および機能は、内容が引用されるEP 0 956 876 B1に係るものに実質的に対応している。
【0023】
弁V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8,V9,V10,V11,V12,V13,V14,V15およびV16は、管路30,40,50,60において供給または運搬される液体の制御を行なう。上記弁もまた、EP 0 956 876 B1に記載されているように、空気圧的に、液圧的に、またはさらには機械的に制御された弁タペットによって閉じることができる。図に示される装置の通常の機能により、液体は、それ以上詳細に図示していない態様でコネクタ4に続く、液体を排出する管路の方向に、ポンプ室22から連続流加熱器52を通って運搬される。したがって、液体は、ポンプ室22から、弁V4の開放後、管路80を経由して、連続流加熱器52における管路50を通って、開いた弁V5および開いた弁V6を経由して流れる。同時に、ポンプ室20は、たとえば開いた弁V11およびV1を経由して新鮮な液体を供給されるのに対して、弁V7、V3およびV2およびV9は必然的に同時に閉じられる。
【0024】
ここで、たとえばコネクタ4に接続された患者への管路の閉塞などの問題が管路に生じると、加熱レギュレータのオーバーシュートにより、連続流加熱器52の中に存在する液体は、もはや腹膜に注入できないほどに加熱され得る。
【0025】
上述のように、連続流加熱器52の中に存在する液体が過熱されると、弁V6は閉じられ、連続流加熱器52の加熱力は、ここではそれ以上詳細に図示されていない、たとえばサイクラーではカセットの外側に配置された制御装置によって減少する。同時に、新鮮な溶液でのポンプ室20の充填が停止される。この目的で、弁V11が閉じられる。引換えに、このとき弁V4、弁V5、弁V7および弁V1が開いた状態で、温かすぎる溶液は、ここで、ポンプ室22を経由して連続流加熱器52を通ってポンプ室20に送られる。ポンプ室20が充填されるかまたはポンプ室22が空になると、ポンプ室22のポンプ工程は終了する。
【0026】
ここで、一般に、ポンプ室20に運搬された温かい液体に対するポンプ室20に入っている液体の割合に従って液体を冷却する2つの可能性が生じる。
【0027】
第1の可能性では、高い割合の冷液がポンプ室20の中に存在していると仮定される。この場合、液体の混合により比較的冷たくなった混合液体は、逆方向の動作で連続流加熱器52を経由してポンプ室22に運搬され、このとき液体は、開いた弁V1、開いた弁V7、開いた弁V5および開いた弁V4を経由してポンプ室22に戻される。部分的に過熱された連続流加熱器は、比較的冷たい液体によってさらに冷却される。
【0028】
ここで、非常に高い割合の温かい液体がポンプ室20の中に存在する場合には、この液体は、非常に高い混合温度で順方向の動作で連続流加熱器52を経由してポンプ室22に運搬され、このとき液体は、ポンプ室1から始まって、開いた弁V2、開いた弁V5、開いた弁V7および開いた弁V3を経由してポンプ室22に導かれる。この変形例では、過熱された液体を所望の温度に下げることができるように、過熱された液体の過剰な熱がカセットの中で分散される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、特に透析液を運搬するためのカセットであって、
溶液バッグ、および、患者または透析器に繋がる管路を接続するための接続要素を有し、
流入物および流出物を有する少なくとも1つの運搬室を有し、
供給されかつ運搬された液体を導くための管路を有し、
前記管路をセクション方向に閉鎖するための弁を有し、
前記管路の中に存在する前記液体を予め設定可能な所望の温度に加熱するための加熱装置を有し、
再び前記所望の温度に達するまで、前記所望の温度を上回る温度に加熱された液体を前記カセット内で導くための制御装置によって特徴付けられる、カセット。
【請求項2】
前記カセットの中の前記液体の温度を測定するための少なくとも1つの温度センサによって特徴付けられる、請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記所望の温度に達するまで間に前記液体を配置できる2つのポンプ室が設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のカセット。
【請求項4】
前記加熱装置は連続流加熱器であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のカセット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに従って設計されたカセットの中の液体の温度設定方法であって、所望の温度に達するまで液体が2つのポンプ室の間に配置されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記液体の前記所望の温度を超えると、前記液体を排出する前記管路が接続された前記管路は閉鎖され、前記加熱装置の加熱力は減少し、前記液体は、一方のポンプ室によって前記加熱装置からそれぞれ他方のポンプ室に送られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
過熱された液体が導入される前記ポンプ室の中に高い割合の冷液が存在する場合には、混合液体が逆方向の動作で前記加熱装置を通って前記それぞれ他方のポンプ室に順番に運搬され、それによって、前記加熱装置を冷却することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過熱された液体が導入される前記ポンプ室の中に高い割合の熱すぎる液体が存在する場合には、混合液体が順方向の動作で前記加熱装置を通って前記それぞれ他方のポンプ室に運搬されて、前記カセットの中で過剰な熱を分散させることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から4の1つ以上に記載のカセットを受けるための装置を有し、前記カセットのポンプ室を作動させるためのポンプユニットを有する、特に腹膜透析プロセスを行なうための透析器。

【公表番号】特表2012−500070(P2012−500070A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523344(P2011−523344)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005956
【国際公開番号】WO2010/020390
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(597075904)フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【Fターム(参考)】